説明

空気清浄フィルタ、空気清浄フィルタの製造方法、空気清浄フィルタを用いた空気清浄機

【課題】 従来の集塵フィルタと光触媒フィルタとの機能を一のフィルタに持たせ、空気清浄機の小型化に寄与し得る空気清浄フィルタやこれを用いた空気清浄機を提供する。
【解決手段】 多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる不織布2の繊維の表面に光触媒層が形成され、光触媒層は、結晶形が無定形の酸化チタン層4上に、結晶形がアナタースの酸化チタン層5が形成されている。空気流路中に空気清浄フィルタ1を配設することで、従来の集塵フィルタと光触媒フィルタとの機能を一のフィルタに持たせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いた空気清浄フィルタ、この空気清浄フィルタの製造方法、及びこの空気清浄フィルタを用いた空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、紫外光を吸収することによって、有機物を酸化分解する特性を有することから、脱臭、除菌等の機能を備えた空気清浄機に用いられている。この種の空気清浄機にあっては、例えば、集塵フィルタに加え、更に、ハニカム状の光触媒フィルタを設けるようにしている(特許文献1参照)。このように、光触媒フィルタを用いた空気清浄機は、集塵フィルタに加え、更に、光触媒フィルタをケース本体内に配設する必要があることから、更なる小型化が困難である。
【0003】
また、光触媒の効果は、比表面積×光触媒担持量×紫外線量×空気流量で決まる。上述した光触媒フィルタは、整流作用を持たせるために、ハニカム状に形成されており、光触媒が担持される領域も限られている。したがって、ハニカム状の光触媒フィルタを用いたときには、更に、光触媒担持量を増やして、光触媒の効果を高めることも困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2004−160374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の集塵フィルタと光触媒フィルタとの機能を一のフィルタに持たせ、空気清浄機の小型化に寄与し得る空気清浄フィルタ及びこの空気清浄フィルタの製造方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、更なる脱臭、殺菌等の光触媒効果の向上を図ることができる空気清浄フィルタ及びこの空気清浄フィルタの製造方法を提供することにある。
【0007】
更に、本発明の目的は、以上のような空気清浄フィルタを用いることで全体の小型化を図りつつ、脱臭、殺菌等の光触媒効果の向上を図ることができる空気清浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気清浄フィルタは、多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体の繊維の表面に光触媒層が形成されてなる。ここで、光触媒層は、結晶形が無定形の第1の酸化チタン層上に、結晶形がアナタースの第2の酸化チタン層が形成されてなる。
【0009】
以上のような空気清浄フィルタは、多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体を、結晶形が無定形の酸化チタンの溶液に浸漬し、乾燥させた後、結晶形がアナタースの酸化チタンの溶液に浸漬し、乾燥させることにより、製造することができる。
【0010】
以上のような空気清浄フィルタを用いた空気清浄機は、一方の側に吸気口が設けられ、この吸気口と略反対の他方の側に排気口が設けられたケース本体と、上記ケース本体に上記吸気口から上記排気口への空気流路を形成する送風手段と、多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体の繊維の表面に光触媒層が形成されてなり、上記ケース本体内の上記空気流路中に配設される空気清浄フィルタと、上記ケース本体内に設けられ、上記光触媒層に光触媒反応させる光源とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体の繊維の表面に光触媒層が形成されてなることから、空気流中に配置することで、光触媒フィルタの機能に加え、塵埃等を絡ませることで集塵フィルタとして機能させることができる。