説明

空気調和機の室外機

【課題】試運転しながら点検を行った室外機側から試運転前の運転状態に復帰することができる空気調和機の室外機を提供する。
【解決手段】空気調和機の室外機は、リモコンにより自身の側から運転が制御される室内機と通信が可能であるとともに上記リモコンの制御に係わらず試運転を実行および停止する試運転操作部を具備する室外制御基板を備える空気調和機の室外機において、
上記室外制御基板に設けられたコネクタと接続することにより上記室内機と通信することができる保守用基板を備え、上記保守用基板は、上記リモコンからの指令により運転しているときの空気調和機の運転状態を上記室内機から取得して記憶する状態取得手段と、上記記憶された運転状態で運転を復帰するように上記室内機に指令する復帰指令手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、点検時に試運転を行った後に室外機側から点検前の運転状態に戻す空気調和機の室外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室外機側で点検作業を実行できる空気調和機は、室内機制御用マイクロコンピュ−タを有する室内ユニットと、室外機制御用マイクロコンピュ−タを有する室外ユニットと、これら室内ユニットと室外ユニットのそれぞれが相互に情報を通信し、この室外ユニットに設けた試運転操作手段にて、所定の時間室内ユニットおよび室外ユニットの運転を実行および停止する手段と、自己診断を設定する設定手段と、この設定手段で設定した情報を表示する表示部とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−137993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、室外ユニットに設けた試運転操作手段により室内機および室外機を試運転すると、試運転前の室内機および室外機の運転状態に関する情報は室内機操作リモコンの指令値としてのみ残っているので、室外機側の点検が終了した後で空気調和機を復帰するためには室内機が設置されている各部屋に移動しなければならない。そのために作業員の動線が長く、点検時間がその分余分に掛かるという問題がある。
また、室内機操作リモコンを操作して空気調和機を試運転前の運転状態に復帰させるとき、室内機操作リモコンの操作ミスの可能性があるという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、試運転しながら点検を行った室外機側から試運転前の運転状態に復帰することができる空気調和機の室外機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る空気調和機の室外機は、リモコンにより自身の側から運転が制御される室内機と通信が可能であるとともに上記リモコンの制御に係わらず試運転を実行および停止する試運転操作部を具備する室外制御基板を備える空気調和機の室外機において、
上記室外制御基板に設けられたコネクタと接続することにより上記室内機と通信することができる保守用基板を備え、上記保守用基板は、上記リモコンからの指令により運転しているときの空気調和機の運転状態を上記室内機から取得して記憶する状態取得手段と、上記記憶された運転状態で運転を復帰するように上記室内機に指令する復帰指令手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る空気調和機の室外機の効果は、室外制御基板につながるコネクタが実装され、保守用基板に実装されたコネクタにより接続することにより保守用基板を用いて室内機の運転状態を取得し記憶できるとともに点検が完了した後で記憶された室内機の運転状態の情報を用いて運転を復帰することができるので、リモコンを用いなくても室内機の運転を復帰でき、作業員が再度室内に戻る動作が必要なくなり点検時間が短縮することができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る空調機の室外機を備える空気調和機の構成図である。
この発明の実施の形態に係る空気調和機は、セパレータ型であり、空気調和機の室外機1と空気調和機の室内機2は、例えば室外機1が建物の屋上、室内機2が部屋の天井などに設置されている。そして、通常運転時は空気調和機の運転を室内機操作リモコン3から出力される指令に基づいて制御する。これら室外機1および室内機2には交流電源4から交流電力が供給される。
この発明の実施の形態1に係る室外機1は、室外機1の動作を制御する室外制御基板5、室外制御基板5の指令に基づいて作動するファンモ−タ6、室外制御基板5の指令に基づいて作動する圧縮機7、室外機1の図示しない熱交換器の温度を検出する温度検出用サ−ミスタ8、交流電源4からの交流の電圧を降圧する変圧器9、および、室外制御基板5に取り付け・取り外しができる保守用基板10を備える。
室内機2は、室内機2の動作を制御する室内制御基板11、室内制御基板11の指令に基づいて作動するファンモ−タ12、室内温度検出用サ−ミスタ13、および、交流電源4からの交流の電圧を降圧する変圧器14を備える。
【0009】
室外制御基板5は、室外機1を制御する室外制御用マイクロコンピュータ15、変圧器9により降圧された交流を整流平滑して室外制御用マイクロコンピュータ15を駆動するための直流電源を得る整流回路16、室内機2の種々の情報を表示する表示部17、試運転の開始および終了が選択可能な試運転操作部18、および、室内機2との通信を行なうための室内通信回路19を備える。
