説明

空気調和装置の室内機

【課題】給気ダクトを備える室内機において、室内側熱交換器の熱交換の性能を低下させることなく小型化された室内機を提供する
【解決手段】吸込口6は、本体ケーシング5の正面視においてクロスフローファン40と重なる領域よりも上方に設ける。また、加湿ダクト20の開口部55は、室内側熱交換器36の下部すなわち下部前面側熱交換器36abに対向する位置に配置する。吸込口6からクロスフローファン40への室内空気の強い流れの外に位置する室内側熱交換器36の下部に、加湿ダクト20の開口部55を対向させることで、室内空気の熱交換にあまり活用されていない室内側熱交換器36の領域を活用し、その周囲の空間を有効に利用することで小型化が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置の室内機に関し、特にエアフィルタを清掃する機構を備える空気調和装置の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の室内機は、本体ケーシング内に、室内側熱交換器を備えている。室内機は、送風ファンにより、室内空気を本体ケーシング内に吸い込み、室内側熱交換器を通して本体ケーシング外に吹き出している。室内側熱交換器においては、室内空気の加熱又は冷却によって空気の調和が行われるため、この吸い込まれた室内空気に塵埃が含まれていると、熱交換器や送風ファンに塵埃が付着し、熱交換能力の低下や機器の故障の原因となる。そこで、空気調和装置の空気吸込口には、吸い込んだ空気に含まれる塵埃の侵入を防ぐため、エアフィルタが取り付けられている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
また、室内機には、加湿などの目的で室内空気では補いきれない水分などを外気から取り入れるため、加湿ダクトなどの給気ダクトが設けられる場合がある。外気は空気調和が行われた後の空気と異なるため、室内空気と同様に室内側熱交換器による熱交換が必要になる。
【特許文献1】特開2002−98367号公報
【特許文献2】特開2002−98368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような給気ダクトを備える室内機においては、給気ダクトが供給する外気に対して吸込口の下流側に給気ダクトの開口部が設けられ、室内空気と一緒に空気調和が行われる。そのため、給気ダクトが通風抵抗となって室内側熱交換器の性能の向上が図れないか、または室内側熱交換器の性能の向上を図ることを優先して室内機が大型化する傾向がある。
【0005】
本発明の課題は、給気ダクトを備える室内機において、室内側熱交換器の熱交換の性能を低下させることなく小型化された室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る空気調和装置の室内機は、本体と給気ダクトと室内側熱交換器と送風ファンとを備えている。本体は、吸込口と吸込口の下方に配置された吹出口とを有する。給気ダクトは、吹出口と吸込口との間に配置され、吸込口から吹出口に至る通風経路に対して給気を行う開口部を有する。室内側熱交換器は、吸込口の下流側に配置されている。送風ファンは、室内側熱交換器の下流側であって正面視において給気ダクトよりも上に出るように配置されている。吸込口は、本体の背面を除く全ての領域うち正面視において送風ファンと重なる領域よりも上方に設けられている。また、給気ダクトの開口部は、室内側熱交換器の下部に対向する位置に配置されている。
【0007】
本発明によれば、吸込口が正面視において送風ファンと重なる領域よりも上方に設けられているので、給気ダクトの開口部が対向する室内側熱交換器の下部は、吸込口から送風ファンへの室内空気の強い流れの外に位置することになる。このような室内側熱交換器の下部に給気ダクトの開口部から外気が供給されるので、室内空気の熱交換にあまり活用されていない室内側熱交換器の下部を用いて外気に対する熱交換を行うことができることとなる。そのため、熱交換の性能を落とすことなく、室内機の小型化を図ることができる。
【0008】
第2発明に係る空気調和装置の室内機は、第1発明の空気調和装置の室内機であって、吸込口から吸い込まれた室内空気の塵埃を捕集する第1エアフィルタをさらに備えている。第1エアフィルタは、吸込口の下流側に配置される。そして、給気ダクトは、着脱可能な第2エアフィルタを有する。
【0009】
本発明によれば、第2エアフィルタにより外気の塵埃を取り除けることから、第1エアフィルタを給気ダクトの開口部まで延ばさなくても給気の塵埃を取り除けるので、第1エアフィルタの着脱が容易で、掃除が簡単に行える。
【0010】
第3発明に係る空気調和装置の室内機は、第2発明の空気調和装置の室内機であって、第1エアフィルタから除去された塵埃を入れておくダストボックスをさらに備えている。このダストボックスは、給気ダクトの上方に配置される。
【0011】
本発明によれば、ダストボックスを設けることで吸込口から給気ダクトに至るまでの距離を長くできることから、ダストボックスの高さ分だけ室内側熱交換器の面積を大きくできるので、給気ダクトの給気による熱交換対象の気体の量の増加によって空気調和の性能が低下するのを抑えることができる。また、ダストボックスの高さの分だけ室内空気の流路と給気される気体の流路とを分離し易くなる。
【0012】
第4発明に係る空気調和装置の室内機は、第1発明の空気調和装置の室内機であって、吸込口から吸い込まれた室内空気の塵埃を捕集する第1エアフィルタと、第1エアフィルタに付着した塵埃の掃除をするフィルタ清掃機構とをさらに備えている。そして、第1エアフィルタは吸込口の下流側に配置され、フィルタ清掃機構は、給気ダクトの上方に配置される。
【0013】
本発明によれば、給気ダクトの厚みにより生じる給気ダクト上方の空間にフィルタ清掃機構を設けることにより、フィルタ清掃機構を収めるのに給気ダクトの厚みにより生じる空間を活用することができ、フィルタ清掃機構を有する室内機の小型化を図ることができる。
【0014】
第5発明に係る空気調和装置の室内機は、第1発明から第4発明のいずれかの空気調和装置の室内機であって、給気ダクトの側方に側面視において給気ダクトと重なる位置に並べて配置された電装品箱をさらに備えている。
【0015】
