説明

空気入りタイヤ

【課題】インナーライナーとそれに隣接するタイヤ部材の接着性を高め耐空気透過性を改善し、軽量化により転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤ1のインナーライナー9は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体をポリマー成分中に60質量%〜99.9質量%含み、該ポリマー成分100質量部に対し、有機化合物をインターカレートした層状粘土鉱物を0.1〜50質量部含む、熱可塑性エラストマー組成物よりなる第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマー組成物の第2層とからなるポリマー積層体で構成され、第2層がカーカスプライ6と接するように配置されており、かつインナーライナー9はクラウン中央位置Pcにおける厚さGcよりもショルダー位置Peの厚さGeが厚い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ内面に熱可塑性エラストマー組成物の複数層で構成されたインナーライナーを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのインナーライナーはタイヤの内側に配置され、空気入りタイヤ内部から外部への空気の漏れを低減してタイヤ内圧を一定に維持する機能を有する。このような機能を有する材料としてブチル系ゴムなどの気体透過性の低いゴム組成物が使用されている。一方、タイヤの軽量化を図るために、前記ブチル系ゴム組成物にかえて熱可塑性樹脂を含む材料からなるフィルムが使用される場合がある。
【0003】
一般にインナーライナーは、タイヤ使用時に、そのショルダー部近傍に大きなせん断歪が作用する。そこで熱可塑性樹脂を含む材料をインナーライナーとして使用した場合、このせん断歪みによって、インナーライナーとカーカスプライの接着界面で剥離が発生しやすくなり、タイヤの空気漏れが発生するという問題があった。
【0004】
従来から空気入りタイヤにおいて低燃費化の課題があり、そのためにタイヤを軽量化することで転がり抵抗を軽減する方法が採用されている。そのためインナーライナーに熱可塑性エラストマーを用いる技術も提案されているが、ブチル系ゴムのインナーライナーよりも厚さを薄くすると耐空気透過性と軽量化の両立が困難である。また厚さを薄くすることでインナーライナーの強度は低下し、加硫工程時のブラダーの熱と圧力でインナーライナーが破壊または変形する問題があった。
【0005】
特許文献1には、インナーライナー層とゴム層の接着性を改善するための積層体が開示されている。これはインナーライナー層の両側に接着層を設けることで、インナーライナー層の重ね合わせ部において接着層どうしが接触するようになり、加熱によって強固に接着されるので、空気圧保持性を向上させている。しかし、このインナーライナー層の重ね合わせのための接着層は、加硫工程においてブラダーと加熱状態で接触することになり、ブラダーに粘着するという問題がある。
【0006】
特許文献2は、空気透過性の良好なナイロン樹脂とブチルゴムを動的架橋により混合物を作成し、厚み100μmのインナーライナー層を作製している。しかしナイロン樹脂は室温では硬くタイヤ用インナーライナーとしては不向きである。また、この動的架橋による混合物だけではゴム層との加硫接着はしないため、インナーライナー層とは別に加硫用接着層を必要とするため、インナーライナー部材としては構造が複雑で工程が多くなり、生産性の観点から不利である。
【0007】
特許文献3は、ショルダー部における厚さをタイヤクラウン部における厚さよりも大きく設計することにより、低温耐久性の向上を実現している。しかしながら厚さ寸法を大きくすることは重量の増加となり、低燃費および製造コストの観点から好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−19987号公報
【特許文献2】特許第2999188号公報
【特許文献3】特開2005−343379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はインナーライナーを備えた空気入りタイヤにおいて、該インナーライナーの層を薄く維持し、隣接するタイヤ部材の接着性を高めるとともに、耐空気透過性、高温での引張特性および屈曲疲労特性を向上し、さらにタイヤの軽量化により転がり抵抗を低減した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体をポリマー成分中に60質量%〜99.9質量%含み、該ポリマー成分100質量部に対し、有機化合物をインターカレートした層状粘土鉱物を0.1〜50質量部含む、熱可塑性エラストマー組成物よりなる第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマー組成物の第2層とからなるポリマー積層体で構成され、前記第2層がカーカスプライと接するように配置されており、かつ前記インナーライナーはクラウン中央位置Pcにおける厚さGcよりもショルダー位置Peの厚さGeが厚いことを特徴とする空気入りタイヤである。
【0011】
