説明

空気冷媒冷凍装置

【課題】設備の小型化且つ簡素化を可能として設備コストを低減でき、またエネルギ効率の高い空気冷媒冷凍装置を提供する。
【解決手段】冷凍空間を形成する冷凍庫1と、該冷凍庫1の空気を吸引して断熱圧縮する圧縮機3と、圧縮空気を冷却用流体との熱交換により冷却する一次冷却器5と、冷却圧縮空気を断熱膨張する膨張機2とを有し、該膨張機2により得られた低温空気を前記冷凍室に供給して前記冷凍空間を形成するようにした空気冷媒冷凍装置において、冷凍空間を断熱材10を介して2つの連通する空間に仕切り、一の空間は被冷却物を冷却する作用空間11とし、他の空間は冷却に使用された空気を排出する排出空間15とし、該排出空間内に、一次冷却器5を経た空気が通過する冷熱吸収経路22を設け、該冷熱吸収経路を通過する空気が、作用空間11から流入して排出空間15を通過する低温空気との熱交換により所定温度まで冷却されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を直接断熱圧縮した後断熱膨張して、冷凍空間を冷却する空気冷媒冷凍装置に関し、特に、小型化且つ簡素化された装置構成を有するとともに、エネルギ効率を向上させることができる空気冷媒冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍装置の冷媒としてはフロン系冷媒が多く用いられてきたが、フロンガスによるオゾン層破壊が問題となり、地球環境保全の見地からその使用が制限されつつある。また、これに代わる冷媒としてアンモニア系冷媒が用いられているが、このアンモニア系冷媒も安全性の面から問題が残る。そこで近年は、環境へ悪影響を及ぼさず且つ安全性の高い空気冷媒が注目を集めている。空気冷媒を用いた冷凍装置は、空気を直接断熱圧縮した後断熱膨張して、冷凍空間を冷却する装置である。フロン系冷媒或いはアンモニア系冷媒を用いた冷凍装置では、冷媒の流通する熱交換器で間接的に冷却空間を冷却する構成であるのに対して、この空気冷媒冷凍装置は空気を直接断熱膨張により冷却するので、前記熱交換器が不要で、同時に熱交換器性能維持のためのデフロスト操作が不要であるため、その分のエネルギロスが無くなるという利点を有する。
しかし、圧縮・膨張操作で液/ガスの相変化を伴うフロン系冷媒或いはアンモニア冷媒冷凍装置に比べて、潜熱利用のできない空気冷媒冷凍装置では、従来の利用頻度の多い温度域において効率(COP:成績係数)が低い。また装置が大型化するなどの難点があった。
【0003】
一方、食品産業市場では、冷凍食品が高度に普及し、加えて高品質で安全性の高い食品を求める方向へ志向しており、−60℃以下の温度域での冷凍冷蔵のニーズが高まっている。ところが、空気冷媒冷凍装置において、従来利用頻度の多い温度域では、フロン系冷媒やアンモニア系冷媒利用の冷凍装置より低効率であったのが、その成績係数の温度依存性が小さく、装置の構成によっては−50℃近辺より逆転し、従来の冷凍方式より効率が高くなることがわかった。即ち、極低温の冷凍冷蔵においては、前記した環境安全問題とともに、空気冷媒冷凍装置が優位に立つ時代が到来することが予測される。
【0004】
このような空気冷媒冷凍装置の基本構成は、特許文献1(特開2006−90599号公報)等に記載されるように、高温高圧の空気を生成する圧縮機と、該高温高圧空気を、外気若しくは冷却水との熱交換により冷却する熱交換器と、該冷却した空気を断熱膨張させる膨張機と、該断熱膨張にて得られた低温空気が供給される冷凍室とから構成される。このような空気冷媒冷凍装置では、圧縮機の吐出圧力を高くすると圧縮機の動力が嵩むため、この圧力を低くすることが望まれている。しかし吐出圧力が低いと、前記熱交喚器のみでは十分な冷却温度が得られないため、特許文献2(特開2005−265349号公報)、特許文献3(特開2006−71128号公報)等に記載されるように、前記熱交換器にて一次冷却した空気を、冷凍室から排出される冷熱と熱交換して更に温度を下げる冷熱回収用熱交換器を具備した構成が知られている。
