説明

空気調和機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は空気調和機に関する。より詳しくは、ヒートポンプ方式の空気調和機に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒートポンプ方式の空気調和機としては、概略、図4に示すように、圧縮機4と、室外熱交換器5と、受液器9と、電動式の膨張弁6と、室内熱交換器3とをこの順に備えたものがある。41,42,43,44および45は冷媒配管である。例えば冷房運転中は、制御装置1が出力した制御信号に基づいて、膨張弁6を所定の開度に設定した状態で圧縮機4を駆動して、図中に示す矢印の向きに冷媒回路に沿って冷媒を循環させる。これにより、凝縮器として働く室外熱交換器5で冷媒から室外に熱を放出する一方、蒸発器として働く室内熱交換器3で室内から冷媒に熱を取り込む。このとき、蒸発器として働く室内熱交換器3の出口の過熱度を制御するために、膨張弁6は一定の開度に設定されている。運転停止時には、制御装置1が発生した停止指令に基づいて、圧縮機4を停止すると同時に膨張弁6を全閉にしている。これにより、運転停止中に冷媒回路内で冷媒が移動するのを防止している。
【0003】なお、暖房運転中は、図示しない四路切換弁によって冷媒の循環の向きを上とは逆にする。そして、凝縮器として働く室内熱交換器3で冷媒から室内に熱を放出する一方、蒸発器として働く室外熱交換器5で室外から冷媒に熱を取り込む。運転停止のための動作は上と同じである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば冷房運転中に、蒸発器として働く室内熱交換器3の出口がガス不足気味になっていたり、運転停止期間が長いために、室内熱交換器3側から圧縮機4や膨張弁6を通して室外熱交換器5側へ冷媒が漏れたりすることがある。この状態で、一旦停止した冷房運転を再開した場合、室内熱交換器3から圧縮機4までの配管41が長いことや、受液器9から膨張弁6までの冷媒配管44が比較的長いことから、圧縮機4の起動直後に圧縮機4の吸込側48で冷媒が不足する。このため、低圧圧力異常や吐出ガス高温異常(圧縮機の冷却不足に起因する)による異常停止が発生し、また、これに伴って圧縮機4の耐久性が低下するという問題がある。なお、この問題は、暖房運転を一旦停止した後再開する場合にも、同様に生ずる。
【0005】そこで、この発明の目的は、運転を一旦停止した後再開する場合に、圧縮機の吸込側の冷媒不足を防止でき、したがって異常停止の発生や圧縮機の耐久性低下を防止できる空気調和機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の空気調和機は、少なくとも圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器とをこの順に有する閉じた冷媒回路を備え、運転中は制御部が出力した制御信号に基づいて上記膨張弁を所定の開度に設定した状態で上記圧縮機を駆動して、上記冷媒回路に沿って冷媒を循環させて上記凝縮器で冷媒から外部に熱を放出する一方、上記蒸発器で外部から冷媒に熱を取り込み、運転停止中は上記制御部が発生した停止指令に基づいて上記圧縮機を停止するとともに上記膨張弁を全閉にする空気調和機において、上記制御部が停止指令を発生した時点で、上記膨張弁をその停止指令発生前の開度よりも大きい開度に所定時間だけ設定し、続いて上記圧縮機の停止と上記膨張弁の全閉とを同時に実行することを特徴とする。
【0007】運転中、制御部が停止指令を発生する前の膨張弁の開度は、蒸発器の出口の過熱度を制御するために、一定の開度に設定されているものとする。この請求項1の空気調和機では、上記制御部が停止指令を発生した時点から、上記膨張弁をその停止指令発生前の開度よりも大きい開度に所定時間だけ設定する。この設定時間に、蒸発器の出口の過熱度を制御するための必要量を超える量の冷媒が膨張弁を通して蒸発器に送られる。上記設定時間が経過した時点で、上記圧縮機の停止と上記膨張弁の全閉とを同時に実行して、運転を停止する。この後、運転を再開した場合、蒸発器側である低圧側に冷媒が溜まっていることから、圧縮機の起動直後に圧縮機の吸込側に冷媒が十分に供給される。したがって、低圧圧力異常や吐出ガス高温異常による異常停止の発生や圧縮機の異常停止が防止される。この結果、運転が円滑に再開され、圧縮機の寿命が延びる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】図3に示す一実施形態のヒートポンプ方式の空気調和機は、制御装置11以外は図4に示したのと同じ構成であり、同一構成部は同一番号を付して説明を省略する。
【0010】冷房運転中は、制御部としての制御装置11が出力した制御信号に基づいて、図1(c),(d)に示すように室内ファン7および室外ファン8を回転させる。これとともに、図1(a),(b)に示すように膨張弁6を所定の開度に設定した状態で圧縮機4を駆動して、図3中に示す矢印の向きに冷媒回路に沿って冷媒を循環させる。これにより、凝縮器として働く室外熱交換器5で冷媒から室外に熱を放出する一方、蒸発器として働く室内熱交換器3で室内から冷媒に熱を取り込む。このとき、蒸発器として働く室内熱交換器3の出口の過熱度を制御するために、図1(a)に示すように、膨張弁6に一定のパルス(aパルス)を印加して、その開度を一定に設定している。なお、室内ファン7と圧縮機4とはインバータ(INV)制御を行っている。
