説明

空気入りタイヤ

【課題】高速耐久性を損なうことなく、生産性の向上及び転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤ16の提供。
【解決手段】このタイヤ16は、ベルト26とトレッドとの間に位置してこのベルト26を覆うバンド28を備える。バンド28は、センター部44と、一対のミドル部46と、一対のサイド部48とを備える。バンド28の赤道面からその端64までの部分は、コードを含むリボン50を用いて形成される。リボン50は、赤道面からベルト26の端58に向かって螺旋状に巻回される。センター部44におけるリボン50の送り量の、このリボン50の幅に対する比は、1である。ミドル部46におけるリボン50の送り量の、このリボン50の幅に対する比は、0.6以上0.8以下である。サイド部48において、リボン50は二重に巻回される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明は、ジョイントレス構造を有するバンドを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには、ベルトとトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドが設けられることがある。バンドは、コードを含んでいる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンドは、いわゆるジョイントレス構造を有する。
【0003】
ベルトの全域を覆うバンドでは、ベルトの端の部分の拘束力が十分でない。高速耐久性の観点から、バンドがベルトの端の部分を十分に拘束できるように、このバンドの構成について様々な検討がなされている。この検討例が、特開2000−062412公報及び特開2007−168554公報に開示されている。
【0004】
図5に示されているのは、従来のタイヤのバンド2の形成の様子である。バンド2は、リボン4を螺旋状に巻回して形成される。図示されていないが、リボン4はその長さ方向に延びるコードを含んでいる。図5中、一点鎖線CLはこのタイヤの赤道面を表している。
【0005】
このタイヤの製造方法では、バンド2の形成に際して2本のリボン4a、4bが準備される。それぞれのリボン4の先端は、赤道面においてベルト6に積層される。このリボン4は、赤道面からベルト6の端8に向かって、螺旋状に巻回される。これにより、バンド2は形成される。
【0006】
リボン4の巻き付けは、タイヤの性能に影響する。このため、バンド2の形成方法について、様々な検討がなされている。この検討例が、特開2011−136669公報、特開2001−063311公報及び特開平08−040013号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−062412公報
【特許文献2】特開2007−168554公報
【特許文献3】特開2011−136669公報
【特許文献4】特開2001−063311公報
【特許文献5】特開平08−040013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示されたバンド2は、赤道上に位置するセンター部10と、それぞれがこのセンター部10の軸方向外側に位置する一対のミドル部12と、それぞれがこのミドル部12の軸方向外側に位置する一対のサイド部14とから構成されている。この図5において、両矢印Wはリボン4の幅を表している。両矢印Pmは、ミドル部12におけるリボン4の送り量を表している。
【0009】
このタイヤの製造方法では、バンド2の形成に際し、ミドル部12におけるリボン4の送り量Pmの、リボン4の幅Wに対する比は0.5に設定されている。このミドル部12では、リボン4は過剰に巻かれている。過剰なリボン4の使用は、生産性及びコストに影響する。
【0010】
この製造方法では、バンド2のサイド部14において、リボン4が三重に重ね合わされた部分が形成される。このサイド部14には、タイヤの成形時にエアが残りやすい。エア残りは、タイヤの品質に影響する。
【0011】
リボン4が三重に重ね合わされた部分の存在は、トレッドの厚みを不足させる恐れがある。トレッドの厚みが不足し、かつ、このリボン4が三重に重ね合わされた部分の直上にラグ溝が存在する場合、このラグ溝において溝割れが発生することがある。溝割れの発生防止の観点から、大きな厚みを有するトレッドを採用すると、タイヤの転がり抵抗が増大してしまう。
【0012】
本発明の目的は、高速耐久性を損なうことなく、生産性の向上及び転がり抵抗の低減が達成された空気入りタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトと、このベルトとこのトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドとを備えている。このバンドは、赤道面上に位置するセンター部と、それぞれがこのセンター部の軸方向外側に位置する一対のミドル部と、それぞれがこのミドル部の軸方向外側に位置する一対のサイド部とを備えている。このバンドの赤道面からその端までの部分は、コードを含むリボンを用いて形成されている。このリボンは、赤道面から上記ベルトの端に向かって螺旋状に巻回されている。上記センター部における上記リボンの送り量の、このリボンの幅に対する比は、1である。上記ミドル部におけるこのリボンの送り量の、このリボンの幅に対する比は、0.6以上0.8以下である。上記サイド部において、このリボンは二重に巻回されている。
