説明

空気清浄用濾材

【課題】ダスト視認性に優れ、かつ抗菌性、耐久性に優れ、プリーツ加工も可能である低通気抵抗、高脱臭性能を有する空気清浄用濾材を提供する。
【解決手段】上流側カバー層2と下流側活性炭層3を含む空気清浄用濾材1であって、前記上流側カバー層2は湿式抄紙法、水流絡合法、スパンボンド法の何れかによって製造された10〜100g/mのシートにフタロシアニン銅化合物および銀加工物が担持されており、前記フタロシアニン銅化合物の担持量が0.01〜0.1g/mであり、さらに上流側カバー層2が濾材1の最外層に配置されてなる空気清浄用濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭機能を有した空気浄化用濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用、家庭用フィルタ等の分野において、濾材の高機能化・多様化の要請が高まっており、脱臭機能を有する空気浄化用濾材の検討が多くなされている。そして、これら空気浄化用濾材として、粒子状または繊維状の吸着剤と接着剤を用いてシート化する方法が多く採用されており、例えば、基材層間に粒状吸着剤と粒状接着剤の混合物を散布し、これを加熱接着してなる吸着濾材が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
かかる吸着濾材は低コストで通気性に優れ、除塵性能も有する空気清浄用濾材が得られるが、ほとんどの場合は吸着材として安価な活性炭を用いているために、活性炭の黒色が上流側基材を透過し、濾材表面の色が新品状態でも黒もしくはグレーがかっている。よって連続使用によって濾材表面に堆積するダスト汚れと活性炭含有濾材本来の色調と区別がつきにくいため、ダスト堆積による交換時期を見逃し所定の風量が得られないあるいは臭気が流入する、または新品と使用済み品とを間違って装着するといった問題があった。
【0004】
また、近年、清潔志向の高まりから除塵機能、脱臭機能に留まらず外気からの菌、カビ、アレル物質、ウイルスなどの流入抑制およびフィルタ上での増殖防止、不活性化が強く求められている。かかる要求に対して、濾材上に抗菌防カビ剤、抗アレルゲン剤、抗ウイルス剤を適宜付与した濾材が開示されている(例えば特許文献2、3)。
【0005】
しかしながら、特許文献2では潮解性を与えられた防カビ抗菌抗ウイルスフィルタが開示されているが、薬剤成分が潮解性を有しているためにプリーツ加工を実施した際に成分の潮解によって隣り合う濾材同士が粘着し、ユニット加工ができないという問題があった。また、特許文献3では抗体を担持した有害物質除去剤が開示されているが、プリーツ加工時の熱や夏場の車室内など高温の使用環境にて性能が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−5058号公報
【特許文献2】特開平10−315号公報
【特許文献3】特開2004−313755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、ダスト視認性に優れ、かつ抗菌性の耐久性に優れ、プリーツ加工も可能である低通気抵抗、高脱臭性能を有する空気清浄用濾材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、上流側カバー層と下流側活性炭層を含む空気清浄用濾材であって、前記上流側カバー層は湿式抄紙法、水流絡合法、スパンボンド法の何れかによって製造された10〜100g/mのシートにフタロシアニン銅化合物および銀化合物が担持されており、前記フタロシアニン銅化合物の担持量が0.01〜0.1g/mであり、さらに上流側カバー層が濾材の最外層に配置されてなる空気清浄用濾材である。
より好ましい態様は、フタロシアニン銅化合物と銀化合物がガラス転移点50℃以上の熱可塑性樹脂によって上流側カバー層中の繊維に担持接着されてなる前記空気清浄用濾材である。
さらに好ましい態様は、前記記載のシートをプリーツ形状に成型してなる車両用空気清浄フィルタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による空気清浄用濾材は、ダスト視認性に優れ、かつ抗菌性の耐久性に優れ、プリーツ加工も可能である低通気抵抗、高脱臭性能を有する空気清浄用濾材を提供できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明中の空気清浄用濾材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の空気清浄用濾材は、上流側カバー層と下流側活性炭層を含んでなる空気清浄用濾材である。活性炭層により臭気成分を吸着除去し、活性炭層より上流側にカバー層を配置することにより、活性炭層からの活性炭粒子の脱落防止が可能となり、さらにダストやミストから活性炭を保護し、活性炭の吸着性能を劣化させない機能がある。
