説明

空気処理装置及び空気処理装置の脱臭性能維持方法

【課題】空気処理装置のメンテナンスを容易化することを目的とし、空気処理装置の脱臭フィルターの脱臭性能を長期間維持させることを目的とする。
【解決手段】汚れた空気を発生する加熱調理装置100を収納する収納領域2と、収納領域2の上方に配置され、収納領域2内で発生した汚れた空気を吸入し、脱臭処理する処理室3と、処理室3で脱臭処理された空気を処理室3から排出する排出口222、232、39を備えた空気処理装置1であって、処理室3には、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタ5と、脱臭フィルタ5を加熱するための加熱装置6を備えた空気処理装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライヤや茹で麺器等の調理装置から発生する調理臭を除去する空気処理装置及びその脱臭性能維持方法に関し、特に食品を加熱調理する際に発生する臭気を除去する、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタを備えた空気処理装置及びその脱臭性能維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品をフライヤや茹で麺器等の加熱調理装置で加熱調理する際に発生する臭気を除去するために、加熱調理装置の上方に、脱臭フィルタを備えた空気清浄機を配設した空気処理装置が用いられている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
そして、このような空気処理装置の脱臭フィルタとして、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタが用いられている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0004】
このような空気処理装置には、臭気物質を含む空気を脱臭等の濾過清浄処理をした後にダクト等を経由して室外に排出する形式や、室外に排出できない場合には、濾過清浄処理をした空気を再び室内に排出する循環形式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−216675号公報
【特許文献2】特開2007−125466号公報
【特許文献3】特開2008−104845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の空気処理装置では、使用期間の経過に伴い脱臭フィルタの脱臭能力が低下してくるので、処理済の空気を室外に排出する場合には、室外に悪臭が排出され、近隣に迷惑をかけることなり、室内に排出する場合には、室内に悪臭が蓄積してしまう等の問題点があった。
【0007】
こうした問題点を解決するために、脱臭フィルターを頻繁に交換したり、脱臭フィルターを装置から取外して洗浄したり、複数の脱臭フィルターを配置したりする方法が採用されている。
【0008】
しかし、これらの方法では、使用済みの脱臭フィルターという大量の廃棄物を生じさせてしまい、環境への負荷が増大してしまうといった問題点や、脱臭フィルターの交換作業や洗浄作業等のメンテナンスが煩雑であったり、設備の費用が多くかかってしまう等の問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、臭気物質を含む空気を処理する空気処理装置の使用に際して、廃棄物の発生を極力抑えて環境への負荷を軽減することを目的の1つとする。又、空気処理装置のメンテナンスを容易化することを目的の1つとする。又、空気処理装置の設備費用を低廉化することを目的の1つとする。更に、これらの目的を達成するため、空気処理装置の脱臭フィルターの脱臭性能を長期間維持させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような課題を解決するための手段としての本発明は、臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室に、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタを加熱するための加熱装置を設置し、前記処理室に臭気物質を含む空気を吸入し、該臭気物質を含む空気を前記脱臭フィルタを通過させて前記処理室外部に排出させる吸入排出装置とを備えたことを特徴とする空気処理装置である。