【0014】
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記リボンの幅は7.0mm以上22mm以下である。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、回転可能な円筒状のドラムと、リボンを送り出すとともに軸方向に移動可能な2つのヘッドとを備えたフォーマーにおいて、実施される。この製造方法は、
(1)上記ドラムにシートが巻回され、ベルトが形成される工程と、
(2)それぞれのヘッドから上記リボンが送り出され、このリボンの先端が赤道面において上記ベルトに積層される工程と、
(3)上記ドラムを回転させるとともに赤道面から上記ベルトのそれぞれの端に向かってそれぞれのヘッドを軸方向に移動させて上記リボンを螺旋状に巻回すことにより、赤道面上に位置するセンター部とそれぞれがこのセンター部の軸方向外側に位置する一対のミドル部とそれぞれがこのミドル部の軸方向外側に位置してする一対のサイド部とを備えたバンドが形成される工程と
を含む。このバンドの形成工程では、上記センター部における上記リボンの送り量の、このリボンの幅に対する比は1である。このミドル部におけるこのリボンの送り量の、このリボンの幅に対する比は、0.6以上0.8以下である。このサイド部において、このリボンは二重に巻回されている。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記リボンの幅は7.0mm以上22mm以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤでは、高速耐久性を損なうことなく、生産性の向上及び転がり抵抗の低減が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1のタイヤのバンドの形成に用いられたリボンの一部が示された断面斜視図である。
【図3】図3は、図1のタイヤの製造の様子が示された模式図である。
【図4】図4は、図1のタイヤのバンドの形成の様子が示された模式図である。
【図5】図5は、従来のタイヤのバンドの形成の様子が示された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1には、空気入りタイヤ16が示されている。図1において、上下方向がタイヤ16の半径方向であり、左右方向がタイヤ16の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ16の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ16の赤道面を表わす。このタイヤ16の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0021】
このタイヤ16は、トレッド18、サイドウォール20、ビード22、カーカス24、ベルト26、バンド28及びインナーライナー30を備えている。このタイヤ16は、チューブレスタイプである。このタイヤ16は、乗用車に装着される。
【0022】
トレッド18は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド18は、路面と接地するトレッド面32を形成する。図示されていないが、このトレッド面32には溝が刻まれている。この溝により、トレッドパターンが形成されている。トレッド18は、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0023】
サイドウォール20は、トレッド18の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール20は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール20は、カーカス24の損傷を防止する。
【0024】
ビード22は、サイドウォール20の半径方向略内側に位置している。ビード22は、コア34と、このコア34から半径方向外向きに延びるエイペックス36とを備えている。コア34はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス36は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス36は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0025】
カーカス24は、カーカスプライ38からなる。カーカスプライ38は、両側のビード22の間に架け渡されており、トレッド18及びサイドウォール20に沿っている。カーカスプライ38は、コア34の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ38には、主部40aと折り返し部40bとが形成されている。
【0026】
カーカスプライ38は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス24はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。カーカス24が、2枚以上のカーカスプライ38から形成されてもよい。
【0027】
