説明

空気清浄器

【課題】 ホコリやチリ等が発生する作業などを、作業者が中に入って行うことが可能であり、しかもその設置や除去を簡便に行うことが可能な空気清浄器を提供することを課題とする。
【解決手段】 折り畳みが可能に構成され、内部に作業者が入った状態で作業を行うことが可能なブース部と、前記ブース部内の空気を清浄化する空気清浄化手段とを備えたことを特徴とする空気清浄器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内等の作業中において発生する( 舞い上がる) ホコリ、チリ、ダニ、カビや、人体に有害なガス等を強制的に排出し、人体に吸引しないようにする為などに使用される空気清浄器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−252601号公報
【特許文献2】特開2000−225361号公報
【特許文献3】特開平11−159818号公報
【特許文献4】特開平8−66433号公報
【0003】
従来、ホコリやチリ等を極端に嫌う環境においては、部屋全体を清浄化したクリーンルームが用いられ、当該クリーンルームの入室に際して、エアーシャワー等によって人体や衣服等に付着したホコリやチリなどを完全に遮断するようになっている。
【0004】
かかるクリーンルームの場合には、室内の空気をすべて清浄化しなければならないため、クリーンルームを特別に設計して、空気の清浄化を図る装置を配備する必要がある。そのため、一般家庭や小規模の工場などで、ホコリやチリ等が発生する作業や、ホコリやチリ等を嫌う作業を行う場合に、ある特定の限られた空間のみ、簡便に空気を清浄化したいという要請には応えることができない。
【0005】
たとえば、室内において古書等のホコリやチリが多い物の整理作業を行う場合や、細かいホコリやチリが発生する手作業による研磨作業などを行う場合、あるいは外出から帰宅したときに、衣服に付着したホコリや花粉等を振るい落としたい場合など、これらの作業を行っても、ホコリやチリ等が室内に飛散することなく、空気を清浄化することができる簡便な空気清浄器が望まれる。
【0006】
このような簡便な空気清浄器に関連する技術としては、例えば、特開2001−252601号公報や、特開2000−225361号公報、特開平11−159818号公報、特開平8−66433号公報等に開示されているものが既に提案されている。
【0007】
上記特開2001−252601号公報に係る塗装ブースは、ダンパーを有する給気ブースと、その下部に設けられた塗装ブースと、該給気ブースと該塗装ブースとを区画する整流板とを有する本体と;該塗装ブースの下部に設けられたミスト洗浄水兼塗料ミスト捕集タンクと;フィルタと、エリミネータと、バッフル板とを有し、該塗装ブースの排気側に設けられた空気清浄室と;該空気清浄室の上部で、それから分離して設けられた排気部と;該排気ファンに接続された排気ダクトとから成り;該給気ブースからの空気を該整流板を介して整流後、該塗装ブース内で空気層流を形成して該塗装ブースの下部の該ミスト洗浄水兼塗料ミスト捕集タンク内の洗浄水に気液接触させながら該空気清浄室内に導き、該整流板から該空気清浄室の下部排気口に導かれる空気整流に層流を形成して空気層流の到着時間を同一とし、浮遊溶剤等を含む汚染空気を外部に排出させないように構成したものである。
【0008】
また、上記特開2000−225361号公報に係る形態式塗装ブースは、その一部を塗装作業用開口部とした筐体の、この開口部以外の壁面に、排気口を設け、この排気口に、交換式吸塵フィルターを具備した電気掃除機等空気吸引可能装置の、吸込み口を、連結して使用するように構成したものである。
【0009】
さらに、上記特開平11−159818号公報に係る空気清浄装置は、ファンとフィルタが一体的に設けられたファンフィルタユニットを有し、複数の上記ファンフィルタユニットが天井部分に設けられている空気清浄装置において、上記天井面には、水平方向に所定間隔で平行に設けられたガイド部材を備え、そのガイド部材上に載置された上記ファンフィルタユニットが、そのガイド部材の長手方向に摺動可能に取り付けられるように構成したものである。
【0010】
