説明

空気調和機

【課題】吸込口から効率よく吸い込んだ空気を熱交換器の全域に万遍なく行き届かせて熱交換効率を向上させた空気調和機を提供する。
【解決手段】本体1に吸込口2と吹出口3とを備え、前記吸込口2と前記吹出口3とを結ぶ空気通路に熱交換器4とクロスフローファン5とを配置し、前記熱交換器4で冷媒と熱交換された調和空気を前記吹出口3から吹き出す空気調和機であって、前記熱交換器4の上流に、前記熱交換器4の下端に噴出口を向けた導入ノズル16,18を設け、前記本体1内の一側部に送風機と、前記導入ノズル16,18と前記送風機とを結び、同送風機からの空気を前記導入ノズル16,18に供給する送風ダクト17,19とを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に係わり、より詳細には、吸込口から吸い込まれる空気を熱交換器に万遍なく行き届かせる構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は、図5(A)および図5(B)に示すように、吸込口101と吹出口102とを結ぶ空気通路に、エアフィルタ103と熱交換器104と送風ファン105とを備え、空気通路に室外空気を導入する換気装置106を備えてなるものにおいて、換気装置106が、室外空気を吸込口101に導く換気口107と、換気口107に連通して吸込口101から吸い込まれる室内空気の流通に影響を与えないように設けられ、吸込口101に室外空気を供給する換気孔108を備えた換気ダクト109とを備えた構成が開示されている。
【0003】
これにより、吸込口101における室内空気吸込時の空気抵抗を増加させることなく、室外空気が熱交換器106の上流側に偏りなく供給されることにより熱交換のバランスを崩すことがないようにしている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上述した換気装置106においては、換気ダクト109によって熱交換器106の上流側に偏りなく室外空気を供給できるが、熱交換器106の下端部およびその近傍まで空気を送ることができないという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−52876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、吸込口から吸い込んだ空気を熱交換器の下端部およびその近傍まで行き届かせて熱交換器の下端部での熱交換効率を向上させた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
【0008】
本体に吸込口と吹出口とを備え、前記吸込口と前記吹出口とを結ぶ空気通路に熱交換器とクロスフローファンとを配置し、前記熱交換器で冷媒と熱交換された調和空気を前記吹出口から吹き出す空気調和機であって、
前記熱交換器の上流に、前記熱交換器の下端に噴出口を向けた導入ノズルを設け、前記本体内の一側部に送風機と、前記導入ノズルと前記送風機とを結び、同送風機からの空気を前記導入ノズルに供給する送風ダクトとを配置したことを特徴としている。
【0009】
また、前記熱交換器が、前部熱交換部と後部熱交換部とを有してΛ(ラムダ)状に形成され、前記導入ノズルが、前記前部熱交換部の熱交換器の下端に噴出口を向けた前部熱交換部の導入ノズルと、前記後部熱交換部の熱交換器の下端に噴出口を向けた後部熱交換部の導入ノズルとからなり、前記送風ダクトが、前記前部熱交換部の導入ノズルと前記送風機とを結ぶ前部熱交換部の送風ダクトと、前記後部熱交換部の導入ノズルと前記送風機とを結ぶ後部熱交換部の送風ダクトとからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸込口から吸い込んだ空気を熱交換器の下端部およびその近傍まで行き届かせて熱交換器の下端部での熱交換効率を向上させた空気調和機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による空気調和機の分解斜視図である。
【図2】本発明による空気調和機の概念図である。
【図3】本発明による空気調和機の吸込口近傍の導入ノズルおよび吹出口からの水平吹き出しを示す説明図で、(A)は断面図であり、(B)は要部説明図である。
【図4】本発明による空気調和機の吸込口近傍の導入ノズルおよび吹出口からの下方吹き出しを示す説明図で、(A)は断面図であり、(B)および(C)は要部説明図である。
【図5】従来例による空気調和機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【0013】
