説明

空気浄化装置

【課題】装置内に空気を取り込んで排気することにより空気を浄化する空気浄化装置に関して、空気浄化装置のメンテナンスを簡単にすることを目的とする。
【解決手段】空気浄化装置1は、吸込口2と、風路3と、送風手段4と、排気口5とを備え、空気浄化装置1を構成する部材の一部または全部に、温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用したことにより、温度によって部材の親水性および疎水性を切り替えることが可能となり、部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、空気浄化装置のメンテナンスを簡単にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内に空気を取り込んで排気することにより空気を浄化する空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気浄化装置には、装置のメンテナンスを簡素化する機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その空気浄化装置について図3を参照しながら説明する。
【0004】
従来の空気浄化装置101は、通気経路102と、フィルタ103と、フィルタ103の下流側に位置するファン104とを備えている。そしてフィルタ103の上方に給水部105を、フィルタ103の下部に水を受けるための排水口106を有する防水パン107を備えている。空気浄化装置101を使用時または使用後に、給水部105から水を供給することでフィルタ103を洗浄し、洗浄した水を防水パン107で受けて排水口106から排水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−33328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の空気浄化装置においては、装置の使用時または使用後にフィルタを水で洗い流すことにより、フィルタを洗浄するという構成となっているが、フィルタ上に流水を流すだけでは、フィルタに付着した油汚れ等の頑固な汚れは落ちにくく、汚れの蓄積を防ぐことは困難であるという課題を有していた。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、フィルタ等に付着した汚れを容易に除去することができ、メンテナンス性を向上させた空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明は、空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口と連通する風路と、前記風路に空気を流通させる送風手段と、前記風路と連通する排気口とを備え、装置内に空気を取り込んで排気することにより空気を浄化する空気浄化装置において、前記空気浄化装置を構成する部材の一部または全部に、温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用したことを特徴とする空気浄化装置であり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口と連通する風路と、前記風路に空気を流通させる送風手段と、前記風路と連通する排気口とを備え、装置内に空気を取り込んで排気することにより空気を浄化する空気浄化装置において、前記空気浄化装置を構成する部材の一部または全部に、温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用するという構成とした。
【0010】
温度応答性ポリマーは、ある温度を境目にして水への溶解性、すなわち親水性および疎水性が可逆的に変化するという特徴を有するため、これを部材に使用することで、温度によって部材の親水性および疎水性を切り替えることが可能となる。
【0011】
汚れには埃などの親水性汚れと、カーボンや油などの疎水性汚れとに分類でき、空気浄化装置の使用環境によってどちらの汚れが多いかは異なるが、一般的にはどちらの汚れも存在する。親水性汚れは親水性の表面に付着しやすく、疎水性の表面には付着しにくい。逆に疎水性汚れは疎水性の表面に付着しやすく、親水性の表面には付着しにくい。そのため、空気浄化装置を構成する部材の表面の性質を制御することによって、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることが可能となる。
【0012】
したがって、例えば親水性汚れの多い環境では、空気浄化装置を構成する部材(例えば送風装置など)が、装置の使用温度において疎水性となるようにして親水性汚れの付着を防止し、メンテナンスの際には付着した疎水性汚れを落としやすくするために、部材の温度を変化させて親水性とすることによって、疎水性汚れを容易に落とすことが可能となる。
【0013】
このように、温度応答性ポリマーを使用して、使用環境に合わせて空気浄化装置を構成する部材の表面の性質を制御することによって、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることができると同時に、メンテナンスの際には部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、空気浄化装置のメンテナンスを簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1の空気浄化装置の断面を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態2の空気浄化装置の断面を示す構成図