本発明の他の実施形態は、タイヤ子午断面において、前記カーカスプライとインナーライナーの境界線に対してトレッド部の接地端Teからタイヤ内径方向に法線Lを引き前記境界線との交点をショルダー位置Peとし、前記カーカスプライとインナーライナーの境界線とタイヤ中心線CLとの交点をクラウン中心位置Pcとし、さらに前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pcまでのインナーライナーの輪郭線に沿った距離をショルダー距離Wcとしたとき、前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pc側に、前記ショルダー距離Wcの少なくとも10%の幅を有する領域に形成されている記載の空気入りタイヤである。
【0012】
前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pc側に、前記ショルダー幅Wcの少なくとも50%以下の幅を有する領域に形成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記インナーライナーの前記ショルダー位置Peからタイヤ最大幅位置Psまでのインナーライナーの輪郭線に沿った距離をサイド距離Wsとしたとき、前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peから前記最大幅位置Ps側に、前記サイド距離Wsの少なくとも20%の幅を有する領域に形成されていることが好ましい。
【0014】
さらに前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peから前記最大幅位置Ps側に、前記最大幅距離Wsの100%以下の幅を有する領域に形成されていることが好ましい。
【0015】
また本発明の空気入りタイヤにおいて、前記インナーライナーは、クラウン中央位置Pcにおける厚さGcに対し、ショルダー位置Peの厚さGeは160%〜300%であることが好ましい。
【0016】
本発明においてインナーライナーに用いられる前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000であることが好ましい。また前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。さらに前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体の分子鎖は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤは、有機化合物をインターカレートした層状粘土鉱物を配合した熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナーに用いるとともに、インナーライナーの厚さをタイヤ断面においてタイヤ最大幅位置からクラウン中央位置の領域を特定範囲に調整することで、インナーライナーの全体の層厚さを薄くして軽量化による転がり抵抗の軽減を図り、さらにタイヤショルダー部に肉厚部を形成したことにより耐空気透過性を維持しながら屈曲疲労性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の空気入りタイヤの右半分の概略断面図である。
【図2】図1のトレッド部の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、タイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、前記インナーライナーは、少なくとも2層のポリマー積層体で形成される。第1層はスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)からなる。第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む。そして、前記第2層がカーカスプライのゴム層と接するように配置されており、かつ前記インナーライナーはクラウン中央位置Pcにおける厚さGcよりもショルダー位置Peの厚さGeが厚く形成されている。
【0020】
本発明の空気入りタイヤの実施形態を図に基づき説明する。図1は、空気入りタイヤの右半分の概略断面図であり、図2はそのトレッド部の拡大概略断面図である。図において空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部両端からトロイド形状を形成するようにサイドウォール部3とビード部4とを有している。さらに、ビード部4にはビードコア5が埋設される。また、一方のビード部4から他方のビード部に亘って設けられ、両端をビードコア5のまわりに折り返して係止されるカーカスプライ6と、該カーカスプライ6のクラウン部外側には、少なくとも2枚のプライよりなるベルト層7とが配置されている。
【0021】
前記ベルト層7は、一般にスチールコードまたはアラミド繊維等のコードよりなるプライの少なくとも2枚をタイヤ周方向に対して、コードが通常5〜30°の角度になるようにプライ間で相互に交差するように配置される。なおベルト層の両端外側には、トッピングゴム層を設けてベルト層両端の剥離を軽減することができる。またカーカスプライはポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維コードがタイヤ周方向にほぼ90°に配列されており、カーカスプライとその折り返し部に囲まれる領域には、ビードコア5の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス8が配置される。また前記カーカスプライ6のタイヤ半径方向内側には一方のビード部4から他方のビード部4に亘るインナーライナー9が配置されている。
【0022】
本明細書においてインナーライナー9に関連する位置、距離および幅を次のように定義する。
【0023】
