説明

空気清浄装置

【課題】抗体フィルタとオゾン発生器を併用し、且つ小型化を図ることが可能な空気清浄装置を提供する。
【解決手段】日射センサ23等を用いて抗体フィルタの表面温度を推定する。そして、推定した表面温度が例えば、閾値温度として設定する50℃を上回った場合には、オゾナイザ12をオンとし、上回らない場合にはオゾナイザ12をオフとする。従って、表面温度が低い場合には、抗体フィルタ15によりウィルスを不活性化することができ、表面温度が高い場合には抗体フィルタ15は変性して不活性化の効果が低下するので、オゾナイザ12を作動させてオゾンによる脱臭、殺菌を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される空気清浄装置に係り、特に、冬季に車内の空気中に含まれる細菌、ウィルスを殺菌、不活性化して乗員に感染するリスクを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における空気清浄装置として、オゾン発生器によりオゾンを発生させて室内の空気を除菌、脱臭し、更に、抗体フィルタを設けることにより、空気中のウィルスを不活性化するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
オゾン発生器と抗体フィルタを併用する空気清浄装置では、上流側から、オゾン発生器、オゾンを除去するためのオゾン分解フィルタ、抗体フィルタの順に配置する構成とした場合には、周囲温度が低くなった際に(例えば、20℃以下の温度)、オゾン分解フィルタでのオゾン分解性能が低下するので、分解しきれなかったオゾンが下流側の抗体フィルタに流れ出してしまい、抗体フィルタの抗体が破壊されてしまうという問題が発生する。
【0004】
そこで、この問題を回避するためにオゾン発生器の上流側に抗体フィルタを設ける構成とすると、抗体フィルタにオゾンが流れ込むという問題を解消できるが、その反面、装置全体が大型化し、車両用の空気清浄装置のように設置スペースに制限がある場合には適さないという問題が発生してしまう。
【0005】
一方で、抗体フィルタは比較的低い温度で効力を発揮し、周囲温度が上昇して所定温度(例えば、50℃)を上回った場合には、抗体フィルタが変性してウィルスの抑制効果が低減し、ウィルスを不活性化することができなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−342142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来における空気清浄装置では、ウィルスを不活性化するための抗体フィルタと、除菌、脱臭用のオゾン発生器を併用する際に、抗体フィルタを下流側に設けると、上流側より流れ出るオゾンにより抗体フィルタが破壊されて機能しなくなるという問題があり、抗体フィルタを上流側に設けると装置が大型化するという問題が生じる。更に、周囲温度が高くなると抗体フィルタが変性してウィルスを不活性化することができなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、抗体フィルタとオゾン発生器を併用し、且つ小型化を図ることが可能な空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、送風機(例えば、ブロワ16)より送られる空気を清浄化して車内に導入する空気清浄装置において、オゾン発生手段(例えば、オゾナイザ12)と、前記オゾン発生手段の下流側に設けられるフィルタ(例えば、抗体フィルタ15)と、前記フィルタの表面温度を測定または推定する表面温度取得手段(例えば、温度推定部31)と、前記表面温度取得手段にて取得した前記フィルタの表面温度が予め設定した上限閾値温度よりも高い場合に、前記オゾン発生手段の作動を許可する作動許可手段(例えば、制御部21)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、車両の外気温度を測定する外気温測定手段(例えば、外気温センサ24)を更に備え、前記作動許可手段は、前記フィルタの表面温度が前記上限閾値温度よりも高いことに加え、前記表面温度取得手段にて取得したフィルタの表面温度と、前記外気温測定手段にて測定された外気温度と、の差分値を任意の演算周期で演算し、この差分値の累積値が予め設定した第1累積閾値を上回った場合に、前記オゾン発生手段の作動を許可することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記表面温度取得手段にて取得したフィルタの表面温度と、前記上限閾値温度との差分値を任意の演算周期で演算し、この差分値の累積値が予め設定した第2累積閾値を上回った場合に、前記フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段と、前記交換時期判定手段にてフィルタの交換時期であると判定された際に、これを報知する報知手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、車両の外気温度を測定する外気温測定手段と、前記外気温測定手段にて測定された外気温度が、予め設定した下限閾値温度(例えば、20℃)以下となる時間の累積時間を演算し、この累積時間が予め設定した閾値時間に達した場合に、前記フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段(例えば、制御部21)と、前記交換時期判定手段にてフィルタの交換時期であると判定された際に、これを報知する報知手段(例えば、表示器22)と、を更に備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1において、車両の外気温度を測定する外気温測定手段と、予め設定した下限閾値温度(例えば、20℃)から、前記外気温測定手段にて測定された外気温度を減算した差分値を任意の演算周期で演算し、この差分値の累積値が予め設定した第2累積閾値を上回った場合に、前記フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段と、前記交換時期判定手段にてフィルタの交換時期であると判定された際に、これを報知する報知手段と、を更に備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5において、前記表面温度取得手段は、車両の外気温度を測定する外気温測定手段(例えば、外気温センサ24)と、車内の温度を測定する内気温測定手段(例えば、内気温センサ25)と、日射量を測定する日射量測定手段(例えば、日射センサ23)と、のうちの少なくとも一つを用いて前記フィルタの表面温度を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る空気清浄装置では、フィルタの表面温度を測定または推定し、この表面温度が上限閾値温度を超えた場合には、オゾン発生手段の作動を許可し、上限閾値温度を超えない場合にはオゾン発生手段の作動を許可しない。従って、フィルタの表面温度が上限閾値以下である場合には、該フィルタを用いて空気中のウィルスを不活性化することができ、また、表面温度が上限閾値を超える場合にはフィルタが変性してウィルスの不活性化の効力を失うので、オゾン発生手段を作動させて脱臭、殺菌を行う。従って、オゾン発生手段とフィルタの双方の利点を活かした高精度な空気清浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄装置に設けられる電装装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の、フィルタ部の構成を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の、日射センサの検出値と抗体フィルタの表面温度との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る空気清浄装置の、制御部による処理動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の、制御部による処理動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態に係る空気清浄装置の、制御部による処理動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第4実施形態に係る空気清浄装置の、制御部による処理動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第5実施形態に係る空気清浄装置の、制御部による処理動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る空気清浄装置の、フィルタ部の他の構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態(第1〜第5実施形態)に係る空気清浄装置に設けられる電装装置の構成を示すブロック図、図2は、フィルタ部の構成を示す説明図である。そして、本実施形態に係る空気清浄装置は、車両に搭載されて車両内の空気を清浄化する。即ち、車両内の空気中に含まれる塵埃を除去し、細菌を除菌し、臭気を除去し、更に、ウィルスを不活性化して空気を清浄化し、清浄化した空気を車両内に供給する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態に係る空気清浄装置のフィルタ部11は、上流側からオゾナイザ(オゾン発生手段)12、プレフィルタ13、オゾン分解フィルタ14、及び抗体フィルタ15の順に配置されており、更に、抗体フィルタ15の下流側には、空気を吸引するためのブロワ16が設けられている。なお、図2では、便宜上フィルタ部11の直後にブロワ16を記載しているが、実際にはフィルタ部11の下流側となる空気通路中の適所に設置される。