【0005】
冷熱回収用熱交換器を具備した冷凍装置の一例を図8に示す。同図に示すように、空気冷媒冷凍装置は、冷凍庫51内の−60℃以下、相対湿度85%、大気圧の空気を吸引して冷熱回収用熱交換器52に導き、該熱交換器52の伝熱面を介して、一次冷却器56から膨張機54に導かれる一次冷却後の高圧空気と熱交換し、冷凍庫51からの低温空気の冷熱を前記一次冷却後の高圧空気に与える。温度上昇した空気は、圧縮機53で必要圧力まで圧縮され、これにより温度がさらに上昇するので一次冷却器56で水冷し常温付近まで冷却し、さらに上記したごとく冷熱回収用熱交換器52にて降温し、膨張機54に導入する。膨張機54で大気圧近傍まで膨張させ−70℃以下の冷風を得、この冷風を直接冷凍庫51内に供給し、庫内を冷凍空間に保つ構成となっている。
この冷熱回収用熱交換器52は熱効率を向上させるために用いられ、特に、圧縮機53の吐出圧力を低く維持したい場合に好適に用いられ、吐出圧力が小さくても所望の温度まで空気を冷却することができるようになる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−90599号公報
【特許文献2】特開2005−265349号公報
【特許文献3】特開2006−71128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献2及び特許文献3に記載される冷熱回収用熱交換器には、例えばアルミ製のフィン付プレートが用いられるが、この熱交換器にて空気冷媒の大幅な降温が必要となるため装置が大型化してしまう。またこの熱交換器では、断熱機能を高く維持しなければならないため、従来はスタイルホーム等の発砲タイプの断熱材を肉厚100mm程度で構成していたが、この断熱材により装置がさらに大型化し、延いては設備コストが増大してしまうという問題があった。特に、圧縮機からの吐出圧力を小さく抑えようとすると、冷熱回収用熱交換器を大きくせざるを得ず、エネルギー効率の向上と、設備の小型化及び設備コストの低減を同時に解消できる構成が求められている。
従って、本発明は上記従来の技術の問題点に鑑み、設備の小型化且つ簡素化を可能として設備コストを低減でき、またエネルギ効率の高い空気冷媒冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、冷凍空間を形成する冷凍室と、該冷凍室の空気を吸引して断熱圧縮する圧縮機と、圧縮空気を冷却用流体との熱交換により冷却する一次冷却器と、冷却圧縮空気を断熱膨張する膨張機とを有し、該膨張機により得られた低温空気を前記冷凍室に供給して前記冷凍空間を形成するようにした空気冷媒冷凍装置において、
前記冷凍空間を断熱材を介して2つの連通する空間に仕切り、一の空間は被冷却物を冷却する作用空間とし、他の空間は冷却に使用された空気を排出する排出空間とし、
前記排出空間内に、前記一次冷却器を経て一次冷却された空気が通過する冷熱吸収経路を設け、該冷熱吸収経路が前記膨張機の吸引側に接続されるようにし、
前記冷熱吸収経路を通過する空気が、前記作用空間から流入して前記排出空間を通過する低温空気との熱交換により所定温度まで冷却されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、従来は冷凍室とは別に設置されていた冷熱回収用熱交換器を冷凍室内に組み込んだ構成としたため、エネルギ効率が高い状態を維持しつつ装置の小型化及び簡素化が可能となり、設備コストを削減することができる。また、このような構成とすることにより、冷熱回収用熱交換器に用いていた防熱材を削減できるとともに、本発明の冷凍室内に設置する断熱材の肉厚を、従来の冷熱回収用熱交換器に使用する断熱材よりも薄くすることができる。
