説明

空気清浄機および電解水ミスト発生器

【課題】電解水ミストを放出するダクトの手入れを容易に行えるようにする。
【解決手段】空気清浄機1は、筐体10内に、電解水生成装置60と、電解水生成装置60が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置65を内蔵する。電解水ミスト生成装置65が生成した電解水ミストは、筐体10の外面に電解水ミスト放出口72aを露出させたダクト72を通じて放出される。ダクト72は、軸線方向にスライドさせることにより、筐体10の外に取り出し可能である。筐体10にはダクト72の側面の一部を露出させる窓10bが形成され、ダクト72の窓10bから露出する部分にはつまみ部72bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄機および電解水ミスト発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の空気清浄機には、ウィルス等の微生物の活動を抑え込む機能を備えたものが多くなっている。特許文献1に記載された空気清浄機もその一例である。特許文献1記載の空気清浄機は、電解水のミストを、空気清浄機内で清浄化された空気を用いて機外に放散し、室内空気の除菌や脱臭を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37589号公報(国際特許分類:A61L9/14、A61L9/01、C02F1/46)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解水ミスト生成装置で生成した電解水ミストを機外に放散しようとする場合、何らかのダクトが必要となる。電解水ミストの放散が長期間にわたると、カルキ消毒により水に含まれることになった、あるいは水が元来含んでいる、カルシウムやマグネシウムのようなミネラル成分がダクト内面やダクトの出口に析出する。析出したミネラル成分は時間の経過と共に硬化し、容易なことでは除去できなくなる。ミネラル成分がスケールとして析出している状態は機器の外観を損なう。またダクトが細い管状のものであったりした場合には、ミネラル成分によってダクトの断面積が狭められることにより、電解水ミストの放出自体に支障が生じかねない。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、ダクトを通じて電解水ミストを放出する構造を備えた空気清浄機および電解水ミスト発生器において、ダクトの手入れを容易に行えるようにすることにより、ミネラル成分の析出がもたらす悪影響を排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によれば、空気清浄機は、筐体内に、電解水生成装置及び当該電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を内蔵し、前記電解水ミスト生成装置が生成した電解水ミストは、前記筐体外面に電解水ミスト放出口を露出させたダクトを通じて放出されるものであり、前記ダクトは前記筐体外に取り出し可能である。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記ダクトは、軸線方向にスライドさせることにより、前記筐体から抜き出し得る。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記筐体には前記ダクトの側面の一部を露出させる窓が形成され、前記ダクトの前記窓から露出する箇所にはつまみ部が形成されている。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記ダクトと前記電解水ミスト生成装置の間の接続面は、前記ダクトの軸線方向に対し斜めに交差する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記ダクトの前記電解水ミスト生成装置に対する接続口には、前記電解水ミスト生成装置に接続している間は開き、接続が外れると閉じる蓋が設けられている。