説明

空気熱交換システム及び使用する空気熱交換器

【課題】 輻射用パネルヒーターに冷温水を循環する居室内冷暖房システムに於いて、居室内の湿度コントロールシステムを合理的に一体化する。
【解決手段】 水熱交換ユニット6Cから放熱回路7を引出して輻射用パネルヒーター7Aを配置した冷温水循環タイプの冷暖房システムに於いて、放熱回路7の水熱交換ユニット6Cの近傍から空気熱交換器1用の冷温水循環回路6を分岐し、冷温水循環回路6は、空気熱交換器1を経由して、還流を放熱回路7と合流させて水熱交換ユニットに還流させると共に、空気熱交換器1には、吸気回路3、供給回路4及びドレン回路8を連設し、居室内の温湿度及び循環水の温度を検知回路5で検知して空調システムを制御運転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温水循環による室内輻射冷暖房システムに、居室内空気を除湿又は加湿する空気熱交換システムを付加したものであり、エアーコンディショニングの技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
空気は、冷却器で冷却と同時に相対湿度が上昇し、露点温度(dew point)より低下すると、その水分差は凝縮水となって冷却器から排水出来、所謂減湿作用が出来るもので、該作用を利用した空気の減湿器は、大型のオフィスビルなどの建物のエアーコンディショニングから一般家庭まで、多用途に広く採用されており、建物内空気の除湿手段は各種提案され、実施されている。
【0003】
図8(A)は、従来例1の除湿器であって、特許文献1として挙げたものであり、本体内には、居室内空気中の水蒸気を吸着する除湿ロータと、除湿ロータを回転させる駆動手段と、除湿ロータから水蒸気を放出させる発熱ユニットと、発熱ユニットによって除湿ロータから放出された高温高湿空気を結露させる熱交換器と、熱交換器を通過した高温高湿空気を発熱手段に戻すダクトを収納し、発熱ユニット、除湿ロータ、熱交換器、ダクトは仕切板によって支持されて、本体内部に固定されている。
【0004】
そして、第1送風手段によって、発熱ユニット、除湿ロータ、熱交換器、ダクトの順序で通過する閉循環風路と、第2送風手段によって、熱交換器で冷却するとともに、除湿ロータに水分を吸着させて吹出口から乾燥空気を送出する風路を形成している。
尚、閉循環風路中の熱交換器内で結露して生じた結露水は、排水タンクに貯えるようになっている。
【0005】
また、図8(B)は、従来例2の除湿器であって、特許文献2として挙げたものであり、水分吸着材である除湿ロータと、室内からの空気を除湿ロータの吸着領域を介して室内に戻すための除湿通路と、室内からの空気を除湿ロータの再生領域を介して屋外に排出するための排気通路と、排気通路の除湿ロータの上流域に配置して除湿ロータの再生領域に流入する空気を加熱する加熱手段と、除湿通路及び排気通路に風を送るファン、とを備えたものである。
【0006】
そして、除湿器は、ファンによって除湿通路に風を送り、室内からの空気を除湿ロータの吸着領域を介して室内に戻すことにより、室内空気の水蒸気を除湿ロータの吸着領域の吸着材に吸着させ、除湿された空気を加熱手段により加熱した後、除湿ロータの再生領域を介して室外にする。
そして、除湿ロータに吸着した水蒸気で脱着された空気を加湿し、加湿された空気を屋外に排出すると共に、除湿ロータを回転して有効吸着材を吸着領域に移し、吸着材の再生と再生吸着材の吸着領域への転位により、除湿ロータでの反復除湿作用を可能とし、室内空気の水分を多湿空気として屋外に排出するものである。
【0007】
また、図9(A)は、従来例3の水熱源ヒートポンプ式輻射パネル用空調機の説明図であって、特許文献3として挙げたものであり、冷媒回路は、圧縮機、四方弁、第1水熱交換器、減圧弁、第2水熱交換器、除湿用空気熱交換器、更に四方弁、アキュームレーター及び圧縮機の順に冷媒が循環する。
また、第1水循環回路が、第1水熱交換器、温水ボイラー、クーリングタワー及び第1循環ポンプから形成され、第2水循環回路(冷温水循環回路)が、第2水熱交換器、輻射冷暖房用パネル、及び第2循環ポンプから形成されたものである。
【0008】
そして、空調機の冷房運転時には、冷媒は、圧縮機で圧縮された後、四方弁を通り、第1水熱交換器で凝縮し、減圧弁を経て減圧され、第2水熱交換器及び除湿用空気熱交換機で蒸発し、四方弁及びアキュームレーターを経由して圧縮機に戻り、冷媒回路を循環する。
この間、第2循環ポンプを駆動すると、冷媒は、第2水熱交換器内部で循環水と熱交換し、冷水が第2水循環回路の輻射パネルに送水されて輻射冷房に供される。
更に、冷媒は、空気熱交換器で、除湿用ファンによって送風される室内空気と熱交換し、冷却された空気は、強制対流によって冷房に供され、このとき、室内空気の露点温度が、空気熱交換器内の冷媒の蒸発温度以上のときは除湿される。
【0009】
そして、除湿用空気熱交換器での冷媒の蒸発温度を調整して、空気熱交換器で除湿される室内空気の露点温度より、輻射パネルの表面温度は高く設定されるので、輻射パネル表面に結露が発生することはない。
該輻射パネルと除湿用空気熱交換器とを備えた空調機では、冷房開始時に、室内空気が所定の温度に低下するまで強制対流により室内を冷房し、その後、空気熱交換器による弱冷房と、輻射パネルによる輻射冷房とを組み合せることと成る。
また、暖房運転時には、除湿用ファンの駆動を停止して、空気熱交換器での室内空気との熱交換は実施しない。
【0010】
また、図9(B)は従来例4であって、非特許文献1として挙げたもので、ルームエアコンとして普及しているものであり、室内の空気をルームエアコン内に吸い込み、フィルターやコイルの中を通過させて、吹出口から再び室内に送風するための送風機と、送風機によって導かれた室内空気から熱を奪って冷却し、更に空気中の水分を取り除く冷媒コイルと、室内空気に熱を加えて暖める電気ヒーターと、空気中のゴミを濾過するエアフィルターと、冷媒コイルからの低圧高温の冷媒ガスを圧縮し、高温高圧ガスとしてコンデンサ(凝縮機)に送る圧縮機と、コンデンサファンによって冷やして、ガスを液体に戻す空冷コンデンサと、空冷コンデンサからの冷媒をガス状冷媒にする膨張弁とから成り、膨張弁によって低温低圧となった冷媒は冷媒コイルに送られるもので、該使用サイクルを順次繰返すものである。
【0011】
また、ケーシング内に収納するサーモスタットは、室内温度を一定にするもので、夏季は、室内が暑ければ冷凍機(圧縮機、コンデンサ、膨張弁等)を稼動し、寒ければ停止させるもので、冬季は、寒ければ電気ヒーターを稼動し、暑くなれば停止させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−20718号公報
【特許文献2】特開2002−102642号公報
【特許文献3】特開2006−349270号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】(株)オーム社、平成22年3月20日、第1版第42刷発行、小原淳平編、「100万人の空気調和」第140頁「第6章、空調方法さまざま」、「6.1項、いちばん簡単な空調方法 図6.1、ルームクーラー」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来例1(図8(A))の除湿器は、凝縮の熱源として室内空気を使用するため、再生用空気の温度を、発熱ユニットにより室温以上に上昇させなければならず、発熱ユニットへの入力エネルギーが大となり、且つ電力を減湿熱源とし、電力を熱に換えるため、エネルギー効率が悪く、ランニングコスト上、問題がある。
また、除湿器は、排水タンクの容量が小さく、排水処理手段が煩わしい。
【0015】
従来例2(図8(B))の除湿器は、吸着材が、ハニカム状又は多孔に形成される除湿ロータの吸着領域を、ターボファンによって室内空気が通って除湿された後に、ターボファンに吸い込まれて除湿された空気の一部は、除湿回路を介して一方の吹出口から吹出して、ヒーターにより加熱し、除湿ロータの再生領域に供給して再生領域の吸着材から水を脱着する。
そして、水分を脱着して加湿された加湿空気を、排気通路から屋外に排出するため、凝縮機やタンクは不要となる。
【0016】
しかし、吸着材を除湿ロータとして用いるため、吸着材は高湿度(相対湿度:60%)からのみの反応であり、除湿ロータの形状を大きくすれば、駆動、騒音、ケーシングの制約上から、充分な除湿能力が得られない。
また、空気を加熱するヒーターは消費電力が大きく、除湿器は室内側の外壁面配置となるため、逆風に対応する必要があり、ターボファンの能力が大となるので運転時の騒音が大となる欠陥を有し、室内への給気温度が除湿時の反応熱で上昇する欠陥もある。
【0017】
また、従来例3(図9(A))の水熱源ヒートポンプ式輻射パネル用空調機は、冷媒回路の四方弁及び第2水熱交換器間に、除湿用空気熱交換器、除湿用ファンを配置して、除湿用ファンで送風する室内空気を除湿用空気熱交換器で熱交換冷却するものであり、室内空気の露点温度が空気熱交換器内の冷媒の蒸発温度以上のとき、除湿されるものである。
【0018】
そして、冷房開始時には、室内空気が所定の温度に低下するまで、強制対流により室内を冷房し、その後、空気熱交換器による弱冷房と、輻射パネルによる輻射冷房との協仂冷房となり、空気用及び水用の2回路の設置が必要で、コスト面の課題がある。
また、熟練の技術者での作業となり、且つ空調機械室を設置しての維持保守技術者の配置も必要となる。
従って、従来例3の空調機は、冷暖房時に、室内が設定温度に達するまでは、強制対流が必須で、床面及び浮遊するゴミ、埃を巻き上げる風を受けることとなり、人身に不快となると共に、ダクトを介しての空気伝播音や固体伝播音による騒音、及び気流や空気分布による温度斑が発生する。
また、不良導体の空気を、熱媒体とするため、熱ロスや経済性の課題がある。
【0019】
また、従来例4(図9(B))のルームエアコンは、普及率が高く、手軽に使用出来て、省エネルギー効率も高いが、寒冷地での暖房熱不足、立上りの遅さが欠陥であり、強制対流方式であるため、吹付け風による不快感、チリ、埃を巻き上げる衛生上の欠陥、居室内の温度分布に不均斉を生ずる問題がある。