したがって、本発明に係る空気清浄機の小型化を図ることができる。また、繊維表面に光触媒層が形成されていることで、光触媒の比表面積を高め、光触媒の担持量を増やすことができ、より光触媒効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した空気清浄フィルタ及びこの空気清浄フィルタを用いた空気清浄機を図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明を適用した空気清浄フィルタ1は、多数の微小間隙を形成するように合成樹脂繊維を交絡させてなる繊維集合体、すなわち不織布2によって形成され、全体がウール状をなしている。この空気清浄フィルタ1では、具体的に、不織布2として、ナイロンとポリエステルの混合不織布やポリエステルとアクリルの混合不織布を用いる。これらの合成樹脂繊維で形成された不織布2は、弾性変形後、元の形にもどり易く、嵩高性に優れている。したがって、このような不織布は、通気性や液体浸透性に優れている。ここでは、厚さが1cm又は2cm程度の不織布2を用いるようにしている。
【0014】
本発明を適用した空気清浄フィルタ1では、このような不織布を、結晶形が無定形の酸化チタンの溶液に浸漬し、乾燥させた後、結晶形がアナタースの酸化チタンの溶液に浸漬し、乾燥させることにより、製造される。これにより、図2(A)及び図2(B)に示すように、不織布を構成する合成樹脂繊維3上には、下地層として、結晶形が無定形の第1の酸化チタン層4が形成され、無定形の第1の酸化チタン層4上に、光活性の結晶形がアナタースの第2の酸化チタン層5が形成されることになる。この空気清浄フィルタ1では、基材となる合成樹脂繊維3が有機物であることから、下地層に、光活性のない結晶形が無定形の第1の酸化チタン層4を設けることによって、合成樹脂繊維3の長期耐久性が向上するようにしている。また、これらの第1及び第2のチタン層4,5は、共に中性で、合成樹脂繊維3が劣化しないようにしている。
【0015】
ここで、製造に当たって、最初に、不織布2が浸漬される結晶形が無定形の酸化チタンの溶液は、媒体が水であり、不織布2全体が、この溶液に浸漬される。これにより、不織布2には、内部にまで結晶形が無定形の酸化チタンの溶液が浸透し、不織布2を構成するほぼ全ての合成樹脂繊維3の表面に、下地層となる第1の酸化チタン層4が形成されることになる。不織布2は、結晶形が無定形の酸化チタンの溶液に浸漬された後、例えば常温乾燥されることにより、合成樹脂繊維3の表面に下地層となる第1の酸化チタン層4が形成されることになる。
【0016】
次いで、下地層となる第1の酸化チタン層4が形成された不織布2は、結晶形がアナタースの酸化チタンの溶液に浸漬される。ここで用いられる結晶形がアナタースの酸化チタンの溶液も媒体が水である。これにより、この溶液は、下地層となる第1の酸化チタン層4が形成された不織布2の内部にまで浸透し、第1の酸化チタン層4上に、光活性の第2の酸化チタン層5が形成されることになる。この後、第2の酸化チタン層5が形成された不織布2は、常温乾燥され、かくして、空気清浄フィルタ1が製造される。
【0017】
結晶形が無定形で水が媒体で中性の酸化チタンの溶液としては、例えば、テイカ株式会社製の光触媒用酸化チタンTKC−301があり、また、結晶形がアナタースで水が媒体で中性の酸化チタンの溶液としては、例えば、テイカ株式会社製の光触媒用酸化チタンTKC−304がある。これらの溶液は、媒体を水とすることから、取り扱いが容易であり、極めて容易に空気清浄フィルタ1を製造することができる。
【0018】
以上のような空気清浄フィルタ1では、不織布2が多数の微小間隙を形成するように合成樹脂繊維3を交絡させてなり液体の浸透性に優れ、第1及び第2のチタン層4,5が不織布2の表面のみならず内部の合成樹脂繊維3上にも形成されることになる。したがって、空気清浄フィルタ1では、光触媒、すなわち光活性の第2のチタン層5の比表面積や担持量を増やすことができ、光触媒効果を向上させることができる。また、この空気清浄フィルタ1は、不織布2が多数の微小間隙を形成していることから、通気性に優れ、第2の酸化チタン層5との接触する空気流量を増やすことができ、更に、外部から照射される紫外光も内部の第2の酸化チタン層5に照射することができ、この点においても、光触媒効果を高めることができる。更に、この空気清浄フィルタ1は、多数の微小間隙を形成するように合成樹脂繊維3を交絡させ通気性を有するように形成されていることから、空気流路中に配置することで、塵埃等を絡ませることができ、集塵フィルタとしても機能させることができる。更に、また、空気清浄フィルタ1は、合成樹脂繊維3を交絡させて形成されていることから、加工しやすく様々な空気清浄機に用いることができる。そして、以上のような空気清浄フィルタ1は、集塵フィルタとしての機能と光触媒フィルタとしての機能を兼ね備えることから、空気清浄フィルタ1が設置される空気清浄機の小型化に寄与することができる。