本発明による空気調和機は、図1乃至図4に示すように、開閉パネル1bを有する前面パネル1aで覆われた本体1に吸込口2と吹出口3とを備え、吸込口2と吹出口3とを結ぶ空気通路に、吸込口2から吸い込まれた吸込空気を冷媒と熱交換する前部熱交換部41と後部熱交換部42とで側面視でΛ(ラムダ)状に形成された熱交換器4と、熱交換された調和空気を吹出口3に送出するクロスフローファン5とを備えている。
【0014】
なお、図2は構成品の配置および接続状態等を示す概念図で、熱交換器4と、ファンケーシング7に収納したシロッコファン8と、吹出口3の上縁部3aに設けた上側の吹出ノズル12と、下縁部3bに設けた下側の吹出ノズル13と、ファンケーシング7と上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13とを結ぶ送風ダクト14,15とを示すとともに、熱交換器4の上流である吸込口2の前縁部2aに設置した前側の導入ノズル16および後縁部2bに設置した後側の導入ノズル18と、ファンケーシング7と前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18とを結ぶ送風ダクト17,19とを示している。
【0015】
また、熱交換器4で冷媒と熱交換した空気を吹出口3から吹き出すクロスフローファン5と、熱交換器4の側部に配置されるファンケーシング7に収納されたシロッコファン8と、シロッコファン8から送風ダクト14により空気が送られ吹出口3の上縁部3aに設置した上側の吹出ノズル12(図3および図4参照)と、上側の吹出ノズル12の一側を支持するエアカプラ141と、送風ダクト15により空気が送られ吹出口3の下縁部3bに設置した下側の吹出ノズル13(図3および図4参照)と、下側の吹出ノズル13の一側を支持するエアカプラ151と、上側の吹出ノズル12の他側に連係されて上側の吹出ノズル12を駆動する駆動モータ121および歯車122からなる連係部123と、下側の吹出ノズル13の他側に連係されて下側の吹出ノズル13を駆動する駆動モータ131および歯車132からなる連係部133とを示すとともに、シロッコファン8から送風ダクト17により空気が送られる前側の導入ノズル16(図3および図4参照)と、送風ダクト19により空気が送られる後側の導入ノズル18(図3および図4参照)とを示している。
【0016】
吸込口2から吸い込まれた吸込空気は、熱交換器4で冷媒と熱交換されたのち、フロントガイダ9およびリヤガイダ10と、フロントガイダ9およびリヤガイダ10間の両側壁11a,11bとでガイドされて、ファンモータ6で駆動されるクロスフローファン5により、調和空気として吹出口3から吹き出されることで被空調室の空気調和が行われる。
【0017】
吸込口2の前縁部2aには、熱交換器4を構成する前部熱交換部41の上下中央から、噴出口16aを前部熱交換部41の下端側に向けた前側の導入ノズル16が設置され、後縁部2bには、熱交換器4を構成する後部熱交換部42の上下中央から、噴出口18aを後部熱交換部42の下端側に向けた後側の導入ノズル18が設置されている。
【0018】
前側の導入ノズル16を設置したことで、開閉パネル1bの裏面1cとの間隙が下方に行くにしたがって徐々に狭くなるためクロスフローファン5で空気を行き渡らせにくい前部熱交換部41の下端部に空気を供給できるので、この前部熱交換部41の下端部による熱交換効率を向上できるようになる。
【0019】
また、後側の導入ノズル18を設置したことで、背面板1dとの間隙が下方に行くにしたがって徐々に狭くなるためクロスフローファン5で空気を行き渡らせにくい後部熱交換部42の下端部に空気を供給できるので、この後部熱交換部42の下端部による熱交換効率を向上できるようになる。
【0020】
本体1の前面下部に備えた吹出口3の上縁部3aには、フロントガイダ9に連続して空気通路を延長するように中空で板状の上側の吹出ノズル12が、吹出口3の下縁部3bには、リヤガイダ10に連続して空気通路を延長するように中空で板状の下側の吹出ノズル13がそれぞれ設置されている。
【0021】
これにより、上側の吹出ノズル12に設けられた後述する噴出口12aおよび下側の吹出ノズル13に設けられた後述する噴出口13aから噴出した空気の流れを、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13の表面に沿わせることにより、吹出口3から吹き出される調和空気が、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13に直接当たらないようにすることで空気抵抗によるロスが生じないようにしている。
【0022】
次に、熱交換器4の下端部に空気を供給できて、熱交換器4の下端部による熱交換効率を向上できるようになり、導入ノズル16,18から空気が噴出されることで、吸込口2から吸い込まれる空気が導入ノズル16,18からの空気に誘引されて熱交換器4の全域に空気が行き渡りやすくなり、また、吹出口3から吹き出される調和空気が、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13により空気抵抗を減らし、且つ上下方向の風向を偏向できる構成について、順次、添付図に基づいて以下に説明する。
