説明

空気吹出装置とダクトとの接続構造

【課題】ダンパにより空気吹出装置の流通路を閉塞した状態においても、空気吹出装置とダクトの接続部に特別のシール加工を施すことなく、空気吹出装置とダクトとを良好な密閉性をもって接続することにより接続部にて空気が漏出することを防止することが可能であるとともに、コストの低減を実現可能な空気吹出装置とダクトとの接続構造を提供する。
【解決手段】ダンパ機構12のダンパ板14を介しリテーナ2の空気流通路11を閉塞した状態で、空調装置からダクト15を経て空気が空気吹出装置に向かって流入されることに基づき、リテーナ2及びダクト15内部の内圧を増加させるとともに、ダクト15が柔軟性を有する樹脂材料から成形されていることに基づきダクト15の接続挿入部15Aに形成された突状部16をリテーナ2の接続受部2Bの内周壁2Dに向かって膨出変形させ、突状部16をリテーナ2の接続受部2Bの内周壁2Dに密着させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気流通路の開閉を行うダンパを有する空気吹出装置と空気吹出装置に空気を供給するダクトとの接続構造に関し、特に、ダンパにより空気吹出装置の流通路を閉塞した状態においても、空気吹出装置とダクトとを良好な密着性をもって接続することにより接続部にて空気が漏出することを防止することが可能な空気吹出装置とダクトとの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気吹出装置と空気吹出装置に空気を送り込むダクトとの接続構造については、各種の接続構造が提案されている。
例えば、特許文献1(実開昭62−179551号公報)の第5図には、レジスタの開口端と対向するダクトの開口端を膨径させるとともに、レジスタの開口端をダクトの膨径開口端に嵌めこみ、両開口端の外周面と内周面との間に環状の弾性シール部材を圧縮介在させたダクト接続構造が記載されている(従来例1)。
【0003】
また、特許文献1の図1には、ダクトの接続開口端の内周面に突条を形成するとともに、レジスタの接続開口端の外周面に凹溝を形成し、突条を凹溝に強圧嵌入したダクト接続構造が記載されている(従来例2)。
【0004】
更に、特許文献1の図3には、レジスタの開口端の外周面に環状突条を形成するとともに、ダクトの開口端の内周面に環状凹溝を形成し、環状突条に環状凹溝を嵌め込んだダクト接続構造が記載されている(従来例3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−179551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、空気吹出装置(レジスタ)には、その空気流通路を自在に開閉するダンパ機構が設けられているのが一般的であり、空気吹出装置から空気を吹き出す際にはダンパ機構により空気流通路が開放され、また、空気吹出装置からの空気の吹出を停止する際にはダンパ機構により空気流通路が閉塞される。
【0007】
前記従来例1のダクト接続構造では、レジスタの開口端の外周面とダクトの膨径開口端の内周面との間に弾性シール部材を介在されているが、かかる接続構造では、弾性シール部材の費用、及びその組み付けコストが必然的に発生し、接続構造自体のコストが高騰してしまう。また、レジスタに設けられているダンパ機構を閉塞した場合には、ダクト内における空気の内圧が上昇することに起因して、ダクトの膨径開口端の内壁面とシール部材との間に間隙が発生し、かかる間隙から空気が漏出してしまう。特に、シール部材が発泡性材料から形成されている場合、空気が間隙から漏出すること加えて、シール部材の発砲部分から空気が漏出してしまう。
【0008】
また、前記従来例2のダクト接続構造では、レジスタのダンパ機構を閉塞した場合、ダクト内における空気の内圧が上昇することに起因して、ダクトの接続開口端が拡径してしまい、この結果、ダクトの接続開口端の内周面に形成された突条とレジスタの接続開口端の外周面に形成された凹溝との間に間隙が発生し、かかる間隙から空気が漏出してしまう
