説明

空気清浄システム

【課題】より簡易な構成により、効果的に空気と水とを接触させて空気中に含まれる汚染物質を水中に取り込ませることを可能とする装置の開発が望まれていた。
【解決手段】本発明の空気清浄システム1は、空気中に含まれる化学物質や微生物などの汚染物質を処理するためのものであって、水を貯留し、水面を空気に接触させて成る貯水槽3と、該貯水槽3内の水を撹拌することにより渦を生成する撹拌装置7とを備え、貯水槽3内の水中に空気中の汚染物質を取り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる化学物質や臭い成分、微生物などの汚染物質を処理するための空気清浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、シックハウス症候群等を緩和すべく、屋内等における空気清浄が注目されている。特に、ホルムアルデヒドは強い刺激性やシックハウスの誘因物質として指摘されているが、家屋の建材や塗料、家具等から発生するため、屋内における濃度が高くなる問題がある。このようなホルムアルデヒド等の揮発性有機化合物(VOC)やアンモニア等の悪臭物質を除去する方法としては、それら汚染物質を含有する空気を水と接触させてとけ込ませ、空気中から除去するシステムがある。
【0003】
特許文献1に示される空気清浄システムでは、水槽内底部の水溶液中に散気管に送給された空気を吐出(バブリング)し、水溶液中に浸漬される電解用電極間やそれらの周囲を泡となって通過させ、その過程で空気中に含まれる汚染物質を水溶液中に溶け込ませ、清浄な空気として屋内に排出していた。
【0004】
特許文献2に示される清浄装置では、吸引された空気を水面に吐出し、泡立ちを抑えつつ、水面全体の波立ちを大きくし、貯留される水全体と空気との接触効率の向上を図るものである。
【特許文献1】特許第3986502号公報
【特許文献2】特開2002−325705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各構成では、室内の空気を送風手段によって本体内に取り込む必要があり、また、取り込まれた空気は、配管を介して水槽内底部の水溶液中に導かれ、気泡として水溶液中に放出されていた。
【0006】
そのため、装置が複雑化する問題がある。特に、特許文献2に示される構成では、水面に吐出した空気や水をたたきつけて、水との接触により塵埃や塗料ガス等を水に吸収させて捕集するものであったが、水面と空気との接触面積には限界がある。
【0007】
そこで、より簡易な構成により、効果的に空気と水とを接触させて空気中に含まれる汚染物質を水中に取り込ませることを可能とする装置の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気清浄システムは、空気中に含まれる汚染物質を処理するためのものであって、水を貯留し、水面を空気に接触させて成る貯水槽と、該貯水槽内の水を撹拌することにより渦を生成する撹拌手段とを備え、貯水槽内の水中に空気中の汚染物質を取り込むことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の空気清浄システムは、上記発明において、貯水槽内を複数の撹拌室に区画する仕切部材を備え、各撹拌室内に撹拌手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の空気清浄システムは、上記各発明の何れかにおいて、貯水槽内の水を電気化学的に処理することにより、水中に活性酸素種を生成する電解手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の空気清浄システムは、上記各発明の何れかにおいて、貯水槽内の水面に空気を吹き付ける送風手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の空気清浄システムは、上記請求項4に記載の発明において、単一の回転軸により撹拌手段及び送風手段を回転駆動するモータを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の空気清浄システムは、上記各発明の何れかにおいて、貯水槽は透視可能であり、当該貯水槽内の水に紫外線を照射する紫外線照射手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空気中に含まれる汚染物質を処理するための空気清浄システムにおいて、水を貯留し、水面を空気に接触させて成る貯水槽と、該貯水槽内の水を撹拌することにより渦を生成する撹拌手段とを備え、貯水槽内の水中に空気中の汚染物質を取り込むことにより、貯水槽内の水に生成される渦によって、水面の表面積を拡大することができると共に、渦の形成によって生じる水面上の負圧によって空気中に浮遊する化学物質や臭い成分、微生物などの汚染物質を水中に取り込みやすくなる。