説明

空気清浄用のフィルタシステム及び空気清浄装置

【課題】耐久性に優れながらも、低廉化を図り得る空気清浄用のフィルタシステム、及び、空気清浄装置を提供する。
【解決手段】複数の板状のフィルタ本体101が互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持体Kにて保持されて構成されたフィルタ100を備えた空気清浄用のフィルタシステムであって、保持体Kが、通気性及び柔軟性を有する部材にて、各フィルタ本体101の両面夫々の全面を覆う状態で複数のフィルタ本体101を各別に収納する複数の袋状収納部102を備え且つ厚さ方向視での各袋状収納部102の周囲全周が封止状態となるように形成された袋状保持体Kにて構成され、フィルタ100が、複数のフィルタ本体101を袋状保持体Kの複数の袋状収納部102に分散収納して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板状のフィルタ本体が互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持体にて保持されて構成されたフィルタを備えた空気清浄用のフィルタシステム、及び、そのフィルタシステムを備えた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる空気清浄用のフィルタシステム(以下、単にフィルタシステムと記載する場合がある)は、例えば、濾過対象空気を脱臭、殺菌することにより清浄化するものであり、脱臭機能、抗菌機能等の濾過機能を有する板状のフィルタを備えて構成される。
濾過機能を高くするには、フィルタの板面を広くして濾過対象空気を通過させる面積を広くする必要があるが、フィルタは機械的強度が弱い板状部材を用いて構成されるため、フィルタを単一の板状部材にて構成して板面を広くするとフィルタが破損し易くなって耐久性が低下する虞がある。
例えば、脱臭機能を備えさせる場合、活性炭等の脱臭機能を有する多孔状粒体を有機バインダに混合した混合物をハニカム状の板状に成形したのち乾燥等の固化処理を施した板状部材を用いてフィルタを構成することになるが、このような板状部材は機械的強度が弱いものである。
【0003】
そこで、濾過機能を有する複数の板状のフィルタ本体を互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持体にて保持してフィルタを構成することにより、フィルタの板面を広くしながらも、フィルタ本体が破損し難いようにしている。
【0004】
このようなフィルタシステムにおいて、従来は、保持体が、重ね合わせた状態において互いに対向するように複数の通気窓を備えた2枚の枠体と、それら2枚の枠体の間に配設される通気性及び柔軟性を有する複数のクッション材とから構成されていた。
そして、複数のフィルタ本体を各フィルタ本体の両面の全面をクッション材にて覆う状態で各通気窓に各別に対向させて並べた形態で2枚の枠体にて挟持することにより、フィルタが構成されていた。
クッション材としては、並列状態の複数のフィルタ本体の一方の板面を一括して覆う1枚の内側クッション材と、各フィルタ本体の他方の板面及び側周部全周を覆う状態で並列状態の複数のフィルタ本体夫々に対応させて各別に配置される複数の外側クッション材とから構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
つまり、各フィルタ本体の両面の全面及び側周部全周をクッション材により覆うことにより機械的強度の弱い各フィルタ本体を保護して耐久性を向上し、2枚の枠体により、複数のフィルタ本体を互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持する構成となっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のフィルタシステムでは、上述のように、保持体が2枚の枠体とそれら2枚の枠体の間に配設される複数のクッション材とから構成されるため、部品数が多くなり、しかも、そのように多数の部品からなる保持体を組み付けてフィルタを構成するため、組み付け作業が複雑となっていた。