【0023】
前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18は、図1乃至図4に示すように、吸込口2の前縁部2aに設けられた前側の導入ノズル16が、熱交換器4を構成する前部熱交換部41の上下中央から下端側に噴出口16aを向けて開閉パネル1bの裏面1cに接合され、吸込口2の後縁部2bに設けられた後側の導入ノズル18が、熱交換器4を構成する後部熱交換部42の上下中央から下端側に噴出口18aを向けて背面板1dに接合されている。
【0024】
また、前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18に空気を送るための後述するシロッコファン8と、吸気部71および吐出部72を有してシロッコファン8を収納するファンケーシング7とからなる送風機と、前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18とファンケーシング7とを結び、送風機からの空気を前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18に供給する送風ダクト14および送風ダクト15とを本体1内の一側部に配設することで、本体1の奥行き寸法が大型化しないようにしている。
【0025】
前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18に空気を供給するためのファンケーシング7およびシロッコファン8と、後述する上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13に空気を供給するためのファンケーシング7およびシロッコファン8とは共通であって、同じシロッコファン8によって前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18と、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13とに空気が供給される。ただし、これに限らず、図示しないシロッコファンを複数設け、前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18と、上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13とに空気が供給される構成であってもよい。また、ファンケーシング7およびシロッコファン8は本体1外の一側部に設けられてもよい。
【0026】
次に、前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18からの空気によって吸込口2からの吸込空気を誘引する作用について説明する。
【0027】
前側の導入ノズル16および後側の導入ノズル18にシロッコファン8によって送出された空気は、噴出口16aおよび噴出口18aから熱交換器4を構成する前部熱交換部41および後部熱交換部42の下端部に向けて噴出される。
【0028】
その際、噴出口16aおよび噴出口18aから噴出される空気の速度を、クロスフローファン5によって吸込口2から吸い込まれる空気よりも高速に設定し、噴出口16aおよび噴出口18aから噴出された空気が開閉パネル1bの裏面1cや背面板1dに沿って流れるようにすることで、吸込口2から吸い込まれた空気の一部を、噴出口16aおよび噴出口18aから噴出された空気の流れで誘引することができる。
【0029】
これにより、吸込口2からの吸込空気は、クロスフローファン5のみによる場合よりも増量される。また、その一部が前部熱交換部41の下端およびその近傍と、後部熱交換部42の下端およびその近傍とに行き届くようになる。なお、本実施例においては、開閉パネル1bの裏面1cや背面板1dの熱交換器4側は平面状になっていることが望ましいが、噴出口16aおよび噴出口18aから噴出された空気が沿って流れる形状であれば、これに限らない。
【0030】
上側の吹出ノズル12は、図1乃至図5に示すように、ファンケーシング7の吸気部71から吸い込まれた空気を、シロッコファン8により送風ダクト14で導いて、吹出ノズル12の下面に形成した噴出口12aから噴出することにより、コアンダ面12fによるコアンダ効果により下面のディフューザ部12gをなすディフューザ面12g1に沿うように流出する。
【0031】
同様に、下側の吹出ノズル13は、吸気部71から吸い込まれた空気を、送風ダクト15で導いて吹出ノズル13の上面に形成した噴出口13aから噴出することにより、コアンダ面13fによるコアンダ効果により上面のディフューザ部13gをなすディフューザ面13g1に沿うように流出する。
