説明

空気浄化式建屋及び建屋の空気浄化方法

【課題】建屋の床下に放熱管と多孔吸着体を配置するという簡単な作業で、異質物を除去した適温の浄化空気を屋内に供給し、また工事費が安価で、地熱を利用して外気を加温又は冷却するので冷暖房費を低減することができる空気浄化式建屋及び建屋の空気浄化方法を提供する。
【解決手段】建屋本体1の基礎2に地盤Gと対面して下側閉塞体4を設け、床体3Cとの間に床下空間5を画成し、仕切り体6により床下空間5内は下側の熱交換空間部5Aと上側の浄化空間部5Bに画成してある。外気導入ダクト9を有する換気装置8を浄化空間部5Bに設置し、導入した外気は熱交換空間部5A、浄化空間部5Bを経て屋内1Aに供給する。浄化空間部5Bには塩化ビニル管からなる放熱管11を螺旋状に敷設し、炭を収容した多数の多孔吸着体12により放熱管11を押えた状態にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋に取込む外気を加温又は冷却して屋内に供給し、この間に有害化学物質・花粉その他の異質物を除去することにより浄化し、シックハウス症候群等の有害要因を除去することで快適な生活環境を確保するようにした空気浄化式建屋及び建屋の空気浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外には人間に有害な多様な異質物、例えば有害化学物質、花粉、塵埃、黄砂等が浮遊し、風に乗って飛来している。そこで、建屋、特に住宅の生活環境を改善するためには、大気中のこれらの異質物を除去することが重要な課題である。また、建屋内を快適な環境に維持するためには異臭、湿気を除去することも必要である。そして、これら異質物、湿気、異臭を除去するのに微多孔物質である炭が効果的であることから、炭を建屋の床下に配置して空気を浄化する技術が提案されている。
【0003】
例えば、基礎構造部2には、床下全面に木炭を敷炭25した木炭シルター床面28と木炭シルター壁面29により木炭シルター室211が設けてある。木炭シルター室211を通りファン210を介して空気が供給される床面側開口14が設けてある。屋根構造部4には居住空間部1からの空気の流路と内部排気用の屋切ダンパー45を設け、基礎構造部2から入った空気を居住空間部1に導き、屋根構造部4より排出する内部空気流路と、床下ダンパー27及び内部屋切ダンパー45と、ファン210よりなり、居住空間部1の空気圧力を外部に対して高圧に保持する圧力調整手段を設けた技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−121830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術は、鉄筋コンクリート基礎22の床下全面に袋入木炭を敷炭25として充填する、基礎構造物2に特別の木炭シルター室211を形成するなど幾多の点で多大な工事費を要すること、外気を加温又は冷却する手段を設けていないので寒冷地では冷気が、高温地では熱気が居住空間部1に流入するという欠点がある。また、他の先行技術として、床下の地盤上に炭を敷き詰めることや、袋に充填して配置することも提案されているが、地熱を有効に活用していない、地盤からの湿気を含んでしまうために屋内の湿気を除去できない、炭の入替え作業が面倒である、といった欠点がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、在来の建屋構造を基に、床下に放熱管と多孔吸着体を配置するという簡単な作業で、屋内に異質物を除去した適温の浄化空気を供給することが可能であり、また工事費が安価で、地熱を利用して外気を加温又は冷却するので冷暖房費を低減することができる空気浄化式建屋及び建屋の空気浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、地盤と対面して建屋本体の基礎に設ける下側閉塞体により該建屋本体の床体との間に画成する床下空間と、仕切り体により該床下空間内に画成した下側の熱交換空間部及び上側の浄化空間部と、前記仕切り体を介して該浄化空間部を前記熱交換空間部に連通させる連通口と、前記床体に設けられ、前記浄化空間部を前記建屋室内に連通させる吹出し口と、前記仕切り体上に展開した状態で載置され、熱源から冷媒又は熱媒が循環供給される放熱管と、該放熱管を上方から押えるように前記仕切り体上に配置した複数の多孔吸着体と、前記熱交換空間部に外気を導入する換気装置とからなり、該換気装置により吸引した外気は前記熱交換空間部を流動する間に地熱により加温又は冷却させた後、前記連通口から前記浄化空間部内に流入させ、前記放熱管により冷却又は加温しつつ前記多孔吸着体に接触させることにより浄化し、生成した浄化空気は前記吹出し穴から建屋屋内に放出するようにしたものからなる。