【図3】従来の空気浄化装置の断面を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の請求項1記載の発明は、空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口と連通する風路と、前記風路に空気を流通させる送風手段と、前記風路と連通する排気口とを備え、装置内に空気を取り込んで排気することにより空気を浄化する空気浄化装置において、前記空気浄化装置を構成する部材の一部または全部に、温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用したことを特徴とする空気浄化装置である。
【0016】
温度応答性ポリマーは、ある温度を境目にして水への溶解性、すなわち親水性および疎水性が可逆的に変化するという特徴を有する。この温度応答性ポリマーを、空気浄化装置を構成する部材に使用することによって、温度によって部材の親水性および疎水性を切り替えることが可能となる。
【0017】
汚れには埃などの親水性汚れと、カーボンや油などの疎水性汚れとに分類でき、空気浄化装置の使用環境によってどちらの汚れが多いかは異なるが、一般的にはどちらの汚れも存在する。親水性汚れは親水性の表面に付着しやすく、疎水性の表面には付着しにくい。逆に疎水性汚れは疎水性の表面に付着しやすく、親水性の表面には付着しにくい。そのため、空気浄化装置を構成する部材の表面の性質を制御することによって、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることが可能となる。
【0018】
したがって、例えば親水性汚れの多い環境では、空気浄化装置を構成する部材(例えば送風装置など)が、装置の使用温度において疎水性となるようにして親水性汚れの付着を防止し、メンテナンスの際には付着した疎水性汚れを落としやすくするために、部材の温度を変化させて親水性とすることによって、疎水性汚れを容易に落とすことが可能となる。
【0019】
このように、温度応答性ポリマーを使用して、使用環境に合わせて空気浄化装置を構成する部材の表面の性質を制御することによって、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることができると同時に、メンテナンスの際には部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、空気浄化装置のメンテナンスを簡単にすることができる。
【0020】
本発明の請求項2記載の発明は、空気中の汚れを捕集するフィルタを備え、前記フィルタに温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用したことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置である。
【0021】
フィルタを設置することにより、フィルタで空気中の汚れを捕集して空気を浄化するとともに、フィルタよりも下流の部材に汚れが付着することを防止することができる。このフィルタに温度応答性ポリマーを適用することにより、フィルタの温度によって、フィルタの親水性および疎水性を切り替えることができる。
【0022】
例えば親水性汚れの多い環境では、使用温度においてフィルタが疎水性となるようにして親水性汚れの付着を防止し、メンテナンスの際には付着した疎水性汚れを落としやすくするために、フィルタの温度を変化させて親水性とすることによって、疎水性汚れを容易に落とすことが可能となる。
【0023】
このように、温度応答性ポリマーを使用してフィルタの性質を制御することにより、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることができると同時に、メンテナンスの際には部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、フィルタのメンテナンスを簡単にすることができる。
【0024】
本発明の請求項3記載の発明は、温度応答性ポリマーをフィルタの表面に添着してなることを特徴とする請求項2に記載の空気浄化装置である。
【0025】
これにより、フィルタ表面の親水性および疎水性を温度で切り替えることが可能となり、フィルタ表面に付着した親水性または疎水性の汚れのどちらも容易に落とすことができるフィルタを提供することができる。また、温度応答性ポリマーは比較的高価であるため、フィルタの表面のみに適用することによって、コストダウンを図ることができる。
【0026】
本発明の請求項4記載の発明は、温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度が、10度以上60度以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の空気浄化装置である。
【0027】
上限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーは、この温度よりも低い領域では疎水性を、高い領域では親水性を示す。また下限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーは、この温度よりも低い領域では親水性を、高い領域では疎水性を示す。
【0028】
フィルタに使用する温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度が高すぎると、フィルタの親水性および疎水性の特性を切り替えるためにフィルタを高温にする必要があり、フィルタを温めるのに時間がかかる、フィルタをメンテナンスする際にやけどをする等の恐れがある。逆にこの温度が低すぎると、特性を切り替えるためにフィルタを低温にする必要があり、フィルタを冷やすのに時間がかかる、フィルタをメンテナンスする際に使用者に不快感を与える等の恐れがある。
【0029】
上限または下限臨界溶液温度を10度以上60度以下とすることにより、適切な温度でフィルタの特性を切り替えることが可能となり、使用者にとって扱いやすいフィルタを提供することが可能となる。
【0030】