【0010】
また、前記作用空間から前記排出空間に流入した空気の流れ方向に対して前記排出空間の下流側、若しくは前記冷凍室と前記圧縮機の間に、前記排出空間を通過した空気中に存在する異物を除去する異物除去フィルタを設けたことを特徴とする。
本発明によれば、冷凍室に飛散した異物を異物除去フィルタで除去することができ、冷凍サイクルの系内に異物が混入することを防止し、異物が圧縮機に詰まって故障するなどの不具合を防止することができる。
また、本発明では、異物除去フィルタを略常温の雰囲気下にて用いることができるため、該異物除去フィルタの構造を簡単にすることができ、またメンテナンスが容易に行える。メンテナンスでは、異物除去フィルタを定期的または連続的に洗浄するが、この洗浄の際にも冷凍空間へ与える熱負荷が小さくて済む。
【0011】
さらに、前記異物除去フィルタがロールフィルタであり、該ロールフィルタの一部にフィルタ洗浄手段を設けるとともに、前記圧縮機の吸引圧力を検知する圧力センサを設け、該検知された吸引圧力に基づいて前記フィルタ洗浄手段の作動を制御することを特徴とする。
本発明によれば、異物除去フィルタとしてロールフィルタを用いることで、異物を連続的に除去することができる。また、ロールフィルタを用いることにより、洗浄装置はフィルタの一部に設けるのみで全体の洗浄、メンテナンスを行うことができるため、洗浄装置の小型化が可能である。また圧縮機の吸引圧力に基づいてフィルタ洗浄手段を作動させることにより、フィルタの目詰まりを感知しきれない場合であっても自動的にフィルタ洗浄を行うことができるようになる。勿論、フィルタ洗浄を行う際には、ロールフィルタの巻き取り操作も同時に行うものとする。
【0012】
また、前記フィルタ洗浄手段が、前記ロールフィルタの下方に設置され、
前記一次冷却器にて得られた温排水をフィルタ面に対して下方から噴射する温排水噴射手段と、前記ロールフィルタの移動方向に対して少なくとも前記温排水噴射手段の後側に設置されて該ロールフィルタに付着した異物を掻き取る掻き取り手段と、からなることを特徴とする。
このように、一次冷却器から得られた温排水をフィルタ洗浄に用いることで、他から洗浄水を導入する必要がなく、また従来は洗浄水の加熱に使用していたボイラの重油を削減でき、省水、省エネルギー化が実現できる。
【0013】
さらに、前記排出空間の上流側若しくは前段に、前記異物除去フィルタよりも目開きが大きい吸入側フィルタを設け、前記作用空間を通過した低温空気中の異物及び氷を除去することを特徴とする。
本発明によれば、排出空間の上流側に吸入側フィルタを設置することで、水分負荷が増加した際に発生する大きな氷(雪を含む)を除去することができる。また、大型の異物の混入に対して、異物除去フィルタのみではすぐに閉塞を起こす可能性があるため、本発明のごとく2段階のフィルタリングを行うことによって系内への異物の侵入を阻止することができる。
【0014】
さらにまた、前記一次冷却器にて得られた温排水を貯留する温水タンクと、該温水タンク内の温排水を前記冷凍室に供給する温排水供給経路とを備え、前記温排水を前記冷凍室の洗浄に用いるようにしたことを特徴とする。
これによれば、従来は一次冷却器から外気へ捨てていた熱を、温水タンクで回収し、貯蔵することで熱の有効利用が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以前記載のごとく本発明によれば、従来は冷凍室とは別に設置されていた冷熱回収用熱交換器を冷凍室内に組み込んだ構成とすることにより、エネルギ効率が高い状態を維持しつつ装置の小型化及び簡素化が可能となり、設備コストを削減することができる。また、このような構成とすることにより、冷熱回収用熱交換器に用いていた防熱材を削減できる。
