説明

空気処理装置及び方法

【課題】動力機器を用いずに自然空冷方式のみで施設内を換気するにあたって空気中に含まれている塩分を低減する。
【解決手段】被収容物を収容する建屋2を自然通風で換気するにあたって建屋2の外の空気を建屋2の内に取り入れるダクト6と、水を溜めるトレイ7とを備え、ダクト6は建屋の外から流入してきた空気をトレイ7に溜められた水の水面に案内するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に含まれている塩分を除去する空気処理装置及び方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば使用済み核燃料が収容されている収容室を自然通風で換気するにあたって収容室内に取り入れる空気に含まれている塩分を除去する際に用いて好適な空気処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に原子炉の使用済み核燃料を貯蔵し、使用済み核燃料の除熱を行なう施設では、施設内に置かれた使用済み核燃料を入れた容器から放出される熱による浮力を利用した自然空冷方式が採用されている。しかし、自然通風で施設内を換気する自然空冷方式の場合、空気中に塩分が含まれていると、その塩分が使用済み核燃料を密封しているキャニスタと呼ばれる金属容器の表面に付着し、SCCと呼ばれる応力腐食割れを引き起こす虞がある。SCCの発生を防止するためには、キャニスタ表面に付着する塩分濃度がSCCの発生に対する限界の表面付着塩分濃度を超えないようにする必要がある。
【0003】
施設内への塩分の流入を防止するための技術としては、エアーフィルタを用いて微細粉塵を除去する技術(特許文献1)や外気に含まれる塩分粒子をフィルタで除去して送風機で給気を行なう技術(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−182127号
【特許文献2】特開平7−310938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、フィルタを介して外気を取り込むようにしているので圧力損失が大きく、施設内に冷風を送るには送風機等の動力機器が必要になるといった問題が生じる。また、特許文献2の技術では送風機を用いて給気を行なう強制空冷方式を採用しているが、自然空冷方式に比べて設備コストが大きくなるとともに送風機が止まった場合の安全性が保証できないといった問題が生じる。また、フィルタや送風機を用いるとメンテナンスが面倒であり、メンテナンスにかかるコストが大きくなってしまうといった問題が生じる。
【0006】
そこで本発明は、動力機器を用いずに自然空冷方式のみで施設内を換気するにあたってスムーズに換気することができ、空気中に含まれている塩分を低減することができる空気処理装置及び方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ランニングコストを削減することができ、メンテナンスを容易に行なうことができる空気処理装置及び方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明にかかる空気処理装置は、被収容物を収容する収容室を自然通風で換気するにあたって前記収容室の外の空気を前記収容室の内に取り入れるダクトと、水を溜めるトレイとを備え、前記ダクトは前記収容室の外から流入してきた空気を前記トレイに溜められた水の水面に案内するようにしている。
【0008】
したがって、ダクトに流入してきた空気がトレイに溜められている水に接触すると、潮解現象によって空気中の塩分が水に溶解する。これにより塩分が低減された空気によって収容室内が換気される。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の空気処理装置において、ダクトは収容室の外から流入してきた空気を水面に向けて下降させる形状に形成されているようにしている。この場合、収容室の外側からダクトに流入してくる空気が確実に水面に接触するようになるので、より一層多くの塩分が水に溶解する。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項項1または2記載の空気処理装置において、水面に間隔を空けて対向配置された壁面に突起を設けるようにしている。この場合、空気の流れが突起によって折り曲げられる。これにより空気が水に接触する機会が増え、より一層多くの塩分が水に溶解する。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気処理装置において、トレイに雨水を供給するようにしている。この場合、トレイの中に雨水が流れ込み、トレイの中の塩分を含んだ水はトレイから流出する。これによりトレイの水は常に塩分を溶解することができる状態に保持される。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の空気処理装置において、トレイに溜められている水が予め定められた水位を下回ったことを契機にトレイに水道水を供給するようにしている。この場合、雨の降らない日が続いて雨水をトレイに供給することができない場合であっても塩分を溶解するために用いられる水をトレイの中に常に満たしておくことができる。