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記筐体内に、前記ダクトの存在を検知するダクト検知スイッチが設けられ、前記ダクト検知スイッチからの信号が、前記ダクトが前記筐体外に取り出されたことを示しているときは、前記電解水ミスト生成装置は運転不可能となる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、電解水ミスト発生器は、筐体内に、電解水生成装置及び当該電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を内蔵し、前記電解水ミスト生成装置が生成した電解水ミストは、前記筐体外面に電解水ミスト放出口を露出させたダクトを通じて放出されるものであり、前記ダクトは前記電解水ミスト生成装置から分離可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、電解水ミスト生成装置が生成した電解水ミストを機外に放出するダクトは筐体外に取り出し可能であるから、適宜ダクトを取り出し、ミネラル成分を溶解するクエン酸を混入した洗浄水で内部を洗うなどの手入れを行うことにより、ミネラル成分の析出による悪影響を受けることなく空気清浄機および電解水ミスト発生器を使い続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄機の斜視図である。
【図2】図1の空気清浄機の垂直断面図である。
【図3】図1の空気清浄機の垂直断面図で、図2と反対の方向に視点を置き、且つ断面箇所を異ならせたものである。
【図4】図1の空気清浄機の水平断面図である。
【図5】図1の空気清浄機の筐体に挿入される、空気加湿装置保持状態の水受けパンと、それに組み合わせられる筐体内部材の斜視図である。
【図6】図1の空気清浄機の垂直断面図で、図2及び図3と直角の方向に断面したものである。
【図7】空気加湿装置保持状態の水受けパンの垂直断面図である。
【図8】空気加湿装置保持状態の水受けパンの垂直断面図で、図7のA−A線の位置で断面したものである。
【図9】空気加湿装置保持状態の水受けパンの垂直断面図で、図7のB−B線の位置で断面したものである。
【図10】空気加湿装置非保持状態の水受けパンの斜視図である。
【図11】空気加湿装置保持状態の水受けパンの上面図である。
【図12】空気加湿装置非保持状態の水受けパンの上面図である。
【図13】空気加湿装置非保持状態の水受けパンの垂直断面図である。
【図14】背面側から見た送風装置の斜視図である。
【図15】図6と同様の空気清浄機の垂直断面図で、図6と反対の方向に視点を置いたものである。
【図16】空気加湿装置のホイールの概念的垂直断面図である。
【図17】空気加湿装置のホイールの分解構造を示す概念的垂直断面図である。
【図18】電解水ミストを放出するダクトまわりの構造に焦点を当てた空気清浄機の垂直断面図である。
【図19】図18と同様の空気清浄機の垂直断面図で、ダクトを出し入れする状況を示すものである。
【図20】筐体から前面カバーを取り除いた状態の空気清浄機の正面図である。
【図21】図20の丸囲み箇所の拡大図である。
【図22】空気清浄機の部分拡大垂直断面図である。
【図23】電解水ミスト生成装置とダクトの接続箇所の拡大断面図である。
【図24】電解水ミスト生成装置のダクト接続箇所の拡大側面図である。
【図25】ダクト下端の拡大断面図である。
【図26】ダクト受け入れ箇所の改良実施態様を示す、図19と同様の空気清浄機の断面図である。
【図27】図26のダクト受け入れ箇所の拡大図である。
【図28】図26のダクト受け入れ箇所の拡大図で、ダクトを出し入れする状況を示すものである。
【図29】空気加湿装置のホイールの概念的垂直断面図で、図16の構成と作用効果を比較するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1から図25までの図に基づき本発明の好ましい実施形態に係る空気清浄機の構造を説明する。
【0016】
空気清浄機1は前後方向に偏平な筐体10を有する。筐体10の説明に用いる方位表現については、図1における紙面左側が左、紙面右側が右、と定義する。他の構成要素の説明に用いる方位表現もこれにならうものとする。
【0017】
筐体10の上面前方には操作パネル11が配置される。操作パネル11には、各種指令を入力するスイッチ群と、空気清浄機1の運転状況その他の情報を表示するランプ群が配置されている。スイッチ群はメンブレンスイッチにより構成され、ランプ群は発光ダイオード(LED)により構成される。操作パネル11の下にあたる筐体10の前面部は、着脱可能な前面カバー10aとして構成されている。
【0018】
筐体10には前方の左右側面及び底面にスリット状の吸気口12が形成され、上面後方に排気口13が形成されている。排気口13には桟を格子状に組んだガードグリル14が設けられ、排気口13から手指等が差し込まれるのを防いでいる。
【0019】
筐体10の内部には、一方の端が吸気口12、他方の端が排気口13となった空気流通経路15が形成される。空気流通経路15には、上流側より順に、空気清浄装置20、空気加湿装置30、及び送風装置40が配置される。
【0020】
