説明

空気浄化装置

【課題】接触させて空気を清浄化するための洗浄水を循環させる方式において、洗浄水中に溶解した化学物質の再揮散を抑制する。
【解決手段】循環タンク2と散水手段32の間を接続する配管8(洗浄水の循環ライン)の途中に、脱気装置9が設けられている。脱気装置9は、配管8と接続されている水室91と、気室93と、水室91と気室93とを仕切るように配された脱気膜94すなわち気体透過膜とを有し、気室93内を減圧するバキュームポンプ(VP)92(減圧手段)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置に関し、特に、洗浄水を用いて空気を浄化する手段を備えた空気浄化装置に関する。また、このような空気浄化装置を建物に適用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用などの空気浄化装置は、空気内の粉塵や臭気や不快なガス成分等などを除去するため、フィルタなどの浄化手段が使用されている。しかし、フィルタの目詰まり等が発生し、浄化能力が損なわれる。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているような、洗浄水と空気とを接触させることで空気を浄化する空気洗浄手段を備えた空気洗浄器が提案されている。この空気洗浄器では、装置内に洗浄水のシャワーを設け、外部から装置内に取り込んだ空気を該洗浄水に通過させ、これによって浄化された空気を装置外に送出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−285714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような空気浄化装置は、洗浄水を循環利用することにより節水ができるものである。そのため、家庭向けに使用すると運転コスト的に有利である。
【0006】
しかしながら、このように洗浄水を循環させる方式は、装置内のシャワーから出る洗浄水をタンクで受け、タンクからシャワーへ送るように構成されている。そのため、空気から除去したSO2、NO2、アンモニア等の化学物質が水槽内の洗浄水に溶解し、循環する洗浄水中の化学物質濃度が装置の運転時間とともに上昇する。その結果、シャワーから出る洗浄水から化学物質ガスが再揮散してしまい、装置としての空気処理能力が低下する虞があった。また、こうした問題に対処するために水槽の洗浄水を交換する必要が生じた。
【0007】
また、空気浄化装置を住宅で使用するには洗浄水として水道水を利用できるものがコスト面で有利であるため、そのような装置が望まれていた。
【0008】
そこで本発明は、上述したような課題に鑑み、洗浄水中に溶解した化学物質ガスの再揮散を抑制して空気清浄能力を向上させることができる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気浄化装置は、筐体と、筐体の内部に取り込んだ空気に洗浄水を散布して接触させる気液接触手段と、気液接触手段の下方にて洗浄水を受け入れるタンクと、タンク内の洗浄水を気液接触手段へ送る循環ラインと、を有する。そして上記の課題を解決するために、本発明は、タンク内の洗浄水の中に溶解している溶存ガス成分を洗浄水から気相に抽出し、排出するための脱気装置をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
上記の脱気装置によれば、タンク内の洗浄水中に溶解している溶存ガス成分(SO2、NO2、アンモニア等の化学物質ガス)を、循環ラインの外へ排出することができる。結果、筐体内における化学物質ガスの再揮散が抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄水中に溶解した化学物質ガスの再揮散を抑制して空気清浄能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による第1の実施形態の空気浄化装置の構成を示す模式図。
【図2】本発明による第2の実施形態の空気浄化装置の構成を示す模式図。
【図3】本発明による第3の実施形態の空気浄化装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は本発明による第1の実施形態の空気浄化装置の構成を示す模式図である。
【0015】