【0032】
シロッコファン8は、吸込口2から吸い込まれた空気の一部を吸気する吸気部71と、送風ダクト14,15に夫々接続される吐出部72,73とを備えて、本体1内の側部に設けられたファンケーシング7内に収納されている。そのため、図3および図4に破線で示す風向制御用送風ファン109が、上述した背景技術と同様に本体1内の前面下部に設置される場合に較べて、この風向制御用送風ファン109を設置するスペースが不要になるため、本体1の奥行き寸法は図3および図4に示す寸法Aだけ小型化できる。
【0033】
シロッコファン8は、本体1内の一側部に設けられたファンモータ81によって駆動される。なお、シロッコファン8は、クロスフローファン5と同軸状に配置されることで、シロッコファン8用のファンモータ81に代えて、クロスフローファン5を駆動するファンモータ51によって駆動されるようにしてもよい。
【0034】
図5に示すように、上側の吹出ノズル12は、中空で板状に形成されその下面のディフューザ部12gおよびコアンダ面12fの後部熱交換部から吹出口3の前方に向けた噴出口12aを有して、フロントガイダ9に連続した送風路を構成し、下側の吹出ノズル13は、中空で板状に形成されその上面のディフューザ部13gおよびコアンダ面13fの後部熱交換部から吹出口3の前方に向けた噴出口13aを有して、リヤガイダ10に連続した送風路を構成している。
【0035】
上側の吹出ノズル12は、一側を吹出口3の上部に設けた枢支部124で回動可能に枢支し、他側を送風ダクト14に連結されたエアカプラ141で回動可能に枢支して、上下方向に回動できるようにしている。下側の吹出ノズル13は、一側を吹出口3の下部に設けた枢支部134で回動可能に枢支し、他側を送風ダクト15に連結されたエアカプラ151で回動可能に枢支して、上下方向に回動できるようにしている。
【0036】
上側の吹出ノズル12は、図2および図3(B)に示すように、枢支部124およびエアカプラ141で回動可能に枢支され、歯車122からなる連係部123に連係された駆動モータ121で駆動されて上下方向に回動し、下側の吹出ノズル13は、図2および図4(B)に示すように、枢支部134およびエアカプラ151で回動可能に枢支され、歯車132からなる連係部133に連係された駆動モータ131で駆動されて上下方向に回動する。
【0037】
上側の吹出ノズル12の後端部には、図5に示すように、内壁12bと外壁12cとが互いに近づくようにループ状または折曲げ形状で配置されている。内壁12bと外壁12cとの間には、空気を高速で噴出させるための噴出口12aが、中空になっている吹出ノズル12の内部から下方のコアンダ面12fに向かって入口側12dから徐々に狭くする間隔が形成され、その間隙はこのコアンダ面12fで出口側12eが開口するように形成されている。
【0038】
上側の吹出ノズル12の中空部より狭く形成された噴出口12aの出口側12eは、コアンダ面12fを含む外壁12cの表面に連続して形成されている。噴出口12aの外壁12cは、コアンダ面12fの下流側に配置されたディフューザ部12gと、ディフューザ部12gの下流側に配置されたガイド部12hに連続している。
【0039】
シロッコファン8によって、上側の吹出ノズル12に形成された噴出口12aからコアンダ面12fおよびディフューザ部12gに沿うように噴出される空気は、吹出口3からクロスフローファン5によって吹き出される調和空気流よりも速い速度で噴出することで、この調和空気流がディフューザ部12gの表面寄りに誘引される。
【0040】
下側の吹出ノズル13の後端部には、図5に示すように、内壁13bと外壁13cとが互いに近づくようにループ状または折曲げ形状で配置されている。内壁13bと外壁13cとの間には、空気を高速で噴出させるための噴出口13aが、中空になっている吹出ノズル13の内部から上方のコアンダ面13fに向かって入口側13dから徐々に狭くする間隔が形成され、その間隙はこのコアンダ面13fで出口側13eが開口するように形成されている。
【0041】
下側の吹出ノズル13の中空部より狭く形成された噴出口13aの出口側13eは、コアンダ面13fを含む外壁13cの表面に連続して形成されている。噴出口13aの外壁13cは、コアンダ面13fの下流側に配置されたディフューザ部13gと、ディフューザ部13gの下流側に配置されたガイド部13hに連続している。
【0042】
シロッコファン8によって、下側の吹出ノズル13に形成された噴出口13aからコアンダ面13fおよびディフューザ部13gに沿うように噴出される空気は、吹出口3からクロスフローファン5によって吹き出される調和空気流よりも速い速度で噴出することで、この調和空気流がディフューザ部13gの表面寄りに誘引される。
【0043】
