空気入りタイヤ
【課題】耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ径方向外側にキャップトレッド102、その内側にアンダートレッド104が配置されたトレッド10を有し、主溝および横溝によってトレッドに陸部が区画され、キャップトレッド102が、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むジエン系ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積が100m2/g以下、かつDBP吸収量が115cm3/100g以上のカーボンブラックを30〜45質量部配合してなるゴム組成物からなり、陸部において、アンダートレッド104のタイヤ径方向の厚さtsが、センタークラウン部ccよりも、ショルダー部shのほうが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【解決手段】タイヤ径方向外側にキャップトレッド102、その内側にアンダートレッド104が配置されたトレッド10を有し、主溝および横溝によってトレッドに陸部が区画され、キャップトレッド102が、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むジエン系ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積が100m2/g以下、かつDBP吸収量が115cm3/100g以上のカーボンブラックを30〜45質量部配合してなるゴム組成物からなり、陸部において、アンダートレッド104のタイヤ径方向の厚さtsが、センタークラウン部ccよりも、ショルダー部shのほうが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤ空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスおよびトラックなどに装着される重荷重用空気入りタイヤは、安全に、かつ長距離走行を行うために、長寿命が求められている。長寿命はコンパウンドの耐摩耗性のみならず耐偏摩耗性にも大きく左右されるため、耐偏摩耗性も重荷重用空気入りタイヤにとって重要な特性である。
一方、地球環境上の観点から車両の低燃費化の要求が高まっており、重荷重用空気入りタイヤにおいても低燃費に寄与するタイヤの開発が強く望まれている。具体的には、低転がり抵抗性を有するタイヤの開発が望まれている。
しかし従来技術において、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性を両立させることは非常に困難であり、大きな課題であった。
【0003】
なお、下記特許文献1には、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを含むタイヤ用ゴム組成物をトレッドに使用する技術が開示されている。しかしながら特許文献1は、本発明におけるトレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さの規定を何ら開示または示唆していない。また、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性の両立についても何ら開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−31111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量を配合し、これをキャップトレッドに採用するとともに、トレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さを規定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
タイヤ径方向外側にキャップトレッドが配置され、このキャップトレッドのタイヤ径方向内側にアンダートレッドが隣接して配置されたトレッドを有し、
タイヤ周方向に延在する主溝およびタイヤ幅方向に延在する横溝によって前記トレッドに陸部が区画された空気入りタイヤであって、
前記キャップトレッドが、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むジエン系ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下、かつDBP吸収量が115cm3/100g以上のカーボンブラックを30〜45質量部配合してなるゴム組成物からなり、
前記陸部において、前記アンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、タイヤ幅方向における中央部であるセンタークラウン部よりも、タイヤ幅方向における端部であるショルダー部のほうが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量を配合し、これをキャップトレッドに採用するとともに、トレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さを規定したので、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤのトレッドの一例を示す図である。
【図2】図1の空気入りタイヤのトレッドのA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤのトレッドの一例を示す図である。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側に位置するトレッド10を備え、さらにトレッド10の両側部からタイヤ径方向内方に延びる一対のサイドウォール部(不図示)と、各サイドウォール部の内周側に連続する一対のビード部(不図示)とを備えている。そして不図示のカーカスが一対のビード部間に掛け渡され、トレッド10の内部でカーカスの外側にベルト層が配置されている。
トレッド10の表面であるトレッド接地面には、複数の溝が形成されている。詳しくは、トレッド接地面には、タイヤ周方向に形成された主溝30と、タイヤ幅方向に形成された横溝20とが形成されている。
