説明

空気入りタイヤ

【課題】歪測定精度の低下や、歪センサのセンサ取付け穴からの脱落を抑制できる。
【解決手段】サイドウォール表面をなすサイドウォールゴム3Gの外面3sで開口する有底のセンサ取付け穴11が凹設されたタイヤ本体10、及び、センサ取付け穴11に挿入された歪センサ12を具えた空気入りタイヤ1である。センサ取付け穴11には、歪センサ12の前面12bの少なくとも一部を覆って、該歪センサ12を抜け止めする覆い部20が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部に歪センサが設けられた空気入りタイヤに関し、詳しくは、歪測定精度の低下や、歪センサのセンサ取付け穴からの脱落を抑制できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの少なくとも一方側のサイドウォール部に設けられた複数の有底のセンサ取付け穴に、歪センサが嵌め込まれた空気入りタイヤが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
図10(a)に示されるように、この歪センサaは、センサ取付け穴bから大きな圧縮力を受けた状態で嵌め込まれる。このような歪センサaは、所定のタイヤ回転角度位置にてタイヤ歪を同時に測定でき、タイヤに作用する前後力、横力、及び上下力をそれぞれ推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−221901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサ取付け穴bは、図10(b)、(c)に示されるように、走行中のサイドウォールゴムcの歪によって、大きな引張変形が生じると、その深さが浅くなり、歪センサaが外側へ押し出されやすいという問題があった。
【0006】
このような歪センサaの押し出しは、該歪センサaの配置を不安定にし、歪測定精度の低下や、センサ取付け穴bからの脱落を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、センサ取付け穴に、歪センサの前面の少なくとも一部を覆って、該歪センサを抜け止めする覆い部を設けることを基本として、歪測定精度の低下や、歪センサのセンサ取付け穴からの脱落を抑制できる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスの外側に配されかつ外面がサイドウォール表面をなすサイドウォールゴムとを有し、しかも前記サイドウォールゴムの外面で開口する有底のセンサ取付け穴が凹設されたタイヤ本体、及び、前記センサ取付け穴に挿入されかつ前記サイドウォール部の歪に対応する信号を出力してタイヤに作用する力を検出するための歪センサを具えた空気入りタイヤであって、前記センサ取付け穴は、底部と、該底部の周縁から前記サイドウォールゴムの外面にのびる側壁部とを有し、前記歪センサは、前記底部に装着される背面、この背面と反対側の面である前面、及び前記背面と前記前面との間を継ぐ側面を有し、前記センサ取付け穴には、前記歪センサの前記前面の少なくとも一部を覆って、該歪センサを抜け止めする覆い部が設けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前記覆い部は、前記サイドウォールゴムと一体に設けられたゴムからなる請求項1に記載の空気入りタイヤである。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記センサ取付け穴の前記開口は、正面視において、前記歪センサの歪測定方向に沿った一対の第1開口縁と、前記第1開口縁間を継ぐ一対の第2開口縁とを含む略矩形状に形成され、前記覆い部は、前記サイドウォールゴムの前記外面側に設けられる外端から、前記第1開口縁を横切って前記歪センサの前面で終端する内端までのびる請求項1又は2に記載の空気入りタイヤである。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記覆い部は、前記センサ取付け穴の前記第1開口縁から前記内端までの長さが、前記センサ取付け穴の幅の10〜35%である請求項3に記載の空気入りタイヤである。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、前記覆い部は、前記センサ取付け穴の前記第1開口縁から、前記外端までの長さが、前記センサ取付け穴の幅の30〜75%である請求項3又は4に記載の空気入りタイヤである。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、前記覆い部は、前記サイドウォールゴムの前記外面からの厚さが、前記センサ取付け穴の幅の30〜50%である請求項3乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、前記覆い部の前記第1開口縁に沿った長さは、前記第1開口縁の前記歪測定方向に沿った長さの15〜30%である請求項3乃至6のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、前記センサ取付け穴は、前記歪センサの歪測定方向に沿った孔断面が、前記底部から前記開口側に向かって前記歪測定方向の長さが漸減する蟻溝状をなす請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0016】
