説明

空気調和機

【課題】2つの水平フラップの中央支持部を同一の支持アームで支持する空気調和機において、一方の水平フラップの取り付け時に支持アームが変形することにより他方の水平フラップが脱落するのを簡単な構成で防止でき、作業性を向上できる空気調和機を提供する。
【解決手段】ケーシング10の吹出口20に回動自在に支持された第1水平フラップ21と、ケーシング10の吹出口20かつ第1水平フラップ21の下側に回動自在に支持された第2水平フラップ22と、ケーシング10の吹出口20の略中央に設けられた1つの支持アーム24とを備える。上記第1水平フラップ21の略中央に設けられた中央軸部を支持する支点と、第2水平フラップ22の略中央に設けられた中央軸部を支持する支点とを、吹出口20の1つの支持アーム24に吹出口20の略縦方向に沿って間隔をあけて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機としては、吹出口に2つの水平フラップを配置したものがある(例えば、特開2008−57883号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
このような2つの水平フラップを備えた空気調和機では、各水平フラップの翼長が十分でなく、吹き出し空気を遠くに送り出すことができないという問題があった。
【0004】
そこで、翼長の長い水平フラップを用いると共に、その水平フラップの下側翼面の結露防止のために、翼長の長い水平フラップの下側に翼長の短い水平フラップを設けた空気調和機が考えられる。なお、この空気調和機は、この発明を理解しやすくするために説明するものであって、公知技術ではなく、従来技術ではない。
【0005】
しかしながら、このような翼長の異なる2つの水平フラップを用いた空気調和機では、翼長の長い水平フラップの吹出口への取り付けには、フラップ自体を撓ませて取り付けることができず、水平フラップの中央支持部を支持する支持アームを変形させる必要がある。このとき、同一の支持アームに中央支持部が支持された翼長の短い水平フラップが支持アームの変形により脱落してしまい、メンテナンス時の作業性が低下するという問題が発生する。
【特許文献1】特開2008−57883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、2つの水平フラップの中央支持部を同一の支持アームで支持する空気調和機において、一方の水平フラップの取り付け時に支持アームが変形することにより他方の水平フラップが脱落するのを簡単な構成で防止でき、作業性を向上できる空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の空気調和機は、
吸込口と吹出口が設けられたケーシングと、
上記ケーシング内に配置された熱交換器と、
上記ケーシング内の上記熱交換器の風下側に配置され、上記吸込口から上記熱交換器を介して吸い込んだ空気を上記吹出口から吹き出す送風ファンと、
上記ケーシングの上記吹出口に回動自在に支持された第1水平フラップと、
上記ケーシングの上記吹出口かつ上記第1水平フラップの近傍に回動自在に支持された第2水平フラップと、
上記ケーシングの上記吹出口の略中央に設けられた1つの支持アームと
を備え、
上記第1水平フラップの略中央に設けられた中央軸部または中央軸受部を支持する支点と、上記第2水平フラップの略中央に設けられた中央軸部または中央軸受部を支持する支点とが、上記吹出口の1つの支持アームに上記吹出口の略縦方向に沿って間隔をあけて設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、吹出口の縦方向とは、例えば横長の長方形状の吹出口において、吹出口の開口の上下の辺間の垂直平面に沿った方向であり、また、吹出口の横方向とは、吹出口の開口の左右の辺間の水平面に沿った方向である。
【0009】
上記構成の空気調和機によれば、上記第1水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)を支持アームから外すときに、第1,第2水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)の支点間を中心に吹出口の横方向に沿って支持アームがねじられるので、第2水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)の支点は、第2水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)が外れない方向に変形する。