主溝30はタイヤ幅方向にほぼ平行に並んで複数形成されており、横溝20は、タイヤ周方向にほぼ平行に並んで複数形成されている。なお、主溝30は正確にタイヤ周方向に沿って形成されていなくてもよく、例えばタイヤ幅方向に傾いて斜めに形成されていてもよい。同様に、横溝20も正確にタイヤ幅方向に沿って形成されていなくてもよく、タイヤ周方向に傾いて斜めに形成されていてもよい(例えば図1参照)。一般的に主溝30の幅は9〜15mmであり、深さは12〜25mmである。横溝20の幅は3〜40mmであり、深さは2〜25mmである。
そして、トレッド10には、これらの主溝30および横溝20によって複数のブロック部15が区画され、それらブロック部15により陸部が構成されている。トレッドパターンは、複数のブロック部15からなるブロックパターンとされている。
【0010】
本発明では、トレッド10のタイヤ幅方向における中央部のブロック部15をセンタークラウン部ccと呼称し、破線で示されたタイヤ赤道線上に、タイヤの周方向全体に存在している。また、タイヤ幅方向における両端部のブロック部15をショルダー部shと呼称し、ショルダー部shは、タイヤ周方向全体に存在している。
本発明は、ブロック部15のアンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、センタークラウン部ccよりも、ショルダー部shのほうが厚いことを特徴としている。
【0011】
図2は、図1の空気入りタイヤのトレッドのA−A断面図である。
トレッド10において、トレッド10の内部に配されたベルト層のタイヤ径方向外側にアンダートレッド104が配置され、その外側にキャップトレッド102が配置されている。すなわち、キャップトレッド102はタイヤ径方向外側に配置され、アンダートレッド104はタイヤ径方向内側に隣接して配置されている。
ショルダー部shを形成するブロック部15sのアンダートレッド104のタイヤ径方向の厚さtsと、センタークラウン部ccを形成するブロック部15cのアンダートレッド104のタイヤ径方向の厚さtcとを比較すると、ts>tcであり、すなわち、ショルダー部shのブロック部15sのアンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、センタークラウン部ccのそれよりも厚くなっている。
このような構成によれば、下記で説明する特定のゴム組成物をキャップトレッド102に使用する構成と相俟って、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも十分に高めることができ、耐久性および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供することができる。なお本発明ではブロック部15の接地面積はとくに制限されない。
【0012】
なお、厚さtcおよびtsの測定は、ブロック部15において、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向のそれぞれの中央位置の点を測定することにより行なう(例えば図1で示すセンタークラウン部ccにおける点P1とショルダー部shにおける点P2)。またタイヤ赤道線上にタイヤの主溝が存在する場合は、タイヤ赤道線に隣接するブロック部をセンタークラウン部ccとみなし、その厚さtcを測定するものとする。
また、厚さtcを1としたときに厚さtsは3〜7.5の範囲であることが好ましい。
なお一般的にセンタークラウン部ccにおける厚さtcは、2mm〜17mmの範囲であることが好ましい。また、センタークラウン部ccにおけるキャップトレッド102の厚さは、2mm〜20mmの範囲であることが好ましい。
【0013】
次に、本発明で使用するゴム組成物について説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴム成分は、その全体を100質量部としたときに、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むことが必要である。シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが10質量部未満では、耐偏摩耗性が劣り、逆に30質量部を超えると耐クラック性が悪化する。なお、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンは公知であり、商業的に入手可能であり、例えば宇部興産(株)から商品名UBEPOL VCR412として市販されている。
また本発明におけるジエン系ゴム成分としては、上記シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンのほかに、任意のジエン系ゴムを用いることができる。このようなジエン系ゴムとしては、通常のゴム組成物に配合するものが挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。中でも本発明の効果の観点からNRを使用するのが好ましい。
【0014】
(カーボンブラック)
本発明で使用されるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下である必要がある。100m2/gを超えると低転がり抵抗性を得ることができない。なお、窒素吸着比表面積(N2SA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。さらに好ましい窒素吸着比表面積(N2SA)は、70〜100m2/gである。
また、本発明で使用されるカーボンブラックは、DBP吸収量が115cm3/100g以上である必要がある。115cm3/100g未満では耐摩耗性および偏摩耗性が悪化する。なお、DBP吸収量はJIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めた値である。さらに好ましいDBP吸収量は、115〜135cm3/100gである。
