説明

空気調和機の制御装置

【課題】地震の揺れによる配管などが損傷して冷媒が室内に漏洩する量を少なくし、且つ揺れが小さいときには速やかに元の状態の運転に戻る空気調和機の制御装置を提供する。
【解決手段】空気調和機の制御装置は、建物躯体に設置された室外機と建物内の各部屋に設置されたた室内機との間を冷媒の配管で連結して冷媒が循環する閉回路を構成された空気調和機を制御する空気調和機の制御装置において、地震に伴う初期微動または主要動を感知する感震装置からの信号が入力されるとともに、上記初期微動に係る信号が入力されたときポンプダウン運転を行って冷媒液を上記室内機から上記室外機に移動させ、その後所定の震度以上の上記主要動を感知したとき上記冷媒の配管を閉鎖するとともにポンプダウン運転を停止し、また所定の震度未満の上記主要動に係る信号を受信したときポンプアップ運転を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震が発生したときに冷媒の大気への放出を防止する空気調和機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震などで、万一冷媒回路の配管が破損した場合にも、室内への冷媒洩れを防ぐことができる空気調和機は、感震装置が振動を感知したときに、遮断機構を構成する電動膨張弁、4路切替弁、逆止弁が室内機と室外機との間を遮断する。したがって、万一、振動で室内配管が折損した場合でも、室外機に滞留した冷媒が室内に漏洩することを防止できる。また、振動を感知したときに、室内機側に在る冷媒量が所定の値を越えているときには、制御部でポンプダウン運転を行い、室内機側から室外機側に冷媒を移動させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−28238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、主要動を感知したときポンプダウン運転を行う場合、揺れが小さいときには敢えてポンプダウン運転を行う必要がなく、逆に揺れが大きいときにはポンプダウン運転を行うと室内に冷媒が漏洩する危険性が増すという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、地震の揺れによる配管などが損傷して冷媒が室内に漏洩する量を少なくし、且つ揺れが小さいときには速やかに元の状態の運転に戻る空気調和機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る空気調和機の制御装置は、建物躯体に設置された室外機と建物内の各部屋に設置されたた室内機との間を冷媒の配管で連結して冷媒が循環する閉回路を構成された空気調和機を制御する空気調和機の制御装置において、地震に伴う初期微動または主要動を感知する感震装置からの信号が入力されるとともに、上記初期微動に係る信号が入力されたときポンプダウン運転を行って冷媒液を上記室内機から上記室外機に移動させ、その後所定の震度以上の上記主要動を感知したとき上記冷媒の配管を閉鎖するとともにポンプダウン運転を停止し、また所定の震度未満の上記主要動に係る信号を受信したときポンプアップ運転を行う。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る空気調和機の制御装置の効果は、初期微動と主要動とを感知する感震装置を備え、先ず初期微動を感知したときポンプダウン運転を行って、室内機1側にある冷媒液を室外機2側に移すので、主要動が到達して配管に損傷を受けても室内に漏れる冷媒を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示す構成図である。
この発明の実施の形態1に係る空気調和機は、室内機1、室外機2、室内機1と室外機2とを接続している連絡配管3および5、および室外機2が設置されている建物躯体の揺れを感知する感震装置11を備える。連絡配管3は、継ぎ手6で室内機1内の配管7に接続されており、連絡配管5は、継ぎ手9で室内機1内の配管8に接続されている。
【0009】
感震装置11は、室外機2の揺れを感知し得るように室外機2が設置されている建物躯体に直接設置されている。そして、感震装置11は、揺れを分析して揺れが初期微動(以下、P波と称す)または主要動(以下、S波と称す)の何れかに該当するか判定し、揺れに関する信号として出力する。なお、縦波のP波が震源から空気調和機が設置されている建物躯体までに伝わるに経過する時間は、横波のS波が震源から空気調和機が設置されている建物躯体までに伝わるに経過する時間より短いので、P波を感知してからS波を感知する。
【0010】
室内機1は、室内熱交換器10および制御装置12を備える。
室外機2は、室外熱交換器15、連絡配管3に接続された電動膨張弁13、連絡配管5に接続された4路切替弁17、電動膨張弁13を室外熱交換器15に接続する冷媒配管16、および、室外熱交換器15を4路切替弁17に接続する冷媒配管18を備える。
4路切替弁17の2つのポート17a、17bは圧縮機20に接続されている。そして、圧縮機20の吐出側20aとポート17bとの間に、吐出方向に向かって順方向の逆止弁21が接続されている。
制御装置12は、感震装置11から揺れに関する信号を受けて、電動膨張弁13、4路切替弁17、圧縮機20を制御する。
【0011】
図2は、この発明の実施の形態1に係る空気調和機の制御装置12が実行する感震対応制御の手順を示すフローチャートである。
次に、制御装置12で実行される感震対応制御の手順について説明する。なお、制御装置12は、感震対応制御を所定の周期で開始する。
ステップS101で、P波を受信したか否かを判断し、P波を受信したときステップS102に進み、P波を受信していないときステップS101を繰り返す。
ステップS102で、電動膨張弁13を全閉にし、且つ、4路切替弁17を冷房運転位置にし、圧縮機20を駆動してポンプダウン運転を行う。
ステップS103で、S波を受信したか否かを判断し、S波を受信したときステップS104に進み、S波を受信していないときステップS107に進む。
ステップS104で、揺れの震度が5弱以上か否かを判断し、震度が5弱以上のときステップS105に進み、震度が4以下のときステップS106に進む。
ステップS105で、4路切替弁17を閉鎖し、且つ圧縮機20を停止して感震対応制御を終了する。
ステップS106で、電動膨張弁13を全開にしてポンプアップ運転を行って感震対応制御を終了する。