又、上記特開平8−66433号公報に係るクリーンブースは、横臥する人体の頭部を含む少なくとも上半身部分を覆うように外気から隔絶された所定の空間を提供するクリーンブースであって、空気の圧入により膨大する輪状チューブからなる独立した枠体を、前部と後部又はその一方と左右及び上部に枠組して箱形又はテント形のドーム体となし、このドーム体内に外気を吸入して清浄にした空気を供給する空気清浄装置を直接又は空気管を介して接続してなるように構成したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特開2001−252601号公報や、特開2000−225361号公報、特開平11−159818号公報、特開平8−66433号公報等に開示された技術の場合には、いずれも、装置が大型であって、その設置や除去が非常に煩雑であったり、あるいは装置が小型すぎて、作業者が中に入ってホコリやチリ等が発生する作業などを行うことができないという問題点を有していた。
【0012】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ホコリやチリ等が発生する作業などを、作業者が中に入って行うことが可能であり、しかもその設置や除去を簡便に行うことが可能な空気清浄器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、
折り畳みが可能に構成され、内部に作業者が入った状態で作業を行うことが可能なブース部と、
前記ブース部内の空気を清浄化する空気清浄化手段とを備えたことを特徴とする空気清浄器である。
【0014】
また、請求項2に記載された発明は、
室内との空間を区画するために立設される複数本の骨組と、当該複数本の骨組の表面を覆うように張設されるシート体とから折り畳みが可能に構成され、内部に作業者が入った状態で作業を行うことが可能なブース部と、
前記ブース部の一端に連結され、フィルターと吸気ファンとを備えた吸気手段と、
前記ブース部の他端に連結され、少なくともフィルターを備えた排気手段とを具備したことを特徴とする空気清浄器である。
【0015】
さらに、請求項3に記載された発明は、
前記ブース部は、複数本の骨組の間にシート体を畳み込むことにより、長手方向に沿って折り畳むことが可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄器である。
【0016】
又、請求項4に記載された発明は、
前記ブース部の排気部には、別体に構成された空気清浄化フィルターと排気ファンとを備えた空気清浄化手段が連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気清浄器である。
【0017】
更に、請求項5に記載された発明は、
前記ブース部の吸気側に配設される吸気手段に、温度調節手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄器である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ホコリやチリ等が発生する作業などを、作業者が中に入って行うことが可能であり、しかもその設置や除去を簡便に行うことが可能な空気清浄器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る空気清浄器を示す構成図である。
【0021】
図1において、1は空気清浄器の全体を示すものであり、この空気清浄器1は、大別して、折り畳みが可能に構成され、内部に作業者が入った状態で作業を行うことが可能なブース部2と、前記ブース部2の一端に連結された吸気手段3と、前記ブース部2の他端に連結された排気手段4とから構成されている。
【0022】
上記ブース部2は、図1に示すように、中央部2aが断面略半円形状の筒状体に形成されているとともに、その両端部2b、2cは、テーパー状に外径が徐々に小さくなるように設定されている。なお、上記ブース部2は、略円筒形状に限定されるものではなく、図2に示すように、略半球形状などのドーム状や、略直方体状などに形成しても良い。また、上記ブース部2は、略U字形状に形成された複数本の骨組5を備えており、中央部2aの骨組5は、外径が大きく(例えば、1900〜2000mm程度)設定されているとともに、両端部2b、2cの骨組5は、外径が小さく設定されている。
【0023】
また、上記ブース部2は、骨組5の外周に張設されたシート体6を備えており、当該シート体6としては、例えば、透明なビニールシートが用いられる。このシート体6は、骨組5の全外周及び床面をすべて覆うように張設され、外気を完全に遮断する完全密封型となるように構成されている。上記シート体6は、骨組5の外周に位置する部分が、当該骨組5に一体的に固定されている。また、上記シート体6は、使用目的に応じて、骨組5の全外周のみを覆うように張設され、床面を開放するように構成しても良い。さらに、上記シート体6としては、透明なビニールシートではなく、黒色のシートを用いて、ブース部2を完全に外光を通さない遮光性にし、暗室状態にするように構成しても良い。この場合には、ホコリやチリ等を嫌う作業であって、且つ外光を露光することがない作業(暗室作業)を行うことができる。また、上記シート体6としては、不燃性や難燃性のものを使用することによって、ブース部2の内部で火気を使用できるように構成しても良い。この場合には、化学反応を伴う実験や、火気を使用する作業であって、しかもホコリやチリ等を嫌う作業を容易に行うことが可能となる。ただし、この場合には、ブース部2の内部が酸欠状態となることがないように、吸気手段3の強度をアップするなどして、ブース部2の内部な空気を供給するように構成するのが望ましい。