ベルト26は、トレッド18の半径方向内側に位置している。ベルト26は、カーカス24と積層されている。ベルト26は、カーカス24を補強する。ベルト26は、内側層42a及び外側層42bからなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層42aの幅は外側層42bの幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層42a及び外側層42bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層42aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層42bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト26の軸方向幅は、タイヤ16の最大幅の0.7倍以上が好ましい。ベルト26が、3以上の層42を備えてもよい。
【0028】
バンド28は、ベルト26の半径方向外側に位置している。バンド28は、ベルト26とトレッド18との間に位置してこのベルト26を覆っている。図1から明らかなように、軸方向において、バンド28の幅はベルト26の幅よりも大きい。図示されていないが、バンド28は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド28は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト26が拘束されるので、ベルト26のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0029】
このタイヤ16では、バンド28は、センター部44と、一対のミドル部46と、一対のサイド部48とを備えている。センター部44は、赤道上に位置している。それぞれのミドル部46は、センター部44の軸方向外側に位置している。それぞれのサイド部48は、ミドル部46のさらに軸方向外側に位置している。
【0030】
このタイヤ16では、バンド28は図2に示されたリボン50を用いて形成される。このリボン50は、並列された複数のコード52とトッピングゴム54とからなる。これらコード52のそれぞれは、このリボン50の長さ方向に延在している。図示されているように、このタイヤ16のバンド28の形成に用いられたリボン50は8本のコード52を含んでいる。このリボン50に含まれるコード52の本数は、タイヤ16の仕様、加工性等が考慮され適宜決められる。
【0031】
図2において、両矢印Wはリボン50の幅を表している。この製造方法では、リボン50の幅Wは7.0mm以上22mm以下が好ましい。この幅Wが7.0mm以上に設定されることにより、バンド28の形成に要する時間の短縮化を図ることができる。このリボン50は、タイヤ16の生産性に寄与しうる。この観点から、この幅Wは10mm以上がより好ましい。この幅Wが22mm以下に設定されることにより、リボン50を巻き付けるための作業性が適切に維持される。このリボン50を用いたバンド28の形成は容易である。この観点から、この幅Wは15mm以下がより好ましい。
【0032】
このタイヤ16は、次のようにして製造される。複数のコード52をトッピングゴム54とともに押し出しして、リボン50が得られる。この製造方法では、2本のリボン50(以下、第一リボン50a及び第二リボン50b)が準備される。これらリボン50は、他の部材とともにフォーマー(図示されず)に供給される。
【0033】
フォーマーは、円筒状のドラム、第一ヘッド及び第二ヘッドを備えている。ドラムは、回転可能である。第一ヘッドは、第一リボン50aを送り出す。第一ヘッドは、軸方向に移動しうる。この第一ヘッドは、第一リボン50aを送り出すとともに軸方向に移動可能である。第二ヘッドは、第二リボン50bを送り出す。第二ヘッドは、軸方向に移動しうる。この第二ヘッドは、第二リボン50bを送り出すとともに軸方向に移動可能である。
【0034】
この製造方法では、ドラムを回転させることにより、カーカスプライ38がこのドラムに巻回される。これにより、筒状のカーカスプライ38が得られる。筒状のカーカスプライ38に第一シートが巻回され、ベルト26の一部をなす内側層42aが形成される。この内側層42aに第二シートが巻回され、ベルト26の他の一部をなす外側層42bが形成される。これにより、ベルト26が得られる。このベルト26上に第一リボン50a及び第二リボン50bが巻回され、バンド28が形成される。
【0035】
図3に示されているように、この製造方法では、第一リボン50aが第一ヘッドから送り出され、この第一リボン50aの先端56aが赤道面においてベルト26に積層される。より詳細には、第一リボン50aは、その先端56aにおけるベルト26の第二端58bの側の縁60b(以下、第二縁)が赤道面に一致するようにベルト26に積層される。第二リボン50bが第二ヘッドから送り出され、この第二リボン50bの先端56bが赤道面においてベルト26に積層される。より詳細には、第二リボン50bは、その先端56bにおけるベルト26の第一端58aの側の縁62a(以下、第一縁)が赤道面に一致するようにベルト26に積層される。この製造方法では、第一リボン50aの先端56aと第二リボン50bの先端56bとの境界は、赤道面上に位置している。
【0036】
第一リボン50aの先端56a及び第二リボン50bの先端56bがベルト26に積層されると、ドラムの回転が開始される。図3中、矢印Aで示された方向がこのドラムの回転方向である。この製造方法では、このドラムの回転が開始されると同時に、第一ヘッド及び第二ヘッドの移動が開始される。図3中、矢印B1で示された方向が第一ヘッドの移動方向であり、矢印B2で示された方向が第二ヘッドの移動方向である。この製造方法では、ドラムの回転方向はタイヤ16の周方向と一致している。第一ヘッド及び第二ヘッドの移動方向は、タイヤ16の軸方向に一致している。
