説明

空気調和機

【課題】温暖化係数の低い冷媒を用いて環境性を達成すると共に、省冷媒性と装置の小型化が達成可能な省資材性を図ることが可能な空気調和機を提供することを課題とする。
【解決手段】圧縮機20、凝縮器12、サブクール回路14、膨張弁17、蒸発器19の順に冷媒を循環させる冷凍サイクル11を有する空気調和機において、サブクール回路14は、太径の外管内に細径の内管が外管の内周面に直接に接触することなく内挿されていると共に、外管と内管との間の間隙に、複数の中管を少なくとも内管の外周面に密接するように内挿配置せしめられてなる構造を有し、且つ内管内には、熱交換媒体が流通せしめられる一方、中管内と共に、外管と内管との間の間隙全体に熱交換される冷媒を流通せしめられるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に過冷却部を設けた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、冷凍サイクルの性能向上のため、凝縮部にサブクールコンデンサ(過冷却部)を設け、冷媒としてR1234yfを使用すると共に、サブクールコンデンサの出口側冷媒と蒸発器の出口側冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器を設け、さらにサブクールコンデンサの過冷却部の占有率を最適化した冷凍サイクルが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来は、室内熱交換器の下流側に配置される空気通路を介して暖房運転時に室内熱交換器の前面側、かつ下側の冷媒出口から冷媒が流出するように、室内熱交換器に冷媒を流すと共に、冷媒の循環量を制御する制御装置とを備えた空気調和機が開示されている。この制御装置は、暖房運転時に室内熱交換器の前面側、かつ下側熱交換部がサブクール状態となるように冷媒の循環量を制御している(特許文献2参照)。
【0004】
また、従来は、サブクール型凝縮器を採用する冷凍サイクル装置において、冷却運転モードと加熱運転モードとを切り替え可能としている。冷却運転モード時には、COPを向上させるようにしている。加熱運転モード時には、過冷却用熱交換部を迂回させるように冷媒の流す冷媒バイパス装置を設け、室外熱交換器内を流通する冷媒に生じる圧力損失を低下させる。これにより、圧縮機駆動動力を低減させて、加熱運転モード時におけるCOPについても向上させることができる(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2010−255906号公報
【特許文献2】特開2010−243018号公報
【特許文献3】特開2009−236404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来様々な熱交換器を備えた装置が提案されているが、近年では使用される冷媒の温暖化係数による環境性が強く求められてきていると共に、制御の安定性に伴う性能の保証、省エネ性(熱交換効率の向上)、省資材性(省冷媒性と装置の小型化)、低コスト性などのニーズも念頭に置いておく必要がある。例えば、温暖化係数が相対的に低いR32(冷媒)を用いた冷凍サイクルを検討する際に、サブクール量(SC)が2℃以下の場合に膨張弁の開度が安定しない結果となった。凝縮器出口にサイトグラスを取り付け冷媒状態を確認した際にサブクール量が十分でない場合は、クリアな液にならず、ガスが混在する状態となって、それが膨張弁での流体の大きな抵抗が発生する原因になるものと推測することができる。R32の熱物性によると、R410A(冷媒)と比べて潜熱量が約50%向上すると共に、密度が約20%減少する。従って、R410Aと同じ能力の条件において、R32の省冷媒性(冷媒量が少なくなり、熱交換器を小型化できる)を大きく見込むことができる。
【0007】
しかしながら、上述したように、凝縮器出口でサブクール量(SC)が2℃以下になると、冷房、暖房ともに冷凍サイクル制御が困難になるため、R32を用いた冷凍サイクルの制御上は、最低でもサブクール量(SC)を2℃よりも大きくする必要がある。
【0008】
そこで、上記特許文献1では、冷媒としてR1234yfを使用するにあたって、サブクールが性能向上に寄与するように工夫されているが、冷凍サイクル制御の安定性については考慮されていないという問題があった。
【0009】