【0008】
そして、前記仕切り体は、合成樹脂製波板の上面にウレタン層を形成したものにするとよい。
【0009】
また、前記仕切り体は、前記下側閉塞体の上に適宜の間隔で配置した複数個の支持ブロック上に載置する構成にするとよい。
【0010】
また、前記放熱管は、可撓性を有する合成樹脂製ホースを用いるとよい。
【0011】
更に、前記建屋屋内に放出した浄化空気は、建屋本体の玄関床スラブの下を流動させて屋外に放出するようにするとよい。
【0012】
また、請求項6に係る本発明を構成する手段は、建屋本体の床体と地盤に対面する下側閉塞体により画成する床下空間に換気装置により外気を導入し、該床下空間の熱交換空間部を流動する間に外気を地盤との間で熱交換させ、しかる後浄化空間部内に流入させて放熱管により冷却又は加温しつつ多孔吸着体に接触させて浄化し、生成した浄化空気は床体上の建屋室内に放出するようにしたものからなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は叙上の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)地盤に対面して建屋の床体との間に下側閉塞体を設け、床下空間を仕切り体により熱交換空間部と浄化空間部に画成するだけの基本構成からなるので、従来の建屋構造を変える必要も無く、建築コスト、建築期間に影響しない空気浄化式建屋にできる。
(2)外気は床下空間の熱交換空間部を流動する間に地熱と熱交換により加温又は冷却することにより、建屋屋内の暖房又は冷房のコストを低減することができる。また、外気は浄化空間部を流動する間に多孔吸着体に接触することで浄化され、外気に含まれている異質物や湿気を効果的に除去した浄化空気を建屋屋内に供給することができるから、安全・安心かつ快適な居住環境を形成することができる。
(3)仕切り体は合成樹脂製波板の上面にウレタン層を形成した構成からなるので、軽量で敷設作業が容易であり、しかも強度性に優れており、材料費が安価であり、またウレタン層の形成は建屋本体のウレタン断熱工事と併せて行うことができるので効率的に作業を行うことができる、短い工期で作業が可能である。
(4)仕切り体は下側閉塞体の上に適宜の間隔で配置した複数個の支持ブロック上に載置する構成にすることにより、熱交換空間部は外気の流動を妨げる仕切り部材の無い開放した状態に形成できるから、外気は熱交換空間部の全体を円滑に流動することができ、地熱との熱交換が効率的であるし、換気装置に掛る負荷も小さくできる。また、仕切り体を設置する作業は簡単であるし、材料費も大幅に節減することができる。
(5)放熱管に可撓性を有する合成樹脂製ホースを用いることにより、放熱管は部屋や廊下等の相違に応じて配置密度を自在に展開することができるから、無駄のない暖房又は冷房を実現できる。しかも、合成樹脂製ホースからなる放熱管は軽量であるから配置作業が極めて容易であるし、作業者の負担も少なく、短時間で配管することができる。
(6)建屋屋内に放出した暖かい浄化空気は、建屋本体の玄関床スラブの下を流動させて屋外に放出するようにしたから、玄関室を暖かくすることができ暖房器具の設置を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気浄化式建屋の構成図である。
【図2】放熱管の配設状態の説明図である。