【0012】
本発明に使用される上流側カバー層は、織布状、不織布状いずれも構わない。構成繊維の繊維径は3〜100μmが好ましい範囲である。かかる範囲であれば、フィルタ濾材として低通気抵抗性を保持することが可能となるためである。
【0013】
本発明の上流側カバー層を構成する繊維部分の充填密度は0.50g/cc以下であることが好ましい。なぜなら、後に活性炭層と積層する際にある程度上流側カバー層の充填密度が低い方が低通気抵抗化を実現でき、かつ接着性も向上し、一体構造化できるからである。より好ましくは0.30g/cc以下である。
【0014】
本発明の上流側カバー層の厚みは0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。0.1mm未満であれば目付斑も考慮すると活性炭の抜け、脱落の懸念が生じ、また1.0mmを超えると濾材全体の厚みが厚すぎるため、プリーツ状ユニットとした場合に構造抵抗が大きくなり、結果としてユニット全体での圧損が高くなり過ぎ実用上問題があるためである。
【0015】
本発明の上流側カバー層の目付量としては10〜100g/mである。10g/m未満であれば活性炭の抜けが多くなり実用上問題となり好ましくない。100g/mを超えると、シート厚みが厚くなるためプリーツ状ユニットとした場合の構造抵抗が大きくなり実用上問題となるため好ましくない。
【0016】
本発明の上流側カバー層を構成する繊維材質はポリオレフィン系、レーヨン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート等特に規定はなく、芯鞘繊維を使用しても種々の混合繊維であっても当然構わない。また、タバコ煙粒子、カーボン粒子、海塩粒子をはじめとするサブミクロン粒子に対する除去効果も増大することができる帯電した不織布、いわゆるエレクトレットシートを上流側カバー層に使用することもできる。エレクトレットシートを上流側カバー層とすることにより、ダスト等が吸着層に侵入して吸着層内の細孔が閉塞することを防止し、フィルタ寿命を延長することができるからである。
【0017】
本発明の上流側カバー層の製法は、湿式抄紙法、水流絡合法、スパンボンド法の何れかによって製造されることが必要である。
一般的に短繊維からシート状物を作成する場合、短繊維を製造する工程での工程通過性、あるいは短繊維を解繊してシート状物に成形する工程にて繊維同士の凝集や、カード機などの機台への付着を抑制するために短繊維には種々の油剤が付与されている。
短繊維からシート状物を得る代表的な方法としては、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法、レジンボンド法があるが、これらは原料となる短繊維由来の油剤を除去あるいは軽減する工程がなく、得られるシート状物には油剤が残留する。
一方、短繊維を接着性繊維と水中によく分散させた後に脱水、乾燥を経てシート状物を得る湿式抄紙法や、短繊維をカーディング工程などで解繊した後、高圧水流を噴霧し繊維同士を絡合してシート状物を得る水流絡合法であれば、短繊維に含有する油剤成分ばかりか、繊維の外表面に付着している添加物や不純物等を大幅に低減できる作用があり、後述する薬剤の担持を効果的に実施できる。また、カバー層の製法としてスパンボンド法を用いた場合は、繊維に油剤を添加する工程が含まれず、原料となる樹脂から繊維状シート物が得られるため、本発明のカバー層製造により好ましい製法である。
【0018】
本発明の上流側カバー層にはフタロシアニン銅化合物および銀化合物が担持されてなることが必要である。銀化合物は特に限定されず硝酸銀、硫酸銀などの水溶性銀化合物の他、酸化銀、銀担体であっても良い。銀化合物を担持することにより抗菌防カビ性、抗アレルゲン性、抗ウイルス性が付与され、さらに無機物であるので熱安定性が非常に高い特徴がある。
【0019】
本発明の上流側カバー層の銀化合物の担持量は0.005〜0.2g/mが好ましい。0.005g/m未満であると抗菌効果が低く不十分であり、0.2g/mを超えると色調が黒くなったり、コスト高になるため好ましくない。銀化合物が酸化銀である場合は色調、化学的に安定性が高いので特に好ましい。
【0020】
本発明の上流側カバー層のフタロシアニン銅化合物は、その強い発色性と耐光性から下流側の活性炭の色調を遮蔽しダスト視認性を良好にする機能がある他、銀化合物自体のグレー系の色や銀化合物の色調変化を目立たなくする効果がある。さらには、フタロシアニン銅化合物の担持によって抗菌機能が大きく向上する効果がある。
【0021】
本発明の上流側カバー層のフタロシアニン銅化合物の種類は特に限定されないが、青色系のピグメントブルー15,ピグメントブルー16、緑色系のピグメントグリーン7,ピグメントグリーン36が発色性と堅牢性が良く好ましい。