本発明によれば、給気ダクトを設けることにより室内機の幅方向に生じる空間を使って給気ダクトと電装品箱を並べて配置することで、正面視において送風ファンと重なる領域よりも上方に吸込口を設けることにより吸込口の大きさが制限されるのを電装品箱がなくなった側方に吸込口や室内側熱交換器を広げることで補うことができる。その結果、熱交換の性能を落とすことなく、室内機の小型化を図ることができる。
【0016】
第6発明に係る空気調和装置の室内機は、第1発明から第5発明のいずれかの空気調和装置の室内機であって、吸込口が天面にのみ設けられている。
【0017】
本発明によれば、吸込口が天面にのみ設けられ、吸込口から吸い込まれる室内空気の流れは下方に向かうため、給気ダクトが室内空気の通風抵抗を増加させず、給気ダクトが室内空気の通風の邪魔になって室内空気の熱交換に悪い影響を与えるのを防ぐことができる。
【0018】
なお、本発明において天面に設けられている吸込口とは、送風ファンの上端より上の面に設けられているものをいう。
【発明の効果】
【0019】
第1発明に係る空気調和装置の室内機では、吸込口を正面視において送風ファンと重なる領域よりも上方に設けかつ、給気ダクトの開口部を室内側熱交換器の下部に対向する位置に配置しているので、熱交換の性能の低下を抑えつつ室内機の小型化を図ることができる。
【0020】
第2発明に係る空気調和装置の室内機では、第2エアフィルタによってさらに小型化が行い易くなると共に、第2エアフィルタを設ける際のメンテナンスの手間を省くことができる。
【0021】
第3発明に係る空気調和装置の室内機では、ダストボックスを給気ダクトの上方に配置することにより、給気ダクトを設けることによる熱交換の性能の低下を抑制することができる。
【0022】
第4発明に係る空気調和装置の室内機では、給気ダクトの上方にフィルタ清掃機構を配置しているので、フィルタ清掃機構を備える室内機の小型化を図ることができる。
【0023】
第5発明に係る空気調和装置の室内機では、電装品箱を側面視において給気ダクトと重なる位置に並べて配置しているので、さらに小型化することができる。
【0024】
第6発明に係る空気調和装置の室内機では、給気ダクトが通風の邪魔にならないので小型化にともなう熱交換の性能低下を抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
<空気調和装置の構成の概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る室内機を含む空気調和装置の全体構成を示す概略図である。空気調和装置1は、室内の壁に取り付けられる室内機2と、室外に設置される室外機3とを備えている。室内機2と室外機3とは、冷媒配管、加湿ホース、伝送線及び通信線などを集合した集合連絡管4によって接続されている。熱交換の面から空気調和装置1を見ると、例えば、室内機2の室内側熱交換器(冷房時は蒸発器/暖房時は凝縮器)及び、室外機3の圧縮機と室外側熱交換器(冷房時は凝縮器/暖房時は蒸発器)と膨張弁などが、集合連絡管4の中を通る冷媒配管で連結されて冷媒回路を構成している。一方、制御の面から空気調和装置1を見ると、リモートコントローラなどの制御端末から指令を受けて室内機2のファンモータなどの室内側機器を制御するための電装品箱が室内機2に設けられ、室外機3のファンモータなどの室外側機器を制御するための電装品箱が室外機3に設けられている。そして、室内機2の電装品箱と室外機3の電装品箱とが集合連絡管4の中を通る伝送線で接続されている。
【0027】
<空気調和装置の室内機の構成>
(室内機の正面構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る空気調和装置の室内機の正面図である。室内機2は、本体ケーシング5の上部に吸込口6、下部に吹出口7を備え、前面が前面パネル8で覆われている。そのため、前面から室内空気の吸い込みは行われず、室内機2はもっぱら本体ケーシング5の上部から室内空気の吸い込みを行っており、室内空気の循環は室内機2の天面5aの側から室内機2の底面5cの側に向けて行われる。吹出口7には、運転停止時に閉じ、運転時に開く、2枚の風向調節羽根9が設けられている。この風向調節羽根9によって室内機2の上下方向の風向きを調節している。図2は、運転停止状態を示しており、吹出口7の開口部が風向調節羽根9で閉じられている状態を示している。なお、前面パネル8は、パネル上部8a近傍の支点を中心に回動自在に本体ケーシング5に取り付けられている。
【0028】
前面パネル5の直ぐ下の吹出口7の上辺に沿って、表示用LED10が並び、受信部11などが設けられている。このように、室内機2の幅方向のほぼ中央部に集中して、表示機能や制御に必要なセンシング機能が配置されている。表示用LED10などの電気部品は後述する電装品箱に接続される。
【0029】
図3は、図2の室内機の前面パネル8を外した状態で、正面から向かって右斜め上(C方向)から見た状態を示す斜視図である。また、図4は、図2の室内機の前面パネルを外した状態で、正面から向かって右斜め下(D方向)から見た状態を示す斜視図である。図3及び図4に示すように、室内機2の天面5a、前面5b、底面5c及び側面5eが、本体ケーシング5の一部をなすプラスチック製の前面グリル12で覆われている。前面パネル8の裏側に当たる前面グリル12の前部には、表示パネル13が設けられている。表示パネル13は電装品箱に接続されているが、電装品箱は、表示パネル13の裏側に配置されているため、前面グリル12に隠れて図3及び図4には表れていない。表示パネル13の表示は、表示パネル13が前面パネル8で覆われた状態で、前面パネル8を透かして、前面側から室内機2を操作する使用者に見えるようになっている。
【0030】
表示パネル13の上方、換言すると電装品箱の直上に、室内機2の幅方向に細長く延びるフィルタ清掃部材14が配置されている。フィルタ清掃部材14は、後述するブラシを保持しており、ブラシによって後述するエアフィルタに付着した塵埃を掻き落としてエアフィルタの掃除を行う。図3及び図4には、エアフィルタを取り外した状態が示されている。
【0031】