また、排出空間の下流側に異物除去フィルタを設置することにより、冷凍室内で発生した異物が冷凍サイクルに侵入することを回避でき、圧縮機の故障等の冷凍サイクルの不具合を防止することができる。さらに、異物除去フィルタを略常温の雰囲気下にて用いることができるため、該異物除去フィルタの構造を簡単にすることができ、またメンテナンスが容易に行える。
さらにまた、異物除去フィルタをロールフィルタとすることにより、フィルタの洗浄装置を小型化できる。また圧縮機の吸引圧力に基づいてフィルタ洗浄手段を作動させることにより、フィルタの目詰まりを感知しきれない場合であっても自動的にフィルタ洗浄を行うことができるようになる。
【0016】
また、排出空間の上流側若しくは前段に吸入側フィルタを設置することで、水分負荷が増加した際の大きな氷を除去することができるとともに、大型の異物の混入に対して、異物除去フィルタのみではすぐに閉塞を起こす可能性があるため、2段階のフィルタリングによって系内への物粉の流入を阻止することができる。
さらに、一次冷却器から得られた温排水をフィルタ洗浄、若しくは冷凍室洗浄に用いることで、省水、省エネルギー化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例1に係る空気冷媒冷凍装置の構成図、図2は本発明の実施例2に係る空気冷媒冷凍装置の構成図、図3は図2の実施例2を応用した図、図4は図3のフィルタを説明する図、図5は図2及び図3の実施例2を応用した図、図6は本発明の実施例3に係る空気冷媒冷凍装置の構成図、図7は本発明の実施例3に係るフィルタ洗浄装置の概略図である。
【実施例1】
【0018】
図1を参照して、本実施例に係る空気冷媒冷凍装置の基本構成を説明する。
本実施例に係る空気冷媒冷凍装置は、断熱材により囲繞された冷凍空間を有し、該冷凍空間にて被冷却物を低温空気と接触させて冷凍温度以下まで冷却する冷凍庫(冷凍室)1を備えている。この冷凍庫1の空気排出口から排出された空気は、圧縮機3、一次冷却器5、膨張機2の順に配設された冷凍サイクルによって冷却され、生成した低温空気は冷凍庫1の空気吸入口より庫内に供給されるようになっている。
具体的には、冷凍庫1の空気排出口は、空気排出経路23を介して圧縮機3の吸引側に接続され、該圧縮機3の吐出側は一次冷却器5の空気入口に接続される。該一次冷却器5は、井戸水や水道水等の冷却水との熱交換により圧縮機3からの高温高圧空気を冷却する装置である。また一次冷却器5の出口側は、後述する冷凍庫1の冷熱吸収経路22を通って膨張機2の吸入側に接続される。膨張機2の吐出側は、冷凍庫1の空気吸入口に接続される。前記圧縮機3と膨張機2の回転軸は、モータ4の駆動軸に同軸的に接続されて駆動する構成となっている。
【0019】
さらに本実施例では、その特徴的な構成として、従来は冷凍庫1とは別に設けられていた冷熱回収用熱交換器(図8参照)の機能を、冷凍庫1内に装備した構成としている。
具体的には、冷凍庫1内の冷凍空間を、断熱材10を介して2つの連通する空間に仕切り、空気吸入口側に位置する空間を、被冷却物30を冷却する作用空間11とし、空気排出口側に位置する空間を、冷却後の低温空気を排出する排出空間15としている。そしてこの排出空間15には、前記一次冷却器5を経て一次冷却された空気が通過する冷熱吸収経路22を設けている。ここでは、冷熱吸収経路22を通過する高温側の空気と、作用空間11から排出空間15に流入する低温側の空気とを熱交換するようになっており、冷熱吸収経路22を経た空気は、冷凍庫1内の低温空気から冷熱を与えられて冷却(二次冷却)され膨張機2に導かれる。一方、排出空間15を通過する空気は、冷熱吸収経路22内の空気との熱交換により昇温されて冷凍庫1の空気排出口より排出される。
【0020】
冷熱吸収経路22の構成は、所望の伝熱効率が得られる構成であれば特に限定されないが、例えば、排出空間15に一又は複数のチューブを配設した構成、またはこのチューブにフィンを付設して伝熱面積を増大させた構成、または一又は複数のプレートを配設した構成などが挙げられる。冷熱吸収経路22に使用される材料は伝熱性の高い金属材料とし、例えばアルミニウム合金等が用いられる。
