説明

空気吸引噴射装置およびこれを備える電気掃除機

【課題】空気の噴射によって、対象物から塵埃を吹き飛ばすことができるものの、単に吹き飛ばすだけでは、広く塵埃が舞い散ってしまうおそれがある。また、急いで吹き飛ばした塵埃を吸引した場合でも、微細塵を含む塵埃の場合には、集塵フィルターで確実に捕集することが困難である。
【解決手段】電気掃除機の吸引ホースの先端に接続され、ブロアー機能を発揮する空気吸引噴射装置に、噴射する空気と同時にマイナスイオンを放出するマイナスイオン発生部を備え、吹き飛ばす塵埃にマイナスイオンを帯電させ、電気掃除機で前記マイナスイオンを帯電させた塵埃を集塵する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機に用いられる空気吸引噴射装置と、当該空気吸引噴射装置を備える電気掃除機とに関し、特に、電気掃除機による空気の吸引を利用して空気を噴射できるとともに、噴射する空気によってマイナスイオンを同時に放出することができる空気吸引噴射装置と、これを備える電気掃除機とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電気掃除機は、空気を吸引することによって、空気とともに塵埃を吸引する機能(以下、「バキューム機能」と称する。)を有しているが、近年では、空気を噴射して塵埃を吹き飛ばす機能(以下、「ブロアー機能」と称する。)を備えている構成も提案されている。電気掃除機がブロアー機能を備えていれば、使用者にとって見え難い位置(据え置かれた家具等の裏側、天面等)あるいは使用者から見て高い位置(前記家具の天面、照明の傘、天井等)の塵埃を掃除することが可能となる。
【0003】
具体的なブロアー機能としては、従来から排気を利用する技術が知られている。この排気は、電気掃除機の集塵室を通過してきた空気流であるが、実際のブロアー機能においては、クリーンな空気流となっている。ところが、使用者は、排気を利用するという点で不衛生なイメージを抱いてしまう。また、ブロアー機能が、吸引ホースまたは延長管等を利用する構成であれば、これらの内部に付着した微量な塵埃が噴出することが疑われるため、使用者は、やはり不衛生なイメージを抱いてしまう。そこで、最近では、排気を利用しないブロアー機能が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、吸引力により動作する吸引ファンと、噴射力を発生する噴射ファンと、前記吸引ファンの動力を前記噴射ファンへ伝達する動力伝達手段を備えている空気吸引噴射装置が開示されている。この構成によれば、当該空気吸引噴射装置を吸引ホースに接続するだけで、電気掃除機の吸引力により噴射ファンを回転させることができる。それゆえ、排気を利用しないブロアー機能を、電気掃除機の種類を問わず付加的に利用することが可能となる。
【0005】
また、特許文献2には、吸込口に設けられた噴出ノズルに空気を送り込む圧力発生部を備えている構成の電気掃除機用吸込具が開示されている。この吸込具は、エアポンプ等の圧力発生部により生成した圧縮空気を噴出ノズルから噴射することで、被清掃面に付着したり凹凸部の奥に溜まったりした塵埃を吹き飛ばしてから吸引している。それゆえ、排気を利用しないブロアー機能を実現できるとともに、ブロアー機能により吹き飛ばした塵埃を速やかに吸引できるので、効率よい集塵が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−217746号公報
【特許文献2】特開2001−321305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の技術では、ブロアー機能によって吹き飛ばした塵埃を、電気掃除機で吸引して、電気掃除機本体に内蔵する帯電加工した不織布などで形成した集塵フィルターで集塵する際に、微細塵などの高い捕集性能を得ることができず、また、簡素な構成で、空気の噴射および吸引のタイミングを容易に切り換えることができないため、電
気掃除機の掃除において、ブロアー機能を十分に寄与させることができない。
【0008】
具体的には、ブロアー機能を好ましく使用できる状況としては、前述した(1)微細塵などを吹き飛ばし、そして吸引して電気掃除機の集塵フィルターで十分に捕集したい掃除、あるいは、(2)使用者にとって見え難い位置または高い位置の、(3)掃除被清掃面に付着したり凹凸部の奥に溜まったりした塵埃の掃除だけでなく、(4)吸引口を近接させると、破損、望ましくない移動、誤操作、誤吸引のおそれがある対象物の掃除が挙げられる。しかしながら、従来の技術では、ブロアー機能とバキューム機能とを容易に切り換えることが困難であるため、前記のような多様な状況に十分対応できない。
【0009】
