説明

空気入りタイヤ

【課題】 ブロックパターン又はラグパターンにおけるヒールアンドトゥ摩耗の進行状態を容易に把握可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 少なくともトレッドのショルダー部にブロック又はラグからなる陸部が連なるように設けた空気入りタイヤにおいて、前記陸部の外側面にトレッド表面の接線方向に対する傾斜角度が0.5°〜10°の摩耗表示線を多段に形成した陸部と、前記傾斜角度の傾斜方向が逆向きの摩耗表示線を多段に形成した陸部とをタイヤ周方向に交互に設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤのヒールアンドトゥ摩耗状態の判断を容易にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、走行と共に路面との接触摩擦により次第に摩耗が進行する。特にブロックパターンやラグパターンを設けた重荷重用タイヤでは、ブロックやラグにヒールアンドトゥの偏摩耗が起こりやすい。このような偏摩耗は、定期的に点検して、偏摩耗が一定限度まで進行しない前に適宜タイヤ位置のローテーションを行うことにより、タイヤ寿命を延長することができる。しかし、偏摩耗を的確に判断してタイヤローテーションの時期を設定することは、多くのドライバーにとり非常に難しいのが実情である。
【0003】
図6は、ブロックパターンを有する重荷重用タイヤにおいて、ヒールアンドトゥ摩耗が発生したブロックをタイヤ側面から見た部分拡大図であり、回転方向Tに対して、ブロック蹴り出し側が踏み込み側よりも多く偏摩耗した状態を示す。
【0004】
このようなヒールアンドトゥ摩耗の状態は、ブロックのタイヤ周方向の前後の高さを測定して、その寸法差で判断するが、誤差を生じやすく、かつ手間もかかるため、一般の運転者がタイヤローテーションの時期を的確に判断することは、非常に難しい作業になっている。
【0005】
このような課題を解決するため、特許文献1は、トレッド部に形成したブロックの溝壁面に線状の摩耗検知部を多段に設けることを提案している。しかし、この線状の摩耗検知部は、トレッド表面に平行に形成されているため、ヒールアンドトゥ摩耗の度合いを把握するには、ブロック前後の目盛りを読み取った上で、トレッドパターンやブロック幅等の種々の因子を考慮しつつ判断する必要があった。
【0006】
したがって、一般のドライバーがヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを的確に把握するには熟練が必要になるため、必ずしもタイヤローテーションの時期を容易かつ的確に判別できるとは言えなかった。
【特許文献1】特開2000−289414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ブロックパターン又はラグパターンにおけるヒールアンドトゥ摩耗の進行状態を容易に把握可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、少なくともトレッドのショルダー部にブロック又はラグからなる陸部が連なるように設けた空気入りタイヤにおいて、前記陸部の外側面にトレッド表面の接線方向に対する傾斜角度が0.5°〜10°の摩耗表示線を多段に形成した陸部と、前記傾斜角度の傾斜方向が逆向きの摩耗表示線を多段に形成した陸部とをタイヤ周方向に交互に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空気入りタイヤは、陸部の外側面に多段に設けた摩耗表示線をトレッド表面に対して0.5°〜10°の角度で傾斜させたので、トレッド表面の摩耗面が摩耗表示線と平行になったか否かを単に視認するだけでヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを容易に把握することができ、タイヤローテーションの時期を的確に判断することができる。
【0010】
さらに、摩耗表示線の傾斜方向を互いに逆向きにした陸部をタイヤ周方向に交互に設けたため車両に取り付けたタイヤの回転方向の如何に拘らず、必ず当該タイヤのヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを容易に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を図に示す実施形態を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の空気入りタイヤのトレッドショルダー部の一部分を斜視図で例示し、図2は、そのうちのブロックの一つをタイヤ側面から見た拡大図の一例を示す。
【0013】
