説明

空気入りラジアルタイヤ

【課題】複数の単線スチールワイヤを引き揃えてたベルト層を設けながら、タイヤ耐久性能の維持と低転がり抵抗を可能にした空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】複数の単線スチールワイヤ10を引き揃えた複数のベルト層8を配設した空気入りラジアルタイヤにおいて、各単線スチールワイヤ10にその軸廻りに捩りを与えると共に、ベルト層8内に2〜4本の単線スチールワイヤ10からなる複数のワイヤ集合体12を形成し、各ワイヤ集合体12において単線スチールワイヤ10をベルト層8の面方向に並ぶように配置し、各ワイヤ集合体12を構成する単線スチールワイヤ10として素線径が異なる少なくとも2種類の単線スチールワイヤ10iを使用し、素線径の最大値dmax及び最小値dminを、0.28mm≦dmax≦0.40mm、0.15mm≦dmin≦0.35mm、1.05≦dmax/dmin≦2.00の関係にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の単線スチールワイヤを引き揃えてゴム中に埋設してなるベルト層を備えた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、タイヤ耐久性能を良好に維持しながら転がり抵抗の低減を可能にした空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りラジアルタイヤのベルト層の補強コードとして、複数本のフィラメントを撚り合わせてなるスチールコードが使用されている。しかしながら、複数本のフィラメントを撚り合わせてなるスチールコードは、フィラメント間に形成される内部空隙によりコード径が大きくなり、それに伴って多量のコートゴムが必要になるため、空気入りラジアルタイヤの転がり抵抗が大きくなり易い。
【0003】
そこで、ベルト層のコートゴムを減らして空気入りラジアルタイヤの転がり抵抗を低減するために、ベルト層の補強コードとして単線スチールワイヤを使用することが提案されている。ところが、伸線加工された単線スチールワイヤにおいては伸線ダイスに近いワイヤ表面側ほど金属組織に過度の配向が生じているため、その単線スチールワイヤをベルト層の補強コードとしてそのまま使用すると、単線スチールワイヤの耐疲労性が悪く、タイヤ耐久性能が低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解消するために、単線スチールワイヤに3次元形状の癖付けを施すことが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、癖付けを施した単線スチールワイヤを用いた場合、癖付けの無い単線スチールワイヤを用いた場合に比べてベルト層の厚さが増加し、空気入りラジアルタイヤの転がり抵抗を低減する効果が損なわれることになる。
【0005】
また、単線スチールワイヤをベルト層の補強コードとして使用する場合、ベルト層の総強力を確保するために、単線スチールワイヤをベルト層中に比較的高い打ち込み密度で配置する必要があるが、その結果としてベルト層におけるコード間隔が狭くなり過ぎると、ベルトエッジセパレーションが発生した際に、そのベルトエッジセパレーションがタイヤ周上の広い範囲に伝播し易くなる。そのため、ベルト層に単線スチールワイヤを用いる場合、ベルトエッジセパレーションに起因する故障を生じ易くなり、このこともタイヤ耐久性能を低下させる要因になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−300905号公報
【特許文献2】特開2000−343906号公報
【特許文献3】特開2001−80313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複数本の単線スチールワイヤを引き揃えてゴム中に埋設してなるベルト層を設けるにあたって、タイヤ耐久性能を良好に維持しながら転がり抵抗の低減を可能にした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、トレッド部におけるカーカス層の外周側に、複数本の単線スチールワイヤを引き揃えてゴム中に埋設してなる複数層のベルト層を配設した空気入りラジアルタイヤにおいて、各単線スチールワイヤにその軸廻りに捩りを与えると共に、前記ベルト層内に2〜4本の前記単線スチールワイヤからなる複数のワイヤ集合体を形成し、各ワイヤ集合体において前記単線スチールワイヤを前記ベルト層の面方向に並ぶように配置し、各ワイヤ集合体を構成する前記単線スチールワイヤとして素線径が異なる少なくとも2種類の単線スチールワイヤを使用し、前記素線径の最大値dmax 及び最小値dmin を、0.28mm≦dmax ≦0.40mm、0.15mm≦dmin ≦0.35mm、1.05≦dmax /dmin ≦2.00の関係にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ベルト層の補強コードとして単線スチールワイヤを採用するにあたって、ベルト層を構成する単線スチールワイヤに捩りを与えることにより、単線スチールワイヤにおいて伸線加工に起因して生じる金属表面組織の過配向を緩和するので、単線スチールワイヤの耐疲労性を改善してタイヤ耐久性能を向上することができる。