【0037】
この製造方法では、第一ヘッドは第一リボン50aを送り出しながら赤道面からベルト26の第一端58aに向かって軸方向に移動させられる。この移動とともにドラムが回転させられるので、第一リボン50aはベルト26上を螺旋状に巻回される。言い換えれば、この製造方法では、ドラムを回転させるとともに赤道面からベルト26の第一端58aに向かって第一ヘッドを軸方向に移動させることにより、第一リボン50aが螺旋状に巻回される。
【0038】
この製造方法では、第二ヘッドは第二リボン50bを送り出しながら赤道面からベルト26の第二端58bに向かって軸方向に移動させられる。この移動とともにドラムが回転させられるので、第二リボン50bはベルト26上を螺旋状に巻回される。言い換えれば、この製造方法では、ドラムを回転させるとともに赤道面からベルト26の第二端58bに向かって第二ヘッドを軸方向に移動させることにより、第二リボン50bが螺旋状に巻回される。
【0039】
この製造方法では、バンド28の赤道面からその第一端64aまでの部分は第一リボン50aを用いて形成される。バンド28の赤道面からその第二端64bまでの部分は第二リボン50bを用いて形成される。この製造方法では、バンド28の赤道面からその端64までの部分は1本のリボン50を用いて形成されている。
【0040】
この製造方法では、バンド28の形成が完了すると、トレッド18等の部材がさらに組み合わされる。これにより、ローカバー(未架橋タイヤとも称される)が得られる。
【0041】
この製造方法では、ローカバーはモールド(図示されず)に投入される。これにより、ローカバーの外面がモールドのキャビティ面と当接する。ローカバーの内面は、ブラダー又は中子に当接する。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ16が得られる。
【0042】
図4に示されているのは、形成途中にあるバンド28である。このタイヤ16のバンド28には、リボン50が一重に巻回されている部分と、リボン50の一部がその他の一部と重複するように巻回されている部分と、リボン50が二重に巻回されている部分とが形成されている。
【0043】
このタイヤ16では、リボン50が一重に巻回されている部分がセンター部44である。リボン50の一部がその他の一部と重複するように巻回されている部分が、ミドル部46である。リボン50が二重に巻回されている部分が、サイド部48である。
【0044】
バンド28のセンター部44においては、ベルト26に積層される第一リボン50aの第二縁60bは、既に積層されているこの第一リボン50aの、ベルト26の第一端58a側の縁60a(以下、第一縁)に合わせられる。このセンター部44においては、ベルト26に積層される第二リボン50bの第一縁62aは、既に積層されているこの第二リボン50bの、ベルト26の第二端58b側の縁62b(以下、第二縁)に合わせられる。
【0045】
この製造方法では、バンド28のセンター部44における第一リボン50aの送り量はこの第一リボン50aの幅と同等である。このセンター部44における第二リボン50bの送り量は、この第二リボン50bの幅と同等である。言い換えれば、このセンター部44におけるリボン50の送り量(図4中の両矢印Pc)の、このリボン50の幅(図2中の両矢印W)に対する比は1である。この製造方法により得られるタイヤ16では、その赤道の部分の剛性は過大でない。このセンター部44は、タイヤ16のトラクション性能に寄与しうる。
【0046】
この製造方法では、バンド28の一方のミドル部46では、積層される第一リボン50aの一部が、既に積層されているこの第一リボン50aの他の一部と重ね合わされている。このミドル部46には、第一リボン50aの一部がこの第一リボン50aの他の一部と重複している部分と、この他の一部と重複していない部分とが混在している。
【0047】
この製造方法では、バンド28の他方のミドル部46では、積層される第二リボン50bの一部が、既に積層されているこの第二リボン50bの他の一部と重ね合わされている。このミドル部46には、第二リボン50bの一部がこの第二リボン50bの他の一部と重複している部分と、この他の一部と重複していない部分とが混在している。
【0048】
このタイヤ16では、そのバンド28のミドル部46には、リボン50の一部がこのリボン50の他の一部と重複している部分が存在している。この重複は、バンド28によるベルト26の拘束力に寄与しうる。このミドル部46は、ベルト26の端58の部分を効果的に拘束しうる。このタイヤ16では、ベルト26のリフティングが抑制される。このタイヤ16は、高速耐久性に優れる。
【0049】
このタイヤ16では、そのバンド28のミドル部46には、リボン50の一部がこのリボン50の他の一部と重複していない部分が存在している。このミドル部46では、リボン50は密に巻かれていない。このミドル部46は、このタイヤ16の生産性の向上及びコストの低減に寄与しうる。
【0050】
この製造方法では、ミドル部46におけるリボン50の送り量(図4中の両矢印Pm)、このリボン50の幅Wに対する比は0.6以上0.8以下である。この比が0.6以上に設定されることにより、ミドル部46がタイヤ16の生産性の向上及びコストの低減に寄与しうる。この観点から、この比は0.65以上がより好ましい。この比が0.8以下に設定されることにより、ミドル部46がベルト26を効果的に拘束しうる。このタイヤ16では、ベルト26のリフティングが抑制される。このタイヤ16は、高速耐久性に優れる。この観点から、この比は0.75以下が好ましい。