従って、フィルタシステムの価格が高くなり、又、そのようなフィルタシステムを備えた空気清浄装置の価格も高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐久性に優れながらも、低廉化を図り得る空気清浄用のフィルタシステム、及び、空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気清浄用のフィルタシステムは、複数の板状のフィルタ本体が互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持体にて保持されて構成されたフィルタを備えたものであって、
その第1特徴構成は、
前記保持体が、通気性及び柔軟性を有する部材にて、各フィルタ本体の両面夫々の全面を覆う状態で前記複数のフィルタ本体を各別に収納する複数の袋状収納部を備え且つ厚さ方向視での各袋状収納部の周囲全周が封止状態となるように形成された袋状保持体にて構成され、
前記フィルタが、前記複数のフィルタ本体を前記袋状保持体の複数の袋状収納部に分散収納して構成されている点にある。
【0009】
即ち、袋状保持体により、複数のフィルタ本体が、各フィルタ本体の両面全面及び側周部全周、つまり、各フィルタ本体の外周部全体が覆われた状態で、互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持される。
そして、袋状保持体により、各フィルタ本体の外周部全体が覆われているので、各フィルタ本体が外部からの衝撃から保護され、並びに、隣接するフィルタ本体同士の衝突が阻止されるものとなり、各フィルタ本体の破損が防止される。
【0010】
つまり、袋状保持体に、複数のフィルタ本体夫々を保護する機能、及び、複数のフィルタ本体を互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持する機能を備えさせることができるので、フィルタを構成する部品の数を少なくすることが可能となり、又、そのようにフィルタを構成する部品の数を少なくすることが可能となることにより、フィルタを組み付ける作業を簡素化することが可能となる。
従って、耐久性に優れながらも、低廉化を図り得る空気清浄用のフィルタシステムを提供することができるようになった。
【0011】
空気清浄用のフィルタシステムの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記袋状保持体が、通気性及び柔軟性を有する2枚のシート状体をそれらの間に前記複数のフィルタ本体が板面に沿う方向に並べられた状態で対向配置して、それら2枚のシート状体における厚さ方向視での各フィルタ本体の外周の全周に対応する箇所を接合して構成されている点にある。
【0012】
即ち、袋状保持体が、シート状の如き簡素な形状の通気性及び柔軟性を有する2枚のシート状体にて構成されているので、袋状保持体の低廉化をより一層図ることができる。
そして、単に、2枚のシート状体をそれらの間に複数のフィルタ本体を板面に沿う方向に並べた状態で対向配置して、それら2枚のシート状体における厚さ方向視での各フィルタ本体の外周の全周に対応する箇所を接合するといった簡単な作業でフィルタが組み付けられるので、フィルタの組み付け作業をより一層簡素化することができるものとなる。
従って、空気清浄用のフィルタシステムの低廉化をより一層図ることができるようになった。
【0013】
空気清浄用のフィルタシステムの第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、
前記2枚のシート状体が、熱溶融性の部材にて構成され、
前記袋状保持体が、前記2枚のシート状体を熱溶着にて接合して構成されている点にある。
【0014】
即ち、2枚のシート状体を電気ヒータ等を用いて熱溶着することにより、袋状保持体が構成される。
つまり、2枚のシート状体を熱溶着により接合するようにすることにより、例えば、2枚のシート状体を接着剤を用いて接合する場合と比較すると、2枚のシート状体の接合に接着剤を用いないので、材料費の低減を図ることができ、又、接着剤の塗布工程や乾燥工程が不要となる等、工程数を少なくすることができるので、フィルタの組み付け作業のより一層の簡素化を図ることができる。
又、2枚のシート状体における熱溶着により接合した部分は、通気性がなくなるので、濾過対象空気がフィルタにおけるフィルタ本体が存在しない部分、即ち、濾過機能を有しない部分を通過するのを抑制することができるものとなり、濾過機能が低下するのを抑制することができる。
従って、濾過能力を向上しながら、空気清浄用のフィルタシステムの低廉化を更に図ることができるようになった。
