説明

空気清浄装置及び空気清浄方法

【課題】本発明の目的は、空気清浄装置をコンパクト化することである。
【解決手段】空気清浄装置は、光触媒又は低温酸化触媒としての触媒を備えた反応器11と、吸着塔41と、バルブ群45〜48とを具備する。バルブ群45〜48は、吸着塔41を宇宙真空から遮断するとともに浄化対象空間60に接続し、吸着塔41を浄化対象空間60から遮断するとともに宇宙真空に接続する。反応器11は、浄化対象空間60に接続される。触媒に太陽光が当たる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置及び空気清浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平4−104814号公報は、圧力スイング式ガス分離装置を用いる空気再生方法を開示している。圧力スイング式ガス分離装置が備える吸着塔において、吸気工程、加圧工程、再生工程、減圧工程、及び排気工程が順番に実行されるサイクルが繰り返される。
【0003】
吸気工程において、空気が吸着塔内に導入される。加圧工程において、空気が引き続き導入されると同時に、空気に含まれる不純ガス(窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気)が吸着塔内の吸着剤に吸着され、吸着塔内の空間は酸素を豊富に含む清浄ガスで満たされる。再生工程において、清浄ガスが吸着塔から送出される。減圧工程において、吸着剤に吸着されていた不純ガスが離脱する。排気工程において、離脱した不純ガスが吸着塔から排気される。
【0004】
再生工程において清浄ガスが送出されるときの流れ方向は、排気工程において不純ガスが排気されるときの流れ方向と異なる。そのため、清浄ガスを連続的に供給するために吸着塔が2基用意され、一方の吸着塔が再生工程にあるとき他方の吸着塔が排出工程となるように、一方の吸着塔のサイクルと他方の吸着塔のサイクルとが時間的にずらされる。
【0005】
【特許文献1】特開平4−104814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、空気清浄装置をコンパクト化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための最良の形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための最良の形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
空気清浄装置は、光触媒又は低温酸化触媒としての触媒を備えた反応器(11)と、 吸着塔(41、42)と、バルブ群(45〜48)とを具備する。前記バルブ群は、前記吸着塔を宇宙真空から遮断するとともに浄化対象空間(60)に接続し、前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続する。前記反応器は、前記浄化対象空間に接続される。前記触媒に太陽光が当たる。
【0009】
上記空気清浄装置は、前記触媒を担持する担体を介して前記触媒を加熱する加熱部を更に具備することが好ましい。この場合、前記触媒は前記低温酸化触媒である。
【0010】
上記空気清浄装置は、前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバー(30、31)を更に具備することが好ましい。前記反応器は、流路(12)を備えることが好ましい。この場合、前記流路内の空間を前記空気が流れる。前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部(18)を備える。前記照射部は、前記空間に配置される。前記流路は、前記空間を囲む壁面(13)を備える。前記触媒は前記担体としての前記壁面に担持される。
【0011】
上記空気清浄装置は、前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバー(30、31)を更に具備することが好ましい。前記触媒は前記光触媒であることが好ましい。この場合、前記反応器は、流路(12)を備える。前記流路内の空間を前記空気が流れる。前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部(18)を備える。前記照射部は、前記空間に配置される。前記流路は、前記空間を囲む壁面(13)を備える。前記触媒は前記壁面に担持される。
【0012】
上記空気清浄装置は、前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバー(30、31)を更に具備することが好ましい。前記触媒は前記光触媒であることが好ましい。この場合、前記反応器は、流路(12)を備える。前記流路内の空間を前記空気が流れる。前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部(18)を備える。前記照射部は、前記空間に配置される。前記流路は、前記空間を囲む壁面(13)を備える。前記触媒は、前記照射部と前記壁面との間に充填された繊維(14)に担持される。
