説明

空気調和装置用の熱交換器

【課題】簡単な構成でクロスフィンのフィンカラー部に腐食が発生するのを効果的に防止できるようにする。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるクロスフィン(4)と、該クロスフィン(4)に形成されたフィンカラー部(7)を挿通する冷媒流通管(5)とを有する空気調和装置用の熱交換器(1)であって、上記クロスフィン(4)の表面にプレコートされた防食塗膜層(6)と、上記フィンカラー部(7)の加工端面を覆う保護塗膜層(17)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるクロスフィンと、該クロスフィンに形成されたフィンカラー部を挿通する冷媒流通管とを有する空気調和装置用の熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、有機性親水性塗膜を含む塗膜をプレコートしたアルミニウム性フィン材をプレス加工して形成する熱交換機用アルミニウム製フィンであって、プレス加工時にアルミニウム製フィン材表面の塗膜を引き伸ばし、この引き伸ばした塗膜によってアルミニウム製フィンの切断端面を被覆することにより、この切断端面からフィンが腐食するという事態の発生を抑制することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−214621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された熱交換機用アルミニウム製フィンでは、その外周部を形成する切断部、スリット部、ルーバー部などをプレス加工する上下プレス金型の噛み合わせ時における両切断刃のクリアランスをファインカット時よりも大きく調節したり、切断刃の切れ味をファインカット時よりも鈍化させたり、プレコート塗膜の厚さを大きくしたり、あるいは延展性の大きい材料を使用したりする等により、上記アルミニウム製フィンにプレコートされた塗膜を切断加工時に引き伸ばして切断端面を被覆し、これによって上記切断端面からフィンが腐食することを抑制できるようにしている。
【0005】
しかし、上記熱交換器の冷媒流通管が挿通されるフィンカラー部が形成されたクロスフィンでは、該フィンカラー部をドローレス加工またはドロー加工する際に、上記フィンカラー部の端面に上記プレコート被膜が剥離されて基材が露出した状態となるのを防止することができず、該露出部に腐食が発生することが避けられなかった。一般的に、上記クロスフィンは、軽量で優れた熱伝導性を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成され、かつ上記冷媒流通管は、優れた成形性および熱伝導性を有する銅管または真鍮管で形成されるため、上記クロスフィンのフィンカラー部と冷媒流通管との結合部に雨水、もしくは結露水が付着した場合、電界腐食作用により上記フィンカラー部の端面が特に劣化し易いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でクロスフィンのフィンカラー部に腐食が発生するのを効果的に防止することができる空気調和装置用の熱交換器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気調和装置用の熱交換器(1)は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるクロスフィン(4)と、該クロスフィン(4)に形成されたフィンカラー部(7)を挿通する冷媒流通管(5)とを有する空気調和装置用の熱交換器(1)であって、上記クロスフィン(4)の表面にプレコートされた防食塗膜層(6)と、上記フィンカラー部(7)の加工端面を覆う保護塗膜層(17)とを備えたものである。
【0008】
本発明では、上記クロスフィン(4)の表面に防食塗膜層(6)をプレコートしたため、該防食塗膜層(6)により覆われた部分の腐食を効果的に防止できるクロスフィン(4)を容易に製造することができ、その生産性を効果的に向上させることができる。また、上記クロスフィン(4)のフィンカラー部(7)を形成する際に、上記防食塗膜層(6)が剥離したフィンカラー部7の加工端面を上記保護塗膜層(17)によりを覆うことにより、当該部分が腐食するのを効果的に防止することができるため、上記熱交換器(1)が設けられた室外機を風雨に曝される環境に設置した場合においても、上記クロスフィン(4)が早期に腐食して熱交換器(1)の性能が低下したり、外観が悪化したりすることを効果的に防止できるという利点がある。
【0009】
本発明に係る空気調和装置用の熱交換器(1)においては、上記冷媒流通管(5)とクロスフィン(4)とがイオン化傾向の異なる素材により形成されたものとすることができる。
【0010】
かかる構成によれば、軽量で優れた熱伝導性を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金で上記クロスフィン(4)が形成され、優れた成形性および熱伝導性を有する銅管または真鍮管等で上記冷媒流通管(5)が形成されることにより、該冷媒流通管5とクロスフィン(4)とがイオン化傾向の異なる素材により形成されている場合においても、上記クロスフィン(4)のフィンカラー部(7)と冷媒流通管5との結合部に雨水、もしくは結露水が付着することに起因した電界腐食の発生を効果的に防止できるという顕著な効果が得られる。
【0011】
また、本発明に係る空気調和装置用の熱交換器においては、上記防食塗膜層(6)および保護塗膜層(17)が撥水性塗膜により形成されたものであることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、上記クロスフィン(4)にプレコートされた防食塗膜層(6)および上記フィンカラー部(7)の加工端面を覆う保護塗膜層(17)をそれぞれ撥水性塗膜により形成したため、クロスフィン4の表面および上記フィンカラー部7の加工端面に付着した結露水もしくは雨水が大きくならないうちに、これを速やかに落下させることができ、上記フィンカラー部7に水滴が付着することに起因した電界腐食が発生するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0013】
