説明

空気調和機

【課題】リモコンで風向板を動作させる操作により室内機の風向板を仮に動作させ、この風向板の位置(角度)を設定する場合において、風向板の識別のために風向板を仮に動作させ、この仮に動作させた風向板の中から希望する風向板を選択し、この風向板に対して希望する風向板の位置を設定した風向板以外の風向板について、仮に動作させる以前の風向板位置を再設定する操作が不要な空気調和機を提供する。
【解決手段】リモコンは、個別の風向板の位置を記憶した記憶部を備えており、風向キー操作により選択された風向板をスイングで動作させ、上キーの操作により位置が変更された場合、変更された風向板の位置をすでに記憶されている値に変えて記憶し、風向キー操作により風向板の選択操作の終了が指示された時、記憶している風向板の位置データを室内機へ送信し、室内機はこれに従って各風向板を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吹出口にそれぞれ風向板を備えた空気調和機の室内機に係わり、より詳細には、対象とする風向板の位置(角度)を設定する風向設定操作が可能なリモコンを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井埋込型空気調和機の室内機は一般的に矩形パネルの各辺と対応する位置にそれぞれ吹出口が備えられており、この4つの各吹出口にはそれぞれ独立したステッピングモータにより駆動される風向板が設けられている。このため、この風向板の向き(角度)を指定するリモコンには、4つの内の1つの風向板を選択する操作と、この選択された風向板に対して位置(方向)を設定する操作とができるようになっている。なお、以降の説明において、風向板の回動角度や向き、方向を風向板の『位置』と呼称する。
【0003】
この4つの中の意図した風向板を選択する場合、リモコンで現在選択している風向板が実際の室内機のどの風向板と対応しているのかを確認してから行う必要があるが、この作業は室内機の取扱説明書の図と実際の室内機とを対比させてリモコンを操作する必要があるため操作性が悪かった。
【0004】
この問題を改善して各吹出口や各風向板の識別ができる室内機が開示されている。この室内機のパネルには、室内空間に向けて空調された空気を吹き出すための複数の吹出口と、複数の吹出口にそれぞれ配置され、空気の送風方向を個別に変更可能な略同一形状の複数のフラップ(風向板)とを有し、複数の吹出口の近傍または複数のフラップに、互いに異なる標識部をそれぞれ形成している。そして、このフラップを操作するリモコンの表示部にも標識部と対応するマークが表示されており、フラップの対応付けができるようになっている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この標識部は室内機のパネル面やフラップに設けた印刷やシール、成形によるマーク、又は発光部から形成されているが、このパネル面は中央部分を盛り上げて、周辺部に吹出口を形成して天井面とできるだけ並行に送風可能なように設計する場合がある。
従って室内機の真下でないとパネル中央の盛り上がりによって識別部が認識できない場合がある。特に、天井埋込型空気調和機の室内機に用いられるワイヤードリモコンは壁に固定されており、この位置から室内機を見た時には識別部がパネル中央部分の盛り上がりで遮られ、視覚的に認識しにくいという問題があった。
さらに、運転中に風向板の位置を設定する場合、すでに風向板がスイング動作していたり、前回設定された風向板の位置に向いている場合がある。このため、この風向板に視界を遮られ、視覚的に認識しにくいという問題があった。
また、識別部を別途必要とするため、この部分がコストアップとなってしまう問題があった。
【0006】
一方、このような標識部を用いないで、つまり、コストアップしないで、実際の風向板位置とリモコンで表示される風向板の位置との対応付けを行う場合、リモコンで風向板の選択操作を行い、この操作により動作する実際の風向板を目視で確認することが特許文献1の従来技術として記載されている。
前述したように標識部が風向板で遮られる場合、つまり、標識部よりも風向板が見える場合は、風向板を確認する方法の方が標識部を用いる場合よりもコストをかけないで同じ目的を達成できる。