【0022】
本発明の上流側カバー層のフタロシアニン銅化合物の担持量は0.01〜0.1g/mである。0.01g/m未満であると活性炭層の色調が透けるため好ましくなく、0.1g/mを超えると色調が濃すぎてダスト視認性が悪くなり好ましくない。
【0023】
本発明の上流側カバー層への銀化合物およびフタロシアニン銅化合物の担持方法は特に限定されないが、これらの化合物を水に分散あるいは溶解させ水溶的あるいはスラリーとしカバー層へ塗布、乾燥する方法が用いられる。
担持後の脱落が懸念される場合はポリエステル系、アクリル系、ウレタン系アバインダーなどのバインダーを適宜混合して使用することができるが、バインダーのガラス転移点が50℃以上であることが好ましい。上流側カバー層に50℃より低いガラス転移点のバインダーが含まれると濾材にプリーツ加工を実施し、加熱セットした際に、プリーツした濾材の山と山との間で接着が起こり、決まった山間隔にプリーツ濾材を開けないという問題がある。
【0024】
本発明に使用される活性炭層に用いる活性炭は、粒状活性炭を広く用いることができ、平均粒子径は、通気性、吸着材の脱落、シート加工性等を考慮して、JIS標準ふるい(JIS Z 8801)による値で60〜600μmであることが好ましく、100〜500μmであればより好ましい。平均粒子径が60μm未満の場合には、一定の高吸着容量を得るのに圧損が大きくなりすぎ、また、同時にシート充填密度が高くなりやすく、粉塵供給時に早期の圧損上昇を引き起こす原因にもなる。平均粒子径が600μmを越える場合には、脱落が生じやすくなり、またワンパスでの初期吸着性能が極端に低くなり、更にはプリーツ形状及等の空気浄化用フィルタとしたときの折り曲げ、及び波状加工時の加工性が悪くなる。なお、上記の粒状活性炭は、通常の分級機を使用して所定の粒度調整をすることにより、得ることが可能である。
本発明の空気清浄用濾材に用いられる粒状活性炭の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、ヤシガラ系、木質系、石炭系、ピッチ系等が好適に用いられる。また、上記の粒状活性炭は、形状的には破砕炭、造粒炭、ビーズ炭等が好適に用いられる。
【0025】
本発明の空気清浄用濾材に用いられる粒状活性炭のJIS K 1474に準拠して測定したときのトルエン吸着量は、20重量%以上が好ましい。悪臭ガス等の無極性のガス状及び液状物質に対して高い吸着性能を必要とするためである。
【0026】
本発明の吸着性シートに用いられる粒状活性炭は、極性物質の吸着性能を向上することを目的として、薬品処理を施して用いてもよい。ガス薬品処理に用いられる薬品としては、アルデヒド系ガスやNOx等の窒素化合物、SOx等の硫黄化合物、酢酸等の酸性の極性物質に対しては、例えばエタノールアミン、ポリエチレンイミン、アニリン、モルホリン、P−アニシジン、スルファニル酸等のアミン系薬剤や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、アミノグアニジン硫酸塩、5,5−ジメチルヒダントイン、ベンゾグアナミン、2,2−イミノジエタノール、2,2,2−ニトロトリエタノール、エタノールアミン塩酸塩、2−アミノエタノール、2,2−イミノジエタノール塩酸塩、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸ナトリウム、L−アルギニン、メチルアミン塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩、ヒドラジン、ヒドロキノン、硫酸ヒドロキシルアミン、過マンガン酸塩、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好適に用いられ、アンモニア、メチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン等の塩基性の極性物質に対しては、例えば、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が好適に用いられる。なお、薬品処理は、例えば、粒状活性炭に薬品を担持させたり、添着することにより行う。また、活性炭に直接薬品を処理する以外に、シート面表面付近に通常のコーティング法等で添着加工する方法やシート全体に含浸添着することも可能である。
【0027】
本発明の空気清浄用濾材の活性炭層の製法は、種々の方法で製造可能であり、好適な製法として湿式抄紙法が挙げられる。湿式抄紙法は、粒状活性炭含有シートの形成工程を有する活性炭層の製造方法であって、前記粒状活性炭含有シートの形成工程は、平均粒子径60〜600μmの粒状活性炭、支持繊維、及び水膨潤性の接着性繊維を含有する水系スラリーを調製する工程と、前記水系スラリーを面状に展開する工程と、展開した水系スラリーから機械的な脱水と乾燥とを行う工程とを含むものである。