図1において、空気入りタイヤ1は、トレッドショルダー部にブロックからなる陸部3を有し、その外側面に複数本の摩耗表示線4を多段に設けている。複数本の摩耗表示線4は、陸部3のトレッド表面2の接線方向に対して0.5°〜10°の角度で傾斜している。また、一つの陸部3の側面において、摩耗表示線4の傾斜方向は同じ向きであり、陸部3と周方向に隣接する陸部において、傾斜方向が逆向きとなるように摩耗表示線4を形成している。すなわち、摩耗表示線4の傾斜方向が、一つ置きの陸部で同じ向きとなるように、タイヤ周方向に摩耗表示線4の傾斜方向が同じ向き/逆向きである陸部を交互に配列している。
【0014】
図2において、摩耗表示線4は、トレッド表面2の接線方向に対して0.5°〜10°の範囲の傾斜角度θで配置している。ここで傾斜角度θは、陸部3のトレッド表面2の周方向の中心に位置する点に接する平面と摩耗表示線4が、陸部3の外側面を含む平面上になす角度である。
【0015】
本発明の空気入りタイヤは、陸部の外側面に多段に設けた摩耗表示線4をトレッド表面2の接線方向に対して0.5°〜10°の角度で予め傾斜しているので、トレッド表面2の摩耗面の傾きが、摩耗表示線4の傾きと平行になったか否かを単純に視認するだけでヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを容易に把握することができ、タイヤローテーションの時期を的確に判断することができる。
【0016】
さらに、摩耗表示線4の傾斜方向を互いに逆向きにした陸部をタイヤ周方向に交互に設けたため車両に取り付けたタイヤの回転方向の如何に拘らず、必ずタイヤのヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを容易に判断することができる。したがって、タイヤローテーションを行い、タイヤ装着位置を車体の左右に変更し、タイヤの回転方向を反転させた後においても、互いに隣接する陸部3が、摩耗表示線4の傾斜方向を逆向きに形成しているため、逆向きの摩耗表示線4を指標として、ヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを継続して判断することができる。
【0017】
本発明において、摩耗表示線4の傾斜角度θは、0.5°〜10°、好ましくは1°〜4°である。摩耗表示線4は、傾斜角度θが0.5°以上であると、空気入りタイヤが、大口径タイヤの場合に、ヒールアンドトゥ摩耗を初期段階で視認する指標とすることができ、傾斜角度θが10°以下であると、径の小さいタイヤにおいてヒールアンドトゥ摩耗が限界値近くまで進行しタイヤローテーションを実施すべき警告を示す指標とすることができる。摩耗表示線4の傾斜角度θは、タイヤサイズ、用途、タイヤパターン等により適宜選択することができる。
【0018】
本発明において、摩耗表示線4の間隔は、好ましくは0.5〜3mm、より好ましくは1〜2mmがよい。摩耗表示線4の間隔を0.5mm以上とすることにより摩耗表示線の視認性が向上するという特長があり、3mm以下とすることによりヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを把握しやすくなるという特長がある。
【0019】
本発明において、摩耗表示線4の形態は、実線、破線、点線及びドット集合体から選ばれる少なくとも1つの線種であり、線の太さ(幅)、深さ又は高さにより区別して形成することが好ましい。さらに、摩耗表示線4の形態は、互いに隣接する他の摩耗表示線4の形態と相違していることが好ましい。互いに隣接する摩耗表示線4の形態を、異ならせることにより、摩耗表示線4の視認性をより良好にすることができ、好ましい。
【0020】
図3及び4は、本発明の空気入りタイヤの別の好ましい実施態様を示す説明図であり、図3は、陸部3の側面の部分拡大図の一例であり、図4は、さらに図3の一つの陸部側面の拡大図である。
【0021】
図3において、摩耗表示線4は、隣接する摩耗表示線4を互いに傾斜角度が異なるように設けている。さらに詳しくは、図4において、互いに隣接する摩耗表示線4の傾斜角度は、θ、θ、θに設定されており、傾斜角度θ〜θは、いずれも0.5°〜10°の範囲内の角度である。
【0022】
このように、陸部3の側面において、摩耗表示線4の傾斜角度を、互いに隣接する他の摩耗表示線4の傾斜角度と異なるように設けることが、好ましい。これは、一つの陸部3の側面に異なる傾斜角度の摩耗表示線4を表示することにより、ヒールアンドトゥ摩耗の進行度合いを、軽微な段階から重度な段階まで段階的に容易に視認して把握することができ、これによりタイヤローテーションの時期をより的確に判断することができるためである。
【0023】
例えば、トレッド表面2の傾きが、傾斜角度θ〜θ2の摩耗表示線4の傾きに相当するときは、ヒールアンドトゥ摩耗が要注意レベルの状態でありタイヤローテーションを実施すべき時期であることを示す指標とし、さらに傾斜角度θ2を超えてθに近づくとヒールアンドトゥ摩耗が限界に近く、直ちにタイヤローテーションすべきとの警告を示す指標というように傾斜角度ごとに意味をもたせることも可能である。