しかしながら、実際に風向板の位置を設定する場合、風向板を認識するために行った試し操作により風向板の位置が変化してしまい、位置の変更が必要ない風向板に関して操作前の位置が不明になり、1つの風向板だけの位置設定操作を行う場合でも、再度、試し操作した全ての風向板について位置設定操作を行う必要が発生し、操作性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−94924号公報(第9−11頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上述べた問題点を解決し、複数の風向板の位置をリモコンで個別に設定する場合、リモコンで風向板を動作させる操作により室内機の風向板を仮に動作させ、この仮に動作させている風向板とリモコンで表示される風向板との対比で現在操作している風向板を特定して、この風向板の位置を設定する場合において、風向板の識別のために風向板を仮に動作させ、この仮に動作させた風向板の中から希望する風向板を選択し、この風向板に対して希望する風向板の位置を設定した風向板以外の風向板について、仮に動作させる以前の風向板位置を再設定する操作が不要な空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の発明は、複数の吹出口と、前記複数の吹出口にそれぞれ配置された風向板とを備えた室内機と、個別の前記風向板の選択を行う選択操作と、選択された前記風向板の位置を個別に設定する位置設定操作とが可能なリモコンとを備えた空気調和機において、
前記空気調和機は、個別の前記風向板の位置を記憶する記憶部を備えており、同記憶部には前回の前記位置設定操作で設定された前記風向板の位置データが記憶されており、
前記リモコンは、前記選択操作により選択された前記風向板を仮に動作させて操作者に視認させる風向板識別動作の実行を前記室内機へ指示し、前記位置設定操作により指定された前記風向板の位置データをすでに記憶されている前記位置データに置き換えて記憶させ、
記憶された前記位置データに従って前記風向板の位置を制御するように前記室内機へ指示することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記リモコンは、選択された前記風向板に対する前記風向板識別動作を前記室内機が実行中に他の前記風向板を全閉状態にさせると共に、吹き出される風量を一時的に減少させる指示データを前記室内機へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の手段を用いることにより、本発明による空気調和機によれば、
請求項1に係わる発明は、風向板の識別のために風向板を仮に動作させる時、新たに位置を変更した風向板以外の風向板の位置が自動的に風向板の位置設定操作前の状態に戻るため、これらの風向板の位置を再設定する操作が不要となり操作性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係わる発明は、風向板識別動作を実行中の風向板以外の風向板は全閉状態であるため、風向板識別動作を実行中の風向板を視覚的に遮ることがなく、これを遠くから見ても容易に選択中の風向板を識別できる。さらに、風向板識別動作を実行中の風向板以外の風向板は全閉状態の時、吹き出される風量を一時的に減少させるため、風向板識別動作を実行中の風向板と対応する吹出口から、多量の空気が送風されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による空気調和機の実施例を示す室内機とワイヤードリモコンとの説明図である。
【図2】本発明による空気調和機の実施例を示す室内機とワイヤードリモコンとのブロック図である。
【図3】本発明による他の実施例を説明する説明図である。
【図4】本発明による風向板の設定操作を説明する説明図である。
【図5】本発明によるワイヤードリモコンの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
本発明の特徴は風向設定操作において、風向板の位置を設定すべき風向板を複数の中から選択するため、ワイヤードリモコンで選択された風向板を1つだけ識別動作、例えばスイング動作を行わせ、選択された風向板への位置設定操作が終了した時、今回設定した風向板以外の風向板の位置を自動的に風向設定操作前の状態に戻すことにある。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明による空気調和機の実施例を示す説明図である。この空気調和機は図示しない室外機と、室内機1と、この室内機1に指示を出すワイヤードリモコン12とで構成されている。
【0016】
室内機1は天井面に配置されたパネル4を備えており、このパネル4の盛り上がった中央部分が室内機1の吸込口2であり、この吸込口2の外周にパネル4の4つの外辺と対応した長方形の4つの吹出口5が設けられており、この吹出口5にそれぞれ風向板3a〜風向板3dが回動自在に配置されている。各風向板には図示しないステッピングモータが接続されており、各々の風向板が単独で位置を任意に変更できるようになっている。
【0017】
なお、パネル4の一角には風向板の識別の原点となる位置マーク3eが表記されており、各風向板はパネル4を正面から見てこの位置マーク3eから時計周り位置に風向板A〜風向板Dとなっている。従って、風向板3a〜風向板3dが風向板A〜風向板Dとなる。