【0015】
空気清浄用のフィルタシステムの第4特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれか1つに加えて、
前記フィルタが脱臭機能を有するように構成され、
前記フィルタにおける空気通流方向の上流側に対応する箇所に、除塵機能を有する上流側フィルタが配設されている点にある。
【0016】
即ち、濾過対象空気が上流側フィルタを通過することにより除塵され、そのように除塵された濾過対象空気がフィルタを通過することにより脱臭される。
つまり、濾過対象空気をフィルタを通過させる前に先に上流側フィルタにより除塵するので、フィルタの目詰まりを抑制することができるものとなり、フィルタの清掃等、目詰まり解消のためのメンテナンスを軽減することができる。
従って、メンテナンスを軽減しながらも、低廉化を図り得る脱臭機能を有する空気清浄用のフィルタシステムを提供することができるようになった。
【0017】
本発明の空気清浄装置は、上記第1〜第4特徴構成のいずれか1つを有する空気清浄用のフィルタシステムを備えたものであって、
その第1特徴構成は、
吸込口と吹出し口とを備えたケーシング内に、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出し口に導くように通風路が設けられ、
前記フィルタが前記通風路を横断する形態で前記ケーシング内に設けられ、
前記吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出し口から送出するように通風作用する送風手段が、前記フィルタにおける空気通流方向下流側に対応する箇所に、前記フィルタに吸い込み作用する状態で設けられている点にある。
【0018】
即ち、送風手段の送風作用により、吸込口から吸い込まれた空気がフィルタを通過して清浄化された後、吹出し口から吹出されることになり、空気清浄対象空間が清浄化される。
そして、送風手段が、フィルタにおける空気通流方向下流側に対応する箇所に、フィルタに吸い込み作用する状態で設けられるので、板面の広いフィルタを設けても、送風手段をフィルタに近づけて配置して空気清浄装置の大型化を回避しながら、フィルタにおける極力広い範囲を通過させる形態で濾過対象空気を通風させることができる。
このように、板面の広いフィルタにおける極力広い範囲を通過させる形態で濾過対象空気を通風させることができるので、所定の通風量を確保しながらも、フィルタを通過させる濾過対象空気の速度を遅くすることが可能となり、濾過効率を向上させて濾過能力を向上させることができる。
そして、上記第1〜第4特徴構成のいずれか1つを有する空気清浄用のフィルタシステムを備えさせるので、先に、フィルタシステムにおける第1特徴構成において記載した如く、フィルタシステムの耐久性の向上及び低廉化が可能であることは勿論のことである。
従って、耐久性に優れながらも低廉化を図ることができ、しかも、コンパクト化並びに濾過能力の向上を図り得る空気清浄装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、フィルタシステムFは、脱臭機能を有する脱臭用フィルタ(フィルタに相当する)100と除塵機能を有する除塵用フィルタ(上流側フィルタに相当する)200とを、除塵用フィルタ200が空気通流方向の上流側に位置するように空気通流方向に並べた状態で保持枠300に保持して構成されている。尚、図1の(a)は、フィルタシステムFの縦断面図であり、(b)は保持枠300の前面図である。
そして、このフィルタシステムFを備える空気清浄装置に設けられる送風手段(図示省略)により、濾過対象空気を図1に示す矢印の如く除塵用フィルタ200側からフィルタシステムFを通過させることにより、濾過対象空気が除塵脱臭されることになる。
【0020】
脱臭用フィルタ100と除塵用フィルタ200はいずれも例えば矩形状の板状に構成されている。
除塵用フィルタ200は、メインフィルタ201とそのメインフィルタ201よりも粗い塵埃を除去するためのプレフィルタ202とを備えて構成され、プレフィルタ202が空気通流方向上流側に位置するように配設されることになる。
【0021】