これにより、空気中の汚染物質の処理効率の向上を図ることが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、上記発明において、貯水槽内を複数の撹拌室に区画する仕切部材を備え、各撹拌室内に撹拌手段を設けたことにより、それぞれの撹拌室内にて渦を生成することが可能となる。これにより、貯水槽内に複数の渦を生成することが可能となり、更に水面の表面積を拡大することができる。また、それぞれの渦は、仕切部材により区画される撹拌室内に生成されるため、それぞれの渦が干渉することで撹拌効率が低下する不都合を回避することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、上記各発明の何れかに加えて、貯水槽内の水を電気化学的に処理することにより、水中に活性酸素種を生成する電解手段を備えたことにより、水中に取り込まれた汚染物質は、電気化学的処理によって生成した次亜塩素酸又はオゾン、過酸化水素、過酸化水素ラジカル、スーパーオキサイドラジカル、ヒドロキシラジカル、一重項酸素ラジカル等の活性酸素種により酸化分解処理することが可能となる。
【0017】
これにより、空気中に含まれる汚染物質を円滑に除去することができるようになる。また、活性酸素種によって常に浄化された水を空気清浄に利用することができるようになり、頻繁な水の交換を回避してメンテナンス性を向上させることもできるようになるものである。
【0018】
請求項4の発明によれば、上記各発明の何れかに加えて、貯水槽内の水面に空気を吹き付ける送風手段を備えたことにより、強制的に汚染物質を含む空気を貯水槽内の水中に吹き付けることで、汚染物質の水中への取り込み効率を向上させることができる。これにより、より一層空気中の汚染物質の処理効率を向上させることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項4に記載の発明において、単一の回転軸により撹拌手段及び送風手段を回転駆動するモータを備えたので、貯水槽内の水面に形成される渦に向けて送風手段によって効果的に空気を吹き付けることが可能となる。
【0020】
これにより、水面に形成される渦の水流の方向と、送風手段により吹き付けられる空気の流れの方向とを同一とすることができ、より効果的に空気を水中に取り込ませることが可能となる。
【0021】
請求項6の発明によれば、上記各発明の何れかにおいて、貯水槽は透視可能であり、当該貯水槽内の水に紫外線を照射する紫外線照射手段を備えたことにより、水中に取り込まれた汚染物質のうちの蛍光性を有する物質を紫外線の照射により蛍光させることが可能となる。
【0022】
これにより、貯水槽内に取り込まれた汚染物質が分解処理される前は、蛍光性を有する物質が特定の波長を吸収して蛍光を発し、分解処理された後は、当該蛍光が消失することから、貯水槽内に汚染物質が取り込まれている状態や、分解処理されている状態を視覚的に表現することができるようになる。これにより、処理状況を目視にて確認することが可能になるのと同時に、空気清浄システムをインテリア等の装飾として利用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は従来の技術的課題を解決するものであり、簡易な構成により、効果的に空気と水とを接触させて空気中に含まれる汚染物質を水中に取り込ませることを可能とする装置を提供する。
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の空気浄化システム1を詳述する。図1は本発明の一実施例の空気清浄システム1の構成を示す斜視図である。本実施例の空気清浄システム1は、例えば家屋などの屋内に設置可能な寸法を呈しており、本体2と、この本体2内に収容される貯水槽3と、この貯水槽3内底部に設けられた少なくとも一対の電解用電極4、6と、この貯水槽3内の水を撹拌し、渦を生成する撹拌装置(撹拌手段)7と、貯水槽3内の水面に空気を吹き付ける送風機(送風手段)10等から構成されている。
【0025】
本体2は、少なくとも上面に形成された吸気口8と、何れかの側面に形成される排気口9が形成されている。吸気口8には、本体2内に吸い込まれる空気のうち塵埃等の比較的大きな物質を捕獲するプレフィルタ8Aが設けられている。
【0026】
貯水槽3の上面は開口されており、この貯水槽3内には例えば5mg/L以上のハロゲン化物イオン、実施例では200mg/Lの塩化物イオンを含んだ水溶液が所定量貯溜されている。そのため、当該貯水槽3の水面は、空気と接触する。そして、この貯水槽3内(本実施例では内底部)には、後述する撹拌装置7の撹拌羽根11の回転駆動に干渉しない位置に前記電解用電極4、6が水溶液中に浸漬立設されている。なお、貯水槽3は渦の発生の妨げとならないよう図に示すように円筒形状であることが好ましい。
