説明

空気清浄化装置

【課題】NOxに関する高い除去効率を長期間にわたって維持する。
【解決手段】空気清浄化装置10は、ケーシング11と、ファン28と、活性炭を含む活性炭系ケミカルフィルタ24と、空気に水を接触させて空気中の水溶性の分子状汚染物質を除去する湿式除去機25とを備えている。ケーシング11内には、上流側から順に、活性炭系ケミカルフィルタ24、湿式除去機25、ファン28が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を清浄化する一以上のフィルタを備えている外調機等の空気清浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工場や液晶工場等では、空気に含まれている分子状汚染物質が外部から侵入するのを防ぐ必要がある。そこで、これらの工場では、外部からの空気を清浄化する外調機が設置されている。
【0003】
外調機としては、例えば、以下の特許文献1に記載のものがある。この外調機は、ケーシングと、このケーシング内の配置されている各種フィルタ等を備えている。ケーシング内には、上流側から順に、プレフィルタ、プレヒートコイル、エアワッシャー、冷却コイル、ファン、再加熱コイル、中性能フィルタ、ケミカルフィルタ、高性能フィルタが配置されている。
【0004】
その他、空気を清浄化するシステムとしては、例えば、以下の特許文献2に記載されたものもある。このシステムは、汚染物質を含む空気に水を接触させて、この空気中の汚染物質を除去する湿式汚染物質除去装置と、この下流側に配置されているケミカルフィルタと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−236421号公報
【特許文献2】特開2000−33221号公報 図8、図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載の装置のように、空気を清浄化する多くの装置では、ケミカルフィルタや高性能フィルタ等の高価なフィルタの負荷を少なくするため、これらのフィルタを空気流の下流側に配置し、プレフィルタや、エアワッシャー又は湿式汚染物質除去装置を空気流の上流側に配置している。
【0007】
ところで、分子状汚染物質の中にはNOxがある。このNOxは、その多くが上記装置中のケミカルフィルタで除去される。しかしながら、上記特許文献1,2に記載の装置では、NOxの除去効率があまり高くない上に、比較的短い使用期間でNOxの除去効率が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、NOxに関する高い除去効率を長期間にわたって維持することができる空気清浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための発明に係る空気清浄化装置は、
空気を清浄化する一以上のフィルタを備えている空気清浄化装置において、前記一以上のフィルタが内部に配置され、空気を取り入れる吸気口、及び該一以上のフィルタにより清浄化された空気を吹き出す吹出し口が形成されているケーシングと、前記ケーシング内に配置され、該ケーシング内を通る前記空気に水を接触させて、該空気中の水溶性の分子状汚染物質を除去する湿式除去機を備え、前記一以上のフィルタのうち、一のフィルタは、活性炭を含む活性炭系フィルタであり、該活性炭系フィルタは、前記ケーシング内の前記湿式除去機よりも前記吸気口側の上流側に配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
大気中のNOxは、主として、NOとNOで構成されている。このNOとNOとの比率は、温度や天候等により変化するが、基本的に、NOx中の比率はNOの方が高い。活性炭系ケミカルフィルタは、NOとNOとのうち、NOを効率的に除去するが、時間経過に伴ってこのNOの吸着量が増加して、この吸着量が一定以上になると、吸着したNOの一部をNOとして離脱させてしまう。また、活性炭系フィルタは、NOx中のNOの比率を高め、NOの比率を低くする。
【0011】
当該空気清浄化装置では、活性炭系フィルタを通過した空気は、湿式除去機で水と接触して、NOxの一部を含む水溶性汚染物質が除去される。
【0012】
NOxは、活性炭系フィルタを通過すると、前述したように、NOx中のNOの比率が高まり、水に吸収しやすくなる。このため、当該空気清浄化装置では、ケーシング内に取り込まれた空気中のNOxは、活性炭系フィルタを通過することで、湿式除去機で効率的に除去される。さらに、当該空気清浄化装置では、活性炭系フィルタのNOの吸着量が一定以上になって、吸着したNOの一部がここからNOとして離脱しても、このNOは、活性炭系フィルタを通過したNOと共に湿式除去機で除去される。
【0013】
よって、当該空気清浄化装置によれば、長期間にわたって、NOxを高効率で除去することができる。
【0014】
ここで、前記空気清浄化装置において、前記ケーシング内の前記湿式除去機よりも下流側に配置され、前記吸気口から空気を該ケーシング内に取り入れて、前記吹出し口から空気を吹き出すためのファンを備えてもよい。
【0015】
当該空気清浄化装置では、ファンが活性炭系フィルタ及び湿式除去機よりも下流側に配置されているので、ファンに至る空気中には、ケミカル汚染物質が極めて少なくなり、ケミカル汚染物質によるファンの腐食を抑えることができる。
【0016】