【0028】
上記水系スラリーは、通常、水又は水溶液を分散媒体として常法にて調製され、供給された水系スラリーは、網状無端ベルトの上面に面状に展開され、搬送されながら機械的な脱水が徐々に行われて湿潤ウェッブが形成される。その際、機械的な脱水としては、長網式、短網式、円網式等の方法が採用でき、更に、プレスローラーで軽く絞ったり、あるいは吸引脱水等も可能である。
その後、シート運搬用無端ベルトで回転乾燥ドラムまで搬送され、回転乾燥ドラムにて接触乾燥して活性炭層とすることができる。この接触乾燥の際に上流側カバー層を活性炭層と乾燥ドラムの間に挟み込むことによって、カバー層と活性炭層を一体化させることもできるし、別工程にて接着剤を用いて活性炭層とカバー層を接着、一体化させることもできるが、前者の方が接着剤による通気抵抗上昇を抑制でき工程数も削減できるのでより好ましい。上記の際、スラリー中に高分子系、無機系の分散剤や凝集剤を適量添加して歩留まりを向上させることもできる。
【0029】
本発明の空気清浄用濾材の活性炭層のもう一つの製法として、乾式シート化法が挙げられる。乾式シート化法の基本的な製法について説明する。まず、活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を所定の重量秤量し、撹拌器にて十分に撹拌する。この際の水分率は混合物重量の15%以内が好ましい。この時点で粉末状熱可塑性樹脂が活性炭表面に仮接着された混合物となっている。次に、この混合粉粒体を基材層の上に散布後、通気性シート(基材層)を積層し、熱プレス処理を実施する。熱プレスの際のシート表面温度は熱可塑性粉末樹脂融点の好ましくは3〜30℃、より好ましくは5〜20℃高い程度がよい。別法として、活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体を基材層の上に散布後、更に粒状熱可塑性樹脂を一定量散布し、更に通気性シート(基材層)を積層後、熱プレス処理を実施する方法、あるいは基材層に予め粒状熱可塑性樹脂を固着させておき、このシートを上述した基材層として、この上に活性炭と粉末状熱可塑性樹脂を予め混合した混合粉体を散布、あるいは通気性シート(基材層)に使用し、熱プレス処理を実施して空気清浄用濾材を得ることもできる。本発明の濾材は前記基材層としてフタロシアニン銅および酸化銀が担持されたシートを用いても良いし、熱プレス処理後の濾材に予め準備した上流側カバー層を積層しても良い。
【0030】
乾式シート化法で粉末状熱可塑性樹脂の形状は特に規定はないが、球状、破砕状等があげられる。粉末状熱可塑性樹脂の融点は、移動車両等の室内の環境温度等考慮すると80℃以上が好ましい。より好ましくは90℃以上である。
【0031】
粉末状熱可塑性樹脂の溶融時の流動性はJIS K 7210記載のMI値でみれば1〜80g/10minが好ましい。より好ましくは3〜30g/10minである。かかる範囲であれば、吸着剤の表面の閉塞を防止しつつ、吸着層と基材層を強固に接着することができるからである。
【0032】
粉末状、粒状とも熱可塑性樹脂の使用量は活性炭に対して1〜40重量%使用するのが好ましい。より好ましくは5〜30重量%である。かかる範囲内であれば、基材層との接着力、通気抵抗、脱臭性能に優れる吸着シートが得られるからである。
【0033】
粉末状、粒状とも熱可塑性粉末樹脂の粒径調整法は、機械粉砕、冷凍粉砕、化学調整法等があげられる。また最終的に篩にかけ一定粒径を得ることができるが、一定の粒径を確保できる方法であれば特に限定されない。
【0034】
本発明の空気清浄用濾材の厚みは0.3〜2.0mmが好ましい。0.3mm未満であると機械的強度が不足し、またダストの保持空間が少ないため、目詰まり寿命が短くなる。2.0mmを超えるとプリーツ形状に加工した際の構造抵抗が著しく高くなるため、好ましくない。
【0035】
本発明の空気清浄用濾材は、単位開口面積当たりの濾過面積を向上させるため、プリーツ形状に成型してプリーツ状フィルタユニットとして使用することが好ましい。プリーツ状フィルタユニットの厚みは、10〜400mmが好ましい。カーエアコンに内蔵装着をはじめとする車載用途や家庭用空気清浄機であれば、通常の内部スペースの関係から、10〜60mm程度、ビル空調用途へよく設置される大型のフィルタユニットであれば40〜400mm程度が収納スペースから考えると好ましい。濾材の高温耐久性、優れたダスト視認性を考慮すると夏場は80℃の高温に上昇し、粉塵、排ガス、花粉、ウイルス等の有色有害な外気成分を処理する必要がある車両用空気清浄機用に用いるのが本濾材の好適な使用方法である。
【0036】