【0019】
また、図1に示すように、本実施形態に係る空気清浄装置の電装装置は、装置全体を総括的に制御する制御部21と、フィルタ部11で清浄化された空気を車両内に送出するブロワ16と、オゾン17を発生するオゾナイザ12と、抗体フィルタ15の交換時期等の各種の情報を表示する表示器22と、を備えている。
【0020】
更に、電装装置は、車両内に照射される日射量を検出する日射センサ23と、車両の外気温度を測定する外気温センサ(外気温測定手段)24と、車両内の内気温度を測定する内気温センサ(内気温測定手段)25と、を備えている。そして、これらの各センサ23〜25の検出信号は制御部21に出力される。また、制御部21は、ナビゲーション装置等と接続されており、現在の日付情報が入力されるようになっている。
【0021】
オゾナイザ12は、放電用の電極を備えており、この電極に電圧を印加することにより、空気が流れる空間内にオゾン17を発生させる。
【0022】
制御部21は、日射センサ23、外気温センサ24、及び内気温センサ25の検出信号のうちの少なくとも1つの検出信号に基づいて抗体フィルタ15の表面温度を推定する温度推定部31と、経過時間を計時するタイマ32を備えている。また、後述するように、制御部21は、温度推定部31により推定される抗体フィルタ15の表面温度が上限閾値温度(例えば、50℃)を上回った場合に、オゾナイザ12の作動を許可する機能を備えている。即ち、制御部21は、抗体フィルタ15の表面温度が予め設定した上限閾値温度よりも高い場合に、オゾン発生手段の作動を許可する作動許可手段としての機能を備える。
【0023】
更に、後述するように、制御部21は、外気温センサ24で検出される外気温データに基づき、外気温度が下限閾値温度(例えば、20℃)を下回っている時間の累積が所定の閾値時間に達した場合に、フィルタの交換時期であるものと判定して、表示器22に交換時期を促す画面を表示する機能を備えている。即ち、制御部21は、外気温測定手段にて測定された外気温度が、予め設定した下限閾値温度以下となる時間の累積時間を演算し、この累積時間が予め設定した閾値時間に達した場合に、フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段としての機能を備えている。なお、制御部21は、例えば、CPU、RAM、ROM、及び専用のLSI等を備える、所謂マイコンで構成することができる。
【0024】
そして、本実施形態に係る空気清浄装置では、オゾナイザ12を作動させることにより、オゾナイザ12の下流側にオゾン17が発生し、空気中に含まれる臭気成分がオゾン17により脱臭され、プレフィルタ13により塵埃が取り除かれ、オゾン分解フィルタ14によりオゾン17が分解され、更に、抗体フィルタ15によりウィルスが不活化されることとなる。
【0025】
次に、本発明の第1実施形態に係る空気清浄装置の制御部21による処理動作を図4に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS11において制御部21は、イグニッションがオンとされた場合にこれを検出し、更に、ステップS12において制御部21はブロワがオンとされた場合にこれを検出する。
【0026】
次いで、ステップS13において制御部21は、日射センサ23、外気温センサ24、及び内気温センサ25の各検出データのうちの少なくとも一つを用いて、抗体フィルタ15の表面温度を推定する。
【0027】
ステップS14において制御部21は、推定表面温度と予め設定した上限閾値温度とを比較し、推定表面温度が上限閾値温度以下である場合には(ステップS14でNO)、ステップS13に処理を戻す。他方、推定表面温度が上限閾値温度を上回った場合には(ステップS14でYES)、ステップS15において制御部21は、オゾナイザ12をオンとする。この際、上限閾値温度は抗体フィルタ15が変性しない上限温度(例えば、50℃)に設定することが好ましい。
【0028】
図3は、日射センサ23により検出される日射量の変化(曲線q1)と抗体フィルタ15の表面温度の変化(曲線q2)を示す特性図であり、例えば、曇りの状態から晴れに推移して日射量q1が増加する場合には、抗体フィルタ15の表面温度q2は徐々に上昇する。そして、表面温度が上限閾値温度T1に達した場合に、オゾナイザ12をオンとする。また、上限閾値温度T1に達するまでの期間はオゾナイザ12をオフとする。こうして、上限閾値温度を基準としてオゾナイザ12のオン、オフを切り替えることができるのである。