【0027】
この電解用電極4、6は何れも、例えば白金−イリジウム系(Pt−Ir系)などの不溶性金属電極により構成されており、相互の距離は例えば6mmとされている。尚、本発明において、電解用電極とは、被電解水としての水溶液に浸漬され、直接電解に寄与するものをいい、電極の一部分が浸漬されて直接電解に寄与する場合の当該一部分をも含むものとする。また、本実施例では、電解用電極4、6は一対の電極により構成されているが、これ以外に、複数の電解用電極が設けられていてもよいものとする。
【0028】
前記撹拌装置7は、本実施例では、撹拌羽根11と、当該撹拌羽根11が一端(下端)に設けられる回転軸12と、回転軸12を回転駆動するための駆動手段としてのモータ13とから構成されている。
【0029】
撹拌羽根11は、貯水槽3内の底面付近に配置され、貯水槽3内に設けられる電解用電極4、6と干渉しない大きさに形成されている。この撹拌羽根11は、回転軸12の下端に設けられてモータ13による回転駆動によって、略水平方向に回転する。モータ13は、貯水槽3の上方の貯水槽3と本体2の吸気口8との間に配置され、本実施例では更に、上方に延在する回転軸12の上端には、送風機10を構成する送風ファン14が設けられている。これにより、送風ファン14は、モータ13と本体の吸気口8との間に配置される。
【0030】
これにより、撹拌羽根11と送風ファン14が単一の回転軸12に設けられることとなり、単一のモータ13を駆動することで、撹拌羽根11及び送風ファン14をそれぞれ貯水槽3内及び貯水槽3上方であって本体2内にて同一方向に回転駆動させることが可能となる。
【0031】
図中16はマイクロコンピュータなどにより構成された制御装置であり、所定の直流電源を有して前記電解用電極4、6への通電の他、送風ファン14及び撹拌羽根11を回転駆動させるモータ13の運転を制御する。
【0032】
以上の構成で、本実施例の空気清浄システム1の動作を説明する。空気清浄システム1に電源が投入されると、制御装置22はモータ13を駆動させて回転軸12を回転させ、当該回転軸12の上下端に設けられる送風ファン14及び撹拌羽根11を回転させる。なお、この際、回転軸12によって回転駆動される送風ファン14と撹拌羽根11とは、必ずしも同一回転数である必要はなく、例えば、回転軸に回転速度を調整可能とするギヤを設け、それぞれに対し、最適な回転数にて回転駆動させてもよい。
【0033】
このとき、モータ13は、貯水槽3の水中に浸漬される撹拌羽根11を水平方向に所定回転数以上で回転することで、撹拌羽根11から生じる遠心力によって貯水槽3の水中に渦を生成する。これにより、貯水槽3の水面の表面積を拡大することができ、室内の空気と貯水槽3内の水との接触面積を拡大することができる。そのため、室内の空気に含まれる汚染物質を効率的に貯水槽3内の水に溶け込ませることができる。特に、渦を生成する撹拌装置7による貯水槽3内の水の撹拌により効果的な汚染物質の水への取り込みを実現することができ、装置の簡素化を図ることが可能となる。
【0034】
ここで、図2及び図3を用いて本願発明による空気清浄能力の実験結果について説明する。図2は空気中に含まれるアセトアルデヒドの処理能力を説明するための実験装置の斜視図、図3は当該実験装置により得られたアセトアルデヒドの濃度変化を示す図である。
【0035】
図2に示す実験装置では、他の空間と実験対象となる空間とを区画する64cm角のアクリルボックス20内にビーカー21を設置し、当該ビーカー21内には水を貯留する。ここでは、貯水槽であるビーカー21内の水を撹拌して渦を生成する撹拌手段としてマグネチックスターラーを使用し、ビーカー21内には、撹拌子22を入れる。そして、このビーカー21の上方には、ビーカー21の水面に向けて空気を吹き付ける送風ファン23を設置する。図2において白抜き矢印で示すように、撹拌子22による撹拌方向と、送風ファン23による撹拌方向は同一方向とする。
【0036】
実験当初、アクリルボックス20内には、アセトアルデヒド濃度が9ppmに調整された空気が収容されている。この状態で、図3に示すように、送風ファン23及びマグネチックスターラーを停止し、アクリルボックス20内のアセトアルデヒド濃度を安定化させ8ppmとした。そして、アクリルボックス20内のアセトアルデヒド濃度が安定した後、送風ファン23のみを運転した。
【0037】
送風ファン23のみによる水面への空気の吹きつけを行うことで、最初の30分間は殆どアセトアルデヒド濃度の低下はみられなかったが、更に、15分後(送風ファン23のみの運転から45分後)のアセトアルデヒド濃度は7ppmにまで低下した。