保持枠300は、矩形状の脱臭用フィルタ100及び除塵用フィルタ200を収納可能な有底角筒状に構成されている。そして、その保持枠300の底部には濾過対象空気を通過させるための環状の通気口301が形成され、この通気口301の中央の円板状部分が送風手段を取り付けるファン取付部304に構成されている。又、保持枠300の底部には、脱臭用フィルタ100の空気通流方向下流側の面を当接させてその脱臭用フィルタ100を保持枠300の底部と離間させて受け止め支持するための複数(この実施形態では8本)の棒状のリブ302が、環状の通気口301の中心を中心とする放射状に設けられ、環状の通気口301には、径が異なる複数の環状桟305が複数のリブ302に支持される形態で通気口301と同心状に設けられている。
更に、保持枠300の開口縁部には、内方側に突出する複数の爪部303が周方向に分散させて設けられている。
【0022】
脱臭用フィルタ100及び除塵用フィルタ200はいずれも可撓性を有するように構成され、その可撓性を利用して、脱臭用フィルタ100、除塵用フィルタ200の順に複数の爪部303をくぐらせるようにして保持枠300内に収納すると、脱臭用フィルタ100の後面が複数のリブ302に当接し且つ除塵用フィルタ200の前面が複数の爪部303に係合された形態で、フィルタシステムFが保持枠300内に保持されることになる。
従って、フィルタシステムFが保持枠300に保持された状態では、脱臭用フィルタ100の後面と保持枠300の底面との間には、複数の放射状のリブ302により吸込み空間400が形成される。
【0023】
図2及び図3に示すように、脱臭用フィルタ100は、脱臭機能を有する複数の板状のフィルタ本体101が互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持体Kにて保持されて構成されている。
そして、本発明では、保持体Kが、通気性及び柔軟性を有する部材にて、各フィルタ本体101の両面夫々の全面を覆う状態で複数のフィルタ本体101を各別に収納する複数の袋状収納部102を備え且つ厚さ方向視での各袋状収納部102の周囲全周が封止状態となるように形成された袋状保持体Kにて構成され、脱臭用フィルタ100が、複数のフィルタ本体101を袋状保持体Kの複数の袋状収納部102に分散収納して構成されている。
又、この実施形態では、袋状保持体Kが、通気性及び柔軟性を有する2枚のシート状体103をそれらの間に複数のフィルタ本体101が板面に沿う方向に並べられた状態で対向配置して、それら2枚のシート状体103における厚さ方向視での各フィルタ本体101の外周の全周に対応する箇所を接合して構成されている。
【0024】
活性炭と有機バインダ等を混合した混合物をハニカム構造を有する板状に押出成形して、その成形物を乾燥ののち焼成することにより、ハニカム構造を有する板状のフィルタ本体101が得られる。
【0025】
シート状体103は、三次元網状構造により通気性を有するように形成された熱溶融性のウレタンフォームにて構成されている。従って、このシート状体103は、柔軟性を備える。
シート状体103を構成するウレタンフォームは、例えば、ポリエーテル系であり、そのウレタンフォームのセル(孔)の個数は、例えば、25mm四方の面当たり8〜18個であり、厚さは、例えば、2〜8mmである。
【0026】
そして、1枚のシート状体103の上に、複数のフィルタ本体101を例えば縦、横夫々3列の格子状に並べて配置し、そのように配置した複数のフィルタ本体101の上にもう1枚のシート状体103を重ねて、2枚のシート状体103における外周縁部全周、及び、隣接するフィルタ本体101の間に対応する部分を熱溶着により接合することにより、脱臭用フィルタ100が構成される。
つまり、袋状保持体Kが、2枚のシート状体103を熱溶着にて接合して構成されることになる。
【0027】
2枚のシート状体103を熱溶着する装置について、図示を省略して簡単に説明する。
先端の加熱作用部分がシート状体103における外周縁部全周及び隣接するフィルタ本体101の間に対応するように碁盤目状に形成されたヒータが、先端の加熱作用部分を対向させた状態で上下2個設けられている。
上方側のヒータは、上下方向に移動自在で、且つ、下方側への押圧力が調整自在に設けられる。
そして、下方側のヒータ上に、上述のように間に複数のフィルタ本体101を並べた2枚のシート状体103を載せて、上方側のヒータを下方側に移動させて2枚のシート状体103を押圧することにより、2枚のシート状体103を熱溶着にて接合する。
【0028】
