説明

空気浄化装置

【課題】空気中の有害物質を原水中に溶解させ、原水に対して電気分解と紫外線照射を併用することによって原水中の有害物質の分解反応を促進する。この結果、空気中の有害物質の除去効率を向上させる。
【解決手段】筺体、気液接触室、原水供給手段、貯留手段、電気分解手段、紫外線照射手段を有する空気浄化装置。気液接触室は筺体内の吸気口と排気口の間に設けられ、気体と原水とを接触させる。貯留手段は、第1の流路及び第2の流路を介して筺体の気液接触室に連結されると共に、第1の流路を介して気液接触室から貯留手段に原水が供給され、第2の流路を介して前記貯留手段から原水供給手段に原水を供給する。電気分解手段及び紫外線照射手段は、貯留手段内、又は第2の流路内に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フィルターを用いる空気清浄機の代わりに空気中の有害物質(悪臭物質も含む)を原水中に溶解させることによって、除去する技術が検討されている。しかし、この技術を用いた場合、長時間の運転により原水中の有害物質の濃度が溶解度に近くなると、有害物質の除去効率は低下する。このため、この技術では、水中の有害物質の濃度が溶解度に近い値とならないように、所定時間ごとに原水を交換している。この交換方式としては、手動で原水の交換を行うタンク式や、原水中の有害物質の濃度が所定値以上となった場合に自動的に原水の交換を行う自動給排水方式が知られている。
【0003】
しかしながら、上記の技術では、空気中の有害物質の濃度が高い場合、原水中の有害物質濃度はすぐに、溶解度に近いものとなっていた。このため、原水の交換頻度が多くなり、交換作業が煩雑であった。また、大量の原水を必要とするため、節水の面からも問題であった。そこで、空気中の有害物質を溶解させた原水を電気分解する技術が検討されている。
【0004】
特許文献1(特開2003−322371号公報)には、空気中に含まれる成分を水溶液に溶け込ませて処理する空気清浄システムにおいて、水溶液中に少なくとも一部が浸漬された少なくとも一対の電気分解用電極を備え、電気分解により水溶液を処理する空気清浄システムが開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2001−252521号公報)には、吸気口と、排気口と、無隔膜電気分解槽を用いて電気分解された水溶液と空気とを接触させる気液接触部と、を有する空気清浄機が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開平10−128029号公報)には、空気中の塵を捕集し浄化を行う空気浄化装置において、原水を酸性水とアルカリ性水に電気分解する電気分解槽を備え、生成した電解水と汚染空気を接触させる手段を設けた空気浄化装置が開示されている。
【0007】
上記特許文献1〜3のような、電気分解を利用した空気浄化には殺菌等の効果の他に、原水中に溶解した有害物質をある程度分解する効果があり、原水中の有害物質の濃度の上昇を抑制できるという特徴を有する。このため、電気分解を利用した空気浄化装置はある程度、長時間、安定して運転することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−322371号公報
【特許文献2】特開2001−252521号公報
【特許文献3】特開平10−128029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3に記載のような従来技術は、有害物質の除去効率をある程度、向上させることができるものの、該除去効率は有害物質の分解反応の反応速度による影響を大きく受けるものであった。このため、従来技術では、有害物質の除去効率に限界があった。そこで、本発明者は鋭意検討した結果、有害物質を含有する原水に対して電気分解を行う際に紫外線を照射すれば、有害物質の除去効率が飛躍的に向上することを発見した。
【0010】
すなわち、本発明は、電気分解と紫外線照射を併用することによって、原水中の有害物質の分解反応を促進し、有害物質の除去効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態は、吸気口及び排気口を有する筺体と、
吸気口及び排気口を有する筺体と、
前記筺体内の吸気口と排気口の間に設けられ、気体と原水とを接触させる気液接触室と、
前記気液接触室内に設けられた原水供給手段と、
第1の流路及び第2の流路を介して前記筺体の気液接触室に連結されると共に原水を貯留する貯留手段であって、前記第1の流路を介して前記気液接触室から貯留手段に原水が供給され、前記第2の流路を介して前記貯留手段から原水供給手段に原水を供給する貯留手段と、
前記貯留手段内、又は第2の流路内に設けられた正極及び負極を有する電気分解手段と、
前記貯留手段内、又は第2の流路内に設けられた紫外線照射手段と、
を有する空気浄化装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
空気中の有害物質を原水中に溶解させ、原水に対して電気分解と紫外線照射を併用することによって原水中の有害物質の分解反応を促進する。この結果、空気中の有害物質の除去効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施例の空気浄化装置を表す図である。
【図2】第3実施例の空気浄化装置を表す図である。
【図3】第5実施例の空気浄化装置を表す図である。
【図4】第5実施例における空気の浄化処理過程を表すフローチャートである。
【図5】第4実施例の空気浄化装置を表す図である。
【図6】第4実施例における空気の浄化処理過程を表すフローチャートである。
【図7】第4実施例における水中の導電率の変化を模式的に表す図である。
【図8】実施例2、比較例2及び3の結果を表すグラフである。
【図9】実施例2、比較例2及び3の結果を表すグラフである。
【図10】実施例2、比較例2及び3の結果を表すグラフである。
【図11】実施例2、比較例2及び3の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