【0011】
又、臭気物質を含む空気を発生する装置を収納する収納領域と、前記収納領域の上方に配置され、前記収納領域内で発生した臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室と、前記処理室で脱臭処理された空気を処理室から排出する排出口を備え、前記処理室には、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタと、吸入した臭気物質を含む空気を前記脱臭フィルタを通過させて前記処理室外部に排出させる吸入排出装置と、前記脱臭フィルタを加熱するための加熱装置を備えたことを特徴とする空気処理装置である。
【0012】
又、上記空気処理装置において、前記排出口は、前記収納領域内又は/及び空気処理装置外へ、前記処理室で脱臭処理された空気を排出することを特徴とする請求項2に記載の空気処理装置である。
【0013】
又、上記空気処理装置において、前記臭気物質を含む空気を発生する装置は、加熱調理装置であり、前記空気処理装置は厨房用の空気処理装置であることを特徴とする空気処理装置である。
【0014】
又、臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室に、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタを加熱するための加熱装置を設置し、吸入排出装置で、前記処理室に臭気物質を含む空気を吸入し、該臭気物質を含む空気を前記脱臭フィルタを通過させ、前記処理室外部に排出させたのち、前記加熱装置で前記脱臭フィルタを加熱することを特徴とする空気処理装置の脱臭性能維持方法である。
【0015】
又、上記空気処理装置の脱臭性能維持方法において、前記脱臭フィルタの温度が、30℃〜70℃になるように前記加熱装置で加熱することを特徴とする請求項4に記載の空気処理装置の脱臭性能維持方法である。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明によれば、臭気物質を含む空気を処理する空気処理装置の脱臭フィルターの脱臭性能を長期間維持させることが可能となった。又、廃棄物の発生を抑制して環境への負荷を軽減することが可能となった。又、空気処理装置のメンテナンスを容易化することが可能となった。又、空気処理装置の設備費用を低廉化することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明空気処理装置一実施例の斜視図
【図2】本発明空気処理装置一実施例の正面図
【図3】本発明空気処理装置一実施例の側面図
【図4】本発明空気処理装置一実施例一部破断側面図
【図5】本発明第一実施例の一部分斜視図
【図6】図4X−X断面図
【図7】脱臭フィルタとヒータの設置実施例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図を参照して説明する。本発明の空気処理装置1は、図1〜図3に示すように、基部10と、基部10の上に配置され、臭気物質或いは更に油成分等を含む空気を発生する装置としての加熱調理装置を収納する収納領域2と、収納領域2の上方に配置され、収納領域2内で加熱調理装置から発生した臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室3を備え、処理室3には、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタ5と、脱臭フィルタ5を加熱するための加熱装置6と、吸入排出装置としてのモータファン7を備えて構成されている。
【0019】
尚、臭気物質は、食品を加熱調理する際に発生する臭気を伴う物質及びその他の臭気を伴う物質であり、例えば、プロピオンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、硫化メチル、アセトアルデヒド、メチルメルカプタン、イソブタノール、メチルメルカプタン、アンモニア、エタノール等が挙げられる。
【0020】
上記のような加熱調理装置としては、直接加熱式、中間加熱式を問わずに、液槽を有し、液槽内の水又は油を加熱する各種加熱調理装置が挙げられ、加熱調理装置の一例として、油を加熱するフライヤーや水を加熱する茹で機、蒸し機等の液体加熱調理装置が挙げられる。又、加熱調理装置は、ガスを用いたものでも、電気を用いたものでもよい。以下、加熱調理装置の実施の形態を電気加熱式のフライヤ100を例として説明する。