【0021】
冷凍庫1の作用空間11は、被冷却物30を低温空気により冷却する構成であれば特に限定されない。この作用空間11の一例として、図に示すように、搬送コンベア13上に被冷却物30が載置され、該搬送コンベア13の直上に設けられた空気噴流部12から被冷却物30に低温空気を噴出させ、この衝突流により冷却物30を冷却する構成がある。空気噴流部12はコンベア搬送方向に複数設置される。この構成により被冷却物30を所定温度まで冷却する。搬送コンベア13は、コンベアベルトにメッシュベルトなどの空気を下方に通過させる構造を用い、下方に吹き抜けた低温空気は排出空間15に流入するようになっている。
尚、本実施例においては、系内に除湿手段を設けることが好ましい。この除湿手段の構成は特に限定されないが、例えば、系内に除湿装置を設置したり、高分子化合物等の除湿剤を装置に組み込む構成が採用できる。
【0022】
次に、本実施例1の空気冷媒冷凍装置の動作につき説明する。尚、ここに記載される温度、圧力、相対湿度等の数値は一例であり、これに限定されるものではない。
まず、冷凍庫1の空気吸入口から−60℃以下、大気圧の空気が冷凍空間内に流入し、空気噴流部12を介して作用空間11に噴出して被冷却物30が冷却される。該作用空間11を通過した−60℃程度の低温空気は排出空間15に流入し、冷熱吸収経路22を通過する40℃の高温側空気と熱交換され、該低温空気は35℃程度まで昇温して空気排出口より排出される。一方、冷熱吸収経路22を通過した40℃の高温側空気は、−55℃程度まで二次冷却されて排出される。
【0023】
冷凍庫1の空気排出口を出た35℃程度空気は圧縮機2に導かれ、該圧縮機2にて圧縮されて温度90℃、圧力0.17MPaの高温高圧空気となる。この高温高圧空気は、一次冷却器5にて冷却水により40℃まで冷却された後、冷凍庫1の排出空間15に設置された冷熱回収経路22に導入される。そして、該冷熱回収経路22にて、上記したように−55℃まで二次冷却されて排出される。
冷熱回収経路22を出た空気は膨張機3に導入され、該膨張機3にて大気圧近傍まで膨張され−60℃以下、好適には−80℃程度の低温空気を得て、この低温空気を冷凍庫1に直接供給し、庫内を冷凍空間に保つようになっている。
【0024】
本実施例によれば、従来は冷凍庫1とは別に設置されていた冷熱回収用熱交換器を、冷凍庫1内に組み込んだ構成としたため、エネルギ効率を高く維持した状態で装置の小型化及び簡素化が可能となり、設備コストを削減することができる。また、このような構成とすることにより、冷熱回収用熱交換器に用いていた防熱材を削減できるとともに、本実施例の冷凍庫1内に設置する断熱材10の肉厚を、従来の冷熱回収用熱交換器に使用する断熱材よりも薄くすることができる。
【実施例2】
【0025】
図2乃至5により、本実施例2に係る空気冷媒冷凍装置につき説明する。尚、以下の実施例2及び実施例3において、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
図2を参照して、本実施例2の空気冷媒冷凍装置は実施例1の構成に加えて、冷凍庫1の排出空間15の下流側、若しくは冷凍庫1と圧縮機3の間に、排出空間15を通過した空気中に存在する異物を除去する異物除去フィルタ16を備えた構成となっている。該異物除去フィルタ16は排出空間15を横断するごとく配設され、排出空間15にて昇温された35℃程度の空気がこのフィルタを通過するように構成される。同図にて、異物除去フィルタ16は排出空間15内に設置した構成としているが、冷凍庫1の空気排出口直後の空気排出経路23に設けるようにしてもよい。異物除去フィルタ16は、作用空間11にて被冷却物30の冷却時に発生して庫内に飛散する物粉を除去するものである。
【0026】