一方、第2水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)を支持アームから外すときに、第1,第2水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)の支点間を中心に吹出口の横方向に沿って支持アームがねじられるので、第1水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)の支点は、第1水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)が外れない方向に変形する。したがって、2つの水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)を支持する同一の支持アームが、一方の水平フラップの取り付け時に変形して他方の水平フラップが脱落するのを簡単な構成で防止でき、作業性を向上できる。
【0010】
また、一実施形態の空気調和機では、上記支持アームに、上記吹出口の横方向に上記支持アームをねじるための取っ手部を設けた。
【0011】
上記実施形態によれば、支持アームに設けた取っ手部を操作することにより、支持アームを吹出口の横方向に容易にねじることができる。
【0012】
また、一実施形態の空気調和機では、上記第1水平フラップの両端と中央に、上記第2水平フラップに上記第1水平フラップが干渉しないように第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部を設けた。
【0013】
上記実施形態によれば、第1水平フラップの両端と中央に第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部を設けて、第2水平フラップに第1水平フラップが干渉しないようにすることによって、第1水平フラップを吹出口に取り付けた状態で第2水平フラップを取り付けたり取り外したりすることが容易にでき、作業性がより向上する。
【0014】
また、一実施形態の空気調和機では、上記第1水平フラップに上記支持アームが干渉しないように、上記第1水平フラップの上記中央軸部近傍または上記中央軸受部近傍に支持アーム干渉防止用切り欠き部を設けた。
【0015】
上記実施形態によれば、第1水平フラップの中央軸部(または中央軸受部)近傍に支持アーム干渉防止用切り欠き部を設けて、第1水平フラップに支持アームが干渉しないようにすることによって、第1水平フラップの回動範囲を大きくとることができる。
【0016】
また、一実施形態の空気調和機では、
上記第1水平フラップは、上記吹出口をほぼ覆うことが可能な翼長を有し、
上記第2水平フラップは、上記第1水平フラップよりも翼長が短くかつ少なくとも一部が上記第1水平フラップに重なる。
ここで、「翼長」とは、風の流れ方向の翼の距離である。
【0017】
上記実施形態によれば、吹出口をほぼ覆うことが可能な翼長を有する第1水平フラップと、第1水平フラップよりも翼長が短くかつ少なくとも一部が第1水平フラップに重なる第2水平フラップを用いた構成では、特に、第1水平フラップを吹出口に取り付けたり取り外したりするときに、第1水平フラップを撓ませることが容易でないので、支持アームを変形させる必要がある。このような構成の空気調和機では、2つの水平フラップの中央支持部を支持する同一の支持アームが、一方の水平フラップの取り付け時に変形して他方の水平フラップが脱落するのを防止する効果が高い。
【発明の効果】
【0018】
以上より明らかなように、この発明の空気調和機によれば、2つの水平フラップの中央支持部を同一の支持アームで支持する構成の空気調和機において、一方の水平フラップの取り付け時に支持アームが変形することにより他方の水平フラップが脱落するのを簡単な構成で防止でき、作業性を向上できる空気調和機を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の空気調和機を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0020】
図1はこの発明の実施の一形態の空気調和機の斜め下方から見た斜視図を示しており、図2は図1よりもさらに斜め下方から見た上記空気調和機の斜視図を示している。この空気調和機は、室内の壁面に取り付けられる壁掛け型であるが、他の形態の空気調和機でもよい。
【0021】
上記空気調和機は、図1,図2に示すように、底フレーム11の前面側に取り外し自在に取り付けられた前面グリル12と、上記前面グリル12の前面側に取り外し自在に取り付けられた前面パネル13とを備えている。上記底フレーム11と前面グリル12と前面パネル13でケーシング10を構成している。
【0022】