例えば、前記(1)の状況の例として、棚の上などに堆積した塵埃には、一般の家庭では綿埃状の繊維質のものと、家屋の窓を開放している間や家人の出入りとともに進入した砂塵成分の微細塵が含まれ、ブロアー機能によって吹き飛ばした塵埃を電気掃除機で吸引した際には、比較的大きい繊維質の綿埃等は集塵フィルターで確実に捕集されるが、微細塵は集塵フィルターの粗密のばらつきによって、集塵フィルターを構成する繊維内を通過する場合があり、電気掃除機本体の排気とともに外部へ放出してしまう恐れがある。また、(4)の状況の例として、吸引では壊れるおそれのある造花等の置物、掃除のために直接触れると傾いてしまう壁掛けの額または時計、吸引口の近接により誤操作するおそれのある電話、FAX、パーソナルコンピュータのキーボード、もしくは、誤吸引するおそれのある小物の入った引き出しの中等が挙げられるが、これら対象物を掃除する場合、通常の吸引だけでは前述した破損、移動、もしくは誤吸込が生じるおそれがある。
【0010】
ここで、従来のブロアー機能を用いれば、空気の噴射によって、対象物から塵埃を吹き飛ばすことができるものの、単に吹き飛ばすだけでは、広く塵埃が舞い散ってしまうおそれがある。また、急いで吹き飛ばした塵埃を吸引した場合でも、微細塵を含む塵埃の場合には、集塵フィルターで確実に捕集することが困難である。また、従来の技術では、通常のバキューム機能とブロアー機能とを切り換える構成については特に開示されていないので、前述した(1)〜(4)等のさまざまな状況に合わせて、バキューム機能とブロアー機能とを、簡素な構成で容易に切り換えることは困難となっている。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、ブロアー機能によって噴射する空気と同時にマイナスイオンを放出して、吹き飛ばす塵埃にマイナスイオンを帯電させ、電気掃除機で前記マイナスイオンを帯電させた塵埃を集塵することによって、電気掃除機に内蔵する帯電加工したフィルターによる高い捕集効率を得ることを目的とし、さらに、電気掃除機のバキューム機能とブロアー機能とを、簡素な構成で容易に切り換えることができ、かつ、さまざまな状況においてもブロアー機能を有効に使用することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る空気吸引噴射装置は、前記の課題を解決するために、電気掃除機が備える吸引ホースの先端に接続され、一端が前記吸引ホースの先端に接続される後端開口部をなしているとともに他端が先端開口部をなし、その内部が空気の主流路となっている管状の本体部と、外部から空気を導入する噴射空気導入口および導入した空気を外部へ噴射する噴射口を有し、その内部が前記噴射空気導入口から前記噴射口に至る副流路となっている噴射流路部と、前記本体部の内部に設けられ、前記吸引ホースを通じた空気の吸引により前記主流路に形成される吸引空気流によって回転する動力ファンと、前記噴射流路部の内部に設けられ、前記動力ファンに連動して回転し、前記副流路に、前記噴射空気導入口から前記噴射口に向かう噴射空気流を形成する噴射ファンと、噴射する空気と同時にマイナスイオンを放出するマイナスイオン発生部を備えている構成である。
【0013】
前記構成によれば、噴射する空気と同時にマイナスイオンを放出して、吹き飛ばす塵埃にマイナスイオンを帯電させる作用を得ることができる。そして帯電加工を施したフィルター部を備えた集塵室を有する電気掃除機で、前記マイナスイオンを帯電させた塵埃を集塵することによって、前記電気掃除機の集塵部の帯電加工を施したフィルター部によって高い捕集効率を得ることができるものである。
【0014】
また前記空気吸引噴射装置においては、噴射口から外部への前記噴射空気流の噴射を許可または制限する噴射切換部を備えている構成である。前記構成によれば、特定の電源を必要としない構成で副流路に噴射空気流を形成できるだけでなく、当該噴射空気流の噴射口からの噴射を、噴射切換部により許可したり遮断したりすることができる。
【0015】
それゆえ、電気掃除機の使用時に、複雑な構成を用いることなく、吸引ノズル等の先端から容易に噴射空気流を噴射させることができるだけでなく、噴射切換部の動作によって、実質的に、空気の吸引(バキューム機能)と噴射(ブロアー機能)とを簡単に切り換えることができる。その結果、電気掃除機におけるブロアー機能とバキューム機能とを、簡素な構成で容易に切り換えることができるとともに、さまざまな状況においてもブロアー機能を有効に使用することができる。
【0016】
さらには、噴射するマイナスイオンを含む空気を塵埃に噴きつけて吹き飛ばすと同時に、塵埃にマイナスイオンを帯電させ、適宜、空気の吸引(バキューム機能)に切り替えることによって、塵埃の帯電効果が高い状態で吸引することが可能となり、電気掃除機の集塵部の帯電加工を施したフィルター部によって高い捕集効率を得ることができるものである。
【0017】