空気清浄装置20は空気清浄フィルタ21により構成される。空気清浄フィルタ21は粗塵用フィルタ、脱臭フィルタ、細塵用フィルタなどを組み合わせたものである。空気清浄フィルタ21に代え、あるいは空気清浄フィルタ21に加えて、電気集塵方式の集塵部を用いることも可能である。
【0021】
空気加湿装置30については後で説明する。
【0022】
送風装置40は、吸気口12から吸い込まれ、排気口13から排出される空気流を形成すものであって、シロッコファン41及びそれを回転させるモータ42と、シロッコファン41を囲むファンケーシング43により構成される。ファンケーシング43には排気口13に接続する吐出口43a(図14に最も良く形状が表れている)が形成されている。
【0023】
空気加湿装置30に対し、給水装置50で加湿用の水を供給する。給水装置50は、筐体10の右側面から挿入される、引出式の水受けパン51を中心として構成される。水受けパン51の右側面と、その上に着脱可能に取り付けられるカバー52は、筐体10の外殻の一部を構成する。水受けパン51の右側面には手を掛けるための凹部53が形成されている。
【0024】
水受けパン51は空気加湿装置30を支持し、また図6に示すように給水タンク54を支持する。水受けパン51の右端には、図5に示すように、給水タンク54から供給される水を受ける未処理水貯水槽55が形成される。未処理水貯水槽55には給水タンク54の図示しないバルブを押し開ける突起56が形成されている。
【0025】
水の入った給水タンク54を水受けパン51の未処理水貯水槽55上にセットすると、突起56で給水タンク54のバルブが押し開けられ、所定水位(図7〜図9中の水位線WLの水位)に達するまで水が水受けパン51に供給される。
【0026】
水受けパン51には、図12に示すように、未処理水貯水槽55の他、加湿用貯水槽57、ミスト生成用貯水槽58、及び電解水生成用貯水槽59が、それぞれ隔壁によって区画形成されている。加湿用貯水槽57は空気加湿装置30に供給する電解水を貯めるためのものであり、ミスト生成用貯水槽58は電解水ミスト生成用の電解水を貯めるためのものであり、電解水生成用貯水槽59は給水タンク54から供給された未処理水を電解水に変えるためのものである。
【0027】
未処理水貯水槽55と電解水生成用貯水槽59の間には連通部59aが形成され、電解水生成用貯水槽59とミスト生成用貯水槽58の間には連通部58aが形成され、ミスト生成用貯水槽58と加湿用貯水槽57の間には連通部57aが形成され、加湿用貯水槽57と未処理水貯水槽55の間には連通部55aが形成される。これらの連通部により、各貯水槽の水位は同一に保たれる。連通部59a、57a、55aは、それぞれ隔壁を貫通する小孔により構成されるが、連通部58aは比較的幅の広いギャップにより構成される。
【0028】
電解水生成用貯水槽59の左端には、未処理水貯水槽55から連通部59aを通じて電解水生成用貯水槽59に流れ込む未処理水を電気分解して電解水とする電解水生成装置60が配置される。電解水生成装置60は、電解水生成用貯水槽59内の水に浸る1対の電極61により構成される。
【0029】
ミスト生成用貯水槽58の底部には超音波振動子66(図8参照)が配置される。ミスト生成用貯水槽58及び超音波振動子66と、それらを取り巻く水受けパン51の壁部により、電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置65が構成される。
【0030】
水受けパン51の左端外面には、図9に示すように、電解水生成装置60と電解水ミスト生成装置65に電流を供給するためのコネクタ68が設けられている。水受けパン51を筐体10の奥まで押し込むと、筐体10の内部に設けられた図示しないコネクタにコネクタ68が接続し、電解水生成装置60と電解水ミスト生成装置65のそれぞれに対する給電が可能となる。
【0031】
水受けパン51には、図10に示すように、加湿用貯水槽57の正面側の側壁上端と電解水生成用貯水槽59の背面側の側壁上端から、対をなす支柱51aが互いに向かい合う形で立ち上がる。各支柱51aには、対向面の上端に、上方に開いたU字形の軸受部51bが形成されている。この軸受部51bに空気加湿装置30が支持される。続いて空気加湿装置30の構造を説明する。
【0032】
空気加湿装置30の中心をなすのは水車のような形状のホイール31である。図7に示すように、ホイール31は中心にハブ31a、周縁にリム31bを有し、ハブ31aとリム31bを、複数の正面側スポーク31cと複数の背面側スポーク31dで連結した構造となっている。
【0033】