【0029】
このようにして、第1実施形態に係る空気清浄装置では、抗体フィルタ15の表面温度を推定し、この推定表面温度が上限閾値温度(例えば、50℃)に達しない場合には抗体フィルタ15は正常に機能して空気中の細菌を殺菌し、且つウィルスを不活性化するので、オゾナイザ12をオフとする。従って、オゾナイザ12よる脱臭は行われないものの、オゾナイザ12より流れ出るオゾン17により抗体フィルタ15が破壊することを防止でき、抗体フィルタ15を用いた殺菌、不活化を効果的に行うことができる。
【0030】
また、推定表面温度が上限閾値温度に達した場合には、抗体フィルタ15は温度の上昇により変性して殺菌及び不活性化の機能が失われていると考えられるので、オゾナイザ12をオンとすることにより、オゾン17を発生させて臭気成分を脱臭し、且つ細菌類を殺菌することができる。こうして、抗体フィルタ15の表面温度に応じて抗体フィルタ15或いはオゾナイザ12のうちの一方を選択することにより、適切な空気の清浄化処理を行うことが可能となる。
【0031】
ここで、抗体フィルタ15の推定表面温度が上限閾値温度(例えば、50℃)を超える場合は、季節的には冬季ではないと考えられる。そもそも抗体フィルタ15はインフルエンザウィルス等のウィルスを不活性化することを主たる目的としているので、冬季以外(春、夏、秋)にはあまり必要ではなく、抗体フィルタ15を作用させる必要性が低い。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態に係る空気清浄装置の制御部21による処理手順を示すフローチャートである。初めに、ステップS31において制御部21は、イグニッションがオンとされた場合にこれを検出し、更に、ステップS32において制御部21はブロワがオンとされた場合にこれを検出する。
【0033】
次いで、ステップS33において制御部21は、外気温センサ24により検出される外気温データを取得する。
【0034】
ステップS34において制御部21は、日射センサ23、外気温センサ24、及び内気温センサ25の各検出データのうちの少なくとも一つを用いて、抗体フィルタ15の表面温度を推定する。
【0035】
ステップS35において制御部21は、推定表面温度と外気温センサ24で検出された外気温度との差分を演算し、ステップS36において差分の累積値を演算する。
【0036】
ステップS37において制御部21は、ステップS36の処理で演算された差分の累積値が予め設定した第1累積閾値を上回ったか否かを判定し、上回らない場合には(ステップS37でNO)、ステップS33〜S36の処理を繰り返す。即ち、ステップS33〜S36の処理は所定のサンプリング周期(任意の演算周期)で実行され、1サンプリング周期毎に推定表面温度と外気温度の差分が演算され、且つ、差分の累積値が演算されることとなる。
【0037】
そして、差分の累積値が第1累積閾値を上回った場合には(ステップS37でYES)、ステップS38において制御部21は、オゾナイザをオンとする。
【0038】
このようにして、第2実施形態に係る空気清浄装置では、抗体フィルタ15の表面温度を推定し、且つ外気温度を測定し、推定表面温度と外気温度との差分の累積値が第1累積閾値に達しない場合には抗体フィルタ15は正常に機能して空気中の細菌を殺菌し、且つウィルスを不活性化するので、オゾナイザ12をオフとする。従って、オゾナイザ12よる脱臭は行われないものの、オゾナイザ12より流れ出るオゾンにより抗体フィルタ15が変性することを防止でき、抗体フィルタ15を用いた殺菌、不活化を効果的に行うことができる。
【0039】
また、推定表面温度と外気温度との差分の累積値が第1累積閾値に達した場合には、抗体フィルタ15は温度上昇により変性して殺菌及び不活性化の機能が失われていると考えられるので、オゾナイザ12をオンとすることにより、オゾン17を発生させて臭気成分を脱臭し、且つ細菌類を殺菌することができる。こうして、抗体フィルタ15の表面温度に応じて抗体フィルタ15或いはオゾナイザ12のうちの一方を用いた適切な制御を行うことが可能となる。
【0040】
また、差分の累積値を求めてオゾナイザ12のオン、オフの判断基準としているので、抗体フィルタ15の推定表面温度が偶発的に上昇した場合や、測定エラーにより上昇した場合であっても、オゾナイザ12はオンとならないので、安定的にオゾナイザ12のオン、オフの切り替えを行うことができる。