【0024】
さらに、上記ブース部2は、作業者が立った状態で所望の作業を行うことができるように構成されており、当該ブース部2の一部には、図3に示すように、ファスナー7によって開閉可能な出入口8が設けられ、作業者が出入りしたり、作業物を出し入れすることが可能となっている。なお、ブース部2自体には、出入口を設けずに、当該ブース部2の設置時に、作業者や作業物を中に入れるように構成したり、ブース部2の床面を出入口として使用するように構成しても良い。
【0025】
又、上記ブース部2は、折り畳み可能に構成されており、図4に示すように、ブース部2の骨組5を互いに重ねるようにシート体6を折り畳むことによって、コンパクトに収納することが可能となっている。
【0026】
更に、上記ブース部2の一端部には、図1に示すように、吸気手段としてのフィルターボックス3が気密状に連結されている。このフィルターボックス3は、室内の空気9中のホコリやチリ等の異物10を除去して、清浄化された空気11をブース部2内に導入するためのフィルター12を備えているととももに、外部(室内)の空気を吸気ファン13によってブース部2の内部に清浄な空気11を導入するように構成されている。
【0027】
さらに、上記ブース部2の他端部には、排気手段4としてのフィルター14が気密状に連結されている。このフィルター14は、ブース部2内で発生したホコリやチリ等の異物15をブース部2内の空気16から除去して、清浄化された空気17を室内に排気するためのものである。なお、上記ブース2内で人体に有害なガスや臭い等が発生する虞れがある場合には、フィルター14として、有害なガスを除去したり、脱臭する能力を持ったフィルターを併せて使用するのが望ましい。
【0028】
以上の構成において、この実施の形態に係る空気清浄器では、次のようにして、作業者が中に入って作業を行うことが可能であり、しかもその設置や除去等を簡便に行うことが可能となっている。
【0029】
すなわち、この実施の形態に係る空気清浄器1は、図4に示すように、折り畳み可能に構成されており、可搬性に優れたものとなっているとともに、収容時にも広い場所をとることがないようになっている。
【0030】
この空気清浄器1は、図1に示すように、使用時に、左右のフィルターボックス3と排気手段4としてのフィルター14とを距離を離して配置し、複数本の骨組5を所定の間隔で立設するとともに、当該骨組5の表面にシート体6を張設することにより、図3に示すように、略円筒形状に形成されたブース部2が形成される。そして、上記ブース部2の内部には、図1に示すように、作業者が入るとともに、作業物(例えば、本棚など)が入れられて、古書等のホコリやチリが多い物の整理作業など、所望の作業が行われる。また、上記ブース部2の内部には、フィルターボックス3によって、室内の空気9がフィルター12によってホコリやチリ等の異物10を除去された状態で、新鮮でクリーンなエアー11として吸気ファン13により吸気される。さらに、上記ブース部2の内部で作業中に発生したホコリやチリ等の異物15は、吸気ファン13によって形成されるエアー16により運ばれ、フィルター14によって除去されて、ホコリやチリ等が除去されたエアー27が室内に排気される。
【0031】
その際、上記ブース部2の内部は、吸気ファン13により吸気されるエアー11によって、若干正圧(大気圧よりも高い気圧)になる場合があるが、当該ブース部2のエアーは、吸気ファン13によって形成されるエアー16の流れ及び若干正圧気味となる圧力により、フィルター14を通して、清浄化されたエアー17として室内に排出される。
【0032】
このように、上記実施の形態に係る空気清浄器1の場合には、ホコリやチリ等が発生する作業などを、作業者がブース部の中に入って行うことが可能であり、しかもその設置や除去を、骨組5を広げることによって簡便に行うことが可能となっている。
【0033】
実施の形態2
図5はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符合を付して説明すると、この実施の形態2では、前記ブース部の排気部には、別体に構成された空気清浄化フィルターと排気ファンとを備えた空気清浄化手段が連結されるように構成されている。