【0038】
次に、アクリルボックス20内のアセトアルデヒド濃度が7ppmの状態で、マグネチックスターラーによる水の撹拌に加えて、送風ファン23の運転を行った。これによると、アクリルボックス20内のアセトアルデヒド濃度は、15分後には、5ppmにまで低下し、開始から30分後には、4ppmにまで低下した。
【0039】
これによると、空間内において、単に水を撹拌する場合であっても、水面に空気を吹き付ける場合であっても、空間内のアセトアルデヒドを低減させることができるが、これらを併用することで、著しく空間内のアセトアルデヒド濃度の低減を実現することができた。
【0040】
このように、貯水槽3内での渦の形成によって生じる水面上の負圧によって当該空気清浄システム1が設置される室内の空気が吸気口8を介してより効率的に貯水槽3内に取り込むことができる。そのため、室内の空気中に浮遊する化学物質や臭い成分、微生物などの汚染物質は、空気と共に貯水槽3の水中に取り込まれて、清浄化された空気のみが水面上より放出される。
【0041】
そのため、清浄化された状態の空気は、貯水槽3内の水中を上昇し、水面、特に渦による負圧の影響が少ない貯水槽3内壁周辺より放出され、本体2内から排気口9を介して屋内に放出される。これにより、空気清浄システム1が設置される屋内の空気が清浄化され、快適なものとなる。
【0042】
また、本実施例では、貯水槽3と吸気口8との間に位置して、貯水槽3内の水面に室内の空気を吹き付ける送風ファン14が設けられているため、より強制的に室内の汚染物質を含む空気を貯水槽3内の水中に吹き付けることができる。これにより、送風ファン14による水面への空気の吹き付けによる作用と、水面に生成される渦に生じる負圧の作用によって、汚染物質の水中への取り込み効率を向上させることができ、より一層空気中の汚染物質の処理効率を向上させることができる。
【0043】
特に、本実施例では、単一の回転軸12によって、貯水槽3内の水を撹拌し渦を生成する撹拌羽根11と、貯水槽3の水面に向けて空気を吹き付ける送風ファン14とを同一のモータ13によって回転駆動する構成とされているため、貯水槽3内の水面に形成される渦に向けて送風ファン14によって効果的に空気を吹き付けることができる。
【0044】
これにより、水面に形成される渦の水流の方向と、送風ファン14により吹き付けられる空気の流れの方向とを同一とすることができ、より効果的に汚染物質が含まれる空気を水中に取り込ませることが可能となる。
【0045】
他方、制御装置22は前記電解用電極4、6に電源を供給する。この際、正電位が印加される電解用電極4又は6がアノード、負電位が印加される電解用電極6又は4がカソードとなる。また、制御装置22は例えば10分ごとに電解用電極4、6の極性を切り替える。なお、当該電解用電極4、6による貯水槽3内の水の電気化学的処理(電解)を実行する場合には、電解効率の向上を図るため、上記撹拌装置7の回転数は所定値だけ低下させるものとする。そして、汚染物質を含む空気を清浄化した水溶液中には、前述の如く塩化物イオンが200mg/L含有されているため、アノードとなる電解用電極4又は6では、塩化物イオンが電気を放出して塩素を生成する。その後、この塩素は、水溶液に溶解し、次亜塩素酸を生成する。
【0046】
また、当該電解用電極4、6への通電によって行われる貯水槽3内の水の電気化学的処理(電解)によって、活性種(この場合、活性酸素種)が生成される。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を有する酸素分子と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン(・O2-)、一重項酸素(12)、ヒドロキシラジカル(・OH)、あるいは、過酸化水素(H22)といった所謂狭義の活性酸素に、オゾン(O3)、次亜ハロゲン酸等といった所謂広義の活性酸素(活性種)を含むものとする。
【0047】
そのため、上述した如く貯水槽3内の水に取り込まれた空気中の汚染物質は、オゾンや次亜塩素酸などの活性種により酸化分解処理される。これにより、空気中に含まれる汚染物質を円滑に除去することができるようになる。従って、当該水に取り込まれた空気は、汚染物質の除去と共に、殺菌、脱臭処理されて清浄化された状態で、排気口9から室内に放出される。
【0048】
また、活性酸素種によって常に浄化された水を空気清浄に利用することができるようになり、頻繁な水の交換を回避してメンテナンス性を向上させることもできるようになるものである。
【0049】