2枚のシート状体103が熱溶着された部分は、三次元網状構造が破壊されて通気性がなくなるので、シート状体103の外周縁部や、隣接するフィルタ本体101の間に対応する箇所を濾過対象空気が通過するのを抑制して、濾過対象空気が脱臭用フィルタ100におけるフィルタ本体101が存在しない部分、即ち、濾過機能を有しない部分を通過するのを抑制することができる。つまり、濾過対象空気が各フィルタ本体101側に案内されて各フィルタ本体101を通過する。
【0029】
除塵用フィルタ200は周知の構造であるので詳細な説明を省略して簡単に説明すると、この除塵用フィルタ200は、不織布を用いて構成され、特に、メインフィルタ201はプリーツ状に成型した不織布を用いて構成される。
【0030】
以下、図4〜図7に基づいて、上述のように構成されたフィルタシステムFを備えた空気清浄装置について説明する。
図4〜図7に示すように、吸込口1と吹出し口2とを備えたケーシングC内に、吸込口1から吸い込まれた空気を吹出し口2に導くように通風路Pが設けられ、本発明に係るフィルタシステムFが、脱臭用フィルタ100及び除塵用フィルタ200が通風路Pを横断する形態でケーシングC内に設けられ、吸込口1から吸い込んだ空気を吹出し口2から送出するように通風作用する送風手段としての遠心ファン3が、脱臭用フィルタ100における空気通流方向下流側に対応する箇所に、脱臭用フィルタ100に吸い込み作用する状態で設けられている。
【0031】
ケーシングCは、上下方向に長い概ね長方形箱状で前側が開口されたケーシング本体4と、そのケーシング本体4の前側に着脱自在に取り付けられる前面カバー5とを備えて構成されている。ケーシング本体4及び前面カバー5はいずれも合成樹脂製である。
そして、前面カバー5がケーシング本体4の前側に取り付けられた状態で、ケーシング本体4の開口部が閉じられることになる。
【0032】
図5〜図7に示すように、ケーシング本体4の上下左右の四壁部における前後方向中間部には、後方側が引っ込む形態で段部4aが一連に連なるように設けられている。
吸込口1として、ケーシング本体4の左右の側壁部夫々の段部4aよりも前方側の部分に側方吸込口1sが設けられ、ケーシング本体4の後壁部の下方側に後方吸込口1rが設けられている。
吹出し口2として、上側吹出し口2t及び下側吹出し口2bが前面カバー5の上方左側と下方右側とに振り分けた状態で設けられている。
【0033】
そして、図5及び図6に示すように、通風路Pにおける遠心ファン3が吸い込み作用する吸込風路部分として、左右の側方吸込口1sに吸い込み作用する循環用吸込風路部分6sと後方吸込口1rに吸い込み作用する外気用吸込風路部分6rとの2系統が設けられている。
又、通風路Pにおける遠心ファン3が吐出作用する吐出風路部分として、上側吹出し口2tに吐出作用する上側吐出風路部分7tと下側吹出し口2bに吐出作用する下側吐出風路部分7bとの2系統が設けられている。
更に、左右の側方吸込口1sから吸い込まれる空気量と後方吸込口1rから吸い込まれる空気量との比率を変更調整するシャッタ8が、外気用吸込風路部分6rの途中に設けられている。
【0034】
図5及び図6に示すように、遠心ファン3がケーシング本体4内における段部4aよりも後方側の部分に設けられる。
そして、ケーシング本体4の段部4aよりも後方側の部分には、遠心ファン3の一対のスクロール壁9が、前面視で遠心ファン3の回転軸心に対して上方右側と下方左側との点対称となる位置に、ケーシング本体4の後壁部から立ち上がる形態で設けられている。
各スクロール壁9は、遠心ファン3の回転軸心に最も近い舌部9tから遠心ファン3の回転方向R側に遠ざかるほど回転軸心から遠ざかる形態に設けられ、上方右側のスクロール壁9の先端は、前面視で上側吹出し口2tの右端後方に対応する箇所にまで延びてケーシング本体4の上壁内面に連結され、下方左側のスクロール壁9の先端は、前面視で下側吹出し口2bの左端後方に対応する箇所にまで延びてケーシング本体4の下壁内面に連結されている。
後方吸込口1rは、ケーシング本体4の底部における下方左側のスクロール壁9の外側の隅部に設けられている。
【0035】
図4〜図6に示すように、ケーシング本体4内の前方側の部分に、フィルタシステムFを保持し並びに通風路Pを形成するための通風路形成体10が設けられている。この通風路形成体10も、ケーシング本体4や前面カバー5と同様の合成樹脂製である。
この通風路形成体10は、周縁部がケーシング本体4の開口縁部に係合可能な矩形状に構成され、その上下方向の略中央部には、フィルタシステムFを保持する上述の如き保持枠300が形成されている。
【0036】