<ショルダー位置Pe>
タイヤ子午断面において、前記カーカスプライ6とインナーライナー9の境界線に対してトレッド部の接地端Teからタイヤ内径方向に法線Lを引き前記境界線との交点をショルダー位置Peと定義する。ここでトレッド部の接地端Teは、トレッド部の外側輪郭線を延長した線と、ショルダー部の外側輪郭線を延長した交点として定義される。
【0024】
<クラウン中心位置Pc>
カーカスプライとインナーライナーの境界線とタイヤ中心線CLとの交点をクラウン中心位置Pcとする。
【0025】
<最大幅位置Ps>
タイヤに規定内圧を充填し標準リムを装着したときの外側輪郭線の最大幅位置Leをとおるタイヤ回転軸に平行な線とカーカスプライ6とインナーライナー9の境界線との交点を最大幅位置Psとする。
【0026】
<ショルダー距離Wc>
前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pcまでのインナーライナー9の輪郭線に沿った距離をショルダー距離Wcとする。
【0027】
<サイド距離Ws>
前記ショルダー位置Peからタイヤ最大幅位置Psまでのインナーライナー9の輪郭線に沿った距離をサイド距離Wsとする。
【0028】
<インナーライナー厚さ>
インナーライナー9のクラウン中心位置Pcの厚さをGc、ショルダー位置Peにおける厚さをGe、最大幅位置Psにおける厚さをGsとする。
【0029】
前記インナーライナー9の肉厚部は、前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pc側に、前記ショルダー距離Wcの少なくとも10%の幅を有する領域に形成されていることが望ましい。一方、肉厚部は前記ショルダー距離Wcの100%以下の幅を有する領域に形成することが好ましい。さらに肉厚部はショルダー距離Wcの10%〜50%の範囲がより好ましい。
【0030】
前記インナーライナー9の肉厚部は、前記ショルダー位置Peから前記最大幅位置Ps側に、前記サイド距離Wsの少なくとも20%の幅を有し、100%以下の幅の領域に形成されていることが好ましい。肉厚部がショルダー位置Peからサイド距離Wsの20%〜100%の範囲に設定することで、タイヤ走行時に屈曲変形の激しいショルダー部の変形を抑制するとともに、この領域の応力緩和を効果的に達成することができる。さらに、前記肉厚部はショルダー位置Peからサイド距離Wsの20%〜80%の範囲がより好ましい。
【0031】
本発明において前記インナーライナーは、クラウン中央位置Pcにおける厚さGcに対し、肉厚部の厚さ、即ち、ショルダー位置Peの厚さGeは160%〜300%であり、最大幅位置Psの厚さGsに対し、ショルダー位置Peの厚さGeは110%〜350%であることが望ましい。ショルダー位置Peの厚さGeが160%未満の場合は、ショルダー部の屈曲変形およびせん断変形の抑制が十分でなく、また300%を超えるとインナーライナーの軽量化の効果は十分期待できない。クラウン中央位置Pcにおける厚さGcに対し、ショルダー位置Peの厚さGeは、より好ましくは200%〜300%である。
【0032】
なお、肉厚部は、ショルダー位置Peを中心に、クラウン中央位置Pc方向と、最大幅位置Ps方向に厚さを漸減する構成とすることが好ましい。インナーライナーの肉厚部を上述のように形成することで、タイヤ走行時における、この領域での繰り返し変形に伴う屈曲変形およびせん断変形が生じても、その応力を緩和することができ、インナーライナーのクラックの発生を防止することができる。
【0033】
第1層の肉厚部を除く領域の平均厚さは、0.05〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.7mmであることが望ましい。第1層の厚さが0.05mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第1層がプレス圧力で破れてしまい、得られたタイヤにおいてエアーリーク現象が生じる虞がある。一方、第1層の厚さが1.0mmを超えるとタイヤ重量が増加し低燃費性能が低下する。
【0034】
第1層はSIBSを押出成形、カレンダー成形などの熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0035】
なお本発明においてショルダー部に形成される肉厚部は、インナーライナーの第1層および第2層の少なくともいずれかの厚さが、ショルダー部において厚くなるように調整するほか、ショルダー部に第3層を積層して肉厚部を形成することもできる。
【0036】
<ポリマー積層体>
本発明のインナーライナーに用いられるポリマー積層体は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう。)を含む厚さ0.05mm〜1.0mmの第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)の少なくともいずれかを含む第2層とからなり、前記第2層の厚さが0.01mm〜0.3mmである。
【0037】
<第1層>
第1層は、ポリマー成分として、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体をポリマー成分中に60質量%〜99.9質量%を含む熱可塑性エラストマー組成物であり、前記ポリマー成分100質量部に対し、有機化合物をインターカレートした層状粘土鉱物を0.1〜50質量部含んでいる。
【0038】