【0034】
すなわち、この実施の形態2では、図5に示すように、前記実施の形態1と同様に、フィルターボックス3の吸気ファン13によって、ブース部2の内部に清浄化されたエアー11を吸気するとともに、当該ブース部2の内部で発生したホコリやチリ等の異物15を含むエアー16を、フィルター14を介して排気するように構成されているが、更に排気手段4としてのフィルター14に、伸縮及び湾曲が自在なエアーダクト20を介して、別体に構成された空気清浄化フィルターと排気ファンとを備えた空気清浄化手段21が連結されるように構成されている。
【0035】
上記空気清浄化手段21は、ブース部2の内部で発生したホコリやチリ等の異物15を含むエアー16を、強制的にエアーダクト20を介して吸気して、フィルター14で除去しきれなかった微細なチリや細菌、あるいは臭気等を除去した上で排気するものであり、当該空気清浄化手段21自体は、屋内に配置しても良いが、屋外あるいは屋外に向けて配置するように構成しても良い。
【0036】
このような空気清浄化手段21を用いた場合には、ブース部2の内部で発生するホコリやチリ等の異物15を確実に除去することが可能となるとともに、フィルター14で除去しきれなかった微細なチリや細菌、あるいは臭気等をも除去することが可能となり、本発明に係る空気清浄器1の適用範囲を大幅に広げることができる。
【0037】
その他の構成及び作用は、前記実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
なお、前記実施の形態では、フィルターボックス3にフィルター12と吸気ファン13とを設けた場合について説明したが、当該フィルターボックス3の内部に、温度調節手段としてのエアコンの熱交換器を設けることにより、ブース部2の内部を快適な温度に調節することが可能となるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る空気清浄器の使用状態を示す構成図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る空気清浄器のブース部の他の態様を示す構成図である。
【図3】図3はこの発明の実施の形態1に係る空気清浄器のブース部を示す構成図である。
【図4】図4はこの発明の実施の形態1に係る空気清浄器を折り畳んだ状態を示す構成図である。
【図5】図5はこの発明の実施の形態2に係る空気清浄器の使用状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1:空気清浄器、2:ブース部、3:吸気手段、4:排気手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳みが可能に構成され、内部に作業者が入った状態で作業を行うことが可能なブース部と、
前記ブース部内の空気を清浄化する空気清浄化手段とを備えたことを特徴とする空気清浄器。
【請求項2】
室内との空間を区画するために立設される複数本の骨組と、当該複数本の骨組の表面を覆うように張設されるシート体とから折り畳みが可能に構成され、内部に作業者が入った状態で作業を行うことが可能なブース部と、
前記ブース部の一端に連結され、フィルターと吸気ファンとを備えた吸気手段と、
前記ブース部の他端に連結され、少なくともフィルターを備えた排気手段とを具備したことを特徴とする空気清浄器。
【請求項3】
前記ブース部は、複数本の骨組の間にシート体を畳み込むことにより、長手方向に沿って折り畳むことが可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気清浄器。
【請求項4】
前記ブース部の排気部には、別体に構成された空気清浄化フィルターと排気ファンとを備えた空気清浄化手段が連結されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気清浄器。
【請求項5】
前記ブース部の吸気側に配設される吸気手段に、温度調節手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−299736(P2006−299736A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126341(P2005−126341)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000133456)株式会社ダッチェス (3)
【Fターム(参考)】