フィルタ清掃部材14の上には、エアフィルタを保持すると共に清掃のためにエアフィルタを駆動するフィルタ清掃機構15が配置されている。エアフィルタはフィルタ清掃機構15のフレーム16を構成するアーム17の間に保持される。フィルタ清掃機構15は、本体ケーシング5の開口部19a,19bにおいて露出しており、前面パネル8を開いた状態で、エアフィルタの取替えができるように構成されている。また、フィルタ清掃部材14は、スライド式のロック部材18a,18b,18c,18dでフィルタ清掃機構15のフレーム16に着脱自在に固定される。メンテナンスの際には、このロック部材18a,18b,18c,18dによるフィルタ清掃部材14とフィルタ清掃機構15のフレーム16への固定を解いて本体ケーシング5の前面5aの側にフィルタ清掃部材14を引き出すことができるよう構成されている。フィルタ清掃部材14は、本体ケーシング5との関係では、本体ケーシング5の凹部に載置されているだけであり、本体ケーシング5に固定されてはいない。ロック部材18a,18b,18c,18dは、室内機2の中央へ向けて滑らせるとロックされ、側方に向けて滑らせるとロックが解除されるように設定されている。従って、図3において、ロック部材18a,18cはロックしている状態にあり、ロック部材18b,18dはロックを解除した状態にある。
【0032】
フィルタ清掃部材14と並べて、正面から見て本体ケーシング5の左側に、加湿ダクト20が形成されている。図4には、加湿ダクト20のフィルタケース21が見えている。
【0033】
(本体ケーシングの構造)
次に、図5から図7を用いて本体ケーシングの前面グリルについて説明する。図5は本体ケーシングの一部を構成する前面グリルの正面図、図6は前面グリルの平面図及び、図7は前面グリルの側面図である。既に説明したように、本体ケーシング5の前面5bには、前面パネル8が取り付けられる。前面グリル12の前部には、エアフィルタ(後述)等のメンテナンスをするための2つの開口部19a,19bがある。前面グリル12の前部から一段背面側に下がったところにストライプ状の凹凸が並ぶ装飾部25が形成されているので、前面グリル12に前面パネル8が取り付けられても、開口部19a,19bの上部は前面パネル8によって塞がれず、開口部19a,19bの上部が副吸込口6bとなる。前面グリル12の天面5aには、主吸込口6aが形成されている。副吸込口6bは、主吸込口6aに比べると一段下方に下がった位置に形成されているが、室内機2の上方に向かって設けられており、機能的には副吸込口6bも主吸込口6aと同等であって、天面5aに設けられているものということができる。なお、本発明において天面に設けられている吸込口とは後述する送風ファン(クロスフローファン)の上端より上の面に設けられているものをいうが、以上説明したように、開口部が天井に向かって開いている吸込口6a,6bのようなものが好ましい。
【0034】
主吸込口6aには、ビーム26が渡されている。前後に延びるビーム26は、前面グリル12の剛性を補強する以外に、主吸込口6aの下方に位置するエアフィルタの支持枠を押さえてエアフィルタの保持を助ける機能も有している。なお、エアフィルタは、開口部19a,19bの横幅よりも少し短い長方形状をしているが、エアフィルタと本体ケーシング5との間には、フィルタ清掃機構15のフレーム16などがあってエアフィルタと本体ケーシング5との間は塞がっている。そのため、主吸込口6a及び副吸込口6bから吸い込まれる室内空気は全てエアフィルタを通過することとなる。
【0035】
前面グリル12の開口部19a,19bの下には、凹部27が形成されている。この凹部27には、既に説明したようにフィルタ清掃部材14が嵌め込まれる。ところで、凹部27にフィルタ清掃部材14が載置されるだけであるため、前面グリル12からフィルタ清掃部材14には前面グリル12の振動は伝わり難くなっている。フィルタ清掃部材14は、ブラシが取り付けられたブラシ側部材と、ブラシが掻き落とした塵埃を入れておくダストボックスとを有するが、その構成については後述する。また、凹部27には、開口部28が形成されている。この開口部28を通じてフィルタ清掃機構15とフィルタ清掃部材14とが連結される。また、この開口部28において、フィルタ清掃機構15の駆動ギアとフィルタ清掃部材14の被駆動ギアが噛み合って、フィルタ清掃機構15からフィルタ清掃部材14に駆動力が伝達される。そして、フィルタ清掃部材14の被駆動ギアとともにブラシが回転させられる。凹部27にあるネジ穴29は、フィルタ清掃機構15を前面グリル12にネジで固定するためのものである。
【0036】
前面グリル12の凹部27の下には、図3や図4に示した表示パネル13が嵌め込まれる開口部30が形成され、開口部30の下には表示用LED10などの制御用電気部品のための複数の窓31が幅方向に並んで形成されている。開口部30や窓31の下に、吹出口7を構成する開口部32が形成されている。また、開口部30と同じ高さくらいのところに開口部30と並んで正面左側に、加湿ダクト20のフィルタカセット21のための取り出し口33が設けられている。
【0037】
(室内機の縦断面構造)
図8は、図2のA−A線における室内機の断面の概略を示す図であり、図9は、図2のB−B線における室内機の断面の概略を示す図である。図8及び図9に示すように、本体ケーシング5の天面5aの主吸込口6a及び副吸込口6bの下流側には、主吸込口6a及び副吸込口6bの全面に対向して2枚のエアフィルタ35a,35bが配置されている。図8に示すエアフィルタ35aが本体ケーシング5の幅方向の左半分を分担し、図9に示すエアフィルタ35bが本体ケーシング5の幅方向の右半分を分担している。エアフィルタ35a,35bのさらに下流側には室内側熱交換器36が配置されている。吸込口6を通過して室内側熱交換器36に到達する室内空気は全てエアフィルタ35a,35bを通過して塵埃の除去を受ける。
【0038】
室内側熱交換器36は、前面側熱交換器36aと背面側熱交換器36bとを側面視において逆V字状になるように連結して構成されている。天面5aから見る平面視において、前面側熱交換器36aが主吸込口6aのほぼ前面側半分に対向する位置に配置され、背面側熱交換器36bがほぼ背面側半分に対向する位置に配置されている。そのため、副吸込口6bを含めた吸込口6の全体で見ると、前面側熱交換器36aと背面側熱交換器36bの接続部は、室内機2の背面5dに寄っている。また、前面側熱交換器36aは、上部前面側熱交換器36aaと下部前面側熱交換器36abとからなる。前面側熱交換器36aは、主吸込口6aの直下のエアフィルタ35a,35bの近傍から吹出口7の吹出通路7aの上壁7aaの近傍まで延びており、エアフィルタ35a,35bの近傍から吹出口7の吹出通路7aの上壁7aaの近傍までのほぼ上半分を占める上部に上部前面熱交換器36aaがあり、ほぼ下半分を占める下部に下部前面熱交換器36abがある。前面側熱交換器36aも背面側熱交換器36bも、熱交換パイプ38に多数のプレートフィン37を室内機2の幅方向に平行に並べて取り付けることにより構成されている。吸込口6から吸込まれ、エアフィルタ35a,35bを通過した室内空気がプレートフィン37の間を通り抜ける際に熱交換が生じて空気調和が行われる。そのため、室内空気はプレートフィン37近傍では、プレートフィン37の面に平行な流れを生じやすく面に垂直な方向の流れを生じ難い。
