説明

空気清浄装置

【課題】
従来の空気清浄装置は、複数の臭気に対応するフィルタを自動的に切り替える方法として、時間制御による切り替えを行っていたが、時間制御で切り替える方法では、例えば突発的に新たに臭気が発生した場合フィルタ切り替えの応答性が低く、複数臭気への対応が十分でないという課題がある。
【解決手段】
脱臭フィルタ5を回転式とし、駆動手段は脱臭フィルタ5を臭気センサ51にて検知した臭気の種類に対応する触媒を通風路11上に露出する位置まで駆動させるため、脱臭フィルタ5の切り替えの応答性が高く、複数の臭気や瞬時発生した臭気を効率的に脱臭することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の臭気を除去するための脱臭フィルタを有する空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気清浄装置として、空気が通過する通気路及びフィルタが収納される収納部を有するチャンバーと、オゾン発生器と、一酸化炭素を酸化除去する第1のオゾン分解フィルタと、活性炭でアルコールを吸着する吸着フィルタと、アンモニア等を酸化除去する第2のオゾン分解フィルタと、芳香を発する芳香フィルタと、これらのフィルタをチェンバーの収納部と通気路内との間で移動させる駆動機構と、この駆動機構を制御する制御盤とを備え、制御盤は、メモリに記憶されている時間帯毎のフィルタ使用パターンに従って、駆動機構を制御して、特定の時間帯に特定のフィルタを通気路内に位置させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−85533(0019、図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気清浄装置は、複数の臭気に対応するフィルタを自動的に切り替える方法として、時間制御による切り替えを行っていたが、時間制御で切り替える方法では、例えば突発的に新たに臭気が発生した場合フィルタ切り替えの応答性が低く、複数臭気への対応が十分でないという課題がある。
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明はフィルタ切り替えの応答性が高く複数の臭気を効率的に脱臭することができる空気清浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気清浄装置は、吸込部と吹出部を有し空気が通過する通風路と、通風路内に設けられ、通風路を通過する空気に含まれる臭気を検知する臭気センサと、臭気センサの下流側に設けられ、臭気を分解する複数種類の触媒を通風路の通風方向と直交方向に横設して構成された脱臭フィルタと、臭気センサが検知した臭気に対応する触媒を含む脱臭フィルタの一部を通風路内に露出させるように駆動する駆動手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る空気清浄装置によれば、臭気センサにて検知した臭気の種類に対応する触媒を通風路上に露出させるため、フィルタ切り替えの応答性が高く複数の臭気を効率的に脱臭することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気清浄装置の概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る脱臭フィルタの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る脱臭フィルタの模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る脱臭フィルタの経過時間と臭気残存率の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態1に係る脱臭フィルタの経過時間と臭気残存率の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る加熱手段の概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る加熱手段の構成斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る脱臭フィルタを加熱再生した効果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態1に係る紫外線ランプの上下駆動の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下本発明の実施の形態に係る空気清浄装置について図1〜9を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の実施の形態1に係る空気清浄装置の概略断面図である。
