説明

空気調和機用清掃装置及び空気調和機

【課題】回転清掃体の製造作業時間を短くすることで製造コストを低減させると共に、軸体に螺旋状に巻き付ける起毛布の巻き付け回数を減少させることで清掃ムラを防止することができる空気調和機用清掃装置及び、これを組み込んだ空気調和機を提供する。
【解決手段】駆動手段で回転駆動されると共に、空気調和機に内蔵されたエアフィルターに付着した塵埃を掻き取る回転清掃体34において、該回転清掃体34は、棒状の軸体51と、該軸体51に螺旋状に巻き付けられると共に基布52aと該基布52aに植設されたブラシ列52bからなる帯状の起毛布52とで構成したものであって、該起毛布52は、前記基布52aの長手方向に3条以上のブラシ列52bが形成されてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンディショナーや送風機、加湿器、除湿機、換気扇、あるいは空気清浄機等の空気調和機に配置された清掃装置及び、それを用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機用清掃装置は、棒状で金属材料からなる軸体と、軸体の外周に螺旋状に巻き付けられると共に、基布と、この基布に植毛されたブラシ部からなる起毛布と、軸体の両側に設けられ軸体を回転自在に保持する軸受け体と、軸体の一端に固着され、空気調和機用清掃装置を室内機の前方より装着したときに、室内機側に設けられた駆動手段で回転駆動されるギアとから構成されており、軸体に巻きつけられた起毛布の全幅寸法は、清掃されるエアフィルターとの関係から、500mm以上としたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−57923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の特許文献1に記載された技術では、一列の起毛布が軸体に螺旋状に巻き付けられているため、起毛布の軸体の長手方向に対する巻き付け角度が鈍角となることから、巻き付け回数が多くなり、全幅寸法で500mm以上にするためには、多くの作業時間を要していた。また、巻き付け回数が多くなることで、側部のつなぎ目が多くなることから、均一につながっていない状態では清掃ムラが発生し易かった。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、回転清掃体の製造作業時間を短くすることで製造コストを低減させると共に、軸体に螺旋状に巻き付ける起毛布の巻き付け回数を減少させることで清掃ムラを防止することができる空気調和機用清掃装置及び、これを組み込んだ空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、空気調和機用清掃装置の発明であって、駆動手段で回転駆動されると共に、空気調和機に内蔵されたエアフィルターに付着した塵埃を掻き取る回転清掃体において、該回転清掃体は、棒状の軸体と、該軸体に螺旋状に巻き付けられると共に基布と該基布に植設されたブラシ列からなる帯状の起毛布とで構成したものであって、該起毛布は、前記基布の長手方向に3条以上のブラシ列が形成されてあることに特徴を有する。ブラシ列が3条以上となることから、帯状の起毛布の幅寸法が長くなり、起毛布の軸体の長手方向に対する巻き付け角度がより鋭角となることから、一回の巻き付け面積が大きくなる。したがって、従来の回転清掃体と比較して巻き付け回数を減らすことができると共に、清掃ムラを防止できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、帯状の起毛布は、基布の端部の上に重ね合わせるように、軸体に螺旋状に巻き付けられてあることに特徴を有する。したがって、基布の端部が剥がれるのを防止することができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、帯状の起毛布は、基布の巻き始め及び/又は巻き終りの端部がR面取り又はC面取りされていることに特徴を有する。したがって、基布の巻き始め及び/又は巻き終りの端部が剥がれるのを防止することができる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、帯状の起毛布の基布の端部には、ブラシ列が植設されていないことに特徴を有する。したがって、基布の重ね合わせ作業が容易となる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において、帯状の起毛布の側部の全部又は一部は、基布同士が重ね合わされるように軸体に螺旋状に巻き付けられてあることに特徴を有する。したがって、基布同士を所定の幅で重ね合わせられることによって、ブラシ列の間隔を一定にすることができ、清掃ムラを防止することができると共に、重ね合せ部分ができる為、回転清掃体の強度を向上できる。