【0015】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、上記特性を有するカーボンブラックを30〜45質量部配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が30質量部未満であると、耐摩耗性および耐偏摩耗性が悪化する。
前記カーボンブラックの配合量が45質量部を超えると、低転がり抵抗性が悪化する。
本発明において、上記特性を有するカーボンブラックのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、35〜45質量部である。
【0016】
本発明における上記ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤキャップトレッド用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。また上記ゴム組成物は従来の製造方法に従ってキャップトレッドを構成し、空気入りタイヤを製造することができる。
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、キャップトレッド以外の部材は、従来の一般的な処方でもって調製し、本発明の空気入りタイヤの製造に用いることができる。なお、アンダートレッドには、キャップトレッドより低発熱性のものを使用するのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、とくに、高速良路向けの重荷重用空気入りタイヤに有利に使用でき、mm当たりの走行距離として10000km以上の性能が期待できる。高速良路は、発進・停止が少なく、シビアリティの低い道路と言える。したがって、高速良路は、車輌進行方向に対して前後の加速度変化が減ることになる。すると、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを用いたコンパウンドは高硬度、高耐摩耗性の両立に伴い、耐偏摩耗性、耐摩耗性の影響を受けづらくなる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0018】
実施例1〜3および比較例1〜7
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を16リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。得られたタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに使用し、その他のタイヤの部位については公知の材料および条件を採用し、重荷重用空気入りタイヤ(295/80R22.5)を製造し、以下の評価を行なった。得られた結果は、転がり抵抗性については、実施例1〜2および比較例1〜5では比較例1の値を、実施例3および比較例6〜7では比較例6の値を100として指数で示した。耐偏摩耗性および耐摩耗性については、実施例1〜2および比較例1〜5では比較例1の値を、実施例3および比較例6〜7では比較例6の値の逆数を100とする指数として示した。
なお、下記評価に使用した重荷重用空気入りタイヤは、図1および2に示すようなトレッドパターン(ブロックパターン)を有し、トレッド10の表面には、タイヤ周方向に延在する主溝30および幅方向に延在する横溝20が形成されている。主溝30は4本形成され、主溝30の幅は7mmであり、深さは16mmである。横溝20の幅は6mmであり、深さは3mmである。厚さtcおよびtsの測定は、ブロック部15において、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向のそれぞれの中央位置の点を測定することにより行なった。
【0019】
転がり抵抗性:ドラム径1707mmのドラム試験機を用い、空気圧900kPa、荷重35.8kN、速度80km/hの条件でこの空気入りタイヤの抵抗力を測定し、これを転がり抵抗とした。指数が小さいほど低転がり抵抗性であることを示す。
耐偏摩耗性:得られた重荷重用空気入りタイヤをサイズ22.5×8.25のリムに組付け、トラクターヘッドのフロント軸に装着し、空気圧900kPaの条件でタイヤ1本当たり3650kgの負荷荷重をかけた状態で、高速道と一般道を表1に示す割合(距離)において5万km走行させた。走行後のインフレートプロファイルを新品時のインフレートプロファイルと比較し、偏摩耗量として「ショルダー部のタイヤ幅方向端部の摩耗量−ショルダー部の主溝隣接部位の摩耗量」の値から求められるショルダー部の肩落ち摩耗量を測定した。指数が大きいほど、耐偏摩耗性に優れることを意味する。
耐摩耗性:得られた重荷重用空気入りタイヤをサイズ22.5×8.25のリムに組付け、トラクターヘッドのフロント軸に装着し、空気圧900kPaの条件でタイヤ1本当たり3650kgの負荷荷重をかけた状態で、高速道と一般道を表1に示す割合(距離)において5万km走行させた。その時の残溝を測定し「新品時溝深さ−走行後残溝」の値を得た。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを意味する。
結果を表1に併せて示す。
【0020】
【表1】
【0021】
*1:NR(タイ製STR20)
*2:BR−1(日本ゼオン(株)製ポリブタジエンゴム、Nipol BR1220)
*3:BR−2(宇部興産(株)製シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、UBEPOL VCR412)
*4:カーボンブラック−1(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN234、N2SA=123m2/g、DBP吸収量=123cm3/100g)
*5:カーボンブラック−2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、N2SA=88m2/g、DBP吸収量=121cm3/100g)
*6:カーボンブラック−3(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN330、N2SA=75m2/g、DBP吸収量=102cm3/100g)