図1において空気清浄装置は、吸込部9と吹出部10を有し空気が通過する通風路11と、吸込部9と吹出部10を開状態、閉状態にするための可動式の吸込部開閉板1と吹出部開閉板8を備えている。通風路11内には、空気清浄装置外部から空気を取り込むための吸引ファン7、紫外線を発生させる紫外線発生ランプ2、空気中の粒子状物質を捕集する集塵フィルタ3、臭気を検知する臭気センサ51、オゾン発生手段としてのオゾン発生素子4、回転可能に構成された脱臭フィルタ5、脱臭フィルタ5を回転軸50にて回転させるために空気清浄装置に設けられた図示しない駆動手段、駆動手段などを駆動させるために空気清浄装置に設けられた図示しない制御手段、脱臭フィルタ5を加熱する加熱手段6、オゾン発生素子4によって発生したオゾンの濃度を検知するオゾン濃度センサ41が設けられている。
【0011】
集塵フィルタ3は例えばメッシュの細かいHEPAフィルタ (High Efficiency Particulate Air Filter)を使用し、粒径が0.3μmの粒子に対して、99.97%以上が捕集できる。しかしフィルタ表面に詰まったほこりなどは菌やウイルスの温床であり、殺菌・抗ウイルス処置を行う必要がある。
【0012】
紫外線発生ランプ2は、例えば253.7nmの波長を発生させる低圧水銀ランプを使用し、紫外線によって細胞DNAに化学反応を起こさせ、菌やウイルスを死滅させることを目的とする。なお、紫外線は波長10〜400nmの電磁波のことを指している。一般的に言われる紫外線は太陽光に含まれているUV−A(315−400nm)、UV−B(280〜315nm)、UV−C(280以下)のことである。波長が短いほどエネルギーが高く、殺菌・反応性が高いが、殺菌作用の強い波長は253.7nmである。なお、紫外線発生ランプ2の波長はオゾンも同時に発生できる波長としてもよい。なお、光は直接細菌やウイルスに作用するので、菌やウイルスに照射しないと効果がない。そのため、紫外線発生ランプ2は集塵フィルタ3の前に設置することが好ましい。
【0013】
オゾン発生素子4は高効率なオゾン生成ができる高圧放電、例えば無声放電を行うことにより、短時間で高濃度のオゾンが得られる。なお、オゾンは酸素原子3個からなる強力な酸化剤で、空気浄化、脱臭に幅広い分野で利用されている。オゾンは放電によって容易に発生でき、フッ素に次ぐ強い酸化力を持っており、余分に用いても自然に分解して無害な酸素になる。なお、高濃度のオゾンは漏洩すると不快臭や人体に悪影響を与える可能性があるので、オゾンの使用は空気清浄装置の内部清浄化に限る。
【0014】
図2は脱臭フィルタ5の斜視図である。
脱臭フィルタ5は臭気センサ51の下流側に設けられ、後述する複数種類の触媒を通風路11の通風方向と直交方向に横設して構成されている。
生活環境における臭気は例えばトイレや、下駄箱、ペット、喫煙、人体から発生する。つまりこれらの臭気は人間の生活とともに発生し、その臭気は大きく分けると、アンモニア、トリメチルアミンなどが含まれている窒素化合物(N系臭気)、メチルメルカプタンや硫化水素などの硫黄化合物(S系臭気)、そしてアセトアルデヒド、酢酸、酪酸等のアルデヒド・有機酸類化合物の3種類に分けられる。これらの臭気類は生活環境における臭気閾値の低い臭気であり、つまりこれらの臭気の除去は臭気強度の低下に大きく影響する。そのため、脱臭フィルタ5は上述した3種類臭気の除去に特化した3種のフィルタ、つまり窒素化合物除去脱臭フィルタ52、硫化物除去脱臭フィルタ53、アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54から構成されている。
【0015】
なお、窒素化合物除去脱臭フィルタ52、硫化物除去脱臭フィルタ53、アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54は例えば活性炭、ゼオライト、白金、銀、パラジウム、鉄、クロム、銅、マンガン及びその酸化物である脱臭目的の触媒の種類および配合の割合を変更することによって作成する。なお、窒素化合物除去脱臭フィルタ52、硫化物除去脱臭フィルタ53、アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54は添着の触媒はそれぞれ違うが、所定の臭気除去性能を保つため、フィルタの圧力損失はすべて同じであることが好ましい。
【0016】
図3は脱臭フィルタ5の模式図である。
一般家庭において検出される臭気の種類の比はおよそ窒素化合物:硫黄化合物:アルデヒド・有機酸類化合物=1:1:2である。これは、調理臭などアルデヒド・有機酸類化合物は生活環境に多く見られ、種類が多いためである。つまり、アルデヒド・有機酸類化合物を脱臭する機会が一番多いということになる。そのため図3に示すように脱臭フィルタ5も、窒素化合物除去脱臭フィルタ52と硫化物除去脱臭フィルタ53に比べ、アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の面積が大きくなるように構成されていることが望ましい。