空気浄化装置は、筺体、気液接触室、原水供給手段、貯留手段、電気分解手段、紫外線照射手段、第1及び第2の流路を有する。以下、この空気浄化装置の各部及びその動作プロセスを説明する。
【0015】
筺体の外部には吸気口及び排気口が備えつけられており、筺体はその内部に、気液接触室、及び原水供給手段を備えている。筺体内の吸気口と排気口の間の空間には、気体と原水とを接触させる気液接触室が設けられている。この気液接触室内には気体が流れると同時に、貯留手段から第2の流路を介して供給された原水が、原水供給手段から供給されるようになっている。
【0016】
原水供給手段は、原水を供給可能なものであれば特に限定されないが例えば、スプレー、ノズル等を挙げることができる。この原水供給手段から供給される原水は、後述するように、電気分解手段及び紫外線照射手段によって有害物質が分解された後のクリーンなものである。
【0017】
気液接触室内では、気体と原水の気液界面を介して気体から原水へ気体中の有害物質が移動し、原水中に有害物質が溶解する。気液接触室内において、原水供給手段から供給される原水は、気体から原水への有害物質の移動が促進されるような形態とすることが好ましい。例えば、原水供給手段から供給する原水を液滴状とすることによって、原水と気体の接触面積を大きくし、気体から原水への有害物質の移動を促進することができる。
【0018】
筺体の近傍には、筺体と第1の流路及び第2の流路を介して連結された貯留手段が設けられている。貯留手段は、第1の流路を介して気液接触室から供給された原水を貯留し、第2の流路を介して原水供給手段に原水を供給するようになっている。このようにして、原水は、気液接触室→第1の流路→貯留手段→第2の流路→原水供給手段→気液接触室・・・と、気液接触室と貯留手段の間を循環できるようになっている。
【0019】
気液接触室→第1の流路→貯留手段、及び貯留手段→第2の流路→原水供給手段→気液接触室の原水の移動手段は特に限定されない。例えば、鉛直方向の上方から下方に向かって順に、気液接触室、第1の流路、及び貯留手段を設けることにより、重力によって気液接触室から貯留手段まで原水を導くことができる。また、第2の流路の途中にポンプを設け、該ポンプを運転することによって、貯留手段から原水供給手段まで原水を導いても良い。
【0020】
貯留手段中の原水の交換方式としては、タンク式又は給水式とすることができる。給水式では、給水/排水ラインから貯留手段に対して定期的に給排水を行うことにより、原水を交換する。タンク式では、貯留手段の上流及び下流側のバルブ(例えば、図1ではバルブ25及び26に相当)を閉じて貯留手段を外し、貯留手段内の有害物質が溶存した原水を新しい原水と交換する。なお、このバルブは、貯留手段の構成によっては設けなくても良い。また、原水の交換方式をタンク式とする場合は、タンクの取り外し時の電気配線の断線やショートを防止するため、紫外線照射手段、及び電気分解手段は第2の流路内に設けても良い。
【0021】
貯留手段内、又は第2の流路内には、紫外線照射手段、及び電気分解手段が設けられている。この電気分解手段により、貯留手段内、又は第2の流路内に存在する原水に対して電気分解を行うことにより、正極及び負極の少なくとも一方の電極近傍に、特定の物質(以下、この物質を「電気分解による生成物質」と記載する場合がある)を発生させる。そして、この電気分解による生成物質によって原水中の有害物質を分解する。また、この電気分解と同時に紫外線照射手段によって紫外線を照射することにより、電気分解による生成物質が関与する有害物質の分解反応を促進することができる。この結果、原水中の有害物質の濃度を低下させて、空気中の有害物質の除去率を向上させることができる。
【0022】
このように有害物質を分解し無害化した原水は、上記のように第2の流路を通り、原水供給手段を介して気液接触室内に供給される。そして、上記のように、気液接触室内で原水は気体と接触して、気体中の有害物質が原水中に移動する。以下、上記と同様にして、処理を行う。
【0023】
貯留手段、第1及び第2の流路は、電気分解による生成物質、有害物質の分解反応により生成する物質に対して耐性を有するものであれば、特に限定されない。貯留手段の材料は例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂等の有機材料や、セラミックス、ガラス等の無機材料、及び接液面にゴムライニングや酸化皮膜処理等の表面処理を施した金属材料等を用いて構成することができる。
【0024】
電気分解手段は、貯留手段内に設けられた正極及び負極を有している。電気分解手段は、この正極と負極間に電流を流すことによって原水の電気分解反応を行い、正極及び負極の少なくとも一方の電極近傍に電気分解による生成物質を発生させることができるようになっている。正極及び負極としては、金属、合金、金属酸化物等、又は、これらの金属等の基板に上記いずれかの金属等をメッキ又はコーティングしたものや、焼結炭素等の導電性材料を用いることができる。電極の形状としては、板状、パンチングプレート、メッシュ等のものを用いることができる。特に、正極の材料は、耐酸性に優れ、酸化されにくいものであることが望ましく、例えばPt、Pd、Ir、β−PbO2、NiFe24等を好適に用いることができる。負極の材料は、耐アルカリ性に優れたものであることが望ましく、例えばPt、Pd、Au、炭素鋼、ステンレス、Ag、Cu、グラファイト、ガラス質カーボン等の使用が望ましい。
【0025】
紫外線照射手段は、貯留手段内の原水に対して、紫外線を照射可能なようになっている。紫外線照射手段としては、例えば、水銀ランプ、アマルガムランプ、キセノンランプ等を使用することができる。水銀ランプは、ランプ内への水銀蒸気の封入圧により、低圧、中圧、高圧に分類され、それぞれ紫外線の波長分布が異なる。紫外線照射手段によって照射される紫外線の波長は特に限定されないが、実用上、好ましい紫外線の波長は、185nm、254nm、365nmの3種類である。紫外線照射手段により照射される紫外線照射量は特に制限はないが、10mJ/cm2〜200mJ/cm2の範囲であることが好ましく、50mJ/cm2〜100mJ/cm2の範囲であることがより好ましい。