また、前記空気清浄化装置において、前記活性炭系フィルタの前記活性炭は、ヤシガラ活性炭であってもよい。
【0017】
ヤシガラ活性炭は、他の活性炭に比べて安価である。このため、このヤシガラ活性炭を用いることにより、空気清浄化装置のコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、長期間にわたって、NOxを高効率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る一実施形態における空気清浄化装置の構成を示す説明図である。
【図2】参考例としての空気清浄化装置の構成を示す説明図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における空気清浄化装置と参考例の空気正常化装置のNOx除去性能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る空気清浄化装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
本実施形態の空気清浄化装置は、外気中の汚染物質を除去すると共に、外気の温度及び湿度を調節する外調機である。図1に示すように、この空気清浄化装置10は、空気を取り入れる吸気口12及び空気を吹き出す吹出し口13が形成されているケーシング11と、このケーシング11内に配置されている各種フィルタ等と、このケーシング11内に配置され、吸気口12からケーシング11内に空気を取り入れて吹出し口13から空気を吹き出すためのファン28と、を備えている。
【0022】
ケーシング11内には、吸気口12側の上流側から順に、外部から入ってきた空気を予備的にろ過するプレフィルタ21、プレフィルタ21より捕集効率の高い中性能フィルタ22、空気を加熱する温水コイル23、空気中の分子状汚染物質(ケミカル汚染物質)を除去する活性炭系ケミカルフィルタ24、ケーシング11内の空気流路を遮るように水膜を形成して、空気中の水溶性汚染物質等を除去する水膜式加湿機25、空気を冷却する冷水コイル26、空気を再び加熱する再熱コイル27、前述のファン28、高性能フィルタ(HEPA (High Efficiency Particulate Air))29が配置されている。プリフィルタ21としては、例えば、捕集効率が50〜85%のもの、中性能フィルタ22としては、捕集効率が60〜95%程度のもののうちプレフィルタ21よりも捕集効率の高いものを用いる。
【0023】
活性炭系ケミカルフィルタ24は、ヤシガラ活性炭を含み、分子状汚染物質を除去する。なお、ここでは、活性炭として、ヤシガラ活性炭を用いているが、この替わりに、他の植物系活性炭、石炭質系活性炭、石油質系活性炭等を用いてもよい。但し、ヤシガラ活性炭は、他の活性炭と異なり、製造段階で造粒工程等が不要であり低価格であるため、活性炭系ケミカルフィルタ24の活性炭としてはヤシガラ活性炭を用いることが好ましい。
【0024】
水膜式加湿機25は、ある程度水を保持し得る媒体を有し、この媒体中に水を供給し、水で湿った媒体中に空気を通過させることで、空気中の水溶性汚染物質を除去すると共に、空気中の粒子の一部を除去する。なお、ここでは、湿式除去機として、水膜式加湿機25を用いているが、空気と水とを接触させるものであれば如何なる方式の湿式除去機でもよく、例えば、スプレーノズルを有し、このスプレーノズルから水を膜状に噴霧するエアワッシャーを用いてもよい。
【0025】
吸気口12からケーシング11内に取り入れられた空気は、プレフィルタ21、中性能フィルタ22を通過して、ここで、空気中の粉塵の多くが捕集される。プレフィルタ21及び中性能フィルタ22を通過した空気は、温水コイル23で加熱された後、活性炭系ケミカルフィルタ24で、NOxを含む分子状汚染物質が除去される。
【0026】
大気中のNOxは、主として、NOとNOで構成されている。このNOとNOとの比率は、温度や天候等により変化するが、基本的に、NOx中の比率はNOの方が高い。活性炭系ケミカルフィルタ24は、NOとNOとのうち、NOを効率的に除去する。さらに、活性炭系ケミカルフィルタ24は、NOx中のNOの比率を高め、NOの比率を低くする。
【0027】
活性炭系ケミカルフィルタ24を通過した空気は、水膜式加湿機25で水と接触して、NOxの一部を含む水溶性汚染物質が除去される。
【0028】
NOxは、活性炭系ケミカルフィルタ24を通過すると、前述したように、NOx中のNOの比率が高まり、水に吸収しやすくなる。このため、ケーシング11内に取り込まれた空気中のNOxは、この水膜式加湿機25で効率的に除去される。また、活性炭系ケミカルフィルタ24は、前述したように、NOを効果的に除去するものの、時間経過に伴ってこのNOの吸着量が増加して、この吸着量が一定以上になると、吸着したNOの一部をNOとして離脱させてしまう。水膜式加湿機25は、活性炭系ケミカルフィルタ24を通過したNOと共に、活性炭系ケミカルフィルタ24から離脱したNOも除去する。
【0029】
水膜式加湿機25を通過した空気は、冷水コイル26及び再熱コイル27を通ることで、温度及び湿度が調節される。さらに、この空気は、冷水コイル26を通ることで、この空気中の一部が凝縮して液体に変化することで除去される。冷水コイル26及び再熱コイル27を通過した空気は、ファン28により、下流側へ送られる。ファン28からの空気中で、これまでで取り残されている粒子やファン28から発生した粒子等は、高性能フィルタ29で取り除かれる。そして、高性能フィルタ29を通過した空気は、ケーシング11の吹出し口13から吹き出させる。