【0021】
収納領域2は、フライヤ100を載置する載置面21と、対向する側面壁22、23と、背面壁24及び処理室3に囲まれて構成されている。収納領域2の載置面21はフライヤ100が1台又は所定の複数台を設置可能な面積を備えている。
【0022】
側面壁22の内部には、側面壁22の上端から下端に延設された流路221を備え、流路221の上端口227は処理室3と連通し、流路221の下端は、側面壁22の内側下方に設けた第一の排出口222を介して収納領域2と連通している。同様に、側面壁23の内部には、側面壁23の上端から下端に延設された流路231を備え、流路231の上端口237は処理室3と連通し、流路231の下端は、側面壁23の内側下方に設けた第一の排出口232を介して収納領域2と連通している。流路221、231は、側面壁22、23を板体を用いて箱状に成形することにより、形成することが出来る。側面壁22、23の第一の排出口222、232の上方に同様の補助排出口229、239を形成してもよい。
【0023】
処理室3は、収納領域2でフライヤ100から発生した臭気物質を含む空気を吸入して脱臭処理を行うための室である。処理室3は隔壁31により第一室32と第二室33に分割され、第一室32と第二室33は隔壁31上部に形成した連通孔311により連通している。
【0024】
処理室3の第一室32下部の収納領域2との境界に形成した吸引口36には、臭気物質を含む空気から主に油成分を除去するためのグリスフィルタ37が設置され、処理室3内部の第一室32内には、収納領域2でフライヤ100から発生した臭気物質を含む空気を処理室3内部に吸入し、脱臭フィルタ5へ送るモータファン7が設置され、第二室33内には臭気物質を含む空気から主に臭気成分を除去するための脱臭フィルタ5が設置されている。
【0025】
又、処理室3の第二室33には、処理室3内で処理された空気を分ける分流室34が設けられ、分流室34は隔壁341で2室に分割され、分割された前室339は、処理室3内で処理された空気を空気処理装置1の外部へ排出するために形成された第二の排出口39と連通し、後室338は、夫々側面壁22、23の流路221、231と連通している。
【0026】
脱臭フィルタ5は、触媒及び吸着材を含んで構成されたフィルタであり、図4〜図6によく示すように、支持部材8に支持させて、所定の間隔をいて、3個の脱臭フィルタ5を開口面を対向させて3層に設置している。支持部材8は上下端を内方に曲折した2枚の板体81を対向させ、板体81の対向面には脱臭フィルタ5を上下から挟持するガイド811を設けて構成され、ガイド811間に脱臭フィルタ5をスライド挿入させて、支持している。支持部材8は、処理室3の隔壁31及び側壁内面から第二室33内方に延設した載置枠9上に、載置枠9上に設置した位置決めレール399でスライド自在に位置決めされて設置されている。図6に示すように、支持部材8に支持された脱臭フィルタ5の下方には載置枠9が張出していない構成であり、載置枠9は第二室33を分割するものではなく、空気の流れを妨げない。
【0027】
脱臭フィルタ5は、ハニカム状、コルゲート状又は四角形状等の開口を有するペーパーセラミック担体、コージュライト担体又は金属担体に、無機バインダー等を用いて触媒及び吸着材を担持させて形成した公知の脱臭フィルタを使用することが出来る。
【0028】
触媒としては、これらに限定されないが、酸化マンガン、酸化銅、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化コバルト等の金属酸化物触媒のうちの1種又は複数種を用いることが出来る。又、吸着材は、これらに限定されないが、臭気物質を物理的に吸着するゼオライト、活性炭、シリカゲル、酸化ケイ素や、臭気物質を化学的に吸着するアミン系の吸着材又はリン酸等のうちの1種又は複数種を用いることが出来る。
【0029】
加熱装置6は、脱臭フィルタ5を加熱するための装置であり、電熱式のヒータ60を用いている。ヒータ60は、図4に示すように、支持部材8の板体81に固定して脱臭フィルタ5間に夫々設置している。ヒータ60の作動及び停止は、手動で図示しないスイッチを入り切りして行うが、図示しない制御装置やタイマーと接続して、予め決められた時から予め決められた時間作動させたり、フライヤ100又は/及びモータファン7の停止と連動させて作動させることとしてもよい。
【0030】
モータファン7は、臭気物質を含む空気を脱臭フィルタ5を通過させて処理室3の外部、詳しくは収納領域2内及び空気処理装置1外へ排出させる吸入排出装置である。