本発明において、第1層は、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体(SIBS)を含む。SIBSのイソブチレンブロック由来により、SIBSからなるポリマーフィルムは優れた耐空気透過性を有する。したがって、SIBSからなるポリマーフィルムをインナーライナーに用いた場合、耐空気透過性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。さらに、SIBSは芳香族以外の分子構造が完全飽和であることにより、劣化硬化が抑制され優れた耐久性を有する。
【0039】
SIBSの分子量は、流動性、成形工程、ゴム弾性などの観点から、GPC測定による重量平均分子量が50,000〜400,000であることが好ましい。重量平均分子量が50,000未満であると引張強度、引張伸びが低下するおそれがあり、400,000を超えると押出加工性が悪くなる可能性がある。SIBSは耐空気透過性と屈曲疲労性を向上する観点から、SIBS中のスチレン成分の含有量は10〜30質量%、好ましくは14〜23質量%である。
【0040】
該SIBSは、その共重合体における各ブロックの重合度は、イソブチレンが10,000〜150,000程度、またスチレンが5,000〜30,000程度であることが好ましい。
【0041】
SIBSは、一般的なビニル系化合物のリビングカチオン重合法により得ることができ。例えば、特開昭62−48704号公報および特開昭64−62308号公報には、イソブチレンと他のビニル化合物とのリビングカチオン重合が可能であり、ビニル化合物にイソブチレンと他の化合物を用いることでポリイソブチレン系のブロック共重合体を製造できることが開示されている。
【0042】
第1層に含まれるポリマー成分として、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ゴム成分、熱可塑性樹脂を含むことができ、これらの成分はポリマー成分中0.01質量%〜60質量%の範囲である。
【0043】
<有機化処理層状粘土鉱物>
本発明において第1層には、ポリマー成分100質量部に対して、有機化合物をインターカレートした層状粘土鉱物(以下、「有機化処理層状粘土鉱物」ともいう。)を0.1〜50質量部混合されている。有機化処理層状粘土鉱物は、有機化合物が層状粘土鉱物の層間にインターカレートすることにより、層間が広がり、ポリマーへの分散性が向上する。
【0044】
層状粘土鉱物は層状珪酸塩鉱物の一種で、結晶構造は珪酸四面体層−アルミナ八面体層−珪酸四面体層の3層が積み重なっており、その単位層は厚さ約10Å(1nm)、広がり0.1〜1μmという極めて薄い板状になっている。
【0045】
層状粘土鉱物の代表としてモンモリロナイトが挙げられる。モンモリロナイトは結晶構造中のアルミナ八面体層の中心原子であるAlの一部がMgに置換されることで陽電荷不足となり、各結晶層自体は負に帯電しているが、結晶層間にNa+、K+、Ca2+、Mg2+などの陽イオンを挟むことで電荷不足を中和し安定状態となる。そのため、モンモリロナイトは結晶層が何層も重なり合った状態で存在している。
【0046】
モンモリロナイトの板状結晶層表面に水が接触すると、層間の交換性陽イオンに水分子が水和し層間が膨張する。また、モンモリロナイトの陽イオン交換性を利用して層間に有機化合物をインターカレートすることで、層間が広がり、有機溶媒やポリマーへの分散性が向上する。
【0047】
層状粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト(特にナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイトおよびカルシウムモンモリロナイト)、ベントナイト、カオリナイト、ノンライト、バイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、ソボカイト、スティブンサイト、スビンフォルダイト、バーミキュライトなどのスメクタイト系粘土などといったフィロシリケート類、イライトおよびイライト/スメクタイトの混合物(レクトライト、タロソバイト、レディカイトおよび前記粘土化合物とイライトとの混合物)などの雲母鉱物類またはアタパルジャイトおよびセピオライトハイドロタルサイト系層状化合物などが挙げられる。なかでもスメクタイト系粘土が好ましく、特にモンモリロナイト系粘土が好ましい。また、スメクタイト系粘土鉱物を含むベントナイトを用いても良い。これら層状粘土鉱物は一般には天然鉱物を採取して所定の精製操作を経て得られる。これらの合成粘土は区別なく使用できる。
【0048】
インターカラントとして使用される有機化合物としては、イオン化しやすい極性基を分子内に有する有機化合物が挙げられる。極性基を有する有機化合物は、スメクタイト系粘土鉱物の酸素イオンなど負イオンで覆われた層の表面との間で強い相互作用を起こし、層状粘土鉱物の層間へ入り込み(インターカレート)、層間を押し広げて膨張させるものと考えられている。
【0049】
有機化合物としては、炭素原子を6個以上有するアルキル基を有し、末端にイオン化する極性基を有するものが好ましい。たとえば、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を有するものや、アルデヒド類、アミン類、アミド類または4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0050】
ヒドロキシル基を有する有機化合物としては、オクチルアルコール、ノニルアルコールなどの脂肪族アルコール、アルキル基が置換した芳香族アルコールなどのアルコール類のほか、フェノール類などが挙げられる。