。特に、ダクトはブロー成形されるのが一般的であり、かかるブロー成形では、ダクトの内周面の寸法精度を出すことは難しく、ダクトの接続開口端の内周面とレジスタの接続開口端の外周面との間に間隙が発生し易いことから、レジスタのダンパ機構を閉塞した際に、ダクトの接続開口端の内周面に形成された突条とレジスタの接続開口端の外周面に形成された凹溝との間の間隙に加えて、他の間隙からも空気が漏出する虞が高い。
【0009】
更に、従来例3のダクト接続構造では、レジスタの開口端における環状突条にダクトの開口端における環状凹溝を嵌め込む必要があり、両者の組み付け作業は煩雑で手間がかかる。また、レジスタのダンパ機構を閉塞した場合、ダクト内における空気の内圧が上昇することに起因して、ダクトの接続開口端が拡径してしまい、この結果、レジスタの環状突条とダクトの環状凹溝との間隙が発生し、かかる間隙から空気が漏出してしまう。特に、ダクトはブロー成形されるのが一般的であり、かかるブロー成形では、ダクトの内周面の寸法精度を出すことは難しく、ダクトの開口端の内周面とレジスタの開口端の外周面との間に間隙が発生し易いことから、レジスタのダンパ機構を開放した際に、ダクトの開口端の内周面に形成された環状凹溝とレジスタの開口端の外周面に形成された環状凹溝との間の間隙に加えて、他の間隙からも空気が漏出する虞が高い。
【0010】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、ダンパにより空気吹出装置の空気流通路を閉塞した状態においても、空気吹出装置とダクトの接続部に特別のシール加工を施すことなく、ダクトから空気吹出装置に対して空気を供給している間に、ダクト内における空気の内圧が増加することを利用して空気吹出装置とダクトとを良好な密着性をもって接続することにより接続部にて空気が漏出することを防止することが可能であるとともに、コストの低減を実現可能な空気吹出装置とダクトとの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る空気吹出装置とダクトの接続構造は、空気流通路の開閉を行うダンパを有する空気吹出装置と空気吹出装置に空気を送るダクトとの接続構造において、前記空気吹出装置のリテーナの端部に形成されるとともに拡径された筒状の接続受部と、前記ダクトの端部に形成されるとともに前記リテーナの接続受部の内部に挿嵌される筒状の接続挿入部と、前記筒状の接続挿入部と同一肉厚で接続挿入部の外周に渡って形成された突状部とを備え、前記突状部が形成されたダクトの接続挿入部は、前記リテーナの接続受部よりも柔軟性を有する樹脂材料から成形されており,前記突状部は、前記ダンパを介して空気吹出装置の空気流通路を閉塞した状態で前記ダクトから前記空気吹出装置に向かって空気が流入する際にダクト内で空気の内圧が増加することにより、前記リテーナの接続受部の内周壁に向かって膨出して密着することを特徴とする。
【0012】
ここに、請求項2に記載されているように、前記空気吹出装置とダクトの接続構造において前記接続受部を有するリテーナは樹脂材料より成形されており、その樹脂材料の引張弾性率は380〜600kgf/cm3の範囲にあり、前記ダクトを成形する樹脂材料の引張弾性率は300〜390kgf/cm3の範囲にあることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る空気吹出装置とダクトの接続構造では、突状部が形成されたダクトの接続挿入部は、リテーナの接続受部よりも柔軟性を有する樹脂材料から成形されており、突状部は、ダンパを介して空気吹出装置の空気流通路を閉塞した状態でダクトから空気吹出装置に向かって空気が流入する際にダクト内で空気の内圧が増加することにより、リテーナの接続受部の内周壁に向かって膨出して密着する。この時、リテーナの接続受部は堅い樹脂材料から成形されているので変形しない。これにより、ダンパにより空気吹出装置の流通路を閉塞した状態においても、ダクトから空気吹出装置に対して空気を供給している
間に、ダクト内における空気の内圧が増加することを利用して空気吹出装置とダクトとを良好な密着性をもって接続することにより接続部にて空気が漏出することを防止することができる。また、空気吹出装置とダクトの接続部に特別のシール加工を施すことなく、空気吹出装置とダクトとを良好な密着性をもって接続することができるので、コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る空気吹出装置とダクトの接続構造の斜視図である。