【0039】
室内側熱交換器36の上流側に、前面側熱交換器36aに隣接して補助熱交換器39が設けられている。正面視において補助熱交換器39は、図9に示す加湿ダクト20と重ならないように加湿ダクト20よりも上に設けている。これにより、加湿ダクト20から供給される加湿空気と室内空気との空気調和の仕方を異ならせることができる。補助熱交換器39は、凝縮器として機能させるか蒸発器として機能させるかを、室内機2に設けられている第1電磁弁によって切り替えることができる。再熱除湿運転時には、補助熱交換器39を凝縮器として利用する一方、室内側熱交換器36を蒸発器として利用して温度の低下を防ぎながら除湿を行う。また、補助熱交換器39を室内側熱交換器36と同じように蒸発器として利用する場合には、熱交換に寄与する面積を増加させることができる。
【0040】
室内側熱交換器36と補助熱交換器39に冷媒を熱交換パイプ38で並列に供給しているため、第2電磁弁によって室内側熱交換器36及び補助熱交換器39に流れる冷媒の量を上部と下部とで異ならせることができる。それにより、室内側熱交換器36の下部の機能を落としても十分に空気調和ができるときには、室内側熱交換器36の上部を用いて、効率よく熱交換を行わせることができる。また、第1電磁弁と第2電磁弁によって、室内側熱交換器36と補助熱交換器39の使用状態を、加湿ダクト20の使用の有無との組み合わせに対応して使い分けることもでき、多様な運転が可能になる。なお、第1及び第2電磁弁85は、室内機2の側方に配置される(図21参照)。
【0041】
室内側熱交換器36の下流側には、略円筒形状のクロスフローファン40が本体ケーシング5の幅方向に沿って長く延び、室内側熱交換器36と共に本体ケーシング5の幅方向と平行に設けられている。クロスフローファン40は、逆V字状の室内側熱交換器36に挟まれるように囲まれている。クロスフローファン40は、本体ケーシング5の天面5aから見る平面視において、前面側熱交換器36a及び背面側熱交換器36bとほぼ同じ割合で重なる位置に配置されており、正面5bから見る正面視において、上部前面側熱交換器36aaの下側の一部及び下部前面側熱交換器36abと重なる位置に配置されている。また、正面視において、クロスフローファン40は、加湿ダクト20よりも上方に飛び出るように配置されている。このクロスフローファン40は、図8及び図9において時計回りに回転して気流を発生させる。
【0042】
クロスフローファン40の下流の吹出通路7aは、背面側をスクロール部材41で構成されている。スクロール部材41は、正面視において、本体ケーシング5の吹出口7の開口部32とほぼ同じ幅を有している。スクロール部材41の上端はクロスフローファン40の上端よりも上に位置し、側面視において、円筒状のクロスフローファン40の中心軸よりも背面側にずれた位置から始まっている。スクロール部材41の下端は、吹出口7の開口部32に連結される。スクロール部材41の案内面41aは、断面視において、クロスフローファン40の側に曲率中心を持つ滑らかな曲線の形状を呈しており、案内面41aの上部はクロスフローファン40に最も近い近傍に配置され、下に行くに従って徐々にクロスフローファン40から離れるように配置されている。吹出通路7aの上壁7aaの上端には、断面く字型の表面を有する舌部42が設けられている。舌部42の表面のうちクロスフローファン40の近傍に設けられている表面42aは、クロスフローファン40を挟んでスクロール部材41の案内面41aと対向している。舌部42の表面42aとスクロール部材41の案内面41aで形成される開口部は、図8及び図9の断面図において左斜め上方を向いている。クロスフローファン40が吸い込むクロスフローファン40近傍の室内空気の流れの方向は、スクロール部材41と舌部42が構成する開口部に左右される。それゆえ、クロスフローファン40から吹き出された室内空気は、吹出流路7aを通り吹出口7から吹き出されるのであるが、風向調節羽根9,43によって吹き出す方向を調節される。クロスフローファン40に近い風向調節羽根43によって室内機2の正面から見た左右の吹出し方向が調節され、吹出口7にある風向調節羽根9によって上下の吹出し方向が調節される。
【0043】
吹出口7の上壁7aaの上方には、前面側熱交換器36aで結露した水滴を受けるドレンパン44が配置されている。また、ドレンパン44を構成している部材によって下部前面側熱交換器36abの下端が支持されており、ドレンパン44は、室内側熱交換器36の固定に役立っている。
【0044】
図8に示すように、吹出口7の上壁7aaの上には、上壁7aaに一部接するように、電装品箱45が配置されている。電装品箱45の下端はドレンパン44よりも下にあるが、電装品箱45の上端はドレンパン44よりも上にあり、電装品箱45は、ドレンパン44の近傍、言い換えると下部前面側熱交換器36abの近傍に位置する。電装品箱45の前面は前面グリル12に沿って当接するように配置されている。電装品箱45は、その上面から背面にかけてプラスチック製の防滴カバー46で覆われている。この防滴カバー46は、電装品箱45の上面から始まってドレンパン44を構成する部材の中まで延びており、滴下してきた水滴をドレンパン44に導くことができる。電装品箱45の背面側にプリント配線基板45aが固定され、プリント配線基板45aの上には各種の電気部品が実装されているが電気部品の図示は省略している。
【0045】
図8に示す電装品箱45の上の凹部27に取り付けられているフィルタ清掃部材14は、ブラシ47を保持するブラシ側部材48と、ブラシ47によって掻き落とされた塵埃を入れておくダストボックス49とを組み合わせて構成されている。フィルタ清掃部材14の下部の奥行き(室内機2の前後方向の長さ)は、電装品箱45の上部の奥行きとほぼ同じになっている。ブラシ47は、プラスチック製の直毛が放射状に伸びるように形成されており、図8の断面図において、ブラシ47は半時計回りに回転する。このブラシ47の下から斜め前方に向けて櫛部の歯50が挿入されている。また、櫛部の歯50の直下に塵埃をダストボックス49に押し込むためのプラスチック製の円柱状の棒状部材が設けられている。円柱状の棒状部材51の表面にらせん状の突起がついており、円柱状の棒状部材51がブラシ47と共に回転することにより、櫛部の歯50が梳き落とした塵埃をダストボックス49に押し込むことができる。それにより、ダストボックス49に蓄積される塵埃を圧縮し、ダストボックス49に溜まった塵埃の廃棄回数を減らすことができる。
