空気処理装置
【課題】装置全体の省スペース化やコストダウンを図りつつ、水容器内の水を安定的に浄化できるようにする。
【解決手段】空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水タンク(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿ユニット(40)とを備えた空気処理装置(10)において、放電処理部(25)により、生成した活性種を含む空気の一部を空気浄化手段(20)に供給する一方、残りの活性種を含む空気を水タンク(41)内の水に供給する。
【解決手段】空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水タンク(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿ユニット(40)とを備えた空気処理装置(10)において、放電処理部(25)により、生成した活性種を含む空気の一部を空気浄化手段(20)に供給する一方、残りの活性種を含む空気を水タンク(41)内の水に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気通路を通過した空気を浄化する空気浄化手段と、水容器内の水を空気中へ付与する加湿手段とを備えた空気処理装置に関し、特に水容器内の水の浄化対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内等の空気を浄化する空気浄化手段を備えた空気処理装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。この空気調和装置には、空気に浮遊する臭気分子及び有害ガス成分を分解又は不活化する活性種を生成する活性種生成部が設けられ、この活性種により、空気が浄化されるようになっている。
【0003】
また、空気処理装置では、空気浄化機能だけではなく、空気を加湿する加湿手段を備えたものが開発されている。このような加湿手段は、例えば、特許文献2に示すように、水を貯留する水容器と、空気通路に跨るように配置される円板状の加湿ロータとを備えている。加湿ロータは、その下部が水容器内の水中に浸漬されている。
【特許文献1】特開2007−215985号公報
【特許文献2】特開2007−139251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気処理装置では、水容器内に水が貯留されるので、この水中で菌が増殖して水が汚染されることがある。また、例えば空気通路を流れる空気中にアンモニア等の物質(有害物質や臭気物質)が含まれている場合、この物質が水中に溶解して水容器内の水が汚染されることもある。従って、このような汚染水が加湿水として室内へ供給されると、室内の清浄度が損なわれてしまう。また、このような汚染水を適宜排水する場合には、排水系統(例えば下水道)の水質汚濁負荷が大きくなってしまう。
【0005】
ここで、水容器内に除菌剤を入れて菌の増殖を抑えることが考えられるが、十分な除菌作用が得られないおそれがある。その他に、活性種生成部を水容器側にも設け、空気中、あるいは水中でラジカル等の活性種を生成することで、活性種により水中の殺菌を行ったり、水中に溶存する有害物質等を酸化分解して除去することも考えられるが、装置全体の大型化やコストアップの要因となるため、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置全体の省スペース化やコストダウンを図りつつ、水容器内の水を安定的に浄化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置を前提としている。そして、この空気処理装置は、活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)を備え、前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気の一部を前記空気浄化手段(20)に供給する一方、残りの活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
第1の発明では、放電処理部(25)での放電に伴い活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生する。この生成された活性種を含む空気の一部は空気浄化手段(20)に供給され、残りの活性種を含む空気は水容器(41)内の水に供給される。従って、空気中や水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われる。
【0009】
第2の発明は、空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置を前提としている。そして、この空気処理装置は、活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)と、前記水容器(41)内を通過した空気を前記空気浄化手段(20)に循環させるための循環通路(35)とを備え、前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成され、前記水容器(41)内を通過した活性種は、前記循環通路(35)を介して前記空気浄化手段(20)に供給されることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明では、放電処理部(25)での放電に伴い活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生する。この生成された活性種を含む空気は水容器(41)内の水に供給される。そして、水容器(41)内を通過した活性種は循環通路(35)を介して空気浄化手段(20)に供給される。従って、水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われた後、水容器(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記放電処理部(25)から前記空気浄化手段(20)に対して活性種を含む空気を供給する第1送風手段(18)と、前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内に対して活性種を含む空気を供給する第2送風手段(31)とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
第3の発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気が、第1送風手段(18)により空気浄化手段(20)に供給される一方、第2送風手段(31)により水容器(41)内に供給される。従って、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気が、空気浄化手段(20)及び水容器(41)内に確実に供給され、空気中や水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)の送風動作を制御する制御部(17)を備え、前記制御部(17)は、前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)をそれぞれ独立に運転制御可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
第4の発明では、制御部(17)により第1送風手段(18)及び第2送風手段(31)の送風動作がそれぞれ独立に運転制御される。従って、第1送風手段(18)を停止させた状態でも第2送風手段(31)の送風動作を行うことができる。このため、長期間、空気浄化を行わない場合でも、第2送風手段(31)を独立して運転させることにより、水容器(41)内の水に菌が増殖するのを防ぐことができる。
【0015】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記第2送風手段(31)は、前記放電処理部(25)の上流側に配設されていることを特徴とするものである。
【0016】
第5の発明では、放電処理部(25)の上流側に第2送風手段(31)が配設される。従って、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が第2送風手段(31)に供給されることはない。このため、第2送風手段(31)をなす送風ポンプ等に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがない。
【0017】
第6の発明は、第1乃至第5の発明うち何れか1つの発明において、前記空気浄化手段(20)で浄化された空気を該空気浄化手段(20)の上流側に返送する返送通路(15)を備え、前記放電処理部(25)は、前記返送通路(15)の通路途中に配設されていることを特徴とするものである。
【0018】
第6の発明では、空気浄化手段(20)で浄化された後、返送通路(15)を介して放電処理部(25)に移送された活性種を含んだ空気が、再び空気浄化手段(20)に送り返される。従って、活性種を空気浄化手段(20)で循環させることで、空気中の有害物質等が活性種に確実に分解除去されて殺菌が行われる。また、浄化された空気が放電処理部(25)に導入されるので,長期に亘って放電を安定化させることができる。
【0019】
第7の発明では、第1乃至第6のうち何れか1つの発明において、前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内の水に供給された活性種を該放電処理部(25)の上流側に返送する活性種返送通路(36)を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