【0019】
以上のような空気清浄フィルタ1の効果確認として、下記表1のような実験を行った。
【0020】
サンプル1乃至サンプル3は、本発明を適用した空気清浄フィルタ1であり、サンプル1は、ナイロンとポリエステルの混合不織布であり、サンプル2は、ポリエステルとアクリルの混合不織布(薄め)であり、サンプル3は、ポリエステルとアクリルの混合不織布(厚め)である。これらサンプル1乃至サンプル3の不織布には、各不織布を、上述のように、結晶形が無定形で水が媒体で中性の酸化チタンの溶液としてテイカ株式会社製の光触媒用酸化チタンTKC−301に浸漬させた後、自然乾燥させ、次いで、結晶形がアナタースで水が媒体で中性の酸化チタンの溶液として、テイカ株式会社製の光触媒用酸化チタンTKC−304に浸漬させた後、自然乾燥させ、合成樹脂繊維3上に上述のような2層のチタン層4,5を形成したものである。
【0021】
また、サンプル4は、比較例であり、ガラスウールに、サンプル1乃至サンプル3と同様な方法で2層のチタン層4,5を形成したものである。
【0022】
また、サンプル5は、比較例であり、カーリングされたステンレスリボンの表面に酸化チタンを焼成して光触媒層を形成したスチールウールである。
【0023】
また、評価条件は次の通りである。
【0024】
ガス/濃度:メチルメルカプタンガス/70ppm
容器 :3Lにおい袋
照射面席 :100cm(10×10cm)
光源 :40Wブラックライト
ブラックライト 1.0mW/cm((株)トプコン製UVR−2にて 測定)
測定 :ガス検知管No.71
なお、サンプル6は、サンプルを容器に何も入れないものである。
【0025】
【表1】

【0026】
ここで、評価項目であるガス減少速度定数(k)は、次のように算出される。
【0027】
ktx=In(Co/Cx)
tx=照射時間(時間)、Co=暗所後のガス濃度(ppm)、Cx=照射時間後のガス濃度(ppm)
すなわち、ガス減少速度定数(k)は、照射時間txに対するIn(Co/Cx)の近似直線の傾きであり、高いほど光触媒効果が高いとみなすことができる値である。
【0028】
表1から明らかなように、本発明を適用したサンプル1乃至サンプル3は、ガス減少速度定数が比較例となるサンプル4及びサンプル5より高いことが分かる。
【0029】
次に、以上のような空気清浄フィルタ1を用いた空気清浄機10について図3を参照して説明する。
【0030】
本発明を適用した空気清浄機10は、例えば、病院等のベッドの傍らに設置される床頭台の収納部に設置可能なように略扁平で矩形をなすように形成されている。この空気清浄機10は、略扁平で矩形をなすケース本体11を有する。このケース本体11には、空気清浄機10が設置される床頭台の前面側に対応させて吸気口12が設けられ、床頭台の背面側に対応させて排気口13が設けられている。
【0031】
吸気口12には、不織布等で形成されたケース本体10内に塵埃が入らないようにするための集塵フィルタカートリッジ14が設けられている。なお、この集塵フィルタカートリッジ14は、この空気清浄機10では上述した空気清浄フィルタ1を用いることから必ずしも必要ではない。また、図示しないが、ケース本体11の前面には、操作部が設けられている。また、排気口13の手前には、外気を吸引するためのプロペラファン等で構成された送風機15が設けられている。送風機15は、ケース本体11内に、吸気口12から排気口13への空気流路を形成する。この排気口13は、ケース本体11の背面に設ける他、背面側底面に設けるようにしても良い。
【0032】
ケース本体11には、更に、本発明を適用した空気清浄フィルタ1が配設されている。この空気清浄フィルタ1は、上述のように、不織布を構成する合成樹脂繊維3上に、下地層として、結晶形が無定形の第1の酸化チタン層4が形成され、無定形の第1の酸化チタン層4上に、光活性の結晶形がアナタースの第2の酸化チタン層5が形成されてなるものである。この空気清浄フィルタ1は、図示しない略矩形のフレームに保持されてケース本体11内の所定位置に取り付けられている。この空気清浄フィルタ1は、ここでは、互いに平行に離間して3つ設けられている。