【0046】
フィルタ清掃部材14の上であって、フィルタ清掃部材14のブラシ47がエアフィルタ35a,35bに接するようにフィルタ清掃機構15が取り付けられている。フィルタ清掃機構15の2本のフィルタ駆動用ローラ52a,52bは、エアフィルタ35a,35bを挟んでブラシ47に対向する位置に取り付けられている。図8に示されているのが一方のフィルタ駆動用ローラ52bであり、図9に示されているのがもう一方のフィルタ駆動用ローラ52aである。フィルタ駆動用ローラ52a,52bは、両端部にピニオンギアが形成されており、このピニオンギアをエアフィルタ35a,35bの両端部に形成されているラックギアと噛み合わせるとことでエアフィルタ35a,35bの移動を行う。
【0047】
エアフィルタ35a,35bは、フィルタ清掃機構15のアーム17やブレード53によって案内される。アーム17は、前面パネル8の上部、その前面パネル8から少し背面側に後退して設けられている装飾部25及び天面5aの近傍に沿ってなだらかに湾曲する曲線を描く上側案内溝17aと、上側案内溝17aの下に設けられたもう一本の下側案内溝17bとを備えている。上側案内溝17aと下側案内溝17bの間隔は、最も広いところで、フィルタ駆動用ローラ52a,52bのピニオンギアの歯先円の外径より少し広くなっている。室内空気の塵埃を除去するときには、フィルタ清掃機構15は、上側案内溝17aに位置するようにエアフィルタ35a,35bを保持する。エアフィルタ35a,35bを掃除するときには、フィルタ清掃機構15は、フィルタ駆動用ローラ52a,52bの外周に巻き込むようにしてエアフィルタ35a,35bをUターンさせる。Uターンさせることにより、フィルタ駆動用ローラ52aは、エアフィルタ35a,35bの移動方向を下向きから上向きに変え、下側案内溝17bにエアフィルタ35a,35bを導く。エアフィルタ35a,35bをUターンさせながらブラシ47で塵埃を掻き落とすので、フィルタ清掃機構15の長さを短くできる一方、フィルタ駆動用ローラ52a,52bの径の分だけフィルタ清掃機構15の厚みが増す。
【0048】
吹出口7の上壁7aaの上には、図9に示すように、加湿ダクト20が配置されている。図9の加湿ダクト20の位置を、図8の電装品箱45の位置と比較して分かるように、側面視において、加湿ダクト20が電装品箱45とほぼ重なる位置に配置されている。加湿ダクト20には、加湿された外気の流路となる空洞部54が形成され、空洞部54の上部に、加湿された外気の給気口55が形成されている。給気口55は、下部前面側熱交換器36abとの間に所定長さの空間ができるように配置されている。それにより、給気口55から給気される加湿空気が室内機3の幅方向に広がるよう設定されている。空洞部54は、プレフィルタ21により仕切られており、給気口55から本体ケーシング5の内部に給気される外気は全てプレフィルタ21を通過する。そのため、エアフィルタ35a,35bを給気口55の前に配置する必要がなくなり、エアフィルタ35a,35bの配置領域を狭くできる。プレフィルタ21は、室内機2の前面5aの下方から背面側上方に向かって抜き差し自在に構成されている。
【0049】
(吸込口と舌部との位置関係)
次に、図8を用いて、吸込口と舌部との位置関係を説明する。縦断面視において、舌部42の上面42aのうち吸込口6に最も近いところと、吸込口6のうちもっとも前面に近くかつ最も下方にあるところとを直線で結ぶ。この結ばれた直線を符号L1で示すとすると、この直線L1より前方の領域は比較的室内空気の風量が少なく、直線L1より前方に存在する空気が室内機2の空気調和に寄与する割合が小さくなっている。そのため、直線L1より前方に配置されている部材は、空気調和を妨げ難いということになる。フィルタ清掃部材14は、この直線L1よりも前方にあるため、通風抵抗の増加に寄与しない。同様に、清掃機構駆動部15cのフィルタ駆動用ローラ52bも直線L1よりも前方にあるため空気調和の妨げとなることはない。
【0050】
フィルタ駆動用ローラ52bが直線L1よりも前方にあることから、縦断面視におけるブラシ47とエアフィルタ35との接点82が直線L1よりも前方に位置する。なお、ブラシ47がプラスチック製の直毛で形成されていることから、点で接触するわけではなく、ここでいう接点82は、文字どおりの接点ではなくて接触している部位程度の意味である。接点8が直線L1より前にあるので、接点82付近では気流が弱く、ブラシ47で落とされた塵埃が飛散し難くなっている。逆に言うと、このように埃が飛散し難い設定とするために、フィルタ清掃部材14から下方では室内空気の流れが弱くなっている。
【0051】
(フィルタ清掃機構)
ここでは、図8及び図9に示したフィルタ清掃機構15について説明する。図10がフィルタ清掃機構の正面図、図11がフィルタ清掃機構の左側面図、及び図12がフィルタ清掃機構の底面図である。また、フィルタ清掃機構の清掃機構駆動部とエアフィルタの関係を図13に示す。
【0052】
フィルタ清掃機構15は、図13に示す2枚のエアフィルタ35a,35bを保持するため、左右2つの保持部15a,15bを備えている。エアフィルタ35a,35bは、フィルタリングのために室内空気を通過させるフィルタ部35abを細い支持枠35aaで支持している。図8及ぶ図9を用いて既に説明したように、図13に示すこれらエアフィルタ35a,35bを駆動するためのフィルタ駆動用モータ56a,56bとフィルタ駆動用ローラ52a,52bが清掃機構駆動部15cを構成している。プラスチック製のエアフィルタ35a,35bの素材との関係もあって、フィルタ駆動用ローラ56a,56bは比較的小型化するのが難しいため、清掃機構駆動部15cがフィルタ清掃機構15の厚みを増す要因となっている。
【0053】