本実施形態の空気浄化装置は、図1で示すように筐体1の内部に以下に述べる構成を有する。筐体1内の下部に循環タンク2を有し、その上方に、空気を浄化する気液接触手段3と、主送風機4とが、この順で設置されている。循環タンク2と気液接触手段3との間で、筐体1の側壁には空気取込み口5が設けられ、また、気液接触手段3の上方には空気吐出口6が設けられており、空気取込み口5から筐体1外の空気が主送風機(F)4の吸い込み力によって筐体1内部に取り込まれ、筐体1内部を空気吐出口6に向かって流れる。
【0016】
主送風機4は、空気吐出口6の手前に設置され、気液接触手段3によって浄化された空気を空気吐出口6から筐体1の外へ供給する。
【0017】
気液接触手段3は、空気取込み口5から筐体1内部に取り込まれた空気を洗浄水と接触させることで浄化する。このため、気液接触手段3は、気液接触部31と、気液接触部31の上方に設けられた洗浄水を散布する散水手段32とを有している。気液接触部31には、支持体(不図示)が備えられ、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキン等の充填材が充填されている。なお、気液接触部31は、充填材がハニカム状や繊維を編んだようなもので、気液接触部31と一体型となっていてもよい。この気液接触部31では、散水手段32から散布された洗浄水が充填材の表面に付着し、充填材の表面で、筐体1内部に取り込まれた空気との気液接触が行われる。
【0018】
循環タンク2は気液接触部31の下側に設けられており、配管を介して循環ポンプ(P)7に接続されている。循環ポンプ7の吐出側は配管8を介して散水手段32に接続されている。散水手段32は例えば、多数の孔の開けられた配管であり、これらの孔から洗浄水が散布される。散水手段32に設けられた孔の数や形状、位置は特に限定されないが、洗浄水をほぼ均一に散布できるように設けられることが好ましい。しかし充填材の構造や、空気の流れに拠っては、気液接触部31に対する散水量に偏りを持たせても構わない。また、洗浄水が散布される孔には、洗浄水をより微細な液滴として噴霧されるような形状を有したノズルを設けるのが好ましい。
【0019】
さらに、循環タンク2と散水手段32の間を接続する配管8(洗浄水の循環ライン)の途中に、脱気装置9が設けられている。とりわけ、本実施形態の脱気装置9は、配管8と接続されている水室91と、気室93と、水室91と気室93とを仕切るように配された脱気膜94すなわち気体透過膜とを有し、気室93内を減圧するバキュームポンプ(VP)92(減圧手段)を有している。
【0020】
既に説明したように、空気清浄時に気液接触部3で除去したSO2、NO2、アンモニア等の化学物質ガス(以下、「溶存ガス成分」と言う場合がある。)が循環タンク2の洗浄水に蓄積すると、洗浄水を散布した際に筐体1内において化学物質ガスが再揮散する虞がある。そこで、上述した脱気装置9を備えることによって、洗浄水を配管8で循環させているとき、バキュームポンプ92で気室93を減圧して、水室91の洗浄水より脱気膜94を介して脱気することができる。気室93を減圧することによって気室93内と水室91内に気圧の差が生じ、洗浄水中に溶解している溶存ガス成分が、ガス分圧の低い気室93側に脱気膜94を介して移動する。これにより、循環タンク2内の洗浄水中に溶解している溶存ガス成分を洗浄水から気相に抽出し、排出することができ、筐体1内での化学物質ガスの再揮散を抑制することができる。
【0021】
脱気膜94として使用される気体透過膜に特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン膜、ポリジメチルシロキサン膜、ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体膜、ポリビニルフェノール−ポリジメチルシロキサン−ポリスルホンブロック共重合体膜、ポリ(4−メチルペンテン−1)膜、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)膜、ポリテトラフルオロエチレン膜などを挙げることができる。
【0022】
なお、バキュームポンプ92をエゼクターに代替し、当該エゼクターの吸込口を気室93に接続して気室93内を減圧にする構成をとってもよい。
【0023】
本発明により、洗浄水中に溶解した化学物質ガスの再揮散を抑制して空気清浄能力を向上させ、洗浄水の交換頻度を低減することが可能となる。
【0024】
(第2の実施形態)