【0018】
一方、通信線10で室内機1に接続されたワイヤードリモコン12は、上部に表示部12bと、下部に操作部12cとが配置されている。
次に表示部12bの表示内容について説明する。なおこの図は全ての表示項目を示しており、室内機1の運転状態に従って、これらの表示項目のうち、必要な表示項目だけが選択的に表示される。
【0019】
表示部12bには、エアコンを制御するために必要な設定温度を表示する2桁の数値表示部12fと、複数の文字ブロックが表示できるようになっている。文字ブロックは各ブロック毎に表示の表示/非表示が可能であり、これが表示されているときに、文字ブロックで表される機能が有効であることを示す。文字ブロックは現在運転中のモードを示す『冷房』、『暖房』、『除湿』がある。また、風量の台形マークは風量の大きさを示しており、最大の大きさの時が最大の風量であることを示している。
【0020】
この他に表示部12bには、風向板選択表示エリア12iと風向設定表示エリア12hとが配置されている。風向板選択表示エリア12iには4つの風向板3a〜風向板3dと対応する模式図が表示され、その周囲には風向板A〜風向板Dの識別文字A〜Dが表示されるようになっている。風向(風向板の位置)を設定する場合は、現在選択されている風向板と対応する識別文字が1つだけ表示される。なお、位置マーク3eと対応するドットも表示されている。
【0021】
風向設定表示エリア12hには『風向』の文字と風向を表す模式図が表示されており、4つの風向に対応する段階数字1〜4、及び『スイング』が表示されるようになっており、この4つの風向と『スイング』とのうち1つだけが指定されて表示されるようになっている。
【0022】
一方、操作部12cは、運転を開始/停止させる『電源』キー、冷房や暖房のモードを選択する『運転モード』キー、各種の設定を行う『設定』キーの他に、4つの風向板のうち1つを順次選択する風向キー12aと、選択された風向板の位置(角度)を段階的に設定する上キー12dと下キー12eとを備えている。
【0023】
風向キー12aは1回押下するごとに風向板A〜風向板Dをローテーションして選択できる。これに対応して風向板選択表示エリア12iの表示も選択された風向板の段階数字又はスイングを表示する。ただし、風向板Dの次の選択は風向板Aでなく、どの風向板も選択されない状態になる。これが風向の設定以外のキー操作も受け付ける通常モードであり、通常の運転はこの状態にしておく。また、風向板の段階数字又はスイングを表示している場合は風向設定操作のみを受け付ける風向設定モードである。
【0024】
風向板の風向を設定する上キー12dは、1回押下する毎に風向板の位置を1段階だけ上向きにさせる。段階は前述のように4段階あり、4段階からさらに上キー12dを1回押下するとスイング動作の設定となる。下キー12eはこの逆の操作であり、1回押下する毎に風向板の位置を1段階だけ下向きに移動させる。
【0025】
図2は室内機1とワイヤードリモコン12とを示すブロック図である。
室内機1は、図示しない赤外線リモコンから送信される赤外線信号を受信するリモコン受信部21と、室内の温度を検出する室温検出部25と、送風ファンモータ23と、風向板を設定された位置(角度)に回動させる4つの風向板用ステッピングモータ24a〜24dと、通信線11を介して室外機50と通信を行う通信部29と、通信線10を介してワイヤードリモコン12と通信を行う室内機通信部27と、これらを制御する室内機制御部26とを備えている。なお、風向板用ステッピングモータ24a〜24dは、風向板3a〜風向板3d(風向板A〜風向板D)を駆動するようになっている。
【0026】
ワイヤードリモコン12は、前述した各種のキー操作を入力する操作部12cと、記憶部12gと、表示部12bと、室内機1と通信線10を介して通信を行うリモコン通信部12jと、これらを制御するリモコン制御部12kとを備えている。
【0027】
リモコン制御部12kは、操作部12cのキーが操作されるとこれを受け付けて操作されたキーと対応するデータを室内機1へ送信しており、室内機通信部27を介してこれを受け付けた室内機制御部26はこのデータに従って室内機1を制御する。また、表示部12bは、操作されたキーと対応する情報、例えば温度設定操作なら設定された温度を、風量設定なら設定された風量を、風向設定なら設定された風向などを表示するようになっている。
なお、室内機制御部26は、操作により指示された設定温度、運転モード、風向、風量、などの指示データを記憶部12gへ記憶すると共に、室内機1へこの指示データを送信する。これを受信した室内機1はこの指示データに従って空調運転を実行する。
【0028】