【0031】
次に、空気処理装置1の動作、作用並びに空気処理装置1の脱臭性能維持方法について主に図1〜図3を参照して説明する。フライヤ100を稼動させることによりフライヤ100から油成分や臭気物質を含んだ汚れた空気が収納領域2内に排出される(矢印A)。モータファン7が動作していることにより、収納領域2内の臭気物質を含んだ空気は、グリスフィルタ37を通過して処理室3内部に吸入される(矢印B)。グリスフィルタ37を通過することにより、汚れた空気から主に油成分が除去される。
【0032】
処理室3内部に吸入された臭気物質を含んだ空気は、第一室32に入り、モータファン7を通過して(矢印C)、連通孔311を通過して第二室33に入り(矢印D)、脱臭フィルタ5を通過して分流室34に流入する(矢印E)。脱臭フィルタ5を通過することにより、臭気物質を含んだ空気から主に臭気物質が除去され、洗浄された空気となる。脱臭フィルタ5を通過して分流室34の前室339に流入した洗浄された空気は、第二の排出口39から空気処理装置1の外部へ排出され(矢印F)、分流室34の後室338に流入した洗浄された空気は、上端口227、237を介して流路221、231に流入し(矢印G)、通過し(矢印H)、第一の排出口222、232から(矢印I2)或いは更に補助排出口229、239から(矢印I1)収納領域2内部へ排出される。
【0033】
このようにして、脱臭フィルタ5に含まれる吸着材には臭気物質が吸着される。脱臭フィルタ5には触媒が含まれているので、吸着材に吸着された臭気物質を分解するが、空気処理装置1の作動時における15〜25℃程度の通常の室温においては、触媒の分解作用は微少であり、分解される臭気物質より吸着される臭気物質のほうが多くなるので空気処理装置1の作動時間の経過と共に、吸着材に吸着される臭気物質は増加すると共に、吸着材の臭気物質を吸着する吸着性能は低下する。
【0034】
フライヤ100を稼動させ、臭気物質を含む空気の洗浄を行っている間は、ヒータ60は作動を停止させておく。フライヤ100の稼動を停止させた後、ヒータ60の作動を開始させて、脱臭フィルタ5を加熱させる。脱臭フィルタ5が加熱されることにより、脱臭フィルタ5に含まれる触媒が加熱され、活性化して、臭気物質の分解作用が促進され、脱臭フィルタ5に含まれる吸着材に吸着された臭気物質の分解が促進される。このようにヒータ60を作動させることにより、脱臭フィルタ5の吸着材に捕捉された臭気物質が分解され、吸着材の臭気物質を吸着する吸着性能を回復させ、脱臭フィルタ5の臭気物質の除去率を維持し、低下を抑制することが出来る。しかも、脱臭フィルタ5を着脱する必要が無くその作業、メンテナンスが容易であり、脱臭フィルタ5の交換回数を減らすことが出来、廃棄物の発生を抑制して環境への負荷を軽減することが可能となっている。
【0035】
ヒータ60の作動は、フライヤ100の稼動停止時に常に行ってもよいが、常には行わず、適宜時に作動させてもよい。フライヤ100の稼動時間の増加に応じて吸着材に吸着される臭気物質が増えるので、フライヤ100の稼動時間に応じてヒータ60の温度、作動時間及び回数を決定すればよい。例えば、毎日1回1時間連続で作動させたり、何日かおきに1回1時間連続で作動させたり、新品の脱臭フィルタ5を使用する場合には、脱臭フィルター5の脱臭性能が著しく低下する前、例えば最初の7日間は全く作動させなかったり、或いは排出された空気の臭気の程度により作動させたり、適宜選択可能である。
【0036】
又、脱臭フィルタ5の加熱温度、時間は、用いる触媒により、その触媒が最も活性化する温度、時間を選択することが好ましい。具体例として、脱臭フィルタ5の最高温度が30℃となるように1時間加熱する方法や、脱臭フィルタ5の最高温度が70℃となるように1時間加熱する方法がある。もちろん、脱臭フィルタ5の最高温度が70℃以上となってもよい。
【0037】
本発明の空気処理装置は、以上で述べた実施の形態の他、以下のように適宜に変更を加えた構成とすることも出来、又、これらの実施の形態を適宜組み合わせた構成とすることも出来る。
【0038】
即ち、脱臭フィルタ5の設置数は、3個に限定されず、1個又は所定の複数個を設置することとしてもよい。又、加熱装置6として、電熱式のヒータのほか、公知の各種電気式加熱装置やガスバーナー等を用いることとしてもよい。脱臭フィルタ5の設置数が1個の場合には、図7に示すように、ヒータ60を脱臭フィルタ5の片側に1個(a)又は両側に2個(b)設置することが出来、脱臭フィルタ5の設置数が複数個の場合には、脱臭フィルタ5間に設置する(c)他、積層された脱臭フィルタ5の両端側(d)に設置することとしてもよい。