図2は本発明による第2の実施形態の空気浄化装置の構成を示す模式図である。この図において第1の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を用いており、同じ構成要素の説明はここでは省略して第1の実施形態と同じとする。以下、第1の実施形態に対して変更した点を述べる。
【0025】
本実施形態では、処理対象空気を清浄化する洗浄水を循環させる配管8(循環ライン)に設けられた脱気装置9に、気室93内を減圧するためのバキュームポンプ92(減圧手段)が設けられていない。その代わりに、気室93の一端から高純度AirやN2ガスなどの純度の高いガス(例えば、洗浄水中からアンモニアを除去したい場合は、少なくともアンモニアがほとんど含まれていないAirやN2ガス)を導入して気室93を通過させ、気室93の他端側より排出させる構成になっている。そのため、気室93の一端に高純度ガス導入管95が接続され、気室93の他端に排気管96が接続されている。すなわち本実施形態では、脱気装置が、水室91、気室93、脱気膜94、高純度ガス導入管95、および排気管96から構成されている。なお、高純度ガス導入管95および排気管96は剛体の管に限られず、フレキシブルチューブ等でもよい。
【0026】
本実施形態においても第1の実施形態と同様、空気清浄時に気液接触部3で除去したSO2、NO2、アンモニア等の化学物質ガスが洗浄水に溶解してしまうために水室91の洗浄水の清浄度が時間とともに低下する。しかし本実施形態では、洗浄水に溶解している化学物質ガスが含まれていないN2ガスやAir等を気室93に常時通過させているため、洗浄水中に溶解している溶存ガス成分が、ガス分圧の低い気室93側に脱気膜94を介して移動する。これにより、循環タンク2内の洗浄水中に溶解している溶存ガス成分を洗浄水から気相に抽出し、排出することができ、筐体1内での化学物質ガスの再揮散を抑制することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、気室93に高純度のN2ガスやAirを通気させたが、たとえば住宅向けに外気を取り入れ、本装置で浄化後にその浄化空気を住宅内に導入するようなシステムの場合、住宅内の空気を気室93に通気させることもできる。
【0028】
(第3の実施形態)
図3は本発明による第3の実施形態の空気浄化装置の構成を示す模式図である。この図において第1の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を用いており、同じ構成要素の説明はここでは省略して第1の実施形態と同じとする。以下、第1の実施形態に対して変更した点を述べる。
【0029】
本実施形態では、洗浄水を循環させる配管8に、脱気膜94を持つ脱気装置9が設けられていない。その代わりに、図3に示すように、筐体1の底部を構成する循環タンク2の横に水槽10が連結され、循環タンク2と水槽10の底面付近どうしが連通部11によって互いに連通している。これにより、気液接触手段3から降下する洗浄水は循環タンク2の中だけでなく水槽10の中にも行き渡るようになっている。このとき、循環タンク2および水槽10の中に貯留される洗浄水は水位が同じになるが、その水位は連通部11よりも上に位置され、連通部11にて空気の通わない状態にされている。さらに、水槽10の上部には筐体1の側壁を一部利用して煙突状の排気部12が構成されている。排気部12の、水槽10内の洗浄水の水面近傍の側壁には高純度ガス導入管13が接続されていて、高純度AirやN2ガスなどの純度の高いガス(例えば、洗浄水中からアンモニアを除去したい場合は、少なくともアンモニアが含まれていないAirやN2ガス)を導入して水槽10内の洗浄水と接触させられるようにしてある。そして、水槽10内の洗浄水と接触した後のN2ガス等は、排ガスとして、排気部12を通って、空気浄化装置の外へ排出させられる構成になっている。このような、連通口11を有する水槽10、排気部12、および高純度ガス導入管13によって脱気装置が構成されている。
【0030】
また、図3では、筐体1と水槽10が一体(筐体1と水槽10の側壁の一部が共通している形態)となっているが、それぞれが独立していて、連通部11で接続されていてもよい。
【0031】
本実施形態においても上記の実施形態と同様、空気清浄時に気液接触部3で除去した化学物質ガスが洗浄水に溶解してしまうために循環タンク2および水槽10の洗浄水の清浄度が時間とともに低下する。しかし本実施形態では、循環タンク2と連通されている水槽10の洗浄水に、洗浄水に溶解している化学物質が含まれていないN2ガスやAir等を常時接触させている。このため、洗浄水中に溶解している溶存ガス成分が、ガス分圧の低い気室93側に脱気膜94を介して移動する。これにより、循環タンク2内の洗浄水中に溶解している溶存ガス成分を洗浄水から気相に抽出し、排出することができ、筐体1内での化学物質ガスの再揮散を抑制することができる。