しかも、ベルト層内に2〜4本の単線スチールワイヤからなる複数のワイヤ集合体を形成しているため、ベルトエッジセパレーションが発生し難く、仮にベルトエッジセパレーションが発生したとしても、それがワイヤ集合体内に留まり、タイヤ周上の広い範囲に伝播するのを抑制することができる。そのため、ベルトエッジセパレーションに起因する故障を防止し、タイヤ耐久性能を向上することができる。更に、各ワイヤ集合体を構成する単線スチールワイヤとして素線径が異なる少なくとも2種類の単線スチールワイヤを使用することにより、ワイヤ相互間へのゴム浸透性が高くなるため、ベルトエッジセパレーションの抑制効果を改善すると共に、単線スチールワイヤの折損を効果的に防止することができる。
【0010】
また、捩りを与えた単線スチールワイヤを用い、各ワイヤ集合体において単線スチールワイヤをベルト層の面方向に並ぶように配置した場合、癖付けを施した単線スチールワイヤを用いた場合とは異なってベルト層の厚さが増加することはないので、単線スチールワイヤの使用に基づいてベルト層のコートゴムを削減し、空気入りラジアルタイヤの転がり抵抗を十分に低減することができる。
【0011】
単線スチールワイヤの耐疲労性を改善するには上記ワイヤ表面捩り角を大きくすることが望ましいが、それが過大であると単線スチールワイヤの生産性が落ち製造上好ましくない。そのため、単線スチールワイヤの軸方向に対するワイヤ表面捩り角θは1°〜15°にすることが好ましい。
【0012】
なお、ここで言うワイヤ表面捩り角θは以下のようにして測定される。先ず、空気入りラジアルタイヤから単線スチールワイヤを取り出し、そのワイヤを有機溶剤に浸漬して表面に付着するゴムを膨潤させた後、そのゴムを除去する。そして、光学顕微鏡にて単線スチールワイヤを観察し、単線スチールワイヤの素線径d(mm)を測定すると共に、ワイヤ表面に形成された伸線痕から捩りピッチP(mm)の1/2の値を測定し、それを2倍して捩りピッチPを求める。捩りピッチPは少なくとも10箇所での測定値の平均値とする。これら素線径d及び捩りピッチPに基づいて下記(1)式からワイヤ表面捩り角θを算出する。
θ=ATAN(π×d/P)×180/π・・・(1)
【0013】
本発明において、ベルト層の層間ゴムゲージは0.4mm〜0.8mmにすることが好ましい。これにより、転がり抵抗の低減効果を十分に維持しながら、ベルトエッジセパレーションを抑制することができる。
【0014】
ワイヤ集合体において隣り合う単線スチールワイヤの素線径は互いに異ならせることが好ましい。これにより、ワイヤ相互間へのゴム浸透性が更に高くなるため、ベルトエッジセパレーションの抑制効果と単線スチールワイヤの折損防止効果を高めることができる。
【0015】
ベルト層における単線スチールワイヤの打ち込み密度は80本/50mm〜150本/50mmとすることが好ましい。これにより、ベルト層の総強力を十分に確保すると共に、ベルトエッジセパレーションを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す子午線半断面図である。
【図2】図1の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト層の一部を拡大して示す断面
【図3】図1の空気入りラジアルタイヤにおけるベルト層の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の空気入りラジアルタイヤでベルト層に使用される単線スチールワイヤを示す側面図である。
【図5】図4の単線スチールワイヤの一部を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、図2及び図3はそれぞれ当該空気入りラジアルタイヤのベルト層を示し、図4及び図5は本発明でベルト層に使用される単線スチールワイヤを示すものである。
【0018】
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカス層4の補強コードとしては、一般には有機繊維コードが使用されるが、スチールコードを使用しても良い。ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部分と折り返し部分により包み込まれている。