【0013】
さらに、請求項6記載の発明は、請求項1から5に記載の空気処理装置において、被収容物は使用済核燃料であるようにしている。この場合、使用済核燃料をキャニスタに入れて貯蔵する施設において自然通風で施設内を換気する場合の施設内に取り込む空気に含まれる塩分が除去される。
【0014】
また、請求項7記載の発明にかかる空気処理方法は、被収容物を収容する収容室の外の空気を水に接触させてから収容室の奥に導くようにしている。この場合、収容室に取り込まれる空気が水に接触すると、潮解現象によって空気中の塩分が水に溶解する。これにより塩分が低減された空気によって収容室内が換気される。
【0015】
さらに、請求項8記載の発明は、請求項7記載の空気処理方法において、被収容物は使用済核燃料であるようにしている。この場合、使用済核燃料をキャニスタに入れて貯蔵する施設において自然通風で施設内を換気する場合の施設内に取り込む空気に含まれる塩分が除去される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の空気処理装置および請求項7記載の空気処理方法によれば、自然通風によって収容室内が換気される際に空気中の塩分が水に捕捉されて収容室内に持ち込まれない。したがって、例えば収容室内に設置されている金属製の機器などにおける錆の発生を防止することができる。また、構造が簡素であるので、ランニングコストを大幅に削減することができる。また、構造が簡素であるので、メンテナンス作業が容易になる。さらに、収容室内に流入してくる空気の流れが遮られないので、圧力損失を大幅に小さくすることができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明の場合、収容室の外からダクトに流入してくる空気が確実に水溜まりの水面に接触するようになるので、より一層多くの塩分を水に溶解させることができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明の場合、空気が水に接触する機会が増え、より一層多くの塩分が水に溶解する。
【0019】
また、請求項4記載の発明の場合、空気中の塩分を溶解するために用いられる溶媒となる水をコストを掛けずに得ることができる。
【0020】
また、請求項5記載の発明の場合、晴天が続いて雨水をトレイに供給することができない場合であっても塩分を溶解するために用いられる水をトレイの中に常に満たした状態にすることができる。
【0021】
請求項6記載の空気処理装置および請求項8記載の空気処理方法によれば、使用済核燃料をキャニスタに入れて貯蔵する施設において自然通風で施設内を換気する場合の施設内に取り込む空気に含まれる塩分が除去されるので、金属容器であるキャニスタのSCCの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の空気処理装置とキャスクが建屋の中に設置されているときの態様(第一の実施形態)を示す縦断面図である。
【図2】第一の実施形態の空気処理装置の概略構造を示す側面視縦断面図である。
【図3】第二の実施形態を示す空気処理装置とキャスクの縦断面図である。
【図4】空気処理装置を建屋の外壁に取り付けたときの態様(第三の実施形態)を示す側面視縦断面図である。
【図5】空気処理装置を建屋の外側に設置したときの態様(第四の実施形態)を示す側面視縦断面図である。
【図6】空気処理装置の別の実施形態の概略構造を示す側面視縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1及び図2に本発明の空気処理装置の第一の実施形態を示す。この実施形態の空気処理装置1は、キャニスタとキャスク3の二重容器に格納された使用済み核燃料を収容する収容室(一般に建屋と呼ばれている。以下、建屋と呼ぶ。)2を自然通風で換気するにあたって外気取り入れ口4の付近に設置されて空気中の塩分を除去するものである。同空気処理装置1は、建屋2の外の空気を建屋2の内に取り入れるダクト6と、水を溜めるトレイ7とを備え、ダクト6は建屋の外から流入してきた空気をトレイ7に溜められた水の水面に案内するようにしている。なお、以下、建屋2の外を「屋外」と称し、建屋2の内を「屋内」と称する。