【0041】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図6は第3実施形態に係る空気清浄装置の制御部21による処理手順を示すフローチャートである。初めに、ステップS51において制御部21は、イグニッションがオンとされた場合にこれを検出し、更に、ステップS52において制御部21はブロワがオンとされた場合にこれを検出する。
【0042】
次いで、ステップS53において制御部21は、外気温センサ24により検出される外気温データを取得する。
【0043】
ステップS54において制御部21は、外気温データに基づき、外気温度が20℃(下限閾値温度)未満となる時間をタイマ32の機能を用いて計時する。そして、ステップS55において制御部21は、ステップS54の処理で計時した時間を累積した累積時間が予め設定した閾値時間(例えば、56時間)に達したか否かを判断する。
【0044】
累積時間が閾値時間に達していない場合には(ステップS55でNO)、ステップS53,S54の処理を繰り返す。そして、累積時間が閾値時間に達した場合には(ステップS55でYES)、ステップS56において制御部21は、抗体フィルタ15の交換を促す内容を表示器22に表示する。例えば、「フィルタの交換時期です!」等の文字を表示器22の画面に表示することにより、ユーザに対して抗体フィルタ15の交換時期であることを認識させる。
【0045】
このようにして、第3実施形態に係る空気清浄装置では、外気の温度が下限閾値温度(例えば、20℃)未満となり、この累積時間が閾値時間(例えば、56時間)に達した場合には、季節が冬季に近づいているものと判断し、抗体フィルタ15を新たなものに交換するようにユーザに促す。従って、インフルエンザウィルス等のウィルスが広まる季節において抗体フィルタ15が新しいものに交換されるので、該抗体フィルタ15による殺菌、不活性化を確実に行うことができる。
【0046】
即ち、上述したように、抗体フィルタ15は主としてウィルスが多く蔓延する冬季に効力を発揮し、冬季以外の季節では必要性は低い。また、抗体フィルタ15は熱に弱いのでむしろ冬季以外の季節においては使用しない方が望ましい。従って、季節が冬季であると判断された場合に、ユーザに対して抗体フィルタ15の交換を促し、新たな抗体フィルタ15が取り付けられた場合には、この抗体フィルタ15を一季節のみ使用し、翌年の冬季に再度交換するというサイクルで使用するのが好ましい。本実施形態では、この交換のタイミングをユーザに通知することにより、抗体フィルタ15の適切な交換を促すことが可能になる。
【0047】
なお、第3実施形態では、外気温が下限閾値温度(例えば、20℃)未満となる時間の累積に基づいて冬季であるか否かを判断するようにしたが、車両にナビゲーション装置等の日付データを備える機器を搭載している場合には、この機器より日付データを取得し、例えば、日付が「11月1日」となった場合に冬季であるものとして、抗体フィルタ15の交換を促すようにしても良い。
【0048】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図7は第4実施形態に係る空気清浄装置の制御部21による処理手順を示すフローチャートである。初めに、ステップS71において制御部21は、イグニッションがオンとされた場合にこれを検出し、更に、ステップS72において制御部21はブロワがオンとされた場合にこれを検出する。
【0049】
次いで、ステップS73において制御部21は、日射センサ23、外気温センサ24、及び内気温センサ25の各検出データのうちの少なくとも一つを用いて、抗体フィルタ15の表面温度を推定する。
【0050】
ステップS74において制御部21は、推定表面温度と予め設定した上限閾値温度とを比較し、推定表面温度が上限閾値温度以下である場合には(ステップS74でNO)、ステップS73からの処理を繰り返す。他方、推定表面温度が上限閾値温度を上回った場合には(ステップS74でYES)、ステップS75において制御部21は、オゾナイザ12をオンとする。この際、上限閾値温度は抗体フィルタ15が変性しない上限温度(例えば、50℃)に設定することが好ましい。
【0051】
ステップS76において制御部21は、抗体フィルタ15の推定表面温度と上限閾値温度の差分を演算し、更に、ステップS77において制御部21は、タイマ32の機能を用いて推定表面温度が閾値温度以上となる時間を計時する。
【0052】
ステップS78において制御部21は、推定表面温度が上限閾値温度を上回った温度、即ち、推定表面温度から上限閾値温度を減算した差分温度と、上回っている時間を乗算する。この乗算結果を積算温度時間とする。
【0053】