また、請求項9記載の発明は、前記孔断面において、前記センサ取付け穴の前記側壁部と、前記サイドウォールゴムの前記外面とが挟む開口出隅角度が70〜85度である請求項8に記載の空気入りタイヤである。
【0017】
また、請求項10記載の発明は、前記歪センサの前記孔断面に対応する断面形状は、前記センサ取付け穴の前記孔断面と相似形をなす請求項8又は9に記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスの外側に配されかつ外面がサイドウォール表面をなすサイドウォールゴムとを有し、しかも前記サイドウォールゴムの外面で開口する有底のセンサ取付け穴が凹設されたタイヤ本体、及びセンサ取付け穴に挿入されかつ前記サイドウォール部の歪に対応する信号を出力してタイヤに作用する力を検出するための歪センサを具える。
【0019】
センサ取付け穴は、底部と、該底部の周縁からサイドウォールゴムの外面にのびる側壁部とを有する。また、歪センサは、底部に装着される背面、この背面と反対側の面である前面、及び背面と前面との間を継ぐ側面を有する。
【0020】
センサ取付け穴には、歪センサの前面の少なくとも一部を覆って、該歪センサを抜け止めする覆い部が設けられる。
【0021】
このような覆い部は、走行中にセンサ取付け穴に生じる大きな引張変形によって、外側へ押し出される歪センサを、その前面を抑えつけて抜け止めできる。これにより、歪センサは、センサ取付け穴に安定して配置されるため、歪測定精度の低下や、センサ取付け穴から脱落するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の空気入りタイヤを示す断面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】(a)、(b)は、センサ取付け穴、歪センサ及び覆い部を示す図2のA−A断面図である。
【図5】(a)は歪センサの平面図、(b)は(a)の斜視図である。
【図6】センサ取付け穴、歪センサ及び覆い部を示す斜視図である。
【図7】(a)、(b)は、他の実施形態の覆い部を示す断面図である。
【図8】空気入りタイヤの加硫工程を説明する断面図である。
【図9】図8のサイドプレートを拡大して示す斜視図である。
【図10】(a)、(b)、(c)は、従来のセンサ取付け穴及び歪センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6を有するタイヤ本体10と、該カーカス6の外側に配されかつサイドウォールゴム3Gの外面3sで開口する有底のセンサ取付け穴11に挿入されかつサイドウォール部3の歪に対応する信号を出力する歪センサ12とを具え、乗用車用のラジアルタイヤとして構成される。
【0024】
本実施形態のタイヤ本体10は、前記カーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7と、該カーカス6の外側に配されかつ外面3sがサイドウォール表面をなすサイドウォールゴム3Gとを有する。
【0025】
前記カーカス6は、少なくとも1枚以上、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aにより構成される。このカーカスプライ6Aは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aからのびてビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含む。また、本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびかつ硬質ゴムからなるビードエーペックス8が配され、ビード部4が適宜補強される。
【0026】
前記カーカスプライ6Aは、タイヤ赤道Cに対して例えば70〜90度の角度で配列されたカーカスコードを有する。このカーカスコードとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、又はアラミドなどの有機繊維コードが好適に採用される。
【0027】
前記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道Cに対して例えば10〜40度の小角度で傾けて配列した少なくとも2枚、本実施形態ではタイヤ半径方向に内、外2枚のベルトプライ7A、7Bを、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わせて構成される。本実施形態のベルトコードには、スチールコードが採用されるが、アラミド、又はレーヨン等の高弾性の有機繊維コードも必要に応じて用いることができる。
【0028】