【0025】
建屋2には屋外の空気を屋内に取り入れる外気取り入れ口4と排気口5とが備えられ、キャスク3から放出される熱によって温められた空気が上昇気流を発生させて屋内の空気を屋外に排出するように構成されている。空気処理装置1は建屋2の内側に設けられており、外気取り入れ口4に取り付けられている。排気口5から温かい空気が排出されると、この空気と入れ替わるようにして屋外の空気が外気取り入れ口4から空気処理装置1を介して屋内に流入する。このように建屋2は外気取り入れ口4と排気口5によって自然通風で換気が行なわれるように構成されている。
【0026】
空気処理装置1は屋外の空気を屋内に取り入れるダクト6と、水を溜めるトレイ7とを備えている。ダクト6は鉛直方向に積み重ねられた隔壁によって複数の空間に仕切られており、複数の入口6aと複数の出口6bを有している。出口6bはダクト6の軸方向に沿って階段状にずれて配置され、トレイ7の中に溜まる水が順次上の段から下の段へ溢流するように設けられている。
【0027】
ダクト6は屋外から外気取り入れ口4を介して流入してきた空気をトレイ7に案内する複数の案内部8と、トレイ7を有する複数の塩分回収部9とから構成されている。塩分回収部9は空気の中に含まれている塩分を回収するものであり、案内部8に連続して形成されている。塩分回収部9のそれぞれにはトレイ7が一体形成されている。本明細書におけるトレイ7とは、塩分回収部9の水を溜めておくことが可能な箇所を示す。トレイ7は水が溜められた際にその水溜まり10の水面とこの水面に対向する塩分回収部9の上壁面との間にある程度の間隔が空くように形成されている。トレイ7の先端部は出口6bからダクト6の軸方向に沿って屋内の奥側に向かって突出している。また、トレイ7は上方から水が流れ落ちてきた際にその水を受け入れ易くするように階段状に積み重ねられるように形成されている。
【0028】
トレイ7に水が溜められた際に水溜まり10の水面と対向する塩分回収部9の上壁面には、取り込まれた空気の流れを水溜まり10へ向かわせる力を発生させる障壁11が設けられている。この障壁11は、例えば断面半球状の突条であり、塩分回収部9の上壁面に塩分回収部9を横切る方向、即ち空気の流れ方向と直交する方向に長い突起によって構成されている。また、障壁11は塩分回収部9の上壁面にダクト6の軸方向に沿って複数配置されている。さらに、障壁11はトレイ7に水が満杯に溜められた際にその水溜まり10に接触しないように形成されている。
【0029】
案内部8は屋外から外気取り入れ口4及び入口6aを介して流入してきた空気をトレイ7に案内するものである。案内部8はダクト6の各入口6aと外気取り入れ口4とが連通するように外気取り入れ口4の縁に取り付けられている。屋外の空気が外気取り入れ口4及び入口6aを介して案内部8に流入してくると、その空気はトレイ7上に導かれる。また、案内部8は屋外から外気取り入れ口4及び入口6aを介して流入してきた空気をトレイ7上に向けて下降させるように屈曲した形状に形成されている。つまり、案内部8には屋外から外気取り入れ口4及び入口6aを介して流入してきた空気を下降気流にしてトレイ7上に導く下り傾斜部12が形成されている。したがって、トレイ7に水が溜められた際には、屋外から外気取り入れ口4及び入口6aを介して案内部8に流入してきた空気はトレイ7の水溜まり10の水面に衝突するようになる。
【0030】
建屋2の屋根13には雨水を屋内に取り入れるための孔13aが形成されている。この孔13aは雨水通路14を介して建屋2の内部に連通している。屋根13を伝う雨水は孔13aに流入し、雨水通路14を通ってダクト6の上面に導かれる。ダクト6の上面にはダクト6の軸方向に沿って長溝(図示省略)が形成されている。この長溝はダクト6の最上段のトレイ7に向かって形成されている。したがって、雨水通路14の排水口14aから流れ落ちてくる雨水は長溝に流れ込み、この長溝によってダクト6の最上段のトレイ7に導かれる。この最上段のトレイ7でオーバーフローした雨水はその1つ下のトレイ7に流れ込む。各トレイ7でオーバーフローした雨水は順次に下段のトレイ7に流れ込む。最下段のトレイ7からオーバーフローした雨水はダクト6の下方に設置されている排水管15に流れ込み、排水口16から屋外に排出される。
【0031】