上記ケーシング10の下側前方に設けられた横長の長方形状の吹出口20に、吹出口20をほぼ覆うことが可能な翼長を有する第1水平フラップ21を回動自在に支持している。また、上記ケーシング10の吹出口20かつ第1水平フラップ21の下側に、第1水平フラップ21よりも翼長が短くかつ少なくとも一部が第1水平フラップ21に重なる第2水平フラップ22を回動自在に支持している。さらに、送風ファン32(図4に示す)から吹出口20までの吹出通路33の上側に、気流安定化部材の一例として第3水平フラップ23を回動自在に支持している。ここで、「翼長」とは、風の流れ方向の翼の距離である。
【0023】
図1,図2では、上記第1〜第3水平フラップ21〜23をすべて下方に回動させて、吹き出し気流を下方に向けた暖房運転時の状態を示している。
【0024】
また、図3は上記空気調和機の正面図を示し、図4は図3のIV−IV線から見た断面図を示している。図3では、第1〜第3水平フラップ21〜23のうちの第1水平フラップ21,第3水平フラップ23が見え、第2水平フラップ22は第1水平フラップ21に隠れて見えない。
【0025】
図4に示すように、ケーシング10内かつ底フレーム11の前面側に、断面くの字形状の室内熱交換器31を配置すると共に、上記室内熱交換器31の下側に送風ファン32を配置している。上記送風ファン32は、回転軸が水平方向になるように配置されたクロスフローファンである。上記送風ファン32から吹出口20までの間に吹出通路33が形成されている。
【0026】
また、上記ケーシング10の吹出口20の略中央に設けられた1つの支持アーム24により、第1水平フラップ21と第2水平フラップ22とを回転自在に支持している。上記吹出口20の下縁と第2水平フラップ22との間に風通路34を設けている。また、吹出口20かつ第1水平フラップ21の上側に第3水平フラップ23を回転自在に支持している。上記第1水平フラップ21と第2水平フラップ22と第3水平フラップ23を上下方向に回動することにより吹き出し空気の風向を上下に制御する。
【0027】
さらに、上記ケーシング10の吹出口20に、複数の垂直フラップ25を左右方向に所定の間隔をあけて配列している。上記複数の垂直フラップ25が駆動アーム(図示せず)を介して連結され、駆動アームのスライド移動に応じて複数の垂直フラップ25が左右方向に回動することにより、吹き出し空気の風向を左右に制御する。
【0028】
上記空気調和機において、送風ファン32をファンモータ(図示せず)により駆動すると、前面グリル12の上面側の吸込口12aと前面パネル13の上端側の吸込口13aを介して室内の空気を吸い込む。そうして、吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器31を通過して熱交換された後、送風ファン32により吹出通路33を経て吹出口20から室内に吹き出す。
【0029】
図5は上記空気調和機の第1〜第3水平フラップ21〜23の分解斜視図を示している。
【0030】
図6は上記空気調和機の第1水平フラップ21の正面図を示している。図6に示すように、第1水平フラップ21は、正面視にて水平方向が長い長方形状をしている。図6において、第1水平フラップ21の下側の辺が風上側の翼端であり、上側の辺が風下側の翼端である。上記第1水平フラップ21の回動中心は、風上側が翼端(図6の下側)よりも上側かつその翼端と略平行に設定されている。上記第1水平フラップ21は、その回動中心に沿って、略中央に設けられた中央軸部41と、左側に設けられた左軸部42と、右側に設けられた右側軸受部43とを備えている。また、上記第1水平フラップ21の中央軸部41よりも左側に、風上側が開口する略矩形の支持アーム干渉防止用切り欠き部21aが設けられている。上記第1水平フラップ21の中央軸部41よりも右側に、支持アーム干渉防止用切り欠き部21aよりも小さくかつ支持アーム干渉防止用切り欠き部21aと連続する略矩形の第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部21bが設けられている。上記第1水平フラップ21の左軸部42近傍に略矩形の第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部21cが設けられ、第1水平フラップ21の右側軸受部43近傍に略矩形の第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部21dが設けられている。
【0031】