前記サイドウォールゴム3Gは、そのゴム硬度が、例えば48〜53度の軟質のゴムからなり、カーカス6を外傷から保護する。なお、ゴム硬度は、JIS−K6253に準拠し、23℃の環境下におけるデュロメータータイプAによる硬さとする。
【0029】
前記センサ取付け穴11は、図2に示されるように、サイドウォールゴム3Gの外面3sに、少なくとも1個以上、本実施形態では6個凹設される。なお、このセンサ取付け穴11が複数個凹設される場合には、測定制御の簡便性等の観点より、タイヤ軸心を中心とした同一円周線i上に等間隔で凹設されるのが好ましい。
【0030】
また、センサ取付け穴11の前記開口11oは、図3に拡大して示されるように、正面視において、前記歪センサ12の歪測定方向Fに沿った一対の第1開口縁18、18と、前記第1開口縁18、18間を継ぐ一対の第2開口縁19、19とを含み、略矩形状に形成される。さらに、本実施形態のセンサ取付け穴11は、一対の第1開口縁18、18間の中心線である幅中心線11cが歪測定方向Fと一致している。
【0031】
このようなセンサ取付け穴11は、歪測定方向Fへの変形を、歪センサ12に正確に伝えることができ、歪測定精度を向上させるのに役立つ。また、幅中心線11cは、タイヤ半径方向線に対する角度θが、例えば30〜60度、本実施形態では45度に設定される。
【0032】
図4(a)に示されるように、センサ取付け穴11は、前記幅中心線11cに沿った孔断面において、サイドウォールゴム3Gの外面3sと略平行にのびる底部11aと、該底部11aの両端から該外面3sにのびる側壁部11sとを有する。
【0033】
また、本実施形態のセンサ取付け穴11は、歪センサ12を装着する前の自由状態において、前記孔断面が、底部11aのから開口11o側に向かって歪測定方向Fの長さL1aが漸減する蟻溝状をなしている。
【0034】
前記「自由状態」とは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態において、歪センサ12を装着する前の状態とする。なお、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、前記自由状態において特定される値とする。
【0035】
また、前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
【0036】
さらに「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には一律に180kPaとする。
【0037】
このようなセンサ取付け穴11は、図4(b)に示されるように、歪センサ12が挿入されても開口11o側が大きく広がるのを抑制でき、歪センサ12をより確実に係止できる。
【0038】
上記のような作用を効果的に発揮するために、前記孔断面において、センサ取付け穴11の側壁部11sと、サイドウォールゴム3Gの外面3sとが挟む開口出隅角度α1(図4(a)に示す)が70〜85度であるのが望ましい。なお、前記開口出隅角度α1が85度を超えると、歪センサ12を十分に係止できないおそれがある。逆に、前記開口出隅角度α1が70度未満であっても、歪センサ12を過度に圧縮させてしまい、歪出力が小さくなるおそれがある。
【0039】
次に、前記歪センサ12は、図4(a)、に示されるように、前記孔断面に対応する断面形状において、センサ取付け穴11の底部11aに装着される背面12a、この背面12aと反対側の面である前面12b、及び該背面12aと該前面12bとの間を継ぐ側面12sを有し、ブロック状に形成される。
【0040】
また、歪センサ12は、センサ取付け穴11に挿入される前の断面形状が、センサ取付け穴11の前記自由状態における前記孔断面の形状よりも大に形成される。
【0041】
このような歪センサ12は、歪みの測定値に大きな影響を与える接着剤等を用いることなく、センサ取付け穴11に摩擦力を利用して取り付けできるため、測定精度を向上できる。しかも、歪センサ12は、歪測定方向Fに予め圧縮されて取り付けられるため、圧縮歪の測定のみならず、センサ取付け穴11の引張変形に追従して復元することで、引張歪も測定できる。
【0042】
さらに、歪センサ12は、前記孔断面に対応する断面形状が、センサ取付け穴11の孔断面と相似形をなすのが望ましい。このような歪センサ12は、図4(b)に示されるように、センサ取付け穴11からの圧力を、該歪センサ12の厚さ方向で略均一にすることができ、歪出力の大きさ(ゲイン)のバラツキを抑制しうる。
【0043】
図5(a)、(b)に示されるように、歪センサ12は、ゴム弾性材からなるゴム基体13と、該ゴム基体13に埋設され磁石14と、該ゴム基体13に埋設されかつ磁石14と間隔を有して向き合う磁気センサ素子15と、測定された歪出力を電気信号に変換して、車両に設ける車両制御システムの電子制御装置(ECU)に発信する発信手段(図示省略)とを含んで構成される。
【0044】
本実施形態の歪センサ12は、1つの磁石14と1つの磁気センサ素子15とで形成した1−1タイプが例示されるが、例えば、1つの磁石14と複数(n個、例えば2個)の磁気センサ素子15とで形成した1−nタイプや複数(n個、例えば2個)の磁石14と1つの磁気センサ素子15とで形成したn−1タイプ等のものも採用できる。