第7の発明では、放電処理部(25)で生成された活性種が水容器(41)内の水に供給され、この活性種が活性種返送通路(36)を介して放電処理部(25)に返送される。従って、放電処理部(25)には繰り返し活性種を含んだ空気が循環されて活性種が濃縮されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気の一部を空気浄化手段(20)に供給し、残りの活性種を含む空気を水容器(41)内の水の供給しているから、空気中や水中に含まれる有害物質等を活性種により分解除去して殺菌を行うことができる。
【0022】
すなわち、従来の空気処理装置のように、空気浄化手段(20)には活性種を含む空気を供給して有害物質等の分解除去を行い、水容器(41)内には除菌剤を入れて有害物質等の繁殖を抑えるようにした構成では、水中の有害物質等の繁殖を十分に抑えることができないおそれがあるが、本発明のように、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気を空気浄化手段(20)と水容器(41)とに供給すれば、水中の有害物質等が活性種で確実に分解除去され、水を浄化することができる。その結果、水容器(41)内の水を一層効率良く浄化でき、このように浄化した水を加湿手段(40)へ送ることで、空気中へ付与する水の清浄度を保つことができる。
【0023】
従って、例えば汚染された水が室内へ供給されて室内の清浄度が損なわれてしまうことも回避でき、この空気処理装置(10)の信頼性を確保できる。また、例えばこの水を系外(下水道)等へ排出したとしても、系外の水質汚濁負荷を確実に軽減できる。
【0024】
さらに、1つの放電処理部(25)を用いて空気浄化手段(20)及び水容器(41)に活性種を含む空気を供給するようにしたから、装置構成を簡略化できて装置全体の省スペース化及び部品点数の削減によるコストダウンを図る上で有利となる。
【0025】
また、第2の発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気を水容器(41)内に供給し、水容器(41)内を通過した活性種を循環通路(35)を介して空気浄化手段(20)に供給したから、水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われた後、水容器(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われるため、1つの放電処理部(25)を用いるだけで効率良く活性種を循環させて空気及び水の浄化を行うことができる。
【0026】
また、第3の発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気を、第1送風手段(18)により空気浄化手段(20)に供給する一方、第2送風手段(31)により水容器(41)内に供給するようにしたから、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気が空気浄化手段(20)及び水容器(41)内に確実に供給され、空気中や水中に含まれる有害物質等が活性種で確実に分解除去され、空気や水を浄化することができる。
【0027】
また、第4の発明では、制御部(17)により第1送風手段(18)及び第2送風手段(31)の送風動作をそれぞれ独立に運転制御するようにしたから、第1送風手段(18)を停止させた状態でも第2送風手段(31)の送風動作を行うことができる。このため、長期間、空気浄化を行わない場合でも、第2送風手段(31)を独立して運転させることにより、水容器(41)内の水に菌が増殖するのを防ぐことができる。
【0028】
また、第5の発明では、放電処理部(25)の上流側に第2送風手段(31)を配設したから、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が第2送風手段(31)に供給されることはない。このため、第2送風手段(31)をなす送風ポンプ等に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがなく、樹脂やゴムパッキンの素材として耐腐食性のある材質を選定する必要がなく、コストを削減する上で有利となる。
【0029】
また、第6の発明では、空気浄化手段(20)で浄化された後、返送通路(15)を介して放電処理部(25)に移送されて活性種を含んだ空気を、再び空気浄化手段(20)に送り返すようにしたから、活性種を空気浄化手段(20)で循環させることで、空気中の有害物質等を活性種で確実に分解除去することができる。また、浄化された空気が放電処理部(25)に導入されるので,長期に亘って放電を安定化させることができる。
【0030】
また、第7の発明では、放電処理部(25)で生成された活性種を水容器(41)内の水に供給し、この活性種を活性種返送通路(36)を介して放電処理部(25)に返送するようにしたから、放電処理部(25)には繰り返し活性種を含んだ空気が循環されることとなり、活性種を濃縮することができて水の殺菌力が向上する。すなわち、放電処理部(25)の大型化や電力を増やすことで活性種の濃度を上げなくても、小型で低電力の放電処理部(25)を用いて活性種の濃度を上げることができ、装置全体の省スペース化やコスト増大を抑えつつ、十分な除菌効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
<空気処理装置の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る空気処理装置の全体構成を示す斜視図であり、水タンクをケーシングから引き出した状態を示すものである。図2は、空気処理装置の内部を表した概略の縦断面図である。図3は、空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【0033】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る空気処理装置(10)は、空気を浄化するための種々の空気浄化手段(20)と、空気を加湿する加湿手段としての加湿ユニット(40)とを備えている。
【0034】
前記空気処理装置(10)は、ケーシング(11)を有している。ケーシング(11)は、前後に扁平な矩形状に形成されている。ケーシング(11)には、その前側(図1における左側寄り)に前面パネル(11a)が形成されている。前面パネル(11a)には、空気をケーシング(11)内に導入するための吸込口(12)が形成されている(図2を参照)。吸込口(12)は、例えば前面パネル(11a)の左右側方にそれぞれ形成されている。また、ケーシング(11)には、その上部後方寄りの部位にケーシング(11)内の空気を吹き出すための吹出口(13)が形成されている。そして、ケーシング(11)の内部には、前記吸込口(12)から吹出口(13)に亘って空気が流通する空気通路(14)が形成されている。
【0035】
図2及び図3に示すように、空気通路(14)には、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)、脱臭部材(24)、加湿ユニット(40)、及び遠心ファン(18)(第1送風手段)が設けられている。
【0036】
また、遠心ファン(18)の上方で且つ吹出口(13)の下側には、返送通路(15)の流入端が開口している。つまり、返送通路(15)には、空気通路(14)から吹出口(13)へ流出する空気の一部が分流する。返送通路(15)は、前記空気通路(14)と区画されるように前後に延びる空間を構成している。返送通路(15)の流出端は、前記プレフィルタ(21)の上流側と繋がっている。また、返送通路(15)の通路途中には、放電処理部(25)が設けられている。
【0037】
図4に示すように、プレフィルタ(21)の前側には、前記返送通路(15)と連通する案内通路(16)が形成されている。案内通路(16)は、例えば前記前面パネル(11a)の背面側に形成される仕切部材等によって区画形成されている。案内通路(16)は、返送通路(15)を流出した空気をプレフィルタ(21)の幅方向の中間部まで案内し、この空気を左右側方に流出させてプレフィルタ(21)側へ送るように構成されている(図4の矢印を参照)。
【0038】
ここで、返送通路(15)は、放電処理部(25)の下流側において分岐しており、そのうちの一方は案内通路(16)に連通し、他方は加湿ユニット(40)の水タンク(41)に向かう移送配管(30)に連通している。移送配管(30)の通路途中には、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気を水タンク(41)内の水に供給するための送風ポンプ(31)(第2送風手段)が設けられている。
【0039】
ここで、前記遠心ファン(18)及び送風ポンプ(31)は、ケーシング(11)内に設けられた制御部(17)により、それぞれ独立に送風動作が制御可能に構成されている。これにより、遠心ファン(18)を停止させた状態でも送風ポンプ(31)の送風動作を行うことができる。このため、長期間、空気浄化を行わない場合でも、送風ポンプ(31)を独立して運転させることにより、水タンク(41)内の水に菌が増殖するのを防ぐことができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の空気処理装置(10)は、空気通路(14)の流出側の空気の一部を前記放電処理部(25)を通じて空気通路(14)の流入側及び水タンク(41)内へ返送するように構成されている。
【0041】
<空気浄化手段の構成>
図2に示すように、空気処理装置(10)は、空気を浄化するための空気浄化手段(20)として、上述したプレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)、脱臭部材(24)を有している。
【0042】
前記プレフィルタ(21)は、空気中に含まれる比較的大きな塵埃を物理的に捕捉する集塵用のフィルタを構成している。
【0043】
前記イオン化部(22)は、空気中の塵埃を帯電させる塵埃荷電手段を構成している。イオン化部(22)には、例えば線状の電極と、この線状の電極に対向する板状の電極とが設けられている。イオン化部(22)では、両者の電極に電源から電圧が印加されることで、両電極の間でコロナ放電が行われる。このコロナ放電により、空気中の塵埃が所定の電荷(正又は負の電荷)に帯電される。