*7:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*8:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*9:老化防止剤(住友化学(株)製アンチゲン6C)
*10:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*11:加硫促進剤(FLEXSYS社製SANTOCURE TBBS)
【0022】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜3で調製された空気入りタイヤは、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量を配合し、これをキャップトレッドに採用するとともに、トレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さを規定したので、従来の代表的な比較例1または6に対し、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れることが明らかになった。
これに対し、比較例2は、トレッドのショルダー部shとセンタークラウン部ccのアンダートレッドの厚さが本発明の規定を満たしているものの、カーボンブラックのN2SAが本発明で規定する上限を超えているので、転がり抵抗性が悪化した。
比較例3は、BRとしてシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを使用せず、汎用BRを使用したので、転がり抵抗性および耐偏摩耗性に向上が見られなかった。
比較例4は、トレッドのショルダー部shのアンダートレッドの厚さが、センタークラウン部ccのアンダートレッドの厚さよりも薄いので、転がり抵抗性に向上が見られなかった。
比較例5は、カーボンブラックのDBP吸収量が本発明で規定する下限未満であるため耐偏摩耗性および耐摩耗性が悪化した。
比較例7は、トレッドのショルダー部shとセンタークラウン部ccのアンダートレッドの厚さが本発明の規定を満たしているものの、カーボンブラックのN2SAが本発明で規定する上限を超えているので、転がり抵抗性が悪化した。
また比較例2と実施例1、比較例7と実施例3の耐偏摩耗性および耐摩耗性の値を比較すると、高速道の走行比率が高くなった実施例3は、耐偏摩耗性が向上している。また、比較例2および実施例1の耐摩耗性の差に比べ、比較例7と実施例3の耐摩耗性の差が小さくなっている。このことは、本発明の空気入りタイヤが高速良路を走行するときに本発明の効果が高まることを意味している。
【符号の説明】
【0023】
10 トレッド
20 横溝
30 主溝
15 ブロック部
cc センタークラウン部
sh ショルダー部
102 キャップトレッド
104 アンダートレッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤ空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスおよびトラックなどに装着される重荷重用空気入りタイヤは、安全に、かつ長距離走行を行うために、長寿命が求められている。長寿命はコンパウンドの耐摩耗性のみならず耐偏摩耗性にも大きく左右されるため、耐偏摩耗性も重荷重用空気入りタイヤにとって重要な特性である。
一方、地球環境上の観点から車両の低燃費化の要求が高まっており、重荷重用空気入りタイヤにおいても低燃費に寄与するタイヤの開発が強く望まれている。具体的には、低転がり抵抗性を有するタイヤの開発が望まれている。
しかし従来技術において、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性を両立させることは非常に困難であり、大きな課題であった。
【0003】
なお、下記特許文献1には、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを含むタイヤ用ゴム組成物をトレッドに使用する技術が開示されている。しかしながら特許文献1は、本発明におけるトレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さの規定を何ら開示または示唆していない。また、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性の両立についても何ら開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−31111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量を配合し、これをキャップトレッドに採用するとともに、トレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さを規定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
タイヤ径方向外側にキャップトレッドが配置され、このキャップトレッドのタイヤ径方向内側にアンダートレッドが隣接して配置されたトレッドを有し、
タイヤ周方向に延在する主溝およびタイヤ幅方向に延在する横溝によって前記トレッドに陸部が区画された空気入りタイヤであって、
前記キャップトレッドが、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むジエン系ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下、かつDBP吸収量が115cm3/100g以上のカーボンブラックを30〜45質量部配合してなるゴム組成物からなり、
前記陸部において、前記アンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、タイヤ幅方向における中央部であるセンタークラウン部よりも、タイヤ幅方向における端部であるショルダー部のほうが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量を配合し、これをキャップトレッドに採用するとともに、トレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さを規定したので、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る空気入りタイヤのトレッドの一例を示す図である。