本実施例によれば、庫内に飛散した物粉を異物除去フィルタ16で除去することができ、冷凍サイクルの系内に異物が流入することを防止し、圧縮機3の故障等の不具合を防止することができる。
また、本実施例では、異物除去フィルタ16を略常温(本実施例では35℃)の雰囲気下にて用いることができるため、該異物除去フィルタ16の構造を簡単にすることができ、またメンテナンスが容易に行える。メンテナンスでは、異物除去フィルタ16を定期的または連続的に洗浄するが、この洗浄の際にも冷凍空間へ与える熱負荷が小さくて済む。
【0027】
図3に、本実施例2を応用した構成を示す。同図に示すように、ここでは異物除去フィルタ16としてロールフィルタ31を用いる構成としている。さらに、ロールフィルタ31の一側の端部にフィルタ31を洗浄する洗浄装置32を設けている。このとき、ロールフィルタ31の一側の端部を冷凍庫1の外部に設けて、同様に冷凍庫外部に設けた洗浄装置32によりロールフィルタ31を洗浄するようにしてもよい。
また、圧縮機2の吸引圧力を検知する圧力センサ33を設けており、検知された圧縮機吸引圧力に基づいて、ロールフィルタ31及び洗浄装置32の作動を制御するようになっている。即ち、圧縮機吸引圧力が予め設定された所定の圧力以下となったらロールフィルタ31の巻き取り操作を行い、同時に洗浄装置32を作動させるようにする。
これは、ロールフィルタ31面に物粉が付着すると、空気流路が狭まり、圧縮機吸引側の圧力が低下する。従って、この吸引圧力を検知することで、フィルタの目詰まりを感知しきれない場合であっても自動的にフィルタ31の巻き取り、洗浄を行うことができるようになる。
【0028】
本実施例によれば、異物除去フィルタとしてロールフィルタ31を用いることで、物粉を連続的に除去することができる。
また、ロールフィルタ31を用いることにより洗浄装置32の小型化が可能である。その理由を、図4を参照して説明する。図4(A)は本実施例のロールフィルタを具備した冷凍装置の側面図、(B)は比較例の固定式フィルタを具備した冷凍装置の側面図である。
同図において、作用空間11は横長に形成され、該空間を貫通するごとく搬送コンベア13が設けられている。この構成は、特開平11−63777号公報に記載されており、本実施例は、これに適用できるものである。
また、作用空間11のコンベア搬送方向の上流側には前室14aが設けられ、下流側には後室14bが設けられている。前室14a及び後室14bは、外気との連通部位を有しており、作用空間11の冷却雰囲気を保持する目的で設けられている。作用空間11の上方には、排出空間15が形成されており、この排出空間15の後流側には異物除去フィルタ31が設けられている。
【0029】
図4(B)の固定式フィルタを具備した例では、フィルタ洗浄のために、フィルタと同等のサイズの洗浄・メンテナンス用点検口35が必要となる。
これに対して、図4(A)に示した本実施例のロールフィルタを具備した例では、フィルタの一部に洗浄装置35を設けることで全体の洗浄・メンテナンスを行うことができ、洗浄装置32及び点検口35を小型化することができる。
【0030】
さらに、図5に本実施例2を応用した構成を示す。同図に示すように、異物除去フィルタ16に加えて、排出空間15の吸入側に、吸入側フィルタ17を設けた構成となっている。該吸入側フィルタ17は、異物除去フィルタ16より目開きが大きいものとすることが好ましい。また、該吸入側フィルタ17の設置位置は、作用空間11より後流側で且つ排出空間15の前段側、若しくは該排出空間15の上流側で且つ水の凍結温度以下の温度域とする。この吸入側フィルタ17を通過した空気はダクト18を通って排出空間15に流入する。
この吸入側フィルタ17は、作用空間11にて発生した氷(雪を含む)を除去するものである。