さらに詳しく述べると、ホイール31は、ホイールベース31mとホイールキャップ31lの2部分からなる。ホイールベース31mはリム31b、外側のハブ31a2、及び背面側スポーク31dを含む。リム31bの後部には入力歯車31fが形成されている。ホイールキャップ31lは内側のハブ31a1と正面側スポーク31cを含む。外側のハブ31a2と内側のハブ31a1を嵌合させると、両者は連結してハブ31aとなる。同時にホイールベース31mとホイールキャップ31lも結合され、ホイール31が形成される。
【0034】
ハブ31aからは前後に支軸31eが突き出しており、この支軸31eを支柱51aの軸受部51bに落とし込むことにより、ホイール31は水平軸線まわりに回転自在に支持される。
【0035】
ホイール31には加湿部32(図7参照)が設けられる。加湿部32を構成するのは中心に穴が明いたディスク状の空気加湿フィルタ33である。空気加湿フィルタ33は保水能力と通風性を兼ね備えた素材、例えばネットや不織布からなり、背面側スポーク31dの前面に取り付けられる。なお空気加湿フィルタ33は、図5、図6、図8、図9、図15、図18、図19、及び図20では図示を省略してある。
【0036】
ホイール31のリム31bには、複数のバケット34が一定の角度間隔で配置される。バケット34はリム31bに一体成型することもできるし、別部品をリム31bに取り付けることもできる。
【0037】
全てのバケット34が口を一定方向に向けて配置されている。ホイール31が回転し、バケット34がリム31bの最下部まで移動した時、バケット34は加湿用貯水槽57の中の水に沈み、水がバケット34に浸入する。ホイール31が回転し、バケット34の口が上を向くと、バケット34は水を汲み上げる形になる。バケット34がリム31bの上部に来て、その口が横向きになるにつれ、汲み上げた水が滴下して空気加湿フィルタ33を濡らす。水が空気加湿フィルタ33を濡らす態様については後で説明する。
【0038】
ホイール31を回転させるモータ35は、水受けパン51にではなく、筐体10の内部の隔壁10a(図5参照)に支持される。モータ35は出力歯車35aを有する。出力歯車35aは、モータ35と同じく隔壁10aに支持された中間歯車36にかみ合う。中間歯車36にはホイール31の入力歯車31fがかみ合う。入力歯車31fが中間歯車36にかみ合うのは、水受けパン51を最も奥まで押し込んだときである。
【0039】
ホイール31の周囲を囲い37(図5参照)が取り巻き、囲い37の内部がファンケーシング43の吸気口43bに連通する。囲い37は、隔壁10aに一体成型した部分囲い37aと、水受けパン51に一体成型した部分囲い37bにより構成される。水受けパン51を最も奥まで押し込んだとき、部分囲い37aに部分囲い37bが接合し、囲い37が完成する。
【0040】
電解水ミスト生成装置65には、そこに送風装置40の吐出空気の一部を導入し、電解水ミスト混じりの空気にして筐体10の外に放出するダクト構造70が組み合わせられる。
【0041】
ダクト構造70は次のようにして構成される。水受けパン51には、ミスト生成用貯水槽58の上を覆う煙突状のダクト71が形成される。ダクト71は電解水ミスト生成装置65の一部となる。ダクト71には、別体の煙突状のダクト72が接続される。ダクト72の上端は筐体10の天面に露出する電解水ミスト放出口72aとなる。ダクト72の構造と取り付け方は後で詳細に説明する。
【0042】
ファンケーシング43のスクロール流路には、吐出空気の一部を分流する副吐出口43c(図14参照)が分岐形成される。副吐出口43cの出口43dは、図3に示す通り、電解水ミスト生成装置65に接続する。ダクト71の内部には、副吐出口43cから入ってくる吐出空気の向きを下向きに変え、超音波振動子66の方に向かわせるガイド体71aが形成されている。
【0043】
続いて空気清浄機1の動作を説明する。給水タンク54の中に水が十分残っていれば、未処理水貯水槽55、加湿用貯水槽57、ミスト生成用貯水槽58、及び電解水生成用貯水槽59の中には、図7〜図9にそれぞれ示す水位線WLの高さまで水が溜まっている。給水タンク54の中の水が残り少なく、水位が水位線WLより下がっている状態であれば、図示しないセンサがそれを検知し、操作パネル11に水不足の旨の表示が出る。水不足の表示を見たときは、カバー52を外し、給水タンク54を取り出して水を補給する。水補給後、給水タンク54を水受けパン51の上に置くと、給水タンク54から流れ出す水によって水位が水位線WLの高さまで回復し、水不足の表示は消える。外しておいたカバー52を元通りはめ込めば、空気清浄機1の運転が可能になる。
【0044】
空気清浄機1を通常運転モードで運転すると、図示しない制御装置からの指令により、送風装置40のモータ42、電解水生成装置60の電極61、電解水ミスト生成装置65の超音波振動子66、及び空気加湿装置30のモータ35に給電が行われ、これらの構成要素はそれぞれ定められた動作を開始する。