【0044】
前記プリーツフィルタ(23)は、波板状の静電フィルタを構成している。つまり、プリーツフィルタ(23)では、前記イオン化部(22)で帯電された塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。なお、プリーツフィルタ(23)に光触媒等の脱臭用の材料を担持させても良い。
【0045】
前記脱臭部材(24)は、ハニカム構造の基材の表面に空気を脱臭するための脱臭剤が担持されて構成されている。脱臭剤は、空気中の被処理成分(臭気物質や有害物質)を吸着する吸着剤や、該被処理成分を酸化分解するための触媒等が用いられる。
【0046】
<加湿ユニットの構成>
図5に示すように、加湿ユニット(40)は、水を貯留するための水タンク(41)と、水タンク(41)の水を汲み上げる水車(42)と、水車(42)によって汲み上げられた水を空気中へ付与する加湿ロータ(43)と、加湿ロータ(43)を回転駆動するための駆動モータ(44)とを備えている。
【0047】
水タンク(41)は、上側が開口する横長の水容器を構成している。水タンク(41)は、ケーシング(11)内の下部の空間に設置され、ケーシング(11)の引出口(11b)を通じて出し入れ自在に構成されている(図1を参照)。これにより、ユーザー等は水タンク(41)内に加湿用の水を適宜補充することができる。また、水タンク(41)の底面には、水車(42)を回転自在に保持するための軸受部材(41a)が立設している。
【0048】
水車(42)は、前後に扁平な略円板状に形成され、その軸心部に回転軸(42a)が突設されている。回転軸(42a)は、前記軸受部材(41a)の上端に枢支されている。水車(42)は、水タンク(41)の加湿水中に一部(下端部を含む所定部位)が浸漬するように回転自在に設けられており、回転部材を構成している。
【0049】
水車(42)には、その後側の側面(加湿ロータ(43)に面する側面)の軸周りに複数の後側凹部(42b)が形成されている。後側凹部(42b)は、加湿水を加湿ロータ(43)側へ汲み上げるための加湿用凹部を構成している。複数の後側凹部(42b)は、径方向外側に向かうに連れて幅が拡大されるような略台形形状の開口を有している。また、後側凹部(42b)の開口の周方向の幅は、該後側凹部(42b)の内部空間の周方向の幅よりも狭くなっている。さらに、後側凹部(42b)の径方向内側の内壁は、開口端に向かうに連れて徐々に軸心側に近づくように傾斜している。各後側凹部(42b)は、水車(42)の径方向外側端部において周方向に等間隔で配列されている。回転動作中の水車(42)では、後側凹部(42b)が水タンク(41)の水中に浸漬する位置と、水中から引き出される位置とを交互に変位する。
【0050】
また、水車(42)の後側の側面には、その軸心寄りの部位に歯車(42c)が一体的に形成されている。歯車(42c)は、後述する加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と噛み合うように構成されている。
【0051】
加湿ロータ(43)は、環状の従動歯車(43a)と、この従動歯車(43a)に内嵌して保持される円板状の吸湿部材(43b)とを有している。吸湿部材(43b)は、吸水性を有する不織布によって構成されている。加湿ロータ(43)は、前記水タンク(41)の満水時の水位よりも高い位置において、回転軸を介して回転自在に保持されている。また、加湿ロータ(43)は、その下端を含む所定部位が水車(42)と実質的に接触するように配置されている。つまり、加湿ロータ(43)は、水車(42)の後側凹部(42b)と軸方向に一致する部位を有している。これにより、加湿ロータ(43)には、水車(42)の後側凹部(42b)によって汲み上げられた加湿水が吸湿部材(43b)に吸収可能に構成されている。
【0052】
駆動モータ(44)は、駆動歯車(44a)を有している。駆動歯車(44a)は、ピニオン(45)を介して加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と歯合している。すなわち、駆動モータ(44)が駆動歯車(44a)を回転駆動させると、ピニオン(45)及び従動歯車(43a)が回転し、さらに従動歯車(43a)と歯合する水車(42)が回転する。
【0053】
<浄化ユニットの構成>
空気処理装置(10)は、空気や加湿水を浄化するための浄化ユニットを備えている。この浄化ユニットは、上述した放電処理部(25)で構成され、放電処理部(25)では、空気や加湿水を浄化するためにストリーマ放電が行われる。
【0054】
前記放電処理部(25)には、棒状あるいは線状の電極(26)と、平板状の電極(27)とが設けられている。両者の電極(26,27)は、互いに平行に配置されている。電源から両電極(26,27)に電圧が印加されると、棒状の電極(26)の先端から平板状の電極(27)に向かってストリーマ放電が生起される。このストリーマ放電により、空気中には活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生する。
【0055】
前記放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気の一部は、案内通路(16)を介して空気浄化手段(20)の最上流側に配置されたプレフィルタ(21)に供給される。また、残りの活性種を含む空気は、移送配管(30)を介して水タンク(41)内に供給される。そして、この活性種が空気中又は水中の被処理成分と反応することで、この被処理成分が酸化分解されて除去される。
【0056】
なお、放電処理部(25)では、棒状あるいは線状の電極(26)が正極側となり、平板状の電極(27)が負極(若しくはアース極)側を構成している。なお、電源から放電処理部(25)へは、直流の高圧電圧が供給されることが好ましく、さらには放電処理部(25)の放電電流が一定となるような、いわゆる定電流制御を行うことが好ましい。
【0057】
−運転動作−
本実施形態に係る空気処理装置(10)は、上述した各種の空気浄化手段によって空気の浄化が行われるとともに、加湿ユニット(40)により室内の加湿が同時に行われる。
【0058】
具体的に、まず、駆動モータ(44)によって加湿ロータ(43)及び水車(42)が回転駆動される。また、遠心ファン(18)が運転されることで、室内の空気が吸込口(12)を通じて空気通路(14)内に導入される。さらに、電源からは放電処理部(25)の電極(26,27)に高圧の電圧が印加される。さらに、電源からはイオン化部(22)の電極に電圧が印加される。
【0059】
図2に示すように、空気通路(14)に流入した空気は、プレフィルタ(21)を通過して塵埃が捕捉された後、イオン化部(22)を通過する。イオン化部(22)では、電極間でコロナ放電が行われており、空気中の塵埃が帯電される。イオン化部(22)を流出した空気は、プリーツフィルタ(23)を通過する。プリーツフィルタ(23)では、帯電した塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。プリーツフィルタ(23)を流出した空気は、脱臭部材(24)を通過する。脱臭部材(24)では、空気中に含まれる被処理成分が吸着剤に吸着され、あるいは触媒によって酸化分解される。
【0060】
ところで、空気通路(14)では、遠心ファン(18)の吹出側(陽圧側)の空気の一部が返送通路(15)に流入している。返送通路(15)を流れる空気は、前方に送られて放電処理部(25)を流れる。放電処理部(25)では、互いに対向する電極(26,27)の間でストリーマ放電が行われている。その結果、放電処理部(25)では、ストリーマ放電に伴い上述の活性種が発生する。この活性種を含んだ空気の一部は、返送通路(15)を通じて、プレフィルタ(21)の上流側を流れる空気と合流する。従って、空気通路(14)では、その流入端から流出端に亘って活性種が流れることになり、空気中の被処理成分と活性種との反応時間が確保されて脱臭性能が向上する。
【0061】
一方、返送通路(15)を流れる活性種を含んだ残りの空気は、通路途中で分岐した移送配管(30)を通じて水タンク(41)内に供給される。この活性種は、水中に含まれている有害物質を酸化分解して除去し、加えて加湿水の殺菌に利用される。
【0062】
加湿運転時には、脱臭部材(24)を通過した空気が加湿ロータ(43)へ流入する。ここで、加湿ユニット(40)では、水車(42)が回転することで、水タンク(41)内の加湿水が加湿ロータ(43)の吸湿部材(43b)に適宜供給される。具体的に、水車(42)では、水タンク(41)に貯留された加湿水中に後側凹部(42b)が浸漬する。これにより、加湿水中では、後側凹部(42b)内に加湿水が侵入して保持される。加湿水を保持した状態の後側凹部(42b)は、加湿水中から引き上げられてさらに上方へ変位する。この後側凹部(42b)が加湿ロータ(43)に徐々に近接していくと、後側凹部(42b)内に保持された加湿水も自重により徐々に後側凹部(42b)内から流出する。そして、後側凹部(42b)が最上端位置に変位する際には、後側凹部(42b)内の加湿水が概ね全量流出することになる。
【0063】
後側凹部(42b)から流出した加湿水は、該後側凹部(42b)と近接する加湿ロータ(43)と接触し、吸湿部材(43b)に吸収される。このような動作により、加湿ユニット(40)では、加湿ロータ(43)に連続的に加湿水が供給される。
【0064】
加湿ロータ(43)では、水分が補給された部位を空気が流通する。その結果、吸湿部材(43b)に含まれた加湿水が空気中へ放出され、これにより空気の加湿が行われる。以上のようにして清浄化及び加湿された空気は、吹出口(13)を通じて室内へ供給される。
【0065】
