説明

空気清浄装置

【課題】 構造が簡単で、脱臭、粒子捕集性のよい空気清浄装置を提供すること。
【解決手段】 ダクト状のケーシング(1)の下端部に吸入口(2)が上端部に排出口(3)が設けられ、第1空間(1a)内に設けた送風機(5)により空気は下から上へ流れる。吸入口には第1フィルタ(10)が取付けられ、第1仕切り壁(6)に第2フィルタ(20)が、第1仕切り壁と第2仕切り壁(7)の間に複数の第3フィルタ(30)が設けられ、第2仕切り壁の上に第4フィルタ(40)が載置されている。第1、2紫外線ランプ(50、60)が第3、4フィルタの上流側の面に紫外線を照射する。第1、2フィルタは洗浄可能な耐腐食性材料の連続した単一細線を、空気の流れに直角な方向に折り曲げながら積層して形成され、第3フィルタは臭気物質を吸着すると同時に分解する触媒活性炭で形成され、第4フィルタはHEPAフィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄装置、特に室内空気の粒子の捕集と脱臭とをおこなう空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やプラント等からの排気ガス等による大気汚染の問題とともに、院内感染、シックハウス、ハウスダスト等の問題から室内空気の汚染が大きな問題となっており、室内空気を清浄化する空気清浄装置が開発されている。
ここで、室内空気の清浄化には、空気中の粒子の捕集と脱臭があり、最近では脱臭の要求が大きくなってきている。
【0003】
空気中の粒子を捕集する装置としては半導体製造工場等で使用される所謂クリーンルームが数多く開発されている。例えば、特許文献1に記載のものがある。しかし、同公報に記載されているように、クリーンルームは部屋、あるいは、建物全体として構成される大規模なものであり、病院、オフィス、住宅等に配設することは不可能である。
【0004】
一方、脱臭については、主に営業用の厨房設備のための脱臭装置が開発され、非特許文献1、非特許文献2に多くのものが紹介されている。しかし、この厨房設備用の脱臭装置は多くはオイルミストの除去装置を含み、クリーンルームほどではないにしても、専門的な据え付け工事が必要である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−147811号公報
【非特許文献1】環境省環境管理局大気生活環境室、「ひと目で分かる「脱臭装置」選択ガイド <<2003 飲食店版>>」
【非特許文献2】環境省環境管理局大気生活環境室、「ひと目で分かる「脱臭装置」選択ガイド 2004」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、構造が簡単で、設置が容易な、空気中の粒子の捕集と脱臭をおこなうことのできる空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、
空気清浄装置であって、
床上に配設され、垂直方向に延伸し、下端部に吸入口を設け、上端部に排出口を設けたダクト状のケーシングと、
ケーシング内に配置され空気を吸入口から排出口に向けて送風する送風機と、
ダクト内に低位置から高位置へ順次配設される第1、第2、第3、第4フィルタと、
第3フィルタに紫外線を照射する第1紫外線ランプ、および、第4フィルタに紫外線を照射するる第2紫外線ランプと、を具備し、
第1フィルタと第2フィルタが、高圧洗浄可能な磨耗しない耐腐食性材料の連続した単一細線を、空気の流れに直角な方向に折り曲げながら積層したものを圧縮して形成され、第2フィルタは第1フィルタよりも小さな粒子を捕集できるようにより細密にされていて、
第3フィルタが臭気物質を吸着すると同時に分解する触媒活性炭フィルタで形成され、
第4フィルタが耐腐食性材料で形成されているHEPAフィルタとされている空気清浄装置が提供される。
【0008】
このように構成される空気清浄装置では、第1フィルタで粒径が比較的大きな粒子が捕集され、第2フィルタでは第1フィルタで捕集されなかった粒子が捕集される。この際、第1フィルタと第2フィルタが、洗浄可能な耐腐食性材料の連続した単一細線を、空気の流れに直角な方向に折り曲げながら積層したものを圧縮して形成されているので捕集された粒子が流れの方向に移動して出て行くことはない。そして、第4フィルタでは第2フィルタでも捕集されなかった微小な粒子が捕集される。そして、臭気物質は第3フィルタに吸着して分解される。第1紫外線ランプにより第3フィルタの上流側面にカビが発生するのが防止され、第2紫外線ランプにより第4フィルタの上流側面にカビが発生するのが防止される。
【0009】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、第1フィルタと第2フィルタが、ステンレスで形成されている、空気清浄装置が提供される。
【0010】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明において、第4フィルタが平均粒子径0.3μmの粒子を99.97%捕集できるHEPAフィルタとされている空気清浄装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