【0045】
電解水生成装置60の電極61に所定の電圧(例えば10V)が印加されると、未処理水貯水槽55から電解水生成用貯水槽59に流入した未処理水が電気分解されて電解水となる。
【0046】
電圧の印加は、1対の電極61が断続的に(例えば1時間毎に)交互に逆極性となるように行われる。水が塩素を含む水道水であれば、次のような電気化学反応が生じる。
<陽極側>
4HO−4e→4H+O↑+2H
2Cl→Cl+2e
O+Cl←→HClO+H+Cl
<陰極側>
4HO+4e→2H↑+4OH
<電極間>
+OH→H
上記反応により、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)や活性酸素を含む電解水が生まれる。
【0047】
電解水生成用貯水槽59の中の電解水は、連通部58aを通じてミスト生成用貯水槽58に流入する。電解水ミスト生成装置65の超音波振動子66を発振させると、ミスト生成用貯水槽58の水面から電解水のミストが発生し、ミスト生成用貯水槽58とダクト71で囲まれた空間に充満する。
【0048】
ミスト生成用貯水槽58の中の電解水は、連通部57aを通じて加湿用貯水槽57に流入する。加湿用貯水槽57には連通部55aを通じて未処理水貯水槽55の中の未処理水も流入するので、電解水は未処理水で希釈され、ミスト生成用貯水槽58の中の電解水より濃度が低くなる。どの程度まで濃度を下げるかは、連通部57aと連通部55aの面積比を変えることにより調整できる。
【0049】
上記のようにして、ミスト生成用貯水槽58には、ミスト化に適する、濃度の高い(例えば5ppm以上)電解水を貯水し、それよりも濃度が低いが(例えば1ppm)、加湿部32の除菌という目的に対しては十分に機能を発揮する電解水を、加湿用貯水槽57に貯水する。
【0050】
モータ35はホイール31を所定のゆっくりとした回転速度で回転させる。回転方向は、ホイール31を正面側から見ている図6においては反時計方向、ホイール31を背面側から見ている図8においては時計方向となる。ホイール31がこの方向に回転することにより、バケット34は加湿用貯水槽57から電解水を汲み上げて空気加湿フィルタ33にかけるという動作を繰り返すことになる。
【0051】
モータ42への通電によりシロッコファン41が回転すると、吸気口12→空気清浄装置20→空気加湿装置30→送風装置40→排気口13という空気の流れが生じる。吸気口12から吸い込まれた空気は、空気清浄フィルタ21を通過する際に塵埃を捕捉されて
清浄になり、空気加湿フィルタ33を通過する際に湿気を帯びる。加湿された清浄空気は送風装置40に吸い込まれ、排気口13から排出される。
【0052】
本実施形態の構成では、空気清浄装置20にも空気加湿装置30にも、送風装置40の吐出力でなく吸引力が作用するから、空気加湿装置30が大きな抵抗にならず、送風量の低下が少なくて済む。また、空気加湿フィルタ33を濡らすのが電解水であるから、空気加湿フィルタ33を除菌することができる。
【0053】
シロッコファン41が吐出する空気は、大部分は吐出口43aを通じて排気口13から排出されるが、一部は図15に示すように副吐出口43cに入る。副吐出口43cに入った空気は出口43dからダクト71に入り、そこでガイド体71aにより風向を下向きに変えられる。超音波振動子66に向けて下向きに吹き出される空気はミスト生成用貯水槽58の中の水面に阻まれて上方に方向転換し、同時に電解水ミストを巻き込む。電解水ミスト混じりの空気は煙突状のダクト72の内部を上昇し、電解水ミスト放出口72aから放出される。放出された電解水ミスト混じりの空気は排気口13から吹き出される気流にさらに巻き込まれ、室内に拡散する。これにより、室内空気も除菌及び脱臭される。
【0054】
電解水ミストは送風装置40の吐出空気で放出されるものであり、送風装置40を通らないから、送風装置40の金属部分に錆が生じたり、ミスト中のミネラル成分が送風装置40に付着してスケールになったりするおそれがない。ミスト化する電解水は加湿フィルタ33に供給される電解水の一部であるから、ミスト化用電解水を生成する目的のためだけに別途電解水生成装置を設ける必要がなく、製造コストを抑制することができる。
【0055】
加湿を行うと、加湿用貯水槽57の中の水が消費される。消費された分の水は、ミスト生成用貯水槽58から流入する電解水と、未処理水貯水槽55から流入する未処理水によって補われる。
【0056】