【0017】
また、空気清浄装置の内部にはオゾン発生素子2を設けているので、脱臭フィルタ5の触媒配合として二酸化マンガン(MnO2)、酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化ニッケル(NiO)などの金属触媒または活性炭を1種類、或いは1種類以上を配合する。これらの触媒、吸着剤を配合することによって、脱臭フィルタ5は脱臭の役割を果たすだけでなく、オゾン分解の役割も果たす。
【0018】
さらに、脱臭フィルタ5は円盤形状に形成されており、制御信号からの信号によって駆動する駆動手段により回転駆動する。駆動手段は、脱臭フィルタを任意の位置に移動できればなんら限定されるものでなく、例えばモータ、ばね、磁石などを利用する方法が挙げられる。なお、脱臭フィルタ5の形状は、自由に回転できるのであれば多角形状としてもよい。
【0019】
図4は窒素化合物除去脱臭フィルタ52と複合臭気除去用脱臭フィルタによって窒素化合物を除去したときの経過時間と臭気残存率の関係を示すグラフである。
図5は窒素化合物除去脱臭フィルタ52と複合臭気除去用脱臭フィルタによって窒素化合物以外の臭気を除去したときの経過時間と臭気残存率の関係を示すグラフである。
窒素化合物の除去に特化した窒素化合物除去脱臭フィルタ52は、窒素化合物の除去において、複数種類の臭気に対応する複合臭気除去用脱臭フィルタよりも高い除去性能を示した。しかし、窒素化合物以外の、例えば硫黄化物、アルデヒド・有機酸類化合物などを処理した場合、窒素化合物の除去に特化した窒素化合物除去脱臭フィルタ52は、臭気を除去するための触媒の種類や配合の割合に選択性があるため、複合臭気除去用フィルタよりも除去性能が落ちる結果を示した。
【0020】
図4と図5の結果、および人間が生活する室内環境において、アンモニアなどの窒素酸化物や硫化水素等の硫黄化物は瞬時発生する場合が多いことを鑑みると、臭気を脱臭することにおいては、瞬時発生する臭気の種類にあわせて適切に脱臭フィルタ5を切り替えることが重要であることがわかる。そこで本実施の形態に係る空気清浄装置は、臭気センサ51の検知結果に応じて脱臭フィルタ5を切り替える。
【0021】
臭気センサ51は空気中の臭気に対し、少なくとも窒素化合物、硫黄化合物、アルデヒド・有機酸類化合物をそれぞれ識別することができる。臭気センサ51が臭気を検知、識別すると、駆動手段は脱臭フィルタ5を回転駆動させ、臭気センサ51が検知した臭気に対して除去作用の高い触媒を通風路11上に露出させる。これにより瞬時発生した臭気に対しても適切に脱臭フィルタ5を切り替えることができる。
それぞれの識別性能を上げるため、臭気センサ51は、それぞれ前記3種類の臭気に強いIRセンサで構築しても良いし、臭気センサセットとして、3つの半導体式センサによって感知した臭気濃度のバランスで脱臭フィルタ5の回転を判断しても良い。
【0022】
図6は本発明の実施形態1に係る加熱手段6の概略断面図である。
図6に示すように、加熱手段6は脱臭フィルタ5の下側両面、つまり吸込部9から吸い込まれた空気の流れと極力干渉しない位置に設けられている。
【0023】
次に、空気清浄装置の動作について説明する。
空気清浄装置に設けられた操作手段を操作することによって空気清浄装置が運転状態となると、まず制御手段は吸込部9に設けられた吸込部開閉板1と吹出部10に設けられた吹出部開閉板8を開状態とさせ、そして吸引ファン7によって空気清浄装置外部の空気は装置内に吸引される。吸い込まれた空気の中に含まれている粉塵や菌、ウイルスなどの粒子状物質は集塵フィルタ3で捕集される。集塵フィルタ3で捕集できない臭気を含む空気は通風路11下流に流れ、臭気センサ51まで到達する。
【0024】
集塵フィルタ3を通過した後の空気に含まれている臭気は臭気センサ51で感知され、臭気センサ51は検知した臭気が窒素化合物、硫黄化合物、アルデヒド・有機酸類化合物の3種類の臭気のいずれに当たるかを識別する。制御手段は臭気センサ5の識別結果に基づいて駆動手段を駆動させ、駆動手段は臭気センサ51が識別した臭気に対して除去性能の高い触媒が通風路11上に露出されるように脱臭フィルタ5を回転させ、臭気に強い触媒で空気中の臭い成分を除去する。
【0025】