【0051】
カルボキシル基を有する有機化合物としては、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸などの直鎖状脂肪族、オレイン酸などの直鎖状アルケン酸、リノールエライジン酸などのジエン酸、トリエン酸などのポリ不飽和脂肪族酸などが挙げられる。
【0052】
アルデヒド類としてはヘキシルアルデヒドなどが挙げられる。
アミン類またはアミド類としては、1以上のアミンまたはアミドを有する極性有機化合物、たとえばアルキルアミン、アミノシクロアルカンおよびアミノシクロアルカン置換体、環状脂肪族ジアミン、脂肪族アミン、アルキル芳香族アミン、アルキルジアリールアミン、脂肪族アミドなどが挙げられ、一級、二級、および/または三級アミンまたはアミドが含まれる。中でも、アルキルアミン、脂肪族アミン、アルキル芳香族アミン、アルキルジアリールアミンが好ましい。上記有機化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0053】
好ましいアミン類としては、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、1−ノミルアミン、1−ドデシルアミン、1−ヘキサデシルアミン、1−オクタデシルアミン、オレイルアミンなどの一級アミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミンなどの二級アミン、ジメチル−n−オクチルアミン、ジメチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチルオレイルアミンなどの三級アミン、ジ−n−デシルメチルアミンジココアルキルメチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ヘキサデシルアミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。
【0054】
好ましいアミド類としては、ヘキシルアミド、ヘプチルアミド、オクチルアミド、ノニルアミド、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ステラミド、パルミアミド、オレアミド、リノレアミドなどが挙げられる。
【0055】
また、極性基を有する有機化合物としてニトリル基またはラクタム基を有するもの、ピリジン類、エステル類、界面活性剤類、エーテル類などを使用することもできる。
【0056】
4級アンモニウム塩としては、たとえばジメチルジステアリルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルベンジルオクタデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0057】
層状粘土鉱物に有機化合物をインターカレートする方法としては、公知の方法を採用することができる。たとえばモンモリロナイト系粘土鉱物と有機化合物とを接触させるために、予め層状粘土鉱物にその質量の約20倍程度の水を含ませて、その後有機化合物とモンモリロナイト系粘土鉱物とを接触させて有機化処理粘土鉱物を得る方法がある。有機化処理層状粘土鉱物における有機化合物の陽イオン交換量は、50〜200meg/100gが好ましい。
【0058】
有機化処理層状粘土鉱物の配合量は、ポリマー成分100質量部に対して0.1〜50質量部であり、さらに0.5〜30質量部が好ましい。有機化処理層状粘土鉱物の配合量が0.1質量部未満であると、第1層の耐空気透過性および高温時の引張特性が低下する。また、有機化処理層状粘土鉱物の配合量が50質量部を超えると、第1層の硬度が大きくなりすぎて屈曲疲労性が低下する。
【0059】
<第2層>
本発明において、第2層はスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)を含むSIS層およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を含むSIB層の少なくともいずれかを有している。
【0060】
スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(SIS)のイソプレンブロックはソフトセグメントであるため、SISからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすく、カーカスプライのゴム層との接着性が向上し、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0061】
前記SISの分子量はゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が100,000〜290,000であることが好ましい。重量平均分子量が100,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、290,000を超えると押出加工性が悪くなるため好ましくない。SIS中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜30質量%であることが好ましい。
【0062】
本発明において、SISにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソプレンでは500〜5,000程度、またスチレンでは50〜1,500程度であることが好ましい。
【0063】