また、上記特許文献2では、制御装置により暖房運転時に室内熱交換器の前面側で、かつ下側熱交換部がサブクール状態となるように冷媒の循環量を制御し、室内機の足元の暖房効果を強化しており、上記特許文献3では、サブクールの確保により運転モードによらずにCOPが向上するように工夫されている。しかしながら、上記特許文献2および3では、省資材性(省冷媒性と熱交換器の小型化)やサブクールの確保(2℃よりも大きくする)に関する課題が解決されていないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、温暖化係数の低い冷媒を用いることにより環境性を達成すると共に、制御の安定性に伴う性能の保証、省エネ性、省冷媒性と装置の小型化が達成可能な省資材性、および低コスト性を図ることが可能な空気調和機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒の熱を放出させる放熱器と、冷媒を熱交換媒体により冷却する冷媒冷却手段と、冷媒の流量を調整する流量制御弁と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記冷媒冷却手段における熱交換量を制御する熱交換量制御手段とを備え、前記圧縮機、前記放熱器、前記冷媒冷却手段、前記流量制御弁、前記蒸発器の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空気調和機において、前記冷媒冷却手段は、太径の外管内に細径の内管が前記外管の内周面に直接に接触することなく内挿されていると共に、前記外管と前記内管との間の間隙に、複数の中管を少なくとも前記内管の外周面に密接するように内挿配置せしめられてなる構造を有し、且つ前記内管内には、前記熱交換媒体が流通せしめられる一方、前記中管内と共に、前記外管と内管との間の間隙全体に熱交換される前記冷媒を流通せしめられるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒冷却手段は、太径の外管内に中径の第1内管が前記外管の内周面に直接に接触することなく内挿されていると共に、前記第1内管内に細径の第2内管が前記第1内管内の内周面に直接に接触することなく内挿され、前記外管と前記第1内管との間の間隙に、複数の前記中管を少なくとも前記第1内管の外周面に密接するように内挿配置せしめられてなる構造を有し、且つ前記第2内管内、および前記中管内と共に、前記外管と前記第1内管との間の間隙全体に前記熱交換媒体が流通せしめられる一方、前記第1内管と前記第2内管との間の間隙全体に熱交換される前記冷媒を流通せしめられるように構成されていることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒は、R32を用いていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記外管の内径は、4mm〜10mmの範囲であり、前記中管の内径は、0.25mm〜1.00mmの範囲であることが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記熱交換量制御手段は、前記冷媒冷却手段の出口で検出された前記冷媒の液温度と飽和液温度との温度差が2℃よりも大きくなるように、前記流量制御弁に対して前記冷媒の流量を制御することが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記冷媒冷却手段は、前記熱交換媒体の流量を調整する流量調整手段をさらに備え、前記熱交換量制御手段は、前記冷媒冷却手段の出口で検出された前記冷媒の液温度と飽和液温度との温度差が2℃よりも大きくなるように、前記流量調整手段に対して前記熱交換媒体の流量を制御することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷媒冷却手段として、太径の外管内に細径の内管を外管の内周面に直接に接触することなく内挿し、外管と内管との間に複数の中管を内管の外周面に密接するように内挿配置し、内管内には熱交換媒体を流通させ、中管内と共に、外管と内管との間の間隙全体に冷媒を流通させるように構成している。そのため、20〜30cmの長さで冷媒冷却手段による過冷却がとれるようになり、液冷媒の流れる領域が短くて済むことから省冷媒性と装置の小型化が可能な空気調和機が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施例にかかる空気調和機の冷凍サイクルの構成例を示す図である。
【図2】図2は、冷媒の相変化と圧力の関係を示すp−h線図である。
【図3】図3は、凝縮器内の冷媒状態分布を示す模式図である。
【図4】図4は、本実施例にかかる空気調和機の冷凍サイクルにおける温度センサーと温度との関係を冷房と暖房毎に示したグラフである。
【図5−1】図5−1は、本実施例にかかるヒートパイプ式のサブクール回路の構成例を示す図である。
【図5−2】図5−2は、図5−1のハニカムパイプのB−B線断面図である。
【図6】図6は、本実施例にかかる空気強制対流式のサブクール回路の構成例を示す図である。
【図7】図7は、図6のサブクール回路を用いた空気調和機の冷凍サイクルの構成例を示す図である。
【図8】図8は、本実施例にかかる水循環式のサブクール回路の構成例を示す図である。
【図9】図9は、ハニカムパイプに用いられるマイクロチャネルの等価直径と圧力損失との関係を示す線図である。