保持部15a,15bは、アーム17及びアーム17の間に渡されたブレード53やビーム59などによって構成されているフレーム16からなる。フレーム16は、通風を良くするため、ブレード53やビーム59のような細い部材を組み合わせて構成しているので、内部に空間が形成されており、この空間を有効に利用することにより、スペースの有効利用が図られている。すなわち、各保持部15a,15bには、それぞれフィルタ駆動用ローラ52a,52bを駆動するためのフィルタ駆動用モータ56a,56bが、正面視においてエアフィルタ35a,35bと重なる位置に設けられ、アーム17に取り付けられている。また、フィルタ駆動用モータ56aは、図11に示す上側案内溝17aと下側案内溝17bの間に配置されている。言い換えると、フィルタ駆動用ローラ52aで移動方向を転換する前のエアフィルタ35aの位置と、フィル駆動用ローラ52aで移動方向を転換した後のエアフィルタ35aの位置との間に、フィルタ駆動用モータ56aが配置されていることになる。フレーム16は、固定部16cを本体ケーシング5にビス止めすることによって固定されている。中央の固定部16cは図5に示した前面グリル12のネジ穴29に固定される。また、爪16dを本体ケーシング5に差し込んでフレーム16の後方の固定を行っている。
【0054】
エアフィルタ35aを室内空気が通り抜けることから、フィルタ駆動用モータ56aがエアフィルタ35aと重なる部分で通風抵抗を生むため、フィルタ駆動用モータ56aは、フィルタ清掃機構15の左端に配置して、できるだけエアフィルタ35と重なる面積が少なくなるように取り付けられている。同様の理由から、フィルタ清掃機構15の保持部15bの左端にフィルタ駆動用モータ56bが取り付けられている。フィルタ駆動用モータ56a,56bは、側面視において重なるように配置されている。また、図9に示すように吸込口6が上部にあり、吸込口6からクロスフローファン40へ流れる室内空気が下方背面側に向かうため、フィルタ駆動用モータ56a,56bをフィルタ駆動用ローラ52a,52bに近づけて配置することにより、通風抵抗の軽減を図っている。
【0055】
フィルタ駆動用モータ56a,56bが発生する駆動力は、複数のギアでフィルタ駆動用ローラ52a,52bに伝達される。フィルタ駆動用ローラ52aとフィルタ駆動用モータ56bを繋ぐギアは、図11に示すギアボックス57の中に収められている。
【0056】
フィルタ清掃機構15には、エアフィルタ35a,35bの駆動以外に、図8及び図9に示したブラシ47を駆動するためのブラシ駆動用モータ58が設けられている。ブラシ駆動用モータ58も、正面視において、エアフィルタ35aと重なる位置に配置されている。また、側面視において、ブラシ駆動用モータ58は、フィルタ駆動用モータ56a,56bと重なる位置に配置されている。このブラシ駆動用モータ58も清掃機構駆動部15cに含まれる。
【0057】
フィルタ構成機構15のフレーム16の下部には、フィルタ清掃部材14に固定するための掛止突起16bが設けられている。
【0058】
(フィルタ清掃部材)
図14はフィルタ清掃部材の分解図、図15(a)はフィルタ清掃部材の正面図、図15(b)はフィルタ清掃部材の平面図、並びに図16(a)、図16(b)、図16(c)、図16(d)及び図16(e)はそれぞれ図15(b)におけるE−E線、F−F線、G−G線、H−H線及びI−I線で切断した断面図である。フィルタ清掃部材14は、ブラシ47と、ブラシ47を保持するブラシ側部材60と、ブラシ側部材60の蓋をする蓋部材61とを備えている。蓋部材61は、ブラシ側部材60にヒンジ65で回動自在に掛止されており、中央のロック部材66により蓋を閉じた状態でブラシ側部材60に固定される(図15(b)、図16(c)、図16(e))。ブラシ側部材60と蓋部材61は、組み合わせることで内部に塵埃を入れる空間を形成し、ダストボックス49を構成する(図18(b)、図16(d))。ブラシ側部材60の一辺には、ブラシ47の長さに対応して櫛部の歯50が並んでいる(図14)。
【0059】
ブラシ47の軸63は、ブラシ側部材60の軸受け62に回転自在に嵌め込まれている(図16(a))。ブラシ47の軸63の両端には軸受け63との間に遊びがないように軸受け63の内径にほぼ等しい外径を有するキャップ部材63aが嵌め込まれている。ブラシ47の軸63は、撓み難い剛性の高い筒状のプラスチックや金属で形成されている。ブラシ47の軸63には、被駆動ギア64が取り付けられている(図15(b)、図16(b))。この被駆動ギア64は、フィルタ清掃部材14をフィルタ清掃機構15に固定することにより、駆動ギア58と噛み合う。蓋部材61には、円柱状の棒状部材51が取り付けられており、この棒状部材51にはギア67が固定されている(図14、図15(b))。棒状部材51のギア67は、ブラシ47の被駆動ギア64に連結されており、ブラシ47の回転に連れて回転する。
【0060】
ロック部材66によりブラシ側部材60への蓋部材61が固定される。また、図9に示すように、係止突起16bをロック部材18cが掛止することによりフィルタ清掃部材14がフレーム16に直接固定される。ロック部材18a,18b,18dもロック部材18cと同様に掛止突起16bを掛止可能に構成されている。
【0061】
(加湿ダクト)
次に、図9などに示した加湿ダクト20について説明する。図17(a)は加湿ダクトの正面図、図17(b)は加湿ダクトの側面図、図18(a)は加湿ダクトの背面図、図18(b)は図17(a)のJ−J線断面図、及び図19は図18(b)の状態からプレフィルタを抜き取ったときの加湿ダクトの分解断面図である。加湿ダクト20の下部には円筒状の吸込口61が設けられ、この吸込口61に接続される加湿ホース(図示せず)により室外機3から加湿空気が供給される。加湿ダクト20の上部には給気口55が設けられており、吸込口61と給気口55の間にプレフィルタ21が配置されている。吸込口61が正面視において、左下に設けられているため、加湿空気の流れは、左斜め下から右斜め上に向かう。そのため、給気口55を出た加湿空気は、本体ケーシング5の中では、正面5bから見て右方向に広がりやすい。給気口55の中には、加湿ダクト20内の結露を検出するための結露センサ72が取り付けられている。
【0062】
図19に示すように、加湿ダクト20は、内部に空洞部54を設けるため、ダクト本体73とダクト蓋74とを組み合わせて構成されている。ダクト本体73とダクト蓋74に設けられている係止部75の穴に突起76を嵌合してダクト本体73にダクト蓋74を固定するとともに、ダクト本体73とダクト蓋74との当接部分を接着剤で止めて気密性を加湿ダクト20に持たせている。図19に示すように、加湿ダクト20の内壁にリブ77を形成して、プレフィルタ21をプラスチック製の枠体78に収めて抜き差し自在に装着できるように構成している。
【0063】
(室内側熱交換器と加湿ダクトの位置関係)