前記空気吸引噴射装置においては、マイナスイオン発生部を前記噴射ファンの回転軸近傍に備えている構成である。前記構成によれば、噴射ファンの回転によって噴射する空気流を発生させるものであり、前記噴射ファンの回転力の低下への影響を極めて低減することができるとともに、前記噴射する空気流にマイナスイオンを満遍なく拡散させることができ、吹き飛ばす塵埃へのマイナスイオンの帯電効果をよりいっそう高め、電気掃除機に吸引し、帯電フィルター部を有する集塵室での捕集効果をさらに高めることができるものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明では、ブロアー機能によって噴射する空気と同時にマイナスイオンを放出して、吹き飛ばす塵埃にマイナスイオンを帯電させ、電気掃除機で前記マイナスイオンを帯電させた塵埃を集塵することによって、電気掃除機に内蔵する帯電加工したフィルターによる高い捕集効率を得ることを目的とし、さらに、電気掃除機のバキューム機能とブロアー機能とを、簡素な構成で容易に切り換えることができ、かつ、さまざまな状況においてもブロアー機能を有効に使用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気吸引噴射装置を備える電気掃除機の一例を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1に係る空気吸引噴射装置の一例を示す側面図
【図3】図2に示す空気吸引噴射装置に吸引ノズルを装着した状態の一例を示す斜視図
【図4】図3に示す空気吸引噴射装置であって、バキューム時(吸引空気流の形成時)の状態の一例を示す側面図
【図5】図4に示す空気吸引噴射装置においてバキューム時(吸引空気流の形成時)の内部構成の一例を側方から示す断面図
【図6】図3に示す空気吸引噴射装置を電気掃除機が備える手元操作部(吸引ホース)に取り付けた状態の一例を示す側面図
【図7】図3に示す空気吸引噴射装置であって、ブロアー時(噴射空気流の形成時)の状態の一例を示す側面図
【図8】図7に示す空気吸引噴射装置においてブロアー時(噴射空気流の形成時)の内部構成の一例を側方から示す断面図
【図9】図8に示す空気吸引噴射装置においてブロアー時(噴射空気流の形成時)の吸引室における状態の一例を下方(図8の矢視I方向)から示す部分断面図
【図10】図3に示す空気吸引噴射装置において吸引ノズルが備える先端ブラシを突出させた状態の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0021】
(実施の形態1)
[電気掃除機の構成例]
まず、本発明の実施の形態1に係る空気吸引噴射装置を備える電気掃除機の一例について、図1を参照して具体的に説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る空気吸引噴射装置10Aは、典型的なキャニスター型電気掃除機20に備えられているものである。すなわち、キャニスター型電気掃除機20(以下、単に電気掃除機20と略す。)は、掃除機本体21、吸引ホース22、手元操作部23、吸引延長管24、吸込口体25、および吸引ノズル26、並びに空気吸引噴射装置10Aを備えている。
【0022】
掃除機本体21は、電動送風機31、集塵室32、ホイール33、電源コード34を備えており、接続パイプ35を介して吸引ホース22の一方の端が着脱自在に接続されている。吸引ホース22の他方の端には、手元操作部23が設けられており、この手元操作部23の先端に対して、吸引延長管24の一方の端が着脱自在に接続されている。さらに、吸引延長管24の他方の端には吸込口体25が着脱自在に取り付けられている。また、手元操作部23の下方には、吸引ノズル26および空気吸引噴射装置10Aが着脱自在に取り付けられ、これら吸引ノズル26および空気吸引噴射装置10Aは、吸引延長管24の代わりに、手元操作部23の先端に取り付け可能となっている。
【0023】
掃除機本体21は、内部に電動送風機31および着脱自在で塵埃を捕集するエレクトレット加工された集塵袋32aを収納する集塵室32が設けられており、電動送風機31の動作により吸引力が発生し、吸引ホース22、吸引延長管24を介して吸込口体25の図示しない吸込口に吸引力が発生する。また、掃除機本体21の内部には、電源コード34が引き出し可能に収納されている。また、掃除機本体21は、両側方に設けられている一対のホイール33で床面上を移動自在に構成されている。
【0024】