ダクト6の最上段のトレイ7には水位計17が設置されている。雨が降らずにトレイ7に溜められている水の水位が蒸発などによって予め定められた水位を下回った際には、これを水位計17が検知し、この検知結果を受けてソレノイド(図示省略)がオンされる。ソレノイドがオンされると水道のバルブ18が開かれ、最上段のトレイ7に水道水が供給される。したがって、トレイ7は雨水の有無に関わらず常に水が満たされた状態になっている。
【0032】
以上のように構成された空気処理装置1においては、屋外の空気が案内部8に流入すると、その空気はトレイ7の水溜まり10の水面に向かって導かれる。屋外から案内部8に流入してきた空気は下り傾斜部12でトレイ7の水溜まり10の水面に向かって下降し、やがて水面に衝突する。このようにして空気が水溜まり10に接触すると、空気中に塩分が含まれている場合にはその塩分が潮解現象によって水溜まり10に溶解する。また、案内部8から塩分回収部9に空気が流入すると、障壁11によって空気の流れが折り曲げられる。これによって空気が水溜まり10の水面に衝突する機会が増え、より一層多くの塩分を水溜まり10に溶解させることができる。また、ダクト6を隔壁で仕切って、屋外からダクト6に流入してきた空気を複数のトレイ7上に導くような構造になっているので、屋外からダクト6に流入してきた空気がトレイ7に溜められた水に接触する面積を大きくすることができ、これにより屋外からダクト6に流入してきた空気に含まれている塩分を効率的に捕捉することができる。さらに、塩分回収部9を通過した空気が出口6bから出るときに出口6bを覆うようにしてトレイ7に流れ落ちてくる水に接触するので、ここでも潮解現象を利用して空気中の塩分を溶解させることができる。このように屋内を自然通風で換気するにあたって空気処理装置1を用いることにより、屋外から屋内に流入する空気の流れを遮ることなく、その空気中に含まれている塩分を大幅に低減することができる。したがって、屋内を自然通風で十分に換気することができる。また、屋内に置かれている金属性の機器の錆の発生を抑えることができる。また、構造が簡素であるのでランニングコストを大幅に削減することができる。また、構造が簡素であるのでメンテナンス作業が容易になる。
【0033】
本発明の空気処理装置1は、キャスク3を収容する建屋2に備えられるばかりではなく、キャスク3が露天で貯蔵される場合にはキャスク3に直接装備させるようにしても良い。この第二の実施形態を図3に示す。なお、第一の実施形態と同一の構成部材については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
図3に示すように、キャスク3は使用済み核燃料19を密封する金属容器であるキャニスタ20を収容し、このキャニスタ20を自然空冷で除熱するものである。キャスク3は、キャスク3の有底円筒状の本体部21と、この本体部21の内側に形成されている中空部22の開口22aを塞ぐ蓋23とから構成されている。キャスク3はキャスク3の外側の空気をキャスク3の内側に取り入れる外気取り入れ口24と、本体部21の内部に収容されるキャニスタ20の発熱によって温められ、上昇した空気をキャスク3の外側に排出する排気口25とを備えている。外気取り入れ口24は階段状に屈曲している通路26を介して中空部22に連通している。中空部22を形成している内壁面27の底27aには複数の台座28が固定されている。キャニスタ20は開口22aから中空部22に入れられ、本体部21の内壁面27とキャニスタ20の外壁面29との間に隙間が形成されるように台座28の上に載置される。開口22aが蓋23で塞がれると、蓋23の内側面23aとキャニスタ20の外壁面29との間に隙間が形成され、蓋23の内側面23aと本体部21の上面21aとの間に複数の通路30が形成される。この通路30は階段状に屈曲しており、排気口25と中空部22とを連通している。空気処理装置1は外気取り入れ口24と出口6bとが対向し、且つ出口6bが外気取り入れ口24に近接するように配置されている。空気処理装置1は支持部材31を介して例えばキャスク3の外壁面や地面などに固定されている。なお、図3に示す実施形態ではトレイ7には水道水が供給されるものとする。
【0035】
キャスク3内の空気はキャニスタ20から放出される熱によって温められ、上昇気流となってキャニスタ20の上部の排気口25から排出される。排気口25から温かい空気が排出されると、この空気と入れ替わるようにしてキャスク3の外の空気が空気処理装置1と外気取り入れ口24を介してキャスク3内に流入してくる。
【0036】