【0013】
上記空気清浄装置は、前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバー(30、31)を更に具備することが好ましい。前記触媒は前記光触媒であることが好ましい。この場合、前記反応器は、流路(12)と、円錐面形状、多角推面形状又はドーム形状の第1フィルター(15)とを備える。前記流路内の空間を前記空気が流れる。前記第1フィルターは、前記触媒を担持する第1内側面を備える。前記第1フィルターは、前記第1内側面を前記空気の流れの上流に向けて前記空間に配置される。前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部(18)を備える。
【0014】
前記反応器は、円錐面形状、多角推面形状又はドーム形状の第2フィルター(15)を備えることが好ましい。この場合、前記第2フィルターは、光触媒を担持する第2内側面を備える。前記第2フィルターは、前記第2内側面を前記上流に向けて前記空間に配置される。前記照射部は、直線状に延びる直線状部分を備える。前記第1フィルターの軸、前記第2フィルターの軸、及び前記直線状部分は、同一直線上に配置される。
【0015】
上記空気清浄装置は、前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバー(30、31)を更に具備することが好ましい。前記触媒は前記光触媒であることが好ましい。この場合、前記反応器は、流路(12)と、多孔板又はフィルターにより形成された隔壁(16)とを備える。前記流路内の空間を前記空気が流れる。前記隔壁は、前記空間を上流側と下流側とに仕切る。前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部(18)を備える。前記照射部は、前記空間に配置される。前記触媒は前記隔壁に担持される。
【0016】
上記空気清浄装置は、前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバー(30、31)を更に具備することが好ましい。前記触媒は前記光触媒であることが好ましい。この場合、前記反応器は、流路(12)を備える。前記流路内の空間を前記空気が流れる。前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部(18)を備える。前記照射部は、前記空間に配置される。前記触媒は前記照射部に担持される。
【0017】
前記バルブ群は、前記空気が前記反応器を通過した後、前記吸着塔を通過して前記浄化対象空間に戻るように、前記吸着塔を前記宇宙真空から遮断するとともに前記反応器及び前記浄化対象空間に接続する。前記バルブ群は、前記吸着塔を前記反応器及び前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続する。
【0018】
前記反応器は、前記触媒と一体化された吸着剤を備えることが好ましい。
【0019】
空気清浄方法は、吸着塔(41、42)を宇宙真空から遮断するとともに浄化対象空間(60)に接続するステップと、前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続するステップと、光触媒又は低温酸化触媒としての触媒に太陽光を当てるステップと、前記触媒が前記浄化対象空間からの空気に含まれるガス成分の酸化分解反応を触媒するステップとを具備する。
【0020】
上記空気清浄方法は、前記触媒を担持する担体を介して前記触媒を加熱するステップを更に具備することが好ましい。この場合、前記触媒は低温酸化触媒である。
【0021】
前記吸着塔を前記宇宙真空から遮断するとともに前記浄化対象空間に接続する前記ステップにおいて、前記空気が前記触媒を備える反応器(11)を通過して更に前記吸着塔を通過してから前記浄化対象空間に戻り、前記吸着塔が備える吸着剤は前記酸化分解反応による生成物を吸着することが好ましい。前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続するステップにおいて、前記吸着塔を前記反応器から遮断し、前記吸着剤は前記生成物を脱着することが好ましい。
【0022】