ステップS79において制御部21は、ステップS78の処理で求めた積算温度時間が、予め設定した積算温度時間閾値(第2累積閾値)を上回るか否かを判定する。積算温度時間が積算温度時間閾値を上回らない場合には(ステップS79でNO)、ステップS76〜S78の処理を繰り返す。
【0054】
そして、積算温度時間が積算温度時間閾値に達した場合には(ステップS79でYES)、ステップS80において制御部21は、抗体フィルタ15は寿命であるものと判断して、抗体フィルタ15の交換を促す内容を表示器22の画面に表示する。その結果、ユーザに対して抗体フィルタ15の交換時期を認識させることができ、ユーザは抗体フィルタ15の交換作業を適切なタイミングで行うことができることとなる。
【0055】
このようにして、第4実施形態に係る空気清浄装置では、抗体フィルタ15の表面温度が上限閾値温度に達した場合に、オゾナイザ12をオンとすることにより、オゾン17を発生させる。更に、この状況において、抗体フィルタ15は未だ破壊、変性しておらず、殺菌、不活性化の効果を発揮する場合があるので、上述の手順による積算温度時間を算出し、この積算温度時間が積算温度時間閾値に達した後において、抗体フィルタ15の交換時期であることをユーザに通知する。従って、適切なタイミングで抗体フィルタ15の交換作業を行うことができ、抗体フィルタ15による効果的な除菌、不活性化処理を行うことが可能となる。
【0056】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図8は第5実施形態に係る空気清浄装置の制御部21による処理手順を示すフローチャートである。初めに、ステップS91において制御部21は、イグニッションがオンとされた場合にこれを検出し、更に、ステップS92において制御部21はブロワがオンとされた場合にこれを検出する。
【0057】
次いで、ステップS93において制御部21は、外気温センサ24により車両の外気温度を測定する。
【0058】
ステップS94において制御部21は、車両の外気温度と予め設定した下限閾値温度(例えば、20℃)とを比較し、外気温度が下限閾値温度を下回っている場合には、この差分を演算する。
【0059】
ステップS95において制御部21は、タイマ32の機能を用いて外気温度が下限閾値温度を下回っている時間を計時する。
【0060】
ステップS96において制御部21は、外気温度が下限閾値温度を下回った温度、即ち、下限閾値温度から外気温度を減算した差分温度と、下回っている時間を乗算する。この乗算結果を積算温度時間とする。
【0061】
ステップS97において制御部21は、ステップS96の処理で求めた積算温度時間が、予め設定した積算温度時間閾値(第3累積閾値)に達したか否かを判定する。積算温度時間が積算温度時間閾値に達しない場合には(ステップS97でNO)、ステップS93〜S96の処理を繰り返す。
【0062】
そして、積算温度時間が積算温度時間閾値に達した場合には(ステップS97でYES)、ステップS98において制御部21は、抗体フィルタ15の交換を促す内容を表示器22に表示する。例えば、「フィルタの交換時期です!」等の文字を表示器22の画面に表示することにより、ユーザに対して抗体フィルタ15の交換時期であることを認識させる。
【0063】
このようにして、第5実施形態に係る空気清浄装置では、車両の外気温度が下限閾値温度(例えば、20℃)未満となった場合に、外気温度と下限閾値温度との差分として得られる温度とその経過時間とを乗算することにより積算温度時間を求め、この積算温度時間が閾値に達した場合には、季節が冬季に近づいているものと判断し、抗体フィルタ15を新たなものに交換するようにユーザに促す。従って、インフルエンザウィルス等のウィルスが広まる季節において抗体フィルタ15が新しいものに交換されるので、該抗体フィルタ15による殺菌、不活性化を確実に行うことができる。また、外気温度と下限閾値温度の差分値を用いているので、前述した第3実施形態の場合よりも精度良く抗体フィルタ15の交換時期を求めることができる。
【0064】
なお、上述した各実施形態では、図2に示すように、フィルタ部11がプレフィルタ13、オゾン分解フィルタ14、及び抗体フィルタ15をそれぞれ別個に設ける例について説明したが、例えば、図9に示すように、プレフィルタ42、オゾン分解フィルタ43、及び抗体フィルタ44を一体化した3層構造のフィルタ41を使用し、このフィルタ41を三角形状に配置する構成とすることも可能である。このような構成とした場合には、フィルタ41の交換作業が容易となる。
【0065】
以上、本発明の空気清浄装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0066】