【0026】
空気浄化装置には、送風手段を設けることが好ましい。この送風手段は、吸気口を介して気体(典型的には、有害物質を含む空気)を吸入し、排気口を介して気体を排出させるようになっている。送風手段は、筺体内に設けても良いし、筺体の外付けとして設けても良い。送風手段としては特に限定されないが、例えば、送風機を用いることができる。この送風機を運転することによって、吸気口から気液接触室内を通って排気口までの気体の流れを作ることができる。
【0027】
空気浄化装置で使用する原水は、除去対象である有害物質の種類に応じて、その水質を選択することができる。原水としては例えば、水道水、工業用水、生活用水、農業用水、地下水、純水等を使用することができる。空気浄化装置は、原水中に含まれる各種の物質を電気分解処理することで、正極及び負極近傍に電気分解による生成物質を発生させることができる。また、必要な場合は、原水中に所望の物質が所定濃度で存在するように、原水中に所望の物質を添加しても良い。
【0028】
例えば、原水中には、ハロゲン成分(F、Cl、Br、及びIからなる群から選択された少なくとも一種の物質を含む成分;F、Cl、Br及びIは原子、分子及びイオンからなる群から選択された何れか一種の形態であれば良い。)を含んでいても良い。このハロゲン成分としては例えば、塩素(Cl2)、フッ素(F2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)、塩化物イオン(Cl-)、フッ化物イオン(F-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO-)、等を原水中に含有させることができる。
【0029】
これらの物質を原水中に含有させることにより、電気分解時に正極近傍に、酸化性の高い物質が発生する。このため、これらの物質を用いて、原水中の有害物質を高い効率で分解させることができる。なお、原水中に既にこれらの物質が所望濃度で存在する場合は、これらの物質を新たに添加する必要はない。また、原水中にこれらの物質が存在しないか、所望の濃度で存在しない場合は、原水中にこれらの物質を新たに添加しても良い。
【0030】
また、空気浄化装置により空気中から除去する有害物質としては、特に限定されない。例えば、有害物質として、アンモニアやアセトアルデヒト、メチルメルカプタン等の悪臭物質、細菌、ウイルス、ダニ、カビを除去することができる。これらの有害物質は、正極及び負極で発生する電気分解による生成物質によって容易に分解することができる。
【0031】
なお、上記のように、(I)気液接触室と貯留手段間の原水の循環と、(II)原水の電気分解及び紫外線照射は、同時に行っても良い。また、上記(I)と(II)の処理は交互に別々に、行っても良い。
【0032】
すなわち、上記(I)と(II)の処理を同時に行う場合には、気液接触室と貯留手段間に原水を循環させつつ、貯留手段内又は第2の流路内では原水に対して電気分解と紫外線照射を行う。これにより、短時間で空気中の有害物質を除去することができる。
【0033】
これに対して、上記(I)と(II)を交互に別々に行う場合には、(I)所定の時間、気液接触室と貯留手段間を、原水を循環させる。この間、貯留手段内又は第2の流路内で電気分解と紫外線照射は行わない。次に、気液接触室内への気体及び原水の循環を停止した後、(II)所定の時間、貯留手段内又は第2の流路内の原水に対して電気分解と紫外線照射を行う。以後、(I)と(II)の処理を交互に繰り返す。これにより、長時間、安定して空気浄化装置の運転を行うことができる。
【0034】
以下に、空気浄化装置による作用効果を詳細に説明する。
空気浄化装置では、紫外線照射手段及び電気分解手段を同時に作動させる。この際、原水中の有害物質の分解反応は、以下の2通りのメカニズム(A)、(B)によって促進されるものと考えられる。
【0035】
(A)第1のメカニズムは、有害物質の分解反応に必要なエネルギーが照射された紫外線によって供給され、分解反応が促進される。すなわち、紫外線照射手段によって照射される紫外線のエネルギーは、光子1モル当たりにつき、下記式(1)で表される。
【0036】
【数1】

【0037】
(ただし、hはプランク定数であり6.626×10-34J・s、cは光速であり2.988×108m/s、λは紫外線の波長、NAはアボガドロ数であり6.022×1023/molを表す)。
【0038】
実用上、好ましい紫外線の波長は、185nm、254nm、365nmの3種類であり、これらの波長の紫外線を構成する光子1モル当たりのエネルギーEは、下記の通りとなる。
185nm:644kJ/mol
254nm:469kJ/mol
365nm:327kJ/mol。
【0039】
これらのエネルギーは、電気分解による生成物質により有害物質の分解反応を起こすのに十分なエネルギーである。従って、紫外線からこのエネルギーが供給されて、有害物質の分解反応は促進されることとなる。
【0040】
(B)第2のメカニズムでは、紫外線照射により、原水中に存在する(除去対象となる有害物質以外の)特定の物質を直接、分解させる。従って、電気分解による生成物質は該特定の物質と反応することなく、優先的に有害物質と反応する。
【0041】
具体的には、上式(1)で示されるように、紫外線は高いエネルギーを有する。このため、原水から下記式(2)で表されるように、ヒドロキシラジカルを発生させることができる。
2O→・OH + ・H (2)
このヒドロキシラジカルは高い反応性を有するため、原水中の(除去対象となる有害物質以外の)特定の物質は、ヒドロキシラジカルと優先的に反応する。この結果、電気分解による生成物質を、優先的に除去対象である有害物質と反応させることができる。
【0042】
上記のように、紫外線照射を行うことにより、(A)第1及び(B)第2のメカニズムによって、原水中の有害物質の分解反応は促進されるものと考えられる。このため、電気分解手段と紫外線照射手段の相乗的な作用により、これらの手段を単独で用いた場合よりも効果的に有害物質を除去することができる。
【0043】