【図3】床下の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図において、1は戸建ての建屋を構成する建屋本体、2は該建屋本体1を構成し、地盤Gに設置したコンクリート製の布基礎である。3は該布基礎2上に構築した躯体で、該躯体3は土台3A、外壁3B、床体3C、内壁3D、仕切り壁3E、天井3F、玄関床スラブ3G、玄関室3H、玄関ドア3J等から構成してある。そして、内壁3Dと玄関室3Hの仕切り壁3Fとによりダクト空間3Kが形成してある。また、前記布基礎2は外面に断熱板3Lを貼設することにより、断熱効果を高めてある。
【0016】
4は布基礎2、2間に地盤G対面して平板状に形成した下側閉塞体としての遮蔽スラブで、該遮蔽スラブ4はコンクリートを打設して布基礎2と一体に形成してあり、前記床体3Cとの間に床下空間5を画成している。6は該床下空間5に横設した仕切り体を示す。該仕切り体6は、図3に示すように、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の波板6Aと、該波板6A上にポリウレタンを吹付けて約5cmの厚さに形成したウレタン層6Bとから構成してあり、極めて軽量でしかも高い強度性と保温性を有している。
【0017】
上記仕切り体6は前記遮蔽スラブ4上に適宜の間隔で配置した発泡スチロール製の立方体からなる複数の支持ブロック7、7、・・・上に載置してあり、床下空間5は仕切り体6と遮蔽スラブ4との間が熱交換空間部5Aに、仕切り体6と床体3Cとの間が浄化空間部5Bに画成されており、熱交換空間部5Aと浄化空間部5Bの内壁は断熱材5Cで外部温度から遮断して影響を受けないようにしてある。
【0018】
8は建屋屋内1Aに外気を導入するための換気装置を示す。該換気装置8は地盤Gの暖気又は冷気を吸引しないように吸入口9Aを外壁3の上部に設け、前記浄化空間部5Bを経て仕切り体6に吹出し口9Bを開口させた外気導入ダクト9と、浄化空間部5B内に位置して該外気導入ダクト9の途中に設けた換気扇10とから構成してある。
【0019】
11、11、・・は仕切り体6上に一部が重なるように旋回した状態で平たく展開した複数系の放熱管を示す。該各放熱管11は架橋ポリエチレン管からなり、図示しない熱源である給湯ボイラーから熱媒をパラレルに循環供給することにより放熱するものである。そして、後述するように各系の放熱管11は上側に多孔吸着体12、12、・・・が載せてあり、展開した状態に定置させてある(図3参照。)
【0020】
更に、12、12、・・は前記放熱管11を押えるように仕切り体6上に全面的に配置した複数個の多孔吸着体を示す。該各多孔吸着体12は通気性のある素材からなる収容袋に木炭、竹炭、セラミックス等の微多孔質の吸着材を収納したものからなり、外気に含まれ或いは建屋本体1の建材に含まれている人体に有害な有機化合物、花粉等の異質物を吸着除去し、また大気中の湿気や異臭を吸着することで建屋本体1内の湿度上昇を抑制し、空気の改善を図っている。
【0021】
13は外壁3B際に位置して床体3Cに設けた吹出し口を示し、該吹出し口13は前記浄化空間部5Bと建屋室内1Aに連通している。14は建屋室内1Aの空気を屋外に排出するための排気流路を示す。該排気流路14は前記ダクト空間3Kを利用した排気路14Aと、該排気路14Aに連通して内壁3Dの上部側に形成することにより冷気を吸入しないようにした流入口14Bと、玄関床スラブ3Gに形成した連通口14Cと、玄関床スラブ3Gと下スラブ2Aとにより形成した玄関下流路14Dと、該玄関下流路14Dに連通して布基礎2に形成した放出口14Eとから構成してある。そして、前記連通口14Cに排気ファン15を設置することで、建屋室内1Aから円滑に排気するようにしてある。
【0022】
本実施の形態は上述した構成からなるもので、以下にその作用について説明する。換気装置8を駆動して外気導入ダクト9から外気を熱交換空間部5Aに導入すると、外気は熱交換空間部5Aを流動する間に遮蔽スラブ4を介して地盤から放出される地熱と熱交換が行われて冬期には約5度以上は加温される。この加温された外気は連通口6Cから浄化空間部5Bに流入し、熱源から熱媒が供給されている各放熱管11に面接触することにより建屋室内1Aの暖房に必用な温度にまで加温され、また多孔吸着体12に面接触することにより大気中の異質物や湿気が吸着除去された浄化空気は吹出し口13から建屋室内1Aに吹き出されることで、室内1Aは適宜に設定する温度に暖房され、また屋内空気は浄化される。
【0023】