例えば、前記ガス成分は炭素元素を含み、前記生成物は二酸化炭素である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、空気清浄装置がコンパクト化される。空気中の有害ガス成分が光触媒又は低温酸化触媒による触媒反応により分解されるからである。また、宇宙空間においては、地上よりも強い太陽エネルギーを触媒反応に利用できる。そのため、触媒反応のためのエネルギーを貯蔵する貯蔵部が最小限の大きさで済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明による空気清浄装置及び空気清浄方法を実施するための最良の形態を以下に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る空気清浄装置を示す。本実施形態に係る空気清浄装置は、浄化対象空間60に設けられた吸入口51と、フィルター54と、ファン55と、熱交換器57と、有機物分解装置10と、PSA除去装置40と、宇宙真空に対して開口する排気口53と、ファン56と、浄化対象空間60に設けられた戻り口52とを備える。浄化対象空間60は、宇宙構造体の内部空間である。宇宙構造体は、宇宙船、宇宙ステーション、宇宙基地、及び宇宙服のいずれかである。浄化対象空間60では少なくとも一人の人が活動する。浄化対象空間60における圧力は宇宙真空における圧力よりも高い。
【0026】
有機物分解装置10は、反応器11と、宇宙構造体の外側に設けられた集光器20と、集光器20と反応器11とを接続する光ファイバー束30とを備える。PSA除去装置40は、吸着塔41及び42と、フィルター43及び44と、バルブ45〜48を含むバルブ群とを備える。PSA除去装置40は、PSA(Pressure Swing Adsorption)に基づいて二酸化炭素、水蒸気、又は両方を空気から除去する。
【0027】
浄化対象空間60内の空気は、窒素及び酸素に加え、人体から排出された二酸化炭素、水蒸気、及び他のガス成分を含む。他のガス成分は、炭素元素、水素元素、又は両方を含む。他のガス成分は、例えば、メタノール(MeHO)、エタノール(EtOH)、アセトアルデヒド(CHCHO)、メタン(CH)、硫化水素(HS)、水素(H)、アンモニア(NH)、メタンチオール(CHSH)、一酸化炭素(CO)、インドール(CN)などである。
【0028】
本実施形態に係る空気清浄装置は、第1状態と第2状態とを交互に繰り返し、浄化対象空間60内の空気を浄化する。
【0029】
第1状態において、バルブ45は吸着塔41を反応器11に接続し且つ吸着塔42を反応器11から遮断し、バルブ46は吸着塔41を戻り口52(浄化対象空間60)にファン56を介して接続し且つ吸着塔41を排気口53(宇宙真空)から遮断し、バルブ47は吸着塔42を排気口53(宇宙真空)にバルブ48を介して接続し且つ吸着塔42を戻り口52(浄化対象空間60)から遮断する。
【0030】
第1状態において、浄化対象空間60内の空気は、吸入口51から本実施形態に係る空気清浄装置に取り込まれ、フィルター54とファン55とを通過し、必要に応じて熱交換器57を通過し、反応器11、バルブ45、吸着塔41、フィルター43、バルブ46、ファン56を通過して、戻り口52から浄化対象空間60に戻る。このとき、光ファイバー束30は、集光器20が受けた太陽光を反応器11が備える光触媒(例示:酸化チタン)に導く。光触媒は、空気に含まれる他のガス成分の酸化分解反応を触媒する。この酸化分解反応による生成物として、二酸化炭素、水蒸気、又は両方が生成する。吸着塔41が備える吸着剤は、生成物を吸着する。吸着塔42が備える吸着剤は、前に吸着した生成物を脱着する。脱着した生成物は、フィルター44、バルブ47、バルブ48を通過し、排気口53から宇宙真空へ排気される。
【0031】
第2状態において、バルブ45は吸着塔41を反応器11から遮断し且つ吸着塔42を反応器11に接続し、バルブ46は吸着塔41を戻り口52(浄化対象空間60)から遮断し且つ吸着塔41を排気口53(宇宙真空)にバルブ48を介して接続し、バルブ47は吸着塔42を排気口53(宇宙真空)から遮断し且つ吸着塔42を戻り口52(浄化対象空間60)にファン56を介して接続する。
【0032】
第2状態において、浄化対象空間60内の空気は、吸入口51から本実施形態に係る空気清浄装置に取り込まれ、フィルター54とファン55とを通過し、必要に応じて熱交換器57を通過し、反応器11、バルブ45、吸着塔42、フィルター44、バルブ47、ファン56を通過して、戻り口52から浄化対象空間60に戻る。このとき、光ファイバー束30は、集光器20が受けた太陽光を反応器11が備える光触媒に導く。光触媒は、空気に含まれる他のガス成分の酸化分解反応を触媒する。この酸化分解反応による生成物として、二酸化炭素、水蒸気、又は両方が生成する。吸着塔42が備える吸着剤は、生成物を吸着する。吸着塔41が備える吸着剤は、前に吸着した生成物を脱着する。脱着した生成物は、フィルター43、バルブ46、バルブ48を通過し、排気口53から宇宙真空へ排気される。
【0033】
紫外線を利用して上述の酸化分解反応を触媒する光触媒を用いることが好ましい。宇宙空間においては紫外線が強いから、強い紫外線が光触媒反応に有効に利用される。
【0034】
図2は、本実施形態に係る反応器11を示す。反応器11は、流路12を備える。流路12内の空間を浄化対象空間60からの空気が流れる。流路12は、流路12内の空間を囲む壁面13を備える。光触媒は壁面13に担持される。光ファイバー束30は、光触媒に太陽光を照射する照射部18を備える。照射部18は光源と称される場合がある。照射部18は、光触媒に囲まれるように流路12内の空間に配置される。照射部18は、流路12の中心線に沿って流路12内の空間を延びている。照射部18の軸線は、流路12内の空間を流れる空気の流れ方向70及び流路12に平行である。