【0051】
この製造方法では、バンド28の一方のサイド部48では、送り量が第一リボン50aの幅Wと同等に設定されて第一リボン50aが巻かれた後、第一ヘッドの移動を停止させて、さらにこの第一リボン50aが巻かれている。これにより、第一リボン50aが二重に巻回されたサイド部48が形成されている。このバンド28の他方のサイド部48においても同様に、送り量が第二リボン50bの幅Wと同等に設定されて第二リボン50bが巻かれた後、第二ヘッドの移動を停止させて、さらにこの第二リボン50bが巻かれている。これにより、第二リボン50bが二重に巻回されたサイド部48が形成されている。
【0052】
このタイヤ16では、バンド28のサイド部48はベルト26の端58を覆う。このサイド部48では、リボン50が二重に巻回されている。このサイド部48は、ベルト26の端58を十分に拘束する。ベルト26のリフティングが抑制されるので、このタイヤ16は高速耐久性に優れる。
【0053】
このタイヤ16では、バンド28のサイド部48には、リボン50が三重に重ね合わされている部分は形成されない。このサイド部48には、エアは残りにくい。エア残りが抑えられるので、この製造方法では、高品質なタイヤ16が安定に製造されうる。しかも、このタイヤ16では、溝割れ防止のために、トレッド18が大きな厚みを有する必要はない。このタイヤ16のトレッド18は、適度な厚みを有する。このサイド部48は、タイヤ16の転がり抵抗の低減に寄与しうる。
【0054】
前述したように、このタイヤ16のバンド28は高速耐久性の向上に寄与しうる。このバンド28は、速度記号がWレンジ以下のタイヤ16において、有効に作用しうる。なお、この速度記号は、JATMAにおいて定義される、タイヤ16がそのロードインデックスにより示された質量を規定の条件で負荷された状態において走行可能な最高速度を記号によって表したものである。
【0055】
図1において、両矢印WAはハンドの軸方向幅を表している。両矢印WCは、バンド28のセンター部44の軸方向幅を表している。両矢印WMは、バンド28のミドル部46の軸方向幅を表している。両矢印WSは、バンド28のサイド部48の軸方向幅を表している。
【0056】
このタイヤ16では、トレッド18の部分の剛性過大を抑制し、トラクション性能が適切に維持されうるとの観点から、センター部44の軸方向幅WCの、バンド28の軸方向幅WAに対する比は、0.4以上が好ましい。センター部44による高速耐久性への影響が抑制されるとの観点から、この比は0.7以下が好ましい。
【0057】
このタイヤ16では、ミドル部46がベルト26を効果的に拘束し、適切な高速耐久性が得られるとの観点から、ミドル部46の軸方向幅WMの、バンド28の軸方向幅WAに対する比は、0.1以上が好ましい。生産性及びコストの観点から、この比は0.2以下が好ましい。
【0058】
このタイヤ16では、サイド部48がベルト26の端58を十分に拘束し、適切な高速耐久性が得られるとの観点から、サイド部48の軸方向幅WSの、バンド28の軸方向幅WAに対する比は、0.05以上が好ましい。生産性及びコストの観点から、この比は0.1以下が好ましい。
【0059】
本発明では、タイヤ16の各部材の寸法及び角度は、タイヤ16が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ16に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ16には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ16が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ16が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。乗用車用タイヤ16の場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0061】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤを得た。タイヤのサイズは、205/55R16とされた。このタイヤの速度記号は、Vレンジである。このタイヤのバンドの形成には、図2に示されたリボンが用いられた。このリボンの幅Wは、11mmとされた。コードには、アラミド繊維からなるコードが用いられた。コードの構成は、1670dtex/2とされた。センター部におけるリボンの送り量Pcの、このリボンの幅Wに対する比(Pc/W)は、1とされた。ミドル部におけるリボンの送り量Pmの、このリボンの幅Wに対する比(Pm/W)は、0.60とされた。サイド部では、リボンは二重に巻回されている。このサイド部には、リボンが三重に重ね合わされている部分は形成されていない。このことが表中、「S」で示されている。
【0062】
[実施例2−3及び比較例1−2]
比(Pm/W)を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0063】
[比較例4]
比(Pm/W)を下記の表1の通りとし、サイド部にリボンが三重に重ね合わされている部分を形成した他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。サイド部にリボンが三重に重ね合わされている部分が存在していることが、表中「T」で示されている。
【0064】
[比較例3]
比較例3は、従来のタイヤである。このタイヤのバンドは、図5に示された構成を備えている。