本発明の空気清浄フィルタのひだ山頂点間隔は2〜30mmが好ましい。2mm未満ではひだ山間が密着しすぎでデッドスペースが多く、効率的にシートを活用できなくなるため好ましくない。一方、30mmを越えるとシート展開面積が小さくなるためフィルタ厚みに応じた除去効果を得ることができなくなるため好ましくない。
【実施例】
【0037】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に沿って設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
なお、実施例中の数値は以下のような方法で測定した値である。
【0038】
(厚み)
荷重15.3gf/cmの圧力を加えた時の値をシックネスゲージにて測定した。
(通気抵抗)
試料大きさφ75mm、有効濾過面積φ50.5mm、風速10cm/sの条件下で測定した。
(目付)
200mm×200mmの試料を使用し、80℃の恒温槽中に30分放置後、デシケータ(乾燥剤:シリカゲル)中で30分放置する。その後取り出し、感量10mgの化学天秤で測定して、m当りの重量に換算した。
(平均粒子径)
活性炭等の吸着剤粒子に関してはJIS K 1474記載の粒度分布測定法に従い測定実施し、熱可塑性樹脂に関してはコールター法により測定した粒径で平均粒径を算出した。
(トルエン吸着性能)
80ppmのトルエンガスを用いて線速16cm/sにおいて濾材の上下流の濃度をそれぞれガステック製検知管で測定し、上流側のガス濃度から下流側のガス濃度を減じた値を上流側のガス濃度で除した値の百分率で示した。測定は6cm×6cm角のサンプルで実施し、ガスの負荷開始から1分後の除去率のデータをトルエン吸着性能とした。
(抗菌性)
JIS L 1902 繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果 定量試験 菌液吸収法にて実施した。菌種は黄色ぶどう球菌とし、静菌活性値が2.2以上の場合に抗菌性ありと判定した。
(ダスト視認性)
試験サンプルの上流層側をダスト負荷面として、風速30cm/sにてJIS Z 8901記載のJIS15種粉体を供給濃度0.5g/mにて1分負荷した。粉塵負荷前後の上流層側の色調を比較し、差異のあるものを視認性良好、差異のないものを視認性不良とした。
(耐熱性)
試験サンプルを120℃のオーブンにて36時間放置した後、先述の方法にて抗菌性を評価し、抗菌性を維持しているものは耐熱性ありとした。
(プリーツ加工時の濾材間接着性)
レシプロ折式のプリーツ加工機(ホップテック株式会社製)にてプリーツ折り高さ20mm、折幅200mmm、折速度30山/分にてプリーツ加工を実施後、30山でカットしたプリーツブロックを100℃で3分間加熱し熱セット処理を実施した。常温まで冷却後、プリーツブロックを開いた際、濾材間が接着しているものを濾材間接着ありと、無いものを濾材間接着無しとした。
【0039】
[実施例1]
レーヨン繊維1.7dtex×5mmが24%、ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維3dtex×10mmが39%、ポリビニルアルコール繊維1.1dtex×3mmが13%、ビニロン繊維2.2dtex×5mmが24%からなる目付16g/m、厚み0.15mmのシートを湿式抄紙法にて作成した。本シートを酸化銀が0.1g/m、ピグメントグリーン7が0.05g/m、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)2g/mとなるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付18.15g/m、厚み0.16mmであった。
次に、平均粒径200μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が470mg/gである粒状活性炭を60重量部、レーヨン繊維9dtex×8mmを10重量部、レーヨン繊維4.4dtex×4mmを6重量部、ポリビニルアルコール繊維1.1dtex×3mmを14重量部、ビニロン繊維2.2dtex×5mmを10重量部計量し、パルパーで水中に分散して湿式抄紙用原液を調製した。これを長網式抄紙法にて抄紙して湿潤ウェッブをつくり、その後前記上流側カバー層を活性炭リッチ層側に積層した後、プレスローラーで軽く絞り140℃で回転乾燥ドラムにて乾燥して所望の空気清浄用濾材を得た。この濾材は抄紙スクリーン上で粒状活性炭とレーヨン(比重約1.5)、ポリビニルアルコール(比重約1.3)の比重差により、沈降速度の差異が生じ、その結果活性炭リッチ層と支持繊維リッチ層からなっている。この空気清浄用濾材は目付105g/m、厚み0.4mm、通気抵抗10Pa、トルエン吸着性能は75%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0040】
