説明

空気入りタイヤ

【課題】変性共役ジエン系ゴムが配合されたゴム組成物を使用しつつも、耐摩耗性を高度に維持しながら、耐テアー性に優れる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】変性共役ジエン系ゴムと、カーボンブラックとを含むゴム組成物を用いた空気入りタイヤであって、前記ゴム組成物中の変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの関係が、下記式(I):
60 < (0.506×[CTAB]×[CB含有量]/[変性ゴム含有量]) < 80 ・・・(I)
を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特には、耐摩耗性を高度に維持しつつ、耐テアー性に優れる空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの耐摩耗性及び低転がり抵抗性は二律背反する性能であるため、これらの性能を両立させることは困難であったが、これらの性能の両立を達成させるために、例えば、変性基を有するポリブタジエンをゴム成分として用いたゴム組成物をタイヤに適用する手法が提案されている(特許文献1及び2を参照)。
【0003】
具体的に、特許文献1では、空気入りタイヤの耐摩耗性、低燃費性等を向上させることが可能なゴム組成物として、重合体の両末端に変性基が導入された変性共役ジエン系ゴムと天然ゴムとからなるゴム成分に対しストラクチャーの大きなカーボンブラックを配合したゴム組成物が開示されている。
一方、特許文献2では、重合体の両末端に変性基が導入された共役ジエン系重合体に対して水素添加を施すことにより、ゴム組成物の耐摩耗性を高度に維持しながら、低ヒステリシスロス性を向上できるタイヤトレッド用共役ジエン系重合体が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−179670号公報
【特許文献2】特開平10−218920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ゴム成分として変性基を有する共役ジエン系ゴム(変性共役ジエン系ゴム)を用いた場合、ゴム組成物のヒステリシスロスが低減され、耐摩耗性を維持しながら、低転がり抵抗性に対して一定の効果が得られることが分かった。しかしながら、変性共役ジエン系ゴムが配合されたゴム組成物には、耐テアー性が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、変性共役ジエン系ゴムが配合されたゴム組成物を使用しつつも、耐摩耗性を高度に維持しながら、耐テアー性に優れる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、変性共役ジエン系ゴムを含み、変性基を一定値以上有するゴム成分に対してカーボンブラックが配合されたゴム組成物において、変性共役ジエン系ゴムの変性基の数とカーボンブラックの吸着サイトの数とが同程度になるよう制御することにより、耐摩耗性及び耐テアー性に優れるタイヤが得られることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
即ち、本発明の空気入りタイヤは、変性共役ジエン系ゴムと、カーボンブラックとを含むゴム組成物を用いた空気入りタイヤであって、前記ゴム組成物中の変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの関係が、下記式(I):
60 < (0.506×[CTAB]×[CB含有量]/[変性ゴム含有量]) < 80 ・・・(I)
[式中、[CTAB]はカーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(m2/g)であり、[CB含有量]はゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部)であり、[変性ゴム含有量]はゴム組成物のゴム成分中に含まれる変性共役ジエン系ゴムの割合(質量%)であることを特徴とする。
【0009】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して前記カーボンブラックを40質量部以上含有することが好ましい。
【0010】
本発明の空気入りタイヤの好適例において、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が140cm3/100g以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、変性共役ジエン系ゴムを含み、変性基を一定値以上有するゴム成分に対しカーボンブラックが配合されたゴム組成物において、変性共役ジエン系ゴムの変性基の数とカーボンブラックの吸着サイトの数とが同程度になるよう制御することにより、耐摩耗性を高度に維持しながら、耐テアー性に優れる空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤは、変性共役ジエン系ゴムと、カーボンブラックとを含むゴム組成物を用いた空気入りタイヤであって、前記ゴム組成物中の変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの関係が、下記式(I)を満たすことを特徴とする。
60 < (0.506×[CTAB]×[CB含有量]/[変性ゴム含有量]) < 80 ・・・(I)
【0013】
一般に、分子内に変性基が導入された変性共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のカーボンブラックと結合して、カーボンブラックの分散性を向上させる作用があり、それによって、ゴム組成物の耐摩耗性及び低転がり抵抗性を向上させることができる。しかしながら、変性共役ジエン系ゴムを含むゴム組成物は、未変性の共役ジエン系ゴムを含むゴム組成物と比較して耐テアー性が低下しており、変性共役ジエン系ゴムを含むゴム組成物については、依然として改良の余地がある。そこで、本発明者は、変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの相関関係について詳細に検討したところ、変性共役ジエン系ゴムの変性基数とカーボンブラックの吸着サイト数とが同程度になるように制御することで、耐テアー性を改善できることが分かった。この知見から、後で詳細に説明する変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの関係式を規定し、それによって、本発明の空気入りタイヤは、変性共役ジエン系ゴムが配合されたゴム組成物を使用しつつも、耐摩耗性を高度に維持しながら、耐テアー性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物のゴム成分は、上記変性共役ジエン系ゴムを少なくとも含み、該変性共役ジエン系ゴムのみから構成されていてもよい。ここで、上記ゴム組成物中の上記変性共役ジエン系ゴムの割合は、上記式(I)の関係を満たす限り特に限定されるものではないが、20質量%以上であることが好ましく、20〜60質量%の範囲であることが更に好ましい。ゴム成分の20質量%以上が上記変性共役ジエン系ゴムの場合、耐摩耗性及び低ロス性の向上効果が顕著に現れる。また、ゴム成分中の変性共役ジエン系ゴムの含有量が60質量%を超えると、耐摩耗性と耐テアー性との両立が困難になる場合がある。なお、上記ゴム組成物のゴム成分は、上記変性共役ジエン系ゴム以外のゴム成分を含んでもよく、該変性共役ジエン系ゴム以外のゴム成分としては、未変性のジエン系ゴム、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、イソブチレンイソプレンゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0015】