スチレン−イソブチレンジブロック共重合体(SIB)のイソブチレンブロックはソフトセグメントであるため、SIBからなるポリマーフィルムはゴム成分と加硫接着しやすく、たとえばカーカスやインスレーションを形成する隣接ゴムとの接着性が向上し、屈曲疲労性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0064】
SIBは、分子鎖が直鎖状のものを用いることがゴム弾性および接着性の観点から好ましい。SIBの分子量は、ゴム弾性および成形性の観点から、GPC測定による重量平均分子量が40,000〜120,000であることが好ましい。重量平均分子量が40,000未満であると引張強度が低下するおそれがあり、120,000を超えると押出加工性が悪くなるおそれがある。
【0065】
SIB中のスチレン成分の含有量は、粘着性、接着性およびゴム弾性の観点から10〜35質量%であることが好ましい。本発明において、SIBにおける、各ブロックの重合度は、ゴム弾性と取り扱いの観点からイソブチレンでは300〜3,000程度、またスチレンでは10〜1,500程度であることが好ましい。
【0066】
前記SIS層およびSIB層は、SIBを押出成形、カレンダー成形といった熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーをフィルム化する通常の方法によってフィルム化して得ることができる。
【0067】
第2層の肉厚部を除く平均厚さは、0.01mm〜0.3mmであることが望ましい。ここで第2層の厚さとは、第2層がSIS層のみからなる場合は該SIS層の厚さを、第2層がSIB層のみからなる場合は該SIB層の厚さを、第2層がSIS層およびSIB層の2層からなる場合は、該SIS層および該SIB層の合計の厚さを意味する。第2層の厚さが0.01mm未満であると、ポリマー積層体をインナーライナーに適用した生タイヤの加硫時に、第2層がプレス圧力で破れてしまい、加硫接着力が低下するおそれがある。一方、第2層の厚さが0.3mmを超えるとタイヤ重量が増加し低燃費性能が低下する。第2層の厚さは、さらに0.05〜0.2mmであることが好ましい。
【0068】
<ポリマー積層体の製造方法>
ポリマー積層体は、SIBSと、SISおよびSIBの少なくともいずれかを、ラミネート押出や共押出などの積層押出をして得ることができ、得られたポリマー積層体をインナーライナーとして使用できる。
【0069】
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の空気入りタイヤは、従来の製造方法を採用できる。前記ポリマー積層体を空気入りタイヤ1の生タイヤのインナーライナーに適用して他の部材とともに成形する。これを従来の方法により生タイヤを金型に投入して加硫することで製造できる。ポリマー積層体を生タイヤに配置する際は、ポリマー積層体の第2層であるSIS層またはSIB層が、カーカスプライ6に接するようにタイヤ半径方向外側に向けて配置する。このように配置すると、タイヤ加硫工程において、SIS層またはSIB層とカーカスとの接着強度を高めることができる。得られた空気入りタイヤは、インナーライナーとカーカスプライのゴム層とが良好に接着しているため、優れた耐空気透過性および屈曲疲労性を向上することができる。
【0070】
なお、インナーライナーの厚さをショルダー位置Peの厚さGeとクラウン中心位置Pcの厚さGc、最大幅位置Psの厚さGsで調整するには、例えば、ポリマーシートの押し出し口にプロファイルをつけて、ショルダー位置近傍の厚さGeを所定の厚さにした一体物のシートを作成して、これをインナーライナーとしてタイヤ内面に配置する。
【0071】
本発明の空気入りタイヤに用いられるカーカスプライのゴム層の配合は、一般に用いられるゴム成分、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンーブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムなどに、カーボンブラック、シリカなどの充填剤を配合したものを用いることができる。
【実施例】
【0072】
表1に示す仕様で、実施例および比較例の空気入りタイヤを製造して、タイヤ性能を評価した。ここで第1層および第2層に用いるSIB、SIBSおよびSISは以下のとおり調製した。
【0073】
<SIB>
攪拌機付き2L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)589mL、n−ブチルクロライド(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)613ml、クミルクロライド0.550gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.35mL、イソブチレン179mLを添加した。さらに四塩化チタン9.4mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら2.0時間反応させた。次に反応容器にスチレン59mLを添加し、さらに60分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤などを除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をメタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間乾燥することによりスチレン−イソブチレンジブロック共重合体を得た。
【0074】
スチレン成分含有量:15質量%