各請求項に記載の発明によれば、空気中の粒子は大きいものから小さいものへ第1、2、4フィルタで捕集され、臭気物質は第3フィルタで吸着、分解されるので、一つの装置で粒子の捕集と脱臭の両方をおこなうことができる。また、ケーシングの中に配設される4つのフィルタと送風装置だけで構成され、構造が簡単で、また、設置が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1が本発明の空気脱臭清浄装置の実施の形態の構造を示す図である。
ダクト状のケーシング1は巾と奥行がそれぞれ略600mmの略正方形の断面を有して垂直方向に延伸し、高さは約2000mmである。ケーシング1の下端部の側方に吸入口2が形成され、上端部の側方に排出口3が形成されている。吸入口2には第1フィルタ10が取り付けられている。第1フィルタ10の下流のケーシング1の底面4の上に送風機5が設置されている。
【0013】
第1仕切り壁6が下から約1/4の高さのところに設けられ、第2仕切り壁7が上から約1/4の高さのところに設けられている。第1仕切り壁6は図示しない開口部を有し、その開口部に第2フィルタ20が取付けられている。第1仕切り壁6と第2仕切り壁7の間に複数の第3フィルタ30が配設され、第2仕切り壁7の上面に第4フィルタ40が載置されている。第2仕切り壁7はケーシング1の内側の奥行き方向(図中左右方向)の途中までしか形成されていいない。
【0014】
第3フィルタ30は図中左側の分割されて垂直方向に並ぶ上流側支持板8a〜8cと、図中右側の分割されて垂直方向に並ぶ下流側支持板9a〜9bにより支持されている。上流側支持板8a〜8cのうち8aは第2仕切り壁7に結合されており、下流側支持板9a〜9dのうち9dはケーシング1に結合されている。
【0015】
第1仕切り壁6の下側にある空間を第1空間1aと称し、第2仕切り壁7の上側で第4フィルタ40の上流側の空間を第4空間1dと称し、下流側の空間を第5空間1eと称する。また、上流側支持板8a〜8cの図中左側の空間を第2空間1bと称し、下流側支持板9a〜9bの図中右側の空間を第3空間1cと称する。
第2空間1bには第1紫外線ランプ50が配設され第3フィルタ30に紫外線を照射し、第4空間1dには第2紫外線ランプ60が配設され第4フィルタ40に紫外線を照射する。
【0016】
空気は吸入口2から水平方向に第1フィルタ10を通って仕切り壁6の下方の第1空間1aに流入する。第1空間1aに流入した空気は、送風機5内を通過する。そして、上向きに第2フィルタ20を通過して第1仕切り壁6の上側に達する。第1仕切り壁6の上側に達した空気は、大部分が第2空間1bを経由して、複数の第3フィルタ30を上向き、または、下向きに通過して第3空間1cに達する。そして、第3空間1cを上方に移動し第4空間1dに達する。第4空間1dからは第4フィルタ40を水平方向に通過して第5空間1eに達し、排出口3から外部に排出される。
【0017】
次に、第1フィルタ10、第2フィルタ20の詳細について説明する。
図2は第1フィルタ10の粒子を捕集する主部分の作り方を説明する図であって、ステンレス製の一本の細線Fを、第1層目はS1からE1まで図中左右方向に振りながら平面上で折り曲げを繰り返し、第2層目は第1層目の上でS2からE2まで図中上下方向に振りながら折り曲げを繰り返し、第3層目は第2層目の上でS3からE3まで図中左右方向に振りながら折り曲げを繰り返し、これを所望の完成時の厚さが得られるまで繰り返す。
【0018】
図3は完成された第1フィルタ10の断面図である。折り曲げた細線Fが積層されたものの両側にパンチメタル11a,11bが配設され、それを筐体12が覆っている。筐体12は上流側と下流側にそれぞれパンチメタル12a,12bが配設されている。パンチメタル11a,11b、および筐体12もステンレスで形成されている。
ここで注目すべきは、折り曲げた細線Fは上記のように折り曲げられて積層されているので上流側の最外面から下流側の最外面まで連なるものはないということである。その結果、捕集された粒子が細線Fに沿って第1フィルタ10の下流側に排出されることがない。
なお、第2フィルタ20も全く同じようにして作られる。
【0019】
第1フィルタ10は所謂プレフィルタとして使用され径が約10〜100μmの粒子を捕集するようにされ、第2フィルタ20は所謂中性能フィルタであって径が約1〜10μmの粒子を捕集するようにされている。したがって、第2フィルタ20は第1フィルタ10よりも小さい粒子を捕集することができるように折り曲げた細線Fは第1フィルタ10よりも密に圧縮されている。
第1フィルタ10、第2フィルタ20は、ステンレスで作られているので定期的に高圧洗浄することができ交換する必要がなくメンテナンス費用が安い。従来のプレフィルタ、中性能フィルタは濾紙製、あるいはガラス繊維製であって、高圧洗浄すると破けたり、粉々になったりするために交換することが必要であってその結果メンテナンスの費用が高い。
【0020】
次に、第3フィルタ30について説明する。この第3フィルタ30は脱臭をおこなうためのものであって触媒作用を有する触媒活性炭で形成されている。この触媒活性炭は株式会社エルク(東京都新宿区四谷2丁目8番地)の厨房排気消臭設備EX−NSシステム(非特許文献1、2に記載されている)で既に使用されているものと同じものである。詳細な説明は省略するが、この触媒活性炭は多孔質を成しており、多孔質の多くの孔に臭気物質が吸着せしめられるが、吸着と同時に触媒作用による分解がおこなわれる。その結果、高い脱臭能力を長期にわたって維持する。