【0024】
本発明において、互いに隣接する摩耗表示線4の傾斜角度θの差は、0.5°〜2.5°が好ましい。傾斜角度θの差を、この範囲内とすることにより、摩耗表示線4の意味づけがしやすくなると共に、一つの陸部3において隣接する摩耗表示線4が交差し難く、より視認しやすいため好ましい。
【0025】
なお、摩耗表示線4の傾斜角度θ、θ、θの設定は、タイヤサイズ、用途、タイヤパターン等により適宜選択することができる。
【0026】
さらに、傾斜角度θ、θ、θを有する摩耗表示線4の形態を、線種(実線、破線、点線及びドット集合体)、線の太さ(幅)、深さ又は高さにより区別して形成することにより、傾斜角度θ、θ、θの相違をより識別しやすくなり、各摩耗表示線4のもつ意味を認識しやすくなるため好ましい。
【0027】
図5は、図3の陸部を有する空気入りタイヤにヒールアンドトゥ摩耗が発生した状態を模式的に示す部分拡大図を例示する説明図である。回転方向Tに対して図5に示すように陸部の周方向前後に偏摩耗が発生する模式図である。このとき、左右両端の陸部3の摩耗表示線4を観察すると、トレッド表面2の傾きが、太い実線で示した摩耗表示線4の傾きθとほぼ平行となっていることが容易に認められる。ここで例えば太い実線の摩耗表示線4が、ヒールアンドトゥ摩耗の進行が著しいことを表していることを、ドライバーに予め知らせておくと、直ちにタイヤローテーションを実施すべき時期であることを、容易かつ的確に判断することができる。
【0028】
また、タイヤローテーションを実施して、タイヤの装着位置を車体の左右に変更しタイヤ回転方向が反転した後においては、図5の中央部の陸部3に形成した摩耗表示線4を、ヒールアンドトゥ摩耗の進行状態を示す指標とすることができる。
【0029】
本発明の空気入りタイヤは、ヒールアンドトゥ摩耗の状態を単なる視認により容易かつ的確に判断でき、適正なタイヤローテーションの時期を知ることができ、さらにタイヤローテーションの後にも引き続きヒールアンドトゥ摩耗の指標を得ることができるためタイヤ寿命を延ばすことが可能となる。
【0030】
本発明の空気入りタイヤは、ブロックパターン又はラグパターンにおけるヒールアンドトゥ摩耗の進行状態を把握するのに有効であり、とりわけ重荷重用タイヤやスタッドレスタイヤに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の空気入りタイヤのトレッドショルダー部の一部分を斜視図を例示する説明図である。
【図2】図1のブロックの一つをタイヤ側面から見た拡大図の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の空気入りタイヤの陸部側面の部分拡大図の一例を示す説明図である。
【図4】図3の陸部の一つをタイヤ側面から見た拡大図の一例を示す説明図である。
【図5】図3の陸部にヒールアンドトゥ摩耗が発生した一例を示す説明図である。
【図6】ヒールアンドトゥ摩耗が発生したブロックをタイヤ側面から見た部分拡大図である。
【符号の説明】
【0032】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド表面
3 陸部
4 摩耗表示線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトレッドのショルダー部にブロック又はラグからなる陸部が連なるように設けた空気入りタイヤにおいて、前記陸部の外側面にトレッド表面の接線方向に対する傾斜角度が0.5°〜10°の摩耗表示線を多段に形成した陸部と、前記傾斜角度の傾斜方向が逆向きの摩耗表示線を多段に形成した陸部とをタイヤ周方向に交互に設けた空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記摩耗表示線の傾斜角度を、互いに隣接する他の摩耗表示線の傾斜角度と異ならせた請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記摩耗表示線の形態を、互いに隣接する他の摩耗表示線の形態と異ならせた請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
タイヤが、重荷重用タイヤである請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤが、スタッドレスタイヤである請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−22172(P2007−22172A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203870(P2005−203870)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)