空気加湿フィルタ33にかけられた電解水は、全量が気化する訳ではなく、いくらかの部分が気化しないまま加湿用貯水槽57に戻る。加湿用貯水槽57に戻る電解水はバケット34によりかき混ぜられたりして空気と反応し、また空気加湿フィルタ33に付着した有機物と反応して、次亜塩素酸等が消費されて急速に濃度が低下しているが、それはミスト生成用貯水槽58から切り離して貯水される。このため、ミスト生成用貯水槽58には空気などとの接触が少なく濃度が高いままに保たれている電解水が貯水されることになり、十分な電解水濃度の電解水ミストを生成し放出することができる。
【0057】
上記通常運転モードでは、ホイール31が回転することで空気加湿フィルタ33に電解水が掛けられることから、排気口13から排出される空気は常に加湿済みの空気となる。別の運転モードとして、モータ35には通電せず、電解水生成装置60、電解水ミスト生成装置65、及び送風装置40のみ駆動する運転モードを設定することもできる。この運転モードでは、空気加湿フィルタ33が濡らされないので加湿は行われず、電解水ミストの室内への放出のみ行われることになる。従って、加湿を必要とせず、室内空気の除菌や脱臭を行いたい場合(例えば梅雨時でカビの発生を抑えたい場合)などに有効である。
【0058】
空気清浄機1を長期間使用していると、水が接触する箇所に水中のミネラルがスケールとなって付着する。実施形態の構成では、水が接触する箇所が水受けパン51を中心にまとまっているので、水受けパン51を引き出せば、水関係のメンテナンスが必要な箇所を筐体1の外に出すことができる。これにより、メンテナンスが楽になる。
【0059】
空気加湿フィルタ33はバケット34から滴下する水で濡らされることにより加湿の役割を果たすのであるが、仮に図29に示す通り、空気加湿フィルタ33が平板状のままホイール31に取り付けられていたとすると、水滴の中のかなりの部分が空気加湿フィルタ33に接触することなく落下してしまう。これは大いに無駄である。空気加湿フィルタ33に接触した水も集中して直線的に流れ落ちるので、その経路では表面張力で水の塊が生じることがある。その結果、空気加湿フィルタ33のある部分では水が塊状に存在することにより通風性が損なわれ、他の部分は通風性は良いものの水の量が少なくて加湿の目的を十分に達成できないという、矛盾した状態が発生する。
【0060】
本実施形態では、上記の問題を解決するために次のような対策を講じた。すなわち、空気加湿フィルタ33に、バケット34から滴下する水の落下経路に干渉する起伏形状を与えることとした。
【0061】
図16に示す通り、空気加湿フィルタ33は、ホイール31の中心を頂点とする円錐形状となっている。この円錐形状が空気加湿フィルタ33の起伏形状である。この形状は、図17に示すように、平板状の空気加湿フィルタ33をホイールベース31mとホイールキャップ31lで挟み付けることにより得られる。ホイールベース31mとホイールキャップ31lで挟まれると、空気加湿フィルタ33の中心部が正面側スポーク31cの方に押し出され、周囲に円錐面33aが生じる。この形状を得るため、ホイール31の背面側スポーク31dには円錐面33aを形成するための傾斜面31hを有するリブ31iが突設され、一方、正面側スポーク31cの裏側には、傾斜面31hと向かい合う位置に、傾斜面31hと同じ傾斜面31jを有するリブ31kが突設されている。
【0062】
上記のようにして形成した空気加湿フィルタ33の円錐面33aは水の落下進路に干渉しているので、滴下する水はその上に分散して散布され、空気加湿フィルタ33の広い領域が濡れる。このため空気加湿フィルタ33の濡れ具合が均等化し、局所に表面張力で水の塊が発生して通風性を損なうということがなくなり、加湿効率が向上する。
【0063】
空気加湿フィルタ33はホイール31に取り付けられてはじめて起伏形状が与えられるものであり、それまでは平板状態のままにしておけるから、物流段階や保管段階で場所をとらない。また、ホイールベース31mからホイールキャップ31lを分離すれば簡単に空気加湿フィルタ33を取り外すことができる。取り外された空気加湿フィルタ33は自己の弾力性で平板状に復元するので、空気加湿フィルタ33が空気中の異物を捕捉したり、空気加湿フィルタ33に水垢が付着したりした場合、それらを除去したり洗浄したりするというメンテナンス作業が楽である。さらに、ディスク状の空気加湿フィルタ33に円錐形状の起伏を形成する構成なので、空気加湿フィルタ33をホイール31に取り付ける場合にも、ホイールベース31mにホイールキャップ31lを嵌合させる場合にも、角度を気にせず作業を行うことができる。すなわち角度方向性がないことから、容易に作業を進めることができる。
【0064】
長期間の使用により、水が接触する箇所に水中のミネラルがスケールとなって付着することについては前に述べたが、電解水ミストが通過するダクト72にも同様の問題が発生する。そこで、固くこびりつく前にミネラルを洗浄し除去することができるよう、ダクト72は筐体10の外に取り出し可能とされている。