リモコン制御部12kは、風向板の制御に関して、室内機1に対して個々の風向板毎にスイング動作、及び指定した風向板の位置を1〜4段階で指示できる。室内機制御部26はこの指示を受け付けると、次に同じ風向板に対する指示があるまで前回指示された動作を継続するようになっている。従って、ワイヤードリモコン12からスイングの指示が1回あれば、室内機1の室内機制御部26はスイング動作を連続して行う。同様に、ワイヤードリモコン12から該当する風向板に対して全閉の指示があれば、室内機制御部26は対応する風向板を回動させて吹出口5を全閉とする。
【0029】
図4は本発明による風向設定操作を説明する説明図である。この設定操作には大きく分けて2つの操作、つまり、風向板の選択操作と選択された風向板に対する位置設定操作とがある。
風向板の選択操作ではユーザーの操作により、ワイヤードリモコン12で指示した風向板が実際のどの風向板であるかを目視して識別するため、1つの風向板を仮に動作させる風向板識別動作が行われる。
風向板の位置設定操作では、この風向板識別動作中の風向板についてユーザーの操作により設定された位置をワイヤードリモコン12に表示させると共に、指定された位置を記憶する動作とが行われ、そして、風向設定操作の最後に記憶している位置に全ての風向板を回動させる動作が行われる。
【0030】
図4において、『項』は風向設定操作の順番を、『キー操作』は操作部12cで操作されたキーを、『風向板選択表示』は図1の風向板選択表示エリア12iでの表示内容を、『風向設定表示』は図1の風向設定表示エリア12hでの表示内容を、『実際の風向板位置』は室内機1の風向板A〜Dの位置状態をそれぞれ示している。
【0031】
『項』の1は風向設定する以前の風向板の位置状態を示しており、例えば風向板Aは風向:1の位置に、風向板Bは風向:4の位置に、風向板Cは風向:1の位置に、風向板Dは風向:4の位置にそれぞれ設定されて角度に対応する位置データとして記憶部12gに記憶されている。この状態から風向板Cを風向:1から風向:3の位置にする操作を順に説明する。
【0032】
『項』2に示すように1回だけ風向キー12aを押下する。ここから『項』5までが風向設定操作になる。そして『風向板選択表示』に示すように、リモコン制御部12kは、表示部12bにA(風向板A)を表示し、『風向設定表示』で示すように記憶部12gに記憶していた風向:1を同様に表示させる。そして、リモコン制御部12kは、風向板Aのスイング動作開始の指示データと、風向板B〜Dを全閉にする指示データとを室内機1へ送信する。なお、この時、同時に室内機1に対して風量を風向設定操作以前の状態から1/4に減少させる指示データも送信する。
これを受け付けた室内機1では『実際の風向板位置』で示すように風向板Aのみスイング動作を開始すると共に、その他の風向板を全閉状態にする。また、風量を風向設定操作以前の状態から1/4に減少させる。
【0033】
次に『項』3で更にもう1回だけ風向キー12aが押下されると、『項』2で説明したと同じ手順で次の風向板Bが指定され、室内機1は風向板Bをスイング動作させると共に、その他の風向板を全閉にする。なお、『風向板選択表示』に示すようにリモコン制御部12kは、表示部12bにB(風向板B)を表示する。『風向設定表示』は『項』2で説明したように記憶部12gに記憶していた風向:4を表示する。
【0034】
次に『項』4で更にもう1回だけ風向キー12aが押下されると、『項』2で説明したと同じ手順で次の風向板Cが指定され、室内機1は風向板Cをスイング動作させると共に、その他の風向板を全閉にする。なお、『風向板選択表示』に示すようにリモコン制御部12kは、表示部12bにC(風向板C)を表示する。『風向設定表示』も『項』2と同様に表示される。
【0035】
この状態で風向板位置を変更するため上キー12dが押下されると、『風向設定表示』に示すようにリモコン制御部12kは、風向:1から風向:2へ表示を変更し、同時に記憶部12gに記憶している風向板Cの風向:1の位置データを風向:2に変更する。さらに、上キー12dが押下されると、『風向設定表示』に示すようにリモコン制御部12kは、風向:2から風向:3へ表示を変更し、同時に記憶部12gに記憶している風向板Cの風向:2の位置データを風向:3に変更する。
【0036】
次に『項』5で更にもう1回だけ風向キー12aが押下されると、『項』2で説明したと同じ手順で次の風向板Dが指定され、室内機1は風向板Dをスイング動作させると共に、その他の風向板を全閉にする。なお、『風向板選択表示』に示すようにリモコン制御部12kは、表示部12bにD(風向板D)を表示する。『風向設定表示』も『項』2と同様に表示される。
【0037】
次に『項』6で更にもう1回だけ風向キー12aが押下されるとリモコン制御部12kは、記憶部12gに記憶していた各風向板毎の風向、つまり、風向板Aは風向:1、風向板Bは風向:4、風向板Cは風向:3、風向板Dは風向:4の位置データを室内機1に送信し、これを受け付けた室内機1では指示された位置(角度)に各風向板を制御する。