【0011】
請求項6の発明は、熱交換器と、該熱交換器の上流側に配され流入する空気に含まれる塵埃を捕集するエアフィルターと、請求項1〜5のいずれかに記載の空気調和機用清掃装置を備えた空気調和機に特徴を有する。したがって、エアフィルターの清掃ムラを防止することができると共に空気調和機の製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、起毛布の巻き付け回数を従来のものと比較して少なくすることができることから製造作業時間を短縮でき、製造コストを低減することができる。また、請求項2及び3の発明では、基布の端部が剥がれるのを防止することができる。また、請求項4の発明では、基布の重ね合わせ作業を容易とすることができる。また、請求項5の発明では、清掃ムラを防止することができる。さらに、請求項6の発明では、エアフィルターの清掃ムラを防止することができると共に、製造コストを低減させることができる空気調和機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施例における空気調和機用清掃装置を搭載した空気調和機の室内機の斜視図、図2は、同室内機の概略断面図である。
【0014】
図1、2において、30は、本実施例における空気調和機用清掃装置で、室内に設置された空気調和機の室内機20に、前方より着脱自在に装着されると共に、室内機20に内蔵されたエアフィルター21の表面に付着した塵埃を除去するための回転清掃体34を内蔵している。
【0015】
室内機20の前面には、室内の空気を取り入れるための吸込口22aを有する前面パネル22が設けられ、その吸込口22aの下流側に、エアーフィルタ21、室内の空気を熱交換する熱交換器23、ファン24が順に配され、ファン24を運転すると、室内の空気が、吸込口22aから吸引され、熱交換器23で熱交換された後、吹出口25から室内に吹き出される。
【0016】
エアフィルター21は、図2に示すように、ベルト状に形成されると共に、図示しないモーターと減速装置からなる駆動手段26で回転駆動される駆動プーリ27と、従動プーリ28間に張架されている。
【0017】
図3(a)は、回転清掃体34及び室内機20の一部の斜視図、(b)は、同回転清掃体34の製法を示す図である。
【0018】
図3において、回転清掃体34は、棒状で金属材料からなる軸体51と、軸体51の外周に螺旋状に巻き付けられると共に、基布52aと、基布52aに植毛されたブラシ列52bからなる起毛布52と、軸体51の両側に設けられ軸体51を回転自在に保持すると共に、カバー上31に装着される軸受け体53と、軸体51の一端に固着され、空気調和機用清掃装置30を室内機20の前方より装着したときに、室内機20側に設けられた駆動手段A54で回転駆動されるギアーA55と噛み合うギアーB56とから構成されている。回転清掃体34が、集塵ボックス33に装着された状態では、塵埃除去手段37の先端が回転清掃体34のブラシ列52bに食い込んでいる。
【0019】
また、本実施例では、軸体51に巻きつけられた起毛布52の全幅寸法(有効清掃幅寸法L)を500mm以上としている。
【0020】
なお、本実施例では、上述のように、軸体51を1本の棒状部材で形成しているが、複数本に分割して、それらを螺子嵌合や、圧入等で繋ぐようにしても良い。そのようにすれば、軸体51の運搬が容易で、しかも梱包形態も簡素化される。
【0021】
また、軸体51を、パイプのような中空の部材で形成すれば、軸体51の質量が低減し、回転清掃体34、ひいては、空気調和機用清掃装置30の軽量化を図ることが出来る。
【0022】
以上のように構成された本実施例における空気調和機用清掃装置30及びそれを搭載した空気調和機の室内機20の動作、作用は以下の通りである。
【0023】
図1に示すように、予め、空気調和機用清掃装置30を、空気調和機の室内機20の所定に箇所に装着しておく。この状態では、図2に示すように、空気調和機用清掃装置30に内蔵された回転清掃体34のブラシ列52bの先端がエアフィルター21の表面に当接している。
【0024】