また、図7は図6のVII−VII線から見た第1水平フラップ21の断面図である。この第1水平フラップ21は、図7に示すように、第1水平フラップ21の中央軸部41,左軸部42,右側軸受部43(図7では41のみを示す)を含む風上側の翼部分21Aと、上記風上側の翼部分21Aからやや上方に屈曲した風下側の翼部分21Bとを有している。上記風下側の翼部分21Bの下側翼面に、第1水平フラップ21の長手方向に沿って凹凸の一例としての断面V字形状の複数の溝44を形成している。上記複数の溝44は、翼部分21Bの風上側から風下側に向かって断面V字形状の深さが浅くなっている。一方、上記風下側の翼部分21Bの上側翼面および風上側の翼部分21Aの上側翼面に、第1水平フラップ21の長手方向に沿って凹凸の一例としての断面矩形状の複数の溝45を形成している。また、上記第1水平フラップ21の翼部分21Aの上側に立設されたアーム40に中央軸部41を設けている。
【0032】
上記第1水平フラップ21は、吹出口20に取り付けるとき、まず、第1水平フラップ21を撓ませながら、右側軸受部43に吹出口20の右側面に設けられた駆動軸(図示せず)を挿入し、さらに、左軸部42を吹出口20の左側壁に設けられた軸受部(図示せず)に挿入する。そして、中央軸部41を支持アーム24の軸受用穴71(図17に示す)に挿入して、第1水平フラップ21の取り付けが完了する。
【0033】
上記第1水平フラップ21は、吹出口20の右側面に設けられた駆動軸(図示せず)が回転することにより、上下方向に回動する。
【0034】
図8は上記空気調和機の第2水平フラップ22の正面図を示している。
【0035】
図8に示すように、第2水平フラップ22は、正面視にて水平方向が長い長方形状をしている。図8において、第2水平フラップ22の下側の辺が風上側の翼端であり、上側の辺が風下側の翼端である。上記第2水平フラップ22の回動中心は、風上側が翼端(図8の下側)よりも上側かつその翼端に沿った直線と略平行に設定されている。上記第2水平フラップ22の回動中心は、風上側が翼端(図8の下側)近傍かつその翼端に沿った直線と略平行に設定されている。上記第2水平フラップ22は、その回動中心に沿って、略中央に設けられた中央軸部51と、左側に設けられた左軸部52と、右側に設けられた右側軸受部53とを備えている。
【0036】
また、図9は図8のIX−IX線から見た第2水平フラップ22の断面図である。この第2水平フラップ22は、図9に示すように、下側翼面に第2水平フラップ22の長手方向に沿って凹凸の一例としての断面V字形状の複数の溝54を形成している。一方、上記第2水平フラップ22の上側翼面に、第2水平フラップ22の長手方向に沿って凹凸の一例としての断面矩形状の複数の溝55を形成している。また、上記第2水平フラップ22の上側に立設されたアーム50に中央軸部51を設けている。
【0037】
上記第2水平フラップ22は、吹出口20に取り付けるとき、まず、右側軸受部53に吹出口20の右側面に設けられた駆動軸(図示せず)を挿入して、左軸部52を吹出口20の左側壁に設けられた軸受部(図示せず)に挿入し、そして、第2水平フラップ22を撓ませながら、中央軸部51を支持アーム24の軸受用穴72(図17に示す)に挿入して、第2水平フラップ22の取り付けが完了する。
【0038】
上記第2水平フラップ22は、吹出口20の右側面に設けられた駆動軸(図示せず)が回転することにより、上下方向に回動する。
【0039】
また、図5に示すように、第3水平フラップ23は、その回動中心に沿って、略中央に設けられた中央軸部61と、左側に設けられた左軸部62と、右側に設けられた右側軸受部63とを備えている。
【0040】
上記第3水平フラップ23は、吹出口20に取り付けるとき、まず、右側軸受部63に吹出口20の右側面に設けられた駆動軸(図示せず)を挿入して、左軸部62を吹出口20の左側壁に設けられた軸受部(図示せず)に挿入し、そして、第3水平フラップ23を撓ませながら、中央軸部61を吹出口20の上側壁に設けられた軸受部(図示せず)に挿入して、第3水平フラップ23の取り付けが完了する。
【0041】
上記第3水平フラップ23は、吹出口20の右側面に設けられた駆動軸(図示せず)が回転することにより、上下方向に回動する。
【0042】
図10は上記空気調和機の運転停止状態(吹出口20を閉じた状態)の正面図を示しており、図11は図10のXI−XI線から見た断面図を示している。
【0043】
図10,図11に示すように、第1水平フラップ21は、吹出口20をほぼ覆うことが可能な翼長を有し、第2水平フラップ22は、第1水平フラップ21よりも翼長が短い。そして、送風ファン32を停止して第1水平フラップ21と第2水平フラップ22で吹出口20を塞いだ状態で第2水平フラップ22は、風上側の一部を除いて第1水平フラップ21に重なっている。この第2水平フラップ22は、第1水平フラップ21の風上側の翼部分21A(図7に示す)と重なり、第2水平フラップ22の下側翼面と風下側の翼部分21B(図7に示す)の下側翼面が段差なく連なるようになっている。
【0044】
また、図10,図11において、第3水平フラップ23は、吹出通路33の上側の壁面に上側翼面がほぼ接する状態となっている。