【0065】
ダクト72は軸線方向に、この場合は上向きに、スライドさせることにより、筐体10から抜き出すことができる。電解水ミスト放出口72aを機外に露出させた状態のダクト72を軸線方向にスライドさせるものであるから、ダクト取り出し用の開口部をわざわざ形成せずに済み、またそのように別途形成した開口部によって空気清浄機1の外観が損なわれることもない。
【0066】
ダクト72を軸線方向にスライドさせるため、ダクト72の正面側側面の上寄りの箇所には、指先やドライバーの先端などを引っ掛けることができるつまみ部72bが形成されている。つまみ部72bを含むダクト72の側面の一部は、筐体10に形成した窓10b(図20、21参照)から露出する。窓10bは、普段は前面カバー10aで隠されており、前面カバー10aを取り外すと露出状態となる。窓10bに指先やドライバーの先端を差し込み、つまみ部72bに引っ掛けて上に持ち上げると、図19に示す通り、電解水ミスト放出口72aの部分が筐体10の天面の上に突き出す。後は、突き出した部分をつまんで、ダクト72を引き抜けばよい。このように引き抜いたダクト72に対し、その内面や電解水ミスト放出口72aに付着したミネラルを水(好ましくはクエン酸混入水)で洗い流すという手入れを実行できる。
【0067】
ダクト72と、それを受け入れる側には、次のような工夫が施されている。まず、ダクト72が筐体10から安易に抜け出すことのないよう、ダクト72の側面と、それに向かい合う筐体10の壁面には、互いに干渉する突起が形成されている。図18のようにダクト72を一番下まで押し込んだ状態では、筐体10の突起10cがダクト72の突起72cに上から係合する。これによりダクト72は、上方に抜け出さないように押さえ込まれ、電解水ミスト生成装置65にしっかりと接続されることになる。つまみ部72bに力を加えて引き上げると、主にダクト72がたわむことにより突起72cが突起10cを乗り越え、図19に示す状態になる。
【0068】
ダクト72と電解水ミスト生成装置65の接続面は、図18に示す通り、ダクト72の軸線方向に対し斜めに交差している。このため、ダクト72が電解水ミスト生成装置65に押し付けられるとき、ダクト72がクサビとして機能し、両者はぴったりと接合する。なお、接合をより完全なものにして、電解水ミストがそこから漏洩しないようにするため、電解水ミスト生成装置65のダクト71の出口にはダクト72に密着するシールパッキン71bが取り付けられている。
【0069】
ダクト72の内面は電解水ミストが凝結した水で濡れていることがある。ダクト72を筐体10から抜き出したとき、その水が垂れないよう、ダクト72の下端の接続口72dには、電解水ミスト生成装置65に接続している間は開き、接続が外れると閉じる蓋72eが設けられている。蓋72eは軸72fを中心に回動し、軸72fに巻き付けたトーションスプリング72gが蓋72eを図25に示す閉鎖位置に附勢する。図23のように接続口72dを電解水ミスト生成装置65に接続すると、ダクト71の内面に形成されたリブ71cが蓋72eに当たり、これを押し開ける。これにより、電解水ミスト生成装置65からダクト72へ電解水ミストが流れ込むことが可能になる。
【0070】
なお、ダクト72の下部は、仕切壁72hにより、副吐出口43cの出口43dに連通する連通口72kを備えた空気取込室72iとダクト71内の電解水ミストをダクト72へ取り込むミスト取込室72jとに区画されており、ダクト72内の凝縮した水はミスト取込室72jより滴下するので、蓋72eは、接続口72dのミスト取込室72j側を塞ぐようになっている。
【0071】
図26から図28はダクト72の受け入れ箇所の改良態様を示す。この改良態様では、
筐体10の、突起10cを形成した壁面にポケット部10dが形成され、その中にダクト検知スイッチ73が設置されている。ポケット部10dの入口部には上端を支点として垂直面内で回動するアクチュエータ74が設けられている。アクチュエータ74はダクト検知スイッチ73のアクチュエータスプリング73aに接触する押圧部74aを有し、アクチュエータスプリング73aにより、ダクト72の進路に干渉する位置に押し出される。
【0072】
ダクト72が筐体10に挿入されると、図27に示すように、アクチュエータ74はポケット部10dに押し込まれてアクチュエータスプリング73aを押し、これによりダクト検知スイッチ73は、例えばON状態になる。前記図示しない制御装置は、ダクト検知スイッチ73からの「ON」信号を受けて、電解水ミスト生成装置65を運転可能とする。
【0073】