本発明の請求項5記載の発明は、温度応答性ポリマーとして、N−アルキル置換アクリルアミド誘導体、N−アルキル置換メタクリルアミド誘導体、N,N−ジアルキル置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジアルキル置換メタクリルアミド誘導体、環状基を有するアクリルアミド誘導体、環状基を有するメタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体のうち、一種類を単重合または二種類以上を共重合させたポリマーを用いたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の空気浄化装置である。
【0031】
これらの温度応答性ポリマーを用いることによって、親水性および疎水性を温度で切り替えることができるフィルタを備えた空気浄化装置を提供することが可能となる。また、ポリマーの組成によって、その上限または下限臨界溶液温度を変化させることができるため、適切な温度で親水性および疎水性を切り替えることが可能となる。
【0032】
本発明の請求項6記載の発明は、空気浄化装置を運転中に、設置されたフィルタを、前記フィルタに使用されている温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度よりも温める加熱手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の空気浄化装置である。
【0033】
これにより、空気浄化装置の運転中において、フィルタに上限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーを用いた場合には親水性に、下限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーを用いた場合には疎水性にフィルタ表面を保つことができ、それぞれ逆の性質を有する汚れを付着しにくくすることができる。したがって、メンテナンスの際にフィルタを冷して疎水性または親水性とし、付着した汚れを落とすだけでフィルタを清掃することができ、メンテナンスを簡単にすることができる。
【0034】
本発明の請求項7記載の発明は、空気浄化装置を運転中に、設置されたフィルタを、前記フィルタに使用されている温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度よりも冷やす冷却手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の空気浄化装置である。
【0035】
これにより、空気浄化装置の運転中において、フィルタに上限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーを用いた場合には疎水性に、下限臨界溶液温度を有する温度応答性ポリマーを用いた場合には親水性にフィルタ表面を保つことができ、それぞれ逆の性質を有する汚れを付着しにくくすることができる。したがって、メンテナンスの際にフィルタを温めて親水性または疎水性とし、付着した汚れを落とすだけでフィルタを清掃することができ、メンテナンスを簡単にすることができる。
【0036】
本発明の請求項8記載の発明は、フィルタを自動で洗浄する自動洗浄手段を設けたことを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の空気浄化装置である。
【0037】
これにより、フィルタを自動的に洗浄して清潔に保つことが可能となり、メンテナンスフリーの空気浄化装置を提供することができる。
【0038】
本発明の請求項9記載の発明は、自動洗浄手段を、水噴射および温水噴射としたことを特徴とする請求項8に記載の空気浄化装置である。
【0039】
フィルタに水を噴射して洗浄する際と、温水を噴射して洗浄する際とでは、フィルタ表面の親水性および疎水性の特性が切り替わり、表面の特性とは逆の性質を有する汚れを選択的に落とすことが可能となる。したがって、水噴射による洗浄と温水噴射による洗浄とを行うことにより、フィルタに付着した全ての汚れを落とすことができる。
【0040】
本発明の請求項10記載の発明は、給水タンクとヒータを備え、水噴射および温水噴射を行う際に、前記給水タンクから使用する水および温水を供給することを特徴とする請求項9に記載の空気浄化装置である。
【0041】
これにより、水噴射および温水噴射の際に使用する水を1つの給水タンクから供給することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の空気浄化装置の断面を示す構成図である。
【0044】
実施の形態1の空気浄化装置の構成を説明する。
【0045】
空気浄化装置1は、空気を吸い込む吸込口2と、吸込口2と連通する風路3と、風路3に空気を流通させる送風手段4と、風路3と連通する排気口5とを備えている。さらに風路3には空気中の汚れを捕集するフィルタ6と、フィルタ6を加熱する加熱手段7とを設けた。
【0046】
フィルタ6の表面には、温度応答性ポリマーの一種であり、下限臨界溶液温度が32度であるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を添着した。
【0047】
実施の形態1の空気浄化装置の作用を説明する。
【0048】
吸込口2から流入した空気は、風路3を経由して排気口5から排出される。その際に、フィルタ6によって空気中の汚れ(例えば油煙や粉塵等)が除去され、空気が浄化される。運転中は加熱手段7が作動し、フィルタ6を32度以上に保持することにより、フィルタ6の表面は疎水性に保たれる。
【0049】
実施の形態1の空気浄化装置の効果を説明する。
【0050】
温度応答性ポリマーは、ある温度を境目にして水への溶解性、すなわち親水性および疎水性が可逆的に変化するという特徴を有する。本発明の空気浄化装置1の構成とすることで、温度によってフィルタ6の親水性および疎水性を切り替えることが可能となる。
【0051】