電気掃除機20の使用時には、まず、使用者は、使用時に電源コード34を掃除機本体21から引き出して先端の電源プラグを電源差込口に差し込み、手元操作部23を操作して、掃除機本体21の電源を入れる。これにより、電動送風機31の動作によって吸込口体25の吸込口に吸引力が発生するので、床面上の塵埃が吸引され、吸引延長管24、吸引ホース22、接続パイプ35を介して集塵室32に集められる。前記エレクトレット加工された集塵袋32aの材質はポリプロピレン等の熱可塑性繊維で構成されており、吸引する空気等の摩擦で帯電することになり、集塵袋32aの帯電効果によって、空気と同時に集塵袋32a内に吸引される塵埃にクーロン力が作用し、集塵袋32aを構成する繊維に塵埃を吸着させ、掃除機本体21から排出される排気への微細塵の流出を防止すること
ができる。
【0025】
使用者は、手元操作部23を把持して床面上で吸込口体25の位置を移動させることで、掃除する床面の領域を変える。また、掃除の場所を変える場合には、吸引ホース22を引くことで、ホイール33の回転により掃除機本体21が床面上を移動する。なお、掃除機本体21には図示しない取っ手が設けられており、これで掃除機本体21を持ち上げて移動させることもできる。
【0026】
また、床面ではなく、部屋の隅、家具等の隙間等の狭い領域を掃除したい場合には、吸引延長管24または吸込口体25を取り外し、代わりに吸引ノズル26を取り付けて、掃除を行う。さらに、(1)使用者にとって見え難い位置または高い位置の掃除、(2)被清掃面に付着したり凹凸部の奥に溜まったりした塵埃の掃除、(3)吸引口を近接させると、破損、望ましくない移動、誤操作、誤吸引のおそれがある対象物の掃除等を行いたい場合には、通常の吸引力による掃除(バキューム機能による掃除)だけでなく、ブロアー機能を好適に用いることができる。そこで、吸引延長管24または吸込口体25を取り外し、代わりに空気吸引噴射装置10Aを取り付け、さらにその先端に吸引ノズル26を取り付けて、掃除を行う。
【0027】
図1に示す電気掃除機20における具体的な構成、すなわち、掃除機本体21、吸引ホース22、手元操作部23、吸引延長管24、吸込口体25、および吸引ノズル26等は特に限定されず、電気掃除機の分野で公知の各種構成を好適に用いることができる。
【0028】
[空気吸引噴射装置の構成]
次に、本実施の形態に係る空気吸引噴射装置10Aの具体的な構成について、図2ないし図5を参照して説明する。
【0029】
図2の側面図に示すように、本実施の形態に係る空気吸引噴射装置10Aは、本体部111、噴射流路部112、レバー部材113、図2には示さないファン部、吸引室および流路切換部を備えている。また、図3の斜視図および図4の側面図に示すように、空気吸引噴射装置10Aに対しては、先端にブラシを備える吸引ノズル26Aが装着可能となっている。
【0030】
本体部111は、略管状であって、その内部が空気の主流路となっている。本体部111の両端は、それぞれ先端開口部111aおよび後端開口部111bとなっており、先端開口部111aは、吸引ノズル26A(または他の吸引ノズル26)を装着可能となる略四角形の開口部として構成され、後端開口部111bは、吸引ホース22(より具体的には、手元操作部23)に対して装着可能となる円筒形の開口部として構成されている。先端開口部111aおよび後端開口部111bは、好ましくは、テーパ状に形成されている。これにより、先端開口部111aまたは後端開口部111bの外周に吸引ノズル26Aまたは吸引ホース22を装着したり脱離したりすることが容易となる。
【0031】
噴射流路部112は、図2または図4に示すように、本体部111の管軸方向に対して傾斜する位置関係で、当該本体部111に一体化するように設けられている。噴射流路部112の内部は空気の副流路となっており、かつ、当該副流路は、先端開口部111aにつながるように構成されている。また、噴射流路部112には、噴射空気導入口112aが設けられている。
【0032】
空気吸引噴射装置10Aは、基本的には、噴射流路部112を上方に位置させた状態で、吸引ホース22の先端の手元操作部23に装着される。したがって、以下の説明では、噴射流路部112が位置する側を「上」と称し、反対側を「下」と称する。また、先端開
口部111aの位置する側を「先端」と称し、後端開口部111bの位置する側を「後端」と称する。
【0033】
噴射流路部112において本体部111から上側に露出している部位は、図2または図4に示すように、本体部111の管軸方向に対して傾斜するように延伸しているが、その上面には、図3に示すように、円板状の部位が設けられており、この円板状の下側に、噴射空気導入口112aが形成されている。この噴射空気導入口112aは、噴射流路部112の内部すなわち副流路に空気を流入させるための開口である。
【0034】
また、本体部111における下側、すなわち本体部111を挟んで噴射流路部112の反対側となる位置には、当該本体部111の外周に沿って複数の吸引力調整孔111cが設けられている。この吸引力調整孔111cは、先端開口部111aが、ごみの吸引または吸い付き等により本体部111の主流路が閉塞し、空気の流入が一定以下になって、電気掃除機への負荷が過剰にならないように、先端開口部111a以外で外気を主流路に取り込むためのものである。