本実施例によれば、排出空間15の上流側に吸入側フィルタ17を設置することで、水分負荷が増加した際の大きな雪、氷を除去することができる。また、大型の物粉の混入に対して、異物除去フィルタ16のみではすぐに閉塞を起こす可能性があるため、2段階のフィルタリングによって系内への物粉の流入を阻止することができる。
【実施例3】
【0031】
図6及び図7により、本実施例3に係る空気冷媒冷凍装置につき説明する。
まず、図6を参照して、本実施例の空気冷媒冷凍装置は、一次冷却器5にて昇温された温排水21を貯留する温水タンク37と、該温水タンク37の温排水を冷凍庫1に供給する温排水供給経路39とが設けられた構成となっている。温排水供給経路39を介して冷凍庫1に供給された温排水は、冷凍庫1の洗浄に使用される。
また、別の構成として、温排水と、洗浄用水とを熱交換して、熱エネルギを回収する構成としてもよい。この場合、温排水は冷却されて再度一次冷却器5の熱交換に用いることができ、バルブ38により一次冷却器5への供給量が調整される。
【0032】
一次冷却器5では、圧縮機3からの高温高圧水との熱交換により、最高で80℃程度まで冷却水を昇温できる機能を有する。従って、温水タンク37には、80℃までの温度域で所望の温度の温水を貯留することができる。勿論、水道水や井戸水等の冷却水と混合して温度調整するようにしてもよい。
これによれば、従来は一次冷却器5から外気へ捨てていた熱を、温水タンク37で回収し、貯蔵することで熱の有効利用が可能となる。
一般に、冷凍装置の終業後には、冷凍庫1内部の洗浄工程が入る。従来は洗浄工程にて、ボイラによって加熱された温水を利用していたが、本実施例の構成とすることで、一次冷却器5からの排熱を回収し、得られた温排水を終業後の庫内洗浄に用いることで、従来ボイラにより加熱されていた分のエネルギを削減することができ、エネルギ効率の向上が図れる。
【0033】
また、上記した温排水の利用先として、図7に示す構成がある。これは、実施例2に示したロールフィルタ31の洗浄装置32に利用するものである。同図に示すようにこの洗浄装置32は、ロールフィルタ31の復路、即ち下側に位置するフィルタの下方に、該フィルタ下面側に向けて前記温排水を噴射する噴射ノズル32aを設けるとともに、コンベア搬送方向に対して該噴射ノズル32aの少なくとも後側に掻き取りブレード32bを設けている。掻き取りブレード32bは、噴射ノズル32aの前後に設けることが好ましい。
この洗浄装置32では、フィルタ洗浄時に噴射ノズル32aから温排水を噴射して、フィルタ面に付着した物粉を除去するとともに、フィルタ面に氷結して固着した物粉を温排水の熱により融解させ、後側の掻き取りブレード32bにより掻き取ることにより、フィルタ面を洗浄する。本実施例における洗浄は、連続的若しくは断続的に行うようになっている。
【0034】
従来は、水道水をボイラで加熱した温水を噴射ノズル32aから噴射していたが、本実施例のように、一次冷却器5から得られた温排水をフィルタ洗浄に用いることで、他から洗浄水を導入する必要がなく、また洗浄水の加熱に使用していたボイラの重油を削減でき、省水、省エネルギー化が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、地球環境に優しく且つ安全性の高い空気冷媒冷凍装置を適用する際に、エネルギ効率が高い状態を維持しつつ小型化及び簡素化された装置とすることができるため、食品産業分野における冷凍食品の製造技術を始めとして、各種産業の冷凍技術に有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1に係る空気冷媒冷凍装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る空気冷媒冷凍装置の構成図である。
【図3】図2の実施例2を応用した図である。
【図4】図3のフィルタを説明する図で、(A)はロールフィルタを具備した冷凍装置の側面図、(B)は固定式フィルタを具備した冷凍装置の側面図である。