さらに、本発明に係る空気調和装置用の熱交換器において、上記防食塗膜層(6)および保護塗膜層(17)が親水性塗膜により形成されたものであってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、上記クロスフィン(4)の防食塗膜層6および上記フィンカラー部(7)の保護塗膜層(17)をそれぞれ親水性塗膜により形成したため、上記クロスフィン(4)の表面および上記フィンカラー部(7)の加工端面に付着した結露水もしくは雨水の流動性を高めて該フィンカラー部(7)の設置部に水滴が溜まるのを効果的に防止することができるため、上記フィンカラー部(7)に電界腐食が発生するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成でクロスフィンのフィンカラー部に腐食が発生するのを効果的に防止することができる空気調和装置用の熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る空気調和装置用の熱交換器の実施形態を示す説明図である。
【図2】上記熱交換器の具体的構成を示す斜視図である。
【図3】上記熱交換器の具体的構成を示す断面図である。
【図4】ドローレス加工法によりフィンカラー部を成形する場合の工程図である。
【図5】ドロー加工法によりフィンカラー部を成形する場合の工程図である。
【図6】フィンカラー部に冷媒流通管を取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】フィンカラー部の端面を保護塗膜層で被覆した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3は、本発明の実施形態に係る空気調和装置用の熱交換器を備えた室外機を示している。該室外機は、その内部に熱交換器1と送風ファン2とが配設された筺体3を有している。上記熱交換器1は、送風ファン2の回転によって筺体3内に吸い込まれた空気の流れに沿って略平行、かつ等間隔に並べられた複数枚のクロスフィン4と、該クロスフィン4と直交する方向に設置された冷媒流通管5とを備えている。
【0018】
上記クロスフィン4は、防食塗膜層6がプレコートされたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるプレート材を、上記熱交換器1に適した大きさにプレス加工して切断した後、上記冷媒流通管5が挿通されるフィンカラー部7が形成されている。上記クロスフィン4用のプレート材の表面に形成された防食塗膜層6は、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂または疎水性シリカ等の撥水化成分を含んだ撥水性塗膜からなり、クロスフィン4の表面を被覆してその酸化を防止するとともに、クロスフィン4の表面に付着した結露水もしくは雨水が大きくなるのを抑制し、これを速やかにクロスフィン4の表面から落下させる機能を有している。
【0019】
上記フィンカラー部7は、従来周知のドローレス加工法またはドロー加工法等により形成される。上記ドローレス加工法は、図4(a)に示すように、上記冷媒流通管5の挿通位置に所定径の開口部8を形成するとともに、該開口部8の周縁を変形させて立ち上がり部9を形成するピアスバーリング工程と、図4(b)に示すように、上記立ち上がり部9をアイアニングして立ち上がり寸法を大きくするアイアニング工程と、図4(c)に示すように、上記立ち上がり部9の先端を外方に拡開させてフランジ10を形成するフレアリング工程とを有している。
【0020】
一方、上記ドロー加工法は、図5(a)に示すように、上記冷媒流通管5の挿通位置に所定の大きさを有する円形の膨出部11を形成するドローイング工程と、図5(b)に示すように、該膨出部11の上面に開口部12を形成するピアスバーリング工程と、図5(c)に示すように、上記膨出部11の先端を外方に拡開させてフランジ10を形成するフレアリング工程とを有している。
【0021】
上記フィンカラー部7をドローレス加工法またはドロー加工法等の何れの加工法により形成する場合においても、上記フィンカラー部7の設置部に塗布された防食塗膜層6が剥離され易く、特に上記フランジ10の先端面等には、図6に示すように、防食塗膜層6が剥離されてアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるプレート材が露出した露出部13が形成されることが避けられない。
【0022】
上記冷媒流通管5は、図3に示すように、U字状伝熱管14とU字状接続管15とからなり、該U字状伝熱管14とU字状接続管15は、上記クロスフィン4のフィンカラー部7とはイオン化傾向の異なる素材、例えば優れた成形性および熱伝導性を有する銅管または真鍮管からなっている。そして、上記クロスフィン4のフィンカラー部7に対し、U字状伝熱管14の直線部16を挿通させた後、該直線部16を拡開変形させることにより上記フィンカラー部7に密着させて固定する。
【0023】
そして、上記直線部16の先端にU字状接続管15の接続部17を外嵌して固定することにより、上記クロスフィン4および冷媒流通管5を有する熱交換器1を成形した後、該熱交換器1を、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂または疎水性シリカ等の撥水化成分を含んだ撥水性塗料の溶液中に浸漬し、あるいは上記プレート材の露出部13に撥水性塗料を吹き付け塗装または刷毛塗りする等により、図7に示すように、上記フィンカラー部7の加工端面(フランジ10の先端面)等を覆う保護塗膜層18を形成する。
【0024】