ダクト72が筐体10から取り出されると、ダクト72による圧迫がなくなるため、図28に示すように、アクチュエータスプリング73aがアクチュエータ74をポケット部10dの外に押し出し、ダクト検知スイッチ73はOFF状態になる。制御装置は、ダクト検知スイッチ73からの「OFF」信号を受けて、電解水ミスト生成装置65を運転不可能とする。電解水ミスト生成装置65が稼働中であれば、超音波振動子66への通電を停止する。
【0074】
これにより、ダクト72が存在しないまま電解水ミスト生成装置65が電解水ミストを生成し続け、電解水ミストが筐体10の内部に充満して内部を濡らし、電気系統の絶縁不良を起こしたり、ミネラルがスケールとなって付着し、空気清浄機1の本来の機能を損ねる故障を起こしたりするという事態を回避することができる。なお、空気清浄機1の空気清浄機能や加湿機能は停止の必要はなく、継続させればよい。
【0075】
上記実施形態は空気清浄装置を有する空気清浄機1についてのものであったが、空気清浄装置を有さないもの、すなわち電解水ミスト発生器の実施形態として構成することもできる。
【0076】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は空気清浄機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 空気清浄機
10 筐体
10a 前面カバー
10b 窓
12 吸気口
13 排気口
15 空気流通経路
20 空気清浄装置
30 空気加湿装置
40 送風装置
50 給水装置
51 水受けパン
54 給水タンク
60 電解水生成装置
65 電解水ミスト生成装置
72 ダクト
72a 電解水ミスト放出口
72b つまみ部
72d 接続口
72e 蓋
72f 軸
72g トーションコイルスプリング
73 ダクト検知スイッチ
74 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、電解水生成装置及び当該電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を内蔵した空気清浄機であって、
前記電解水ミスト生成装置が生成した電解水ミストは、前記筐体外面に電解水ミスト放出口を露出させたダクトを通じて放出されるものであり、前記ダクトは前記筐体外に取り出し可能であることを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
前記ダクトは、軸線方向にスライドさせることにより、前記筐体から抜き出し得ることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記筐体には前記ダクトの側面の一部を露出させる窓が形成され、前記ダクトの前記窓から露出する箇所にはつまみ部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
前記ダクトと前記電解水ミスト生成装置の間の接続面は、前記ダクトの軸線方向に対し斜めに交差することを特徴とする請求項2または3に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記ダクトの前記電解水ミスト生成装置に対する接続口には、前記電解水ミスト生成装置に接続している間は開き、接続が外れると閉じる蓋が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記筐体内に、前記ダクトの存在を検知するダクト検知スイッチが設けられ、前記ダクト検知スイッチからの信号が、前記ダクトが前記筐体外に取り出されたことを示しているときは、前記電解水ミスト生成装置は運転不可能となることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
筐体内に、電解水生成装置及び当該電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を内蔵した電解水ミスト発生器であって、
前記電解水ミスト生成装置が生成した電解水ミストは、前記筐体外面に電解水ミスト放出口を露出させたダクトを通じて放出されるものであり、前記ダクトは前記筐体外に取り出し可能であることを特徴とする電解水ミスト発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−217889(P2011−217889A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88792(P2010−88792)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】