汚れには埃などの親水性汚れと、カーボンや油などの疎水性汚れとに分類でき、空気浄化装置の使用環境によってどちらの汚れが多いかは異なるが、一般的にはどちらの汚れも存在する。親水性汚れは親水性の表面に付着しやすく、疎水性の表面には付着しにくい。逆に疎水性汚れは疎水性の表面に付着しやすく、親水性の表面には付着しにくい。そのため、空気浄化装置を構成する部材の表面の性質を制御することによって、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることが可能となる。
【0052】
例えば親水性汚れの多い環境では、使用温度においてフィルタ6が疎水性となるようにして親水性汚れの付着を防止し、メンテナンスの際には付着した疎水性汚れを落としやすくするために、フィルタ6の温度を変化させて親水性とすることによって、疎水性汚れを容易に落とすことが可能となる。フィルタ6の温度を変化させる方法としては、温水または冷水や、温風または冷風や、ヒータまたは冷却器などを用いることができる。
【0053】
このように、温度応答性ポリマーを使用してフィルタ6の性質を制御することにより、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることができると同時に、メンテナンスの際には部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、フィルタ6の、すなわち空気浄化装置1のメンテナンスを簡単にすることができる。
【0054】
また、フィルタ6を設置することにより、フィルタ6で空気中の汚れを捕集して空気を浄化するとともに、フィルタ6よりも下流の部材(例えば送風手段4等)に汚れが付着することを防止することができる。
【0055】
また、実施の形態1では温度応答性ポリマーであるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)をフィルタ6の表面のみに添着したことにより、温度応答性ポリマーの使用量を小さくしており、コストを低下させることができる。
【0056】
また、実施の形態1では温度応答性ポリマーとして下限臨界溶液温度が32度であるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を使用したことにより、フィルタ6の親水性および疎水性の特性を切り替えるために、フィルタ6を極端に高温にしたり低温にしたりする必要がない。したがって、適切な温度でフィルタ6の特性を切り替えることが可能となり、使用者にとって扱いやすいフィルタ6を提供できる。
【0057】
また、実施の形態1では空気浄化装置1を運転中にフィルタ6を32度以上に温める加熱手段7を設けているので、運転中のフィルタ6の表面は疎水性に保たれ、親水性の汚れが付着しにくくなる。したがって、メンテナンスの際にフィルタ6を水に浸漬するなどして冷やすことにより表面を親水性とし、付着した疎水性汚れを落とすだけでフィルタ6を清掃することができ、メンテナンスを簡単にすることができる。加熱手段7としては、例えばヒータなどを用いることができる。
【0058】
なお、実施の形態1ではフィルタ6を備え、フィルタ6の表面に温度応答性ポリマーであるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を添着したが、排気によって空気を浄化する空気浄化装置(例えば換気扇等)では、フィルタ6を備えていなくてもよい。この場合、例えば送風手段4の表面に温度応答性ポリマーを添着することによって、送風手段4の親水性および疎水性を温度で切り替えることが可能となる。
【0059】
例えば親水性汚れの多い環境では、使用温度において送風手段4が疎水性となるようにして親水性汚れの付着を防止し、メンテナンスの際には付着した疎水性汚れを落としやすくするために、送風手段4の温度を変化させて親水性とすることによって、疎水性汚れを容易に落とすことが可能となる。
【0060】
このように、温度応答性ポリマーを使用して送風手段4の性質を制御することにより、親水性汚れまたは疎水性汚れのどちらか一方を付着しやすくしたり、付着しにくくしたりすることができると同時に、メンテナンスの際には部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、送風手段4の、すなわち空気浄化装置1のメンテナンスを簡単にすることができる。
【0061】
なお、実施の形態1では温度応答性ポリマーとしてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を使用したが、これに限るものではなく、温度によって親水性および疎水性の特性が切り替わるポリマーであればよい。使用する温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度は、10度以上60度以下であることが好ましい。
【0062】
なお、実施の形態1では空気浄化装置1を運転中にフィルタ6を温める加熱手段7を設けたが、代わりにフィルタ6を冷やす冷却手段を設けてもよい。これにより、運転中のフィルタ6の表面は親水性に保たれ、疎水性の汚れが付着しにくくなる。したがって、メンテナンスの際にフィルタ6を温水に浸漬するなどして温めることにより表面を疎水性とし、付着した親水性汚れを落とすだけでフィルタ6を清掃することができ、メンテナンスを簡単にすることができる。
【0063】
(実施の形態2)
図2は本発明の実施の形態2の空気浄化装置の断面を示す構成図である。
【0064】
図2において、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
実施の形態2の空気浄化装置の構成を説明する。
【0066】
フィルタ6を自動洗浄するための噴射ノズル8と、噴射ノズル8に給水するための給水タンク9と、給水タンク9内の水を温めるヒータ10と、洗浄後の水を受ける防水パン11と、洗浄後の水を排出するための排水口12とを備えた。
【0067】
実施の形態2の空気浄化装置の作用、効果を説明する。