上側の吹出ノズル12は、吹出口3の側に向けた噴出口12aに連続して凸曲面状に形成されたコアンダ面12fを有しており、噴出口12aは、空気をコアンダ面12fに沿って噴出するように配置されている。
【0044】
下側の吹出ノズル13は、吹出口3の側に向けた噴出口13aに連続して凸曲面状に形成されたコアンダ面13fを有しており、噴出口13aは、空気をコアンダ面13fに沿って噴出するように配置されている。
【0045】
上側の吹出ノズル12のコアンダ面12fおよび下側の吹出ノズル13のコアンダ面13fは、これらコアンダ面12fおよびコアンダ面13fの表面に近接して設けられた噴出口12aおよび噴出口13aを出た空気(流体)の流れがコアンダ効果を示す、既知の形状になっている。噴出口12aおよび噴出口13aから噴出された空気(流体)は、コアンダ効果によって、コアンダ面12fおよびコアンダ面13fに沿ってほぼ「くっついて」または「貼りついて」流れようとする。
【0046】
ここで、熱交換器4で冷媒と熱交換されて吹出口3から吹き出される調和空気を一次空気流とし、コアンダ面12fおよびコアンダ面13fによってコアンダ効果を示す噴出空気を二次空気流として、空気の流れについて以下に説明する。
【0047】
「一次空気流の速度」<「二次空気流の速度」とすることで、一次空気流が二次空気流に誘引されて風向偏向される。そのため、図3(A)および図3(B)に示すように、上側の吹出ノズル12を上方に回動することで、この吹出ノズル12の表面a,a1,a2に沿ってほぼ「くっついて」または「貼りついて」流れようとする二次空気流に一次空気流が誘引されて、この一次空気の流れが上方に偏向される。
【0048】
これにより、吹出口3から一次空気流として調和空気を水平に吹き出す際、調和空気の流れが上方に向けて偏向されることで遠方まで届くようになり、被空調室内の広範囲に調和空気を行き届かせて快適な空気調和を実現できるようになる。
【0049】
その際、一次空気流が二次空気流に誘引されることで、例えば、吹出口3に設けられた図示しない上下風向板によって強制的に風向偏向される場合のように、一次空気流が上下風向板に当たって空気抵抗によるロスが生じる虞がないため送風性能が良好になり、また、騒音の原因になる虞がないため静かである。
【0050】
なお、上側の吹出ノズル12を上方に回動するのと同時に、下側の吹出ノズル13を上方に回動して上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13を略平行状態にすることで、吹出口3から一次空気流として吹き出される調和空気を拡散させることなく効率よく遠方まで届かせることができる。
【0051】
また、調和空気を下方に吹き出す際、図4(A)および図4(B)に示すように下側の吹出ノズル13を下方に回動することで、この吹出ノズル13の表面b,b1,b2に沿ってほぼ「くっついて」または「貼りついて」流れようとする二次空気流に一次空気流が誘引されて、この一次空気の流れが下方に向けて偏向される。
【0052】
これにより、運転時に吹出口3から一次空気流として調和空気を吹き出した際、調和空気の流れが下方に向けて偏向されることで床面まで届くようになり、床面に調和空気を行き届かせて快適な空気調和を実現できるようになる。
【0053】
その際、一次空気流が二次空気流に誘引されることで、例えば、吹出口3に設けられた図示しない上下風向板によって強制的に風向偏向される場合のように、一次空気流が上下風向板に当たって空気抵抗によるロスが生じる虞がないため送風性能が良好になり、また、騒音の原因になる虞がないため静かである。
【0054】
なお、下側の吹出ノズル13を下方に回動するのと同時に、上側の吹出ノズル12を下方に回動して上側の吹出ノズル12および下側の吹出ノズル13を略平行状態にすることで、吹出口3から一次空気流として吹き出される調和空気を拡散させることなく効率よく床面まで届かせることができる。
【0055】
または、上側の吹出ノズル12に、図4(A)および図4(B)に示すように小形の補助ルーバ20を設けた構成にしてもよい。補助ルーバ20は、枢支部204で回動可能に枢支され、歯車202からなる連係部203に連係された駆動モータ201で駆動されて下方に回動することで、噴出口12aから噴出した空気を下方に導いて、吹出口3から二次空気流として吹き出される調和空気の一部を下方に誘引できる。なお、小形の補助ルーバ20は、図示はしないが、上側の吹出ノズル12に限らずフロントガイダ9に設けられてもよい。
【0056】
吹出口3に設けられた上側の吹出ノズル12のディフューザ部12gは、フロントガイダ9に連続するように形成されたディフューザ面12g1を有し、下側の吹出ノズル13のディフューザ部13gは、リヤガイダ10に連続するように形成されたディフューザ面13g1を有している。
【0057】