【0065】
[生産性]
タイヤ1本当たりの生産時間を計測した。この計測値の逆数に基づいて、生産性に関する評価を行った。その結果が、比較例3を100とした指数値で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、良好である。
【0066】
[コスト]
タイヤ1本当たりのコストを算出した。この算出値の逆数に基づいて、コストに関する評価を行った。その結果が、比較例3を100とした指数値で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、良好である。
【0067】
[高速耐久性]
タイヤを16×6.5JJのリムに組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を300kPaとした。3時間以上放置後、このタイヤに空気を再充填して内圧を300kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。このタイヤを、200km/hの速度から10分ずつ途中中断することなく10km/hずつこの速度を上昇させつつ、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが損傷することなく10分間走行し得た最高速度を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数値で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0068】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:16×5.5J(アルミニウム合金製)
内圧:220kPa
荷重:4.6kN
速度:80km/h
測定値の逆数に基づいて、転がり抵抗に関する評価をおこなった。その結果が、比較例3を100とした指数値で、下記の表1及び2に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表1及び2に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明された空気入りタイヤは、種々の車両に適用されうる。
【符号の説明】
【0073】
2、28・・・バンド
4、4a、4b、50、50a、50b・・・リボン
6、26・・・ベルト
8、58a、58b・・・端
10、44・・・センター部
12、46・・・ミドル部
14、48・・・サイド部
16・・・タイヤ
18・・・トレッド
52・・・コード
56a、56b・・・先端
64a、64b、64・・・端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外面がトレッド面をなすトレッドと、このトレッドの半径方向内側に位置するベルトと、このベルトとこのトレッドとの間に位置してこのベルトを覆うバンドとを備えており、
このバンドが、赤道面上に位置するセンター部と、それぞれがこのセンター部の軸方向外側に位置する一対のミドル部と、それぞれがこのミドル部の軸方向外側に位置する一対のサイド部とを備えており、
このバンドの赤道面からその端までの部分が、コードを含むリボンを用いて形成されており、
このリボンが、赤道面から上記ベルトの端に向かって螺旋状に巻回されており、
上記センター部における上記リボンの送り量の、このリボンの幅に対する比が、1であり、
上記ミドル部におけるこのリボンの送り量の、このリボンの幅に対する比が、0.6以上0.8以下であり、
上記サイド部において、このリボンが二重に巻回されている空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記リボンの幅が、7.0mm以上22mm以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
回転可能な円筒状のドラムと、リボンを送り出すとともに軸方向に移動可能な2つのヘッドとを備えたフォーマーにおいて、
上記ドラムにシートが巻回され、ベルトが形成される工程と、
それぞれのヘッドから上記リボンが送り出され、このリボンの先端が赤道面において上記ベルトに積層される工程と、
上記ドラムを回転させるとともに赤道面から上記ベルトのそれぞれの端に向かってそれぞれのヘッドを軸方向に移動させて上記リボンを螺旋状に巻回すことにより、赤道面上に位置するセンター部とそれぞれがこのセンター部の軸方向外側に位置する一対のミドル部とそれぞれがこのミドル部の軸方向外側に位置してする一対のサイド部とを備えたバンドが形成される工程とを含んでおり、
上記センター部における上記リボンの送り量の、このリボンの幅に対する比が、1であり、
このミドル部におけるこのリボンの送り量の、このリボンの幅に対する比が、0.6以上0.8以下であり、
このサイド部において、このリボンが二重に巻回されている空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
上記リボンの幅が、7.0mm以上22mm以下である請求項3に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107518(P2013−107518A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254511(P2011−254511)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】