【図2】図1の空気入りタイヤのトレッドのA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤのトレッドの一例を示す図である。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側に位置するトレッド10を備え、さらにトレッド10の両側部からタイヤ径方向内方に延びる一対のサイドウォール部(不図示)と、各サイドウォール部の内周側に連続する一対のビード部(不図示)とを備えている。そして不図示のカーカスが一対のビード部間に掛け渡され、トレッド10の内部でカーカスの外側にベルト層が配置されている。
トレッド10の表面であるトレッド接地面には、複数の溝が形成されている。詳しくは、トレッド接地面には、タイヤ周方向に形成された主溝30と、タイヤ幅方向に形成された横溝20とが形成されている。
主溝30はタイヤ幅方向にほぼ平行に並んで複数形成されており、横溝20は、タイヤ周方向にほぼ平行に並んで複数形成されている。なお、主溝30は正確にタイヤ周方向に沿って形成されていなくてもよく、例えばタイヤ幅方向に傾いて斜めに形成されていてもよい。同様に、横溝20も正確にタイヤ幅方向に沿って形成されていなくてもよく、タイヤ周方向に傾いて斜めに形成されていてもよい(例えば図1参照)。一般的に主溝30の幅は9〜15mmであり、深さは12〜25mmである。横溝20の幅は3〜40mmであり、深さは2〜25mmである。
そして、トレッド10には、これらの主溝30および横溝20によって複数のブロック部15が区画され、それらブロック部15により陸部が構成されている。トレッドパターンは、複数のブロック部15からなるブロックパターンとされている。
【0010】
本発明では、トレッド10のタイヤ幅方向における中央部のブロック部15をセンタークラウン部ccと呼称し、破線で示されたタイヤ赤道線上に、タイヤの周方向全体に存在している。また、タイヤ幅方向における両端部のブロック部15をショルダー部shと呼称し、ショルダー部shは、タイヤ周方向全体に存在している。
本発明は、ブロック部15のアンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、センタークラウン部ccよりも、ショルダー部shのほうが厚いことを特徴としている。
【0011】
図2は、図1の空気入りタイヤのトレッドのA−A断面図である。
トレッド10において、トレッド10の内部に配されたベルト層のタイヤ径方向外側にアンダートレッド104が配置され、その外側にキャップトレッド102が配置されている。すなわち、キャップトレッド102はタイヤ径方向外側に配置され、アンダートレッド104はタイヤ径方向内側に隣接して配置されている。
ショルダー部shを形成するブロック部15sのアンダートレッド104のタイヤ径方向の厚さtsと、センタークラウン部ccを形成するブロック部15cのアンダートレッド104のタイヤ径方向の厚さtcとを比較すると、ts>tcであり、すなわち、ショルダー部shのブロック部15sのアンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、センタークラウン部ccのそれよりも厚くなっている。
このような構成によれば、下記で説明する特定のゴム組成物をキャップトレッド102に使用する構成と相俟って、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも十分に高めることができ、耐久性および燃費特性に優れる空気入りタイヤを提供することができる。なお本発明ではブロック部15の接地面積はとくに制限されない。
【0012】
なお、厚さtcおよびtsの測定は、ブロック部15において、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向のそれぞれの中央位置の点を測定することにより行なう(例えば図1で示すセンタークラウン部ccにおける点P1とショルダー部shにおける点P2)。またタイヤ赤道線上にタイヤの主溝が存在する場合は、タイヤ赤道線に隣接するブロック部をセンタークラウン部ccとみなし、その厚さtcを測定するものとする。
また、厚さtcを1としたときに厚さtsは3〜7.5の範囲であることが好ましい。
なお一般的にセンタークラウン部ccにおける厚さtcは、2mm〜17mmの範囲であることが好ましい。また、センタークラウン部ccにおけるキャップトレッド102の厚さは、2mm〜20mmの範囲であることが好ましい。
【0013】
次に、本発明で使用するゴム組成物について説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴム成分は、その全体を100質量部としたときに、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むことが必要である。シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが10質量部未満では、耐偏摩耗性が劣り、逆に30質量部を超えると耐クラック性が悪化する。なお、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンは公知であり、商業的に入手可能であり、例えば宇部興産(株)から商品名UBEPOL VCR412として市販されている。
また本発明におけるジエン系ゴム成分としては、上記シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンのほかに、任意のジエン系ゴムを用いることができる。このようなジエン系ゴムとしては、通常のゴム組成物に配合するものが挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。中でも本発明の効果の観点からNRを使用するのが好ましい。
【0014】
(カーボンブラック)