【0020】
また、温度環境は、高温でも低湿度であれば涼しさを感じるものであるが、従来例4の如き、ルームエアコンは、減湿しながら居室内の温度を下降させるサーモスタットによる温度コントロールであって、指定温度に達すると室外機、ルームエアコン内の送風機が停止し、湿度が高くても室温のみで停止するため、湿度調整が出来ず、減湿は、必要以上に室温を低下させることとなり不快となる。
【0021】
そして、該ルームエアコンは、外気を取り入れて室内空気と共に、夏季は、低温低湿にして室内に給気し、冬季は、高温低湿で室内に給気するため、熱的に非効率である。
しかも、冬季は屋外の乾燥空気を室内に採り入れるため、居室内の湿度に影響を与え、バクテリア、ウィルスの活動を活発にし、居室内に呼吸疾患を招く問題すらある。
本発明の空気熱交換システムは、これら従来例の問題を解決し、小規模の戸建住宅から、大中規模の共同住宅まで、居室内に、夏季、冬季から春秋の中間季まで、居室内に快適な温湿度環境を提供出来るものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の空気熱交換システムは、図1に示す如く、室外の水熱交換ユニット6Cから居室内の輻射用パネルヒーター7Aに冷温水循環の放熱回路7を配置し、放熱回路7の水熱交換ユニット6C近傍から分岐して放熱回路7に還流復帰する冷温水循環回路6に空気熱交換器1を配置し、空気熱交換器1には、結露水を排出するドレン回路8と、居室内空気を吸気して空気熱交換器1内に送風する吸気回路3と、空気熱交換器1から空気を居室内に送風する供給回路4とを配置し、居室内の温湿度、及び循環水の温度を検知回路5で検知して制御運転するものである。
【0023】
この場合、冷温水循環回路6及び放熱回路7の循環水は、図1(A)に示す如く、室外ユニット6Aと冷媒管6Bで接続する室外水熱交換ユニット6Cから送水するものであって、図2(B)に示す如く、室外ユニット6Aは、慣用の、コンデンサ(凝縮機)6a及びコンデンサファン6b、圧縮機6dを内臓するものであり、水熱交換ユニット6Cは、慣用の、冷温水コイル6mを収納する水熱交換器6f及び膨張弁6e、循環ポンプ6n、タンク6iを収納するものである。
【0024】
また、空気熱交換器1用の冷温水循環回路6は、図1(A)に示す如く、水熱交換ユニット6Cから放熱回路7の往き側ヘッダー6Sへの送水パイプ6P”から往き用分岐パイプ6P´を引出して空気熱交換器1に送水し、空気熱交換器1内で貫流空気に熱伝達して、空気熱交換器1から戻り用分岐パイプ6P´で、放熱回路7の戻り側ヘッダー6Rと接続させれば良く、空気熱交換器1は、冷温水コンデンサを内蔵し、コンデンサの周囲に空気が貫流出来る筒形状であれば良く、円筒でも角筒でも良い。
【0025】
また、図2(A),(B)の流水回路図で示す如く、放熱回路7は、水熱交換ユニット6Cから大径(標準:内径21.2mm、肉厚2.9mm)のプラスチック樹脂パイプ6P”内を流水し、循環ポンプ6Nを経て往き側ヘッダー6Sの弁6Eから連続する小径(標準:内径9.8mm、肉厚1.6mm)のプラスチック樹脂パイプ6P内を流水し、輻射用パネルヒーター7Aへは、供給口7Sから流入し、パネルヒーター7A内を循環して排出口7Rから流出し、小径のプラスチック樹脂パイプ6Pによって戻り側ヘッダー6Rに流入し、戻り側ヘッダー6Rから大径のプラスチック樹脂パイプ6P”で水熱交換ユニット6Cに流入させれば良い。
【0026】
また、空気熱交換器1用の往き用分岐パイプ6P´及び戻り用分岐パイプ6P´は、放熱回路7の小径のプラスチック樹脂パイプ6Pと同一のパイプを採用すれば良い。
また、空気熱交換器1に付設する吸気回路3及び供給回路4は、慣用の、ダクトファン3F手段を採用すれば良く、空気熱交換器1は、吸気回路3と接続する前端から供給回路4と接続する後端まで空気流の貫流する筒体であって、内部には、それ自体慣用の冷温水コイル2を内蔵すれば良く、典型的には、図5(A)に示す如く、長尺筒本体1A内に、長尺筒体内配置用に開発した冷温水コイル2を内蔵したものである。
また、検知回路5は、慣用の、湿度検知器5E及び温度検知器5Sを居室壁面に配置し、空気熱交換器1の吸気回路3、及び放熱回路7の循環水温を制御すれば良い。
【0027】
従って、本発明の空気熱交換システムは、空気熱交換器1内に内蔵した冷温水コイル2への循環水として、冷暖房用の輻射用パネルヒーターの冷温水循環システム、即ち放熱回路を利用するため、省エネルギーの下に、設備費も合理化出来、冷暖房システムへの除湿システムの付加一体化が合理的に実施出来、冷暖房システムにおける湿度コントロールが簡単、且つ低コストで実施出来る。
そして、減湿には、空気熱交換器1へ居室内空気を送り込む吸気回路3、及び居室内へ空気を送風する供給回路4にダクト管3D,4Dを採用し、消費電力の少ないダクトファン3F(標準消費電力:10.5w)を配置すれば良いので、コスト面で有利であり、従来例1(図8(A))や従来例2(図8(B))のように、電力を熱に換える加熱器を採用しないので、ランニングコストが低減出来る。
【0028】
また、従来例3(図9(A))のように、除湿用ファン送風機から各室へ、給気ダクト及び還気ダクトをおのおの連続することなく、略中央にダクトファン3Fを配置し、一方を吸気、他方を供給とするため、ダクト形状が小さく出来て天井内にも容易に配置可能となる。
しかも、空気流速も低いため、騒音の発生は無く、自然対流に近くなって、気流による温度斑も生じない。
【0029】
しかも、本発明空気熱交換システムは、除湿機能を発揮する空気熱交換器1が、冷暖房用放熱回路7から分岐配管手段で配置出来るため、空気熱交換器1は、天井裏等、配置の自由度があり、小規模住宅にも自在に施工出来る。
また、本発明にあっては、室内空気を吸気し、空気熱交換器1で減湿(除湿)した空気を居室内に冷却空気として送風するため、直接、屋外の高温高湿(夏季)又は低温低湿(冬季)空気の影響を受けないので、居室内の温湿度コントロールが省エネルギーで達成出来る。
また、本発明の空気熱交換システムにあっては、顕熱、即ち物体の相変化(固体→液体→気体)や化学変化を伴わないで、温度を変化させる熱は輻射用パネルヒーター7Aによる冷暖房で、潜熱、即ち相変化のための熱で、他の物体の温度変化には寄与しない、例えば人体の発汗や呼吸の熱は空気熱交換器でおのおの制御するため、湿度のコントロールを伴った快適な冷暖房が提供出来、従来例3(図9(A))の如く、空気による強制対流方式及び水循環による輻射方式とのツーウェイ式の冷暖房のように、設備が過大とならず、設備及び運転コストが安価である。
【0030】
また、本発明の空気熱交換システムにあっては、空気熱交換器1には、図1(A)に示す如く、空気熱交換器1内を洗浄する洗浄回路9及び空気熱交換器1内に水を噴霧して居室内に加湿空気を供給する加湿回路10を接続するのが好ましい。
【0031】
この場合、洗浄回路9は、空気熱交換器1内に、必要に応じて、洗浄水を付与出来れば良く、図1(A)に示す如く、空気熱交換器1内に洗浄ノズル9A群を配置し、洗浄ノズル9A群での噴射水によって、チリ、ゴミの付着し易い冷温水コイル2の全長が洗浄出来れば良い。
また、加湿回路10は、空気熱交換器1内を貫流する空気に、必要に応じて蒸気が供給出来れば良く、図1(A)に示す如く、空気熱交換器1内の吸気回路3側に噴霧ノズル10Aを配置し、噴霧ノズル10Aを、居室内の湿度を検出する湿度検知器5Eの制御の下に駆動すれば良い。
【0032】
従って、冬季等、空気の乾燥状態での居室内暖房時に、冷温水循環回路6の温水循環によって空気熱交換器1内で加温暖房された貫流空気に、空気熱交換器1内で、加湿回路10によって簡便に加湿出来、居室内の暖房状態の空気に、必要な湿度が供給出来、居室内を適切な温湿度と出来る。
また、空気熱交換器1に洗浄回路9を配置したことにより、必要に応じて、空気熱交換器1内の冷温水コイル2のゴミ、埃等が洗浄出来て、空気熱交換器の熱交換機能低下が防止出来、洗浄水は空気熱交換器1のドレン回路8から支承無く排除出来る。
【0033】
また、本発明の空気熱交換システムにあっては、図1に示す如く、室内に配置した温度検知器5Sが、放熱回路7の循環水を、空気熱交換器1への冷温水循環回路6の分岐点P1の下流で温度制御し、居室内に配置して、吸気回路3と、加湿回路10とに接続した湿度検知器5Eが、空気熱交換器1の加湿回路10を制御するのが好ましい。
【0034】
この場合、居室内冷暖房用の放熱回路7の循環水温度は、空気熱交換器1用の冷温水循環回路6の循環水温度とは独立的に制御出来、例えば、冷房運転時に、除湿に必要な冷温水循環回路の水温(標準:7℃)を維持した状態で、放熱回路7の循環水温は選定出来るため、輻射用パネルヒーター7Aの放熱調整が自在となる。
そして、加湿回路10も、吸気回路3での空気熱交換器1内への居室内空気の循環供給中であれば、湿度検知器5Eの指令に応じて、必要時に循環空気流に加湿出来、空気熱交換システムは、除湿機能及び加湿機能の担保の下での、自在な冷暖房が可能となる。
【0035】
また、本発明の空気熱交換システムにあって、洗浄回路9は、図1(A)に示す如く、給水主管9Cと接続した給水管9Bから、図5(A)に示す如く、空気熱交換器1内に洗浄ノズル9A群を突設し、給水管9Bに介在配置した電磁弁6M(図2(A)参照)をタイマースイッチ9Dで洗浄作用制御するのが好ましい。
【0036】
この場合、洗浄ノズル9Aは、噴射能力を勘案して、各ノズル9Aを間隔配置すれば良い。
従って、夏季の冷房運転期間には除湿器として運転し、冬季の暖房運転期間には加湿器として運転する空気熱交換器1は、定期的に洗浄することにより、冷温水コイル2の貫流空気への熱伝達機能の劣化が抑制出来、洗浄作用で空気熱交換器1の底面に流下した洗浄水は、ドレン回路8から支障無く排除出来る。
【0037】
また、加湿回路10は、図1(A)に示す如く、給湯管10Cと接続した枝管10Bから空気熱交換器1内に噴霧ノズル10Aを突設し、枝管10Bに介在配置した電磁弁6Mを湿度検知器5Eで噴霧作用制御するのが好ましい。