なお、この場合、貯水槽3内の水は、オゾンや次亜塩素酸などの殺菌能力の高い活性種が含まれていることから、撹拌装置7の撹拌によって水に取り込まれた空気や、送風機10によって吹き付けられて水に取り込まれた空気が再度水面より放出される際に、当該水面にて飛散することで、飛沫に含まれるオゾンや次亜塩素酸などの活性種が送風ファン13や回転軸12上部、本体2内、更には、排気口9から屋内に排出されることになる。これにより、貯水槽3周辺の送風ファン13や回転軸12上部、本体2内などの雑菌の繁殖を防止することができると共に、システム1周囲の空気中に含まれる汚染物質をも分解処理することが可能となる。
【0050】
また、図4に示す如く上記貯水槽3を、例えば透視可能な円筒状(若しくは四角筒状)透明ガラス、或いは、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト、又は、半透明ガラス(不透明)により構成してもよく、この場合、本体2には、当該貯水槽3を外部から視認可能とする透孔2Aを形成してもよい。これにより、貯水槽3内において渦が形成されている様子を外部から視認することができ、装飾としても利用可能である。
【0051】
一方、空気中に含まれる汚染物質のうち、菌やカビ、バクテリアなどはタンパク質にて構成されている。タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンの3つは特定波長の光を吸収して、蛍光を発する性質がある。そして、この蛍光は、当該アミノ酸が分解すると消失する。
【0052】
そのため、上記特定波長、即ち、タンパク質の吸収極大波長を含む波長(トリプトファンは280nm、チロシンは275nm、フェニルアラニンは258nm)を照射する紫外線照射装置25(例えば、紫外LEDなど)を本体2内に設け、当該照射光を貯水槽3の底面から上方に向けて、もしくは、図4に示すように、貯水槽3の後方から照射する。また、この場合、本体2内壁を蛍光や紫外線照射光による汚染物質が溶け込まれた懸濁液の状態が視認しやすい色、例えば黒色にて形成する。
【0053】
これにより、空気中に含まれる汚染物質(菌やカビなどのタンパク質を含む物質)が上述した如く貯水槽3内に取り込まれた状態で、紫外線照射装置25により特定波長が照射されると、貯水槽3内のタンパク質は、係る波長の光を吸収して蛍光を発する。なお、蛍光を生じるアミノ酸のモル吸光係数は、それぞれトリプトファンが5600M-1cm-1、チロシンが1400M-1cm-1、フェニルアラニン200M-1cm-1であり、蛍光極大波長は、それぞれトリプトファンが5600nm、チロシンが1400nm、フェニルアラニン200nmである。
【0054】
従って、上述したように、貯水槽3内に設けられる電解用電極5、6によって次亜塩素酸やオゾンなどの活性種を生成すると、これらタンパク質は、分解処理されて、蛍光が消失する。
【0055】
これにより、貯水槽3内に取り込まれた汚染物質が分解処理される前は、蛍光性を有する物質(この場合タンパク質)が特定の波長を吸収して蛍光を発し、分解処理された後は、当該蛍光が消失するため、貯水槽3内に汚染物質が取り込まれている状態や、分解処理されている状態を視覚的に表現することができるようになる。従って、空気清浄システム1をインテリア等の装飾として利用することができるようになる。
【0056】
なお、図4に示す装置のように、紫外線照射装置25からの照射光と貯水槽3内に取り込まれた汚染物質からの蛍光の光路が同一である場合には、両者が重なり、蛍光を視覚的に認識しがたくなるため、当該透孔2Aに照射光を遮断するバンドパスフィルター2Bを設けてもよい。これ以外にも紫外線照射装置25を透孔2Aが形成される面に対し、例えば、直交方向に設けることで、紫外線の照射方向と透孔2Aより視認される蛍光の光路とが重なる不都合を回避してもよい。
【0057】
なお、図5には、電解による汚染物質の蛍光消失についての実験結果を示す。当該実験では、汚染物質として大腸菌を使用し、所定濃度の大腸菌3mlを12mlの水に添加して、大腸菌懸濁液を作製する。当該大腸菌懸濁液は、酸化タンタル電極により構成されるアノードと、白金電極により構成されるカソードを用いて電気化学的処理(電解)を行う。なお、これらの極間距離を2mm、これら電極の面積を4cm2とし、電流値100mA(電流密度25mA/cm2)、印加電圧12Vとする。そして、当該大腸菌懸濁液の吸収極大波長は286nmであり、蛍光極大波長は350nmとして、電解時間に対する相対蛍光度の変化を得た。
【0058】
これによると、電解処理開始時点では、当該大腸菌懸濁液の相対蛍光度は81程度であったが、当該大腸菌懸濁液が電解処理されることにより、生成される次亜塩素酸やオゾンなどによって大腸菌が酸化分解処理され、電解開始から5分経過後には、相対蛍光度が28程度にまで低下し、15分経過後には、相対蛍光度が10以下となった。
【0059】