ステップS107で、経過時間が所定の時間を経過したか否かを判断し、経過時間が所定の時間経過したときステップS106に進み、経過時間が所定の時間を経過していないときステップS103に戻る。
【0012】
この発明の実施の形態1に係る空気調和機の制御装置12は、P波とS波とを感知する感震装置11を備え、先ずP波を感知したときポンプダウン運転を行って、室内機1側にある冷媒を室外機2側に移すので、S波が到達して配管に損傷を受けても室内に漏れる冷媒を少なくすることができる。
また、S波が到達したときの揺れが震度4以下のように弱いとき電動膨張弁13を全開してポンプアップ運動を行ってP波を感知する前の状態に戻そうとするので、状態の復旧を速やかに行うことができる。
【0013】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係る空気調和機の構成を示す構成図である。
この発明の実施の形態2に係る空気調和機は、この発明の実施の形態1に係る空気調和機と制御装置12Bが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る制御装置12Bは、この発明の実施の形態1に係る制御装置12に気象庁から発表される緊急地震速報を受信する受信器23が追加され、それに関連して感震対応制御が異なり、これ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
【0014】
緊急地震速報は、直下型の地震を除くと、空気調和機の室外機2が設置されている建物躯体が揺れる数秒から数十秒前に発表されるので、時系列に並べると最初に緊急地震速報を受信し、次にP波を感知し、最後にS波を感知する。
【0015】
図4は、この発明の実施の形態2に係る空気調和機の制御装置12Bが実行する感震対応制御の手順を示すフローチャートである。
次に、制御装置12Bで実行される感震対応制御の手順について説明する。なお、制御装置12は、感震対応制御を所定の周期で開始する。
ステップS201で、緊急地震速報を受信したか否かを判断し、緊急地震速報を受信したときステップS202に進み、緊急地震速報を受信していないときステップS201を繰り返す。
ステップS202で、電動膨張弁13を全閉にし、且つ、4路切替弁17を冷房運転位置にし、圧縮機20の駆動を開始してポンプダウン運転を行う。
ステップS203で、P波を受信したか否かを判断し、P波を受信したときステップS204に進み、P波を受信していないときステップS203を繰り返す。
ステップS204で、圧縮機20の駆動を停止してステップS205に進む。
ステップS205で、S波を受信したか否かを判断し、S波を受信したときステップS206に進み、S波を受信していないときステップS209に進む。
ステップS206で、揺れの震度が5弱以上か否かを判断し、震度が5弱以上のときステップS207に進み、震度が4以下のときステップS208に進む。
ステップS207で、4路切替弁17を閉鎖して感震対応制御を終了する。
ステップS208で、電動膨張弁13を全開にし、圧縮機20の駆動を開始してポンプアップ運転を行って感震対応制御を終了する。
ステップS209で、経過時間が所定の時間を経過したか否かを判断し、経過時間が所定の時間経過したときステップS208に進み、経過時間が所定の時間を経過していないときステップS205に戻る。
なお、S波の震度が5弱以上と4以下で感震対応制御を変えているが、対応を変える震度はこれに限るものではない。
【0016】
この発明の実施の形態2に係る空気調和機の制御装置12Bは、緊急地震速報を受信する受信器23を備え、先ず緊急地震速報を受信したときポンプダウン運転を行って、室内機1側にある冷媒を室外機2側に移すので、S波が到達して配管に損傷を受けても室内に漏れる冷媒をさらに少なくすることができる。
また、P波が到達したときに圧縮機20を停止するので、圧縮機20を停止する時間的余裕があり、揺れの大きなS波が到達する前に完全に配管を閉鎖することができる。
なお、緊急地震速報を受信してポンプダウン運転を開始し、所定の震度以上の主要動を感知したとき配管を閉鎖しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る空気調和機の制御装置が実行する感震対応制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る空気調和機の構成を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る空気調和機の制御装置が実行する感震対応制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 室内機、2 室外機、3、5 連絡配管、6、9 継ぎ手、7、8 配管、10 室内熱交換器、11 感震装置、12、12B 制御装置、13 電動膨張弁、15 室外熱交換器、16 冷媒配管、17 4路切替弁、17a、17b ポート、18 冷媒配管、20 圧縮機、20a 吐出側、21 逆止弁、23 受信器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に設置された室外機と建物内の各部屋に設置されたた室内機との間を冷媒の配管で連結して冷媒が循環する閉回路を構成された空気調和機を制御する空気調和機の制御装置において、
地震に伴う初期微動または主要動を感知する感震装置からの信号が入力されるとともに、上記初期微動に係る信号が入力されたときポンプダウン運転を行って冷媒液を上記室内機から上記室外機に移動させ、その後所定の震度以上の上記主要動を感知したとき上記冷媒の配管を閉鎖するとともにポンプダウン運転を停止し、また所定の震度未満の上記主要動に係る信号を受信したときポンプアップ運転を行うことを特徴とする空気調和機の制御装置。
【請求項2】
緊急地震速報を受信する受信器を備え、
上記緊急地震速報を受信したときポンプダウン運転を行い冷媒液を上記室内機から上記室外機に移動させ、その後上記初期微動に係る信号が入力されたときポンプダウン運転を停止し、更にその後所定の震度以上の上記主要動を感知したとき上記冷媒の配管を閉鎖し、また所定の震度未満の上記主要動に係る信号を受信したときポンプアップ運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−144991(P2009−144991A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323516(P2007−323516)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】