図20及び図21は、正面グリルを外した状態における室内機の正面図及び斜視図である。また、図22は室内側熱交換器と加湿ダクトとの関係を説明するための正面図である。正面視において、図20及び図22の斜線を施した領域を加湿ダクト20が占めている。加湿ダクト20の直上には、図20に示すようにフィルタ清掃部材14を装着する凹部27があり、図21に示すようにフィルタ清掃部材14が装着される。さらにフィルタ清掃部材14の上にはフィルタ清掃機構15がある。そして、フィルタ清掃機構15のフィルタ駆動用ローラ52a,52b及びフィルタ駆動用モータ56a,56b(清掃機構駆動部15c)は、フィルタ清掃部材14の上に設けられている。そのため、吸込口6が天面にあって、室内空気を吸込むための吸込口が室内機3の前面にないだけでなく、上部から吸い込まれた室内空気もフィルタ清掃部材14や清掃機構駆動部15cがあるために、加湿ダクト20の周囲に到達し難くなっている。図22から分かるように、室内側熱交換器36の下部前面側熱交換器36abには、加湿ダクト20の給気口55が対向していて、フィルタ清掃機構15は概ね下部前面側熱交換器36abには対向していない。そのため、下部前面側熱交換器36abの多くを加湿ダクト20から供給される加湿空気の熱交換に当てることができる。このような機能を十分発揮させるために、加湿ダクト20は図9に示す直線L1よりも下方に配置されているので好ましい。さらに、図9に示すように、室内側熱交換器36の下部も、加湿ダクト20に対向する部分が直線L1より前に設けられていることが好ましい。
【0064】
なお、正面から向かって加湿ダクト20の右の空間に電装品箱45を配置している。図8にも示したように、電装品箱45の背面側には、加湿ダクト20の給気口55から供給される加湿空気を正面視右側に広げるための空間が設けられている。電装品箱45を清掃機構駆動部15cの下に設ける場合、電装品箱45とフィルタ駆動用モータ56a,56bとの距離を短くできるため、電装品箱45とフィルタ駆動用モータ56a,56bとの間の配線の距離が短くなる。図9に示したように、電装品箱45の奥行きも加湿ダクト20とほぼ同じに設計され、側面視において、加湿ダクト20が電装品箱45に重なる位置に配置されるため、スペースの有効利用が図られる。
【0065】
さらに、正面から向かって電装品箱45の右側に、交流電圧100ボルト及び200ボルトなどの商用電源給電用の端子盤が収められている電源ボックス80が配置されている。電装品箱45の電源も電源ボックス80から供給される。室内機2の長手方向に沿って、電装品箱45と並べて電源ボックス80を配置することで、電装品箱45への電源の供給距離が短くなるだけでなく、側面視において電源ボックス80が電装品箱45に重なる位置に配置されるため、スペースの有効利用が図られる。また、加湿ダクト20と電装品箱45との間に、スピーカ81が配置され、スペースの有効利用が図られている。スピーカ81が電装品箱45に近いことから、スピーカと電装品箱45との配線も短くなる。
【0066】
以上のように配置することにより、室内機2の幅W0に対してエアフィルタ35a,35bを配置することができる幅W1を大きく取ることができる。また、室内側熱交換器36の幅W2を大きく取ることができる。それにより、熱交換に寄与する熱交換器の有効長を従来に比べて延ばすことができる。
【0067】
<変形例>
(a)
上記実施形態においては、給気を行うダクトとして、加湿ダクト20を用いる場合について説明したが、本発明に係る給気ダクトは、加湿ダクト20以外のものであってもよい。また、給気ダクト20を配置する位置も、正面から向かって左端だけに限られず、中央や右端に配置することもできる。また、加湿ダクト20の幅は、室内側熱交換器36の幅W2の5分の1程度であるが加湿空気供給のために室内側熱交換器36を有効に利用するためには6分の1程度より大きい方が好ましい。
【0068】
(b)
上記実施形態においては、室内側熱交換器として側面視逆V字状の形状をした室内側熱交換器36について説明したが、室内側熱交換器の形状は逆V字状の室内側熱交換器に限られず、例えば背面側熱交換器36bがないタイプのものにも適用できる。ただし、小型化するためには、逆V字状の室内側熱交換器が好ましい。
【0069】
(c)
上記実施の形態においては、吸込口6は、本体ケーシング5の天面5aにのみ設けられている場合について説明したが、例えば、前面パネル8の上方に開口部を形成して給気口としてもよく、前面視においてクロスフローファン40と重なる領域よりも上に設けられていればよい。
【0070】
<特徴>
(1)
図9に示すように、吸込口6は縦断面視においてクロスフローファン40(送風ファン)よりも上の本体ケーシング5の天面5aに設けられている。吸込口6もクロスフローファン40も室内機2の長手方向に平行に延びているので、正面視においてもクロスフローファン40に重なる領域より吸込口6が上方に設けられていることが分かる。加湿ダクト20の開口部55が対向する室内側熱交換器36の下部前面側熱交換器36abは、吸込口6からクロスフローファン40への室内空気の強い流れの外に位置する。このような下部前面側熱交換器36abに加湿ダクト20の開口部55から外気が供給される。そのため、室内空気の熱交換にあまり活用されていない下部前面側熱交換器36abを用いて外気に対する熱交換を行うことができることとなり、熱交換の性能を落とすことなく、室内機の小型化を図ることができる。
【0071】
さらに、図9に示す直線L1よりも前に、加湿ダクト20の開口部55に対向する室内側熱交換器36の下部が前にあることが好ましい。吸込口6の前端6bfから舌部42に延び舌部42の表面42aと接する直線L1は、吸込口6からクロスフローファン40に向かう室内空気の流れの比較的強い部分の最下部あたりを示している。そのため、この直線L1よりも前にあることで、室内空気の流れの外に加湿ダクト20の開口部55に対向する室内側熱交換器36の下部を配置させることができる。
【0072】
正面視においてもクロスフローファン40に重なる領域より上方の位置であれば、例えば前面パネル8の上方に開口部を設けて吸込口としてもよいが、上記実施形態のように天面5aのみに設けることで、室内空気の下方への流れを強くすることができ、加湿ダクト20の室内空気の熱交換に与える影響を小さくできる。
【0073】
(2)