キャスク3の外側の空気が案内部8に流入すると、その空気はトレイ7の水溜まり10の水面に向かって導かれる。キャスク3の外側から案内部8に流入してきた空気は下り傾斜部12でトレイ7の水溜まり10の水面に向かって下降し、やがて水面に衝突する。このようにして空気が水溜まり10に接触すると、空気中に塩分が含まれている場合にはその塩分が潮解現象によって水溜まり10に溶解する。また、案内部8から塩分回収部9に空気が流入すると、障壁11によって空気の流れが折り曲げられる。これによって空気が水面に衝突する機会が増え、より一層多くの塩分を水溜まり10に溶解させることができる。さらに、塩分回収部9を通過した空気が出口6bから出るときに各トレイ7に流れ落ちてくる水に接触するので、ここでも潮解現象を利用して空気中の塩分を溶解させることができる。
【0037】
このようにキャスク3内を自然通風で換気するにあたって空気処理装置1を用いることにより、キャスク3の外側から内側に流入する空気の流れを遮ることなく、その空気中に含まれている塩分を大幅に低減することができる。したがって、キャスク3内を自然通風で十分に換気することができる。また、キャニスタ20に塩分が付着することによって引き起こされるSCCを抑止することができる。また、動力を必要とせず、かつ構造が簡素であるので設備コスト並びにランニングコストを大幅に削減することができる。また、構造が簡素であるのでメンテナンス作業が容易になる。
【0038】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、使用済み核燃料を収容する施設の例としてキャスク3を収容する建屋2の例を挙げて説明したが、ボールト貯蔵施設のような自然通風による冷却方式を採用する他の施設にも適用できることは言うまでもない。さらに、本発明の空気処理装置は、上述した実施形態でとりあげた原子力関係の施設に限られず、例えば沿岸地域に立地すると共に外気を取り入れて換気を行う施設であって施設内の設備や保存物にとって外気中の塩分が有害でそれを除去する必要がある場合に広く適用することができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、ダクト6を隔壁で仕切って複数の入口6aと複数の出口6bを備え、さらに複数のトレイ7を備えるようにしたが、ダクト6を仕切らずに空気処理装置1を1本のダクト6と1つのトレイ7で構成しても良い。
【0040】
また、上述した実施形態では、ダクト6内にトレイ7を形成するようにしたが、ダクト6とトレイ7とを別体に形成しても良い。この場合、トレイ7の上方の空間が開放されていると、導入外気と水との接触が十分に行なわれる前に屋内に拡散するので、トレイ7の上方に覆いを設けておくことが好ましい。そして、ダクト6の出口6bから出る空気がトレイ7の水溜まり10に衝突するようにダクト6の出口6b付近にトレイ7を配置すれば良い。また、ダクト6の形状は、ダクト6に流入した空気がトレイ7の水溜まり10の水面に向けて下降するように形成されていることが好ましい。これにより空気中に塩分が含まれている場合にはより一層多くの塩分を溶解することができる。また、トレイ7の水溜まり10の水面にある程度の間隔を空けて対向する壁面を設け、この壁面にダクト6の出口6bから出た空気の流れを水溜まり10の水面に向けて変化させる障壁11を設けることが好ましい。これによりダクト6の出口6bから出た空気が水面に接触しやすくなり、空気中に塩分が含まれている場合にはより一層多くの塩分を水に溶解させることが可能となる。
【0041】
また、上述した実施形態ではトレイ7からオーバーフローした水を排水管15によって屋外に排水するようにしたが、そのオーバーフローした水をポンプなどで循環させてトレイ7に再度供給するようにしても良い。
【0042】
また、上述した第一の実施形態では空気処理装置1を屋内に設置するようにしたが、図4に示すように、建屋2の外壁に空気処理装置1を取り付けても良い。この第三の実施形態の場合、ダクト6が屋外に晒されるので、雨水通路14を設けなくても雨樋からの雨水をトレイ7に直接供給することができる。
【0043】
さらに、図5に示すように、建屋2の外側に空気処理装置1を設けるようにしても良い。この第四の実施形態の場合には、ダクト6の出口6bと外気取り入れ口4との位置を合わせて空気処理装置1が設置される。そして、この第四の実施形態の場合も、ダクト6の各入口6aから空気処理装置1に流入した屋外の空気はトレイ7の水溜まり10の水面に向かって導かれ、空気が水溜まり10に接触すると空気中の塩分が潮解現象によって水溜まり10に溶解する。さらに、屋外の空気が各入口6aから流入するときに各入口6aを覆うようにしてトレイ7に流れ落ちてくる水に接触するので、ここでも潮解現象を利用して空気中の塩分を溶解させることができる。
【0044】