例えば、上述した各実施形態では、日射センサ23、外気温センサ24、内気温センサ25の検出データに基づいて抗体フィルタ15の表面温度を推定する例について説明したが、温度センサ等を用いて抗体フィルタ15の表面温度を直接的に測定しても良い。この場合には、表面温度の測定精度が向上するので、より高精度にオゾナイザ12のオン、オフを制御することが可能となる。
【0067】
また、上述した実施形態では、オゾナイザ12の下流側に設けるフィルタとして抗体フィルタ15を例に挙げて説明したが、本発明は抗体フィルタ15に限定されるものではなく、温度上昇により機能の低下を招く性質を有する他のフィルタを用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、抗体フィルタとオゾナイザを併用して空気中の細菌類を除菌し、且つウィルスを不活性化することに利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
11 フィルタ部
12 オゾナイザ
13 プレフィルタ
14 オゾン分解フィルタ
15 抗体フィルタ
16 ブロワ
17 オゾン
21 制御部
22 表示器
23 日射センサ
24 外気温センサ
25 内気温センサ
31 温度推定部
32 タイマ
41 フィルタ
42 プレフィルタ
43 オゾン分解フィルタ
44 抗体フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機より送られる空気を清浄化して車内に導入する空気清浄装置において、
オゾン発生手段と、
前記オゾン発生手段の下流側に設けられるフィルタと、
前記フィルタの表面温度を測定または推定する表面温度取得手段と、
前記表面温度取得手段にて取得した前記フィルタの表面温度が予め設定した上限閾値温度よりも高い場合に、前記オゾン発生手段の作動を許可する作動許可手段と、
を備えたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
車両の外気温度を測定する外気温測定手段を更に備え、
前記作動許可手段は、
前記フィルタの表面温度が前記上限閾値温度よりも高いことに加え、
前記表面温度取得手段にて取得したフィルタの表面温度と、前記外気温測定手段にて測定された外気温度と、の差分値を任意の演算周期で演算し、この差分値の累積値が予め設定した第1累積閾値を上回った場合に、前記オゾン発生手段の作動を許可すること
を特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記表面温度取得手段にて取得したフィルタの表面温度と、前記上限閾値温度との差分値を任意の演算周期で演算し、この差分値の累積値が予め設定した第2累積閾値を上回った場合に、前記フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段と、
前記交換時期判定手段にてフィルタの交換時期であると判定された際に、これを報知する報知手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
車両の外気温度を測定する外気温測定手段と、
前記外気温測定手段にて測定された外気温度が、予め設定した下限閾値温度以下となる時間の累積時間を演算し、この累積時間が予め設定した閾値時間に達した場合に、前記フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段と、
前記交換時期判定手段にてフィルタの交換時期であると判定された際に、これを報知する報知手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
車両の外気温度を測定する外気温測定手段と、
予め設定した下限閾値温度から、前記外気温測定手段にて測定された外気温度を減算した差分値を任意の演算周期で演算し、この差分値の累積値が予め設定した第3累積閾値を上回った場合に、前記フィルタの交換時期であると判定する交換時期判定手段と、
前記交換時期判定手段にてフィルタの交換時期であると判定された際に、これを報知する報知手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記表面温度取得手段は、車両の外気温度を測定する外気温測定手段と、車内の温度を測定する内気温測定手段と、日射量を測定する日射量測定手段と、のうちの少なくとも一つを用いて前記フィルタの表面温度を推定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−200503(P2012−200503A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69867(P2011−69867)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】