加湿ダクト20の開口部55から吹き出される加湿空気は、全てプレフィルタ21(第2エアフィルタ)を通過し、プレフィルタ21により塵埃を取り除かれる(図9参照)。加湿空気の塵埃をプレフィルタ21で取り除くため、吸込口6の下流にあるエアフィルタ35a(第1エアフィルタ)は加湿空気の塵埃除去を行わなくて済む。そのため、エアフィルタ35aを加湿ダクト20の開口部55まで延ばす必要がなくなる。そのため、小型化が行い易い上に、着脱容易にエアフィルタ35aを設けられ、掃除も簡単に行える。
【0074】
(3)
ダストボックス49を設けることで吸込口6から加湿ダクト20に至るまでの距離をダストボックス49の高さ分だけ長くできる(図9参照)。つまり、ダストボックス49の高さ分だけ前面側熱交換器36aを高さ方向に長くできるので前面側熱交換器36aの面積を大きくできる。その結果、下部前面側熱交換器36abの上側も一部室内空気の熱交換に寄与する一方、加湿空気の熱交換に寄与する下部前面側熱交換器36abの面積も広がり、加湿空気の給気よる熱交換対象の空気量の増加によって空気調和の性能が低下するのを抑えることができる。
【0075】
(4)
図9に示すように、加湿ダクト20の厚みにより生じる加湿ダクト20上方の空間にフィルタ清掃機構15を設けている。その結果、加湿ダクト20の厚みにより生じる空間を活用してダストボックス49(フィルタ清掃部材14)を設け、その上に同じ奥行きでフィルタ清掃機構15を設けることができる。それにより、フィルタ清掃機構15を備える室内機の小型化が図られる。
【0076】
(5)
図20に示すように、加湿ダクト20と電装品箱45を並べて配置することで、正面視においてクロスフローファン40(送風ファン)と重なる領域よりも上方に吸込口を設けることにより吸込口6が小さくのなるのを電装品箱がなくなった側方に吸込口6や室内側熱交換器36を広げることで補うことができる。それにより、熱交換の性能を落とすことなく、室内機の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気調和装置の構成の概要を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る空気調和装置の室内機の正面図。
【図3】図2のC方向から見た、前面パネルを取り外した室内機の斜視図。
【図4】図2のD方向から見た、前面パネルを取り外した室内機の斜視図。
【図5】図2に示す室内機の前面グリルの平面図。
【図6】図2に示す室内機の前面グリルの正面図。
【図7】図2に示す室内機の前面グリルの側面図。
【図8】図2におけるA−A線断面図。
【図9】図2におけるB−B線断面図。
【図10】フィルタ清掃機構の正面図。
【図11】フィルタ清掃機構の側面図。
【図12】フィルタ清掃機構の底面図。
【図13】エアフィルタと清掃機構駆動部との関係の概略を示す概略図。
【図14】フィルタ清掃部材の分解斜視図。
【図15】(a)フィルタ清掃部材の正面図。(b)フィルタ清掃部材の平面図。
【図16】(a)フィルタ清掃部材のE−E線断面図。(b)フィルタ清掃部材のF−F線断面図。(c)フィルタ清掃部材のG−G線断面図。(d)フィルタ清掃部材のH−H線断面図。(e)フィルタ清掃部材のI−I線断面図。
【図17】(a)加湿ダクトの正面図。(b) 加湿ダクトの側面図。
【図18】(a)加湿ダクトの背面図。(b) 図17(a)におけるJ−J線断面図。
【図19】図18(b)の加湿ダクトからプレフィルタを外した状態を示す分解断面図。
【図20】正面グリルを取り外した室内機の正面図。
【図21】正面グリルを取り外した室内機の斜視図。
【図22】室内側熱交換器と加湿ダクトとの関係を説明するための正面図。
【符号の説明】
【0078】
1 空気調和装置
2 室内機
3 室外機
6 吸込口
7 吹出口
8 前面パネル
14 フィルタ清掃部材
15 フィルタ清掃機構
20 加湿ダクト
35a,35b エアフィルタ
36 室内側熱交換器
40 クロスフローファン
42 舌部
45 電装品箱
46 防滴カバー
49 ダストボックス
52a,52b フィルタ駆動用ローラ
56a,56b フィルタ駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口(6)と前記吸込口の下方に配置された吹出口(7)とを有する本体(5)と、
前記吹出口と前記吸込口との間に配置され、前記吸込口から前記吹出口に至る通風経路に対して給気を行う開口部(55)を有する給気ダクト(20)と、
前記吸込口の下流側に配置された室内側熱交換器(36)と、
前記室内側熱交換器の下流側であって正面視において前記給気ダクトよりも上に出るように配置された送風ファン(40)とを備え、
前記吸込口は、前記本体の背面を除く全ての領域うち正面視において前記送風ファンと重なる領域よりも上方に設けられ、
前記給気ダクトの前記開口部は、前記室内側熱交換器の下部に対向する位置に配置されている、空気調和装置の室内機。
【請求項2】
前記吸込口の下流側に配置され、前記吸込口から吸い込まれた室内空気の塵埃を捕集する第1エアフィルタ(35a,35b)をさらに備え、
前記給気ダクトは、着脱可能な第2エアフィルタ(21)を有する、請求項1に記載の空気調和装置の室内機。
【請求項3】
前記給気ダクトの上方に配置され、前記第1エアフィルタから除去された塵埃を入れておくダストボックス(49)をさらに備える、請求項2に記載の空気調和装置の室内機。
【請求項4】
前記吸込口の下流側に配置され、前記吸込口から吸い込まれた室内空気の塵埃を捕集する第1エアフィルタ(35a,35b)と、
前記給気ダクトの上方に配置され、前記第1エアフィルタに付着した塵埃の掃除をするフィルタ清掃機構(15)とをさらに備える、請求項1に記載の空気調和装置の室内機。
【請求項5】
前記給気ダクトの側方に側面視において前記給気ダクトと重なる位置に並べて配置された電装品箱(45)をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の空気調和装置の室内機。
【請求項6】
前記吸込口は、天面(5a)にのみ設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の空気調和装置の室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−65897(P2010−65897A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231410(P2008−231410)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】