【図10】図10は、ハニカムパイプに用いられるマイクロチャネルの流量と圧力損失との関係を示す線図である。
【図11】図11は、ハニカムパイプに用いられるマイクロチャネルの等価直径と熱伝達率との関係を示す線図である。
【図12】図12は、ハニカムパイプに用いられるマイクロチャネルの流量と熱伝達率との関係を示す線図である。
【図13−1】図13−1は、ハニカムパイプの断面構成例を示す図である。
【図13−2】図13−2は、ハニカムパイプの断面構成例を示す図である。
【図13−3】図13−3は、ハニカムパイプの断面構成例を示す図である。
【図14】図14は、ハニカムパイプの断面構成例を示す図である。
【図15】図15は、ハニカムパイプの断面構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる空気調和機の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
本実施例にかかる空気調和機の冷凍サイクルに用いられる冷媒冷却手段としてのサブクール回路は、冷媒に例えばR32を用いており、その冷媒を冷却する熱交換媒体としての冷却流体に例えば、空気、水などを好適に用いることができる。なお、冷媒および冷却流体は、上記以外のものを用いて実施することも可能である。
【0021】
まず、本実施例にかかる冷凍サイクルの構成について説明する。図1は、本実施例にかかる空気調和機の冷凍サイクルの構成例を示す図である。冷凍サイクル11は、気体冷媒が圧縮機20で圧縮されると温度が高くなり、これを放熱器(ここでは、室外熱交換器)としての凝縮器12で気体冷媒の熱を放出させることで冷媒を液体に変化させる。液体になった冷媒は、凝縮器出口配管13を通って冷媒冷却手段としてのサブクール回路14に入り、熱交換媒体としての冷却流体と熱交換することで冷却される。サブクール回路14のサブクール回路出口配管15から出た冷媒は、温度センサー16で温度が検出され、冷媒の流量を調節する流量制御弁としての膨張弁17を通って低圧液となり、蒸発器へ送られる。低圧液となった冷媒は、蒸発器19に送られると蒸発して気化し、周囲から気化熱を奪って冷却を行う。蒸発器19で蒸発した気体冷媒は、再び上記圧縮機20に戻って圧縮される。このように、本実施例の冷凍サイクル11は構成されている。
【0022】
また、本実施例における熱交換量制御手段としての制御部18は、図1に示すように、温度センサー16で検出された冷媒の温度と当該冷媒の飽和液温度とを比較して所定の温度差が得られているか否かを判断し、所定の温度差(R32冷媒の場合は2℃よりも大きい)が得られていない場合は、膨張弁17に対して冷媒の流量を制御することにより所定の温度差が得られるようにしている。
【0023】
図3は、凝縮器内の冷媒状態分布を示す模式図であり、ガス冷媒状態で流入した冷媒が、2相状態を経て、液冷媒状態21へと変化することを説明している。通常、冷媒が凝縮器12内で十分液化するように制御している。しかし液冷媒は熱交換にほとんど寄与しないため、凝縮器内の液冷媒が流れる部分は無駄なスペースとなる。また、液冷媒はガス冷媒に比べ単位体積あたりの質量が大きいため、凝縮器内の液冷媒が流れる部分が大きいと、多量の冷媒が必要となる。
【0024】
図4は、図1で示す冷凍サイクル11に設けた各温度センサー1〜10により検出される温度との関係を冷房と暖房毎に示したグラフであり、例えば図1中の温度センサー6は室外熱交換器(凝縮器12+サブクール回路14)の出口温度を示している。しかし、本実施例の室外熱交換器の出口温度は、図1に示すようにサブクール回路14が凝縮器12と膨張弁17との間に配置されているため、サブクール回路出口配管15に設けられている温度センサー16の温度となる。この冷房時、暖房時における温度センサー16の温度は、R32冷媒の飽和液温度に対して2℃よりも大きい温度差がとれていれば、図3に示すように、凝縮器12においてガス冷媒状態から2相状態(ガス冷媒と液冷媒が混合した状態)を経て、サブクール回路14において液冷媒状態21となっていると判断することができる。つまり、図2のp−h線図の凝縮器による凝縮過程(X→Y)では、図中の曲線で示した飽和蒸気線(頂点から右側の線)及び飽和液線(頂点から左側の線)に対して所定の温度差がとれていないため、冷媒がガス冷媒状態から2相状態(液リッチ)まで変化している。そして、図2のp−h線図に示すサブクール回路による過冷却過程(Y→Z)では、冷媒をサブクール回路14で過冷却することにより、図中の曲線で示した飽和液線に対して所定の温度差がとれると、液冷媒状態21とすることができる。
【0025】