ここで、臭気センサ51が複数の臭気を検知した場合、臭気センサ51が検知した各臭気の濃度により、制御手段は通風路11上に露出させる各触媒の割合を変えるように駆動手段を駆動させる。例えば通過気流中に窒素化合物とアルデヒド・有機酸類化合物の複合臭気を臭気センサ51が検知すると、駆動手段は脱臭フィルタ5を回転駆動させ、窒素化合物特化脱臭フィルタ52とアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54を通風路11上に露出させる。このとき、窒素化合物よりもアルデヒド・有機酸類化合物の臭気濃度が高いことを臭気センサ51が検知したら、駆動手段は脱臭フィルタ5に対して窒素化合物除去脱臭フィルタ52よりもアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の面積が多くなるように通風路11上に露出させるよう回転させる。なお、窒素化合物除去脱臭フィルタ52とアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の組み合わせ以外にも、硫黄化合物除去脱臭フィルタ53とアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54、窒素化合物除去脱臭フィルタ52と硫黄化合物除去脱臭フィルタ53、窒素化合物除去脱臭フィルタ52と硫黄化合物除去脱臭フィルタ53とアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の組み合わせも可能であることは言うまでもない。
【0026】
前述した臭気に対する触媒の組み合わせの具体例としては、例えばトイレ臭は窒素化合物と硫黄化合物の複合臭気なので窒素化合物除去脱臭フィルタ52と硫黄化合物除去脱臭フィルタ53の組み合わせを用いて臭気を除去する。この他にもタバコ臭にはアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54と窒素化合物除去脱臭フィルタ52の組み合わせを露出させ、調理臭や体臭はほぼアルデヒド・有機酸類化合物なのでアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54のみ、ペット臭や灯油は窒素化合物と硫黄化合物と少量ながらアルデヒド・有機酸類化合物が含まれるので、硫黄化合物除除去脱臭フィルタ52と硫黄化合物除去脱臭フィルタ53とアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の組み合わせを露出して臭気の除去を行う。
【0027】
図7は脱臭フィルタ5および加熱手段6を流路方向から見た時の構成斜視図である。
図7に示すように、加熱手段6脱臭フィルタ5を挟み込むように配置されている。加熱手段6にはヒータ61が取り付けられており、ヒータ61は40〜300℃にて発熱する。また、アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54は使用頻度が高く、またアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54のみを用いて除去するような臭気も多いため、図7に示すように加熱手段6の面積はアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の面積と略同一、つまり脱臭フィルタ5の半分を覆うほどの面積である。なお、通風路11に加熱手段6に覆われていない脱臭フィルタ5の残り半分が露出する構造の空気清浄装置の場合では脱臭フィルタ5のおよそ半分をアルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54が占めるように構成することが望ましいが、加熱手段6の大きさは脱臭フィルタ5の半分と限るものではなく、それに伴い通風路11上に露出する脱臭フィルタ5の割合、形状との関係によっても変わる。
【0028】
図8は脱臭フィルタ5を加熱再生した効果を示すグラフである。縦軸は臭気の除去率、横軸は経過時間を示している。
脱臭フィルタ5は空気中に含まれる臭気を除去する内に、フィルタ添着の触媒は徐々に劣化し、その結果フィルタの除去性能は初期除去性能の10%まで落ちる。そこで、脱臭フィルタ5表面に付着した臭い成分を除去するために、脱臭運転を一定時間行うと、制御手段は加熱手段6に通電する。加熱手段6は脱臭フィルタ5を加熱し、触媒の活性化を高め、常温で分解できない成分を熱で取り除く。これにより脱臭フィルタ5は初期性能に近いところまで除去性能が回復し、脱臭フィルタ5はより長期間高い脱臭性能を保つことができる。
【0029】
空気清浄装置の運転停止後、あるいは臭気センサ51感知の累積臭気量(臭気濃度×運転時間)によって、あるいは空気清浄装置に予め設定された所定時間運転が継続した場合、あるいは使用者が操作手段で設定すると、空気清浄装置はフィルタ類の自動清掃を行う。集塵フィルタ3の清掃は紫外線の照射で行い、脱臭フィルタ5の清掃は加熱とオゾンによって行う。
【0030】
クリーニングが実行されると、まず吸込部開閉板1と吹出部開閉板8が可動することによって吸込部9と吹出部10を閉状態にして通風路11を密閉する。これは、臭気官能基の酸化反応が充分進行しない場合発生する中間生成物や不完全酸化物、例えばエタノールの酸化反応において酢酸と水まで分解する過程で中間生成物として発生するアセトアルデヒド等が外部へ排出されることを防ぐためである。前述した理由の他に通風路11を密閉する理由としては、紫外線照射時の波長253.7nmの光は皮膚や目に害があるので紫外線が外部へ漏れないようにするため、また、オゾンも同時に発生させる紫外線発生ランプ2を使用する場合、空気清浄装置排出口のオゾン濃度の制御が難しく、高濃度(50ppb以上)のオゾンが外部へ漏洩するのを防ぐため、等が挙げられる。