【0035】
図3Aは、照射部18の一例を示す。光ファイバー束30に含まれる複数の光ファイバー31は端面31aをそれぞれ備える。端面31aは照射部18に配置される。端面31aが向く方向を示すベクトルは、照射部18の軸線に垂直な成分を持つ。言い換えると、ベクトルは軸線と平行ではない。このベクトルと略平行に端面31aから太陽光が出射し、光触媒に照射される。
【0036】
図3Bは、照射部18の他の例を示す。光ファイバー束30に含まれる複数の光ファイバー31は、照射部18において照射部18の軸線に平行である。複数の光ファイバー31は側面31bをそれぞれ備える。側面31bは、光ファイバー31の外周面であり、照射部18に配置される。側面31bから太陽光が出射し、光触媒に照射される。
【0037】
光触媒に紫外線を効率的に供給するため、光ファイバー束30は紫外線透過性が優れていることが好ましい。
【0038】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る空気清浄装置について説明する。本実施形態に係る空気清浄装置は、反応器11が第1の実施形態に係る空気清浄装置から変更されている。
【0039】
図4は、本実施形態に係る反応器11を示す。反応器11は、流路12を備える。流路12内の空間を浄化対象空間60からの空気が流れる。流路12は、流路12内の空間を囲む壁面13を備える。光ファイバー束30は、光触媒に太陽光を照射する照射部18を備える。照射部18は、流路12内の空間に配置される。照射部18は、流路12の中心線に沿って流路12内の空間を延びている。照射部18の軸線は、流路12内の空間を流れる空気の流れ方向70及び流路12に平行である。光触媒は、照射部18と壁面13との間に充填された繊維14に担持される。本実施形態において、図3Aの照射部18及び図3Bの照射部18のいずれも用いることが可能である。
【0040】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る空気清浄装置について説明する。本実施形態に係る空気清浄装置は、反応器11が第1の実施形態に係る空気清浄装置から変更されている。
【0041】
図5は、本実施形態に係る反応器11を示す。反応器11は、流路12と、複数のフィルター15を備える。流路12内の空間を浄化対象空間60からの空気が流れる。複数のフィルター15の各々は、円錐面形状又はドーム形状を有し、光触媒を担持する内側面を備える。複数のフィルター15は、空気の流れ方向70に沿って流路12内の空間に配置される。各内側面は、空気の流れの上流を向く。光ファイバー束30は、光触媒に太陽光を照射する照射部18を備える。照射部18は、流路12内の空間に配置される。照射部18は、流路12の中心線に沿って直線状に延びる。各フィルター15の軸、及び照射部18は同一直線(流路12の中心線)上に配置される。照射部18は、各フィルター15の頂点を貫いている。本実施形態において、図3Aの照射部18及び図3Bの照射部18のいずれも用いることが可能である。
【0042】
本実施形態によれば、光触媒が設けられる面積を大きくできる。
【0043】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る空気清浄装置について説明する。本実施形態に係る空気清浄装置は、反応器11が第1の実施形態に係る空気清浄装置から変更されている。
【0044】
図6A及び図6Bは、本実施形態に係る反応器11を示す。反応器11は、流路12と、複数の隔壁16を備える。複数の隔壁16の各々は、多孔板又はフィルターにより形成され、光触媒を担持する。流路12内の空間を浄化対象空間60からの空気が流れる。複数の隔壁16は、流路12に沿って流路12内の空間に配置される。各隔壁16は、流路12内の空間を空気の流れ方向70に関して上流側と下流側とに仕切る。光ファイバー束30に含まれる複数の光ファイバー31は、光ファイバー束30の先端部分(集光器20から遠い部分)において、複数のグループに分けられる。各グループは、光触媒に太陽光を照射する照射部18を形成する複数の光ファイバー31を含む。各照射部18は、隣り合う隔壁16の間に配置される。各照射部18において、複数の光ファイバー31は、一本一本にほぐされ、流れ方向70に対して垂直に延びるように配置される。各照射部18において、光ファイバー31の側面から出射した太陽光が光触媒に照射される。
【0045】
本実施形態によれば、光触媒が設けられる面積を大きくできる。
【0046】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る空気清浄装置について説明する。本実施形態に係る空気清浄装置は、反応器11が第1の実施形態に係る空気清浄装置から変更されている。
【0047】