【0019】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層8が埋設されている。これらベルト層8はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層8において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。
【0020】
ベルト層8の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層9が配置されている。このベルトカバー層9は少なくとも1本の補強コードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルトカバー層9は図示のようにベルト層8の幅方向の全域を覆うように配置しても良く、或いは、ベルト層8の幅方向外側のエッジ部のみを覆うように配置しても良い。ベルトカバー層9の補強コードとしては、ナイロン、PET、アラミド等の有機繊維を単独で又は複合して用いたコードを使用すると良い。
【0021】
上記空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層8を構成する補強コードとして、軸廻りに捩りを与えた単線スチールワイヤ10(図4及び図5参照)が使用されている。図4及び図5において、単線スチールワイヤ10の表面には伸線加工に起因する伸線痕11が形成されているが、その伸線痕11に基づいて判定される捩りピッチP(mm)と単線スチールワイヤ10の素線径d(mm)とから算出される単線スチールワイヤ10の軸方向に対するワイヤ表面捩り角θは、1°以上の範囲、より好ましくは、1°〜15°の範囲になっている。
【0022】
図2に示すように、ベルト層8において、2〜4本の単線スチールワイヤ10が互いに近接することで1つのワイヤ集合体12を形成し、そのようにして形成された複数のワイヤ集合体12が単線スチールワイヤ10の長手方向と直交する方向に所定の隙間をおいて配置されている。なお、図2では2本の単線スチールワイヤ10が1つのワイヤ集合体12を形成しているが、図3では3本の単線スチールワイヤ10が1つのワイヤ集合体12を形成している。各ワイヤ集合体12において、単線スチールワイヤ10はベルト層8の面方向に並ぶように配置されている。また、各ワイヤ集合体12を構成する単線スチールワイヤ10として素線径が異なる少なくとも2種類の単線スチールワイヤ10i(1≦i≦4)が使用されている。
【0023】
そして、単線スチールワイヤ10の素線径の最大値dmax 及び最小値dmin は、以下の関係に設定されている。
0.28mm≦dmax ≦0.40mm
0.15mm≦dmin ≦0.35mm
1.05≦dmax /dmin ≦2.00
【0024】
上述のように複数本の単線スチールワイヤ10を引き揃えてゴム中に埋設してなるベルト層8を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、各単線スチールワイヤ10にその軸廻りに捩りを与えることにより、単線スチールワイヤ10において伸線加工に起因して生じる金属表面組織の過配向を緩和するので、単線スチールワイヤ10の耐疲労性を改善してタイヤ耐久性能を向上することができる。
【0025】
ここで、ワイヤ表面捩り角θが1°未満であると単線スチールワイヤ10の耐疲労性の改善効果が不十分になる。一方、ワイヤ表面捩り角θが15°を超えると単線スチールワイヤ10の生産性が落ち製造上好ましくない。
【0026】
また、上記空気入りラジアルタイヤにおいては、ベルト層8内に2〜4本の単線スチールワイヤ10からなる複数のワイヤ集合体12を形成しているため、ベルトエッジセパレーションが発生し難く、仮にベルトエッジセパレーションが発生したとしても、それがワイヤ集合体12内に留まり、タイヤ周上の広い範囲に伝播するのを抑制することができる。そのため、ベルトエッジセパレーションに起因する故障を防止し、タイヤ耐久性能を向上することができる。なお、ワイヤ集合体12を構成する単線スチールワイヤ10の本数が5本以上であると、ワイヤ集合体12内の比較的大きな範囲にわたってベルトエッジセパレーションが発生し易くなる。
【0027】
また、上記空気入りラジアルタイヤにおいては、各ワイヤ集合体12を構成する単線スチールワイヤ10として素線径が異なる少なくとも2種類の単線スチールワイヤ10iを使用することにより、ワイヤ相互間へのゴム浸透性が高くなる。つまり、ワイヤ集合体12がベルト層8の厚さ方向に凹凸を持つことになるため、単線スチールワイヤ10の相互間にゴムが流入し易くなる。そのため、ベルトエッジセパレーションの抑制効果を改善すると共に、単線スチールワイヤ10の折損を効果的に防止することができる。
【0028】