なお、前記加湿運転では、電源からイオン化部(22)や放電処理部(25)への電圧の供給を停止させることで、空気の浄化を積極的に行わない運転を行うことも可能である。また、加湿ユニット(40)の加湿動作を実質的に停止させる一方、イオン化部(22)や放電処理部(25)で前記の放電を行うことで、空気の加湿を行わずに空気の浄化を行う空気清浄運転を行うことも可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る空気処理装置(10)によれば、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気の一部を空気浄化手段(20)に供給し、残りの活性種を含む空気を水タンク(41)内の水の供給しているから、空気中や水中に含まれる有害物質等を活性種により分解除去して殺菌を行うことができる。従って、例えば汚染された水が室内へ供給されて室内の清浄度が損なわれてしまうことも回避でき、この空気処理装置(10)の信頼性を確保できる。また、例えばこの水を系外(下水道)等へ排出したとしても、系外の水質汚濁負荷を確実に軽減できる。
【0067】
さらに、1つの放電処理部(25)を用いて空気浄化手段(20)及び水タンク(41)に活性種を含む空気を供給するようにしたから、装置構成を簡略化できて装置全体の省スペース化及び部品点数の削減によるコストダウンを図る上で有利となる。
【0068】
<変形例1>
図6に示すように、イオン化部(22)とプリーツフィルタ(23)との間に放電処理部(25)を配設して、空気通路(14)を通過する空気に活性種を供給するとともに、放電処理部(25)の下流側に連通させた移送配管(30)を通じて水タンク(41)に活性種を供給するようにしても良い。このような構成とすれば、プリーツフィルタ(23)で捕捉した塵埃に活性種を含む空気を直接供給して有害物質等を分解除去して殺菌を行うとともに、水タンク(41)内の水に含まれる有害物質等を分解除去することができる。
【0069】
このように、1つの放電処理部(25)を用いるだけで空気及び水の両方の殺菌を行うことができるので、装置構成を簡略化できて装置全体の省スペース化及び部品点数の削減によるコストダウンを図る上で有利となる。
【0070】
<変形例2>
図7に示すように、ケーシング(11)外部から取り込んだ空気を放電処理部(25)に送り込み、活性種を含んだ空気を水タンク(41)内に供給し、水タンク(41)内を通過した活性種を循環通路(35)を介してプレフィルタ(21)に循環させる構成としても良い。このような構成とすれば、放電処理部(25)で生成した活性種を水タンク(41)に供給して水中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行った後、水タンク(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行うことができるため、1つの放電処理部(25)を用いるだけで効率良く空気及び水の浄化を行うことができる。
【0071】
<変形例3>
図8に示すように、脱臭部材(24)を通過した空気を返送通路(15)を介して放電処理部(25)に送り込み、活性種を含んだ空気を水タンク(41)内に供給し、水タンク(41)内を通過した活性種を循環通路(35)を介してプレフィルタ(21)に循環させる構成としても良い。このような構成とすれば、変形例2と同様、放電処理部(25)で生成した活性種を水タンク(41)に供給して水中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行った後、水タンク(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行うため、1つの放電処理部(25)を用いるだけで効率良く空気及び水の浄化を行うことができる。なお、図8では返送通路(15)が遠心ファン(18)の上流側に接続されているが、下流側に接続されていてもよい。
【0072】
さらに、変形例3では、図9にも示すように、送風ポンプ(31)を放電処理部(25)の上流側に配設するようにしている。このような構成とすれば、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が送風ポンプ(31)側に供給されることがないため、送風ポンプ(31)に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがなく好ましい。
【0073】
なお、放電処理部(25)の上流側に送風ポンプ(31)を配設する他にも、図10に示すように、放電処理部(25)の下流端を送風ポンプ(31)の下流側の移送配管(30)に合流させ、移送配管(30)内で空気と活性種とを混合させた後で水タンク(41)に供給するようにしても良い。このような構成とすれば、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が送風ポンプ(31)側に供給されることがないため、送風ポンプ(31)に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがなく、樹脂やゴムパッキンの素材として耐腐食性のある材質を選定する必要がなく、コストを削減する上で有利となる。
【0074】
<変形例4>
図11に示すように、放電処理部(25)から水タンク(41)内の水に供給された活性種を放電処理部(25)の上流側に返送する活性種返送通路(36)を設けた構成としても良い。このような構成とすれば、放電処理部(25)には繰り返し活性種を含んだ空気が循環されることとなり、活性種を濃縮することができて水の殺菌力が向上する。すなわち、放電処理部(25)の大型化や電力を増やすことで活性種の濃度を上げなくても、小型で低電力の放電処理部(25)を用いて活性種の濃度を上げることができ、装置全体の省スペース化やコスト増大を抑えつつ、十分な除菌効果を得ることができる。
【0075】
なお、前記実施形態及び各変形例では、活性種を含んだ空気を搬送するための送風手段や送風ポンプを図示しているが、流路の最適化等によって搬送に十分な空気圧力が得られる場合は、それらを使用しない構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、装置全体の省スペース化やコストダウンを図りつつ、水容器内の水を安定的に浄化できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態に係る空気処理装置の全体構成を示す斜視図であり、水タンクをケーシングから引き出した状態を示すものである。
【図2】空気処理装置の内部を表した概略の縦断面図である。
【図3】空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図4】空気処理装置の前側寄りの内部を表した概略の縦断面図である。
【図5】加湿ユニットの斜視図である。
【図6】変形例1の空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図7】変形例2の空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図8】変形例3の空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図9】変形例3の送風ポンプの配置を示す模式図である。
【図10】変形例3の送風ポンプの配置の別の例を示す模式図である。
【図11】変形例4の活性種返送通路の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
10 空気処理装置
14 空気通路
15 返送通路
17 制御部
18 遠心ファン(第1送風手段)
20 空気浄化手段
25 放電処理部
31 送風ポンプ(第2送風手段)
35 循環通路
36 活性種返送通路
40 加湿ユニット(加湿手段)
41 水タンク(水容器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気通路を通過した空気を浄化する空気浄化手段と、水容器内の水を空気中へ付与する加湿手段とを備えた空気処理装置に関し、特に水容器内の水の浄化対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内等の空気を浄化する空気浄化手段を備えた空気処理装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。この空気調和装置には、空気に浮遊する臭気分子及び有害ガス成分を分解又は不活化する活性種を生成する活性種生成部が設けられ、この活性種により、空気が浄化されるようになっている。
【0003】
また、空気処理装置では、空気浄化機能だけではなく、空気を加湿する加湿手段を備えたものが開発されている。このような加湿手段は、例えば、特許文献2に示すように、水を貯留する水容器と、空気通路に跨るように配置される円板状の加湿ロータとを備えている。加湿ロータは、その下部が水容器内の水中に浸漬されている。
【特許文献1】特開2007−215985号公報
【特許文献2】特開2007−139251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の空気処理装置では、水容器内に水が貯留されるので、この水中で菌が増殖して水が汚染されることがある。また、例えば空気通路を流れる空気中にアンモニア等の物質(有害物質や臭気物質)が含まれている場合、この物質が水中に溶解して水容器内の水が汚染されることもある。従って、このような汚染水が加湿水として室内へ供給されると、室内の清浄度が損なわれてしまう。また、このような汚染水を適宜排水する場合には、排水系統(例えば下水道)の水質汚濁負荷が大きくなってしまう。
【0005】