そして、室内機20を例えば、冷房運転すると、ファン24の運転により室内の空気が吸込口22aから流入し、エアフィルター21を通って熱交換器23に至り、そこで冷却され、冷たい空気が吹出口25から室内に吹き出される。吸込口22aから吸引される室内の空気に含まれた塵埃は、エアフィルター21で捕獲され、そのエアフィルター21の表面に次第に堆積していく。エアフィルター21の表面に塵埃が堆積してくると、空気の通気圧損が増加し、熱交換器23での熱交換効率が低下してくるので、定期的に或いは、必要に応じて、エアフィルター21に堆積した塵埃の除去運転が必要となる。
【0025】
そこで、本実施例では、塵埃の除去運転を開始すると、図2に示すように、駆動手段26により駆動プーリ27が反時計方向に回転し、エアフィルター21が矢印A方向に移動を開始する。同時に、空気調和機用清掃装置30の回転清掃体34が、同じく反時計方向(矢印B)に回転させることにより、エアフィルター21の表面に付着していた塵埃35が回転清掃体34のブラシ列52bにより掻き取られ、集塵ボックス33内にこぼれ落ちる。同時に、ブラシ列52b上に取り残された塵埃は、櫛状の塵埃除去手段37により、除去される。また、除去された塵埃は、集塵ボックス33内に集められ、集塵ボックス33を室内機20から取り外すことにより、塵埃を外部へ排出することができる。
【0026】
この塵埃除去運転は、ベルト状のエアフィルター21が半周すなわち、エアフィルター21の前側半分が、後ろ側に移動するまで行なわれる。通常、エアフィルター21の後ろ側半分には、塵埃がほとんど堆積しないので、塵埃除去運転を終えた時点で、エアフィルター21のきれいな後ろ側半分が、前側に移動している。
【0027】
図4は、本発明に係る回転清掃体に使用する起毛布を示す斜視図である。図4(a)に示すように、起毛布10は、基布1とこの基布1に植設されたブラシ列2a、2b、2cからなる帯状のものであって、基布1の長手方向に3条のブラシ列2a、2b、2cが形成されてある。ここで、基布1とブラシ列2a、2b、2cとの間には、基布1のみの中間部3があり、端部のブラシ列2a、2cの外側にも基布1のみの側端部1a、1bがある形態である。一方、図4(b)の起毛布10aは、一方の側部のブラシ列2cの外側に基布1のみの側端部1bがない形態である。尚、本発明に係る帯状の起毛布10、10aのブラシ列2a、2b、2cは3条以上であればよいが、その幅は、軸体の直径を7mmとした場合には、18mm〜12mmの範囲に設定するのが好ましく、軸体の長手方向に対する巻き付け角度は、30度〜60度の範囲に設定すれば、一度に巻き付ける面積が多くなり、製造作業効率を向上させることができる。また、起毛布10、10aは、ブラシ列が多数条のものを予め作成しておいて、必要なブラシ列の条数分だけ切り取って、帯状の起毛布を製作する場合と、3条以上の所定の条数のブラシ列からなる帯状の長尺な起毛布を予め作成しておいて、長手方向に必要な長さだけ切り取って、帯状の起毛布を製作する場合とがあり、いずれの方法も本発明に含まれるものである。
【0028】
図5は、回転清掃体5の実施例1を示しており、回転清掃体5の一部を拡大した正面図である。この図に示すように、軸体4に巻き付ける時に、帯状の起毛布10の端部の一部を重ね合せて、端部重ね合せ部6を形成している。このような形態とすることによって、清掃時に起毛布10が端部から剥がれてくるのを防止することができる。尚、図5に示す起毛布10は、図4(a)で説明した起毛布10の端部を斜めにカットしたものを使用している。
【0029】
図6は、回転清掃体5aの実施例2を示しており、回転清掃体5aの一部を拡大した正面図である。図6(a)に示す形態では、軸体4に、図6(b)に示す帯状の起毛布10bを巻きつけている。この帯状の起毛布10bの端部は斜めにカットされており、さらに一方の端部の角部がR状にカットされたカット部6aが形成されている。この形態の起毛布10bも図5で示した起毛布と同様に、清掃時に起毛布が端部から剥がれてくるのを防止することができる。尚、図6(c)に示す起毛布10cのように、一方の端部の角部をC状にカットしたカット部6bを形成した形態も採用することができる。
【0030】
図7は、回転清掃体5bの実施例3を示しており、回転清掃体5bの一部を拡大した正面図である。この図に示す形態では、図4(a)で示した起毛布10の端部を斜めにカットしたものを使用し、起毛布10の側端部1a、1bを重ね合せて、側部重ね合せ部7を形成している。このように、側部重ね合せ部7を形成した形態とすることによって、基布の重ね合わせ作業が容易となると共に、ブラシ列2a、2b、2cの間隔を一定にすることができ、清掃ムラを防止することができると共に、重ね合せ部7ができる為、回転清掃体5bの強度を向上できる。
【0031】