【0045】
図12は上記空気調和機の冷房運転時の正面図を示しており、図13は図12のXIII−XIII線から見た断面図を示している。
【0046】
図12,図13に示すように、冷房運転時は、第1水平フラップ21と第2水平フラップ22を略水平になるように回動させて、第1水平フラップ21の翼面に対して第2水平フラップ22の翼面が略平行になるようにしている。このとき、第2水平フラップ22の風上側の一部を除いて第1水平フラップ21に間隔をあけて重なるようにしている。上記空気調和機では、第1水平フラップ21と第2水平フラップ22により、送風ファン32からの冷風を吹出通路33を介して吹出口20から略水平方向に吹き出す。
【0047】
また、図12,図13において、第3水平フラップ23は、吹出通路33の上側の壁面に上側翼面がほぼ接する状態となっている。
【0048】
このとき、吹出通路33の上側の壁面にある突起35を、第3水平フラップ23の突起35に対応する位置に設けられた凹部23aにより覆って、突起35により吹出通路33内の気流が乱れるのを抑制している。
【0049】
一方、図14は上記空気調和機の暖房運転時の第3水平フラップ23を下げた状態の正面図を示している。
【0050】
図14に示すように、暖房運転時は、第1水平フラップ21と第2水平フラップ22を斜め下降に傾くように回動させて、第1水平フラップ21の翼面に対して第2水平フラップ22の翼面が略平行になるようにしている。このとき、第2水平フラップ22の風上側の一部を除いて第1水平フラップ21に間隔をあけて重なっている。
【0051】
そして、第3水平フラップ23は、斜め下降に傾くように回動させて、吹出通路33の上側を流れる空気流を第3水平フラップ23により下方に向けるので、吹出口20からの暖かい空気が上方に流れることなく、足元に効果的に温風を吹き出すことができる。このとき、突起35は、第3水平フラップ23の凹部23aにより遮蔽されて気流に影響しない。
【0052】
図15は上記空気調和機の暖房運転時の第3水平フラップ23を上げた状態の正面図を示し、図14の暖房運転時の状態と比較するための図である。図15において、図14と同一構成部には同一参照番号を付している。
【0053】
図15に示す空気調和機では、図14と異なり、暖房運転時に、第3水平フラップ23のみが、吹出通路33の上側の壁面に上側翼面がほぼ接する状態となっている。このような空気調和機では、吹出通路33の上側を流れる空気流は、吹出口20から上方に流れて、足元に集中的に暖房空気を吹き出すことができない。
【0054】
次に、図16は上記空気調和機の第1水平フラップ21を取り外した状態を斜め下方から見た斜視図を示しており、図17は図16に示す上記空気調和機の要部の拡大図を示している。
【0055】
図16,図17に示すように、吹出口20の略中央に設けられた1つの支持アーム24に、吹出口20の略縦方向に間隔をあけて軸受用穴71,72を設けている。上記支持アーム24の下側の軸受用穴72に、第2水平フラップ22の略中央に設けられた中央軸部51が挿入されている。なお、支持アーム24の上側の軸受用穴71には、図示しないが第1水平フラップ21の中央軸部41(図5,図6に示す)が挿入される。
【0056】
図18は上記空気調和機の第1〜第3水平フラップ21〜23を取り外した状態の断面図を示しており、図18に示すように、支持アーム24は、上端が吹出通路33の上側に固定され、下端が吹出通路33の下側に固定された基部24aと、上記基部24aの風下側から外方に向かって延び、軸受用穴71,72が設けられた延伸部24bと、上記延伸部24bの上側に上方に延びる取っ手部24cとを有している。
【0057】
図17に示すように、上記取っ手部24cを人が指先などで例えば左方向(矢印R1)に押さえることにより、図17に示す軸Oを中心に延伸部24bが半時計方向(矢印R2)にねじれる。ここで、軸Oは、軸受用穴71,72間の中間点を通り、基部24aと延伸部24bの連結部分の中心を通る直線である。
【0058】
このように、上記支持アーム24をねじることにより、第1水平フラップ21の中央軸部41は容易に支持アーム24の軸受用穴71から外れ、第2水平フラップ22の中央軸部51は容易に支持アーム24の軸受用穴72から外れない。
【0059】
上記構成の空気調和機によれば、第1水平フラップ21の翼面に対して第2水平フラップ22の翼面が略平行な状態において、第2水平フラップ22の少なくとも一部が第1水平フラップ21に間隔をあけて重なるようにすることによって、第2水平フラップ22により第1水平フラップ21の下側翼面に沿って流れるように空気が案内されるので、冷房運転時に第1水平フラップ21の結露を防止できる。したがって、断熱材や中空構造を用いることなしに、簡単な構成でかつ低コストで水平フラップの露付き防止を実現することができる。