【0035】
レバー部材113は、切換レバー113a、レバー支持部113bおよび空気導入蓋部材113cから構成されている。図2および図4に示すように、切換レバー113aおよび空気導入蓋部材113cの間にレバー支持部113bが位置しており、このレバー支持部113bは、本体部111を貫通した状態で回動可能に保持される回動軸となっている。また、後述するように、レバー支持部113bには流路切換部が取り付けられており、切換レバー113aの操作によって流路切換部の切り換えが可能となっている。
【0036】
切換レバー113aは、図3に示すように、本体部111の下側を覆うように位置する枠状となっているが、空気導入蓋部材113cは、本体部111の側面に設けられている吸引空気導入口(図2〜4には図示せず)を開閉可能に閉止する板状材となっている。切換レバー113aは、図3に示すように、バネ等の弾性部材によって先端側に付勢されているので、空気導入蓋部材113cは基本的に後端側に位置している。そして、後述するように、レバー部材113はレバー支持部113bを中心として回動するので、切換レバー113aを後端側に移動させれば、空気導入蓋部材113cは先端側に移動する。このとき、空気導入蓋部材113cにより閉止されている吸引空気導入口(図2〜4には図示せず)は開放される。また、切換レバー113aを後端側に十分に移動させると、本体部111の下側面の一部に当接して止まるので、空気導入蓋部材113cは必要以上に先端側に移動しないように構成されている。
【0037】
本体部111の先端開口部111aに装着されている吸引ノズル26Aは、図3または図4に示すように、ノズル本体261および先端ブラシ262から構成されている。ノズル本体261の先端には、図3に示すように、塵埃等を吸引するための吸引口261aが設けられている。また、先端ブラシ262は、図3または図4に示す構成では、ノズル本体261の下側に折り畳まれているが、後述するように、吸引口261aの先端側に位置するように突出可能となっている。
【0038】
空気吸引噴射装置10Aの内部には、図5の縦断面図に示すように、本体部111の内部により構成される主流路101と、噴射流路部112の内部により構成される副流路102と、噴射流路部112の下側において主流路101に面している吸引室115とが、設けられている。噴射流路部112および吸引室115は互いに隣接し、かつ、一体化されており、その内部には、ファン部114が設けられている。言い換えれば、噴射流路部112および吸引室115はファン部収容部であり、吸引室115は動力ファン収容部である。また、吸引室115における主流路101に面する部位には、内部吸引口115aが設けられており、さらに、後述するように、本体部111の外側につながる吸引空気導
入口も設けられている。
【0039】
ファン部114は、噴射流路部112内に位置する噴射ファン114aと、吸引室115内に位置する動力ファン114bと、これらファンを回転可能に支持するファン回転軸114cと、から構成されている。噴射ファン114aは、副流路102に、先端開口部111aに向かって流れる噴射空気流を形成するものである。動力ファン114bは、噴射ファン114aとともにファン回転軸114cを共有しているので、当該噴射ファン114aと連動して回転するように構成されている。噴射ファン114aのファン回転軸114cの軸受け部から延設したリブ体400には、噴射ファン114aが回転している時も中心軸部114dに接するブラシ体300を接着等によって保持固定して構成されている。
【0040】
さらに、噴射ファン114aとブラシ体300を構成する材料として、例えば噴射ファン114aを熱可塑性樹脂のナイロン、ブラシ体300にテフロン(登録商標)繊維を採用すれば、摩擦帯電列の離れた関係にあり、噴射ファン114aが回転して、中心軸部114dと接触するブラシ体300が摩擦することによって、ファン回転軸114c周囲に電荷を持った空気イオンを発生させることができる。また、例えばブラシ体300にナイロン繊維を採用し、中心軸部114dにテフロン(登録商標)から成る部材を装着することによっても同様の効果を得ることが実現可能である。なお、ファン部114の具体的な動作に関しては、後述する噴射空気流の形成とともに説明する。
【0041】