【0031】
集塵フィルタ3の清掃において、紫外線発生ランプ2は集塵フィルタ3の風に当る面、つまり通風路11上流側の面に紫外線を照射し殺菌を行う。紫外線発生ランプ2が253.7nmの紫外線を放射すると、その紫外線は集塵フィルタ3に付着した細菌細胞の核酸(DNA)に吸収され、化学変化を起こし、細菌細胞に損傷を与える。
【0032】
図9は紫外線発生ランプ2の上下駆動の模式図である。
波長253.7nm紫外線の照射強度は照射対象物との距離と比例する。つまり効率よく紫外線を利用し集塵フィルタ3の表面と一定照射強度を得るためには、集塵フィルタ3と紫外線発生ランプ2の間の距離を一定にする必要がある。そこで、図9に示すように、制御手段は紫外線発生ランプ3が集塵フィルタ3の表面と一定距離になるように図示しないランプ駆動手段を上下駆動させ、これにより集塵フィルタ3の表面を満遍なく殺菌することができる。
【0033】
次に脱臭フィルタ5の清掃においては、加熱手段6による加熱再生の他にオゾンも用いることによって臭気をより一層分解する。まず加熱手段6は脱臭フィルタ5の一定負荷の脱臭運転を行った部分に対して、40〜300℃範囲の温度で一定時間加熱し、触媒の加熱再生を行う。加熱再生を行った後、駆動手段は脱臭フィルタ5を回転し、脱臭フィルタ5の加熱された部分を通風路上に出す。その後オゾン発生素子4はオゾンを発生し、脱臭フィルタ5表面の付着物と反応させる。オゾンの反応は熱によって更に活性化され、脱臭フィルタ5の再生効率を高める。また、消費されなかったオゾンは脱臭フィルタ5に含有されるオゾン分解触媒で分解される。また、オゾンは高温度によっても分解が促進されるため、通常よりも短時間でオゾン濃度を低下させることができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、脱臭フィルタ5を回転式とし、駆動手段は脱臭フィルタ5を臭気センサ51にて検知した臭気の種類に対応する触媒を通風路11上に露出する位置まで駆動させるため、脱臭フィルタ5の切り替えの応答性が高く、複数の臭気や瞬時発生した臭気を効率的に脱臭することができる。
【0035】
また、複数の触媒を通風路11の通風方向と直交方向に横設して構成された脱臭フィルタ5を通風路11内に設けたため、複数枚の触媒を通風路上に直列に設ける場合と比べて圧損が小さくて済む。圧損が大きいと空気を吸い込むための吸引ファン7も大きくなり、装置全体の大型化につながるので、圧損が小さくなることによって空気清浄装置の小型化を図ることができる。
【0036】
また脱臭フィルタ5を回転させることにより、脱臭フィルタ5よりもサイズの小さい加熱手段6で脱臭フィルタ5全体を加熱することができる。これによって加熱手段6を大型化する必要が無いため小型の空気清浄機を提供することができる。
【0037】
また、脱臭フィルタ5を回転式にし、脱臭フィルタ5の一部に対して加熱手段6で加熱をすることで脱臭フィルタ5は常に再生できるようになるため、長時間の連続使用が可能で、より長期間高い脱臭性能を保つことができる空気清浄装置を提供することができる。
【0038】
また、脱臭フィルタ5を窒素化合物除去脱臭フィルタ52と硫化物除去脱臭フィルタ53に比べ、アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ54の面積が大きくなるように構成することによって、臭気物質の中で一番割合の多いアルデヒド・有機酸類の脱臭により適した構造とすることができる。
【0039】
また、複数の臭気を臭気センサ51が検知すると、制御手段は駆動手段を臭気センサ51が検知した複数の臭気の濃度の割合に応じて脱臭フィルタ5を回転させるように駆動させることによって、より効率的な脱臭を行うことができる。
【0040】
また、加熱手段6を脱臭フィルタ5の両面に設けることで、片面加熱より速いスピードで高い温度が得られ、脱臭フィルタ5の加熱再生時間の短縮ができる。
【0041】
また、加熱手段6が吸込部9と干渉しない位置に設けられた、つまり通風路11をさえぎる抵抗とならないため、通風抵抗の上昇を抑えることができ、外部から空気を取り入れるための吸引ファン7の大型化を防ぐことができる。更にヒータ61表面が油や埃などに汚染されて性能低下することを防ぐことができる。
【0042】
また、集塵フィルタ3の表面を紫外線発生ランプ2によって除菌する際、紫外線発生ランプ2をランプ駆動手段によって上下駆動させることにより、集塵フィルタ2の表面を満遍なく殺菌することができる。
【0043】
また、脱臭フィルタ5に付着した臭気をオゾンによって分解することで、オゾンは温度により分解され、反応速度も速くなるため、熱とオゾンの相乗効果によってより短時間で脱臭フィルタ5に付着した臭気を除去することができる。