この場合、噴霧ノズル10Aとしては、加圧性を備えた、それ自体慣用の噴霧ノズルを採用すれば良い。
【0038】
また、噴霧ノズル10Aは、空気熱交換器1内を貫流する送風内に水を噴霧すれば良いが、空気熱交換器1内の吸気端部近辺、即ち、前端近辺に配置すれば、一部水滴と化した水も、居室内へ飛散させることなく空気熱交換器1の底面に溜り、空気熱交換器1内のドレン回路で排除出来るので好都合である。
そして、居室内に送風される空気は空気熱交換器1内で噴霧加湿されるため、居室内の空気は、常時湿度検知器5Eで監視出来て、所望湿度が維持出来る。
【0039】
従って、冬季等、空気が乾燥している場合に、空気熱交換器1内に温水(標準:45℃)を循環させて、居室内空気を吸気回路3から空気熱交換器1内に送風し、湿度検知器5E及び電磁弁6Mによって噴霧ノズル10Aを作用制御することにより、空気熱
交換器1の供給回路4から高温高湿空気が居室内に送風出来、居室内は、放熱回路7を介した輻射用パネルヒーター7Aでの輻射放熱暖房に、空気熱交換器1からの高温、高湿空気の吹出しによる暖房作用が付加出来て、必要湿度を伴った、必要暖房が合理的に達成出来る。
【0040】
また、本発明の空気熱交換システムにあっては、図2の流水回路図に示す如く、放熱回路7の冷温水循環は、水熱交換ユニット6Cから電動三方弁6Tを介在して往き側ヘッダー6S、輻射用パネルヒーター7A、戻り側ヘッダー6R、水熱交換ユニット6C)へと循環し、空気熱交換器1の循環回路6の循環水は、放熱回路7の電動三方弁6T上流の分岐点P1から分流して、空気熱交換器1を経て、戻り側ヘッダー6Rで放熱回路循環水と合流し、戻り側ヘッダー6Rから水熱交換ユニット6Cへの戻り側循環水は、経路中の分岐点P2から往き側経路中の電動三方弁6Tへのバイパス流路b7を介して、戻り側循環水の温度に応じた制御流量を電動三方弁6Tから往き側経路にバイパス流入させるのが好ましい。
【0041】
この場合、電動三方弁6Tとしては、流れ方向の異なる2つの低温、高温の流体を、比例分配方式で混合して、一定温度として一方方向に切換えるものであれば良く、(株)ベン製、ML−TT型電動弁を採用すれば良い。
また、放熱回路7の循環水は、図2(A)に示す如く、水熱交換ユニット6Cから、大径のプラスチック樹脂パイプ6P”(標準:内径21.2mm、肉厚2.9mm)で流水して、電動三方弁6T及び循環ポンプ6Nを経て、往き側ヘッダー6Sの弁6Eから連続する小径のプラスチック樹脂パイプ6P(標準:内径9.8mm、肉厚1.6mm)内を流水して輻射用パネルヒーター7Aに、供給口7Sから流入して排出口7Rから流出し、小径のプラスチック樹脂パイプ6Pを経て戻り側ヘッダー6Rに流入し、戻り側の大径のプラスチック樹脂パイプ6P”によって、サーモセンサー5Tを経て水熱交換ユニット6Cに還水させれば良い。
【0042】
また、空気熱交換器1の冷温水循環回路6の循環水は、図2(A),(B)に示す如く、放熱回路7の往き側の大径パイプ6P”の電動三方弁6Tの上流の分岐点P1から小径のプラスチック樹脂パイプ6P´を接続して、該プラスチック樹脂パイプ6P´を空気熱交換器1の、往き側接続口2Sに流入し、空気熱交換器内の冷温水コイル2内を循環させた後、戻り側接続口2Rから、小径のプラスチック樹脂パイプ6P´で戻り側ヘッダー6Rに流入し、放熱回路7の還流水と混合して大径のプラスチック樹脂パイプ6P”で、放熱回路の循環水として水熱交換ユニット6Cに還流させれば良い。
【0043】
そして、放熱回路7の、還流大径パイプ6P”と、往流大径パイプ6P”の電動三方弁6Tとを、大径パイプ6P”で接続して、還流大径パイプ6P”と往流大径パイプ6P”間に、大径パイプ6P”によるバイパス流路b7を形成しておく。
この場合、冷温水循環回路用の小径パイプ6P´は、放熱回路7の小径プラスチック樹脂パイプ6Pと同一パイプを採用し、往流大径パイプ6P”からの分岐点P1での小径パイプ6P´の接続、及び還流大径パイプ6P”からの分岐点P2でのバイパス流路用の大径パイプ6P”の接続は、慣用のT型ソケットで実施すれば良い。
【0044】
従って、該空気熱交換システムによれば、例えば、冷房運転時では、水熱交換ユニット6Cから空気熱交換器1の冷温水コイル2への7℃(標準)の冷却水は、冷温水コイル2での除湿作用で6℃放熱して、標準13℃で戻り側ヘッダー6Rに流入し、放熱回路7の冷却水15℃(標準)は、輻射用パネルヒーター7Aを還流放熱して10℃上昇して戻り側ヘッダー6Rに25℃(標準)で還流して、冷温水コイル2からの還流と、パネルヒーター7Aの還流とが合流して還流大径パイプ6P”から水熱交換ユニット6Cに入る。
【0045】
そして、戻り側ヘッダー6Rからの流体温度を検知して、電動三方弁6Tに通知し、電動三方弁6Tは、水熱交換ユニット6Cからの流体温度(標準:7℃)を検知して、適宜、水熱交換ユニット6Cからの流量及び還流大径パイプのバイパス流路b7からの流量を比例開放して適温(標準:15℃)に混流した後、往き側ヘッダー6Sに供給することとなり、水熱交換ユニット6Cへの還流量が減少出来、水熱交換ユニット6Cでの冷却(又は加熱)負荷が軽減出来る。
【0046】
従って、本発明の空気熱交換システムは、冷暖房の熱放出量の大な放熱回路7に、熱放出量の小な空気熱交換器用の冷温水循環回路6を分岐形態で配置したため、輻射用パネルヒーター7Aによる冷暖房システムの設備を利用しての除湿、加湿システムの付加配置となり、冷暖房システムと除加湿システムの合体化が簡便に実施出来、施工面、コスト面で合理化出来、冷暖房システムへの除加湿システムの一体化が簡便、且つメンテナンス容易に実施出来る。
そして、例えば冷暖房システムにあっては、冷暖房システムの循環水(冷房標準:往き15℃、戻り25℃)と、除湿、加湿システムの冷温水循環水(除湿標準:往き7℃、戻り13℃)とを1つの水熱交換ユニット6Cによって熱交換するため、省エネルギー化、高効率化となる。
【0047】
また、往き側経路中の電動三方弁6Tには、温度検知器5Sと温度設定ダイヤル6gを介在し、戻り側循環水の温度をサーモセンサー5Tで検出して、戻り側経路の分岐点P2から、バイパス流路b7を介して戻り循環水の一部を電動三方弁6Tにバイパス流入し、合流した電動三方弁6T下流の往き側循環水の温度を、常時設定温度に維持するのが好ましい。
【0048】
この場合、図2(B)に示す如く、サーモセンサー5Tは、戻り側経路の大径パイプ6P”の、バイパス流路b7の分岐点P2の近傍上流側に配置して電動三方弁6Tと電線5Rで接続すれば良く、バイパス流路b7は、戻り経路の大径パイプ6P”と同材のパイプ片を用いて、慣用のT型ソケット6Dで分岐すれば良い。
【0049】
従って、例えば、冷房時の電動三方弁6Tの、流入口6Xへの水熱交換ユニット6Cからの冷却水(標準:7℃)と流出口6Zの設定温度(標準:15℃)に対するバイパス流路の流入口6Yからの流入パーセントが、サーモセンサー5Tからの通知により決定され、水熱交換ユニット6Cからの7℃の流入量%(+)バイパス流路b7からのx℃の流量%=設定値(15℃)で混流され、水熱交換ユニット6Cへの還水量が減量出来、水熱交換ユニットの熱交換負荷が軽減される。
しかも、空気熱交換器1の除湿に必要な所定冷却水温(標準:7℃)、即ち、除湿機能に影響を与えることなく、輻射用パネルヒーター7Aの放熱量調整は自在となる。
【0050】
また、図2(B)に示す如く、往き側経路中の分岐点P1と電動三方弁6Tとの間、及び戻り側経路中の分岐点P2と電動三方弁6Tとの間のバイパス流路b7に仕切弁6Fを配置するのが好ましい。
この場合、仕切弁6Fは慣用の管路仕切弁を採用すれば良い。
そして、往き側経路、即ち放熱回路の往き側大径パイプ6P”の流路と、戻り側流路から電動三方弁6Tへのバイパス流路b7の大径パイプ6P”の流路とを閉止すれば、水熱交換ユニット6Cからの冷温水循環は、空気熱交換器1用の冷温水循環回路6のみでの循環流となる。
【0051】
従って、春、秋等の冷暖房の必要性の少ない中間期にあっては、必要に応じて、空気熱交換器1に、吸気回路3及び供給回路4を稼動して居室内空気を貫流させ、空気熱交換器1の冷温水循環回路6のみの稼動、即ち冷温水コイル2のみの放熱によって、必要な低温減湿空気、又は高温加湿空気を居室内に送風提供出来、中間期では、輻射用パネルヒーター7Aへの冷温水の送水を閉止した省エネルギー運転の状態で、快適な居室内温湿度環境が提供出来る。
【0052】
また、図1(B)に示す如く、空気熱交換器1を天井内に配置して吸気回路3及び供給回路4をダクト方式とし、供給回路4を供給グリル4Gで居室内と接続し、空気熱交換器1からの送風空気の一部を、吹出口4Kから輻射用のパネルヒーター7A周面に吹き下ろすのが好ましい。
【0053】
この場合、輻射用パネルヒーター7Aは、典型的には、上端及び下端の横パイプ間に、通水放熱用の縦パイプ群を並列連通したプラスチック樹脂パイプ製であって、間仕切壁Wi内、若しくは、間仕切壁Wiに沿って、垂直形態で配置したものであり、吹出口4Kは、図1(A),(B)に示す如く、輻射用パネルヒーター7Aの上方の天井C面で居室側放熱面の左右方向中央部に整合して配置すれば良い。
【0054】
本発明の空気熱交換システムにあっては、従来の空調システム内の、冷凍コイル内蔵の除湿器、即ち空気熱交換器のみを別体として、輻射冷暖房用パネルの冷温水循環回路から分岐した冷温水循環回路に配置するため、空気熱交換器のみは小型となって、天井内配置が簡便且つ施工性良く実施出来る。
そして、空気熱交換器と接続する、吸入側の吸気回路3も放出側の供給回路4も、慣用のダクト手段を採用し、適切な、例えばフレキシブルダクト管を選択採用することにより、空気熱交換器1は天井内に収納配置出来、供給回路4から居室内への送風口に付設する慣用の供給グリル4Gも、需要者の好みに応じて自在に配置出来る。
【0055】
従って、居室内の任意位置に対する供給グリル4Gからの冷暖房送風が、天井内ダクトからの分岐配管で簡便、且つ自在となる。
そして、空気熱交換システムの冷房運転中には、輻射用パネルヒーター7A表面に送風空気の一部を、天井Cの吹出口4Kから吹き下ろすため、パネルヒーター7A表面に当接する静止空気層と、静止空気層の外側の上下層流とを吹き飛ばして、ヒーター7A表面での空気熱伝達作用を高めて冷房効果を上げると共に、輻射用パネルヒーター7A表面の結露の発生も抑制出来る。