以下、空気浄化装置の具体例を説明する。なお、下記具体例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。また、下記具体例では、便宜上、その必要があるときは、複数の実施例に分割して説明する。しかし、特に明示した場合及び原理的に不可能な場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例の関係にある。
【0044】
(第1実施例)
図1は、第1実施例の空気浄化装置を表す図である。図1に示すように、送風機11(送風手段に相当する)を運転することによって、吸気口2から気液接触室3を介して、排気口10まで空気が流れるようになっている。そして、ポンプ5を運転することによって貯留手段1内から第2の流路21を通って、気液接触室3内に設置された散水ノズル4a(原水供給手段に相当する)まで原水が供給される。気液接触室3内では、散水ノズル4aから原水が噴霧され、空気と原水が接触する。この際、空気と原水の気液界面を介して、空気中の有害物質が原水中に移動する。
【0045】
この気液接触室3内では、原水を散水ノズル4aによって液滴状にすることによって原水と空気の接触面積を大きくすることができる。散水ノズル4aによる原水の噴霧条件(液滴径、噴霧圧力等)は、空気から原水への有害物質の移動量が所望の範囲となるように、適宜、調節することができる。図1の気液接触室では、空気は鉛直方向の下方から上方に向かって流れ、原水は鉛直方向の上方から下方に向かって落下する。このため、空気と原水の流れは略向流となっている。
【0046】
気液接触室で空気と接触した原水は、重力によって鉛直方向の下方に落下し、第1の流路22を通って、貯留手段1内に貯留される。貯留手段1内には、正極及び負極を原水中に浸漬させた電気分解手段7と、原水中に浸漬させた紫外線照射手段6が設けられている。
【0047】
そして、電気分解手段7と紫外線照射手段6を同時に作動させる。これにより、電気分解手段7と紫外線照射手段6の相乗作用によって原水中の有害物質は効率的に分解され、無害化される。電気分解手段7と紫外線照射手段6で処理された原水は、ポンプ5によって再び散水ノズル4aに導かれ、気液接触室3内で再度、空気と接触する。このようにして、原水は、気液接触室3→第1の流路22→貯留手段1→第2の流路21→散水ノズル4a→気液接触室3−・・・のように、気液接触室3と貯留手段1の間を循環する。
【0048】
また、空気は気液接触室3内で原水と接触した後、エリミネータ8及び除湿器9を通って排出口10から排出される。エリミネータ8では、空気中のミストが除去される。また、除湿器9では、空気中に含まれる水分が除去される。
【0049】
エリミネータ8としては、空気中のミストを除去可能なものであれば特に限定されないが、例えば、網目状のものや繊維凝集体からなるハニカム構造のものを挙げることができる。
【0050】
除湿器9としては、空気中の水分を除去可能なものであれば特に限定されないが、デシカントロータを挙げることができる。このデシカントロータとしては下記の構造のものが好ましい。すなわち、このデシカントロータは、円盤状の吸着材を設けたロータを有する。このロータは円盤の中心を軸に回転可能となっており、ロータを回転させながら、ロータの右半分の領域に除湿したい処理対象空気を通し、吸着材により空気中の水分を吸着・除去する。また、ロータの左半分の領域にヒータで加熱した空気を通して、吸着材に吸着させた水分を除去し、吸着材を再生させる。吸着剤に吸着していた水分を含む加熱空気は系外へ放出される。ロータが回転することにより、処理対象空気が供給される右半分のロータ部分は常に除湿性能を保ち、また左半分に通される加熱空気により常に再生が行われる。このようにして処理対象空気中の水分を連続的に系外に排出することができる。吸着材は水分を吸着可能なものであれば特に限定されないが、例えば、シリカゲル系、ゼオライト系、塩化リチウム系等を使用することができる。
【0051】
(第2実施例)
本実施例は、第1実施例において、原水中に塩化物イオン及び塩素の少なくとも一方を含有し、空気中に含まれるアセトアルデヒド(CH3CHO)及びアンモニア(NH3)を処理した例である。
【0052】
原水としては、水道水(市水)を使用することができる。水道水は、水道法第22条および同法施行規則第16条により、水道事業者が講じなければならない衛生上、必要な措置として、給水栓水の遊離残留塩素を0.lmg/L(結合塩素の場合は0.4mg/L)以上、保持するように義務付けられている。また、それとは別に水道水中には通常数mg/L〜数十mg/L程度の塩化物イオンが含まれている。これらの水道水中の成分は以下に説明する電気分解時に塩素源となる。
【0053】
第1実施例と同様に空気浄化装置を運転することにより、空気中に含まれるアセトアルデヒド及びアンモニアは、気液接触室内で原水中に移動する。この原水を貯留手段内に導いて電気分解及び紫外線照射を行う。
【0054】
ここで、原水中に相当量の塩化物イオン及び塩素の少なくとも一方が存在する場合に、電気分解手段に電流を流すことで正極近傍では、下記式(3)〜(5)で表される反応が起こる。
【0055】
2H2O→O2+4H++4e- (3)
2Cl-→Cl2+2e- (4)
Cl2(aq)+H2O⇔HCl+HClO (5)。
【0056】
上式(3)〜(5)で表されるように、原水中に塩化物イオンや塩素を含有すると、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオン(以下、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンを「次亜塩素酸等」と記載する)が発生する。
【0057】
このため、系内では以下のような反応が起きると考えられる。アンモニアは、正極近傍で発生した次亜塩素酸等と、下記式(6)〜(9)で表される反応を起こし、分解される。なお、アンモニアの分解反応は、アンモニアと次亜塩素酸等の濃度比によって、式(6)〜(9)の何れかの反応、又は式(6)〜(9)の反応が競合して起こる。
【0058】