【0060】
また、冷房運転時、第2水平フラップ22により第1水平フラップ21の下側翼面に沿って吹き出し空気を案内することによって、冷房運転時の第1水平フラップ21の下側翼面の結露を確実に防ぐことができる。
【0061】
また、上記吹出口20の下縁と第2水平フラップ22との間に風通路34を設けることによって、冷房運転時に第2水平フラップ22の下側翼面に風通路34から吹き出した冷風が流れるので、第2水平フラップ22の下側翼面の結露を防止することができる。
【0062】
また、上記吹出口20の略中央に設けられた1つの支持アーム24に、第1水平フラップ21,第2水平フラップ22の中央軸部41,51を支持する支点が、吹出口20の略縦方向に間隔をあけて設けられた構成において、第1水平フラップ21の中央軸部41近傍に支持アーム干渉防止用切り欠き部21aを設けて、第1水平フラップ21に支持アーム24が干渉しないようにすることによって、第1水平フラップ21の回動範囲を大きくすることができる。
【0063】
なお、上記実施の形態では、第1水平フラップ21,第2水平フラップ22の略中央に中央軸部41,51を設けたが、中央軸部の代わりに中央軸受部であってもよい。この場合、支持アーム側は、第1,第2水平フラップの中央軸受部に挿入される軸部を有する。
【0064】
また、送風ファン32を停止した状態で第1水平フラップ21と第2水平フラップ22により吹出口20を塞ぐとき、第1水平フラップ21の支持アーム干渉防止用切り欠き部21aを第2水平フラップ22により覆うことによって、運転停止時の美観を損なうことがなく、支持アーム干渉防止用切り欠き部21aからの埃などの侵入を防ぐことができる。
【0065】
また、ケーシング10の吹出口20かつ第1水平フラップ21の上側に回動自在に支持された第3水平フラップ23を備えることによって、暖房運転時に送風ファン32から吹出口20までの吹出通路33の上側を流れる空気流を下方に向けることができ、吹出口20からの暖かい空気が上方に流れることがなく、足元に効果的に温風を吹き出すことができる。なお、この実施の形態では、第1〜第3水平フラップ21〜23を備えた空気調和機について説明したが、空気調和機の吹出口等の構造によっては第3水平フラップはなくともよい。
【0066】
また、冷房運転時、第2水平フラップ22により第1水平フラップ21の下側翼面に沿って吹き出し空気を案内して、第1水平フラップ21の下側翼面の先端まで吹き出し空気が沿うように流れることによって、冷房運転時に第1水平フラップ21の下側翼面の結露を防止できる。
【0067】
また、第1水平フラップ21の下側翼面に長手方向に沿って断面V字形状の複数の溝44を設けて凹凸を形成することによって、第1水平フラップ21の下側翼面に例え結露が生じても、凹凸により結露水を保持することができ、水飛びを防止できる。
【0068】
また、第2水平フラップ22の下側翼面に長手方向に沿って断面V字形状の複数の溝54を設けて凹凸を形成することによって、第2水平フラップ22の下側翼面に例え結露が生じても、凹凸により結露水を保持することができ、水飛びを防止できる。
【0069】
また、第1水平フラップ21の下側翼面に設けた断面V字形状の複数の溝54を、下側翼面の風下側ほど凹凸が小さくすることによって、風速が遅くなる風下側の凹んだ表面にも冷気が確実に届くようにすることができる。これに対して、水平フラップの下側翼面の風下側ほど風速が遅くなって、凹凸が大きいと凹みに冷気が届きにくい。なお、凹凸を小さくするのは、第1水平フラップに限らず、第2水平フラップの下側翼面に設けた凹凸の凹みを、下側翼面の風下側ほど小さくしてもよく、第1,第2水平フラップの両方の下側翼面に設けた凹凸の凹みを、下側翼面の風下側ほど小さくしてもよい。
【0070】
また、上記構成の空気調和機によれば、第1水平フラップ21の中央軸部41を支持アーム24から外すときに、第1,第2水平フラップ21,22の中央軸部41,51の支点間を中心に吹出口20の横方向に沿って支持アーム24がねじられるので、第2水平フラップ22の中央軸部51の支点は、第2水平フラップ22の中央軸部51が外れない方向に変形する。一方、第2水平フラップ22の中央軸部51を支持アーム24から外すときに、第1,第2水平フラップ21,22の中央軸部41,51の支点間を中心に吹出口20の横方向に沿って支持アーム24がねじられるので、第1水平フラップ21の中央軸部41の支点は、第1水平フラップ21の中央軸部41が外れない方向に変形する。
【0071】
したがって、2つの水平フラップの中央支持部を同一の支持アーム24で支持する空気調和機において、一方の水平フラップの取り付け時に支持アーム24が変形することにより他方の水平フラップが脱落するのを簡単な構成で防止でき、作業性を向上できる。