上側の吹出ノズル12のガイド部12hは、ディフューザ面12g1に対し角度をなして配置されたガイド面12h1を有しており、ガイド面12h1の下流側は、外方に拡がったフレア面12iで終端している。また、下側の吹出ノズル13のガイド部13hは、ディフューザ面13g1に対し角度をなして配置されたガイド面13h1を有しており、ガイド面13h1の下流側は、外方に拡がったフレア面13iで終端している。
【0058】
上側の吹出ノズル12のディフューザ部12gおよび下側の吹出ノズル13のディフューザ部13gが、フロントガイダ9およびリヤガイダ10に夫々連続するディフューザ面12g1およびディフューザ面13g1を有したことで、熱交換器4で冷媒と熱交換されクロスフローファン5の下流側に送出される調和空気は、フロントガイダ9に連続するディフューザ面12g1およびリヤガイダ10に連続するディフューザ面13g1に沿って被空調室に吹き出される。
【0059】
以上説明したように、本発明の構成によれば、熱交換器4の上流に、噴出口16a,18aを前部熱交換部41および、または後部熱交換部42の下端側に向けた前側の導入ノズル16および、または後側の導入ノズル18が配置されることで、開閉パネル1bの裏面1cおよび背面板1dとの間隙が下方に行くにしたがって徐々に狭くなるためクロスフローファン5で空気を行き渡らせにくい前部熱交換部41および、または後部熱交換部42の下端部に空気を供給できるので、この前部熱交換部41および、または後部熱交換部42の下端部による熱交換効率を向上できる空気調和機となる。
【0060】
また、噴出口16aおよび噴出口18aから噴出される空気の速度を、クロスフローファン5によって吸込口2から吸い込まれる空気よりも高速に設定し、噴出口16aおよび噴出口18aからの空気が開閉パネル1bの裏面1cや背面板1dに沿って流れることで、吸込口2からの空気の一部を、噴出口16aおよび噴出口18aから噴出された空気の流れで誘引することができて、吸込口2からの吸込空気は、クロスフローファン5のみによる場合よりも増量できる。
【符号の説明】
【0061】
1 本体
1a 前面パネル
1b 開閉パネル
1c 開閉パネルの裏面
1d 背面板
2 吸込口
2a 前縁部
2b 後縁部
3 吹出口
3a 上縁部
3b 下縁部
4 熱交換器
5 クロスフローファン
6 ファンモータ
7 ファンケーシング
71 吸気部
72,73,74,75 吐出部
8 シロッコファン
81 ファンモータ
9 フロントガイダ
10 リヤガイダ
11a,11b 両側壁
12 上側の吹出ノズル
12a 噴出口
12b 内壁
12c 外壁
12d 入口側
12e 出口側
12f コアンダ面
12g ディフューザ部
12g1 ディフューザ面
12h ガイド部
12h1 ガイド面
12i フレア面
121 駆動モータ
122 歯車
123 連係部
124 枢支部
13 下側の吹出ノズル
13a 噴出口
13b 内壁
13c 外壁
13d 入口側
13e 出口側
13f コアンダ面
13g ディフューザ部
13g1 ディフューザ面
13h ガイド部
13h1 ガイド面
13i フレア面
131 駆動モータ
132 歯車
133 連係部
134 枢支部
14 送風ダクト
141 エアカプラ
15 送風ダクト
151 エアカプラ
16 前側の導入ノズル
16a 噴出口
17 送風ダクト
18 後側の導入ノズル
18a 噴出口
19 送風ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に吸込口と吹出口とを備え、前記吸込口と前記吹出口とを結ぶ空気通路に熱交換器とクロスフローファンとを配置し、前記熱交換器で冷媒と熱交換された調和空気を前記吹出口から吹き出す空気調和機であって、
前記熱交換器の上流に、前記熱交換器の下端に噴出口を向けた導入ノズルを設け、前記本体内の一側部に送風機と、前記導入ノズルと前記送風機とを結び、同送風機からの空気を前記導入ノズルに供給する送風ダクトとを配置したことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
また、前記熱交換器が、前部熱交換部と後部熱交換部とを有してΛ(ラムダ)状に形成され、前記導入ノズルが、前記前部熱交換部の熱交換器の下端に噴出口を向けた前部熱交換部の導入ノズルと、前記後部熱交換部の熱交換器の下端に噴出口を向けた後部熱交換部の導入ノズルとからなり、前記送風ダクトが、前記前部熱交換部の導入ノズルと前記送風機とを結ぶ前部熱交換部の送風ダクトと、前記後部熱交換部の導入ノズルと前記送風機とを結ぶ後部熱交換部の送風ダクトとからなることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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