【0056】
また、図3(C),(D)に示す如く、供給側ダクト管4Dと供給グリル4Gの間にラッパ管4Rを配置して、供給グリル4Gからは、供給側ダクト管4Dからの放出空気流がラッパ管から天井内空気を吸引合流して放出するのが好ましい。
【0057】
この場合、ラッパ管4Rとダクト管4Dとの関係構造を、ダクト管4Dの先端がラッパ管4R内に突入し、ラッパ管4Rの内周面とダクト管4Dの外周面との間に空気吸入用のスペースを形成すれば良く、典型的には、図3(D)に示す如く、円筒管4Bから拡開する円錐管4Uを備えたラッパ管4Rを、図3(C)に示す如く、天井面に配置した供給グリル4Gの垂直管4F外周に円筒管4Bを空密嵌合止着し、慣用の、ガラス繊維保温材で被覆したダクト管4Dは、先端を20mm厚の被覆保温材から若干(標準:20mm)露出して、保温材先端が円錐管4Uの外端と前後方向が揃う状態に配置し、円錐管4Uの外端縁内周と、ダクト管被服保温層4A外周との間に15mmのスペースSを形成する。
【0058】
従って、図3(C)に示す如く、空気熱交換器1で冷却又は加熱された空気が、ダクト管4Dから供給グリル4Gを介して居室内に送風される際に、ダクト内空気流a6は、ラッパ管4Rとダクト管4Dとの間のスペースSから天井内空気の吸引流acを合流させるため、例えば、空気熱交換器1で低温除湿、又は高温加湿された空気流a6に、天井内の空気が混入されるため、空気熱交換器1からの送風空気流a6は、天井内空気流acの混入により、温和な冷却(加熱)空気流となり、輻射用パネルヒーター7Aからの温和な、冷房(暖房)作用を受けている居室者に対する、過激、且つ不快な冷気(暖気)の吹付けが抑制出来る。
【0059】
請求項1の空気熱交換システムに用いる空気熱交換器1は、例えば図4(A)に示す如く、筒本体1Aの、前端には吸気側ダクト管3Dを、後端には供給側ダクト管4Dを接続し、筒本体1A内には、例えば図5(A)に示す如く、長手方向に冷温水コイル2を配置し、筒本体1A上面からは、冷温水コイル2の上面に対して洗浄ノズル9A群を前後間隔垂下し、筒本体1Aの前部上面からは、噴霧ノズル10Aを垂下し、筒本体1Aの下面の、後部からはドレンパイプ8Aを垂下し、筒本体1Aの、後端内底面には止水板8Rを配置したものである。
【0060】
この場合、冷温水コイル2は、循環パイプ2Aの外周に放熱用フィン群2Fを配置し、循環パイプ2A内に冷温水を循環させて放熱フィン群2Fによって周囲の空気を冷却又は加熱するものであって、典型的には、図6に示す如く、高熱伝導性(熱伝導率:320kcal/mh℃)の銅管の循環パイプ2A群を、千鳥形状に上下おのおの4本配置して、供給側1Rは、ヘアピンチューブ2Bで並列に溶接し、吸気側1Sは、上下傾斜状にUベント2Cで接続して、全循環パイプ2A群を連通形態として、全循環パイプ2A群が貫通形態で、放熱フィン2F群を循環パイプ2A群の外周に、平行密接配置したものである。
【0061】
そして、循環パイプ2A群に水熱交換ユニット6Cからの冷温水を循環させて、放熱フィン2F群により空気熱交換器1内を貫流する空気に熱伝達するものであり、冷温水コイル2の長さ、幅、厚さは、筒本体1Aとの関係で決定すれば良く、筒本体1Aは、冷温水コイルを長手方向に収納出来れば良いが、典型的には、筒本体1Aは、図4に示す如く、長さL1が890mm、内径r1が131mmの円筒体であり、冷温水コイル2は、図6に示す如く、長さL2が650mmで、幅W2が106.5mmで、厚さh2が42.3mmの断面長方形であり、冷温水コイル2の出入口管2Dの、往き側接続口2Sと戻り側接続口2Rは筒本体1Aの吸気側1Sから上方へ突出させたものである。
【0062】
また、吸気側ダクト管3D及び供給側ダクト管4Dは、慣用のダクト手段を適用すれば良く、変形自在なアルミニウム製のフレキシブルダクト管を採用すれば施工性が良い。
また、洗浄ノズル9A群としては、円錐形状に放水する慣用の水噴射ノズルを、洗浄回路9に連通形態で採用すれば良く、典型的には、図5(A)に示す如く、間隔110mmで、洗浄回路9の給水管9Bに連通形態で筒本体1Aから垂下する。
また、噴霧ノズル10Aは、慣用の加圧機能内蔵の噴霧ノズルを採用すれば良く、湿度検知器5Eの作動制御を受ける加湿回路10の枝管10Bに連通形態で、筒本体1Aの吸気側1Sの上部から垂下すれば良い。
【0063】
また、止水板8Rは、筒本体1A底面に溜まる水が送風と共に居室内に放水されるのを阻止出来れば良く、典型的には、図5(G),(H)に示す如く、筒本体1Aの内周面の下半を閉止する形状、即ち筒本体1Aの内周と同一の曲率の円弧面8Tの下辺と水平上辺8Fで面板8Rを補強した円弧形態の止水板とし、円弧面8Tを筒本体1Aの底周面に水密固定したものである。
また、ドレンパイプ8Aは、図5(A)に示す如く、筒本体1Aの底面で、後端の止水板8Rの近傍に配置すれば良く、典型的には、筒本体1Aの後端から75mmの位置から下方に突設する。
【0064】
従って、本発明の空気熱交換器1は、前端に吸気側ダクト管3Dを、後端に供給側ダクト管4Dを接続出来る場所であれば設置可能であり、冷温水コイル2によって、筒本体1A内を吸気側ダクト管3Dから供給側ダクト管4Dへと流れる空気に、夏季の冷却作用による除湿が出来ると共に、冬季の加熱作用時には、噴霧ノズル10Aでの水蒸気付加によって、乾燥空気に加湿して居室内に送風出来、居室内への供給空気流に、所望の除湿、及び加湿が出来る。
【0065】
そして、除湿によって生ずる結露水は好適にドレンパイプ8Aから排除出来、加湿作用時に、例え水滴が空気熱交換器1の底面に溜まっても、ドレンパイプ8Aの存在によって水漏れの支障は生じない。
また、冷温水コイル2の周面、即ちフィン2F群の周面に付着した埃やゴミも、冷温水コイル2上の長手方向に間隔配置した洗浄ノズル9A群での定期的洗浄作用によって洗い流すことが出来、冷温水コイル2のゴミの付着による熱交換効率の低下は阻止出来る。
そして、冷温水コイル2の洗浄によって生ずる多量の流水も、支障無くドレンパイプ8Aから除去出来る。
【0066】
そのため、本発明の空気熱交換器1は、居室内空気に対する、必要な除湿作用、加湿作用及び空気熱交換器1内の洗浄作用が、水漏れの心配無く実施出来て、天井内等、狭い空間への設置も可能となり、輻射用パネルヒーター7Aによる冷暖房システムに於いて、輻射用パネルヒーター7Aによる配置位置の制約を受けることなく、空気熱交換器1の配置が自在となり、請求項1の空気熱交換システムが好適に実施出来る。
【0067】
また、空気熱交換器1の発明にあっては、冷温水コイル2は、例えば図6に示す如く、筒本体1Aの長手方向に並列連通した複数本の循環パイプ2A群に幅方向のフィン2F群を密集平行配置して、図5(A)に示す如く、筒本体1Aの上下方向中央部位置で長手方向に延展配置し、冷温水コイル2の下側では、冷温水コイル2の吸気側1Sの端部に、後方に上昇傾斜する風偏向板bbを筒本体1A下面から配置して、吸引空気流a3の冷温水コイル2下面への流入を抑制し、冷温水コイル2の上側では、後方に下降傾斜する風偏向板bt群を、吸気側1Sから供給側1Rに亘って順次通過風量が減少するように間隔配置し、吸気側1Sから流入する空気流a3を冷温水コイル2の上面側から下面側に順次偏向して、フィン群2Fの隙間を上側から下側に貫流案内し、供給側1Rでは、冷温水コイル2の下面からの空気流a4として流出させるのが好ましい。
【0068】
この場合、冷温水コイル2は、それ自体慣用の手法で、図6に示す如く、アルミニウム製の肉厚0.12mmのフィン2Fを間隔0.54mmで平行配置して両端のエンドプレート2E,2E´で循環パイプ2A群上に固定したものであり、冷温水コイル2の筒本体1A内への配置は、図5(A),(B)に示す如く、筒本体1Aの内面適所に配置固定した、下側受金具2K及び上側受金具2Kで挟着把持すれば良い。
【0069】
また、下側及び上側の風偏向板bb,btは、冷温水コイル2のフィン2F又は循環パイプ2A等に、慣用の、係止手段、接着手段等で配置すれば良く、上側の風偏向板bt群としては、順次、風偏向板の面積が小から大へと変化する複数板を、吸気側1Sから供給側1Rに亘って、順次、筒本体1Aで内周面と風偏向板btとの空気流a3の通過間隔が狭まるように配置すれば良い。
【0070】
従って、空気熱交換器1内に、吸気側ダクト管3Dからダクトファン3Fを介して居室内空気を送風すれば、図3(B)に示す如く、送風空気流a3は、筒本体1A内に入ると、冷温水コイル2の吸気側1Sの端部の風偏向板bbによって冷温水コイル2の上部へ入り、吸気側1Sから供給側1Rに亘って、順次、寸法が小から大へと変化する風偏向板bt群によって、空気流a3は、各風偏向板bt毎に分割偏向し、冷温水コイル2間、即ちフィン2F間を空気流a4として下方に貫流し、供給側1Rでは、冷温水コイル2の下側から吹出空気流a5として居室内に送風出来る。
【0071】
そして、ダクトファン3Fによる送風中は、筒本体1A内では、冷温水コイル2の、下面空間Sdが低圧、上面空間Suが高圧状態となって、高圧の上面空間Suから低圧の下面空間Sdへの空気流a3→a4→a5と流れるため、吸気側ダクト管3Dから供給側ダクト管4Dへの空気流に対するフィン2F群による有効な熱伝達が達成出来ると共に、フィン2F群の表面結露水も、フィン2Fの隙間を下方へ貫流する空気流a4によって筒本体1Aの底面に誘導出来、空気熱交換器1は、断面積が小で長尺であり、天井内等、狭い空間に配置可能でありながら、長尺、短幅の冷温水コイル2によって、強力な除湿機能を発揮すると共に、派生する結露水をドレンパイプ8Aによって完全に排除出来、配置場所も自在な高性能除湿器となる。
【0072】
また、風偏向板bb,btは、図5に示す如く、垂直のアンカー片anを備えた傾斜板であり、風偏向板bb,btの傾斜した外周形状が筒本体1Aの内周形状と相似形であって、各風偏向板bb,btは、アンカー片anを、冷温水コイル2のフィン2Fの隙間に挿入して配置し、冷温水コイル2の、前端下面に配置する風偏向板bbと後端上面に配置する風偏向板btは、筒本体1Aの内面を閉止するのが好ましい。