ここで、単線スチールワイヤ10の素線径の最大値dmax が0.28mmよりも小さいとベルト層8の剛性が不足するためベルトエッジセパレーションが発生し易くなり、逆に0.40mmよりも大きいと耐疲労性が悪化するため単線スチールワイヤ10の折損が生じ易くなる。また、単線スチールワイヤ10の素線径の最小値dmin が0.15mmよりも小さいとベルト層8の剛性が不足するためベルトエッジセパレーションが発生し易くなり、逆に0.35mmよりも大きいとゴム浸透性の改善効果が不十分になる。また、dmax /dmin が1.05よりも小さいとゴム浸透性の改善効果が不十分になり、逆に2.00よりも大きいと太い方の単線スチールワイヤ周りへのゴムの食い込み量が低下するためベルトエッジセパレーションが発生し易くなる。
【0029】
各ワイヤ集合体12は、隣り合う単線スチールワイヤ10の素線径が互いに異なるように構成することが好ましい。図2においては、各ワイヤ集合体12が最小値dmin を有する1本の単線スチールワイヤ101と最大値dmax を有する1本の単線スチールワイヤ102とから構成され、これら単線スチールワイヤ101と単線スチールワイヤ102とが隣り合うように配置されている。図3においては、各ワイヤ集合体12が最小値dmin を有する2本の単線スチールワイヤ101と最大値dmax を有する1本の単線スチールワイヤ102とから構成され、これら単線スチールワイヤ102の両側に単線スチールワイヤ101が配置されている。このような構成により、ワイヤ相互間へのゴム浸透性が更に高くなるため、ベルトエッジセパレーションの抑制効果と単線スチールワイヤ10の折損防止効果を高めることができる。
【0030】
更に、上記空気入りラジアルタイヤにおいては、捩りを与えた単線スチールワイヤ10を用い、各ワイヤ集合体12において単線スチールワイヤ10をベルト層8の面方向に並ぶように配置しているため、単線スチールワイヤ10の使用に基づいてベルト層8のコートゴムを減らして空気入りラジアルタイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0031】
ここで、ベルト層8の層間ゴムゲージtは0.4mm〜0.8mmにすると良い。これにより、転がり抵抗の低減効果を十分に維持しながら、ベルトエッジセパレーションを抑制することができる。ベルト層8の層間ゴムゲージtが0.4mmよりも小さいとベルトエッジセパレーションが発生し易くなり、逆に0.8mmよりも大きいと転がり抵抗の低減効果が不十分になる。なお、ベルト層8の層間ゴムゲージtは上記範囲にすることが好ましいが、各ベルト層8においてコートゴムは単線スチールワイヤ10の両側で同一厚さであっても良く、或いは、単線スチールワイヤ10に対して偏肉していても良い。
【0032】
また、各ベルト層8において隣り合う一対のワイヤ集合体12の相互間隔Gは、0.1mm〜0.3mmであると良い。ワイヤ集合体12の相互間隔Gが0.1mmよりも小さいとベルトエッジセパレーションが広い範囲に伝播し易くなり、逆に0.3mmよりも大きいと単線スチールワイヤ10の折損を生じ易くなる。
【0033】
ベルト層8における単線スチールワイヤ10の打ち込み密度は80本/50mm〜150本/50mmであると良い。この打ち込み密度が80本/50mm未満であるとベルト層8の総強力を確保することが難しくなり、逆に150本/50mmを超えると単線スチールワイヤ10の相互間隔が狭くなり、タイヤ耐久性能が悪化する。また、単線スチールワイヤ10の打ち込み密度が150本/50mmを超えるとベルト層8の製造自体も困難になる。
【実施例】
【0034】
タイヤサイズ215/60R16で、複数本の補強コードを引き揃えてゴム中に埋設してなる2層のベルト層を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、各単線スチールワイヤにその軸廻りに捩りを与えると共に、ベルト層内に2〜4本の単線スチールワイヤからなる複数のワイヤ集合体を形成し、各ワイヤ集合体において単線スチールワイヤをベルト層の面方向に並ぶように配置し、各ワイヤ集合体を構成する単線スチールワイヤとして素線径が異なる複数種類の単線スチールワイヤを使用し、単線スチールワイヤの素線径d1〜d4、ベルト層における単線スチールワイヤの打ち込み密度、ベルト層のゲージ、ベルト層の層間ゴムゲージを表1及び表2のように設定した実施例1〜6及び比較例1〜8のタイヤを製作した。実施例1〜6及び比較例1〜8において、単線スチールワイヤの捩りピッチPを20mmとしたため、ワイヤ表面捩り角θは素線径d1〜d4に応じて変化している。各ワイヤ集合体においては、素線径d1〜d4の順序で複数本の単線スチールワイヤを配列した。
【0035】
比較のため、ベルト層の補強コードとして素線径が0.28mmである3本のフィラメントを撚り合わせた1×3構造のスチールコードを用い、これらスチールコードを等間隔に配置した従来例1のタイヤを用意した。
【0036】
従来例1、実施例1〜6及び比較例1〜8のタイヤにおいて、カーカス層側から数えて1番目のベルト層は幅を175mmとし、タイヤ周方向に対するコード角度は25度とした。カーカス層側から数えて2番目のベルト層は幅を165mmとし、タイヤ周方向に対するコード角度は25度とした。