【0038】
図4で説明したように、ある風向板の位置を設定する場合、設定の順序として3つの状態がある。1つ目は今回の風向設定操作において、まだ選択が完了していない状態、2つ目は4つの風向板のうち1つを選択中の状態、3つ目は位置設定が完了した状態である。
【0039】
このため、図3に示すように本発明ではこれら3つの状態を室内機1の風向板の動作で表現している。例えば本実施例では図3の例1を採用している。つまり、選択中の状態を風向板のスイング動作で、未選択の状態を風向板全閉状態で、設定済の状態を風向板全閉状態でそれぞれ表している。しかしながら、これらは一例であり、図3の例2に示すように選択中の状態を風向板全開(下向き)で表したり、図3の例3のように未選択の状態を設定前の元の風向で表したり、設定済の状態を今回設定した風向にしてもよい。
【0040】
以上説明したように、風向板の識別のために風向板を仮に動作させる時、新たに位置を変更した風向板以外の風向板の位置が自動的に風向板の位置指定操作前の状態に戻るため、これらの風向板の位置を再設定する操作が不要となり操作性を向上させることができる。
【0041】
また、風向板識別動作を実行中の風向板以外の風向板は全閉状態であるため、風向板識別動作を実行中の風向板を視覚的に遮ることがなく、これを遠くから見ても容易に選択中の風向板を識別できる。さらに、風向板識別動作を実行中の風向板以外の風向板は全閉状態の時、吹き出される風量を一時的に減少させるため、風向板識別動作を実行中の風向板と対応する吹出口から、多量の空気が送風されることがない。
【0042】
また、図3において、例1以外の場合の各動作の効果として、未選択の状態を今回の風向設定操作前の元の風向板位置で表すことで前回の風向設定操作での風向板の位置を目視できる。また、設定済の状態を今回設定した位置で表すことで、今回設定した内容を目視で確認できる。
また、これに限らず、図3の例1〜例4の風向板の動作を選択中、未選択、設定済の状態で組み合わせて使用してもよい。
【0043】
次に図5のフローチャートを用いてリモコン制御部12kの動作を説明する。また、図5において、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を示す。また、図5中の『Y』はYesを、『N』はNoをそれぞれ示している。
【0044】
まず最初にリモコン制御部12kは操作部12cを介してキー操作が有ったか確認する(ST1)。キー操作が無い場合はST1へジャンプする。キー操作が有った場合(ST1−Y)、操作されたキーは風向キー12aか確認する(ST2)。
【0045】
操作されたキーが風向キー12aの場合(ST2−Y)、現在選択されている風向板と対応させて風向設定表示をA、B、C、Dと順に表示する(ST3)。現在選択されている風向板を認識するために風向板指定カウンタの値を記憶部12gに記憶している。風向キー12aが押下される毎にこの風向板指定カウンタの値を0からカウントアップし、この値が5になったら風向指定が一巡したことになる。つまり、この値の1〜4が風向板A〜風向板Dに対応している。また、風向板指定カウンタの値が5になったら、次の操作までに初期値である0にする。
なお、風向設定操作に入った時、つまり、風向板指定カウンタの値が0から1になった時に、室内機1へ風量を元の風量から1/4にする指示データを送信する。
【0046】
次に現在選択されている風向板を区別する値を記憶する(ST4)。つまり、風向板指定カウンタの値を記憶部12gに記憶する。そして、風向キーは5回押下済みか確認する(ST5)。これは風向板指定カウンタの値を確認することになる。風向キーが5回押下済みでない場合(ST5−N)、現在選択中の風向板をスイングさせる指示データと、選択された風向板以外の他の風向板を全閉とする指示データとを室内機1へ送信する(ST6)。そしてST1へジャンプする。
【0047】
一方、風向キーが5回押下済みの場合(ST5−Y)、風向板の選択が一巡したことになるため、記憶部12gに記憶している各風向板と対応する位置データを指示データとして室内機1へ送信する(ST7)。なお、同時に記憶している元の風量、つまり風向設定操作へ入る前の風量値を指示データとして室内機1へ送信する。次に風向板の選択及び設定の段階番号の1〜4、及びスイングの表示を全て消去して表示する(ST8)。これは風向設定操作から抜けたことを報知するためである。そしてST1へジャンプする。
【0048】
操作されたキーが風向キー12aでない場合(ST2−N)、風向キー12aは少なくとも1回押下されているか確認する(ST91)。これは前述した風向板指定カウンタが0以外の値になっているかで判定できる。この風向板指定カウンタが0の時は風向キー12aが押されていない状態、つまり、風向設定操作に入っていない状態である。