【0073】
この場合、筒本体1Aが断面円形の場合は、図5に示す如く、風偏向板bb,btは、傾斜した円弧板の弦辺fbから垂直のアンカー片an群を間隔突出させ、上側用の傾斜形態の風偏向板btは、円弧板の外周縁が、筒本体1Aの内周面と同一曲率の下で、順次小径としたbt1,bt2,bt3,bt4,bt5,bt6で準備すれば良い。
そして、上側の最後端の風偏向板bt1と下側の風偏向板bbとは、傾斜円弧板の外周縁が筒本体1Aの内周に当接するサイズとすれば良い。
【0074】
また、風偏向板bb,btの厚さは、フィン2Fの隙間に挿入出来るように、例えば、各フィン2F間の間隔が0.54mmの標準タイプに対しては、肉厚0.4mmとし、風偏向板bb,btの弦辺fbが循環パイプ2Aに当接するまで、アンカー片anをフィン2F隙間に押込めば、風偏向板bb,btの配置確保が可能であり、上側の最後端の風偏向板btと下側の風偏向板bbとは、アンカー片anをエンドプレート2E,2E´と最外端のフィン2Fとの間に挿入すれば良い。
【0075】
従って、各風偏向板bb,btの設置、がフィン2Fの隙間への挿入で簡便に実施出来、上側風偏向板bt(bt1,bt2・・・)群による、図3(B)の如き、筒本体1A内の、上側貫流空気流a3の下側貫流空気流a4への空気流分配が自在となり、空気熱交換器1は、長尺筒体内に、幅方向配列のフィン2F群を備えた冷温水コイル2を配置したものでありながら、貫流全空気は、フィン2F間の貫流降下によって高効率の熱交換作用を受け、各フィン2Fに生ずる結露水も、フィン2F間の下方への貫流空気で底面に誘導出来、各フィン2Fの結露水の集積排出の保証の下に、高い除湿機能を発揮する。
【発明の効果】
【0076】
本発明の空気熱交換システムは、空気熱交換器1に内臓した冷温水コイル2への循環水として冷暖房用の輻射パネルヒーターの冷温水循環システム、即ち輻射用パネルヒーター7A用の放熱回路7の設備が利用出来るため、冷温水循環型の1つの冷暖房システム内に、除湿及び加湿システムが簡単に付加出来、冷暖房機能と除湿機能を備えたエアーコンディショニングシステムが、低コスト、且つ省エネルギーで、合理的に実施出来る。
そして、空気熱交換器用の循環回路6は、冷暖房用の放熱回路7の上流で分岐するため、空気熱交換器1への送水は、冷暖房用パネルヒーターへの送水温度の制約を受けること無く、温度が適宜自由に選択出来、且つ優先的に送水可能となり、居室内の空気の、放熱回路7による冷暖房と、循環回路6による空気熱交換器1での除湿とが、別個独立的に制御出来るため、居住者の好みに応じた温度と湿度でのエアーコンディショニングの提供を可能とする。
【0077】
また、除湿機能を発揮する空気熱交換器1は、冷暖房用の放熱回路から分岐配管手段で配置出来るため、配置の自由度があり、小規模住宅にも自在に施工出来て、設備施工面からも、外観上からも、需要者の要望に応えられる。
そして、本発明にあっては、室内空気を空気熱交換器が吸気して除湿して、該空気を居室内に冷却空気として送風再還元するため、直接、屋外の高温高湿空気の影響を受けることがなく、居室内の温湿度コントロールが省エネルギーで達成出来る。
【0078】
また、本発明にあっては、顕熱は輻射用パネルヒーター7Aによる冷暖房で、潜熱は空気熱交換器でおのおの対応制御出来るため、従来例3の如く、設備が過大とならず、有効な空調(エアーコンディショニング)、即ち湿度コントロールを伴った冷暖房、が安価、且つ合理的に実施出来る。
また、空気熱交換器1への吸気回路3、及び供給回路4がダクト方式で適用出来るため、消費電力が少なく、空気熱交換システムは、ランニングコストの低減したシステムとなる。
【0079】
また、空気熱交換器1の発明は、前端に吸気側ダクト管3Dを、後端に供給側ダクト管4Dを接続出来る場所であれば設置可能であり、空気熱交換器1内を貫流する空気に対し、冷温水コイル2の作用で、夏季には冷却作用による除湿が、冬季の暖房時には噴霧ノズル10Aでの加湿が出来、空気熱交換器1によって、居室内への供給空気流に、所望の除湿、加湿が、冷暖房システムから独立的に、自在に実施出来る。
【0080】
そして、除湿によって生ずる結露水も、加温時に生ずる水滴溜りも、ドレンパイプ8Aから支障無く排除出来る。
また、冷温水コイル2の周面、即ちフィン2F群の周面に付着した埃やゴミも、冷温水コイル2上の長手方向に間隔配置した洗浄ノズル9A群での定期的洗浄作用によって洗い流すことが出来、冷温水コイル2のゴミ付着による熱交換効率低下は阻止出来、洗浄水もドレンパイプ8Aで排除出来る。
【0081】
そのため、本発明の空気熱交換器1は、居室内空気に対する必要な除湿作用、加湿作用及び機能維持のための洗浄作用が、水漏れの心配無く実施出来て、天井内等、狭い空間への設置も可能となり、輻射用パネルヒーター7Aによる配置位置の制約を受けることなく、空気熱交換器1の配置が自在となり、請求項1に記載の空気熱交換システムの発明の好適実施を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の空気熱交換システムの全体説明図であって、(A)は居室内の横断上面図、(B)は縦断側面図である。
【図2】本発明システムの流水回路説明図であって、(A)は全体回路図、(B)は要部拡大図である。
【図3】本発明システムの空気流説明図であって、(A)は全体説明線図、(B)は空気熱交換器内の説明図、(C)は供給部位の説明図、(D)はラッパ管の斜視図である。
【図4】空気熱交換器の説明図であって、(A)は配置状態側面図、(B)は透視斜視図、(C)は(B)の矢印C視図、(D)は(B)の矢印D視図、(E)は(B)の矢印E視図である。
【図5】空気熱交換器の説明図であって、(A)は縦断側面図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は上側風偏向板群の正面図、(D)は上側風偏向板の側面図、(E)は下側風偏向板の正面図、(F)は下側風偏向板の側面図、(G)は止水板の正面図、(H)は止水板の側面図である。
【図6】冷温水コイルの全体説明図であって、(A)は上面図、(B)は(A)の矢印B視図、(C)は(A)の矢印C視図、(D)は(A)の矢印D視図である。
【図7】冷温水コイルの部分説明図であって、(A)は循環パイプの流水図、(B)は(A)のB−B線縦断面図、(C)はフィン2Fの斜視図である。
【図8】従来例図であって、(A)は従来例1の除湿機の縦断側面図、(B)は従来例2の除湿機の縦断側面図である。
【図9】従来例図であって、(A)は従来例3の除湿用空気熱交換器の回路図、(B)は従来例4のルームエアコンの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
〔空気熱交換システムの全体構成〕
本発明の空気熱交換システムは、図1(A),(B)に示す如く、屋外に配置した室外ユニット6Aと冷媒管6Bで接続した水熱交換ユニット6Cから循環冷温水を往き側ヘッダー6Sに循環ポンプ6Nを介して送水し、往き側ヘッダー6Sから戻り側ヘッダー6Rまで、各居室の輻射用パネルヒーター7Aを経由した循環水用の放熱回路7を配置し、戻り側ヘッダー6Rから水熱交換ユニット6Cへ放熱水を戻す、従来の冷温水循環冷暖房システムに、新規な空気熱交換器1を用いた冷温水循環型の空気熱交換システムを付加結合したシステムである。
【0084】
即ち、空気熱交換器1は、図1(B)に示す如く、天井C内に配置し、天井内の空気熱交換器1へは天井面に配置した吸気グリル3Gからダクトファン3Fによってダクト管3Dで居室内空気を吸気し、空気熱交換器で除湿又は加湿した空気流を、居室内の適所に配置した供給グリル4Gから居室内に供給するものであり、空気熱交換器1内には、図5(A)に示す如く、冷温水を循環させて周囲を貫流する空気に熱伝達する冷温水コイル2を配置し、空気熱交換器1の上面からは、洗浄ノズル9A群と加湿用の噴霧ノズル10Aを垂下し、底面では、後端に止水板8Rを配置して、止水板8Rに近接してドレンパイプ8Aを突出垂下したものである。
【0085】
また、冷温水コイル2は空気熱交換器1の上下中間層に配置して、冷温水コイル2の上面空間Suには、風偏向板bt群を、冷温水コイル2の、最後端の上面空間Suは閉止し、前端から後端へ、空間Suの空気通過流量が順次、減少する形態に配置し、冷温水コイル2の下面空間Sdには、前端に閉止用の風偏向板bbを配置して、吸気空気流a3は、すべて上面空間Suから分流偏向して冷温水コイル2のフィン2F間の隙間を下方に貫流して熱交換した後、冷温水コイル2の下面空間Sdから供給ダクト管4D→居室内へと流すものである。
【0086】
また、従来の冷温水循環冷暖房システムに、新規な空気熱交換器を採用した空気熱交換システムを付加するために、図2の流水回路に示す如く、冷暖房システムの水熱交換ユニットから往き側ヘッダー6Sまでに分岐点P1を配置し、分岐点P1→冷温水コイル2→戻り側ヘッダー6R、の空気熱交換器1用の冷温水循環回路6を放熱回路7に付設したものである。
【0087】
即ち、空気熱交換器1の冷温水コイル2用の冷温水循環回路6は、図2(B)に示す如く、水熱交換ユニット6Cから往き側ヘッダー6Sまでの大径のパイプ経路中に、T型ソケット6Dを介して小径のパイプ6P´を冷温水コイル2の往き側接続口2Sに連通し、冷温水コイルの戻り側接続口2Rから小径のパイプ6P´で戻り側ヘッダー6Rと連通して、戻り側ヘッダー6Rで、冷温水コイル2の循環水を輻射用パネルヒーター7Aを循環した放熱回路の循環水と合流させて、水熱交換ユニット6Cに還流させるものである。
【0088】
そして、水熱交換ユニット6Cから往き側ヘッダー6Sまでの大径パイプ6P”経路にあっては、図2(B)に示す如く、分岐点P1から下流へ、仕切弁6F、電動三方弁6T、循環ポンプ6Nを配置し、戻り側ヘッダー6Rから水熱交換ユニット6Cまでの大径パイプ6P”経路にあっては、第2分岐点P2でT型ソケット6Dを配置し、往き側経路中の電動三方弁6Tとの間に大径パイプ6P”によるバイパス流路b7を配置して、バイパス流路b7に仕切弁6Fを配置し、第2分岐点P2の上流にサーモセンサー5Tを配置し、電動三方弁6Tには温度設定ダイヤル6gを配置し、サーモセンサー5Tと室内に配置した温度検知器5Sとを電動三方弁6Tと接続したものである。