重量平均分子量 :70,000
<SIBS>
カネカ(株)社製の「シブスターSIBSTAR 102(ショアA硬度25、スチレン成分含有量25質量%、重量平均分子量:100,000)」を用いた。
【0075】
<SIS>
クレイトンポリマー社製のD1161JP(スチレン成分含有量15質量%、重量平均分子量:150,000)を用いた。
【0076】
<有機化処理層状粘土鉱物>
レオックス(Rheox)社製の「ベントン34(BENTONE34)」を用いた。ここで層状粘土鉱物は、ヘクトライト粘土鉱物、有機化合物はジメチルジステアリルアンモニウム塩であり、有機化合物の陽イオン交換量が100meg/100gである。
【0077】
<空気入りタイヤの製造>
上記、SIBS、SISおよびSIBを含む組成物を、2軸押出機(スクリュ径:φ50mm、L/D:30、シリンダ温度:220℃)にてペレット化した。その後、Tダイ押出機(スクリュ径:φ80mm、L/D:50、ダイリップ幅:500mm、シリンダ温度:220℃、フィルムゲージ:0.3mm)にてインナーライナーを作製した。
【0078】
空気入りタイヤは、図1に示す基本構造を有する195/65R15サイズのものに、上記ポリマー積層体をインナーライナーに用いて生タイヤを製造し、次に加硫工程において、170℃で20分間プレス成型して製造した。
【0079】
ここでインナーライナーのショルダー部の厚さを調整するために、ポリマーシートの押し出し口にプロファイルをつけて、ショルダー部の厚さGeを厚くした一体物のシートを作成して、これをインナーライナーとしてタイヤ内面に配置した。
【0080】
【表1】

【0081】
(注1)表1において「偏肉範囲(wc/ws)(%)」は、ショルダー位置Peを中心にクラウン中心位置Pc方向に延びる距離の、Wcに対する割合wc(%)と、ショルダー位置Peを中心にさ最大幅位置Ps方向に延びる距離の、Wsに対する割合ws(%)を示す。
(注2)表1において、肉厚部の厚さ比(Ge/Gs)の値は、(Ge/Gc)の値と同じである。
【0082】
<性能試験>
性能試験は、以下の方法で実施した。なお空気入りタイヤの性能に関しては、タイヤサイズが195/65R15のものを用いて以下の性能評価をおこなった。
【0083】
(a)高温引張試験
JIS−K−6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、
熱可塑性シートおよび加硫ゴムシートからなる3号ダンベル型試験片を用いて100℃の温度雰囲中で、2分間放置後、引張試験を実施し、各試験片の引張破断強度と引張破断伸びを測定した。
【0084】
(b)屈曲疲労試験
JIS−K−6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂試験方法」に準じて、中央に溝のある所定の試験片を作製した。熱可塑性樹脂からなるインナーライナーは、厚さ0.3mmのシートをゴムに貼り付けて加硫し、所定の試験片を作製した。試験片の溝の中心に予め切り込みをいれ、繰り返し屈曲変形を与え、亀裂成長を測定した。
【0085】
雰囲気温度が30℃、歪30%、周期5Hzで、70万回、140万回、210万回時に亀裂長さを測定し、亀裂が1mm成長するのに要した繰り返し回数を算出した。単位は回数×104/mmで数値が大きい方が、亀裂が成長しにくく良好といえる。
【0086】
(c)空気透過性試験
ASTM−D−1434−75M法にしたがい、熱可塑性樹脂シート及び加硫ゴムシートの空気透過量を測定した。数値は10以下、特に5以下が最も空気透過量は少ないく、空気バリア性が良いことを示す。
【0087】
(d)転がり抵抗性
(株)神戸製鋼所製の転がり抵抗試験機を用い、タイヤサイズ195/65R15のスチールラジアルタイヤをJIS機アクリム15かける6JJに組み付け、荷重3.4kN、空気圧230kPa、速度80km/時間の条件下で、室温(38℃)で走行させて、転がり抵抗を測定した。そして下記計算式により、比較例1を基準として、各実施例、比較例の転がり抵抗変化率(%)を指数で表示した。なお、転がり抵抗変化率が小さいほど、転がり抵抗が低減されていることを示す。つまり値がマイナスの値として大きいほうが好ましい。
【0088】
(転がり抵抗変化率)=(各実施例の転がり抵抗−比較例1の転がり抵抗)÷(比較例1の転がり抵抗)×100
(e)静的空気低下率
サイズが195/65R15空気入りタイヤをJIS規格リム15×6JJに組み付けて、初期空気圧300KPaを封入し、90日間室温で放置し空気圧の低下率を算出して、静的空気低下率の値とした。
【0089】
<総合評価>
総合評価は、以下の方法にしたがって行なった。
【0090】
上記(c)〜(e)の各性能評価がすべて比較例1より優れ、(b)の値が5000回×104/mmを超えるものを「A」評価とした。
【0091】
上記(c)〜(e)の各性能評価がすべて比較例1より優れ、(b)の値が4000〜5000回×104/mmを超えるものを「B」評価とした。
【0092】
<比較例1〜4、実施例1〜9>
比較例1は、第1層にSIBSの80質量部とNRの20質量部(表1では括弧で混合量を記載している)を混合した組成物を用いている。比較例1〜比較例3は、いずれも有機化処理の層状粘土鉱物を配合していない例であり、比較例4は有機化処理の層状粘土鉱物を80質量部配合した例である。
【0093】
比較例1〜4は、インナーライナーの層厚さが厚いにも関らず空気透過量が多く、静的空気低下率も低い。また転がり抵抗変化率も低い値となっている。
【0094】