本発明で使用されるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下である必要がある。100m2/gを超えると低転がり抵抗性を得ることができない。なお、窒素吸着比表面積(N2SA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。さらに好ましい窒素吸着比表面積(N2SA)は、70〜100m2/gである。
また、本発明で使用されるカーボンブラックは、DBP吸収量が115cm3/100g以上である必要がある。115cm3/100g未満では耐摩耗性および偏摩耗性が悪化する。なお、DBP吸収量はJIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めた値である。さらに好ましいDBP吸収量は、115〜135cm3/100gである。
【0015】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、上記特性を有するカーボンブラックを30〜45質量部配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が30質量部未満であると、耐摩耗性および耐偏摩耗性が悪化する。
前記カーボンブラックの配合量が45質量部を超えると、低転がり抵抗性が悪化する。
本発明において、上記特性を有するカーボンブラックのさらに好ましい配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、35〜45質量部である。
【0016】
本発明における上記ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤキャップトレッド用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。また上記ゴム組成物は従来の製造方法に従ってキャップトレッドを構成し、空気入りタイヤを製造することができる。
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、キャップトレッド以外の部材は、従来の一般的な処方でもって調製し、本発明の空気入りタイヤの製造に用いることができる。なお、アンダートレッドには、キャップトレッドより低発熱性のものを使用するのが望ましい。
本発明の空気入りタイヤは、とくに、高速良路向けの重荷重用空気入りタイヤに有利に使用でき、mm当たりの走行距離として10000km以上の性能が期待できる。高速良路は、発進・停止が少なく、シビアリティの低い道路と言える。したがって、高速良路は、車輌進行方向に対して前後の加速度変化が減ることになる。すると、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを用いたコンパウンドは高硬度、高耐摩耗性の両立に伴い、耐偏摩耗性、耐摩耗性の影響を受けづらくなる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0018】
実施例1〜3および比較例1〜7
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を16リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。得られたタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに使用し、その他のタイヤの部位については公知の材料および条件を採用し、重荷重用空気入りタイヤ(295/80R22.5)を製造し、以下の評価を行なった。得られた結果は、転がり抵抗性については、実施例1〜2および比較例1〜5では比較例1の値を、実施例3および比較例6〜7では比較例6の値を100として指数で示した。耐偏摩耗性および耐摩耗性については、実施例1〜2および比較例1〜5では比較例1の値を、実施例3および比較例6〜7では比較例6の値の逆数を100とする指数として示した。
なお、下記評価に使用した重荷重用空気入りタイヤは、図1および2に示すようなトレッドパターン(ブロックパターン)を有し、トレッド10の表面には、タイヤ周方向に延在する主溝30および幅方向に延在する横溝20が形成されている。主溝30は4本形成され、主溝30の幅は7mmであり、深さは16mmである。横溝20の幅は6mmであり、深さは3mmである。厚さtcおよびtsの測定は、ブロック部15において、タイヤ幅方向およびタイヤ周方向のそれぞれの中央位置の点を測定することにより行なった。
【0019】
転がり抵抗性:ドラム径1707mmのドラム試験機を用い、空気圧900kPa、荷重35.8kN、速度80km/hの条件でこの空気入りタイヤの抵抗力を測定し、これを転がり抵抗とした。指数が小さいほど低転がり抵抗性であることを示す。
耐偏摩耗性:得られた重荷重用空気入りタイヤをサイズ22.5×8.25のリムに組付け、トラクターヘッドのフロント軸に装着し、空気圧900kPaの条件でタイヤ1本当たり3650kgの負荷荷重をかけた状態で、高速道と一般道を表1に示す割合(距離)において5万km走行させた。走行後のインフレートプロファイルを新品時のインフレートプロファイルと比較し、偏摩耗量として「ショルダー部のタイヤ幅方向端部の摩耗量−ショルダー部の主溝隣接部位の摩耗量」の値から求められるショルダー部の肩落ち摩耗量を測定した。指数が大きいほど、耐偏摩耗性に優れることを意味する。
耐摩耗性:得られた重荷重用空気入りタイヤをサイズ22.5×8.25のリムに組付け、トラクターヘッドのフロント軸に装着し、空気圧900kPaの条件でタイヤ1本当たり3650kgの負荷荷重をかけた状態で、高速道と一般道を表1に示す割合(距離)において5万km走行させた。その時の残溝を測定し「新品時溝深さ−走行後残溝」の値を得た。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを意味する。
結果を表1に併せて示す。
【0020】
【表1】
【0021】
*1:NR(タイ製STR20)
*2:BR−1(日本ゼオン(株)製ポリブタジエンゴム、Nipol BR1220)
*3:BR−2(宇部興産(株)製シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、UBEPOL VCR412)