また、図1(A)に示す如く、空気熱交換器1には、空気熱交換器内の、洗浄ノズル9A群と連通する洗浄回路9、及び噴霧ノズル10Aと接続する加湿回路10、及びドレン回路8を付設したものである。
【0089】
〔冷温水コイル2(図6、図7)〕
冷温水コイル2は、筒形態の空気熱交換器1内に収納して冷温水コイル2内に冷温水を循環させ、空気熱交換器内を貫流する空気流に熱交換作用を行うものであって、冷温水循環パイプの外周に伝熱用のフィン群を突出させたもので、冷温水コイル自体は慣用されている。
本発明に用いる冷温水コイル2は、新規な筒形状の空気熱交換器1内に好適に収納出来るようにしたものであって、長尺の長手方向の複数並列配置の循環パイプ2A群に、伝熱用のフィン2F群を幅方向に密集並列配置し、フィン2F群上を長手方向に貫流する空気流にフィン2F群が熱交換するものである。
【0090】
冷温水コイルの全体構造は、図6に示す如く、フィン2F群の配置長さL2が650mm、フィン2Fの上下厚さ(高さ)h2が42.3mm、フィン2Fの幅W2が106.5mmの断面長方形であって、フィン2F群は、並行配置の長尺循環パイプ2A上に間隔0.39mmで密集並列して、その両端には、フィン2Fと同一面形状のエンドプレート2E,2E´を循環パイプ2Aを挿通した形態で循環パイプ2Aに固定して、フィン2F群の姿勢保持と脱落を防止しておく。
【0091】
フィン2Fは、図7(C)に示す如く、幅W2が106.5mm、高さh2が42.3mmで肉厚0.12mmのアルミ板であり、上列に4個、下列に4個の上下2列の循環パイプ2A貫入用孔H2を千鳥状に備え、上下貫入用孔H2間の中心間寸法haが22.3mm、上下孔列の孔中心とフィン端縁間寸法hbが10mm、各孔H2の中心間寸法waが25.4mm、孔H2とフィン側端縁間の寸法、wbが23.9mm、wcが6.4mmであり、各フィン2Fに対する貫入用孔H2の穿孔時に、丸開け用冶具の穿孔時の、裏面側に生ずる孔H2周囲の盛り上りを0.39mmとして、各フィン2F間隔は、循環パイプ2Aの貫入用孔H2への挿通時に貫入用孔H2部で密接させて、0.54mm間隔配置しておく。
【0092】
循環パイプ2A群の配置は、図6に示す如く、フィン2F群及び両端のエンドプレート2E,2E´に貫入した上4本と下4本の上下千鳥状配置の平行循環パイプ2A群に対し、後端(図6(A)の左端)側で、図6(C)に示す如く、ヘアピンチューブ2Bで2本ずつを連結し、前端(図6(A)の右端)側でUベント2Cで図6(D)の如く連結して、上列左端及び下列右端の循環パイプ2Aに出入口管2Dを接続し、出入口管2Dは、一方を往き側接続口2S、他方を戻り側接続口2Rとして、図6(B)の如く、フィン2F下端からLd(標準:80mm)前方に突出し、図6(D)の如く、フィン上縁からLh(標準:80mm)上方に突出し、且つ2S,2Rの中心間寸法Wd(標準:30mm)を保つ形態に作成する。
【0093】
従って、図7(A),(B)に示す如く、冷温水コイル2は、冷温水コイル2の前端側、即ち図7(A)の右側から見て、往き側接続口2Sからの流入水は、図7(B)に示す如く、フィン2Fの上列端位置の循環パイプ2Aへf1として流入し、f2→f3→f4→f5→f6→f7→f8→f9と千鳥形態でフィン2Fと熱交換しながら下列右端のフィン貫入用孔H2を貫通する循環パイプ2Aの流れf9から戻り側接続口2Rへと還流してフィン2Fと熱交換可能なものとなる。
【0094】
〔空気熱交換器1(図4、図5)〕
本発明の空気熱交換器1は、冷温水コイルを筒本体1A内に収納して、吸気側1Sから流入する居室内の夏季の高温多湿空気を冷却して、結露水を発生させて減湿した低温低湿空気として居室内に還流供給したり、冬季の低温乾燥空気を加熱、加湿して、高温多湿空気として居室内に還流供給するものであり、定期的に、冷温水コイルに付着したゴミの洗浄排除も出来、空気熱交換器1内に溜まる結露水や洗浄水も、支障無くドレンパイプ8Aから排除出来るものである。
【0095】
空気熱交換器1の全体構成は、図5(A)に示す如く、長尺の筒本体1Aの略全長に亘って上下中間層に冷温水コイル2を延展配置し、冷温水コイル2の前端の出入口管2Dを起立して筒本体1Aから往き側接続口2S及び戻り側接続口2Rとして上方に突出させ、冷温水コイル2の下面空間Sdはコイル2の前端下面に風偏向板bbを配置し、コイル2の上面空間Suには、前部から後部に亘って順次、通過風量が減少するように、風偏向板bt群を配置して、吸気側1Sからの流入空気を、全て、コイル2の上面空間Suに案内して、上面空間Suから下面空間Sdへフィン2F群の隙間を貫流させて、供給側1Rでは、すべて空気流をコイル2の下面空間Sdから居室内に供給させるものである。
【0096】
そして、冷温水コイル2の前後方向全長に亘って、洗浄ノズル9A群を冷温水コイル2の上方に、間隔配置すると共に、コイル2の前端部の上方から噴霧ノズル10Aを垂下し、必要に応じて、冷温水コイル2のゴミを洗い流すことも、空気熱交換器1内を貫流する空気に噴霧ノズル10Aで加湿することも可能とし、空気熱交換器1内に溜まる結露水や洗浄水は、ドレンパイプ8Aからのドレン回路8で支障無く除去可能としたものである。
【0097】
〔空気熱交換器1の組立て(図2、図3)〕
空気熱交換器1の外形を規定する筒本体1Aとして、図4(B)に示す如く、内径r1が131mm、肉厚4.5mm、長さL1が890mmの硬質塩化ビニル管を準備し、筒本体1Aの上面には、適宜間隔で、洗浄ノズル9A挿入用孔H1群と、前端部の噴霧ノズル10A挿入用孔H1´を穿孔し、上面の前端から、図4(C)に示す如く、幅10mm、長さ70mmのスリット状の切欠1Gを間隔wd(30mm)で配置し、後端から所望寸法(標準:75mm)位置で、ドレンパイプ用の孔を開けて、外径32mm、肉厚3.5mm、長さ40mmの硬質塩化ビニル管のドレンパイプ8Aを垂下固定しておく。
【0098】
次いで、図4(B)、図5(B)に示す如く、筒本体1Aの内周の長さ方向適所に、両端が筒本体1A当接用のアンカー片2K´を備えた1.3mm厚で幅25mmのアルミ製受金具2Kを、下側受金具として径方向に差し渡し状にねじ2Nで固定しておく。
また、図6の如く、予め準備した冷温水コイル2には、図5(C)〜(F)に示す如く、0.4mm厚のアルミ製の円弧形状板の弦辺から複数のアンカー片anを突設し、円弧形状板を45°屈曲した、下側用風偏向板bbと上側用風偏向板btとを配置する。
【0099】
この場合、上側用風偏向板btとしては、図5(C)に示す如く、円弧形状板が、同一曲率で、径が大から小へ変化させた複数枚bt1,bt2,bt3,bt4,bt5,bt6を準備し、図5(A)に示す如く、下側風偏向板bbを、アンカー片anをエンドプレート2Eとフィン2F間に挿入配置し、同様に、上側風偏向板btも、後端の最大径のbt1は、アンカー片anをエンドプレート2E´とフィン2F間に挿入し、円弧形状板が、順次後部から前部へ大径→小径となるように、bt2,bt3,bt4,bt5,bt6と間隔110mmで、肉厚0.4mmのアンカー片anをフィン2F間隙間(標準:0.54mm)へ挿入して、上下の風偏向板bt,bbをコイル2の上面及び下面に配置する。
【0100】
次いで、図4(B),(C)に示す如く、冷温水コイル2を筒本体1Aの吸気側から筒本体1A内に挿入して往き側接続口2S及び戻り側接続口2Rを、筒本体1Aの上面のスリット状切欠1Gに挿入すると共に、冷温水コイル2を受金具2K上に載置し、図4(E)に示す如く、冷温水コイル2の上面にも、適宜位置に、受金具2Kを当接して、受金具2Kのアンカー片2K´を、外側からねじ2Nで固定する。
そして、筒本体1Aの後端下面には、図5(G),(H)に示す如く、筒本体1Aと同一曲率の円弧形状の、円弧縁に円弧辺8Tを、弦縁に水平上辺8Fを付設した止水板8Rを、図4(B),(E)に示す如く、筒本体1Aの下半を閉止するように、ねじ8Nで固定すれば、取付用の空気熱交換器1となる。
【0101】
〔空気熱交換システムの構築〕
(空気熱交換器1の取付け)
建物の構造体及び外壁を構築後、各居室内の天井野縁組みを実施し、天井仕上材の張着前に、取付用の空気熱交換器1及びダクトファン3Fを慣用の手段で、例えば吊ボルトを2階の根太材に取付けて吊込み、図4(A)に示す如く、空気熱交換器1の吸気側1Sには、吸気回路3としてレジューサー管3Eを介してダクト管3Dでダクトファン3Fと配管接続し、ダクトファン3Fを天井面の吸気グリル3Gとフィルター3Cを介在して接続し、空気熱交換器1の供給側1Rにも、供給回路4として、レジューサー管3Eを介してダクト管4Dを配管し、ダクト管4Dを輻射用パネルヒーター7Aの幅中央の上部天井面の吹出口4K、及び天井Cの適所の供給グリル4Gに接続する。
そして、ダクトファン3Fは、図1(A)に示す如く、居室内配置の湿度検知器5Eと電線5Rで接続しておく。
【0102】
この場合、供給回路4のダクト管4Dの先端は、図3(C)の如く、天井面に配置した供給グリル4Gの接続円筒4Fに、ラッパ管4Rの基端の円筒管4Bを嵌合して、ラッパ管4Rを供給グリル4Gにねじn4で固定し、ダクト管4Dは、先端を、慣用のガラス繊維での被覆保温層4Aから標準20mm露出させて、被覆保温層4Aの先端をラッパ管4Rの拡開円錐管4Uの端縁と揃えて配置し、ラッパ管4Rの前端内周とダクト管被覆保温層4Aとの間に空気誘引用の小寸(標準:15mm)のスペースSが存在する形態で、ラッパ管4Rを介して供給グリル4Gと連通させる。
【0103】
(洗浄回路9の配置)
そして、図5(A)に示す如く、空気熱交換器1の筒本体1Aの上面に間隔(標準:110mm)配置した挿入用孔H1群に、ストレーナーを一体とした慣用の扇形噴霧タイプの洗浄ノズル9A群を、筒本体1A上面に配置した鋼管の給水管9Bに嵌合して、給水管9Bを筒本体1Aに止着し、図1(A)に示す如く、建物内に延展配置した給水主管9Cと給水管9Bとを電磁弁6M及びタイマースイッチ9Dを介在して接続することにより、洗浄回路9を形成する。