室内1Aを流動した浄化空気は流入口14Bから排気流路14Aに流入し、排気ファン15に吸引されて連通口14Cから玄関下流路14Dに流入し、玄関床スラブ3Gを加温して放出口14Eから屋外に排出される。このように、排気流路14は室内1Aの空気をダクト空間3Kを利用することで建屋本体1内の空スペースを有効利用し、また玄関床スラブ3Gを介して玄関室13Hを加温することで、屋外に放出される熱を有効利用している。
【0024】
かくして、換気装置8により取り込んだ外気は熱交換空間部5Aを流動する間に地熱との熱交換が行われ、浄化空間部5Bを流動する間に加温と浄化が行われた後、吹出し口13から建屋室内1Aに放出される。これにより、居住に快適な室温に維持し、清浄な空気を吹出すことで建屋室内1Aは極めて快適ある。
【0025】
なお、本実施の形態は、放熱管11に熱源から熱媒を循環供給して建屋本体1内を暖房する例を挙げたが、本発明は放熱管11に冷凍機から冷媒を循環供給して建屋本体1内を冷房する技術も包含するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 建屋本体
1A 建屋室内
2 基礎
3C 床体
3G 玄関床スラブ
4 遮蔽スラブ(下側閉塞体)
5 床下空間
5A 熱交換空間部
5B 浄化空間部
6 仕切り体
7 支持ブロック
8 換気装置
11 放熱管
12 多孔吸着体
13 吹出し口
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤と対面して建屋本体の基礎に設ける下側閉塞体により該建屋本体の床体との間に画成する床下空間と、仕切り体により該床下空間内に画成した下側の熱交換空間部及び上側の浄化空間部と、前記仕切り体を介して該浄化空間部を前記熱交換空間部に連通させる連通口と、前記床体に設けられ、前記浄化空間部を前記建屋室内に連通させる吹出し口と、前記仕切り体上に展開した状態で載置され、熱源から冷媒又は熱媒が循環供給される放熱管と、該放熱管を上方から押えるように前記仕切り体上に配置した複数の多孔吸着体と、前記熱交換空間部に外気を導入する換気装置とからなり、該換気装置により吸引した外気は前記熱交換空間部を流動する間に地熱により加温又は冷却させた後、前記連通口から前記浄化空間部内に流入させ、前記放熱管により冷却又は加温しつつ前記多孔吸着体に接触させることにより浄化し、生成した浄化空気は前記吹出し穴から建屋室内に放出するようにしてなる空気浄化式建屋。
【請求項2】
前記仕切り体は、合成樹脂製波板の上面にウレタン層を形成したものであることを特徴とする請求項1記載の空気浄化式建屋。
【請求項3】
前記仕切り体は、前記下側閉塞体の上に適宜の間隔で配置した複数個の支持ブロック上に載置してあることを特徴とする請求項1記載の空気浄化式建屋。
【請求項4】
前記放熱管は、可撓性を有する合成樹脂製ホースであることを特徴とする請求項1記載の空気浄化式建屋。
【請求項5】
前記建屋屋内に放出した浄化空気は、建屋本体の玄関床スラブの下を流動させて屋外に放出するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の空気浄化式建屋。
【請求項6】
建屋本体の床体と地盤に対面する下側閉塞体により画成する床下空間に換気装置により外気を導入し、該床下空間の熱交換空間部を流動する間に外気を地盤との間で熱交換させ、しかる後浄化空間部内に流入させて放熱管により冷却又は加温しつつ多孔吸着体に接触させて浄化し、生成した浄化空気は前記床体上の建屋室内に放出するようにしてなる建屋の空気浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2217(P2013−2217A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136704(P2011−136704)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(310010575)地方独立行政法人北海道立総合研究機構 (51)
【出願人】(500407466)株式会社ホーム企画センター (6)
【出願人】(000106483)サンポット株式会社 (17)
【Fターム(参考)】