【0039】
又、臭気物質を含む空気を脱臭フィルタ5を通過させて処理室3外部に排出させる吸入排出装置、その一例としてのモータファン7は、処理室3内部に設置せずに、処理室3の外部に設置し、モータファン7を介して洗浄された空気を処理室3外に、そして空気処理装置外に排出する構成としてもよい。
【0040】
又、収納領域2に面して開口し、処理室で脱臭処理された空気を収納領域2内に排出する第一の排出口222、232、補助排出口229、239と、処理室3内で処理された空気を空気処理装置1の外部へ排出するために形成された第二の排出口39は、上述のように双方設けることとしてもよいが、一方のみ設け、処理室で脱臭処理された空気を収納領域2内にのみ排出する構成又は空気処理装置1の外部へのみ排出する構成のいずれかとしてもよい。
【0041】
尚、フライヤ100を稼動させている間に、ヒータ60を作動させることとしてもよい。
【実施例】
【0042】
上述のように3個の脱臭フィルタ5を開口面を対向させて3層に設置し、上段の脱臭フィルタ5と中段の脱臭フィルタ5間及び中段の脱臭フィルタ5と下段の脱臭フィルタ5間に75Wの加熱熱量のヒータ60を設置した空気処理装置1を用いて脱臭フィルタの再生状況を試験した。
【0043】
脱臭フィルタは、触媒として酸化マンガン、吸着材として酸化ケイ素を含み、200個のハニカム状セルを有し、各セルの寸法は、12mmパイ×60mmtであって、未使用のものを用い、フライヤ100及びモータファン7を断続的に1日24時間、7日間稼動させた。
【0044】
その後、フライヤ100の停止時にヒータ60を作動させて、脱臭フィルタ5を1時間加熱した。1時間加熱の脱臭フィルタ5内部の温度を、温度センサを脱臭フィルタ5の中心に差し込んで測定した結果を表1に示す。中段の脱臭フィルタは上下の両面から加熱されているので、上段及び下段の脱臭フィルタに比べて最高温度が高くなっている。
【0045】
【表1】

【0046】
又、加熱前と加熱後の脱臭フィルタ5の重量を計測した。計測結果を表2に示す。尚、未使用の脱臭フィルタの重量個体差は10%程度である。
【0047】
【表2】

【0048】
この結果から、加熱前重量と加熱後重量を比較すると、加熱後の重量が軽くなったことがわかる。これは、加熱により、触媒が活性化し、臭気物質の分解がおこり、分解により生じた水分の蒸発が起きたためである。このことから、加熱により、臭気物質の分解を促進させる効果があることが分かる。又、表1及び表2の結果から、加熱は、1時間で、最高温度が30℃でも臭気物質の分解を促進させる効果があり、最高温度が46℃、70℃でも効果があることが分かる。
【0049】
次に、臭気物質の除去率を測定した。測定に使用した脱臭フィルタは、未使用の脱臭フィルタ、空気処理装置1から取り外した中段の加熱前の脱臭フィルタ及び空気処理装置1から取り外した中段の上記表1及び表2の加熱後(加熱時間:1時間/最高温度:70℃)の脱臭フィルタである。
【0050】
測定手順は、(1)これらの脱臭フィルタに模擬ガスとしてプロピオンアルデヒド又はイソバレルアルデヒドを別々に通気させた。(2)脱臭フィルタの入口及び出口におけるプロピオンアルデヒド又はイソバレルアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフ(GC)−水素炎イオン化検出器(FID)を用いて定量し、除去率を測定した。除去率は、(入口濃度−出口濃度)/入口濃度×100=除去率(%)の式で求めた。
【0051】
他の測定条件は以下のとおりである。
脱臭フィルタの入口でのプロピオンアルデヒド又はイソバレルアルデヒド濃度:5ppm
流量:3.0L/min
通気時間:5分/15分/30分
空間速度SV:32,000h−1
雰囲気:25℃×60Rh%
定量:GC−FID 1点検量線法
結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

表中の数字は除去率(%)を示す。
【0053】
この結果から、加熱前の脱臭フィルタと加熱後の脱臭フィルタのプロピオンアルデヒド又はイソバレルアルデヒドの脱臭率を比較すると、加熱後の脱臭フィルタの除去率がいずれも高く、未使用の脱臭フィルタと同程度まで回復し、脱臭性能を回復、再生できていることが分かる。
【0054】