【0072】
また、支持アーム24に設けた取っ手部24cを操作することにより、支持アーム24を吹出口20の横方向に容易にねじることができる。
【0073】
また、上記第1水平フラップ21の両端と中央に第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部21b,21c,21dを設けて、第2水平フラップ22に第1水平フラップ21が干渉しないようにすることによって、第1水平フラップ21を吹出口20に取り付けた状態で第2水平フラップ22を取り付けたり取り外したりすることが容易にでき、作業性がより向上する。
【0074】
また、上記第1水平フラップ21の中央軸部41近傍に支持アーム干渉防止用切り欠き部21aを設けて、第1水平フラップ21に支持アーム24が干渉しないようにすることによって、第1水平フラップ21の回動範囲を大きくすることができる。
【0075】
また、上記吹出口20をほぼ覆うことが可能な翼長を有する第1水平フラップ21と、第1水平フラップ21よりも翼長が短くかつ少なくとも一部が第1水平フラップ21に重なる第2水平フラップ22を用いた構成では、特に、第1水平フラップ21を吹出口20に取り付けたり取り外したりするときに、第1水平フラップ21を撓ませることが容易でないので、支持アーム24を変形させる必要がある。このような構成の空気調和機では、2つの水平フラップの中央軸部を支持する同一の支持アーム24が、一方の水平フラップの取り付け時に変形して他方の水平フラップが脱落するのを防止する効果が高い。
【0076】
また、上記構成の空気調和機によれば、送風ファン32から吹出口20までの間に設けられた吹出通路33の上側の壁面にある突起35を、吹出通路33の上側に回動自在に支持された気流安定化部材としての第3水平フラップ23の突起35に対応する位置の凹部23aにより覆うことによって、吹出通路33の上側の突起35が吹出通路33内の気流を乱すことがなくなる。上記吹出通路33の上側の突起35は、垂直フラップを自動で回動させる空気調和機と、垂直フラップを手動で回動させる空気調和機において、底フレームを兼用するため、吹出通路の上側に垂直フラップを手動で回動させるための構造の一部として製造上が形成されているものである。
【0077】
したがって、このような吹出通路33の上側に突起35があっても、吹出通路33内の気流が乱れるのを抑制して、安定した吹き出し空気流が得られる。
【0078】
また、気流安定化部材として第3水平フラップ23を用いることによって、上下方向の気流制御ができる。
【0079】
また、流線形状の凹部23aにより第3水平フラップ23の吹出通路33側に形成される凸部分が流線形状となって、第3水平フラップ23の吹出通路33側の気流の乱れがより少なくなる。
【0080】
また、第3水平フラップ23の風上側の端部が吹出通路33の上側に回動自在に支持されることによって、暖房運転時に下吹き出しの風向制御フラップとして気流安定化部材を利用することができる。
【0081】
上記実施の形態では、流線形状の凹部でなく、形状はこれに限らず、凸部を覆う形状の凹部であればよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、第1水平フラップ21の下側に第2水平フラップ22を回動自在に支持したが、これに限らず、第2水平フラップは、第1水平フラップの近傍に回動自在に支持されていればよい。
【0083】
また、上記実施の形態では、気流安定部材としての第3水平フラップ23は、上流側の翼端を回動自在に支持したが、これに限らず、気流安定部材を、下流側の翼端で回動自在に支持してもよいし、翼長の中間部で回動自在に支持してもよい。
【0084】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1はこの発明の実施の一形態の空気調和機の斜め下方から見た斜視図である。
【図2】図2は図1よりもさらに斜め下方から見た上記空気調和機の斜視図である。
【図3】図3は上記空気調和機の正面図である。
【図4】図4は図3のIV−IV線から見た上記空気調和機の断面図である。
【図5】図5は上記空気調和機の第1〜第3水平フラップの分解斜視図である。
【図6】図6は上記空気調和機の第1水平フラップの正面図である。
【図7】図7は図6のVII−VII線から見た断面図である。
【図8】図8は上記空気調和機の第2水平フラップの正面図である。
【図9】図9は図8のIX−IX線から見た断面図である。
【図10】図10は上記空気調和機の運転停止状態(吹出口を閉じた状態)の正面図である。
【図11】図11は図10のXI−XI線から見た断面図である。
【図12】図12は上記空気調和機の冷房運転時の正面図である。