上記変性共役ジエン系ゴムは、変性基を一つ以上有する共役ジエン系ゴムであり、ここで、該変性基とは、重合開始剤や変性剤等によって重合体鎖に導入される官能基を指し、例えば、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基、スズ含有官能基等が挙げられる。なお、共役ジエン系ゴムとしては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体、及び共役ジエン化合物の単独重合体が好ましく、具体的には、天然ゴムの他、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム(SIR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムが挙げられ、ポリブタジエンゴムが特に好ましい。なお、これら共役ジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0016】
また、上記共役ジエン系ゴムは、例えば、単量体である共役ジエン化合物を単独で、又は単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との混合物を重合して得ることができるが、上記共役ジエン系ゴムの分子中に少なくとも一つの変性基を導入することが必要であるため、(1)単量体を重合開始剤を用いて重合させ、重合活性部位を有する重合体を生成させた後、該重合活性部位を変性剤で変性する方法や、(2)単量体を官能基を有する重合開始剤を用いて重合させる方法で得ることが好ましい。なお、単量体としての共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン等が挙げられる。一方、単量体としての芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0017】
上記変性共役ジエン系ゴムの合成に用いる重合開始剤としては、特に限定されず、n-ブチルリチウム等を好適に使用することができるが、重合開始剤によって変性基を導入する場合、リチウムアミド化合物を使用するのが好ましい。上記リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好適に挙げられる。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
【0018】
上記重合開始剤を用いて、変性共役ジエン系ゴムを製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、単量体を重合させることで重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。なお、上記重合は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲が更に好ましい。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。更に、重合反応の反応温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。
【0019】
更に、上記重合活性部位を有する重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、置換若しくは非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基又はピリジル基を有する窒素含有化合物が好ましい。上記変性剤として好適な窒素含有化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物,4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4-ジメチルアミノベンジリデンブチルアミン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0020】
また更に、変性剤としてカップリング剤を用いてもよく、この場合、カップリング剤として、具体的には、SnCl4、RSnCl3、R2SnCl2、R3SnCl、SiCl4、RSiCl3、R2SiCl2、R3SiCl等が好ましく、Rとして、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。特に、カップリング剤としては、SnCl4及びSiCl4が好ましい。
【0021】
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲が更に好ましい。
【0022】
本発明の空気入りタイヤに用いるゴム組成物は、カーボンブラックを含む。ここで、カーボンブラックの含有量は、上記式(I)の関係を満たす限り特に限定されるものではないが、上記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上が好ましく、40〜60質量部の範囲が更に好ましい。カーボンブラックの含有量が40質量部未満では、充分な補強性が得られない場合がある。
【0023】
上記ゴム組成物に用いるカーボンブラックは、上記式(I)の関係を満たす限り特に限定されるものではないが、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着比表面積(m2/g)が70〜100m2/gであるのが好ましい。なお、CTABはカーボンブラック吸着サイト数の指標となる。ここで、カーボンブラックのCTAB吸着比表面積が上記特定した範囲内であれば、耐摩耗性と耐テアー性とを両立させることができる。また、カーボンブラックのCTAB吸着比表面積は、ASTM D3765−92に準拠して測定される。
【0024】
上記カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が140cm3/100g以下であることが好ましく、60〜140cm3/100gであることが更に好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量が60cm3/100g であれば、耐破壊性が良好となり、140cm3/100g以下であれば、カーボンブラックのストラクチャーを小さくすることができ、耐テアー性を更に向上させることが可能となる。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、ASTM D2414-88(JIS K6217-97)に準拠して測定される。
【0025】
上記ゴム組成物(ゴム成分100g中に含まれる変性基の個数が1.45×1020個以上である)において、上記変性共役ジエン系ゴムと上記カーボンブラックとの関係が、上記式(I)を満たす。
上記式(I)中、[CTAB]はカーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(m2/g)であり、[CB含有量]はゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部)であり、[変性ゴム含有量]はゴム組成物のゴム成分中に含まれる変性共役ジエン系ゴムの割合(質量%)である。