主流路101および副流路102は、前述したように、それぞれ本体部111および噴射流路部112の内部により構成され、図5に示すように、主流路101の先端側となる位置に、副流路102が合流している。先端開口部111aから見れば、主流路101(本体部111)は略直進する方向に延伸しているが、副流路102は、主流路101の途中で、当該主流路101に対して鋭角を有する方向に分岐している。この状態を、主流路101および副流路102を基準とした表現ではなく、本体部111および噴射流路部112を基準として表現すれば、噴射流路部112は、その内部の副流路102が、本体部111の内部の主流路101と合流するように当該本体部111に設けられていることになる。また、主流路101に副流路102が合流していることから、本体部111における先端開口部111aは、噴射流路部112における噴射口を兼ねていることになる。
【0042】
また、主流路101および副流路102が合流する部位には、流路切換部116が設けられている。流路切換部116は、少なくとも先端開口部111aに対する副流路102の接続または遮断を切り換えるように構成されていればよいが、本実施の形態では、先端開口部111aに対して主流路101または副流路102の一方が接続されるように、択一的な切り換えを行う構成となっている。
【0043】
具体的には、流路切換部116は、図5に示すように、略板状の弁部材となっており、一端がレバー支持部113bに固定支持されている。したがって、切換レバー113aを操作することで、流路切換部116は、レバー支持部113bを支点として合流部位の領域内を揺動する。それゆえ、流路切換部116の揺動角度は、切換レバー113aの操作によって自在に変えることができる。
【0044】
ここで、主流路101における合流部位を、図5の破線で囲んだ領域に示すように「本体合流口111d」と定義し、副流路102における合流部位を「噴射合流口112b」と定義すれば、弁部材である流路切換部116は、切換レバー113aの操作によって、主流路101または副流路102の一方を閉止するように角度を変える(揺動する)。なお、図5に示す構成では、流路切換部116は、噴射合流口112bを閉止している状態にある。
【0045】
また、本体合流口111dおよび噴射合流口112bのいずれにおいても、流路切換部116の揺動が、閉止状態を超えた位置にまで及ばないように、流路切換部116の移動を所定位置で止めるストッパ111e,112cが設けられている。これらストッパ111e,112cは、本体部111または噴射流路部112の内壁面が突出した突起であり、図5に示す構成では、流路切換部116の形状に合わせた線状突起となっているが、この構成に限定されず、その他の形状の突起であってもよい。
【0046】
本実施の形態に係る空気吸引噴射装置10Aおよび吸引ノズル26Aの具体的な構成は特に限定されず、本体部111、噴射流路部112、レバー部材113、ファン部114、吸引室115および流路切換部116等は、電気掃除機の分野あるいは広く家電製品の分野で公知の部材、材料、形状等を用いて製造できるものであればよい。
【0047】
[空気吸引噴射装置の動作]
次に、前述した構成を有する空気吸引噴射装置10Aの動作、特に、吸引口261aから噴射空気流を噴射する機能(ブロアー機能)の詳細、並びに、当該ブロアー機能と通常の吸引を行う機能(バキューム機能)との切り換えについて、図5に加えて図6ないし図9を参照して具体的に説明する。
【0048】
まず、空気吸引噴射装置10Aは、例えば図6に示すように、吸引ホース22の先端に設けられている手元操作部23に直接取り付けて使用することができる。つまり、使用者は、手元操作部23に吸引延長管24および吸込口体25が取り付けられている状態(図1参照)から吸引延長管24を取り外し、代わりに空気吸引噴射装置10Aを取り付けた状態として使用する。なお、空気吸引噴射装置10Aには吸引ノズル26Aが取り付けられており(図3〜図5参照)、以下の説明でも、この状態に基づいて空気吸引噴射装置10Aの動作を説明する。
【0049】
次に、通常のバキューム機能について説明する。図5に示すように、空気吸引噴射装置10Aにおいては、切換レバー113aが先端側に位置する定常状態にあるので、主流路101および副流路102の合流部位においては、流路切換部116は、噴射合流口112bを閉止し、本体合流口111dを開放している。そして、掃除機本体21(図5には図示せず)の動作によって吸引力が発生すると、当該吸引力は吸引ホース22(図5には図示せず)を介して主流路101および吸引ノズル26Aまで達する。それゆえ、図中太線の矢印で示すように吸引口261aから外気が吸引され、先端開口部111aから後端開口部111bに向かって、主流路101に吸引空気流が形成される。
【0050】
次に、ブロアー機能への切り換えについて説明する。図7に示すように、使用者が切換レバー113aを後端側に移動させる操作を行うと、空気導入蓋部材113cは先端側に移動するので、空気導入蓋部材113cにより閉止されている吸引空気導入口115bが開放される。さらに、図8に示すように、主流路101および副流路102の合流部位においては、流路切換部116は、噴射合流口112bを閉止している位置から、本体合流口111dを閉止する位置まで移動する。これにより噴射合流口112bは開放されるので、副流路102は先端開口部111aにつながるが、主流路101は先端開口部111aから遮断される。後端開口部111b近傍に生じる吸引力は、図中太線矢印に示すように、内部吸引口115aから吸引室115の内部の空気を吸引する。