実施例1〜9は、肉厚部を有する比較例2〜4と較べ、屈曲疲労性に優れ、空気透過量が少なく、転がり抵抗変化率および静的空気低下率の性能において優れている。比較例1は、屈曲疲労性に優れているが空気透過量が多くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のインナーライナーを備えた空気入りタイヤは、乗用車用空気入りタイヤのほか、トラック・バス用、重機用等のインナーライナーを備えた空気入りタイヤにも広く採用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 空気入りタイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカスプライ、7 ベルト層、8 ビードエーペックス、9 インナーライナー、Pe ショルダー位置、Pc クラウン中央位置、Ps タイヤ最大幅位置、Te トレッド端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部の間に装架されたカーカスプライのタイヤ内側にインナーライナーを備えた空気入りタイヤであって、
前記インナーライナーは、スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体をポリマー成分中に60質量%〜99.9質量%含み、該ポリマー成分100質量部に対し、有機化合物をインターカレートした層状粘土鉱物を0.1〜50質量部含む、熱可塑性エラストマー組成物よりなる第1層と、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体およびスチレン−イソブチレンジブロック共重合体の少なくともいずれかを含む熱可塑性エラストマー組成物の第2層とからなるポリマー積層体で構成され、
前記第2層がカーカスプライと接するように配置されており、
かつ前記インナーライナーはクラウン中央位置Pcにおける厚さGcよりもショルダー位置Peの厚さGeが厚いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ子午断面において、前記カーカスプライとインナーライナーの境界線に対してトレッド部の接地端Teからタイヤ内径方向に法線Lを引き前記境界線との交点をショルダー位置Peとし、前記カーカスプライとインナーライナーの境界線とタイヤ中心線CLとの交点をクラウン中心位置Pcとし、さらに前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pcまでのインナーライナーの輪郭線に沿った距離をショルダー距離Wcとしたとき、 前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pc側に、前記ショルダー距離Wcの少なくとも10%の幅を有する領域に形成されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peからクラウン中心位置Pc側に、前記ショルダー幅Wcの少なくとも50%以下の幅を有する領域に形成されている請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記インナーライナーの前記ショルダー位置Peからタイヤ最大幅位置Psまでのインナーライナーの輪郭線に沿った距離をサイド距離Wsとしたとき、前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peから前記最大幅位置Ps側に、前記サイド距離Wsの少なくとも20%の幅を有する領域に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記インナーライナーの肉厚部は、前記ショルダー位置Peから前記最大幅位置Ps側に、前記最大幅距離Wsの100%以下の幅を有する領域に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記インナーライナーは、クラウン中央位置Pcにおける厚さGcに対し、ショルダー位置Peの厚さGeは160%〜300%である請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体はスチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が50,000〜400,000である請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体は、スチレン成分含有量が10〜30質量%であり、重量平均分子量が100,000〜290,000である請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記スチレン−イソブチレンジブロック共重合体の分子鎖は直鎖状であり、スチレン成分含有量が10〜35質量%であり、重量平均分子量が40,000〜120,000である請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−60138(P2013−60138A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200746(P2011−200746)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【特許番号】特許第5160675号(P5160675)
【特許公報発行日】平成25年3月13日(2013.3.13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】