ここで、水容器内に除菌剤を入れて菌の増殖を抑えることが考えられるが、十分な除菌作用が得られないおそれがある。その他に、活性種生成部を水容器側にも設け、空気中、あるいは水中でラジカル等の活性種を生成することで、活性種により水中の殺菌を行ったり、水中に溶存する有害物質等を酸化分解して除去することも考えられるが、装置全体の大型化やコストアップの要因となるため、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置全体の省スペース化やコストダウンを図りつつ、水容器内の水を安定的に浄化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置を前提としている。そして、この空気処理装置は、活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)を備え、前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気の一部を前記空気浄化手段(20)に供給する一方、残りの活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
第1の発明では、放電処理部(25)での放電に伴い活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生する。この生成された活性種を含む空気の一部は空気浄化手段(20)に供給され、残りの活性種を含む空気は水容器(41)内の水に供給される。従って、空気中や水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われる。
【0009】
第2の発明は、空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置を前提としている。そして、この空気処理装置は、活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)と、前記水容器(41)内を通過した空気を前記空気浄化手段(20)に循環させるための循環通路(35)とを備え、前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成され、前記水容器(41)内を通過した活性種は、前記循環通路(35)を介して前記空気浄化手段(20)に供給されることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明では、放電処理部(25)での放電に伴い活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生する。この生成された活性種を含む空気は水容器(41)内の水に供給される。そして、水容器(41)内を通過した活性種は循環通路(35)を介して空気浄化手段(20)に供給される。従って、水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われた後、水容器(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記放電処理部(25)から前記空気浄化手段(20)に対して活性種を含む空気を供給する第1送風手段(18)と、前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内に対して活性種を含む空気を供給する第2送風手段(31)とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
第3の発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気が、第1送風手段(18)により空気浄化手段(20)に供給される一方、第2送風手段(31)により水容器(41)内に供給される。従って、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気が、空気浄化手段(20)及び水容器(41)内に確実に供給され、空気中や水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)の送風動作を制御する制御部(17)を備え、前記制御部(17)は、前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)をそれぞれ独立に運転制御可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
第4の発明では、制御部(17)により第1送風手段(18)及び第2送風手段(31)の送風動作がそれぞれ独立に運転制御される。従って、第1送風手段(18)を停止させた状態でも第2送風手段(31)の送風動作を行うことができる。このため、長期間、空気浄化を行わない場合でも、第2送風手段(31)を独立して運転させることにより、水容器(41)内の水に菌が増殖するのを防ぐことができる。
【0015】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記第2送風手段(31)は、前記放電処理部(25)の上流側に配設されていることを特徴とするものである。
【0016】
第5の発明では、放電処理部(25)の上流側に第2送風手段(31)が配設される。従って、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が第2送風手段(31)に供給されることはない。このため、第2送風手段(31)をなす送風ポンプ等に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがない。
【0017】
第6の発明は、第1乃至第5の発明うち何れか1つの発明において、前記空気浄化手段(20)で浄化された空気を該空気浄化手段(20)の上流側に返送する返送通路(15)を備え、前記放電処理部(25)は、前記返送通路(15)の通路途中に配設されていることを特徴とするものである。
【0018】
第6の発明では、空気浄化手段(20)で浄化された後、返送通路(15)を介して放電処理部(25)に移送された活性種を含んだ空気が、再び空気浄化手段(20)に送り返される。従って、活性種を空気浄化手段(20)で循環させることで、空気中の有害物質等が活性種に確実に分解除去されて殺菌が行われる。また、浄化された空気が放電処理部(25)に導入されるので,長期に亘って放電を安定化させることができる。
【0019】
第7の発明では、第1乃至第6のうち何れか1つの発明において、前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内の水に供給された活性種を該放電処理部(25)の上流側に返送する活性種返送通路(36)を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
第7の発明では、放電処理部(25)で生成された活性種が水容器(41)内の水に供給され、この活性種が活性種返送通路(36)を介して放電処理部(25)に返送される。従って、放電処理部(25)には繰り返し活性種を含んだ空気が循環されて活性種が濃縮されるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気の一部を空気浄化手段(20)に供給し、残りの活性種を含む空気を水容器(41)内の水の供給しているから、空気中や水中に含まれる有害物質等を活性種により分解除去して殺菌を行うことができる。
【0022】
すなわち、従来の空気処理装置のように、空気浄化手段(20)には活性種を含む空気を供給して有害物質等の分解除去を行い、水容器(41)内には除菌剤を入れて有害物質等の繁殖を抑えるようにした構成では、水中の有害物質等の繁殖を十分に抑えることができないおそれがあるが、本発明のように、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気を空気浄化手段(20)と水容器(41)とに供給すれば、水中の有害物質等が活性種で確実に分解除去され、水を浄化することができる。その結果、水容器(41)内の水を一層効率良く浄化でき、このように浄化した水を加湿手段(40)へ送ることで、空気中へ付与する水の清浄度を保つことができる。
【0023】
従って、例えば汚染された水が室内へ供給されて室内の清浄度が損なわれてしまうことも回避でき、この空気処理装置(10)の信頼性を確保できる。また、例えばこの水を系外(下水道)等へ排出したとしても、系外の水質汚濁負荷を確実に軽減できる。
【0024】
さらに、1つの放電処理部(25)を用いて空気浄化手段(20)及び水容器(41)に活性種を含む空気を供給するようにしたから、装置構成を簡略化できて装置全体の省スペース化及び部品点数の削減によるコストダウンを図る上で有利となる。
【0025】
また、第2の発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気を水容器(41)内に供給し、水容器(41)内を通過した活性種を循環通路(35)を介して空気浄化手段(20)に供給したから、水中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われた後、水容器(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等が活性種に分解除去されて殺菌が行われるため、1つの放電処理部(25)を用いるだけで効率良く活性種を循環させて空気及び水の浄化を行うことができる。
【0026】
また、第3の発明では、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気を、第1送風手段(18)により空気浄化手段(20)に供給する一方、第2送風手段(31)により水容器(41)内に供給するようにしたから、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気が空気浄化手段(20)及び水容器(41)内に確実に供給され、空気中や水中に含まれる有害物質等が活性種で確実に分解除去され、空気や水を浄化することができる。
【0027】
また、第4の発明では、制御部(17)により第1送風手段(18)及び第2送風手段(31)の送風動作をそれぞれ独立に運転制御するようにしたから、第1送風手段(18)を停止させた状態でも第2送風手段(31)の送風動作を行うことができる。このため、長期間、空気浄化を行わない場合でも、第2送風手段(31)を独立して運転させることにより、水容器(41)内の水に菌が増殖するのを防ぐことができる。