また、第1紫外線ランプ50が発する紫外線により第3フィルタ30にカビが発生することが防止される。
【0021】
次に、第4フィルタ40について説明する。この第4フィルタ40は所謂HEPAフィルタである。HEPAフィルタは衆知のように、ガラス繊維製の不織布で形成されている。HEPAフィルタは捕集できる粒子の粒径に応じて各種グレードのものがあるが、この実施の形態で使用されるのは、平均粒子径0.3μmの粒子を99.97%捕集する性能を有するものである。
また、第2紫外線ランプ60が発する紫外線により第4フィルタ40にカビが発生することが防止される。
【0022】
本実施の形態は上記のように構成され、第1フィルタ10で粒子径約10〜100μmの粒子が捕集され、第2フィルタ10で粒子径約1〜10μmの粒子が捕集され、第4フィルタで粒子径0.3μmまでの粒子が捕集され、臭気物質は第3フィルタ30に吸着して分解される。したがって、一つの装置で粒子の捕集と脱臭をおこなうことができる。
【0023】
以下、上記の本発明の実施の形態の性能について説明する。
先ず、粒子の捕集性能については、FED−STD−209でクラス100(0.5μm)、JISB9920ではクラス5(0.5μm)の性能を得ることができた。
すなわち、0.5μm以上の粒径の粒子が1ft3当たり100個以下、1m3当たり3500個以下、のクリーン度を得ることができた。
【0024】
一方、脱臭性能については、以下のような実験結果を得ている。
(1)タバコの臭い
吸入口:臭気指数40 臭気濃度9970
排出口:臭気指数21 臭気濃度132
脱臭効率:(9970−132)/9970=98.6(%)
(2)塗料うすめ液
吸入口:臭気指数35 臭気濃度3090
排出口:臭気指数20 臭気濃度98
脱臭効率:(3090−98)/3090=96.8(%)
【0025】
また、ケーシングの中に配設される4つのフィルタと2つの紫外線ランプと送風装置だけで構成され、構造が極めて簡単である。また、外部部品等との接続もないために据え付け工事は不要であって設置が容易である。したがって、設置スペースさえあれば、いつでも、どこでも設置できる。前述したように、ケーシング1の外形寸法は巾と奥行きが、各約600mm、高さが約2000mmであるので、必要とされる設置スペースは小さく、冷蔵庫あるいは洋服ダンスが設置できるところならばほぼ設置可能である。
にもかかわらず、上述した様な性能を有しており、性能/所要スペースの比は今までにない大きなものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は空気を清浄化する空気清浄機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の構造を示す図である。
【図2】第1フィルタの主部分の作り方を示す図である。
【図3】第1フィルタの断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ケーシング
2 吸入口
3 排出口
5 送風機
10 第1フィルタ
20 第2フィルタ
30 第3フィルタ
40 第4フィルタ
50 第1紫外線ランプ
60 第2紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気清浄装置であって、
床上に配設され、垂直方向に延伸し、下端部に吸入口を設け、上端部に排出口を設けたダクト状のケーシングと、
ケーシング内に配置され空気を吸入口から排出口に向けて送風する送風機と、
ケーシング内に低位置から高位置へ順次配設される第1、2、3、4フィルタと、
第3フィルタに紫外線を照射する第1紫外線ランプ、および、第4フィルタに紫外線を照射する第2紫外線ランプと、を具備し、
第1フィルタと第2フィルタが、高圧洗浄可能な磨耗しない耐腐食性材料の連続した単一細線を、空気の流れに直角な方向に折り曲げながら積層したものを圧縮して形成され、第2フィルタは第1フィルタよりも小さな粒子を捕集できるように、より細密にされていて、
第3フィルタが臭気物質を吸着すると同時に分解する触媒活性炭フィルタで形成され、
第4フィルタが耐腐食性材料で形成されているHEPAフィルタである、
ことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
第1フィルタと第2フィルタが、ステンレスで形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
第4フィルタは平均粒子径0.3μmの粒子を99.97%捕集できるHEPAフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−35100(P2006−35100A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218926(P2004−218926)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(504287000)株式会社エルク (1)
【Fターム(参考)】