このように、多くの汚染物質が貯水槽3内に取り込まれている状態では、これに含まれる自家蛍光性を有する物質は、紫外線照射装置25からの照射光によって蛍光として可視化することができる。また、電解用電極4、6への通電によって、貯水槽3に取り込まれた汚染物質の分解状態を、当該蛍光の消失によって視覚的に表現することが可能となる。これにより、空気清浄システム1のインテリア等の装飾としての利用価値を向上させることができる。
【0060】
なお、上記実施例では、貯水槽3内の水を撹拌することにより渦を生成する撹拌装置7を一台のみ設けた例について説明しているが、これに限定されるものではなく、図6に示すように貯水槽3内に複数の円筒形状の仕切部材26を設けて複数の撹拌室27を構成し、各撹拌室27内のそれぞれに渦を生成する撹拌装置7を設けてもよい。
【0061】
これにより、それぞれの撹拌室27内にて渦を生成することで、貯水槽3内に複数の渦を生成することが可能となり、更に水面の表面積を拡大することができる。また、それぞれの渦は、仕切部材26により区画される撹拌室27内に生成されるため、それぞれの渦が干渉することで撹拌効率が低下する不都合を回避することができる。これにより、空気中の汚染物質の処理効率の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施例では、撹拌装置7としてモータ13により回転駆動される撹拌羽根11により構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、上述したようなマグネチックスターラーにより構成してもよい。これにより、より装置内部の構成を簡素化することができ、生産性の向上や、装置全体の外観の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】空気清浄システムの構成を示す斜視図である。
【図2】本願発明による空気清浄能力の実験装置の斜視図である。
【図3】実験装置により得られたアセトアルデヒドの濃度変化を示す図である。
【図4】他の実施例としての空気清浄システムの概略構成図である。
【図5】電解による汚染物質の蛍光消失についての実験結果を示す図である。
【図6】他の実施例としての空気清浄システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 空気清浄システム
2 本体
2A 透孔
3 貯水槽
4、6 電解用電極
7 撹拌装置(撹拌手段)
8 吸気口
8A プレフィルタ
9 排気口
10 送風機(送風手段)
11 撹拌羽根
12 回転軸
13 モータ(駆動手段)
14 送風ファン
16 制御装置
20 アクリルボックス
21 ビーカー
22 撹拌子
23 送風ファン
25 紫外線照射装置
26 仕切部材
27 撹拌室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中に含まれる汚染物質を処理するための空気清浄システムであって、
水を貯留し、水面を前記空気に接触させて成る貯水槽と、
該貯水槽内の水を撹拌することにより渦を生成する撹拌手段とを備え、
前記貯水槽内の水中に前記空気中の汚染物質を取り込むことを特徴とする空気清浄システム。
【請求項2】
前記貯水槽内を複数の撹拌室に区画する仕切部材を備え、各撹拌室内に前記撹拌手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄システム。
【請求項3】
前記貯水槽内の水を電気化学的に処理することにより、水中に活性酸素種を生成する電解手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気清浄システム。
【請求項4】
前記貯水槽内の水面に前記空気を吹き付ける送風手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の空気清浄システム。
【請求項5】
単一の回転軸により前記撹拌手段及び送風手段を回転駆動するモータを備えたことを特徴とする請求項4に記載の空気清浄システム。
【請求項6】
前記貯水槽は透視可能であり、当該貯水槽内の水に紫外線を照射する紫外線照射手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の空気清浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−201920(P2009−201920A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49871(P2008−49871)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】