[実施例2]
ポリプロピレン繊維2.2dtex×51mmをカードにかけウェッブを作製後、水流絡合法にてシート化し、目付40g/m、厚み0.5mmのスパンレース不織布を得た。本不織布を酸化銀が0.01g/m、ピグメントグリーン7が0.04g/m、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)10g/mとなるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付50.05g/m、厚み0.55mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に平均粒径400μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が35重量%であるヤシガラ系粒状活性炭を1kg、熱可塑性粉末樹脂として住友精化製フロービーズEA209(エチレンーアクリル酸共重合、平均粒径10μm、MI 9g/10min、融点105℃)を0.1kg秤量し、約10分間撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流側カバー層上に総量60g/m(活性炭55g/m相当)になるように散布し、更にスパンボンド法により作成したポリエステル長繊維不織布2.2dtex、目付20g/m、厚み0.18mm(東洋紡績株式会社製エクーレ(登録商標)6201A)を上から重ね合わせテフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.3mm、圧力100kPaに設定し120℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付130g/m、厚み0.6mm、通気抵抗8Pa、トルエン吸着性能は82%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0041】
[実施例3]
5.5dtexのポリエステル繊維からなる25g/m、厚み0.2mmのスパンボンド法不織布を酸化銀が0.01g/m、ピグメントグリーン7が0.05g/m、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)10g/mとなるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付35.05g/m、厚み0.2mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に平均粒径400μm、JIS K 1474法によって測定したトルエン吸着能が35重量%であるヤシガラ系粒状活性炭にスルファニル酸10重量%を添着しスルファニル酸添着炭を得た。本スルファニル酸添着炭1kgと、熱可塑性粉末樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(平均粒径200μm、MI 12g/10min、融点97℃)を0.3kg秤量し、約10分間撹拌混合した。この混合粉粒体を前記上流側カバー層上に総量100g/m(活性炭77g/m相当)になるように散布し、更にスパンボンド法により作成したポリエステル長繊維不織布2.2dtex、目付20g/m、厚み0.18mm(東洋紡績株式会社製エクーレ(登録商標)6201A)を上から重ね合わせテフロン(登録商標)/ガラス製のベルト間に挟み込み、このベルト間隔を0.2mm、圧力100kPaに設定し140℃、30秒間熱プレス加工実施した。その後冷却し所望の空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付155g/m、厚み0.5mm、通気抵抗7Pa、トルエン吸着性能は80%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0042】
[比較例1]
実施例1の湿式抄紙法シートに薬品添着を行わない以外は、実施例1と同様に活性炭層と貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付103g/m、厚み0.5mm、通気抵抗9.5Pa、トルエン吸着性能は74%であった。色調は上流層から活性炭色が透けており、グレー色であった。
【0043】
[比較例2]
実施例2のスパンレース不織布に薬品添着を行わない以外は、実施例2と同様に活性炭層と貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付120g/m、厚み0.6mm、通気抵抗8Pa、トルエン吸着性能は84%であった。色調は上流層から活性炭色が透けており、グレー色であった。
【0044】
[比較例3]