【0037】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、タイヤ耐久性能及び転がり抵抗を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0038】
タイヤ耐久性能:
各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて内圧を170kPaに設定し、直径1707mmの試験ドラム上で荷重とスリップ角を矩形波変動させながら速度25km/hで走行させた。その際、荷重は4.5±2.5kN、スリップ角は0±5°の範囲で変動させ、矩形波変動の周波数は0.07Hzとした。上記条件にて300km走行した後にタイヤを解体し、ベルト層を構成するスチールコード又は単線スチールワイヤの折損本数を調査し、ベルトエッジセパレーションの最大長さを測定した。ベルト層の折損本数は5本以下であることが好ましく、ベルトエッジセパレーションの最大長さは5mm以下であることが好ましい。
【0039】
転がり抵抗:
ISO28580に基づく試験法に準拠し、各試験タイヤをリムサイズ16×6.5Jのホイールに組み付けて内圧を210kPaに設定し、直径1707mmの試験ドラムを用いたフォース法により、荷重5.42kN、速度80km/hの条件にて転がり抵抗を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1及び表2から判るように、実施例1〜6のタイヤは、従来例1との対比において、タイヤ耐久性能を良好に維持しながら転がり抵抗を低減することができた。
【0043】
これに対して、比較例1のタイヤは、素線径の最大値dmax が小さくベルト層の剛性が不足するためベルトエッジセパレーションが大きく成長していた。比較例2のタイヤは、素線径の最大値dmax が大きいため単線スチールワイヤの折損が多くなっていた。比較例3のタイヤは、素線径の最小値dmin が小さくベルト層の剛性が不足するためベルトエッジセパレーションが大きく成長していた。比較例4のタイヤは、素線径の最小値dmin が大きくゴム浸透性が悪いためベルトエッジセパレーションが大きく成長していた。比較例5のタイヤは、dmax /dmin が小さくゴム浸透性が悪いためベルトエッジセパレーションが大きく成長していた。比較例6のタイヤは、dmax /dmin が大きく太い方の単線スチールワイヤ周りへのゴムの食い込み量が低下するためベルトエッジセパレーションが大きく成長していた。比較例7のタイヤは、単線スチールワイヤを一律に太くしたため単線スチールワイヤの折損が多くなっていた。比較例8のタイヤは、単線スチールワイヤを一律に細くしたためベルトエッジセパレーションが大きく成長していた。
【符号の説明】
【0044】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
8 ベルト層
9 ベルトカバー層
10 単線スチールワイヤ
11 伸線痕
12 ワイヤ集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部におけるカーカス層の外周側に、複数本の単線スチールワイヤを引き揃えてゴム中に埋設してなる複数層のベルト層を配設した空気入りラジアルタイヤにおいて、各単線スチールワイヤにその軸廻りに捩りを与えると共に、前記ベルト層内に2〜4本の前記単線スチールワイヤからなる複数のワイヤ集合体を形成し、各ワイヤ集合体において前記単線スチールワイヤを前記ベルト層の面方向に並ぶように配置し、各ワイヤ集合体を構成する前記単線スチールワイヤとして素線径が異なる少なくとも2種類の単線スチールワイヤを使用し、前記素線径の最大値dmax 及び最小値dmin を、0.28mm≦dmax ≦0.40mm、0.15mm≦dmin ≦0.35mm、1.05≦dmax /dmin ≦2.00の関係にしたことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記ベルト層の層間ゴムゲージを0.4mm〜0.8mmにしたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記ワイヤ集合体において隣り合う単線スチールワイヤの素線径を互いに異ならせたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記ベルト層における前記単線スチールワイヤの打ち込み密度を80本/50mm〜150本/50mmにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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