図7は、本実施形態に係る反応器11を示す。反応器11は、流路12を備える。流路12内の空間を浄化対象空間60からの空気が流れる。光ファイバー束30は、光触媒に太陽光を照射する照射部18を備える。照射部18は、流路12内の空間に配置される。照射部18は、流路12の中心線に沿って流路12内の空間を延びている。照射部18の軸線は、流路12内の空間を流れる空気の流れ方向70及び流路12に平行である。本実施形態において、図3Bの照射部18が用いられる。光触媒は、照射部18に担持される。例えば、照射部18は側面31bに担持される
【0048】
(第6の実施形態)
図8は、本発明の第6の実施形態に係る空気清浄装置を示す。本実施形態に係る空気清浄装置は、太陽電池35、二次電池36、及び加熱部としてのヒーター37が追加されていること、及び、反応器11が第1の実施形態に係る空気清浄装置から変更されている。本実施形態に係る空気清浄装置においては、光触媒にかえて低温酸化触媒が上述の酸化分解反応のために用いられる。低温酸化触媒として、例えば、複合酸化物[Ce,Zr,Bi,Pt/Al]が用いられる。複合酸化物は、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、及び白金超微粒子をγ‐アルミナに共担持させることで提供される。
【0049】
太陽電池35は、宇宙構造体の外側に設けられ、太陽光を受けて発電し、その電力を用いて二次電池36を充電する。二次電池36は、ヒーター37に電力を供給する。
【0050】
図9は、本実施形態に係る反応器11を示す。反応器11は、流路12を備える。流路12内の空間を浄化対象空間60からの空気が流れる。流路12は、流路12内の空間を囲む壁面13を備える。低温酸化触媒は壁面13に担持される。光ファイバー束30は、光触媒に太陽光を照射する照射部18を備える。照射部18は、低温酸化触媒に囲まれるように流路12内の空間に配置される。照射部18は、流路12の中心線に沿って流路12内の空間を延びている。照射部18の軸線は、流路12内の空間を流れる空気の流れ方向70及び流路12に平行である。本実施形態において、図3Aの照射部18及び図3Bの照射部18のいずれも用いることが可能である。ヒーター37は、流路12の外側の低温酸化触媒に対応する位置に設けられる。
【0051】
宇宙構造体が太陽光を受けている間、光ファイバー束30は、太陽光を照射することで低温酸化触媒を加熱する。宇宙構造体が太陽光を受けている間、太陽電池35は二次電池36を充電する。宇宙構造体が太陽光を受けていない間、ヒーター37は、二次電池36から電力を供給されて低温酸化触媒を加熱する。ヒーター37は、低温酸化触媒を担持する担体としての壁面13を介して低温酸化触媒を加熱する。低温酸化触媒は、100℃以下の低温であっても、上述の酸化分解反応を有効に触媒する。
【0052】
本実施形態においては、低温酸化触媒に熱エネルギーを効率的に供給するため、光ファイバー束30は赤外線透過性が優れていることが好ましい。
【0053】
なお、二次電池36は、燃料電池によって充電されてもよい。太陽電池35又は燃料電池がヒーター37に加熱のための電力を直接供給してもよい。また、加熱部は、他の機器からの排熱や太陽熱を利用して壁面13を介して低温酸化触媒を加熱するものであってもよい。
【0054】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る空気清浄装置を説明する。本実施形態に係る空気清浄装置は、反応器11が光触媒又は低温酸化触媒と一体化された吸着剤を備えるように、第1乃至第6の実施形態に係る空気清浄装置のいずれかが変更されている。宇宙構造体が太陽光を受けていない間、反応器11が備える吸着剤は、空気に含まれるその他のガス成分を吸着する。宇宙構造体が太陽光を受けている間、反応器11が備える光触媒又は低温酸化触媒は、反応器11が備える吸着剤に吸着されていたその他のガス成分の酸化分解反応を触媒する。
【0055】
上記各実施形態に係る空気清浄装置は、PSA除去装置40を備えなくともよい。この場合、浄化対象空間60からの空気は、反応器11によって処理されたのち、直接浄化対象空間60に戻される。この場合、別の空気清浄装置が浄化対象空間60内の空気から二酸化炭素又は水蒸気を除去する。上記各実施形態に係る空気清浄装置から有機物分解装置10を除いたものを別の空気清浄装置として用いることが可能である。
【0056】
上記各実施形態に係る空気清浄装置において、流路12の断面形状は円、楕円、多角形のいずれでもよい。この場合、フィルター15及び隔壁16は、流路12の断面形状に対応する形状を有する。
【0057】
上記各実施形態によれば、空気中に含まれるメタン、アンモニア、硫化水素のような有害成分が除去される。空気中にこれらの有害成分が存在すると吸着塔41及び42の備える吸着剤が空気中の水分及び二酸化炭素を吸着する性能が低下するから、有害成分の除去により吸着塔41及び42の性能低下が防がれる。さらに、メタンチオールやアンモニアのような臭気成分が分解されるため、空気が脱臭される。
【0058】
上記各実施形態に係る空気清浄装置において、光ファイバーを用いるかわりに、反応器11及び宇宙構造体に設けられた窓を介して太陽光を光触媒又は低温酸化触媒に当ててもよい。