【0033】
ケース本体11内には、隣り合う空気清浄フィルタ1の間には、空気清浄フィルタ1の第2の酸化チタン層5に光触媒反応させる光源16が設けられている。光源としては、LED等でもよいが、ここでは、紫外光を発光する蛍光灯型、陰極線型等の紫外線発生器を用いるようにしている。光源16は、光触媒である第2の酸化チタン層5が反応する波長の光を発光し、例えば300nm〜400nm程度の紫外光を発光する。光源16か出射された紫外光は、空気清浄フィルタ1の内部まで不織布2の微小間隙を等して光活性の第2のチタン層5に照射されることになる。ここで、空気清浄フィルタ1の厚さは、光源16から出射された紫外光が反対側にまで届く程度の厚さで、内部を空気流が透過できる程度の厚さに設定されている。これにより、空気清浄フィルタ1を、集塵フィルタして機能させつつ、表面の第2の酸化チタン層5のみならず内部の第2の酸化チタン層5にも光触媒反応を発現させることができる。
【0034】
なお、この光源16は、空気清浄フィルタ1の間に配設されることで、吸気口12や排気口13から紫外光が漏れることが防止されれている。更に、紫外光が外部に漏れることを防止するために、ケース本体11内の吸気口12及び/又は排気口13の設けられた箇所に、遮光板18,19を設けるようにしても良い。
【0035】
また、ケース本体11の内面には、空気清浄フィルタ1を通過した紫外光を反射する反射板17が設けられている。この反射板17は、紫外光を空気清浄フィルタ1側に反射して、反射した紫外線を空気清浄フィルタ1の第2のチタン層5に照射する。これによって、交活性の第2の酸化チタン層5の光触媒反応を更に効果的にすることができる。なお、ケース本体11を紫外光を反射する金属板で形成して、反射板17を省略しても良い。
【0036】
以上のように構成されてなるケース本体11は、光源16を点灯することによって、空気清浄フィルタ1の光活性の第2の酸化チタン層5に紫外光が照射される。これにより、光源16から出射された紫外光、反射板17で反射された紫外光は、空気清浄フィルタ1の表面のみならず微小間隙を通して内部にまで照射され、空気清浄フィルタ1の表面及び内部の第2の酸化チタン層5に光触媒効果を発現させることができる。
【0037】
そして、送風機15が駆動すると、外気は、ケース本体11の前面の吸気口12より吸引され、集塵フィルタカートリッジ14で集塵された後、空気清浄フィルタ1内に流入し、空気清浄フィルタ1を通過し、ケース本体85の排気口13より排気される。空気清浄フィルタ1では、吸気口12より吸引した外気に含まれる塵埃等を除去することができると共に、空気清浄フィルタ1の光触媒である第2の酸化チタン層5に外気に含まれる有機物が接触することにより、脱臭等を行うこともできる。そして、空気清浄された空気は、排気口13より排気されることになる。
【0038】
以上のように構成された空気清浄機10では、空気清浄フィルタ1を用いる。この空気清浄フィルタ1は、不織布2が多数の微小間隙を形成するように合成樹脂繊維3を交絡させ、表面のみならず内部にも光活性の第2の酸化チタン層5が設けられていることから、光触媒の比表面積や担持量を増やすことができ、光触媒効果を向上させることができる。また、この空気清浄フィルタ1は、不織布2が多数の微小間隙を形成していることから、通気性に優れ、第2の酸化チタン層5との接触する空気流量を増やすことができ、更に、外部から照射される紫外光も内部の第2の酸化チタン層5に照射することができ、この点においても、光触媒効果を高めることができる。更に、この空気清浄機10は、多数の微小間隙を形成するように合成樹脂繊維3を交絡させ通気性を有するように形成されていることから、塵埃等を絡ませることができ、集塵フィルタとしても機能させることができる。そして、空気清浄フィルタ1は、簡易な構成であることから、容易に交換することができる。空気清浄機1は、空気清浄フィルタ1が集塵フィルタと光触媒フィルタの機能を兼ね備えることから、集塵フィルタと光触媒フィルタとを別部材で設置する必要が無くなり、全体として小型化することができる。
【0039】
なお、この空気清浄機10は、扁平で略矩形をなすように形成されていることから、床頭台の他にも種々の収納装置に収納して用いることができる。