【図13】図13は図12のXIII−XIII線から見た断面図である。
【図14】図14は上記空気調和機の暖房運転時の第3水平フラップを下げた状態の正面図である。
【図15】図15は上記空気調和機の暖房運転時の第3水平フラップを上げた状態の正面図である。
【図16】図16は上記空気調和機の第1水平フラップを取り外した状態を斜め下方から見た斜視図である。
【図17】図17は図16に示す上記空気調和機の要部の拡大図である。
【図18】図18は上記空気調和機の第1〜第3水平フラップを取り外した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
10…ケーシング
12a,13a…吸込口
11…底フレーム
12…前面グリル
13…前面パネル
20…吹出口
21…第1水平フラップ
21a…支持アーム干渉防止用切り欠き部
21b,21c,21d…第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部
21A…翼部分
21B…翼部分
22…第2水平フラップ
23…第3水平フラップ
23a…凹部
24…支持アーム
24a…基部
24b…延伸部
24c…取っ手部
25…垂直フラップ
31…室内熱交換器
32…送風ファン
33…吹出通路
34…風通路
35…突起
40…アーム
41…中央軸部
42…左軸部
43…右側軸受部
44…溝
45…溝
50…アーム
51…中央軸部
52…左軸部
53…右側軸受部
54…溝
55…溝
61…中央軸部
62…左軸部
63…右側軸受部
71,72…軸受用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口(12a,13a)と吹出口(20)が設けられたケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に配置された熱交換器(31)と、
上記ケーシング(10)内の上記熱交換器(31)の風下側に配置され、上記吸込口(12a,13a)から上記熱交換器(31)を介して吸い込んだ空気を上記吹出口(20)から吹き出す送風ファン(32)と、
上記ケーシング(10)の上記吹出口(20)に回動自在に支持された第1水平フラップ(21)と、
上記ケーシング(10)の上記吹出口(20)かつ上記第1水平フラップ(21)の近傍に回動自在に支持された第2水平フラップ(22)と、
上記ケーシング(10)の上記吹出口(20)の略中央に設けられた1つの支持アーム(24)と
を備え、
上記第1水平フラップ(21)の略中央に設けられた中央軸部(41)または中央軸受部を支持する支点と、上記第2水平フラップ(22)の略中央に設けられた中央軸部(51)または中央軸受部を支持する支点とが、上記吹出口(20)の1つの支持アーム(24)に上記吹出口(20)の略縦方向に沿って間隔をあけて設けられていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
上記支持アーム(24)に、上記吹出口(20)の横方向に上記支持アーム(24)をねじるための取っ手部(24c)を設けたことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気調和機において、
上記第1水平フラップ(21)の両端と中央に、上記第2水平フラップ(22)に上記第1水平フラップ(21)が干渉しないように第2水平フラップ干渉防止用切り欠き部(21b,21c,21d)を設けたことを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1つに記載の空気調和機において、
上記第1水平フラップ(21)に上記支持アーム(24)が干渉しないように、上記第1水平フラップ(21)の上記中央軸部(41)近傍または上記中央軸受部近傍に支持アーム干渉防止用切り欠き部(21a)を設けたことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1つに記載の空気調和機において、
上記第1水平フラップ(21)は、上記吹出口(20)をほぼ覆うことが可能な翼長を有し、
上記第2水平フラップ(22)は、上記第1水平フラップ(21)よりも翼長が短くかつ少なくとも一部が上記第1水平フラップ(21)に重なることを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−65876(P2010−65876A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230931(P2008−230931)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】