このように、本実施例におけるサブクール回路14は、凝縮器12を通った冷媒を効率良く過冷却できるように構成することにより、液冷媒の流れる領域を短くすることができるため、サブクール回路14を小型化して空気調和機を小型化することができると共に、サブクール回路内の冷媒量が少なくて済むことから、省冷媒性とすることができる。なお、図1および図4は、温度センサー1〜10によって温度を検出する一例を示したものであって、本発明にかかる空気調和機の実施の形態は、必ずしもこの例に限定されない。
【0026】
本実施例におけるサブクール回路14の特徴的な構成を以下説明する。図5−1は、ヒートパイプ式のサブクール回路である。サブクール回路14は、図5−1に示すように、ハニカムパイプ30を凝縮器出口配管13と、サブクール回路出口配管15との間に繋いである。図5−1に示すハニカムパイプ30のB−B線断面の形状は、図5−2に示すように、太径の外管36内に細径の内管32が、外管36の内周面に直接に接触しないように内挿され、外管36と内管32との間の間隙には、複数の中管34を少なくとも内管32の外周面に密接するように内挿配置した構造を有している。そして、内管32の中には、熱交換媒体としての冷却流体を流通させると共に、中管34と共に、外管36と内管32との間の間隙全体に熱交換される冷媒を流通させるように構成されている。
【0027】
本実施例における中管34は、内径が1mm以下と非常に細いマイクロチャネル(以下、マイクロチューブともいう)を用いているため、その分冷却流体との接触面積が大きくなり、熱交換効率が良好となる。また、外管36の内径は、後述するように中管34と内管32(42、52)との組み合わせ方、熱伝達率、チューブ内の圧力損失等を考慮すると、内径が4mm〜10mmの範囲が好ましく、内管32の外径は、外管36の内径の40%〜60%が好ましい。また、マイクロチューブで構成される中管34の内径は、0.25mm〜1.00mmの範囲であることが好ましい。このマイクロチューブの内径の数値限定となる根拠は、図9〜図12に示す線図であり、特に、図9によれば、マイクロチューブの内径Deが0.25mm以下になると圧力損失が急上昇しており、図11によれば、マイクロチューブの内径Deが1mm以上になると熱伝導率の変化が緩やかになることから、圧力損失と熱伝導率の両者の有効範囲を根拠としている。
【0028】
これらのハニカムパイプ30に使用される金属材料としては、銅、ステンレス、アルミニウムなどを好ましく用いることができるが、これ以外にも熱伝導率が良好で、耐久性のある材料であれば使用することができる。
【0029】
図5−1のヒートパイプ式のサブクール回路は、上記したように構成されている。そして、内管32を構成するヒートパイプは、その中を流れる冷却流体により中管34を流れるR32冷媒の熱量を吸収したのち空気中に運び、そこで凝縮した後、再びR32冷媒の熱量を吸収する動作が繰り返し行われる。このように、ハニカムパイプ30内で過冷却されたR32冷媒は、サブクール回路出口配管14aの温度センサー16で検出される温度が飽和液温度と比較して2℃よりも大きい温度差があるか否かを図1の制御部18が判断し、温度差が2℃以下であれば制御部18が膨張弁17を絞って、冷媒の流量を少なくすることで、検出温度が飽和液温より2℃よりも大きい温度差となるように制御する。このように、本実施例では、熱交換効率の良いハニカムパイプ30を用いると共に、サブクール回路の出口の冷媒温度を飽和液温度を適切な温度差に制御することができる。また熱伝導率が良好であるため、サブクール回路14を小型化できると共に、冷媒量を少なくして、省資源化を図ることができる。特に、本実施例では、吐出温度の高い冷媒(例えばR32)を用いた場合でも、良好なサイクル性能を得ることができる。
【0030】
続いて、図6は、空気強制対流式のサブクール回路の構成例を示す図であり、図7は、図6のサブクール回路を用いた空気調和機の冷凍サイクルの構成例を示す図である。図6のサブクール回路は、図5−1と同様にハニカムパイプ30を凝縮器出口配管13と、サブクール回路出口配管15との間に繋いである。図5−1と異なる構成は、内管42が空気の強制対流を発生させる流量調整手段としてのファン44と繋がっており、開口径の異なるファン44と内管42との間にデフュザー付きの空気通路を介在させている。ここで、ファン44の回転数制御を行い、内管42を流れる空気の流量をコントロールすることで、R32冷媒を用いた場合の目標である飽和液温度と比較して2℃よりも大きい温度差が得られるように、冷凍サイクルの過冷却度を実現する。
【0031】