【0040】
更に、上述した空気清浄フィルタ1は、図4に示すような空気清浄機20に用いることができる。
【0041】
本発明を適用した空気清浄機20は、略矩形のケース本体21を有し、このケース本体21内に、空気清浄を行うための構成部品が配設されている。具体的に、このケース本体21は、側面を構成する側壁部21aと、上面を閉塞する上面部21bと、底面を閉塞する底面部21cとで構成されている。側壁部21aの下側には、外気を吸引するための貫通孔22aが形成されていると共に、側壁部21aの下側で底上げされた底面部21cには、貫通孔22aからの空気を吸引する吸気口22bが形成されている。また、上面部21bには、清浄した空気を排出する排気口23が形成されている。
【0042】
吸気口22bは、底上げされた底面部21cの略中央部に、下方に向かって形成された筒部22cの先端部に設けられており、ケース本体21内に塵埃が入らないようにするための集塵フィルタ21dが設けられている。
【0043】
ケース本体21内には、筒部22cの内側に、外気を吸引するための送風機24が設けられている。ここで、送風機24としては、大きな風量を得ることができるプロペラファンが用いられている。
【0044】
ケース本体21の底面部21cであって筒部22cと連続する開口部25には、本発明を適用した空気清浄フィルタ1のカートリッジ26が配設されている。カートリッジ26は、フレーム27によって、本発明が適用された空気清浄フィルタ1が保持されることによって構成されている。フレーム27は、上下一対の固定部27a,27bの間に、略筒状の骨組みが設けられ、この骨組みには、本発明を適用した空気清浄フィルタ1が所定の厚さに絡まされ保持されている。ここで、空気清浄フィルタ1の厚さは、光源から出射された紫外光が透過でき、更に、内部を空気流が透過できる程度に設定されている。これにより、集塵フィルタして機能させつつ、内部の第2の酸化チタン層5にも光触媒反応を発現させることができる。更に、空気清浄フィルタ1を透過し反射板によって反射された紫外光を、光源とは反対側から空気清浄フィルタ1に照射することができる。
【0045】
空気清浄フィルタ1は、合成樹脂繊維3を交絡させてなる不織布2であることから、フレーム27の骨組みにも容易に絡ませることができる。そして、空気清浄フィルタ1は、フレーム27の骨組みに保持されることで、ケース本体21の底面部21cの開口部25上に略筒状をなすように配設される。すなわち、空気清浄フィルタ1が取り付けられたカートリッジ26は、内部の略筒状の中空部がケース本体21の吸気口22bと直列に並び、吸気した外気を、中空部に効率よく流入させることができるようにしている。
【0046】
このカートリッジ26は、フレーム27の一方の固定部27aをケース本体21の底面部21cに固定し、他方の固定部27bに風向制御板28が取り付けられる。具体的に、風向制御板28は、フレーム27に略筒状に取り付けられた空気清浄フィルタ1の上面を略閉塞するようにして取り付けられる。ケース本体21の底面部21cの開口部25には、送風機24が配設され、吸気口22bから吸気された空気は、ケース本体21内を上面部21bに向かって流れる。風向制御板28は、送風機24で吸気された空気が当たることで、風向が周囲の空気清浄フィルタ1が配設されている方向に変わるようする。カートリッジ26は、不織布2を多数の微小間隙を形成するように合成樹脂繊維3を交絡させて構成されていることから、ここを風向制御板28で風向の変えられた空気流が通過するとき、塵埃を絡ませ保持することができる。
【0047】
カートリッジ26の内側には、図1に示すように、LEDである光源29が配設されている。光源29は、風向制御板28の略中央部に取り付けられた取付軸29aにリード線29bを巻き付けることによって、カートリッジ26の内側から空気清浄フィルタ1に紫外線を照射できるように保持されている。この光源29は、光触媒16cが反応する波長が300nm〜400nm程度の紫外線を発光する。なお、光源としては、紫外光を発光する蛍光灯型、陰極線型等の紫外線発生器でも良いが、ここでは、上述した空気清浄機10と異なり、高寿命、省電力のLEDを用いた。
【0048】