また、アセトアルデヒドについても次亜塩素酸等による分解反応が起こる。実際には数多くの中間反応や副反応を経て最終的に式(10)のような反応となる。また、条件によっては、式(10)の反応が完了する前の段階で反応が止まる場合もある。
【0059】
NH3+HClO→NH2Cl+H2O (6)
NH2Cl+HClO→NHCl2+H2O (7)
2NHCl2+HClO→N2+3HCl+Cl2O (8)
NH2Cl+NHCl2→N2+3HCl (9)
CH3CHO+5HClO→5HCl+2CO2+2H2O (10)。
【0060】
この際、紫外線照射手段により照射された紫外線によって、紫外線から、上式(6)〜(9)の反応に必要なエネルギーが供給され、上式(6)〜(9)の反応、特に、上式(8)〜(9)の反応が活性化されるものと考えられる。また、同様に、照射された紫外線のエネルギーによって、上式(10)の反応、又は上式(10)に至るまでの途中の反応が活性化されるものと考えられる。
【0061】
原水中に溶解しているアンモニア及びアセトアルデヒド以外の物質のうち、次亜塩素酸等と反応可能な物質は、上式(2)によって生成したヒドロキシラジカルによって優先的に分解される。従って、次亜塩素酸等は上式(6)〜(10)の反応を優先的に起こすものと考えられる。
【0062】
なお、上記のように、原水中の塩化物イオンや塩素によって次亜塩素酸等を発生させる場合だけでなく、原水中に最初から相当量の次亜塩素酸等を含む場合であっても、上式(6)〜(10)と同様の反応により、アンモニアやアセトアルデヒドを分解することが可能である。
【0063】
以上より、本実施例では、電気分解手段と紫外線照射手段の相乗的な作用により、空気中のアセトアルデヒド及びアンモニアを効果的に除去することができる。このアセトアルデヒド及びアンモニアは、たばこの煙中に大量に含まれる。このため、本実施例の空気浄化装置は、たばこの煙用の空気浄化装置として使用できる。また、アセトアルデヒド及びアンモニア処理用の空気浄化装置として使用できる。
【0064】
また、アセトアルデヒド及びアンモニアは正極近傍で発生した次亜塩素酸等によって分解されるため、次亜塩素酸等による分解反応がより促進されるように、紫外線照射手段は正極近傍に設けることが好ましい。より好ましくは、紫外線照射手段は、正極までの距離よりも負極までの距離が短くなるように、貯留手段内に配置されることが好ましい。ここで、「紫外線照射手段から正極までの距離」及び「紫外線照射手段から負極までの距離」とは、それぞれ紫外線照射手段から正極及び負極までの最短距離を表す。
【0065】
(第3実施例)
図2は、第3実施例の空気浄化装置を表すものであり、原水供給手段が噴霧ノズル4bとなっている点以外は、第1実施例と同様の構成を有する。このように、噴霧ノズル4bを用いることによって、より広範囲に小さい液滴径の液滴を噴霧することができる。この結果、気液の接触面積を大きくして、空気から原水への有害物質の移動量を大きくすることができる。
【0066】
(第4実施例)
図5は、第4実施例の空気浄化装置を表すものである。第4実施例の空気浄化装置は第1実施例の空気浄化装置に対して更に、第1の測定手段15、及び第1の制御手段18を有する点が、第1実施例とは異なる。本実施例の空気浄化装置は、第1の制御手段18により、
(I)ポンプ5及び送風機11の作動(気液接触室3と貯留手段1間の原水の循環)、並びに電気分解手段7及び紫外線照射手段6の停止、
(II)電気分解手段7及び紫外線照射手段6の作動、並びに気液接触室3と貯留手段1間の原水の循環の停止、
を交互に行うよう制御されるようになっている。
【0067】
なお、上記(I)において、空気浄化装置に送風機を設置していない場合、送風機11の制御は不要である(第4実施例において、以下に記載される送風機についても同様である)。
【0068】
上記(I)の工程では、気液接触室3と貯留手段1間に原水を循環させることにより、気液接触室3内での気体から原水への有害物質の移動を起こさせる。また、上記(II)の工程では、貯留手段1内の原水への電気分解及び紫外線照射を行うことにより、有害物質の分解を起こさせる。
【0069】
また、この第1の制御手段18は、上記(I)の工程において所定時間における原水中の有害物質の濃度の変化量を計算する。そして、上記(II)の工程において、計算した有害物質の濃度の変化量に応じて、電気分解手段による電気分解条件(電気分解時間も含む)及び紫外線照射手段(照射時間も含む)による紫外線照射条件のうち少なくとも一方の条件を変化させる。
【0070】
以下では、図6及び7を用いて、空気浄化装置の制御過程を説明する。まず、第1の制御手段18に、(I)と(II)の工程の切り換え条件、制御する電気分解条件、紫外線照射条件、及び空気浄化装置の制御の終了条件を入力する(S1)。制御する条件は、電気分解条件のみであっても、紫外線照射条件のみであっても、電気分解条件と紫外線照射条件の両方であっても良い。電気分解条件としては、電気分解を行う時間、電流密度等を挙げることができる。紫外線照射条件としては、紫外線照射を行う時間、紫外線の照射量等を挙げることができる。上記(I)と(II)の工程の切り替え条件としては、切換えスイッチをONにする、有害物質の変化量>切り換わり閾値を満たす、所定時間の経過等を挙げることができる。また、終了条件としては、所定の時間、使用電力量などの条件を挙げることができる。
【0071】
次に、第1の制御手段は上記(I)の工程を行うように指示を出し、送風機11及びポンプ5を作動させて、電気分解手段7及び紫外線照射手段6を停止させる(S2)。この間、気液接触室3と貯留手段1内を原水が循環し、気液接触室3内において原水は空気と接触する。そして、空気中の有害物質は原水中へ移動するため、時間の経過と共に原水中の有害物質の濃度は増加する。図7は、有害物質の濃度の測定手段(第1の測定手段)として導電率計を用いた場合の、導電率の値の変化を表す図である。原水中の導電率は原水中の有害物質の濃度と比例するため、導電率が高いほど原水中の有害物質の濃度は高いといえる。図7中で、最初の(I)の工程は(A1)で表される。この(A1)の工程の間、定期的もしくは常時、第1の測定手段15により原水中の有害物質の濃度を測定する(S3)。そして、第1の制御手段18により、原水中の有害物質濃度の経時的な変化量を計算する(S4)。この場合、変化量とは現時点とS2を開始した時点における有害物質濃度の差、を表す。