【図5】図2、図3の実施例2を応用した図である。
【図6】本発明の実施例3に係る空気冷媒冷凍装置の構成図である。
【図7】本発明の実施例3に係るフィルタ洗浄装置の概略図である。
【図8】従来の空気冷媒冷凍装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 冷凍庫(冷凍室)
2 膨張機
3 圧縮機
5 一次冷却器
10 断熱材
11 作用空間
12 空気噴流部
13 搬送コンベア
15 排出空間
16 異物除去フィルタ
17 吸入側異物除去フィルタ
22 冷熱吸収経路
23 空気排出経路
24 圧縮空気供給経路
31 ロールフィルタ
32 洗浄装置
32a 噴射ノズル
32b 掻き取りブレード
33 圧力センサ
37 温水タンク
39 温排水利用経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍空間を形成する冷凍室と、該冷凍室の空気を吸引して断熱圧縮する圧縮機と、圧縮空気を冷却用流体との熱交換により冷却する一次冷却器と、冷却圧縮空気を断熱膨張する膨張機とを有し、該膨張機により得られた低温空気を前記冷凍室に供給して前記冷凍空間を形成するようにした空気冷媒冷凍装置において、
前記冷凍空間を断熱材を介して2つの連通する空間に仕切り、一の空間は被冷却物を冷却する作用空間とし、他の空間は冷却に使用された空気を排出する排出空間とし、
前記排出空間内に、前記一次冷却器を経て一次冷却された空気が通過する冷熱吸収経路を設け、該冷熱吸収経路が前記膨張機の吸引側に接続されるようにし、
前記冷熱吸収経路を通過する空気が、前記作用空間から流入して前記排出空間を通過する低温空気との熱交換により所定温度まで冷却されるようにしたことを特徴とする空気冷媒冷凍装置。
【請求項2】
前記作用空間から前記排出空間に流入した空気の流れ方向に対して前記排出空間の下流側、若しくは前記冷凍室と前記圧縮機の間に、前記排出空間を通過した空気中に存在する異物を除去する異物除去フィルタを設けたことを特徴とする請求項1記載の空気冷媒冷凍装置。
【請求項3】
前記異物除去フィルタがロールフィルタであり、該ロールフィルタの一部にフィルタ洗浄手段を設けるとともに、前記圧縮機の吸引圧力を検知する圧力センサを設け、該検知された吸引圧力に基づいて前記フィルタ洗浄手段の作動を制御することを特徴とする請求項2記載の空気冷媒冷凍装置。
【請求項4】
前記フィルタ洗浄手段が、前記ロールフィルタの下方に設置され、
前記一次冷却器にて得られた温排水をフィルタ面に対して下方から噴射する温排水噴射手段と、前記ロールフィルタの移動方向に対して少なくとも前記温排水噴射手段の後側に設置されて該ロールフィルタに付着した異物を掻き取る掻き取り手段と、からなることを特徴とする請求項3記載の空気冷媒冷凍装置。
【請求項5】
前記排出空間の上流側若しくは前段に、前記異物除去フィルタよりも目開きが大きい吸入側フィルタを設け、前記作用空間を通過した低温空気中の異物及び氷を除去することを特徴とする請求項2若しくは3記載の空気冷媒冷凍装置。
【請求項6】
前記一次冷却器にて得られた温排水を貯留する温水タンクと、該温水タンク内の温排水を前記冷凍室に供給する温排水供給経路とを備え、前記温排水を前記冷凍室の洗浄に用いるようにしたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の空気冷媒冷凍装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−180449(P2008−180449A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14520(P2007−14520)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】