【0059】
上記各実施形態によれば、空気清浄装置がコンパクト化される。空気中の有害ガス成分が光触媒又は低温酸化触媒による触媒反応により分解されるからである。また、宇宙空間においては、地上よりも強い太陽エネルギーを触媒反応に利用できる。そのため、触媒反応のためのエネルギーを貯蔵する貯蔵部が最小限の大きさで済む。また、上記各実施形態に係る空気清浄装置に一体成型技術を適用すれば、バルブや配管の設置スペースを削減できる。
【0060】
なお、光ファイバー束30(光ファイバー31)、光触媒、及び低温酸化触媒の配置は、図示されたものに限定されない。上記実施形態どうしを自由に組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る空気清浄装置の概略図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す。
【図3A】図3Aは、反応器に設けられる照射部の例を示す。
【図3B】図3Bは、照射部の他の例を示す。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す。
【図5】図5は、本発明の第3の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す。
【図6A】図6Aは、本発明の第4の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す。
【図6B】図6Bは、第4の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す斜視図である。
【図7】図7は、第5の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す。
【図8】図8は、本発明の第6の実施形態に係る空気清浄装置の概略図である。
【図9】図9は、第6の実施形態に係る空気清浄装置が備える反応器を示す。
【符号の説明】
【0062】
10…有機物分解装置
11…反応器
12…流路
13…壁面
14…繊維
15…フィルター
16…隔壁
18…照射部(光源)
20…集光器
30…光ファイバー束
31…光ファイバー
31a…端面
31b…側面
35…太陽電池
36…二次電池
37…ヒーター
40…PSA除去装置
41、42…吸着塔
43、44…フィルター
45〜48…バルブ
51…吸入口
52…戻り口
53…排気口
54…フィルター
55、56…ファン
57…熱交換器
60…浄化対象空間
70…流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒又は低温酸化触媒としての触媒を備えた反応器と、
吸着塔と、
バルブ群と
を具備し、
前記バルブ群は、
前記吸着塔を宇宙真空から遮断するとともに浄化対象空間に接続し、
前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続し、
前記反応器は、前記浄化対象空間に接続され、
前記触媒に太陽光が当たる
空気清浄装置。
【請求項2】
前記触媒を担持する担体を介して前記触媒を加熱する加熱部を更に具備し、
前記触媒は前記低温酸化触媒である
請求項1の空気清浄装置。
【請求項3】
前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバーを更に具備し、
前記反応器は、流路を備え、
前記流路内の空間を前記空気が流れ、
前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、前記空間に配置され、
前記流路は、前記空間を囲む壁面を備え、
前記触媒は前記担体としての前記壁面に担持される
請求項2の空気清浄装置。
【請求項4】
前記バルブ群は、
前記空気が前記反応器を通過した後、前記吸着塔を通過して前記浄化対象空間に戻るように、前記吸着塔を前記宇宙真空から遮断するとともに前記反応器及び前記浄化対象空間に接続し、
前記吸着塔を前記反応器及び前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続する
請求項3の空気清浄装置。
【請求項5】
前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバーを更に具備し、
前記触媒は前記光触媒であり、
前記反応器は、流路を備え、
前記流路内の空間を前記空気が流れ、
前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、前記空間に配置され、
前記流路は、前記空間を囲む壁面を備え、
前記触媒は前記壁面に担持される
請求項1の空気清浄装置。
【請求項6】
前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバーを更に具備し、
前記触媒は前記光触媒であり、
前記反応器は、流路を備え、
前記流路内の空間を前記空気が流れ、