【0072】
次に、(a)切換えスイッチをONにする、(b)有害物質の変化量>切り換わり閾値を満たす、(c)所定時間が経過した、の中でどれか1つでも条件を満たした場合(S5 YES)には、送風機11及びポンプ5の作動を停止し(S6)、電気分解手段7及び紫外線照射手段6を作動させる(S7)。これにより、原水中で増加した有害物質を分解させて、原水中の有害物質の濃度を減少させる。また、この際、(A1)の工程における有害物質濃度の変化量に応じて、第1の制御手段18から、電気分解手段7、紫外線照射手段6、又は電気分解手段7と紫外線照射手段6の両方の運転条件を決定し、その条件で作動するように指示する(S8)。
【0073】
すなわち、(A1)の工程での有害物質濃度の増加量(ΔC1)が大きい場合には、第1の制御手段18により、有害物質の分解が活発となるような電気分解条件、紫外線照射条件を指示する。また、(A1)の工程での有害物質濃度の増加量(ΔC1)が小さい場合には、第1の制御手段18により、その変化量に対応するような有害物質の分解が起こるように電気分解条件、紫外線照射条件を指示する。
【0074】
これらの条件としては具体的に、ΔCの値に定数aを乗じた値aΔCとし、該aΔCを、(II)の工程の時間とする場合、電気分解手段7の電極間に流す電流の値とする場合、紫外線照射手段6による紫外線照射量とする場合等を挙げることができる。図7では、この工程は(B1)で表される。
【0075】
次に、所定時間が経過した時点で、電気分解手段7、及び紫外線照射手段6の作動を停止する(S9)。この時点で終了条件を満たさない場合は(S10 NO)、再び、送風機11及びポンプ5を作動させ、上記と同様の処理を行う(S2〜S4)。図7では、この工程は(A2)で表される。この後、送風機11及びポンプ5を停止させ、電気分解手段7、及び紫外線照射手段6を作動させる(S5〜S7)。この際、上記と同様に第1の制御手段18により、(A2)での有害物質の変化量(ΔC2)に対応するように電気分解条件、及び紫外線照射条件を指示する(S8)。このように指示された条件で電気分解手段7、及び紫外線照射手段6は作動し、所定期間が経過した後、停止する(S9)。図7では、この工程は(B2)で表される。
【0076】
以下、同様にして、(I)、(II)の工程を交互に行うと共に、(II)の工程を行う際には、直前の(I)の工程での原水中の有害物質濃度の増加量に対応させるように、電気分解条件、紫外線照射条件を設定する。そして、終了条件を満たすまで、上記(I)、(II)の工程を交互に行い、終了条件を満たした時点で、(I)、(II)の工程を終了する(S10 YES)。
【0077】
なお、電気分解手段7、及び紫外線照射手段6を停止させる条件は、上記のように所定時間の経過に限られず、切換えスイッチをONにすることによって電気分解手段7、及び紫外線照射手段6を停止させても良い。
【0078】
本実施例のような制御を行うことにより、電気分解手段7、紫外線照射手段6を常時、運転した場合に比べて、使用電力を少なくすることができる。この結果、空気浄化装置のランニングコストを抑えることができる。また、(I)の工程での有害物質の変化量に応じて、(II)の工程の条件を決定できるため、有害物質量の変化に有効に対応することができる。
【0079】
(第5実施例)
図3は、第5実施例の空気浄化装置を表すものである。第5実施例の空気浄化装置は、第1実施例の空気浄化装置に対して更に、第2の測定手段12、第2の制御手段13、及び添加手段14を有する点が、第1実施例とは異なる。この第2の測定手段12、第2の制御手段13、及び添加手段14により、貯留手段1内に貯留された原水中のハロゲン成分からなる第1の物質の濃度を第1の値以上に制御できるようになっている。
【0080】
以下では、図4を用いて、原水中の第1の物質濃度の制御過程を説明する。まず、第2の制御手段13に、第1の値、及び第1の物質の濃度制御の終了条件を入力する(S1)。この終了条件としては例えば、手動スイッチによる停止指令や所定の時間、使用電力量などの条件を挙げることができる。また、第1の物質が塩化物イオンの場合、第1の値は、1〜100mg/Lが好ましい。
【0081】
次に、第2の測定手段12により、貯留手段1内に貯留された原水中の第1の物質の濃度を測定する(S2)。そして、測定された第1の物質の濃度が第1の値以下か、又は第1の値を超えるか、の判定を行う(S3)。
【0082】
ここで、(a)第1の物質の濃度が第1の値を超える場合(S3 NO)、更に、終了条件を満たしているかどうかの判定を行う(S6)。そして、終了条件を満たしている場合には(YES)、制御を終了する。一方、終了条件を満たしていない場合には(NO)、再度、第2の測定手段により、原水中の第1の物質の濃度を測定し(S2)、以後、上記(a)又は下記(b)の処理を行う。
【0083】
これに対して、(b)第1の物質の濃度が第1の値以下の場合(S3 YES)、第2の制御手段は、添加手段に対して指示を出す(S4)。そして、添加手段はこの指示に基づき、原水中に第1の物質を添加する(S5)。この後、上記(a)と同様に、終了条件を満たしているかどうかの判定を行う(S6)。終了条件を満たしている場合(YES)には制御を終了し、満たしていない場合(NO)には原水中の第1の物質を測定し(S2)、以後、上記(a)又は(b)の処理を行う。なお、第2の測定手段は、第1の物質の濃度を測定可能なものであれば特に限定されない。
【0084】
添加手段は、貯留手段内に貯留された原水中に第1の物質を含有する溶液を添加可能なものであれば、特に限定されない。添加手段としては例えば、スプレー式、ノズル式、ポンプ式のものを挙げることができる。
【0085】
(第1〜第3の制御手段)