この場合、各洗浄ノズル9Aは冷温水コイル2の上面に配置した各風偏向板bt間の中央に配置する。
【0104】
(加湿回路10の配置)
図5(A),(B)に示す如く、筒本体1Aの上面に延出した鋼管製の枝管10Bの先端から、筒本体1Aの挿入用孔H1´を介して、ストレーナーを一体とし、自体に加圧機能を備え、スプレーパターンが円錐で、均等な流量分布する、慣用の噴霧ノズル10Aを、冷温水コイル2の前端上方に垂下配置し、枝管10Bは、図1(A)に示す如く、電磁弁6Mを介して、建物内に延展した給湯管10Cと連通させ、電磁弁6Mは、居室内配置の湿度検知器5Eと電線5Rで接続して、湿度検知器5Eの指令によって制御操作されるように配置しておく。
【0105】
(ドレン回路の配置)
空気熱交換器1の筒本体1Aの下面の後端から75mmの位置で垂下突出したドレンパイプ8Aに、慣用のエルボ継手、ソケット継手、ニップル継手を介して、ドレンパイプ8Aと同質、同形の排水パイプ8Bを連続して配管してドレン回路8を配置しておく。
尚、ドレンパイプ8A及び排水パイプ8Bには、結露防止のために、慣用の保温材を被覆しておく。
【0106】
(放熱回路7及び冷温水循環回路6の配置)
図2(B)の流水回路図に示す如く、冷暖房用の放熱回路7は、室外に配置した、慣用のコンデンサ6a、コンデンサファン6b、圧縮機6dから成る室外ユニット6Aと、冷媒管6Bを介して接続した、膨張弁6e、冷温水コイル6mを内蔵する水熱交換器6f、タンク6i、循環ポンプ6nから成る水熱交換ユニット6Cとで構成するヒートポンプ式の熱源機の、水熱交換ユニット6Cから大径(内径:21.2mm、肉厚2.9mm)のプラスチック樹脂パイプ(架橋ポリエチレン管(JISK6769))6P”を引出して往き側ヘッダー6Sに接続する。
【0107】
そして、図2(B)に示す如く、水熱交換ユニット6Cと往き側ヘッダー6S間の大径パイプ6P”には、上流から下流に亘って、分岐点P1用のT型ソケット6D、仕切弁6F、電動三方弁((株)ベン製、ML−1T型電動弁)6T、循環ポンプ6Nを順次配置する。
また、戻り側ヘッダー6Rから水熱交換ユニット6Cへの大径パイプ6P”の戻り側経路内には、分岐点P2用のT型ソケット6Dを配置し、戻り側経路のT型ソケット6Dと往き側経路内の電動三方弁6Tとを大径パイプ6P”のバイパス流路b7で連通し、バイパス経路b7にも仕切弁6Fを配置し、T型ソケット6Dの上流位置にはサーモセンサー((株)山武製のTA温度センサ)5Tを配置する。
そして、電動三方弁6Tは、居室内温度検知器5S及びサーモセンサー5Tと電線5Rで接続し、温度設定ダイヤル6gを備えている。
【0108】
そして、往き側ヘッダー6Sから小径(内径:9.8mm、肉厚:1.6mm)のプラスチック樹脂パイプ(架橋ポリエチレン管)6Pを延出して輻射用パネルヒーター7A供給口7Sと接続し、排出口7Rから小径パイプ6Pで戻り側ヘッダー6Rと連通して放熱回路7を形成する。
また、往き側経路の分岐点P1の、T型ソケット6Dからは、放熱回路7用の小径パイプ6Pと同一の、小径パイプ6P´を延出して空気熱交換器1内の冷温水コイル2の往き側接続口2Sと接続し、該冷温水コイル2の戻り側接続口2Rからは、小径パイプ6P´で戻り側ヘッダー6Rと連通し、空気熱交換器1用の冷温水循環回路6の流水は、放熱回路7の分岐点P1→空気熱交換器1→放熱回路7の戻り側ヘッダー6Rの経路で還流し、戻り側ヘッダー6Rで放熱回路7の循環水と合流させる。
【0109】
〔空気熱交換システムの運転〕
1.夏季の冷房運転:
冷房運転は、水熱交換ユニット6Cから往き側大径パイプ6P”への送水温度を7℃、電動三方弁6Tの温度設定ダイヤル6gを15℃、即ち放熱回路7への送水温度を15℃と設定し、ダクトファン3Fを駆動させて、空気熱交換器1への吸気回路3、供給回路4による居室内空気を循環させながら、放熱回路7及び冷温水循環回路6を運転した。
【0110】
そして、運転初期の空気熱交換器1にあっては、図2に示す如く、7℃の循環水が分岐点P1から矢印w1の水流で空気熱交換器内の冷温水コイル2に、往き側接続口2Sから流入し、該コイル2内では循環パイプ2A内を流水して、空気熱交換器1内で吸気回路3から吸込んだ空気流a3を冷却して除湿し、該コイル2内で放熱して、標準水温13℃となった水流w2が、コイル2の戻り側接続口2Rから戻り側ヘッダー6Rの弁6E´を介して戻り側ヘッダー6Rに流入した。
【0111】
また、運転初期の放熱回路7にあっては、図2に示す如く、往き側経路の分岐点P1から大径プラスチック樹脂パイプ6P”内を、7℃で放熱回路7に流入する水流w3は、仕切弁6Fを経て、電動三方弁6Tの流入口6Xから流出口6Zに流出し、循環ポンプ6Nを経て、水流w4で、往き側ヘッダー6Sの各弁6Eから小径のプラスチック樹脂パイプ6P内水流w5で、輻射用パネルヒーター7Aへ供給口7Sから流入し、パネルヒーター7A内を循環放熱して17℃となって、排出口7Rから小径のプラスチック樹脂パイプ6P内の水流w6で、戻り側ヘッダー6Rに弁6Eから流入し、空気熱交換器1からの13℃の還流水と合流混合して16.2℃の合流冷水として、戻り側ヘッダー6Rから大径のプラスチック樹脂パイプ6P”内の水流w7で、戻り側経路を水熱交換ユニット6Cへと流水した。
【0112】
この場合、電動三方弁6Tは、温度設定ダイヤル6gで、流出口6Zの流出温度、即ち往き側ヘッダー6Sへの送水温度、を設定すれば、流入口6Xからの流入温度を感知し、サーモセンサー5Tで戻り側ヘッダー6Rからの流水温度を感知することで、水熱交換ユニットからの流入口6X、及びバイパス流路b7からの流入口6Yを比例配分方式で算定開放するものである。
【0113】
そして、運転初期では、戻り側ヘッダー6Rからの流水、即ち輻射用パネルヒーター7Aからの17℃の還流と空気熱交換器1からの13℃の還流の混合水流が16.2℃であるため、電動三方弁6Tは、流入口6Xは12%開放、バイパス流路b7からの流入口6Yは88%開放して、流出口6Zからは、流量の88%が戻り側ヘッダー6Rからのバイパス流路水と、12%が水熱交換ユニット6Cからの流入水との、水温15℃の合流水を往き側ヘッダー6Sへ送水した。
【0114】
また、冷房の平常運転中は、空気熱交換器1では、運転初期同様に、7℃の冷水がコイル2内で6℃吸熱して13℃の冷水となって戻り側ヘッダー6Rに戻り、放熱回路7では、電動三方弁6Tの流出口6Zから15℃の冷水を、各パネルヒーター7Aに、往き側ヘッダー6Sを介して送水し、パネルヒーター7A内での冷房放熱によって25℃となって戻り側ヘッダー6Rに還流した。
【0115】
この場合、戻り側ヘッダー6Rでは、空気熱交換器1から13℃の還水と、パネルヒーター7Aからの25℃の還水とが合流して、22.6℃の冷水と成って戻り側経路をw7→w8と水熱交換ユニット6Cへ戻るが、電動三方弁6Tの作用によって、バイパス経路b7からの流入口6Yが50%開放、水熱交換ユニット6Cからの流入口6Xが50%開放されて、往き側ヘッダー6Sへ流出口6Zから15℃で送水されたため、戻り側ヘッダー6Rから水熱交換ユニット6Cへの帰還流量は半分となり、水熱交換ユニット6Cでの熱交換エネルギーが省力化出来る。
【0116】
そして、冷房運転によって、輻射用パネルヒーター7Aからは、設定温度への冷房が輻射熱放熱で実施出来て、居室内空気が除湿されたため、人体には、冷房設定温度よりも低温に感じられ、さわやかな冷房環境が得られた。
しかも、空気熱交換器1で除湿した供給空気流の一部は、天井の吹出口4Kより輻射用パネルヒーター7Aに沿って吹き下ろすため、輻射用パネルヒーター7Aの表面結露が抑制出来た。
そして、供給ダクト管4Dから吹出す除湿空気は、コイル2での除湿用の熱交換によって冷却されるため、寒気を感ずる空気流となるが、ダクト先端に配置したラッパ管4Rによって、吹出し空気流a6は天井内の非冷房の空気acを合流して吹出すため、供給グリル4Gの下方での過激な寒気流が和らげられた。
【0117】
そして、空気熱交換器1の除湿作用は、図3(B)に示す如く、吸気側1Sからの吸気空気流a3が、コイル2の下側の風偏向板bb及び上側の風偏向板bt1・・・bt6によって、コイル2の、高圧の上面空間Suから低圧の下面空間Sdへと、フィン2Fの隙間を貫流し、下側の空間Sdから供給側1R、即ち供給側ダクト管4Dに送風出来たため、吸気空気流a3をフィン2Fの幅方向に対して直交方向に流すにもかかわらず、フィン2F群は、高い熱交換率を発揮し、空気熱交換器1が高い除湿効率を発揮した。
【0118】
そして、空気熱交換器1は、除湿作用で生じたフィン2Fの結露水が、フィン2F間を貫流する下降空気流a4で筒本体1Aの下面に溜まり、ドレンパイプ8Aからのドレン回路8によって支障無く排除出来た。
尚、居室内空気が設定湿度に達すると、湿度検知器5Eでの制御で、ダクトファン3Fが停止するが、冷温水循環回路6は常時運転状態であるため、ダクトファン3F、即ち除湿作用は、湿度検知器5Eの指令があれば、直ちに応答作動出来る。
【0119】
2.暖房運転:
冬季の暖房運転は、水熱交換ユニット6Cから放熱回路7、即ち往き側大径パイプ6P”に45℃の温水を供給し、往き側ヘッダー6Sを経て、輻射用パネルヒーター7Aで10℃放熱して、戻り側ヘッダー6Rへ還水し、分岐点P1からの小径パイプ6P´で分岐した循環回路6では、45℃の温水をコイル2が6℃放熱し、戻り側ヘッダー6Rに39℃で還水した。
【0120】
そのため、電動三方弁6Tは、図2(B)に示す如く、往き側ヘッダー6Sへの送水温度、即ち流出口6Z温度を、温度設定ダイヤル6gで40℃にしておき、戻り側ヘッダー6Rで、放熱回路7の35℃の水流w6と、空気熱交換器1からの39℃の水流w2が混合されて、戻り側ヘッダー6Rからは35.8℃となった水流w7を、バイパス流路b7の分岐点P2の上流で、サーモセンサー5Tが測定して電動三方弁6Tに通知することにより、電動三方弁6Tは、流入口6Xの入水温度(標準:45℃)、流出口6Zからの送水温度(標準:40℃)及びサーモセンサー5Tからの通知温度、即ちバイパス流路b7から流入口6Yへの水流w9の入水温度(35.8℃)によって、流入口6Xからの水流w3及び6Yからの水流w9を比例配分方式で算出して、流入口6Xを45%開放、流入口6Yを55%開放し、流出口6Zから設定温度(標準:40℃)の水流w4を往き側ヘッダー6Sに送水した。