この結果により、本発明の空気処理装置1は、脱臭フィルターの脱臭性能を回復、再生でき、脱臭性能を長期間維持させること出来ることが明らかである。
【0055】
本発明の空気処理装置は、上述の実施形態のように、加熱調理装置を収納する収納領域を備えた厨房用の空気処理装置として用いるほか、加熱調理装置を収納する収納領域を備えない、厨房用或いは厨房以外の室内用、更には屋外用の臭気物質を含む空気を清浄処理する空気処理装置として用いることも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の空気処理装置は、脱臭フィルターの脱臭性能を回復、再生でき、脱臭性能を長期間維持させること出来ることから、長期間の使用によっても、臭気物質を含んだ空気を外部に排出することがなく、メンテナンスが容易であり、脱臭フィルタの交換回数を減らすことが出来、廃棄物の発生を抑制して環境への負荷を軽減することができるので、厨房用、家庭用等の空気処理装置として好適に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0057】
1 空気処理装置
100 フライヤ
2 収納領域
21 載置面
22 側面壁
221 流路
222 第一の排出口
23 側面壁
231 流路
232 第一の排出口
3 処理室
31 隔壁
311 連通孔
32 第一室
33 第二室
34 分流室
36 吸引口
37 グリスフィルタ
39 第二の排出口
399 位置決めレール
5 脱臭フィルタ
6 加熱装置
60 ヒータ
7 モータファン
8 支持部材
81 板体
811 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室に、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタを加熱するための加熱装置を設置し、前記処理室に臭気物質を含む空気を吸入し、該臭気物質を含む空気を前記脱臭フィルタを通過させて前記処理室外部に排出させる吸入排出装置とを備えたことを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
臭気物質を含む空気を発生する装置を収納する収納領域と、前記収納領域の上方に配置され、前記収納領域内で発生した臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室と、前記処理室で脱臭処理された空気を処理室から排出する排出口を備え、前記処理室には、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタと、吸入した臭気物質を含む空気を前記脱臭フィルタを通過させて前記処理室外部に排出させる吸入排出装置と、前記脱臭フィルタを加熱するための加熱装置を備えたことを特徴とする空気処理装置。
【請求項3】
前記排出口は、前記収納領域内又は/及び空気処理装置外へ、前記処理室で脱臭処理された空気を排出することを特徴とする請求項2に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記臭気物質を含む空気を発生する装置は、加熱調理装置であり、前記空気処理装置は厨房用の空気処理装置であることを特徴とする請求項2又は3に記載の空気処理装置。
【請求項5】
臭気物質を含む空気を吸入し、脱臭処理する処理室に、触媒及び吸着材を含む脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタを加熱するための加熱装置を設置し、吸入排出装置で、前記処理室に臭気物質を含む空気を吸入し、該臭気物質を含む空気を前記脱臭フィルタを通過させ、前記処理室外部に排出させたのち、前記加熱装置で前記脱臭フィルタを加熱することを特徴とする空気処理装置の脱臭性能維持方法。
【請求項6】
前記脱臭フィルタの温度が、30℃〜70℃になるように前記加熱装置で加熱することを特徴とする請求項4に記載の空気処理装置の脱臭性能維持方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−229871(P2012−229871A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98898(P2011−98898)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(592193535)タニコー株式会社 (46)
【Fターム(参考)】