*4:カーボンブラック−1(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN234、N2SA=123m2/g、DBP吸収量=123cm3/100g)
*5:カーボンブラック−2(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、N2SA=88m2/g、DBP吸収量=121cm3/100g)
*6:カーボンブラック−3(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN330、N2SA=75m2/g、DBP吸収量=102cm3/100g)
*7:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*8:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*9:老化防止剤(住友化学(株)製アンチゲン6C)
*10:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*11:加硫促進剤(FLEXSYS社製SANTOCURE TBBS)
【0022】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜3で調製された空気入りタイヤは、特定の組成のジエン系ゴムに特定の特性を有するカーボンブラックの特定量を配合し、これをキャップトレッドに採用するとともに、トレッドのショルダー部とセンタークラウン部のアンダートレッドの厚さを規定したので、従来の代表的な比較例1または6に対し、耐摩耗性、耐偏摩耗性および低転がり抵抗性のいずれも満足し、長寿命および燃費特性に優れることが明らかになった。
これに対し、比較例2は、トレッドのショルダー部shとセンタークラウン部ccのアンダートレッドの厚さが本発明の規定を満たしているものの、カーボンブラックのN2SAが本発明で規定する上限を超えているので、転がり抵抗性が悪化した。
比較例3は、BRとしてシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを使用せず、汎用BRを使用したので、転がり抵抗性および耐偏摩耗性に向上が見られなかった。
比較例4は、トレッドのショルダー部shのアンダートレッドの厚さが、センタークラウン部ccのアンダートレッドの厚さよりも薄いので、転がり抵抗性に向上が見られなかった。
比較例5は、カーボンブラックのDBP吸収量が本発明で規定する下限未満であるため耐偏摩耗性および耐摩耗性が悪化した。
比較例7は、トレッドのショルダー部shとセンタークラウン部ccのアンダートレッドの厚さが本発明の規定を満たしているものの、カーボンブラックのN2SAが本発明で規定する上限を超えているので、転がり抵抗性が悪化した。
また比較例2と実施例1、比較例7と実施例3の耐偏摩耗性および耐摩耗性の値を比較すると、高速道の走行比率が高くなった実施例3は、耐偏摩耗性が向上している。また、比較例2および実施例1の耐摩耗性の差に比べ、比較例7と実施例3の耐摩耗性の差が小さくなっている。このことは、本発明の空気入りタイヤが高速良路を走行するときに本発明の効果が高まることを意味している。
【符号の説明】
【0023】
10 トレッド
20 横溝
30 主溝
15 ブロック部
cc センタークラウン部
sh ショルダー部
102 キャップトレッド
104 アンダートレッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向外側にキャップトレッドが配置され、このキャップトレッドのタイヤ径方向内側にアンダートレッドが隣接して配置されたトレッドを有し、
タイヤ周方向に延在する主溝およびタイヤ幅方向に延在する横溝によって前記トレッドに陸部が区画された空気入りタイヤであって、
前記キャップトレッドが、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むジエン系ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下、かつDBP吸収量が115cm3/100g以上のカーボンブラックを30〜45質量部配合してなるゴム組成物からなり、
前記陸部において、前記アンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、タイヤ幅方向における中央部であるセンタークラウン部よりも、タイヤ幅方向における端部であるショルダー部のほうが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項1】
タイヤ径方向外側にキャップトレッドが配置され、このキャップトレッドのタイヤ径方向内側にアンダートレッドが隣接して配置されたトレッドを有し、
タイヤ周方向に延在する主溝およびタイヤ幅方向に延在する横溝によって前記トレッドに陸部が区画された空気入りタイヤであって、
前記キャップトレッドが、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを10〜30質量部含むジエン系ゴム100重量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/g以下、かつDBP吸収量が115cm3/100g以上のカーボンブラックを30〜45質量部配合してなるゴム組成物からなり、
前記陸部において、前記アンダートレッドのタイヤ径方向の厚さが、タイヤ幅方向における中央部であるセンタークラウン部よりも、タイヤ幅方向における端部であるショルダー部のほうが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2013−43609(P2013−43609A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184339(P2011−184339)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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