【0045】
前記ゴム基体13をなすゴム弾性材は、既加硫のゴムであり、例えば、生のゴム基体内に磁石14と磁気センサ素子15とを埋設したものを、金型にて加硫成形することにより形成される。また、ゴム弾性材は、サイドウォールゴム3G(図1に示す)よりも軟質のゴムからなり、該サイドウォールゴム3Gのゴム硬度との差が、例えば0〜15度程度に設定される。
【0046】
また、磁石14には、例えば、高い磁束密度が得られる希土類磁石が好適に採用でき、とりわけ、加硫時の熱の影響を受けにくいサマリウムコバルト磁石(所謂サマコバ磁石)が望ましい。図中の符号14sは、磁石14の磁極面を示している。
【0047】
前記磁気センサ素子15には、加硫時の熱に耐えうるものが採用され、例えば、ホール素子、及びMR素子(磁気抵抗効果素子)、TMF−MI素子、TMF−FG素子、アモルファスセンサ等が採用でき、特にコンパクトさ、感度、取り扱い易さ等の観点からホール素子が好適に採用できる。符号15sは磁気センサ素子15の受感部面を示している。
【0048】
前記発信手段は、送受信回路、制御回路、メモリー等をチップ化した半導体と、アンテナとから構成され、前記電子制御装置(ECU)からの質問電波を受信したとき、これを電気エネルギーとして使用しメモリー内の歪出力データを応答電波として発信できる。
【0049】
図中において、符号Gmは、歪センサ12の歪出力の大きさ(ゲイン)が最大となるゲイン最大線を示している。このゲイン最大線Gmは、歪センサ12の平面視において、該歪センサ12の幅中心線12cと一致して設けられるのが望ましい。これにより、歪センサ12は、センサ取付け穴11に挿入された状態において、ゲイン最大線Gmを、センサ取付け穴11の歪測定方向Fへの変形が正確に伝わりやすい幅中心線11c(図2に示す)に一致させることができ、測定精度を向上できる。
【0050】
そして、本実施形態のタイヤ1には、図6に示されるように、センサ取付け穴11に、歪センサ12の前面12bの少なくとも一部を覆う覆い部20が設けられる。
【0051】
本実施形態の覆い部20は、サイドウォールゴム3Gの外面3sから隆起して形成された直方体状をなし、各センサ取付け穴11に2つ設けられる。この覆い部20は、前記外面3s側に設けられる外端20oから、センサ取付け穴11の開口11oを横切って、歪センサ12の前面12bで終端する内端20iまでのびる。
【0052】
また、前記覆い部20は、前記開口11oから歪センサ12の前面12b側へのび、かつ該前面12bに当接する内面20A、該内面20Aと反対側の面である外面20B、並びに、該内面20Aと該外面20Bとの間、及びサイドウォールゴム3Gの外面3sと該外面20Bとの間を継ぐ側面20Cを有する。
【0053】
このような覆い部20は、走行中にセンサ取付け穴11に生じる大きな引張変形によって、外側へ押し出されがちな歪センサ12を抑えつけて抜け止めできる。これにより、歪センサ12は、センサ取付け穴11内に安定して配置されるため、歪測定精度の低下や、センサ取付け穴11から脱落するのを抑制できる。
【0054】
なお、前記覆い部20は、センサ取付け穴11の開口11oのうち、各第1開口縁18、18を横切って配置されるのが望ましい。これにより、覆い部20が、歪センサ12の歪測定方向Fへの変形を阻害するのを抑制でき、歪出力が小さくなるのを防ぎうる。
【0055】
さらに、覆い部20は、サイドウォールゴム3Gと一体に設けられたゴムから形成されるのが望ましい。このような覆い部20は、例えば、歪みの測定値に大きな影響を与える接着剤等が用いられることなく、センサ取付け穴11に取り付けられるため、歪センサ12の測定精度が低下するのを抑制できる。
【0056】
上記のような作用を効果的に発揮するために、覆い部20の第1開口縁18から内端20iまでの長さL2aと、センサ取付け穴11の幅W1との比L2a/W1は、10〜35%が望ましい。なお、前記比L2a/W1が10%未満であると、覆い部20の内面20Aの長さが小さくなり、歪センサ12を十分に抑えつけることができないおそれがある。逆に、前記比L2a/W1が35%を超えても、覆い部20のゴム量が過大となり、製造コストが増大するおそれがあるとともに、後述するタイヤ1の加硫工程において、成形不良が発生するおそれがある。このような観点より、前記比L2a/W1は、より好ましくは15%以上が望ましく、また、より好ましくは30%以下が望ましい。
【0057】
同様の観点より、前記覆い部20のサイドウォールゴム3Gの外面3sからの厚さW2と、センサ取付け穴11の幅W1との比W2/W1は、好ましくは30%以上、さらに好ましくは33%以上が望ましく、また、好ましくは50%以下、さらに好ましくは42%以下が望ましい。
【0058】