前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、前記空間に配置され、
前記流路は、前記空間を囲む壁面を備え、
前記触媒は、前記照射部と前記壁面との間に充填された繊維に担持される
請求項1の空気清浄装置。
【請求項7】
前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバーを更に具備し、
前記触媒は前記光触媒であり、
前記反応器は、
流路と、
円錐面形状、多角推面形状又はドーム形状の第1フィルターと
を備え、
前記流路内の空間を前記空気が流れ、
前記第1フィルターは、前記触媒を担持する第1内側面を備え、
前記第1フィルターは、前記第1内側面を前記空気の流れの上流に向けて前記空間に配置され、
前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部を備える
請求項1の空気清浄装置。
【請求項8】
前記照射部は、直線状に延びる直線状部分を備え、
前記反応器は、円錐面形状、多角推面形状又はドーム形状の第2フィルターを備え、
前記第2フィルターは、光触媒を担持する第2内側面を備え、
前記第2フィルターは、前記第2内側面を前記上流に向けて前記空間に配置され、
前記第1フィルターの軸、前記第2フィルターの軸、及び前記直線状部分は、同一直線上に配置される
請求項7の空気清浄装置。
【請求項9】
前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバーを更に具備し、
前記触媒は前記光触媒であり、
前記反応器は、
流路と、
多孔板又はフィルターにより形成された隔壁と
を備え、
前記流路内の空間を前記空気が流れ、
前記隔壁は、前記空間を上流側と下流側とに仕切り、
前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、前記空間に配置され、
前記触媒は前記隔壁に担持される
請求項1の空気清浄装置。
【請求項10】
前記太陽光を前記触媒へ導く光ファイバーを更に具備し、
前記触媒は前記光触媒であり、
前記反応器は、流路を備え、
前記流路内の空間を前記空気が流れ、
前記光ファイバーは、前記触媒に前記太陽光を照射する照射部を備え、
前記照射部は、前記空間に配置され、
前記触媒は前記照射部に担持される
請求項1の空気清浄装置。
【請求項11】
前記バルブ群は、
前記空気が前記反応器を通過した後、前記吸着塔を通過して前記浄化対象空間に戻るように、前記吸着塔を前記宇宙真空から遮断するとともに前記反応器及び前記浄化対象空間に接続し、
前記吸着塔を前記反応器及び前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続する
請求項1の空気清浄装置。
【請求項12】
前記反応器は、前記触媒と一体化された吸着剤を備える
請求項1の空気清浄装置。
【請求項13】
吸着塔を宇宙真空から遮断するとともに浄化対象空間に接続するステップと、
前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続するステップと、
光触媒又は低温酸化触媒としての触媒に太陽光を当てるステップと、
前記触媒が前記浄化対象空間からの空気に含まれるガス成分の酸化分解反応を触媒するステップと
を具備する
空気清浄方法。
【請求項14】
前記触媒を担持する担体を介して前記触媒を加熱するステップ
を更に具備し、
前記触媒は低温酸化触媒である
請求項13の空気清浄方法。
【請求項15】
前記吸着塔を前記宇宙真空から遮断するとともに前記浄化対象空間に接続する前記ステップにおいて、前記空気が前記触媒を備える反応器を通過して更に前記吸着塔を通過してから前記浄化対象空間に戻り、前記吸着塔が備える吸着剤は前記酸化分解反応による生成物を吸着し、
前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続するステップにおいて、前記吸着塔を前記反応器から遮断し、前記吸着剤は前記生成物を脱着する
請求項14の空気清浄方法。
【請求項16】
前記吸着塔を前記宇宙真空から遮断するとともに前記浄化対象空間に接続する前記ステップにおいて、前記空気が前記触媒を備える反応器を通過して更に前記吸着塔を通過してから前記浄化対象空間に戻り、前記吸着塔が備える吸着剤は前記酸化分解反応による生成物を吸着し、
前記吸着塔を前記浄化対象空間から遮断するとともに前記宇宙真空に接続するステップにおいて、前記吸着塔を前記反応器から遮断し、前記吸着剤は前記生成物を脱着する
請求項13の空気清浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−12051(P2010−12051A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174965(P2008−174965)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】