【0068】
給水タンク9に供給された水を噴射ノズル8から噴射し、フィルタ6の表面を洗い流すことによってフィルタ6の自動洗浄を行う。洗浄後の水は防水パン11で受け、排水口12から排出する。これにより、フィルタ6を自動的に洗浄して清潔に保つことが可能となり、メンテナンスフリーの空気浄化装置を提供することができる。
【0069】
また、上記の水洗浄に加えて、ヒータ10により給水タンク9内の水を温めることにより温水とし、噴射ノズル8から噴射することにより、温水洗浄を行うことができる。温水の温度を、フィルタ6に添着した温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度よりも高温とすることで、フィルタ6に水を噴射して洗浄する際と、温水を噴射して洗浄する際とでは、フィルタ6表面の親水性および疎水性の特性を切り替えることができ、フィルタ6表面の特性とは逆の性質を有する汚れを選択的に落とすことが可能となる。
【0070】
したがって、水噴射による洗浄と温水噴射による洗浄とを行うことにより、フィルタ6に付着した全ての汚れを落とすことができる。
【0071】
また、水および温水を1つの給水タンク9から供給するように構成したことにより、装置の小型化を図ることができる。
【0072】
なお、フィルタ6の自動洗浄は任意のタイミングで行えるよう構成すればよいが、一定の期間ごとに自動洗浄する構成、またはフィルタ6の汚れ具合を検知して自動洗浄を行う構成としてもよい。これにより、ユーザーの負担を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかる空気浄化装置は、装置を構成する部材に付着した汚れのうち、部材が親水性の場合には疎水性汚れを、部材が疎水性の場合には親水性汚れを落としやすくすることができるため、部材から親水性汚れ・疎水性汚れのどちらも容易に落とすことが可能となり、メンテナンスを簡単にすることができるため、レンジフードや換気扇等として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 空気浄化装置
2 吸込口
3 風路
4 送風手段
5 排気口
6 フィルタ
7 加熱手段
8 噴射ノズル
9 給水タンク
10 ヒータ
11 防水パン
12 排水口
101 空気浄化装置
102 通気経路
103 フィルタ
104 ファン
105 給水部
106 排水口
107 防水パン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸い込む吸込口と、前記吸込口と連通する風路と、前記風路に空気を流通させる送風手段と、前記風路と連通する排気口とを備え、装置内に空気を取り込んで排気することにより空気を浄化する空気浄化装置において、前記空気浄化装置を構成する部材の一部または全部に、温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用したことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
空気中の汚れを捕集するフィルタを備え、前記フィルタに温度変化に応答して親水性および疎水性が可逆的に変化する温度応答性ポリマーを使用したことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
温度応答性ポリマーをフィルタの表面に添着してなることを特徴とする請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度が、10度以上60度以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
温度応答性ポリマーとして、N−アルキル置換アクリルアミド誘導体、N−アルキル置換メタクリルアミド誘導体、N,N−ジアルキル置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジアルキル置換メタクリルアミド誘導体、環状基を有するアクリルアミド誘導体、環状基を有するメタクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体のうち、一種類を単重合または二種類以上を共重合させたポリマーを用いたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項6】
空気浄化装置を運転中に、設置されたフィルタを、前記フィルタに使用されている温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度よりも温める加熱手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項7】
空気浄化装置を運転中に、設置されたフィルタを、前記フィルタに使用されている温度応答性ポリマーの上限または下限臨界溶液温度よりも冷やす冷却手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項8】
フィルタを自動で洗浄する自動洗浄手段を設けたことを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の空気浄化装置。
【請求項9】
自動洗浄手段を、水噴射および温水噴射としたことを特徴とする請求項8に記載の空気浄化装置。
【請求項10】
給水タンクとヒータを備え、水噴射および温水噴射を行う際に、前記給水タンクから使用する水および温水を供給することを特徴とする請求項9に記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183331(P2011−183331A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52704(P2010−52704)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】