【0011】この空気調和機は、運転停止のために図2に示すフローに従って動作する。すなわち、■ 制御装置11は、停止指令を発生すると(図2のS1)、図1(a)に示すように、その時点から10秒間だけ、停止指令発生前のaパルスに対して電圧が1.5倍のパルス(1.5aパルス)を膨張弁6に印加して、膨張弁6をその停止指令発生前の開度よりも大きい開度に設定する(図2のS2)。この10秒間に、図3に示す室内熱交換器3の出口の過熱度を制御するための必要量を超える量の冷媒が膨張弁6を通して室内熱交換器3に送られて、室内熱交換器3に過剰の冷媒が溜まる。
【0012】■ 図1(a),(b)に示すように、上記10秒間が経過した時点で、制御装置11は、圧縮機4の停止と膨張弁6の全閉とを同時に実行して、冷房運転を停止する(図2のS3)。また、この時点で、図1(c),(d)に示すように、室内ファン7を最低周波数の運転に切り替え、室外ファン8を停止(オフ)する。
【0013】このようにして冷房運転を一旦停止した後、冷房運転を再開した場合、室内熱交換器3に過剰の冷媒が溜まっていることから、圧縮機4の起動直後に冷媒配管41を通して圧縮機4の吸込側48に冷媒が十分に供給される。したがって、圧縮機4の吸込側48で低圧圧力異常が起こるのが防止される。また、圧縮機4の吐出側49で吐出ガス高温異常(圧縮機の冷却不足に起因する)が起こるのが防止される。このように、この空気調和機によれば、低圧圧力異常や吐出ガス高温異常による異常停止の発生を防止でき、それに伴って圧縮機の異常停止を防止することができる。この結果、圧縮機の寿命を延ばすことができる。
【0014】なお、暖房運転を行うためには、図示しない四路切換弁によって冷媒の循環の向きを上とは逆にする。そして、凝縮器として働く室内熱交換器3で冷媒から室内に熱を放出する一方、蒸発器として働く室外熱交換器5で室外から冷媒に熱を取り込む。運転停止のために、上と同じ動作をすることによって、同様の作用効果を奏することができる。すなわち、暖房運転を一旦停止した後、暖房運転を再開した場合、低圧圧力異常や吐出ガス高温異常による異常停止の発生を防止することができる。この結果、運転を円滑に再開でき、圧縮機の寿命を延ばすことができる。
【0015】なお、本発明では、圧縮機の停止前に膨張弁の開度を所定時間だけその前の膨張弁の開度より大きくしているが、圧縮機の起動前に膨張弁の開度を所定時間だけ大きくすることが考えられる。しかし、こうした場合は、長い配管が存在する場合には、冷媒が圧縮機の吸込側に到達するまでに時間がかかり、圧縮機の吸込側の冷媒不足を解消できない。また、圧縮機の起動前に膨張弁を開ける方法では、圧縮機の起動指令に対する応答性が悪くなる。
【0016】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1の空気調和機は、制御部が停止指令を発生した時点から、膨張弁をその停止指令発生前の開度よりも大きい開度に所定時間だけ設定するので、その間に蒸発器側に冷媒が溜まる。したがって、運転を一旦停止した後再開する場合に、圧縮機の起動直後に圧縮機の吸込側に冷媒を十分に供給でき、したがって、低圧圧力異常や吐出ガス高温異常による異常停止の発生を防止することができる。この結果、運転を円滑に再開でき、圧縮機の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態の空気調和機の動作タイミングを示す図である。
【図2】 上記空気調和機の運転停止のための動作フローを示す図である
【図3】 上記空気調和機の構成を模式的に示す図である。
【図4】 従来の空気調和機の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
3 室内熱交換器
4 圧縮機
5 室外熱交換器
6 膨張弁
9 受液器
11 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも圧縮機(4)と、凝縮器(5)と、膨張弁(6)と、蒸発器(3)とをこの順に有する閉じた冷媒回路を備え、運転中は制御部(11)が出力した制御信号に基づいて上記膨張弁(6)を所定の開度に設定した状態で上記圧縮機(4)を駆動して、上記冷媒回路に沿って冷媒を循環させて上記凝縮器(5)で冷媒から外部に熱を放出する一方、上記蒸発器(3)で外部から冷媒に熱を取り込み、運転停止中は上記制御部(11)が発生した停止指令に基づいて上記圧縮機(4)を停止するとともに上記膨張弁(6)を全閉にする空気調和機において、上記制御部(11)が停止指令を発生した時点で、上記膨張弁(6)をその停止指令発生前の開度よりも大きい開度に所定時間だけ設定し、続いて上記圧縮機(4)の停止と上記膨張弁(6)の全閉とを同時に実行することを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3348597号(P3348597)
【登録日】平成14年9月13日(2002.9.13)
【発行日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−169122
【出願日】平成8年6月28日(1996.6.28)
【公開番号】特開平10−19394
【公開日】平成10年1月23日(1998.1.23)
【審査請求日】平成12年8月31日(2000.8.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−221664(JP,A)
【文献】実開 昭59−98247(JP,U)