【0049】
風向キー12aは少なくとも1回押下されていない場合(ST91−N)、風向設定操作と無関係なその他のキーであるため、操作されたキーを受け付けて処理する(ST11)。そしてST1へジャンプする。
風向キー12aが少なくとも1回押下されている場合(ST91−Y)、操作されたキーは上キー12dか確認する(ST9)。操作されたキーが上キー12dでない場合(ST9−N)、操作されたキーは下キー12eか確認する(ST10)。操作されたキーが下キー12eでない場合(ST10−N)、風向設定操作と無関係なキーであるため無視してST1へジャンプする。
【0050】
一方、操作されたキーが下キー12eの場合(ST10−Y)、風向設定表示において、風向を1段階下降させて表示する(ST13)。次に現在選択中の風向板における変更された位置データを記憶部12gに記憶する(ST14)。そしてST1へジャンプする。
【0051】
位置データは記憶部12gに各風向板毎に1〜5の風向カウンタ値として記憶される。この値の1〜4が風向の1〜4に対応しており、風向カウンタ値が5の場合はスイングの指定を示している。この風向カウンタ値は上キー12dが押下される毎にカウントアップされ、下キー12eが押下される毎にカウントダウンされる。
【0052】
一方、操作されたキーが上キー12dの場合(ST9−Y)、風向設定表示において、風向を1段階上昇させて表示する(ST12)。そしてST14へジャンプする。
【0053】
なお、本実施例では、リモコンとしてワイヤードリモコンを用いた例で説明しているが、これに限らず、赤外線リモコンや電波を用いた無線リモコンであってもよい。
【0054】
また、本実施例ではワイヤードリモコン側で風向板の位置を記憶しているが、これに限らず、室内機1側で風向板の位置を記憶し、ワイヤードリモコン側からは位置設定操作による一時的な位置変更の指示データのみ送信し、室内機1はこの指示に従って位置の記憶内容は変更せずに指示された位置に風向板を制御する。そして、ワイヤードリモコン側から変更された風向板の位置データを受信した時、室内機1はこの受信した風向データを記憶していた風向データに置き換えて記憶し、ワイヤードリモコンから風向設定操作の終了の指示を受けた時に記憶していた風向板の位置に風向板の角度を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 室内機
2 吸込口
3a、3b、3c、3d 風向板
3e 位置マーク
4 パネル
5 吹出口
10 通信線
11 通信線
12 ワイヤードリモコン
12a 風向キー
12b 表示部
12c 操作部
12d 上キー
12e 下キー
12f 数値表示部
12g 記憶部
12h 風向設定表示エリア
12i 風向板選択表示エリア
12j リモコン通信部
12k リモコン制御部
21 リモコン受信部
23 送風ファンモータ
24a、24b、24c、24d 風向板用ステッピングモータ
25 室温検出部
26 室内機制御部
27 室内機通信部
29 通信部
50 室外機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吹出口と、前記複数の吹出口にそれぞれ配置された風向板とを備えた室内機と、個別の前記風向板の選択を行う選択操作と、選択された前記風向板の位置を個別に設定する位置設定操作とが可能なリモコンとを備えた空気調和機において、
前記空気調和機は、個別の前記風向板の位置を記憶する記憶部を備えており、同記憶部には前回の前記位置設定操作で設定された前記風向板の位置データが記憶されており、
前記リモコンは、前記選択操作により選択された前記風向板を仮に動作させて操作者に視認させる風向板識別動作の実行を前記室内機へ指示し、前記位置設定操作により指定された前記風向板の位置データをすでに記憶されている前記位置データに置き換えて記憶させ、
記憶された前記位置データに従って前記風向板の位置を制御するように前記室内機へ指示することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記リモコンは、選択された前記風向板に対する前記風向板識別動作を前記室内機が実行中に他の前記風向板を全閉状態にさせると共に、吹き出される風量を一時的に減少させる指示データを前記室内機へ送信することを特徴とする請求項1記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113469(P2013−113469A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258758(P2011−258758)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】