【0028】
また、第5の発明では、放電処理部(25)の上流側に第2送風手段(31)を配設したから、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が第2送風手段(31)に供給されることはない。このため、第2送風手段(31)をなす送風ポンプ等に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがなく、樹脂やゴムパッキンの素材として耐腐食性のある材質を選定する必要がなく、コストを削減する上で有利となる。
【0029】
また、第6の発明では、空気浄化手段(20)で浄化された後、返送通路(15)を介して放電処理部(25)に移送されて活性種を含んだ空気を、再び空気浄化手段(20)に送り返すようにしたから、活性種を空気浄化手段(20)で循環させることで、空気中の有害物質等を活性種で確実に分解除去することができる。また、浄化された空気が放電処理部(25)に導入されるので,長期に亘って放電を安定化させることができる。
【0030】
また、第7の発明では、放電処理部(25)で生成された活性種を水容器(41)内の水に供給し、この活性種を活性種返送通路(36)を介して放電処理部(25)に返送するようにしたから、放電処理部(25)には繰り返し活性種を含んだ空気が循環されることとなり、活性種を濃縮することができて水の殺菌力が向上する。すなわち、放電処理部(25)の大型化や電力を増やすことで活性種の濃度を上げなくても、小型で低電力の放電処理部(25)を用いて活性種の濃度を上げることができ、装置全体の省スペース化やコスト増大を抑えつつ、十分な除菌効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
<空気処理装置の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る空気処理装置の全体構成を示す斜視図であり、水タンクをケーシングから引き出した状態を示すものである。図2は、空気処理装置の内部を表した概略の縦断面図である。図3は、空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【0033】
図1〜図3に示すように、本実施形態に係る空気処理装置(10)は、空気を浄化するための種々の空気浄化手段(20)と、空気を加湿する加湿手段としての加湿ユニット(40)とを備えている。
【0034】
前記空気処理装置(10)は、ケーシング(11)を有している。ケーシング(11)は、前後に扁平な矩形状に形成されている。ケーシング(11)には、その前側(図1における左側寄り)に前面パネル(11a)が形成されている。前面パネル(11a)には、空気をケーシング(11)内に導入するための吸込口(12)が形成されている(図2を参照)。吸込口(12)は、例えば前面パネル(11a)の左右側方にそれぞれ形成されている。また、ケーシング(11)には、その上部後方寄りの部位にケーシング(11)内の空気を吹き出すための吹出口(13)が形成されている。そして、ケーシング(11)の内部には、前記吸込口(12)から吹出口(13)に亘って空気が流通する空気通路(14)が形成されている。
【0035】
図2及び図3に示すように、空気通路(14)には、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)、脱臭部材(24)、加湿ユニット(40)、及び遠心ファン(18)(第1送風手段)が設けられている。
【0036】
また、遠心ファン(18)の上方で且つ吹出口(13)の下側には、返送通路(15)の流入端が開口している。つまり、返送通路(15)には、空気通路(14)から吹出口(13)へ流出する空気の一部が分流する。返送通路(15)は、前記空気通路(14)と区画されるように前後に延びる空間を構成している。返送通路(15)の流出端は、前記プレフィルタ(21)の上流側と繋がっている。また、返送通路(15)の通路途中には、放電処理部(25)が設けられている。
【0037】
図4に示すように、プレフィルタ(21)の前側には、前記返送通路(15)と連通する案内通路(16)が形成されている。案内通路(16)は、例えば前記前面パネル(11a)の背面側に形成される仕切部材等によって区画形成されている。案内通路(16)は、返送通路(15)を流出した空気をプレフィルタ(21)の幅方向の中間部まで案内し、この空気を左右側方に流出させてプレフィルタ(21)側へ送るように構成されている(図4の矢印を参照)。
【0038】
ここで、返送通路(15)は、放電処理部(25)の下流側において分岐しており、そのうちの一方は案内通路(16)に連通し、他方は加湿ユニット(40)の水タンク(41)に向かう移送配管(30)に連通している。移送配管(30)の通路途中には、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気を水タンク(41)内の水に供給するための送風ポンプ(31)(第2送風手段)が設けられている。
【0039】
ここで、前記遠心ファン(18)及び送風ポンプ(31)は、ケーシング(11)内に設けられた制御部(17)により、それぞれ独立に送風動作が制御可能に構成されている。これにより、遠心ファン(18)を停止させた状態でも送風ポンプ(31)の送風動作を行うことができる。このため、長期間、空気浄化を行わない場合でも、送風ポンプ(31)を独立して運転させることにより、水タンク(41)内の水に菌が増殖するのを防ぐことができる。
【0040】
以上のように、本実施形態の空気処理装置(10)は、空気通路(14)の流出側の空気の一部を前記放電処理部(25)を通じて空気通路(14)の流入側及び水タンク(41)内へ返送するように構成されている。
【0041】
<空気浄化手段の構成>
図2に示すように、空気処理装置(10)は、空気を浄化するための空気浄化手段(20)として、上述したプレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)、脱臭部材(24)を有している。
【0042】
前記プレフィルタ(21)は、空気中に含まれる比較的大きな塵埃を物理的に捕捉する集塵用のフィルタを構成している。
【0043】
前記イオン化部(22)は、空気中の塵埃を帯電させる塵埃荷電手段を構成している。イオン化部(22)には、例えば線状の電極と、この線状の電極に対向する板状の電極とが設けられている。イオン化部(22)では、両者の電極に電源から電圧が印加されることで、両電極の間でコロナ放電が行われる。このコロナ放電により、空気中の塵埃が所定の電荷(正又は負の電荷)に帯電される。
【0044】
前記プリーツフィルタ(23)は、波板状の静電フィルタを構成している。つまり、プリーツフィルタ(23)では、前記イオン化部(22)で帯電された塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。なお、プリーツフィルタ(23)に光触媒等の脱臭用の材料を担持させても良い。
【0045】
前記脱臭部材(24)は、ハニカム構造の基材の表面に空気を脱臭するための脱臭剤が担持されて構成されている。脱臭剤は、空気中の被処理成分(臭気物質や有害物質)を吸着する吸着剤や、該被処理成分を酸化分解するための触媒等が用いられる。
【0046】
<加湿ユニットの構成>
図5に示すように、加湿ユニット(40)は、水を貯留するための水タンク(41)と、水タンク(41)の水を汲み上げる水車(42)と、水車(42)によって汲み上げられた水を空気中へ付与する加湿ロータ(43)と、加湿ロータ(43)を回転駆動するための駆動モータ(44)とを備えている。
【0047】
水タンク(41)は、上側が開口する横長の水容器を構成している。水タンク(41)は、ケーシング(11)内の下部の空間に設置され、ケーシング(11)の引出口(11b)を通じて出し入れ自在に構成されている(図1を参照)。これにより、ユーザー等は水タンク(41)内に加湿用の水を適宜補充することができる。また、水タンク(41)の底面には、水車(42)を回転自在に保持するための軸受部材(41a)が立設している。
【0048】
水車(42)は、前後に扁平な略円板状に形成され、その軸心部に回転軸(42a)が突設されている。回転軸(42a)は、前記軸受部材(41a)の上端に枢支されている。水車(42)は、水タンク(41)の加湿水中に一部(下端部を含む所定部位)が浸漬するように回転自在に設けられており、回転部材を構成している。
【0049】
水車(42)には、その後側の側面(加湿ロータ(43)に面する側面)の軸周りに複数の後側凹部(42b)が形成されている。後側凹部(42b)は、加湿水を加湿ロータ(43)側へ汲み上げるための加湿用凹部を構成している。複数の後側凹部(42b)は、径方向外側に向かうに連れて幅が拡大されるような略台形形状の開口を有している。また、後側凹部(42b)の開口の周方向の幅は、該後側凹部(42b)の内部空間の周方向の幅よりも狭くなっている。さらに、後側凹部(42b)の径方向内側の内壁は、開口端に向かうに連れて徐々に軸心側に近づくように傾斜している。各後側凹部(42b)は、水車(42)の径方向外側端部において周方向に等間隔で配列されている。回転動作中の水車(42)では、後側凹部(42b)が水タンク(41)の水中に浸漬する位置と、水中から引き出される位置とを交互に変位する。
【0050】
また、水車(42)の後側の側面には、その軸心寄りの部位に歯車(42c)が一体的に形成されている。歯車(42c)は、後述する加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と噛み合うように構成されている。
【0051】
加湿ロータ(43)は、環状の従動歯車(43a)と、この従動歯車(43a)に内嵌して保持される円板状の吸湿部材(43b)とを有している。吸湿部材(43b)は、吸水性を有する不織布によって構成されている。加湿ロータ(43)は、前記水タンク(41)の満水時の水位よりも高い位置において、回転軸を介して回転自在に保持されている。また、加湿ロータ(43)は、その下端を含む所定部位が水車(42)と実質的に接触するように配置されている。つまり、加湿ロータ(43)は、水車(42)の後側凹部(42b)と軸方向に一致する部位を有している。これにより、加湿ロータ(43)には、水車(42)の後側凹部(42b)によって汲み上げられた加湿水が吸湿部材(43b)に吸収可能に構成されている。