【0051】
このとき、図8における二点鎖線の矢印Iの方向から矢視する図9に示すように、開放されている吸引空気導入口115bは、吸引室115につながっているので、吸引室115の内部は外気につながっていることになる。それゆえ、吸引空気導入口115b、吸引室115、内部吸引口115aに向かって吸引空気流が形成される。この吸引空気流は、
主流路101を介して後端開口部111bから吸引ホース22(図8,図9には示さず)に向かって流れる。そして、吸引室115の内部には、動力ファン114bが設けられているので、この動力ファン114bは吸引空気流の作用によって回転する。より具体的には、主流路101に生じている吸引空気流により当該主流路101が減圧すれば、これにより吸引室115の内部もそのまま減圧されて、吸引空気導入口115bから内部吸引口115aに向かって多量の吸引空気流が形成される。これにより動力ファン114bは吸引室115の内部で回転する。
【0052】
さらに動力ファン114bは、噴射ファン114aとともにファン回転軸114cを共有しているので、動力ファン114bの回転に伴って噴射ファン114aも回転する。噴射ファン114aは噴射流路部112内に設けられているので、図8の太線矢印に示すように、副流路102において噴射空気流が形成され、当該噴射空気流は先端開口部111aから吸引ノズル26Aの内部に流れ、吸引口261aから噴射される。
【0053】
このとき、前述のように摩擦帯電列の離れた関係にある材料で形成した噴射ファン114aとブラシ体300が、中心軸部114dとで摩擦することによって、ファン回転軸114c周囲に電荷を持った空気イオンを発生させ、噴射空気流とともに吸引口261aから大気に放出され、噴射空気流を塵埃に吹きつければ、塵埃に電荷を帯びさせることができる。この電荷を帯びた塵埃を掃除機本体21内に吸引すると、集塵袋32aとのクーロン力によって集塵袋32aの繊維に付着させ、微細塵の掃除機本体の排気に流出することを防止し、クリーンな排気を得ることが可能となる。
【0054】
なお、使用者が、切換レバー113aを後端側に移動させた状態を解除すれば、切換レバー113aは後端側から先端側に移動して元の位置に戻る。これに伴い、空気導入蓋部材113cは吸引空気導入口115bを閉止し、流路切換部116は、噴射合流口112bを開放している位置から、本体合流口111dを開放する位置まで移動する。それゆえ、副流路102が先端開口部111aから遮断され、主流路101が先端開口部111aにつながるので、動力ファン114bおよび噴射ファン114aの回転が停止し、吸引口261aから噴射していた噴射空気流も停止する。また、主流路101には、吸引空気流が形成されるので、吸引口261aにおいては再び吸引力が生じる。
【0055】
このように、本実施の形態では、切換レバー113aの操作により流路切換部116を切り換えるだけで、先端開口部111aから噴射空気流を噴射させることができる。それゆえ、電気掃除機20の使用時に、複雑な構成を用いることなく、吸引ノズル26Aの先端から容易に噴射空気流を噴射させることができる。また、切換レバー113aを元に戻すだけで、ブロアー機能を停止してバキューム機能に戻すことができるので、操作性が向上するだけでなく、電気掃除機20の使用状況に応じて、バキューム機能とブロアー機能とを適切に切り換えることができる。
【0056】
バキューム機能とブロアー機能とを容易に切り換えることができれば、例えば、ブロアー機能により、掃除の対象物に堆積した塵埃を吹き飛ばした後に、直ちにバキューム機能に戻し、吹き飛ばされて舞い上がった塵埃を、室内に拡散する前に速やかに吸引することができる。このような掃除方法は、例えば、(1)使用者にとって見え難い位置または高い位置の掃除、(2)被清掃面に付着したり凹凸部の奥に溜まったりした塵埃の掃除、(3)吸引口を近接させると、破損、望ましくない移動、誤操作、誤吸引のおそれがある対象物の掃除等において好適に利用することができる。
【0057】
また、前記(3)の掃除においては、噴射空気流の勢いが一定であれば、対象物または塵埃の種類等によっては、噴射空気流を吹きつけることで当該塵埃が必要以上に飛散するおそれがある。ここで、本実施の形態では、弁部材である流路切換部116は、切換レバ
ー113aの操作により、主流路101または副流路102の一方を開放し一方を閉鎖するように角度を変化する構成である。それゆえ、例えば、切換レバー113aを完全に後端側に移動させずに、中間の位置で保持すれば、噴射空気流および吸引空気流を同時に形成することができる。