又、通風路形成体10には、その通風路形成体10がケーシング本体4内に設けられた状態で、ケーシング本体4に取り付けられる前面カバー5の上側吹出し口2t、下側吹出し口2bに夫々連通する四角筒状の上側吐出筒部10t、下側吐出筒部10bが設けられ、更に、ケーシング本体4の後壁部の後方吸込口1rの前方に対向位置する円形の連通口10rが設けられている。
【0037】
図6に示すように、保持枠300のファン取付部304の後面に、遠心ファン3のモータ3mがその回転軸の先端が後方を向く形態で取り付けられ、その回転軸の先端に遠心ファン3の羽根車3fが通気口301に対して吸い込み作用するように取り付けられている。
そして、そのように遠心ファン3が取り付けられた通風路形成体10が、その後面がケーシング本体4の段部4a及び一対のスクロール壁9の前端面に当接し、且つ、その外周縁部がケーシング本体4の開口縁部に係合される状態で、ケーシング本体4内に設けられる。
通風路形成体10の連通口10rとケーシング本体4の後方吸込口1rとは、発泡スチロール製の連通筒11にて連通接続される。
又、図4及び図5に示すように、通風路形成体10の前面部における上側吐出筒部10tの右横には、空気清浄装置の運転を制御する制御部12が設けられている。
【0038】
図4及び図6に示すように、フィルタシステムFは、脱臭用フィルタ100が後方側に位置する姿勢で、上述したように保持枠300内に保持されることになる。
【0039】
図6に示すように、前面カバー5は、その後面と保持枠300内に設けられたフィルタシステムFの前面(除塵用フィルタ200の前面に相当する)との間に空間を形成する状態で、ケーシング本体4に取り付けられ、その前面カバー5の後面には、その後面とフィルタシステムFの前面との間の空間を上方の側方吸込口1sが存在する側と下方の後方吸込口1rが存在する側とに上下に区画する仕切壁部5wが、フィルタシステムFの前面に当接するように後方に突出する形態で設けられている。
前面カバー5は、その上側吹出し口2t、下側吹出し口2bがそれぞれ通風路形成体10の上側吐出筒部10t、下側吐出筒部10bに連通し且つその仕切壁部5wがフィルタシステムFの前面に当接する状態で、ケーシング本体4の前側に取り付けられることになる。
【0040】
そして、図5及び図6に示すように、前面カバー5の後面とフィルタシステムFの前面との間の空間において仕切壁部5wにて仕切られた上方側の部分により、循環用吸込風路部分6sが構成され、並びに、後方吸込口1rに連通された連通筒11、及び、前面カバー5の後面とフィルタシステムFの前面との間の空間において仕切壁部5wにて仕切られた下方側の部分により、外気用吸込風路部分6rが構成されることになる。
又、遠心ファン3の上方右側のスクロール壁9及び上側吐出筒部10tにより、上側吐出風路部分7tが構成され、遠心ファン3の下方左側のスクロール壁9及び下側吐出筒部10bにより、下側吐出風路部分7bが構成されることになる。
【0041】
図4及び図6に示すように、前記のシャッタ8は、周壁部に通風口8rを備えた有底筒状に構成されて、その有底筒状のシャッタ8が、底部を前方に向けた姿勢で、前後方向に摺動自在な状態で、通風路形成体10の連通口10rに挿入されている。
通風口8rは、複数の横桟と複数の縦桟が碁盤目状に設けられることにより、網状に構成され、虫等の侵入を防止する構成となっている。
【0042】
有底筒状のシャッタ8の底部にはつまみ8bが設けられ、そのつまみ8bを持ってシャッタ8の前後方向での位置を調整することにより、左右の側方吸込口1sからの吸い込み空気量と後方吸込口1rからの吸い込み空気量との比率が調整されることになり、又、シャッタ8をその底部の鍔部が通風路形成体10の連通口10rの縁部に当接するまで後方に押し込むと、外気用吸込風路部分6rが閉じられて、後方吸込口1rからの空気の吸い込みが停止されることになる。
【0043】
上述のように構成された空気清浄装置は、図6に示すように、住宅等の建物の壁Wに後方側部分が埋め込まれた状態で取り付けられる。
つまり、壁Wの内壁板13には、ケーシング本体4の段部4aよりも後方側の部分が挿入可能な取付開口13aが形成され、空気清浄装置がそのケーシング本体4の段部4aの外面が内壁板13の表面に当接する状態でその内壁板13に取り付けられる。