【0052】
駆動モータ(44)は、駆動歯車(44a)を有している。駆動歯車(44a)は、ピニオン(45)を介して加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と歯合している。すなわち、駆動モータ(44)が駆動歯車(44a)を回転駆動させると、ピニオン(45)及び従動歯車(43a)が回転し、さらに従動歯車(43a)と歯合する水車(42)が回転する。
【0053】
<浄化ユニットの構成>
空気処理装置(10)は、空気や加湿水を浄化するための浄化ユニットを備えている。この浄化ユニットは、上述した放電処理部(25)で構成され、放電処理部(25)では、空気や加湿水を浄化するためにストリーマ放電が行われる。
【0054】
前記放電処理部(25)には、棒状あるいは線状の電極(26)と、平板状の電極(27)とが設けられている。両者の電極(26,27)は、互いに平行に配置されている。電源から両電極(26,27)に電圧が印加されると、棒状の電極(26)の先端から平板状の電極(27)に向かってストリーマ放電が生起される。このストリーマ放電により、空気中には活性種(ラジカル、オゾン、高速電子、励起分子等)が発生する。
【0055】
前記放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気の一部は、案内通路(16)を介して空気浄化手段(20)の最上流側に配置されたプレフィルタ(21)に供給される。また、残りの活性種を含む空気は、移送配管(30)を介して水タンク(41)内に供給される。そして、この活性種が空気中又は水中の被処理成分と反応することで、この被処理成分が酸化分解されて除去される。
【0056】
なお、放電処理部(25)では、棒状あるいは線状の電極(26)が正極側となり、平板状の電極(27)が負極(若しくはアース極)側を構成している。なお、電源から放電処理部(25)へは、直流の高圧電圧が供給されることが好ましく、さらには放電処理部(25)の放電電流が一定となるような、いわゆる定電流制御を行うことが好ましい。
【0057】
−運転動作−
本実施形態に係る空気処理装置(10)は、上述した各種の空気浄化手段によって空気の浄化が行われるとともに、加湿ユニット(40)により室内の加湿が同時に行われる。
【0058】
具体的に、まず、駆動モータ(44)によって加湿ロータ(43)及び水車(42)が回転駆動される。また、遠心ファン(18)が運転されることで、室内の空気が吸込口(12)を通じて空気通路(14)内に導入される。さらに、電源からは放電処理部(25)の電極(26,27)に高圧の電圧が印加される。さらに、電源からはイオン化部(22)の電極に電圧が印加される。
【0059】
図2に示すように、空気通路(14)に流入した空気は、プレフィルタ(21)を通過して塵埃が捕捉された後、イオン化部(22)を通過する。イオン化部(22)では、電極間でコロナ放電が行われており、空気中の塵埃が帯電される。イオン化部(22)を流出した空気は、プリーツフィルタ(23)を通過する。プリーツフィルタ(23)では、帯電した塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。プリーツフィルタ(23)を流出した空気は、脱臭部材(24)を通過する。脱臭部材(24)では、空気中に含まれる被処理成分が吸着剤に吸着され、あるいは触媒によって酸化分解される。
【0060】
ところで、空気通路(14)では、遠心ファン(18)の吹出側(陽圧側)の空気の一部が返送通路(15)に流入している。返送通路(15)を流れる空気は、前方に送られて放電処理部(25)を流れる。放電処理部(25)では、互いに対向する電極(26,27)の間でストリーマ放電が行われている。その結果、放電処理部(25)では、ストリーマ放電に伴い上述の活性種が発生する。この活性種を含んだ空気の一部は、返送通路(15)を通じて、プレフィルタ(21)の上流側を流れる空気と合流する。従って、空気通路(14)では、その流入端から流出端に亘って活性種が流れることになり、空気中の被処理成分と活性種との反応時間が確保されて脱臭性能が向上する。
【0061】
一方、返送通路(15)を流れる活性種を含んだ残りの空気は、通路途中で分岐した移送配管(30)を通じて水タンク(41)内に供給される。この活性種は、水中に含まれている有害物質を酸化分解して除去し、加えて加湿水の殺菌に利用される。
【0062】
加湿運転時には、脱臭部材(24)を通過した空気が加湿ロータ(43)へ流入する。ここで、加湿ユニット(40)では、水車(42)が回転することで、水タンク(41)内の加湿水が加湿ロータ(43)の吸湿部材(43b)に適宜供給される。具体的に、水車(42)では、水タンク(41)に貯留された加湿水中に後側凹部(42b)が浸漬する。これにより、加湿水中では、後側凹部(42b)内に加湿水が侵入して保持される。加湿水を保持した状態の後側凹部(42b)は、加湿水中から引き上げられてさらに上方へ変位する。この後側凹部(42b)が加湿ロータ(43)に徐々に近接していくと、後側凹部(42b)内に保持された加湿水も自重により徐々に後側凹部(42b)内から流出する。そして、後側凹部(42b)が最上端位置に変位する際には、後側凹部(42b)内の加湿水が概ね全量流出することになる。
【0063】
後側凹部(42b)から流出した加湿水は、該後側凹部(42b)と近接する加湿ロータ(43)と接触し、吸湿部材(43b)に吸収される。このような動作により、加湿ユニット(40)では、加湿ロータ(43)に連続的に加湿水が供給される。
【0064】
加湿ロータ(43)では、水分が補給された部位を空気が流通する。その結果、吸湿部材(43b)に含まれた加湿水が空気中へ放出され、これにより空気の加湿が行われる。以上のようにして清浄化及び加湿された空気は、吹出口(13)を通じて室内へ供給される。
【0065】
なお、前記加湿運転では、電源からイオン化部(22)や放電処理部(25)への電圧の供給を停止させることで、空気の浄化を積極的に行わない運転を行うことも可能である。また、加湿ユニット(40)の加湿動作を実質的に停止させる一方、イオン化部(22)や放電処理部(25)で前記の放電を行うことで、空気の加湿を行わずに空気の浄化を行う空気清浄運転を行うことも可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る空気処理装置(10)によれば、放電処理部(25)で生成した活性種を含む空気の一部を空気浄化手段(20)に供給し、残りの活性種を含む空気を水タンク(41)内の水の供給しているから、空気中や水中に含まれる有害物質等を活性種により分解除去して殺菌を行うことができる。従って、例えば汚染された水が室内へ供給されて室内の清浄度が損なわれてしまうことも回避でき、この空気処理装置(10)の信頼性を確保できる。また、例えばこの水を系外(下水道)等へ排出したとしても、系外の水質汚濁負荷を確実に軽減できる。
【0067】
さらに、1つの放電処理部(25)を用いて空気浄化手段(20)及び水タンク(41)に活性種を含む空気を供給するようにしたから、装置構成を簡略化できて装置全体の省スペース化及び部品点数の削減によるコストダウンを図る上で有利となる。
【0068】
<変形例1>
図6に示すように、イオン化部(22)とプリーツフィルタ(23)との間に放電処理部(25)を配設して、空気通路(14)を通過する空気に活性種を供給するとともに、放電処理部(25)の下流側に連通させた移送配管(30)を通じて水タンク(41)に活性種を供給するようにしても良い。このような構成とすれば、プリーツフィルタ(23)で捕捉した塵埃に活性種を含む空気を直接供給して有害物質等を分解除去して殺菌を行うとともに、水タンク(41)内の水に含まれる有害物質等を分解除去することができる。
【0069】
このように、1つの放電処理部(25)を用いるだけで空気及び水の両方の殺菌を行うことができるので、装置構成を簡略化できて装置全体の省スペース化及び部品点数の削減によるコストダウンを図る上で有利となる。
【0070】
<変形例2>
図7に示すように、ケーシング(11)外部から取り込んだ空気を放電処理部(25)に送り込み、活性種を含んだ空気を水タンク(41)内に供給し、水タンク(41)内を通過した活性種を循環通路(35)を介してプレフィルタ(21)に循環させる構成としても良い。このような構成とすれば、放電処理部(25)で生成した活性種を水タンク(41)に供給して水中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行った後、水タンク(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行うことができるため、1つの放電処理部(25)を用いるだけで効率良く空気及び水の浄化を行うことができる。
【0071】
<変形例3>
図8に示すように、脱臭部材(24)を通過した空気を返送通路(15)を介して放電処理部(25)に送り込み、活性種を含んだ空気を水タンク(41)内に供給し、水タンク(41)内を通過した活性種を循環通路(35)を介してプレフィルタ(21)に循環させる構成としても良い。このような構成とすれば、変形例2と同様、放電処理部(25)で生成した活性種を水タンク(41)に供給して水中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行った後、水タンク(41)を通過した活性種を利用して空気中に含まれる有害物質等を分解除去して殺菌を行うため、1つの放電処理部(25)を用いるだけで効率良く空気及び水の浄化を行うことができる。なお、図8では返送通路(15)が遠心ファン(18)の上流側に接続されているが、下流側に接続されていてもよい。