図8は、回転清掃体5cの実施例4を示しており、回転清掃体5cの一部を拡大した正面図である。この図で示す形態では、帯状の起毛布の端部が図6(b)や図6(c)に示した形態と異なり、斜めにカットされていない。このような帯状の起毛布を軸体4に巻き付けると、軸体4の端部に起毛布が巻き付けられていない部分が存在することとなる。この場合は、端部は直接エアフィルターに接触しないので、剥がれ防止を考慮する必要がない。また、上記実施例の中で一番簡易に製造することができる形態である。
【0032】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。例えば、図6(b)や(c)で示したR状やC状の端部のカット部6a、6bの形態の他にも端部の剥がれを防止することができる形態であれば、本発明に含まれるものである。また、図8に示すように、エアフィルターの清掃に関係しない部分であれば、端部の処理は様々な形態を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のエアコンディショナーや送風機、加湿器、除湿機、換気扇、あるいは空気清浄機等の空気調和機に配置された清掃装置及び、それを用いた空気調和機に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る空気調和機の室内機を示す斜視図。
【図2】同断面図。
【図3】回転清掃体及び室内機の一部の斜視図と、同回転清掃体の製法を示す図。
【図4】本発明に係る回転清掃体に使用する起毛布を示す斜視図。
【図5】回転清掃体の実施例1を示す図。
【図6】回転清掃体の実施例2を示す図。
【図7】回転清掃体の実施例3を示す図。
【図8】回転清掃体の実施例4を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1、52a 基布
1a、1b 側端部
2a、2b、2c、52b ブラシ列
3 中間部
4、51 軸体
5、5a、5b、5c、34 回転清掃体
6 端部重ね合せ部
6a、6b カット部
7 側部重ね合せ部
10、10a、10b、10c、52 起毛布
20 室内機
21 エアフィルター
22 前面パネル
22a 吸込口
23 熱交換器
24 ファン
25 吹出口
26 駆動手段
27 駆動プーリ
28 従動プーリ
30 空気調和機用清掃装置
31 カバー上
33 集塵ボックス
37 塵埃除去手段
53 軸受け体
54 駆動手段A
55 ギアーA
56 ギアーB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段で回転駆動されると共に、空気調和機に内蔵されたエアフィルターに付着した塵埃を掻き取る回転清掃体において、該回転清掃体は、棒状の軸体と、該軸体に螺旋状に巻き付けられると共に基布と該基布に植設されたブラシ列からなる帯状の起毛布とで構成したものであって、該起毛布は、前記基布の長手方向に3条以上のブラシ列が形成されてあることを特徴とする空気調和機用清掃装置。
【請求項2】
帯状の起毛布は、基布の端部の上に重ね合わせるように、軸体に螺旋状に巻き付けられてあることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機用清掃装置。
【請求項3】
帯状の起毛布は、基布の巻き始め及び/又は巻き終りの端部がR面取り又はC面取りされていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機用清掃装置。
【請求項4】
帯状の起毛布の基布の端部には、ブラシ列が植設されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和機用清掃装置。
【請求項5】
帯状の起毛布の側部の全部又は一部は、基布同士が重ね合わされるように軸体に螺旋状に巻き付けられてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気調和機用清掃装置。
【請求項6】
熱交換器と、該熱交換器の上流側に配され流入する空気に含まれる塵埃を捕集するエアフィルターと、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気調和機用清掃装置を備えた空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−281621(P2009−281621A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132583(P2008−132583)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】