【図2】空気吹出装置とダクトの接続構造の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る空気吹出装置とダクトの接続構造について、本発明を具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ説明する。
図1において、空気吹出装置1は、車両のインスツルメントパネルにおいて乗員側(助手席側)に配設される装置を示しており、かかる空気吹出装置1は、基本的に、空気吹出装置1の本体を構成するリテーナ2及びリテーナ2の前面側に配置されるベゼル3を備えている。
【0016】
リテーナ2の内部にて前側には、下軸4が支持板5に回動可能に支持されるとともに上軸が支持板(共に図示せず)に回動可能に支持された複数枚(図1では5枚)の縦フィン6が配置されている。また、各縦フィン6の後部には、公知のリンク機構が設けられており、左側の縦フィン6に設けられた操作用摘み7を左右方向に操作することにより各縦フィンはリンク機構を介して一体に左右方向に回動可能に構成されている。
尚、各縦フィン6の後部において、リテーナ2の内部には、複数枚の横フィンを有する横フィン機構が配設されており、各横フィンは上下方向に一体に回動可能に構成されている。かかる横フィン機構は公知であるので、ここではその説明を省略する。
【0017】
ベゼル3には、空気吹出口8が形成されており、空気吹出口8からは横フィン機構及び各縦フィン6の空気案内作用に基づき種々吹出方向を変更しつつ乗員に向かって空気が吹き出される。また、ベゼル3の空気吹出口8の下側には回転式ノブ9が配置されており、かかる回転式ノブ9は、ダンパ機構12(図2参照)の回動操作を行う際に使用される。
【0018】
図1及び図2に示すように、リテーナ2は、ABS樹脂等の比較的硬い樹脂材料から断面四角形状の筒状に成形されており、ダンパ配置部2Aとダンパ配置部2Aよりも拡径された接続受部2Bを有する。かかる樹脂材料としては、その引張弾性率が、380〜600kgf/cm3に範囲にある材料が使用されている。
リテーナ2のダンパ配置部2Aには、その筒状形状に基づき内部に空気流通路11が設けられており、空気流通路11の下流側(図2中右側)には、前記した回転式ノブ9の回転操作に基づき空気流通路11の開閉を行うダンパ機構12が設けられている。
【0019】
ダンパ機構12は、回転軸13の回りに90度の範囲で回転可能に支持されたダンパ板14を有しており、このダンパ板14は、図2に示す垂直位置(実線で示す)で空気流通路11を遮蔽し、水平位置(点線で示す)で空気流通路11を開放する。
【0020】
前記のように構成されたリテーナ2の接続受部2Bには、樹脂材料から成形された筒状のダクト15が接続される。ダクト15は空調装置(図示せず)に接続され、空調装置から送出された空気をリテーナ2を介して空気吹出装置1に供給する。ここにダクト15を成形する樹脂材料としては、リテーナ2の接続受部2Bよりも柔軟性を有する樹脂材料が使用され、例えば、引張弾性率が100〜390kgf/cm3の範囲にあるポリプロピレン等の材料が使用される。
【0021】
ダクト15の端部(図1、図2中右側端部)には、リテーナ2の接続受部2Bの内部に挿嵌される接続挿入部15Aが形成されている。接続挿入部15Aの長さ方向の略中央部には、接続挿入部15Aの肉厚と同一肉厚で接続挿入部15Aの外周に渡って突状部16が形成されている。
【0022】
尚、図2に示すように、接続挿入部15Aにおいて、突状部16の下流側(図2中右側)には、接続挿入部15Aの中心に向かって折曲された折曲部15Bが形成されており、折曲部15Bの中心側端部は、リテーナ2のダンパ配置部2Aの内壁面2Cと同一レベルに形成されている。これは、空気がダクト15から接続受部2Bを経てダンパ配置部2Aに流入される際に、ダンパ15とリテーナ2との接続部で乱流が発生しないようにして空気流にロスが発生することを防止するためである。
【0023】