又、建物の壁Wの外壁板14には、後方吸込口1rに対向するように外気取入れ口14aが設けられ、その外気取入れ口14aと後方吸込口1rとが外気取入れ筒15にて連通接続されて、外気用吸込風路部分6rが建物の外部Wに臨むことになって、外気用吸込風路部分6rを通して外気が吸い込まれるように構成されている。
【0044】
シャッタ8を開いた状態では、外気を取り入れながら、その取り入れ外気と室内から吸い込んだ室内空気とをフィルタシステムFで除塵脱臭して室内に吹き込む形態で換気運転が実行される。シャッタ8を閉じた状態では、室内から吸い込んだ室内空気をフィルタシステムFで除塵脱臭して室内に吹き込む形態で循環運転が実行される。
【0045】
換気運転では、遠心ファン3の通風作用により、側方吸込み口1s、循環用吸込風路部分6sを通して室内空気が吸い込まれ、並びに、後方吸込口1r、外気用吸込風路部分6rを通して外気が吸い込まれ、それら吸い込み室内空気と外気が除塵用フィルタ200、脱臭用フィルタ100を順次通過して除塵脱臭される。そして、そのように除塵脱臭された空気が、上側吐出風路部分7tを通して上側吹出し口2tから室内に吹き出され、並びに、下側吐出風路部分7bを通して下側吹出し口2bから室内に吹き出されて、室内が換気されつつ室内空気が清浄化される。
【0046】
循環運転では、遠心ファン3の通風作用により、側方吸込み口1s、循環用吸込風路部分6sを通して室内空気が吸い込まれ、その吸い込み室内空気が除塵用フィルタ200、脱臭用フィルタ100を順次通過して除塵脱臭される。そして、そのように除塵脱臭された空気が、上側吐出風路部分7tを通して上側吹出し口2tから室内に吹き出され、並びに、下側吐出風路部分7bを通して下側吹出し口2bから室内に吹き出されて、室内空気が清浄化される。
【0047】
上述したように、フィルタシステムFが保持枠300に保持された状態では、脱臭用フィルタ100の後面と保持枠300の底面との間には、吸込み空間400が形成される。
又、遠心ファン3は吸込み空間400を介して脱臭用フィルタ100に吸い込み作用する。
従って、円形の通気口301は矩形状の保持枠300の底部よりも小さいものの、遠心ファン3は吸込み空間400を介して脱臭用フィルタ100に吸い込み作用するので、除塵用フィルタ200及び脱臭用フィルタ100夫々における通気口301の外側に位置する部分を含む各フィルタの200,100の略全域を通して濾過対象の空気を通過させることができるものとなり、効率良く除塵並びに脱臭を行うことができる。
【0048】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(1) 袋状保持体Kの具体構成は、上記の実施形態において例示した構成、即ち、通気性及び柔軟性を有する2枚のシート状体103をそれらの間に複数のフィルタ本体101が板面に沿う方向に並べられた状態で対向配置して、それら2枚のシート状体103における厚さ方向視での各フィルタ本体101の外周の全周に対応する箇所を接合する構成に限定されるものではない。
例えば、袋状保持体Kを、フィルタ本体を嵌め込み可能な凹状部を複数のフィルタ本体101の配置形態と同様に並ぶ状態で複数備えた通気性及び柔軟性を有する1枚のシート状体と、複数の凹状部を各別に閉じるようにシート状体に接合される通気性及び柔軟性を有する複数のシート状蓋体とを備えて構成しても良い。
【0049】
(2) 袋状保持体Kを、上記の実施形態の如く2枚のシート状体103にて構成する場合、2枚のシート状体の接合方法は、熱溶着に限定されるものではなく、例えば、接着剤にて接合してもよい。
又、2枚のシート状体を熱溶着にて接合する場合、赤外線等の光を用いて熱溶着するように構成しても良い。
【0050】
(3) シート状体103を構成する部材は、上記の実施形態において例示したウレタンフォームに限定されるものではなく、通気性及び柔軟性を有する種々の部材を用いることが可能である。
又、ウレタンフォームを用いて構成する場合、ウレタンフォームはポリエーテル系に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル系でも良い。
【0051】
(4) フィルタ100に備えさせる濾過機能は、上記の実施形態において例示した脱臭機能に限定されるものではなく、例えば、抗菌機能を備えさせてもよく、又、複数の異なる濾過機能を備えさせても良い。
又、フィルタシステムFを、互いに異なる濾過機能を有する複数のフィルタ100を濾過対象空気の通流方向に並置して構成しても良い。
【0052】