上記各実施例において、第1〜第2の制御手段は、その機能を実現するように形成されていれば良く、例えば、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるハードウェアであれば良い。具体的には、CPU(Central Processing Unit)を主体として、これに、ROM、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット等の各種デバイスが接続されたハードウェアなどで良い。また、第1〜第2の制御手段は、個々の独立した存在である必要はなく、複数の手段が1個の手段として形成されていること、ある手段が他の手段の一部であること、ある手段の一部と他の手段の一部とが重複していること等が可能である。
【実施例】
【0086】
実施例及び比較例で使用した、空気中及び原水中の有害物質の分析方法を以下に示す。
【0087】
(1)空気中のアンモニア濃度及びアンモニア除去率
空気中のアンモニア濃度は、光明理化学工業製ガス検知管(NH3(SD)型105SD、又はNH3(SE)型105SE)を用いて測定した。そして、装置の運転時に、吸気口に供給される空気中のアンモニア濃度をC1、排気口より排出される空気中のアンモニア濃度をC2とした。空気中のアンモニア除去率は、下記式に従って、算出した。
(アンモニア除去率)=(1−C2/C1)×100。
【0088】
(2)空気中のアセトアルデヒド濃度及びアセトアルデヒド除去率
空気中のアセトアルデヒド濃度は、厚生労働省の『シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書−第6回〜第7回のまとめについて』(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0724-1.html)、及び
『シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書−第8回〜第9回のまとめについて』(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0208-3.html)
に記載の方法に従って測定した。
【0089】
具体的にはまず、空気をDNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン)捕集剤に通して、アセトアルデヒドを吸着させると共に誘導体化させた。このように吸着させたアセトアルデヒドをアセトニトリルで溶出させた後、高速液体クロマトグラフで測定した。そして、装置の運転時に、吸気口に供給される空気中のアセトアルデヒド濃度をC3、排気口より排出される空気中のアセトアルデヒド濃度をC4とした。空気中のアセトアルデヒド除去率は、下記式に従って算出した。
(アセトアルデヒド除去率)=(1−C4/C3)×100。
【0090】
(3)原水中の塩素濃度
DPD法(浄水試験方法 2001年版 17.3に記載)に従って測定した。
【0091】
(4)原水中のアンモニア濃度
JIS K0101 36.5 「イオンクロマトグラフ法」に従って測定した。
【0092】
(5)原水中のTOC濃度
JIS K0101 20.1 「燃焼酸化−赤外線式TOC分析法」に従って測定した。
【0093】
(実施例1)
第1実施例で示した空気浄化装置の吸気口に接続する形でブースを設け、ブース内でタバコを吹かせた。しばらくの間、電気分解手段及び紫外線照射手段を作動させずに、送風機とポンプを作動させた。次に、送風機とポンプを停止させた後、貯留手段から循環水を抜き取り、別の容器に貯め、貯留手段内には新たな水を貯留させた。この操作を数回、行うことによって、別の容器内に有害物質が溶存した原水を準備した。この時の原水中のアンモニア濃度は12ppm、TOC濃度は32ppmであった。
【0094】
次に、送風機とポンプが停止した状態で、上記の原水を空気浄化装置内に入れた後、電気分解手段及び紫外線照射手段を30分間、作動させ、原水中の有害物質の分解を行った。この時の電気分解条件は電極に流す電流0.6A、紫外線照射条件は紫外線波長254nm、照射量26μW/cm2とした。この処理を行った後の原水中のアンモニア濃度は2ppm、TOC濃度は18ppmであった。
【0095】
(実施例2)
実施例1と同様に、第1実施例で示した空気浄化装置の吸気口に接続する形でブースを設け、ブース内でタバコを吹かせた。昼間(AM9:00−PM18:00)はブース内にタバコを吹かせ、空気浄化装置を作動させ、夜間(PM18:00−AM9:00)はブース内でタバコをふかさず、空気浄化装置も停止させる形で10日間、運転を行った。
【0096】
運転条件として、空気の処理量は60m3/h、原水は5Lの市水、原水の循環流量は3L/min、電気分解手段の電極に流す電流密度は3.5A/dm3に設定した。電気分解手段の電極としてルテニウムメッキを施したチタン平板(50×60mm)を使用した。また、紫外線照射手段は、三共電機製8GL(8W)の紫外線ランプを使用した。そして、空気中の有害物質(アンモニア、アセトアルデヒド)の除去効率の経時変化を調べた。この結果を図8〜11に示す。
【0097】
(比較例1)
紫外線照射手段を除いた以外は実施例1と同様にして、試験を行った。電気分解手段による処理を行った後の原水中のアンモニア濃度は8ppm、TOC濃度は30ppmであった。
【0098】
(比較例2)
紫外線照射手段を除いた以外は実施例2と同様にして、試験を行った。この結果を図8〜11に示す。
【0099】
(比較例3)
紫外線照射手段および電気分解手段を除いた以外は実施例2と同様にして、試験を行った。この結果を図8〜11に示す。
【0100】
(比較例4)
電気分解手段を除いた以外は実施例2と同様にして、試験を行った。この結果を図8〜11に示す。
【0101】
実施例1及び比較例1の結果から、電気分解手段と紫外線照射手段を併用すると、電気分解手段のみを用いた場合と比べて、原水中のアンモニア濃度及びTOC濃度が共に大きく減少していることが分かる。また、電気分解手段と紫外線照射手段の併用により、空気中のアンモニア除去率も大きく向上していることが分かる。
【0102】