【0044】
また、オゾン発生素子4にてオゾンを発生させている間は制御手段は吸込部9、吹出部10を閉状態とすることで、高濃度のオゾンが漏洩して人体に触れないように通風路11を閉鎖することができる。これは、高濃度のオゾンは人体に有害であるためである。また、通風路11内を閉鎖することでオゾンが空気中の臭気を除去するのに充分な反応時間を確保できるので、より効率的に脱臭フィルタ5に付着した臭気の分解を行うことができる。
【0045】
なお、臭い物質は低分子になるほど刺激的で強いにおいになる傾向があるため、空気清浄装置を流れる空気中に、複合臭気が含まれた場合、駆動手段は優先的に低分子の化合物を除去するように脱臭フィルタ5の回転を制御してもよい。これにより、刺激的で強いにおいから脱臭するため、より効率的な脱臭を自動的に行うことができる。
【0046】
なお、空気清浄装置に、強制的にタバコ臭(アンモニア・アセトアルデヒド・酢酸等)、生ゴミ臭(メチルメルカプタン、トリメチルアミン)、人体臭(ノネナール)、調理臭(VOC)、トイレ臭(アンモニア、硫化物)などを脱臭する制御モードを搭載し、空気清浄装置本体に設けた操作手段で制御モードを指定して運転させてもよい。これにより、より確実に効率的な脱臭を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1吸込部開閉板 2紫外線発生ランプ 3集塵フィルタ 4オゾン発生素子 41オゾン濃度センサ 5脱臭フィルタ 50回転軸 51臭気センサ 52窒素化合物除去脱臭フィルタ 53硫黄化合物除去脱臭フィルタ 54アルデヒド・有機酸類除去脱臭フィルタ 6加熱手段 61ヒータ 7吸引ファン 8吹出部開閉板 9吸込部 10吹出部 11通風路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込部と吹出部を有し空気が通過する通風路と、
前記通風路内に設けられ、前記通風路を通過する前記空気に含まれる臭気を検知する臭気センサと、
前記臭気センサの下流側に設けられ、臭気を分解する複数種類の触媒を前記通風路の通風方向と直交方向に横設して構成された脱臭フィルタと、
前記臭気センサが検知した前記臭気に対応する触媒を含む前記脱臭フィルタの一部を前記通風路内に露出させるように駆動する駆動手段と、を備えたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記脱臭フィルタを回転駆動させることを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記複数種類の触媒のうち少なくとも2種類以上の触媒を含む前記脱臭フィルタの一部を前記通風路内に露出させることを特徴とする請求項2記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記臭気センサが複数種類の臭気を検知すると、前記駆動手段は前記臭気センサが検知した前記複数種類の臭気の濃度の割合に応じて前記脱臭フィルタを回転させることを特徴とする請求項3記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記脱臭フィルタを窒素化合物、硫黄化合物およびアルデヒド・有機酸類化合物に対し除去性能が高い触媒にて構成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記触媒フィルタを構成するアルデヒド・有機酸類化合物に対し除去性能が高い触媒の表面積は、前記脱臭フィルタを構成する窒素化合物および硫黄化物に対し除去性能が高い触媒の面積よりも大きいことを特徴とする請求項5記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記脱臭フィルタを加熱するための加熱手段を備え、
前記加熱手段は、前記通風路の通風方向と干渉しない位置に設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の空気清浄装置。
【請求項8】
前記脱臭フィルタ上流側にオゾンを発生させるオゾン発生手段を備え、
前記脱臭フィルタはオゾン分解触媒を含有することを特徴とする請求項7に記載の空気清浄装置
【請求項9】
前記吸込部と前記吹出部とをそれぞれ開閉可能とし、
少なくとも前記オゾン発生手段が駆動している間は前記吸込部と前記吹出部との両方を閉状態とすることを特徴とする請求項8記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254239(P2012−254239A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130029(P2011−130029)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】