室内制御基板11は、室内機2を制御する室内制御用マイクロコンピュータ21、変圧器14により降圧された交流を整流平滑して室内制御用マイクロコンピュータ21を駆動するための直流電源を得る整流回路22、および、室外機1との通信を行なうための室外通信回路23を備える。
【0010】
試運転操作部18は、試運転スイッチ26および停止スイッチ27が設けられ、試運転スイッチ26が投入されると、室内機操作リモコン3の設定に関わりなく、室温と設定温度との差が最大値をとっているような疑似信号を室外制御用マイクロコンピュータ15に送る。このため、室外機1は最大負荷で駆動されることになる。一方、停止スイッチ27が投入されると、室外機1は駆動を停止する。
【0011】
室外制御基板5には雌コネクタ28が実装され、雌コネクタ28は室外制御基板5の室内通信回路19に接続されている。
保守用基板10は、保守点検作業を行う作業員が携行し、保守用基板10に実装された雄コネクタ29を雌コネクタ28に接続することにより、保守用基板10が室内通信回路19と接続される。
【0012】
図2は、この発明の実施の形態1に係る保守用基板10の平面図である。
保守用基板10は、比較スイッチ31、指令スイッチ32、点灯手段としてのLED33、室内機2の運転状態を探るために設定するディップスイッチ群34、比較スイッチ31がONされたとき室内制御用マイクロコンピュータ21にアクセスして現在の運転状態を取得し、取得した運転状態とディップスイッチ群34に設定された運転状態とを比較し、両者が一致したときLED33を点灯する状態取得回路35、指令スイッチ32がONされたときディップスイッチ群34に設定されている運転状態に関する情報を室内制御用マイクロコンピュータ21に送信して室内機2を運転再開する復帰指令回路36が実装されている。
【0013】
なお、LED33、ディップスイッチ群34および状態取得回路35により状態取得手段を構成している。また、ディップスイッチ群34および復帰指令回路36により復帰指令手段を構成している。
ディップスイッチ群34は、4つのディップスイッチ37a〜37dで構成され、それぞれ冷房、ドライ、暖房、送風の運転状態に対応する。なお、ディップスイッチ群34は、2つのディップスイッチにより4つの運転状態を設定しても良い。
【0014】
図3は、この発明の実施の形態1における空気調和機を点検する手順を示すフローチャートである。
次に、この発明の実施の形態1に係る空調機の室外制御基板5に保守用基板10を接続して点検作業を実行する手順を説明する。
ステップS101で、作業員は保守用基板10を室外制御基板5に取り付ける。
ステップS102で、ディップスイッチ群34のディップスイッチ37a〜37dの1つをONして冷房、ドライ、暖房、送風の1つを仮に設定する。
ステップS103で、比較スイッチ31をONして室内機2の運転状態を取得する。
ステップS104で、ディップスイッチ群34に設定されている運転状態と取得した運転状態とを比較し、両者が一致したときステップS105に進み、両者が不一致のときステップS102に戻る。
ステップS105で、LED33を点灯してステップS106に進む。
ステップS106で、試運転スイッチ26をONして試運転を行いながら室外機1の点検箇所を点検する。
ステップS107で、室外機1の点検箇所の点検が完了したら停止スイッチ27をONして試運転を停止する。
ステップS108で、指令スイッチ32をONして室内機2に試運転前の運転状態を指令して室内機2の運転を再開する。
ステップS109で、保守用基板10を室外制御基板5から取り外して点検対象の空調機の点検を終了する。
【0015】
この発明の実施の形態1に係る空調機の室外機1は、室外制御基板5に室内通信回路19につながる雌コネクタ28が実装され、保守用基板10に実装された雄コネクタ29を雌コネクタ28に接続することにより保守用基板10を用いて室内機2の運転状態をディップスイッチ群34に残すことができるとともに点検が完了した後でディップスイッチ群34に残された室内機2の運転状態の情報を用いて運転を再開することができるので、室内機操作リモコン3を用いなくても室内機2の運転を再開でき、作業員が再度室内に戻る動作が必要なくなり点検時間が短縮することができる。
また、室内機操作リモコン3を用いて室内機2の運転を再開しなくてもよくなるので、室内機操作リモコン3を操作するときに起こりうるヒューマンエラーを防止できる。
【0016】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係る保守用基板10Bの平面図である。
この発明の実施の形態2に係る空気調和機の室外機は、この発明の実施の形態1に係る空気調和機の室外機と保守用基板10Bが異なり、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る保守用基板10Bは、図4に示すように、この発明の実施の形態1に係る保守用基板10のディップスイッチ群34、状態取得回路35および復帰指令回路36の機能をマイクロコンピュータ41を用いて実行することが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し説明は省略する。