図8の結果から、電気分解手段と紫外線照射手段を併用した実施例2では、電気分解手段のみを用いた比較例2、無処理の比較例3、及び紫外線照射手段のみを用いた比較例4と比べて、アンモニア除去率が1〜2%、向上していることが分かる。また、図10の結果から、実施例2では原水中のアンモニア濃度はほぼ0であるのに対して、比較例2〜4では原水中のアンモニア濃度は日数の経過と共に増加している。そして、10日目で、比較例2では約20mg/L、比較例3及び4では約50mg/Lとなっている。これらの結果から、実施例2の空気浄化装置では電気分解手段と紫外線照射手段の相乗作用により、比較例2〜4のように無処理、又は電気分解手段若しくは紫外線照射手段のみを用いた装置と比べて、原水中のアンモニア除去率が飛躍的に向上していることが分かる。
【0103】
一方、実施例2と、比較例2〜4の空気中のアンモニア除去率の差は1〜2%であり、原水中のアンモニア濃度の差ほど大きくならなかった。この理由は、実施例2と、比較例2〜4とでは気液接触室内での空気から原水中へのアンモニアの移動量が異なったためであると考えられる。このため、気液接触の形態を変更することにより、更にアンモニア除去率を向上させることは可能である。
【0104】
また、図9及び11の結果から、実施例2では、比較例2〜4と比べて、空気中のアルデヒド除去率が大きく向上し、原水中のTOC濃度が大きく低下していることが分かる。これらの結果から、実施例2の空気浄化装置では電気分解手段と紫外線照射手段の相乗作用により、比較例2〜4の装置と比べて、空気中のアルデヒド除去率等が大きく向上していることが分かる。
【符号の説明】
【0105】
1 貯留手段
2 吸気口
3 気液接触室
4a 散水ノズル
4b 散水スプレー
5 ポンプ
6 紫外線照射手段
7 電気分解手段
8 エリミネータ
9 除湿器
10 排気口
11 送風機
12 第2の測定手段
13 第2の制御手段
14 添加手段
15 第1の測定手段
16 第3の制御手段
17 電源
18 第1の制御手段
21 第2の流路
22 第1の流路
25、26 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口及び排気口を有する筺体と、
前記筺体内の吸気口と排気口の間に設けられ、気体と原水とを接触させる気液接触室と、
前記気液接触室内に設けられた原水供給手段と、
第1の流路及び第2の流路を介して前記筺体の気液接触室に連結されると共に原水を貯留する貯留手段であって、前記第1の流路を介して前記気液接触室から貯留手段に原水が供給され、前記第2の流路を介して前記貯留手段から原水供給手段に原水を供給する貯留手段と、
前記貯留手段内、又は第2の流路内に設けられた正極及び負極を有する電気分解手段と、
前記貯留手段内、又は第2の流路内に設けられた紫外線照射手段と、
を有する空気浄化装置。
【請求項2】
更に、
前記吸気口を介して気体を吸入し、前記排気口を介して気体を排出させる送風手段を有する請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
更に、
前記貯留手段内の原水中に、ハロゲン成分を添加する添加手段を有する請求項1又は2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
更に、
原水中の有害物質の濃度を測定する第1の測定手段を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
第1の測定手段が導電率計である請求項4に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
更に、
下記工程(I)及び(II)を交互に行うように制御し、
(I)前記気液接触室と貯留手段間の原水の循環、
(II)前記電気分解手段及び紫外線照射手段の作動、
前記工程(I)において所定時間における前記原水中の有害物質の濃度の変化量を計算し、前記工程(II)において前記変化量に応じて、前記電気分解手段による電気分解条件及び前記紫外線照射手段による紫外線照射条件のうち少なくとも一方の条件を変化させる第1の制御手段を有する請求項4又は5に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
更に、
原水中のハロゲン成分からなる第1の物質の濃度を測定する第2の測定手段と、
前記第2の測定手段によって測定された原水中の第1の物質の濃度が第1の値以下となったときに、前記添加手段に対して、前記原水中に第1の物質を添加するよう指示する第2の制御手段を有する請求項3に記載の空気浄化装置。
【請求項8】
前記紫外線照射手段は、前記正極までの距離よりも前記負極までの距離が短くなるように、前記貯留手段内に配置される請求項1〜7の何れか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項9】
前記気体は、たばこの煙を含む空気であり、
前記原水は塩化物イオン、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン及び塩素からなる群から選択された少なくとも一種の物質を含有し、
前記空気浄化装置は、たばこの煙用の空気浄化装置である請求項1〜8の何れか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項10】
前記気体は、アンモニア及びアセトアルデヒドの少なくとも一方を含む空気であり、
前記原水は塩化物イオン、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン及び塩素からなる群から選択された少なくとも一種の物質を含有し、
前記空気浄化装置は、アンモニア及びアセトアルデヒド処理用の空気浄化装置である請求項1〜9の何れか1項に記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−206123(P2011−206123A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74503(P2010−74503)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】