【0072】
さらに、変形例3では、図9にも示すように、送風ポンプ(31)を放電処理部(25)の上流側に配設するようにしている。このような構成とすれば、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が送風ポンプ(31)側に供給されることがないため、送風ポンプ(31)に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがなく好ましい。
【0073】
なお、放電処理部(25)の上流側に送風ポンプ(31)を配設する他にも、図10に示すように、放電処理部(25)の下流端を送風ポンプ(31)の下流側の移送配管(30)に合流させ、移送配管(30)内で空気と活性種とを混合させた後で水タンク(41)に供給するようにしても良い。このような構成とすれば、放電処理部(25)で生成された活性種を含む空気が送風ポンプ(31)側に供給されることがないため、送風ポンプ(31)に用いられている樹脂やゴムパッキン等が活性種の強い酸化力で腐食することがなく、樹脂やゴムパッキンの素材として耐腐食性のある材質を選定する必要がなく、コストを削減する上で有利となる。
【0074】
<変形例4>
図11に示すように、放電処理部(25)から水タンク(41)内の水に供給された活性種を放電処理部(25)の上流側に返送する活性種返送通路(36)を設けた構成としても良い。このような構成とすれば、放電処理部(25)には繰り返し活性種を含んだ空気が循環されることとなり、活性種を濃縮することができて水の殺菌力が向上する。すなわち、放電処理部(25)の大型化や電力を増やすことで活性種の濃度を上げなくても、小型で低電力の放電処理部(25)を用いて活性種の濃度を上げることができ、装置全体の省スペース化やコスト増大を抑えつつ、十分な除菌効果を得ることができる。
【0075】
なお、前記実施形態及び各変形例では、活性種を含んだ空気を搬送するための送風手段や送風ポンプを図示しているが、流路の最適化等によって搬送に十分な空気圧力が得られる場合は、それらを使用しない構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、装置全体の省スペース化やコストダウンを図りつつ、水容器内の水を安定的に浄化できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態に係る空気処理装置の全体構成を示す斜視図であり、水タンクをケーシングから引き出した状態を示すものである。
【図2】空気処理装置の内部を表した概略の縦断面図である。
【図3】空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図4】空気処理装置の前側寄りの内部を表した概略の縦断面図である。
【図5】加湿ユニットの斜視図である。
【図6】変形例1の空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図7】変形例2の空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図8】変形例3の空気処理装置における空気の流れを示すブロック図である。
【図9】変形例3の送風ポンプの配置を示す模式図である。
【図10】変形例3の送風ポンプの配置の別の例を示す模式図である。
【図11】変形例4の活性種返送通路の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0078】
10 空気処理装置
14 空気通路
15 返送通路
17 制御部
18 遠心ファン(第1送風手段)
20 空気浄化手段
25 放電処理部
31 送風ポンプ(第2送風手段)
35 循環通路
36 活性種返送通路
40 加湿ユニット(加湿手段)
41 水タンク(水容器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置であって、
活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)を備え、
前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気の一部を前記空気浄化手段(20)に供給する一方、残りの活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置であって、
活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)と、
前記水容器(41)内を通過した空気を前記空気浄化手段(20)に循環させるための循環通路(35)とを備え、
前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成され、
前記水容器(41)内を通過した活性種は、前記循環通路(35)を介して前記空気浄化手段(20)に供給されることを特徴とする空気処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記放電処理部(25)から前記空気浄化手段(20)に対して活性種を含む空気を供給する第1送風手段(18)と、
前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内に対して活性種を含む空気を供給する第2送風手段(31)とを備えたことを特徴とする空気処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)の送風動作を制御する制御部(17)を備え、
前記制御部(17)は、前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)をそれぞれ独立に運転制御可能に構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記第2送風手段(31)は、前記放電処理部(25)の上流側に配設されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記空気浄化手段(20)で浄化された空気を該空気浄化手段(20)の上流側に返送する返送通路(15)を備え、
前記放電処理部(25)は、前記返送通路(15)の通路途中に配設されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項において、
前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内の水に供給された活性種を該放電処理部(25)の上流側に返送する活性種返送通路(36)を備えたことを特徴とする空気処理装置。
【請求項1】
空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置であって、
活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)を備え、
前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気の一部を前記空気浄化手段(20)に供給する一方、残りの活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
空気通路(14)を通過する空気を浄化する空気浄化手段(20)と、水容器(41)内に貯留された水を空気中へ付与して空気を加湿する加湿手段(40)とを備えた空気処理装置であって、
活性種を生成するように放電が行われる放電処理部(25)と、
前記水容器(41)内を通過した空気を前記空気浄化手段(20)に循環させるための循環通路(35)とを備え、
前記放電処理部(25)は、生成した活性種を含む空気を前記水容器(41)内の水に供給するように構成され、
前記水容器(41)内を通過した活性種は、前記循環通路(35)を介して前記空気浄化手段(20)に供給されることを特徴とする空気処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記放電処理部(25)から前記空気浄化手段(20)に対して活性種を含む空気を供給する第1送風手段(18)と、
前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内に対して活性種を含む空気を供給する第2送風手段(31)とを備えたことを特徴とする空気処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)の送風動作を制御する制御部(17)を備え、
前記制御部(17)は、前記第1送風手段(18)及び前記第2送風手段(31)をそれぞれ独立に運転制御可能に構成されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記第2送風手段(31)は、前記放電処理部(25)の上流側に配設されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記空気浄化手段(20)で浄化された空気を該空気浄化手段(20)の上流側に返送する返送通路(15)を備え、
前記放電処理部(25)は、前記返送通路(15)の通路途中に配設されていることを特徴とする空気処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項において、
前記放電処理部(25)から前記水容器(41)内の水に供給された活性種を該放電処理部(25)の上流側に返送する活性種返送通路(36)を備えたことを特徴とする空気処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−148305(P2009−148305A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326105(P2007−326105)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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