【0058】
したがって、切換レバー113aの操作具合を調整することで、噴射空気流および吸引空気流の比率を自在に変更することができ、対象物に対して好適な流量の噴射空気流を当てることができる。また、切換レバー113aの操作具合を調整することで、噴射空気流の流量を微調整することが可能であるため、ブロアー機能の微調整が可能となる。
【0059】
さらに、噴射空気流を形成する噴射ファン114aは、動力ファン114bによって回転するが、この動力ファン114bは、主流路101に形成される吸引空気流によって回転する。それゆえ、噴射ファン114aは、主流路101を流れる空気流によって回転することができるので、当該噴射ファン114aを回転させるために、電源を使用する駆動源を設ける必要がなくなる。それゆえ、空気吸引噴射装置10Aの構成を簡素化でき、またコストの増加を回避することができる。
【0060】
なお、図10に示すように、吸引ノズル26Aの先端ブラシ262を吸引口261aの先端側に位置するように突出した状態であっても、前述したように、バキューム機能とブロアー機能とを適切に切り換えることができる。すなわち、図10に示すように、切換レバー113aを後端側に移動させれば、吸引空気導入口115bが開放されるので、吸引空気導入口115bから吸引室115に空気が取り入れられ、吸引空気導入口115bから内部吸引口115aに向かって流量の大きい吸引空気流が形成される。これによって吸引室115の内部の動力ファン114bを勢いよく回転させることができるので、噴射ファン114aにより流速の大きい噴射空気流を形成することができる。
【0061】
なお、本発明は前述した各実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、ブロアー機能をバキューム機能とともに使用したい場合であれば、家庭用、業務用を問わず、また、キャニスター型、アップライト型を問わず、さまざまな種類の電気掃除機の分野に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
10A 空気吸引噴射装置
111 本体部
111a 先端開口部
111b 後端開口部
112 噴射流路部
112a 噴射空気導入口
113 レバー部材
113c 空気導入蓋部材
114a 噴射ファン
114b 動力ファン
114c ファン回転軸
114d 中心軸部
115 吸引室(動力ファン収容部)
115a 内部吸引口
115b 吸引空気導入口
116 流路切換部(弁部材)
300 ブラシ体
400 リブ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気掃除機が備える吸引ホースの先端に接続され、
一端が前記吸引ホースの先端に接続される後端開口部をなしているとともに他端が先端開口部をなし、その内部が空気の主流路となっている管状の本体部と、
外部から空気を導入する噴射空気導入口および導入した空気を外部へ噴射する噴射口を有し、その内部が前記噴射空気導入口から前記噴射口に至る副流路となっている噴射流路部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記吸引ホースを通じた空気の吸引により前記主流路に形成される吸引空気流によって回転する動力ファンと、
前記噴射流路部の内部に設けられ、前記動力ファンに連動して回転し、前記副流路に、前記噴射空気導入口から前記噴射口に向かう噴射空気流を形成する噴射ファンと、
前記副流路内にマイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生部を備えていることを特徴とする、空気吸引噴射装置。
【請求項2】
前記噴射口から外部への前記噴射空気流の噴射を許可または制限する噴射切換部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の空気吸引噴射装置。
【請求項3】
前記マイナスイオン発生部は、前記噴射ファンの回転軸近傍に備えたことを特徴とする、請求項1または2に記載の空気吸引噴射装置。
【請求項4】
前記マイナスイオン発生部は、ブラシ体が回転する噴射ファンの一部分と接触する構成であることを特徴とする、請求項1または2に記載の空気吸引噴射装置。
【請求項5】
前記ブラシ体と、前記噴射ファンの一部分は、互いに磨耗帯電列の離れた関係にあることを特徴とする、請求項4に記載の空気吸引噴射装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の空気吸引噴射装置を備える電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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