図7に示すように、図6のサブクール回路を用いた冷凍サイクルは、凝縮器12で気体冷媒の熱を放出させることで冷媒が2相状態から液相状態へ変化し、凝縮器出口配管13を通ってサブクール回路14に入る。サブクール回路14に入った冷媒は、ハニカムパイプ30内を通る間に、冷却流体である空気により熱交換が行われて冷却される。サブクール回路14のサブクール回路出口配管15から流出した冷媒は、温度センサー16によって温度が検出される。制御部18は、検出された冷媒温度がR32冷媒の飽和液温より2℃よりも大きい温度差があるか否かを判断し、温度差が2℃以下であればファン44の回転数を上げるように制御し、温度差が2℃よりも大きければその回転数を維持するように制御する。このように、本実施例の熱交換効率の良いハニカムパイプ30を用いて構成されたサブクール回路14は、凝縮器12からの冷媒を過冷却処理することで、サブクール回路14を流出した冷媒温度をR32冷媒の飽和液温度と比較して2℃よりも大きい温度差に容易にすることができる。また、家庭用エアコンに用いられる冷凍サイクルにおいては、サブクール回路14の熱交換を行うハニカムパイプ30の長さを20〜30cm程度とすることができるため、従来の熱交換器部分(例えば、70cm×2程度)と比べると装置を大幅に小型化できると共に、熱交換部分に溜まっている冷媒を少なくできるので、省冷媒性を実現することができる。
【0032】
なお、冷媒の流量の制御と熱交換媒体の流量の制御について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、これらを組み合わせたものや、圧縮機の回転数制御によるものでも良い。
【0033】
続いて、図8は、水循環式のサブクール回路の構成例を示す図である。図8のサブクール回路は、図5−1と同様にハニカムパイプ30を凝縮器出口配管13と、サブクール回路出口配管15との間に繋いである。図5−1と異なる構成は、内管52が通水路であり、水タンク56内の冷却水を流量調整手段としてのポンプ54によって通水路である内管52を循環させ、ハニカムパイプ30内で冷却水と冷媒との間で熱交換を行い、冷却水の熱をフィン付き銅管50で空気に放出した後、水タンク56に冷却水を戻す。このように、水循環式のサブクール回路は、冷却水を循環させてハニカムパイプ30を通る冷媒を冷却し、ポンプ54の回転数を制御して冷却水の流量をコントロールすることによって、冷却能力を図1の制御部18により制御することができる。このため、ハニカムパイプ30内で過冷却されたR32冷媒は、サブクール回路出口の温度センサー16で検出される温度が飽和液温度より2℃よりも大きい温度にすることが可能となる。制御部18によるポンプ54の回転数制御は、図7におけるファン44の回転数制御と同様であるので、重複説明を省略する。
【0034】
上記実施例にかかるハニカムパイプは、図5−2に示すような断面構造のものを用いて実施しているが、本発明は、これに限定されるものではなく、以下の図13−1〜図13−3、図14、図15に示すような構造のハニカムパイプを用いて、上記と同様に実施することができる。図13−1〜図13−3のハニカムパイプの外管の内径が7mmの場合であり、図14のハニカムパイプの外管の内径が5mmの場合であり、図15のハニカムパイプの外管の内径が9mmの場合である。
【0035】
図13−1のハニカムパイプ構造は、外管36と内管32(42、52)との間の間隙が大きいため、中管34となるマイクロチューブを内管32(42、52)の外周部に対して2重に配置している。冷媒は、中管34と共に、外管36と内管32(42、52)との間の間隙全体に流通するようにしている。
【0036】
図13−2のハニカムパイプ構造は、外管36と内管32(42、52)との間の間隙が図13−1と同じであり、マイクロチューブとなる中管34bが部分的に使用され、それ以外の中管34aは内管32(42、52)の外周と外管36の内周にそれぞれ接する程度の太い径を持っていて、互いに密接して配置されている。冷媒は、中管34a,34b内と共に、外管36と内管32(42、52)との間の間隙全体に流通するようにしている。
【0037】
図13−3のハニカムパイプ構造は、外管36と内管32(42、52)との間の間隙が図13−1と同じであり、中管34は内管32(42、52)の外周と外管36の内周にそれぞれ接する程度の太い径を持っている。冷媒は、中管34と共に、外管36と内管32(42、52)との間の間隙全体に流通するようにしている。
【0038】
図14のハニカムパイプ構造は、外管36と内管37との間の間隙が狭く、中管34は内管37の外周と外管36の内周にそれぞれ接する程度の内径1mm径以下のマイクロチューブが密接して配置されている。
【0039】
図15に示すハニカムパイプ構造は、太径の外管36内に中径の第1内管38が外管36の内周面に直接に接触することなく内挿され、第1内管38内に細径の第2内管40が第1内管38内の内周面に直接に接触することなく内挿され、第1内管38の外周と外管36の内周にそれぞれ接する程度の内径1mm径以下のマイクロチューブからなる中管39が密接して配置されている。そして、第2内管40、および中管39内と共に、外管36と第1内管38との間の間隙全体に冷却流体が流通せしめられ、第1内管38と第2内管40との間の間隙に熱交換される冷媒を流通せしめるように構成されている。このハニカムパイプ構造は、冷媒を内側の冷却媒体と、外側の冷却媒体との両側から冷却が行われるため、熱交換効率を高くできる。
【0040】