【0121】
この場合、戻り側ヘッダー6Rから大径パイプ6P”を経由する還水流w7は、分岐点P2からバイパス流路b7によって流量の55%が水流w9で電動三方弁6Tへ、残余の45%流量が水流w8で水熱交換ユニット6Cに還水して再加熱することとなり、バイパス流路b7を配置したために、水熱交換ユニット6Cでの熱交換負荷が軽減出来る。
そして、空気熱交換器1は、湿度検知器5Eによる制御作用によって、加湿回路での必要給湿が実施出来、放熱回路7による輻射用パネルヒーター7Aでの輻射熱暖房と、空気熱交換器での居室内空気に対する加熱、加湿により快適な暖房が実施出来る。
【0122】
3.中間期の運転:
冬から夏、夏から冬の中間期にあっては、図2(B)に示す如く、往き側経路の分岐点P1と電動三方弁6T間、及び戻り側経路の分岐点P2から電動三方弁6Tへのバイパス流路b7に配置した仕切弁6Fを閉止し、流水回路は、水熱交換ユニット6C→空気熱交換器1→戻り側ヘッダー6R→水熱交換ユニット6Cの回路のみ、即ち空気熱交換器用の冷温水循環回路6のみ作動可能とし、輻射用パネルヒーター7Aの放熱回路7は閉止しておく。
そして、居室内の温湿度環境の必要に応じて、空気熱交換器1に温水又は冷水を循環させれば、必要な、高温加湿空気又は低温低湿空気の居室内への提供が可能となり、中間期にあっては、輻射用パネルヒーター7Aによる冷暖房運転することなく、空気熱交換器の稼動運転のみで、中間期相応の冷暖房が可能となった。
【符号の説明】
【0123】
1 空気熱交換器
1A 筒本体
1G 切欠
1R 供給側
1S 吸気側
2 冷温水コイル(コイル)
2A 循環パイプ
2B ヘアピンチューブ
2C Uベント
2E,2E´ エンドプレート
2F フィン
2K 受金具
2R 戻り側接続口
2S 往き側接続口
3 吸気回路
3D,4D ダクト管
3E レジューサー管
3F ダクトファン
3G 吸気グリル
4 供給回路
4A 被覆保温材
4B 円筒管
4G 供給グリル
4K 吹出口
4R ラッパ管
4U 円錐管
5 検知回路
5E 湿度検知器
5R 電線
5S 温度検知器
5T サーモセンサー
6 冷温水循環回路(循環回路)
6A 室外ユニット
6B 冷媒管
6C 水熱交換ユニット
6D T型ソケット
6F 仕切弁
6M 電磁弁
6N,6n 循環ポンプ
6P,6P´,6P” プラスチック樹脂パイプ(パイプ)
6R 戻り側ヘッダー
6S 往き側ヘッダー
6T 電動三方弁
6X,6Y 流入口
6Z 流出口
7 放熱回路
7A 輻射用パネルヒーター
7R 排出口
7S 供給口
8 ドレン回路
8A ドレンパイプ
8B 排水パイプ
8R 止水板
9 洗浄回路
9A 洗浄ノズル
9B 給水管
9C 給水主管
9D タイマースイッチ
10 加湿回路
10A 噴霧ノズル
10B 枝管
10C 給湯管
a1・・・a9 空気流
an アンカー片
bb 下側風偏向板(風偏向板)
bt 上側風偏向板(風偏向板)
b7 バイパス流路
C 天井
H1 挿入用孔
H2 貫入用孔
P1,P2 分岐点
S スペース
Sd 下面空間
Su 上面空間
w1・・・w9 水流
wi 間仕切壁
WO 外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外の水熱交換ユニット(6C)から居室内の輻射用パネルヒーター(7A)に冷温水循環の放熱回路(7)を配置し、放熱回路(7)の水熱交換ユニット(6C)近傍から分岐して放熱回路(7)に還流復帰する冷温水循環回路(6)に空気熱交換器(1)を配置し、空気熱交換器(1)には、結露水を排出するドレン回路(8)と、居室内空気を吸気して空気熱交換器(1)内に送風する吸気回路(3)と、空気熱交換器(1)から空気を居室内に送風する供給回路(4)とを配置し、居室内の温湿度、及び循環水の温度を検知回路(5)で検知して制御運転する空気熱交換システム。
【請求項2】
空気熱交換器(1)には、空気熱交換器(1)内を洗浄する洗浄回路(9)及び空気熱交換器(1)内に水を噴霧して居室内に加湿空気を供給する加湿回路(10)を接続した、請求項1に記載の空気熱交換システム。
【請求項3】
居室内に配置した温度検知器(5S)が、放熱回路(7)の循環水を、空気熱交換器(1)への冷温水循環回路(6)の分岐点(P1)の下流で温度制御し、居室内に配置して、吸気回路(3)と、加湿回路(10)とに接続した湿度検知器(5E)が、空気熱交換器(1)の加湿回路(10)を制御する、請求項1又は2に記載の空気熱交換システム。
【請求項4】
洗浄回路(9)は、給水主管(9C)と接続した給水管(9B)から空気熱交換器(1)内に洗浄ノズル(9A)群を突設し、給水管(9B)に介在配置した電磁弁(6M)をタイマースイッチ(9D)で洗浄作用制御する、請求項2又は3に記載の空気熱交換システム。
【請求項5】
加湿回路(10)は、給湯管(10C)と接続した枝管(10B)から空気熱交換器(1)内に噴霧ノズル(10A)を突設し、枝管(10B)に介在配置した電磁弁(6M)を湿度検知器(5E)で噴霧作用制御する、請求項2又は3に記載の空気熱交換システム。
【請求項6】
放熱回路(7)の冷温水循環は、水熱交換ユニット(6C)から電動三方弁(6T)を介在して往き側ヘッダー(6S)、輻射用パネルヒーター(7A)、戻り側ヘッダー(6R)、水熱交換ユニット(6C)へと循環し、空気熱交換器(1)の循環回路(6)の循環水は、放熱回路(7)の電動三方弁(6T)上流の分岐点(P1)から分流して、空気熱交換器(1)を経て、戻り側ヘッダー(6R)で放熱回路循環水と合流し、戻り側ヘッダー(6R)から水熱交換ユニット(6C)への戻り側循環水は、経路中の分岐点(P2)から往き側経路中の電動三方弁(6T)へのバイパス流路(b7)を介して、戻り側循環水の温度に応じて制御流量を電動三方弁(6T)から往き側経路にバイパス流入させる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空気熱交換システム。
【請求項7】
往き側経路中の電動三方弁(6T)には、温度検知器(5S)と温度設定ダイヤル(6g)を介在し、戻り側循環水の温度をサーモセンサー(5T)で検出して、戻り側経路の分岐点(P2)から、バイパス流路(b7)を介して戻り循環水の一部を電動三方弁(6T)にバイパス流入し、合流した電動三方弁(6T)下流の往き側循環水の温度を、常時設定温度に維持する、請求項6に記載の空気熱交換システム。
【請求項8】
往き側経路中の分岐点(P1)と電動三方弁(6T)との間、及び戻り側経路中の分岐点(P2)と電動三方弁(6T)との間のバイパス流路(b7)に仕切弁(6F)を配置した、請求項6に記載の空気熱交換システム。
【請求項9】
空気熱交換器(1)を天井内に配置して吸気回路(3)及び供給回路(4)をダクト方式とし、供給回路(4)を供給グリル(4G)で居室内と接続し、空気熱交換器(1)からの送風空気の一部を、吹出口(4K)から輻射用のパネルヒーター(7A)周面に吹き下ろす、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の空気熱交換システム。
【請求項10】
供給側ダクト管(4D)と供給グリル(4G)の間にラッパ管(4R)を配置して、供給グリル(4G)からは、供給側ダクト管(4D)からの放出空気流がラッパ管から天井内空気を吸引合流して放出する、請求項8又は9の空気熱交換システム。
【請求項11】
請求項1の空気熱交換システムに用いる空気熱交換器であって、筒本体(1A)の、前端には吸気側ダクト管(3D)を、後端には供給側ダクト管(4D)を接続し、筒本体(1A)内には、長手方向に冷温水コイル(2)を配置し、筒本体(1A)上面からは、冷温水コイル(2)の上面に対して洗浄ノズル(9A)群を前後間隔垂下し、筒本体(1A)の前部上面からは、噴霧ノズル(10A)を垂下し、筒本体(1A)の下面の、後部からはドレンパイプ(8A)を垂下し、筒本体(1A)の、後端内底面には止水板(8R)を配置した空気熱交換器。
【請求項12】
冷温水コイル(2)は、筒本体(1A)の長手方向に並列連通した複数本の循環パイプ(2A)群に幅方向のフィン(2F)群を密集平行配置して、筒本体(1A)の上下方向中央部位置で長手方向に延展配置し、冷温水コイル(2)の下側では、冷温水コイル(2)の吸気側(1S)の端部に、後方に上昇傾斜する風偏向板(bb)を筒本体(1A)下面から配置して、吸引空気流(a3)の冷温水コイル(2)下面への流入を抑制し、冷温水コイル(2)の上側では、後方に下降傾斜する風偏向板(bt)群を、吸気側(1S)から供給側(1R)に亘って順次通過風量が減少するように間隔配置し、吸気側(1S)から流入する空気流(a3)を冷温水コイル(2)の上面側から下面側に順次偏向して、フィン群(2F)の隙間を貫流案内し、供給側(1R)では、冷温水コイル(2)の下面からの空気流(a4)として流出させる、請求項11に記載の空気熱交換器。
【請求項13】
風偏向板(bb,bt)は、垂直のアンカー片(an)を備えた傾斜板であり、風偏向板(bb,bt)の傾斜した外周形状が筒本体(1A)の内周形状と相似形であって、各風偏向板(bb,bt)は、アンカー片(an)を、冷温水コイル(2)のフィン(2F)の隙間に挿入して配置し、冷温水コイル(2)の、前端下面に配置する風偏向板(bb)と後端上面に配置する風偏向板(bt)は、筒本体(1A)の内面を閉止する、請求項12に記載の空気熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92330(P2013−92330A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236008(P2011−236008)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(511221378)株式会社サクラプロリンク (2)
【出願人】(310010575)地方独立行政法人北海道立総合研究機構 (51)
【Fターム(参考)】