また、覆い部20の第1開口縁18から前記外端20oまでの長さL2bと、センサ取付け穴11の幅W1との比L2b/W1が30〜75%が望ましい。なお、前記比L2b/W1が30%未満であると、覆い部20の剛性を維持することができず、歪センサ12を十分に抜け止めできないおそれがある。逆に、前記比L2b/W1が75%を超えても、覆い部20のゴムの量が過大となり、製造コストが増大するおそれがある。このような観点より、前記比L2b/W1は、より好ましくは33%以上が望ましく、より好ましくは67%以下が望ましい。
【0059】
さらに、図3に示されるように、覆い部20の第1開口縁18に沿った長さL2cと、第1開口縁18の歪測定方向Fに沿った長さL1bとの比L2c/L1bは、15〜30%が望ましい。なお、前記比L2c/L1bが15%未満であると、覆い部20が歪センサ12の前面12bを十分に抑えつけることができないおそれがある。逆に、前記比L2c/L1bが30%を超えても、歪センサ12の歪測定方向への変形を阻害し、歪出力の大きさ(ゲイン)を小さくするおそれがある。このような観点より、前記比L2c/L1bは、より好ましくは18%以上が望ましく、また、より好ましくは27%以下が望ましい。
【0060】
本実施形態では、直方体状に形成された覆い部20が示されたが、これに限定されるわけではなく、例えば、図7(a)に示される側面視半円状や、図7(b)に示される台形状に形成されてもよい。このような覆い部20は、歪センサ12の前面12bへの接触面積を維持しつつ、加硫時や、歪センサ12の嵌め込み時において、該覆い部20に、歪が集中するのを防ぎうる。
【0061】
上記のような覆い部20及びセンサ取付け穴11を有するタイヤ1は、図8に示されるように、加硫工程において、サイドウォール部3を成形するサイドウォール成形面25sを有するサイドプレート25を含んだ加硫金型24と、生タイヤ1Lを加硫金型24の成形面側へ押し付ける風船状のブラダー28を用いて形成される。
【0062】
前記サイドプレート25は、図9(a)に示されるように、前記サイドウォール成形面25sを有する基部25Aと、該サイドウォール成形面25sに取付けられる凸片25Bとを含んで構成される。この凸片25Bは、例えば、ネジ等の固着具(図示省略)によって、着脱自在に固着される。
【0063】
前記基部25Aには、サイドウォール成形面25sからタイヤ軸方向外側へ凹む一対の凹部26、26と、該凹部26、26間を横切ってのびる溝部27とを含む。
【0064】
前記凹部26は、前記覆い部20の外面20B(図6に示す)及び側面20Cを形成する成形面26sが設けられる。また、溝部27は、凸片25Bの一部を嵌め込み可能に凹設され、該凸片25Bを位置決めしうる。さらに、溝部27には、凸片25Bを固着する固着具(図示省略)を挿通させるネジ孔31が設けられる。
【0065】
前記凸片25Bは、図9(b)に示されるように、そのサイドウォール成形面25s側の一部が、前記基部25Aの溝部27に嵌め込まれることにより、該溝部27からタイヤ内側へ突出する部分が、センサ取付け穴11(図1に示す)と相似形をなしている。
【0066】
また、凸片25Bには、前記覆い部20の内面20A(図6に示す)を形成する成形面33sを有する凹部33が設けられる。この成形面33s及び前記凹部26の成形面26sは、凸片25Bが溝部27に嵌め込まれることにより、前記覆い部20と相似形をなす成形面34を形成しうる。
【0067】
このようなサイドプレート25は、図8に示されるように、加硫時において、生タイヤ1Lのサイドウォールゴム3Gが、ブラダー28等によって押し付けられると、凸片25Bが該サイドウォールゴム3Gに食い込むととともに、該サイドウォールゴム3Gの一部が凹部26、26に浸入する。
【0068】
そして、加硫後に、サイドプレート25をタイヤ1から離間させて、凸片25Bをサイドウォールゴム3Gから抜き取り、さらに、凹部26、26に侵入したゴムを弾性変形させて抜き取ることにより、図1に示される覆い部20及びセンサ取付け穴11を具えたタイヤ1が形成される。
【0069】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0070】
図1に示す基本構造をなし、表1に示すセンサ取付け穴及び覆い部を有するタイヤが製造され、それらの性能が評価された。また、比較として、覆い部を有さないタイヤ(比較例1)についても同様に評価された。なお、共通仕様は以下のとおりである。
タイヤサイズ:245/40 R18
リムサイズ:18×8JJ
センサ取付け穴:
幅W1:6.0mm
第1開口縁の歪測定方向に沿った長さL1b:9.4mm
センサ取付け穴の開口出隅角度α1:81度
テスト方法は、次のとおりである。
【0071】
<覆い部の成形性>
各供試タイヤを加硫金型に挿入して加硫成形し、覆い部にゴム欠けやクラック等の成形不良が発生したかを目視にて確認した。評価は次の通りである。
○:成形不良は発生しなかった。
×:成形不良が発生した。
【0072】
<歪測定精度の低下(0点シフト)の有無>
各供試タイヤを上記リムにリム組みし、内圧230kPa充填して、荷重6370N負荷させて、直径1.7mのドラム試験機上を、各スリップ角(±10度)ごとに、速度20km/hで20秒間走行させて、走行前と走行後とで、タイヤを無負荷にした状態における歪センサの電圧が変化(0点シフト)したかを確認した。評価は次のとおりである。