レーヨン繊維1.7dtex×5mmが24%、ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維3dtex×10mmが39%、ポリビニルアルコール繊維1.1dtex×3mmが13%、ビニロン繊維2.2dtex×5mmが24%からなる目付16g/m、厚み0.15mmのシートを湿式抄紙法にて作成した。本シートをピグメントグリーン7が0.05g/m、エチレン−酢酸ビニル共重合体バインダー(ガラス転移点3℃)2g/mとなるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付18.05g/m、厚み0.16mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に、実施例1と同様に湿式抄紙法による活性炭層と上流側カバー層を貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付105g/m、厚み0.4mm、通気抵抗9.5Pa、トルエン吸着性能は74%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0045】
[比較例4]
ポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維3.3dtex×51mmを50重量%と、ポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)の芯鞘繊維2.8dtex×51mmを50重量%とを混繊し、カードにかけウェッブを作製後、サーマルボンド法にてシート化し、目付27g/m、厚み0.5mmのサーマルボンド不織布を得た。本不織布を酸化銀が0.01g/m、ピグメントグリーン7が0.04g/m、アクリルバインダー(ガラス転移点60℃)10g/mとなるよう配合比率を調整した水溶液に浸漬、乾燥して上流側カバー層を作成した。全目付37.04g/m、厚み0.55mm、色調は鮮やかな緑色であった。
次に実施例2と同様に乾式シート化法にて得られたサーマルボンド不織布と活性炭層を貼り合わせ空気清浄用濾材を得た。この空気清浄用濾材は目付117g/m、厚み0.6mm、通気抵抗7Pa、トルエン吸着性能は80%であった。上流層側の色調は活性炭の透けがほとんど無く、鮮やかな緑色であった。
【0046】
以上、実施例および比較例にて得られた空気清浄用濾材についてダスト視認性、抗菌性、加熱時の性能低下性、プリーツ加工時の濾材接着性の評価を実施した。実施した結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例1〜3では上流層からの活性炭透けが少ないためにダスト視認性が良好で、抗菌性を有している。さらに加熱時の性能劣化も無く、プリーツ加工時の濾材間の接着も無いために非常に耐久性、加工性に優れた濾材であることがわかる。一方、比較例1、2ではダストの視認性に劣り、抗菌性を有していない。また、比較例3では酸化銀を含んでいないため、抗菌性が不十分であり、比較例4ではサーマルボンド不織布であるために抗菌性が発現していない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上述べた如く、本発明の空気清浄用濾材は、ダスト視認性に優れ、かつ抗菌性の耐久性に優れ、プリーツ加工も可能である濾材であり、低通気抵抗、高脱臭性能を有し産業界に貢献することが大である。
【符号の説明】
【0050】
1 空気清浄用濾材
2 上流側カバー層
3 活性炭層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側カバー層と下流側活性炭層を含む空気清浄用濾材であって、前記上流側カバー層は湿式抄紙法、水流絡合法、スパンボンド法の何れかによって製造された10〜100g/mのシートにフタロシアニン銅化合物および銀加工物が担持されており、前記フタロシアニン銅化合物の担持量が0.01〜0.1g/mであり、さらに上流側カバー層が濾材の最外層に配置されてなる空気清浄用濾材。
【請求項2】
フタロシアニン銅化合物と銀化合物がガラス転移点50℃以上の熱可塑性樹脂によって上流側カバー層中の繊維に担持接着されてなる請求項1記載の空気清浄用濾材。
【請求項3】
請求項1〜2いずれかに記載の濾材をプリーツ形状に成型してなる車両用空気清浄フィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−239621(P2012−239621A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112137(P2011−112137)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】