また、カートリッジ26の外側には、カートリッジ26を通過した紫外線を反射する反射板31が設けられている。この反射板31は、紫外光がカートリッジ26を介してケース本体21の内面に間で達したとき、更に、この紫外光をカートリッジ26側に反射して、反射した紫外線を空気清浄フィルタ1に照射する。これによって、光触媒である第2の酸化チタン層5の反応を更に効果的にすることができる。なお、底面部21cの内面や上面部21bの内面にも、反射板31を設けるようにしても良い。
【0049】
以上のように構成されてなるケース本体21は、光源29を点灯することによって、空気清浄フィルタ1の光活性の第2の酸化チタン層5に紫外光が照射される。これにより、光源16から出射された紫外光、反射板17で反射された紫外光は、空気清浄フィルタ1の表面のみならず微小間隙を通して内部にまで照射され、空気清浄フィルタ1の表面及び内部の第2の酸化チタン層5に光触媒効果を発現させることができる。そして、送風機24が駆動すると、外気は、ケース本体21の下側の吸気口22bより吸引され、集塵フィルタ21dで集塵された後、カートリッジ26内に流入し、風向制御板28によって風向が外側に変えられた後、空気清浄フィルタ1を通過し、ケース本体21の上側の排気口23より排気される。空気清浄フィルタ1では、吸気口22bより吸引した外気に含まれる塵埃等を除去することができると共に、光活性の第2の酸化チタン層5に外気に含まれる有機物が接触することにより、脱臭等を行うこともできる。そして、排気口23より排気される空気清浄された空気は、更に、ケース本体21の上側に配設される排気口23より排気される。
【0050】
以上のように構成された空気清浄機20では、空気清浄フィルタ1を用いることから、上述した空気清浄機10と同様な効果を得ることができる。なお、ケース本体21は、送風機24の送風方向を切り換える切換スイッチを設け、送風機24の回転方向を切り換えることができるようにし、下側の吸気口22bから外気を吸気し上側の排気口23から空気清浄された空気を排気する他に、上側の排気口23から吸気して下側の吸気口22bから排気できるようにしても良い。この場合、排気口23が吸気口にもなることから、排気口23に集塵フィルタカートリッジを設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用した空気清浄フィルタの斜視図である。
【図2】(A)は空気清浄フィルタを構成する合成樹脂繊維の斜視図であり、(B)は、その断面図である。
【図3】上記空気清浄フィルタを使用した本発明を適用した空気清浄機の側面図である。
【図4】本発明を適用した空気清浄機の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 空気清浄フィルタ、2 不織布、3 合成樹脂繊維、4 第1の酸化チタン層、5 第2の酸化チタン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体の繊維の表面に光触媒層が形成されてなる空気清浄フィルタ。
【請求項2】
上記光触媒層は、結晶形が無定形の第1の酸化チタン層上に、結晶形がアナタースの第2の酸化チタン層が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の空気清浄フィルタ。
【請求項3】
多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体を、結晶形が無定形の酸化チタンの溶液に浸漬し、乾燥させた後、結晶形がアナタースの酸化チタンの溶液に浸漬し、乾燥させる空気清浄フィルタの製造方法。
【請求項4】
一方の側に吸気口が設けられ、この吸気口と略反対の他方の側に排気口が設けられたケース本体と、
上記ケース本体に上記吸気口から上記排気口への空気流路を形成する送風手段と、
多数の微小間隙を形成するように繊維を交絡させてなる繊維集合体の繊維の表面に光触媒層が形成されてなり、上記ケース本体内の上記空気流路中に配設される空気清浄フィルタと、
上記ケース本体内に設けられ、上記光触媒層に光触媒反応させる光源とを備える空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−223939(P2006−223939A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37702(P2005−37702)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(506059469)株式会社文教 (1)
【Fターム(参考)】