上記のようにアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるクロスフィン4と、該クロスフィン4に形成されたフィンカラー部7を挿通する冷媒流通管5とを有する空気調和装置用の熱交換器1において、上記クロスフィン4の表面にプレコートされた防食塗膜層6と、上記フィンカラー部7の加工端面を覆う保護塗膜層18とを備えた構造としたため、簡単な構成でクロスフィン4のフィンカラー部7に腐食が発生するのを効果的に防止することができる。
【0025】
すなわち、上記クロスフィン4の表面に防食塗膜層6をプレコートしたため、該防食塗膜層6により覆われた部分の腐食を抑制できるクロスフィン4を容易に製造することができ、その生産性を効果的に向上させることが可能である。上記クロスフィン4のフィンカラー部7は、これを形成する際に上記防食塗膜層6が剥離されて該防食塗膜層6による防食作用を期待することができないが、上記保護塗膜層18によりフィンカラー部7の加工端面を覆うように構成したため、当該部分が腐食するのを効果的に防止することができる。
【0026】
したがって、従来技術のように上記クロスフィン4をプレス加工する上下両切断刃のクリアランスを大きく調節したり、切断刃の切れ味を鈍化させたり、クロスフィン4の表面にプレコートされる防食塗膜層6の厚さを大きくしたり、あるいは延展性の大きい材料を使用したりする等の手段を講じることなく、上記フィンカラー部7の加工端面からクロスフィン4が腐食するのを抑制することができ、上記熱交換器1が設けられた室外機を風雨に曝される環境に設置した場合においても、上記クロスフィン4が早期に腐食して熱交換器1の性能が低下したり、外観が悪化したりすることを効果的に防止できるという利点がある。
【0027】
また、上記実施形態では、軽量で優れた熱伝導性を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金で上記クロスフィン4を形成するとともに、優れた成形性および熱伝導性を有する銅管または真鍮管等で上記冷媒流通管5を形成することにより、該冷媒流通管5とクロスフィン4とをイオン化傾向が異なる素材により形成したため、上記フィンカラー部7の加工端面にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるプレート材が露出した露出部13が形成されていると、上記クロスフィン4のフィンカラー部7と冷媒流通管5との結合部に雨水、もしくは結露水が付着した場合に、電界腐食作用により上記フィンカラー部7の加工端面が特に劣化し易い傾向がある。しかし、上記のように保護塗膜層18によりフィンカラー部7の加工端面を覆うことにより、当該部分が上記電界腐食するのを確実に防止できるという顕著な効果が得られることになる。
【0028】
さらに、上記実施形態に示すように、クロスフィン4にプレコートされた防食塗膜層6および上記フィンカラー部7の加工端面を覆う保護塗膜層18を、それぞれフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂または疎水性シリカ等の撥水化成分を含んだ撥水性塗膜により形成した場合には、クロスフィン4の表面および上記フィンカラー部7の加工端面に付着した結露水もしくは雨水が大きくならないうちに、これを速やかに落下させることができるため、上記フィンカラー部7に水滴が付着することに起因した電界腐食が発生するのを効果的に防止できるという利点がある。
【0029】
なお、上記クロスフィン4の防食塗膜層6および上記フィンカラー部7の保護塗膜層18をそれぞれ撥水性塗膜により形成してなる上記実施形態に代え、上記防食塗膜層6および保護塗膜層18を、例えばポリビニール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、またはこれらの混合物等からなる親水性塗膜により形成してもよい。この場合には、上記クロスフィン4の表面および上記フィンカラー部7の加工端面に付着した結露水もしくは雨水の流動性を高めて該フィンカラー部7の設置部に水滴が溜まるのを効果的に防止することができるため、上記電界腐食の発生を効果的に抑制することができる。
【0030】
また、上記クロスフィン4の防食塗膜層6とフィンカラー部7の保護塗膜層18とを、必ずしも同系統の塗膜により形成する必要はなく、上記クロスフィン4の防食塗膜層6を撥水性塗膜により形成するとともに、上記フィンカラー部7の保護塗膜層18を親水性塗膜により形成してもよく、逆に上記クロスフィン4の防食塗膜層6を親水性塗膜により形成するとともに、上記フィンカラー部7の保護塗膜層18を撥水性塗膜により形成した構造としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 熱交換器
4 クロスフィン
5 冷媒流通管
6 防食塗膜層
7 フィンカラー部
18 保護塗膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるクロスフィンと、該クロスフィンに形成されたフィンカラー部を挿通する冷媒流通管とを有する空気調和装置用の熱交換器であって、上記クロスフィンの表面にプレコートされた防食塗膜層と、上記フィンカラー部の加工端面を覆う保護塗膜層とを備えたことを特徴とする空気調和装置用の熱交換器。
【請求項2】
上記冷媒流通管とクロスフィンとがイオン化傾向の異なる素材により形成されたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置用の熱交換器。
【請求項3】
上記記防食塗膜層および保護塗膜層が撥水性塗膜により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置用の熱交換器。
【請求項4】
上記防食塗膜層および保護塗膜層が親水性塗膜により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和装置用の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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