(5) フィルタ100を構成するフィルタ本体101の個数及び配列形態は、上記の実施形態において例示したものに限定されるものではない。例えば、複数のフィルタ本体101の配列形態は1列でも良い。
【0053】
(6) 空気清浄装置の具体構成は、上記の実施形態において例示した構成に限定されるものではない。
例えば、上記の実施形態では、吸込口1として、空気清浄対象室内の空気を吸い込むものと外気を吸い込むものとを備える場合について例示したが、外気を吸い込むものを省略しても良い。
【0054】
(7) 本発明に係るフィルタシステムFは、上記の実施形態にて例示した如き独立して構成された空気清浄装置以外に、ガスファンヒータや石油ファンヒータ等に備えられた空気清浄装置にも備えさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように、耐久性に優れながらも、低廉化を図り得る空気清浄用のフィルタシステム、及び、空気清浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】フィルタシステムの縦断面図及び保持枠の前面図
【図2】脱臭用フィルタの一部切り欠き前面図
【図3】脱臭用フィルタの縦断面図
【図4】空気清浄装置の分解斜視図
【図5】空気清浄装置の縦断前面図
【図6】図5におけるVI−VI矢視図
【図7】空気清浄装置の外形を示す斜視図
【符号の説明】
【0057】
1 吸込口
2 吹出し口
3 送風手段
100 フィルタ
101 フィルタ本体
102 袋状収納部
103 シート状体
200 上流側フィルタ
C ケーシング
K 保持体、袋状保持体
P 通風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状のフィルタ本体が互いに間隔を隔てて板面に沿う方向に並ぶ形態で保持体にて保持されて構成されたフィルタを備えた空気清浄用のフィルタシステムであって、
前記保持体が、通気性及び柔軟性を有する部材にて、各フィルタ本体の両面夫々の全面を覆う状態で前記複数のフィルタ本体を各別に収納する複数の袋状収納部を備え且つ厚さ方向視での各袋状収納部の周囲全周が封止状態となるように形成された袋状保持体にて構成され、
前記フィルタが、前記複数のフィルタ本体を前記袋状保持体の複数の袋状収納部に分散収納して構成されている空気清浄用のフィルタシステム。
【請求項2】
前記袋状保持体が、通気性及び柔軟性を有する2枚のシート状体をそれらの間に前記複数のフィルタ本体が板面に沿う方向に並べられた状態で対向配置して、それら2枚のシート状体における厚さ方向視での各フィルタ本体の外周の全周に対応する箇所を接合して構成されている請求項1記載の空気清浄用のフィルタシステム。
【請求項3】
前記2枚のシート状体が、熱溶融性の部材にて構成され、
前記袋状保持体が、前記2枚のシート状体を熱溶着にて接合して構成されている請求項2記載の空気清浄用のフィルタシステム。
【請求項4】
前記フィルタが脱臭機能を有するように構成され、
前記フィルタにおける空気通流方向の上流側に対応する箇所に、除塵機能を有する上流側フィルタが配設されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気清浄用のフィルタシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気清浄用のフィルタシステムを備えた空気清浄装置であって、
吸込口と吹出し口とを備えたケーシング内に、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出し口に導くように通風路が設けられ、
前記フィルタが前記通風路を横断する形態で前記ケーシング内に設けられ、
前記吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出し口から送出するように通風作用する送風手段が、前記フィルタにおける空気通流方向下流側に対応する箇所に、前記フィルタに吸い込み作用する状態で設けられている空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−119770(P2010−119770A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298261(P2008−298261)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】