○:歪センサの電圧の変化(0点シフト)が全く発生しなかった。
△:歪センサの電圧の変化(0点シフト)が僅かに発生した
×:歪センサの電圧の変化(0点シフト)が発生した。
【0073】
<歪センサの耐脱落性能>
各供試タイヤを上記リムに上記条件でリム組みして、上記ドラム試験機上を、各スリップ角(±10度)ごとに、速度20km/hで20秒間走行させて、歪センサの脱落の有無を目視にて確認した。評価は次のとおりである。
○:歪センサの脱落が全く発生しなかった。
△:歪センサが一部脱落した。
×:歪センサの全てが脱落した。
【0074】
<歪出力の大きさ(ゲイン)>
各供試タイヤを上記リムに上記条件でリム組みして、ドラム試験機上を走行させ、スリップ角を増減(0〜2度)させたときの歪出力の大きさ(ゲイン)の最大値を比較例1を100とする指数で表示している。数値が大きいほどゲインが大きく良好である。
テストの結果を表1に示す。
【0075】
【表1】


【0076】
テストの結果、実施例のタイヤは、歪測定精度の低下や、歪センサのセンサ取付け穴からの脱落を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0077】
1 空気入りタイヤ
11 センサ取付け穴
12 歪センサ
20 覆い部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスの外側に配されかつ外面がサイドウォール表面をなすサイドウォールゴムとを有し、しかも前記サイドウォールゴムの外面で開口する有底のセンサ取付け穴が凹設されたタイヤ本体、及び、
前記センサ取付け穴に挿入されかつ前記サイドウォール部の歪に対応する信号を出力してタイヤに作用する力を検出するための歪センサを具えた空気入りタイヤであって、
前記センサ取付け穴は、底部と、該底部の周縁から前記サイドウォールゴムの外面にのびる側壁部とを有し、
前記歪センサは、前記底部に装着される背面、この背面と反対側の面である前面、及び前記背面と前記前面との間を継ぐ側面を有し、
前記センサ取付け穴には、前記歪センサの前記前面の少なくとも一部を覆って、該歪センサを抜け止めする覆い部が設けられることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記覆い部は、前記サイドウォールゴムと一体に設けられたゴムからなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センサ取付け穴の前記開口は、正面視において、前記歪センサの歪測定方向に沿った一対の第1開口縁と、前記第1開口縁間を継ぐ一対の第2開口縁とを含む略矩形状に形成され、
前記覆い部は、前記サイドウォールゴムの前記外面側に設けられる外端から、前記第1開口縁を横切って前記歪センサの前面で終端する内端までのびる請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記覆い部は、前記センサ取付け穴の前記第1開口縁から前記内端までの長さが、前記センサ取付け穴の幅の10〜35%である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記覆い部は、前記センサ取付け穴の前記第1開口縁から、前記外端までの長さが、前記センサ取付け穴の幅の30〜75%である請求項3又は4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記覆い部は、前記サイドウォールゴムの前記外面からの厚さが、前記センサ取付け穴の幅の30〜50%である請求項3乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記覆い部の前記第1開口縁に沿った長さは、前記第1開口縁の前記歪測定方向に沿った長さの15〜30%である請求項3乃至6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記センサ取付け穴は、前記歪センサの歪測定方向に沿った孔断面が、前記底部から前記開口側に向かって前記歪測定方向の長さが漸減する蟻溝状をなす請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記孔断面において、前記センサ取付け穴の前記側壁部と、前記サイドウォールゴムの前記外面とが挟む開口出隅角度が70〜85度である請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記歪センサの前記孔断面に対応する断面形状は、前記センサ取付け穴の前記孔断面と相似形をなす請求項8又は9に記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−107460(P2013−107460A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252983(P2011−252983)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】