【0030】
ここで、以上で説明した本実施形態の空気清浄化装置10と、参考例の空気清浄化装置とにおけるNOxの除去性能について説明する。
【0031】
参考例の空気清浄化装置10aは、図2に示すように、上流側から順に、プレフィルタ21、中性能フィルタ22、温水コイル23、水膜式加湿機25、冷水コイル26、再熱コイル27、ファン28、活性炭系ケミカルフィルタ24、高性能フィルタ29がケーシング11内に配置されている。すなわち、参考例の空気清浄化装置10aは、本実施形態の空気清浄化装置10の活性炭系ケミカルフィルタ24を、水膜式加湿機25よりも下流側のファン28と高性能フィルタ29との間に配置したものである。
【0032】
ここでは、使用期間6ヶ月の本実施形態の空気清浄化装置10と、使用期間6ヶ月の参考例の空気清浄化装置10aのNOx除去性能について試験を行った。この試験では、ケーシング11から吹き出された空気を、純水が入っているインピジャーに通して、この純水中の成分をイオンクロマトグラフィー法で分析した。空気中のNOxは、前述したように、主としてNOとNOで構成されているが、これらは水に溶けてイオン化すると、NOやNOになり、ここでは、これらのイオンの濃度をイオンクロマトグラフィー法で分析した。
【0033】
分析の結果、参考例の空気清浄化装置10aでは、図3に示すように、NOxの濃度がケーシング入口で9170(ng/m)のとき、ケーシング出口では15026(ng/m)になった。すなわち、参考例の空気清浄化装置10aでは、この空気清浄化装置10aを空気が通過すると、却って、NOx濃度が増加してしまい、NOxの除去率が−64%になってしまった。
【0034】
これは、前述したように、この参考例の空気清浄化装置10aに設けられている活性炭系ケミカルフィルタ24は、NOの吸着量が一定以上になり、NOxをさらに吸着できない状態になっていた上に、一旦吸着したNOの一部をNOとして離脱させた結果、このNOが、インピジャー中の純水に溶解したためであると考えられる。
【0035】
これに対して、本実施形態の空気清浄化装置10では、NOxの濃度はケーシング入口で前述の場合と同じ9170(ng/m)のとき、ケーシング出口では1745(ng/m)になった。すなわち、本実施形態の空気清浄化装置10では、この空気清浄化装置10を空気が通過すると、NOx濃度が大きく低下し、NOxの除去率が81%になった。
【0036】
これは、前述したように、NOxが活性炭系ケミカルフィルタ24を通過することで、その組成が水に吸収しやすい組成に変化して、NOxの一部が水膜式加湿機25で除去されたためであると考えられる。さらに、活性炭系ケミカルフィルタ24から離脱したNOが水膜式加湿機25で除去されたためであると考えられる。
【0037】
以上のように、本実施形態の空気清浄化装置では、NOxに関する高い除去率を長期間にわたって維持することができる。
【0038】
また、本実施形態の空気清浄化装置では、ファン28を活性炭系ケミカルフィルタ24及び水膜式加湿機25の下流側に配置したので、ファン28に至る空気中には、ケミカル汚染物質が極めて少なくなり、ケミカル汚染物質によるファン28の腐食を抑えることができる。
【符号の説明】
【0039】
10,10a…空気清浄化装置、11…ケーシング、12…吸気口子、13…吹出し口、24…活性炭系ケミカルフィルタ、25…水膜式加湿機(湿式除去機)、28…ファン、29…高性能フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を清浄化する一以上のフィルタを備えている空気清浄化装置において、
前記一以上のフィルタが内部に配置され、空気を取り入れる吸気口、及び該一以上のフィルタにより清浄化された空気を吹き出す吹出し口が形成されているケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、該ケーシング内を通る前記空気に水を接触させて、該空気中の水溶性の分子状汚染物質を除去する湿式除去機を備え、
前記一以上のフィルタのうち、一のフィルタは、活性炭を含む活性炭系フィルタであり、該活性炭系フィルタは、前記ケーシング内の前記湿式除去機よりも前記吸気口側の上流側に配置されている、
ことを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気清浄化装置において、
前記ケーシング内の前記湿式除去機よりも下流側に配置され、前記吸気口から空気を該ケーシング内に取り入れて、前記吹出し口から空気を吹き出すためのファンを備えている、
ことを特徴とする空気清浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気清浄化装置において、
前記活性炭系フィルタの前記活性炭は、ヤシガラ活性炭である、
ことを特徴とする空気清浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−225588(P2012−225588A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94391(P2011−94391)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】