【0032】
この実施形態の場合、第1及び第2の実施形態のように脱気膜94としての気体透過膜を使用しないので、装置のメンテナンスが容易である。
【0033】
(その他の実施形態)
上述した各実施形態の空気浄化装置は、建物である住宅に適用される場合、空気浄化装置を住宅外に設置する方法や住宅内部に設置する方法が考えられる。
【0034】
住宅外に本発明の空気浄化装置を設置するとき、空気取込み口5が住宅の外の空気を取り込み、空気吐出口6が空気浄化装置内で浄化された空気を住宅の内部へ供給するために住宅内部と連通される。脱気装置9で取り除いた溶解ガス成分を排出する部分は住宅の外において空気取込み口5から遠ざけることが好ましい。
【0035】
一方、住宅内部に本発明の空気浄化装置を設置するとき、空気取込み口5が住宅内部の空気を取り込み、空気吐出口6が空気浄化装置内で浄化された空気を住宅の内部へ吐出する。脱気装置9で取り除いた溶解ガス成分を排出する部分は住宅の内部から外へと延出される。
【0036】
本発明の空気浄化装置は、上述したように空気の清浄能力が向上するだけでなく、空気を清浄化する洗浄水に家庭の水道水を使用でき、また洗浄水を循環できるものなので、家庭での運転コストが非常に廉価である。
【0037】
また本発明の空気浄化装置は、筐体内に取り込んだ空気の湿度を調整する手段や温度を調整する手段を装備することで空調も可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・筐体
2・・・循環タンク
3・・・気液接触手段 31・・・気液接触部 32・・・散水手段
4・・・主送風機
5・・・空気取込み口
6・・・空気吐出口
7・・・循環ポンプ
8・・・配管(循環ライン)
9・・・脱気装置 91・・・水室 92・・・バキュームポンプ(減圧手段)
93・・・気室 94・・・脱気膜(気液透過膜) 95・・・高純度ガス導入管
96・・・排気管
10・・・水槽
11・・・連通口
12・・・排気部
13・・・高純度ガス導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に取り込んだ空気に洗浄水を散布して接触させる気液接触手段と、
前記気液接触手段の下方にて前記洗浄水を受け入れるタンクと、
前記タンク内の前記洗浄水を前記気液接触手段へ送る循環ラインと、
を有し、
前記タンク内の前記洗浄水の中に溶解している溶存ガス成分を前記洗浄水から気相に抽出し、排出するための脱気装置をさらに備えたことを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
前記脱気装置は、
前記循環ライン上に設けられ、前記洗浄水が通過する水室と、
気室と、
前記水室と前記気室とを仕切るように配された気体透過膜と、
前記気室内を減圧するように前記気室に接続された減圧手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記脱気装置は、
前記循環ライン上に設けられ、前記洗浄水が通過する水室と、
気室と、
前記水室と前記気室とを仕切るように配された気体透過膜と、
前記気室外から前記気室内へ、前記溶存ガス成分を少なくとも含まないガスを導入するガス導入部と、
前記気室内から前記気室外へ排気する排気部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
前記脱気装置は、
水槽と、
前記水槽内に、前記溶存ガス成分を少なくとも含まないガスを導入するガス導入手段と、
前記水槽に設けられた、前記ガス導入手段により導入されたガスを前記水槽外へ排気する排気部とを有し、
前記水槽が、前記タンクと互いに底面付近で連通するように備えられていることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−55838(P2012−55838A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202255(P2010−202255)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】