前記のようにダクト15を空気吹出装置1に接続した状態で、回転式ノブ9を操作してダンパ配置部2Aに配置されたダンパ機構12のダンパ板14を空気流に対して平行な位置(図2点線位置)に配置すると、リテーナ2の空気流通路11は開放され、空調装置からダクト15を介してリテーナ2から供給された空気は、ベゼル3の空気吹出口8から乗員に向かって吹き出される。
【0024】
これに対して、回転式ノブ9を逆方向に操作してダンパ配置部2Aに配置されたダンパ機構12のダンパ板14を空気流に対して垂直な位置(図2実線位置)に配置すると、リテーナ2の空気流通路11は閉塞され、空調装置からダクト15を介してリテーナ2から供給された空気は、ダンパ板14により遮断される。
【0025】
このとき、空気が空調装置からダクト15を経て空気吹出装置に向かって流入されることに基づき、リテーナ2及びダクト15内部の内圧は増加していく。このようにリテーナ2及びダクト15の内圧が増加していくと、ダクト15の接続挿入部15Aに形成された突状部16は、ダクト15が柔軟性を有する樹脂材料から成形されていることに基づき、リテーナ2の接続受部2Bの内周壁2Dに向かって膨出変形していく。この時、リテーナ2は堅い樹脂材料で成形されているので変形しない。
【0026】
これにより、突状部16はリテーナ2の接続受部2Bの内周壁2Dに密着されることとなり、ダンパ機構12のダンパ板14によりリテーナ2の空気流通路11を閉塞した状態においても、ダクト15から空気吹出装置1に対して空気を供給している間に、ダクト15内における空気の内圧が増加することを利用してリテーナ2とダクト15とを良好な密着性をもって接続することができる。この結果、リテーナ2とダクト15の接続部にて空気が漏出することを防止することができる。また、空気吹出装置1のリテーナ2とダクト15の接続部に特別のシール加工を施すことなく、空気吹出装置1のリテーナ2とダクト15とを良好な密着性をもって接続することができるので、コストの低減を実現することができる。
【0027】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 空気吹出装置
2 リテーナ
2B 接続受部
2D 接続受部の内周壁
11 空気流通路
12 ダンパ機構
14 ダンパ板
15 ダクト
15A 接続挿入部
16 突状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流通路の開閉を行うダンパを有する空気吹出装置と空気吹出装置に空気を送るダクトとの接続構造において、
前記空気吹出装置のリテーナの端部に形成されるとともに拡径された筒状の接続受部と、
前記ダクトの端部に形成されるとともに前記リテーナの接続受部の内部に挿嵌される筒状の接続挿入部と、
前記筒状の接続挿入部と同一肉厚で接続挿入部の外周に渡って形成された突状部とを備え、
前記突状部が形成されたダクトの接続挿入部は、前記リテーナの接続受部よりも柔軟性を有する樹脂材料から成形されており,
前記突状部は、前記ダンパを介して空気吹出装置の空気流通路を閉塞した状態で前記ダクトから前記空気吹出装置に向かって空気が流入する際にダクト内で空気の内圧が増加することにより、前記リテーナの接続受部の内周壁に向かって膨出して密着することを特徴とする空気吹出装置とダクトとの接続構造。
【請求項2】
前記接続受部を有するリテーナは樹脂材料より成形されており、その樹脂材料の引張弾性率は380〜600kgf/cm3の範囲にあり、
前記ダクトを成形する樹脂材料の引張弾性率は300〜390kgf/cm3の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の空気吹出装置とダクトとの接続構造。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−83423(P2013−83423A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39709(P2012−39709)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3172421号
【原出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】