【0017】
図5は、この発明の実施の形態2に係るマイクロコンピュータの機能ブロック図である。
マイクロコンピュータ41は、例えば4ビットのマイクロコンピュータであり、CPU、ROM、RAM、インターフェース回路を備える。
そして、マイクロコンピュータ41は、図5に示すように、運転状態を記憶する運転状態記憶手段42、比較スイッチ31がONされたとき室内制御用マイクロコンピュータ21にアクセスして現在の運転状態を取得し、取得した運転状態を運転状態記憶手段42に記憶するとともにLED33を点灯する状態取得手段43、および、指令スイッチ32がONされたとき運転状態記憶手段42に記憶されている運転状態に関する情報を室内制御用マイクロコンピュータ21に送信して室内機2を運転再開する復帰指令手段44を有する。
【0018】
図6は、この発明の実施の形態2における空調機を点検する手順を示すフローチャートである。
次に、この発明の実施の形態2に係る空調機の室外制御基板5に保守用基板10Bを接続して点検作業を実行する手順を説明する。
ステップS201で、作業員は保守用基板10Bを室外制御基板5に取り付ける。
ステップS202で、比較スイッチ31をONして室内機2の運転状態を取得してメモリに記憶する。
ステップS203で、LED33を点灯してステップS204に進む。
ステップS204で、試運転スイッチ26をONして試運転を行いながら室外機1の点検箇所を点検する。
ステップS205で、室外機1の点検箇所の点検が完了したら停止スイッチ27をONして試運転を停止する。
ステップS206で、指令スイッチ32をONして室内機2に試運転前の運転状態を指令して室内機2の運転を再開する。
ステップS207で、保守用基板10Bを室外制御基板5から取り外して点検対象の空調機の点検を終了する。
【0019】
このように規模の小さなマイクロコンピュータ41を用いて室内機2の運転状態の情報を取得できるので、安価な保守用基板10Bを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空調機の室外機を備える空気調和機の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る保守用基板の平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における空調機を点検する手順を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2に係る保守用基板の平面図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るマイクロコンピュータの機能ブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2における空調機を点検する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0021】
1 室外機、2 室内機、3 室内機操作リモコン、4 交流電源、5 室外制御基板、6 ファンモータ、7 圧縮機、8 サーミスタ、9 変圧器、10、10B 保守用基板、11 室内制御基板、12 ファンモータ、13 サーミスタ、14 変圧器、15 室外制御用マイクロコンピュータ、16 整流回路、17 表示部、18 試運転操作部、19 室内通信回路、21 室内制御用マイクロコンピュータ、22 整流回路、23 室外通信回路、26 試運転スイッチ、27 停止スイッチ、28 雌コネクタ、29 雄コネクタ、31 比較スイッチ、32 指令スイッチ、33 LED、34 ディップスイッチ群、35 状態取得回路、36 復帰指令回路、37a〜37d ディップスイッチ、41 マイクロコンピュータ、42 運転状態記憶手段、43 状態取得手段、44 復帰指令手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモコンにより自身の側から運転が制御される室内機と通信が可能であるとともに上記リモコンの制御に係わらず試運転を実行および停止する試運転操作部を具備する室外制御基板を備える空気調和機の室外機において、
上記室外制御基板に設けられたコネクタと接続することにより上記室内機と通信することができる保守用基板を備え、
上記保守用基板は、
上記リモコンからの指令により運転しているときの空気調和機の運転状態を上記室内機から取得して記憶する状態取得手段と、
上記記憶された運転状態で運転を復帰するように上記室内機に指令する復帰指令手段と、
を有することを特徴とする空気調和機の室外機。
【請求項2】
上記状態取得手段は、
点灯手段と、
空気調和機の運転し得る運転状態のいずれか1つを設定するディップスイッチ群と、
上記室内機から現在の運転状態を取得し、取得した運転状態と上記ディップスイッチ群に設定された運転状態とを比較し、両者が一致したとき上記点灯手段を点灯する状態取得回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−144990(P2009−144990A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323512(P2007−323512)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】