上記ゴム組成物において、変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの関係が式(I)の二式が限定する範囲内である場合、変性共役ジエン系ゴムの変性基数とカーボンブラックの吸着サイト数とが同程度に制御されるため、耐テアー性を向上させることができる。また、式(I)の値が60以下であると、変性共役ジエン系ゴムの変性基数が多くなりすぎ、耐テアー性を低下させる。一方、上記式(I)の値が80以上であると、カーボンブラックの吸着サイト数が多くなりすぎ、耐テアー性を低下させる。また、上記式(I)の値が80以上では、カーボンブラックが破壊核として作用し、耐テアー性を低下させるおそれもある。
【0026】
上記ゴム組成物には、変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分、カーボンブラックの他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、シリカ等の補強性充填剤、シランカップリング剤、軟化剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。また、上記ゴム組成物は、上記ゴム成分に、上記カーボンブラックと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0027】
本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とし、例えば、該ゴム組成物をトレッドゴムとして用いることが好ましい。また、本発明の空気入りタイヤは、耐摩耗性及び耐テアー性に優れるため、重荷重用タイヤとして特に好適である。なお、本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム組成物を用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
<変性ポリブタジエンゴム(変性BR1)の製造例>
乾燥し、窒素置換した約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3−ブタジエン50g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol、及びヘキサメチレンイミン0.513mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、撹拌装置を具えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、この重合反応系に、変性剤(カップリング剤)として四塩化スズ0.100mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間攪拌して変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して変性ポリブタジエンゴム(HMI−BR)を得た。得られたHMI−BRは、ブタジエン部分のビニル結合量が14%で、ガラス転移温度(Tg)が−95℃で、カップリング効率が65%であった。
【0030】
<変性ポリブタジエンゴム(変性BR2)の製造例>
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。該オートクレーブに、触媒成分としてバーサチック酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルミノキサン(MAO、3.6mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH、5.5mmol)およびジエチルアルミニウムクロリド(0.18mmol)のトルエン溶液と、1,3−ブタジエン(4.5mmol)とを40℃で30分間反応熟成させて予備調製した触媒組成物を仕込み、60℃で60分間重合を行った。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。
さらに重合体溶液を温度60℃に保持し、2−シアノピリジン4.16mmolのトル
エン溶液を添加して、15分間反応(一次変性反応)させた。その後、この重合体溶液2
00gを2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液
に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロ
ールで乾燥させて、重合体A(変性ブタジエン系重合体)を得た。得られた重合体Aのシ
ス−1,4結合含量は96.1%であり、1,2−ビニル結合含量は0.62%、Mw/
Mn=2.2であった。
【0031】
次に、上記変性ポリブタジエンゴムを用いて、表1に示す配合処方のゴム組成物を常法に従って調製し、該ゴム組成物をトレッドゴムに適用した、サイズ:11R 22.5の重荷重用タイヤを常法に従って試作し、耐摩耗性及び耐テアー性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0032】
(1)耐テアー性
供試タイヤをトラックのドライブ軸に装着して10万km走行した後のテアーの総長さを測定し、比較例1のテアー総長さの逆数を100として指数表示した。指数値が小さい程、耐テアー性に優れることを示す。
【0033】
(2)耐摩耗性
供試タイヤをトラックのドライブ軸に装着して1万km走行した後の摩耗量を測定し、比較例1の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
*1 (出所)(株)JSR社製 ,(商品名)BR01
*2 CTAB吸着比表面積=83m2/g,DBP吸収量=75cm3/100g
*3 (出所)大内新興化学工業(株)製,(商品名)ノクセラーCZ
*4 式(I):0.506×[CTAB]×[CB含有量]/[変性ゴム含有量]
【0036】
表1から、実施例1〜2及び比較例2〜3のタイヤは、使用したゴム組成物中に変性共役ジエン系ゴムを配合しており、比較例1のタイヤに比べて耐摩耗性を大幅に向上できることが分かる。また、実施例1〜2のタイヤは、比較例2〜3のタイヤと同様に変性共役ジエン系ゴムがゴム組成物に配合されているにもかかわらず、耐摩耗性を高度に維持しながら、比較例2〜3のタイヤに比べて耐テアー性を向上できることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性共役ジエン系ゴムと、カーボンブラックとを含むゴム組成物を用いた空気入りタイヤであって、前記ゴム組成物中の変性共役ジエン系ゴムとカーボンブラックとの関係が、下記式(I):
60 < (0.506×[CTAB]×[CB含有量]/[変性ゴム含有量]) < 80 ・・・(I)
[式中、[CTAB]はカーボンブラックのセチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積(m2/g)であり、[CB含有量]はゴム組成物中のゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部)であり、[変性ゴム含有量]はゴム組成物のゴム成分中に含まれる変性共役ジエン系ゴムの割合(質量%)であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して前記カーボンブラックを40質量部以上含有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート(DBP)吸収量が140cm3/100g以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−104027(P2013−104027A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250087(P2011−250087)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】