図13〜図15に示すようなハニカムパイプ構造とすることで、冷媒の流量を多くしても圧力損失を高くせずに、冷媒と熱交換媒体との熱交換面積を大きくすることができるため、熱交換効率を高くすることができる。
【0041】
なお、上記実施例では、冷媒にR32を用いて実施したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばR410A、R407Cの他、二酸化炭素、アンモニア等の自然冷媒などであっても同様に実施することが可能である。但し、使用する冷媒毎に飽和液温度が異なるため、個々の冷媒の飽和液温より所定の温度差が得られるか否かを判断して制御を行う必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る空気調和機は、エアコン等の室内機や室外機における熱交換器に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1〜10 温度センサー
11 冷凍サイクル
12 凝縮器
13 凝縮器出口配管
14 サブクール回路
15 サブクール回路出口配管
16 温度センサー
17 膨張弁
18 制御部
19 蒸発器
20 圧縮機
21 液冷媒状態
30 ハニカムパイプ
32,37,42,52 内管
34,34a,34b,39 中管
36 外管
38 第1内管
40 第2内管
44 ファン
50 フィン付き銅管
54 ポンプ
56 水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、冷媒の熱を放出させる放熱器と、冷媒を熱交換媒体により冷却する冷媒冷却手段と、冷媒の流量を調整する流量制御弁と、冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記冷媒冷却手段における熱交換量を制御する熱交換量制御手段とを備え、前記圧縮機、前記放熱器、前記冷媒冷却手段、前記流量制御弁、前記蒸発器の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを有する空気調和機において、
前記冷媒冷却手段は、
太径の外管内に細径の内管が前記外管の内周面に直接に接触することなく内挿されていると共に、前記外管と前記内管との間の間隙に、複数の中管を少なくとも前記内管の外周面に密接するように内挿配置せしめられてなる構造を有し、且つ前記内管内には、前記熱交換媒体が流通せしめられる一方、前記中管内と共に、前記外管と内管との間の間隙全体に熱交換される前記冷媒を流通せしめられるように構成されていることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記冷媒冷却手段は、
太径の外管内に中径の第1内管が前記外管の内周面に直接に接触することなく内挿されていると共に、前記第1内管内に細径の第2内管が前記第1内管内の内周面に直接に接触することなく内挿され、前記外管と前記第1内管との間の間隙に、複数の前記中管を少なくとも前記第1内管の外周面に密接するように内挿配置せしめられてなる構造を有し、且つ前記第2内管内、および前記中管内と共に、前記外管と前記第1内管との間の間隙全体に前記熱交換媒体が流通せしめられる一方、前記第1内管と前記第2内管との間の間隙全体に熱交換される前記冷媒を流通せしめられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記冷媒は、R32を用いていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記外管の内径は、4mm〜10mmの範囲であり、前記中管の外径は、0.25mm〜1.00mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気調和機。
【請求項5】
前記熱交換量制御手段は、前記冷媒冷却手段の出口で検出された前記冷媒の液温度と飽和液温度との温度差が2℃よりも大きくなるように、前記流量制御弁に対して前記冷媒の流量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空気調和機。
【請求項6】
前記冷媒冷却手段は、前記熱交換媒体の流量を調整する流量調整手段をさらに備え、
前記熱交換量制御手段は、前記冷媒冷却手段の出口で検出された前記冷媒の液温度と飽和液温度との温度差が2℃よりも大きくなるように、前記流量調整手段に対して前記熱交換媒体の流量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−237518(P2012−237518A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107631(P2011−107631)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】