なお、第四の実施形態では、下り傾斜部12を設けない構成としている。このように、本発明の空気処理装置1においては、下り傾斜部12を設けない構成とした場合も、ダクト6の各入口6aから流入した空気の流れを障壁11によって折り曲げて水溜まり10の水面に衝突させ、水溜まり10に塩分を溶解させることができる。
【0045】
また、上述した第一の実施形態では建屋2に対して空気処理装置1を用いた例を挙げて説明し、第二の実施形態ではキャスク3に対して空気処理装置1を用いた例を挙げて説明したが、空気処理装置1を備えるキャスク3を収容する建屋2に対して空気処理装置1を備えるようにしても良い。これにより建屋2に対して備えた空気処理装置1で捕捉しきれなかった塩分をキャスク3に対して備えた空気処理装置1で捕捉することができるので、キャニスタに付着する塩分の量をより一層低減することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、ダクト6に流入してきた空気をトレイ7の水溜まり10に接触させ、潮解現象を利用して空気中の塩分を溶解するようにしたが、ダクト6に流入してきた空気をミスト状の水に接触させることによって塩分を溶解するようにしても良い。この場合、図5に示すように、ダクト6の内部に噴霧器32を設置する。そして、噴霧器32を用いてダクト6の中で水を常時噴霧する。ダクト6に流入してきた空気に含まれている塩分は噴霧器32によって噴霧されている水に接触すると潮解現象によって溶解する。噴霧される水としては、雨水を利用しても良いし、水道水であっても良い。このように空気処理装置1は、屋内あるいはキャスク3の内部を自然通風で換気するにあたってダクト6に流入してきた空気を水に接触させ、潮解現象を利用して塩分を低減させる構造になっていれば良く、その形態は適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 空気処理装置
2 建屋
3 キャスク
4、24 外気取り入れ口
5 排気口
6 ダクト
7 トレイ
8 案内部
9 塩分回収部
10 水溜まり
11 突起
12 下り傾斜部
20 キャニスタ
32 噴霧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被収容物を収容する収容室を自然通風で換気するにあたって前記収容室の外の空気を前記収容室の内に取り入れるダクトと、水を溜めるトレイとを備え、前記ダクトは前記収容室の外から流入してきた空気を前記トレイに溜められた水の水面に案内することを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
前記ダクトは前記収容室の外から流入してきた前記空気を前記水面に向けて下降させる形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の空気処理装置。
【請求項3】
前記水面に間隔を空けて対向配置された壁面に突起を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記トレイに雨水を供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気処理装置。
【請求項5】
前記トレイに溜められている水が予め定められた水位を下回ったときに前記トレイに水道水を供給することを特徴とする請求項4記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記被収容物は使用済核燃料であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の空気処理装置。
【請求項7】
被収容物を収容する収容室の外の空気を水に接触させてから前記収容室の奥に導くことを特徴とする空気処理方法。
【請求項8】
前記被収容物は使用済核燃料であることを特徴とする請求項7記載の空気処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163331(P2012−163331A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128681(P2012−128681)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−291685(P2006−291685)の分割
【原出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000173809)一般財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】