説明

空気調和装置

【課題】暖房能力を補う、遠赤外線を射出する発熱手段を付加することによって、送風ファンによる、温風による暖房だけでは賄うことができなかった暖房能力を、室内機の大きさを変えることなく、向上させる、空気調和装置を提供する。
【解決手段】圧縮機、四路切換弁、熱源側熱交換器及び膨張弁を備えた室外機と、利用側熱交換器13、送風ファン16a、16bを備えた室内機2によって構成された空気調和機において、室内機2に設けられる前面パネルに輻射パネル30を一体に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の空調を行う空気調和装置に関し、特に、暖房能力の向上対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内空間の暖房運転が可能な空気調和装置が知られている。この空気調和装置は、室外機と室内機とを備える一方、冷媒回路を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
上記冷媒回路は、圧縮機、四路切換弁、熱源側熱交換器、膨張弁及び利用側熱交換器が冷媒配管で順に接続されている。上記圧縮機と四路切換弁と熱源側熱交換器と膨張弁とが上記室外機に設置され、利用側熱交換器が上記室内機に設置されている。そして、上記室内機が室内に配置され、上記室内機から吹き出される温風によって、上記室内の暖房を行う。
【0004】
ここで、室内の暖房を行う場合には、その室内空間の最大暖房負荷を賄うに十分な暖房能力を有する空気調和装置を設置する必要がある。一般的には、室内の最大暖房負荷が大きければ大きいほど、上記空気調和装置の室外機及び室内機のサイズの大きいものを設置しなければならない。
【特許文献1】特開平1−058965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空気調和装置における室内機の設置スペースが限られている場合には、その限られた範囲内の大きさの室内機しか設置することができない。仮に、室内空間の最大暖房負荷が高いにもかかわらず、室内機の設置スペースが狭い場合には、その室内の暖房負荷を賄うに十分な空気調和装置を設置できず、暖房能力が不足するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、室内機の大きさを変えることなく、暖房能力を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ケーシング(20)と、該ケーシング(20)の前面に設けられた前面パネル(21)と、上記ケーシング(20)の内部に設けられた空気温度調整用の熱交換器(13)及び送風ファン(16a,16b)とを備えた空気調和装置を対象としている。そして、上記前面パネル(21)に設けられ、基材(30)と、該基材(30)の表面に取り付けられた面状発熱体(40)とを有する発熱手段(60)を備えている。ここで、基材(30)の表面とは、該基材(30)の前面だけでなく、背面も含まれる。また、背面に面状発熱体(40)を取り付ける場合には、基材(30)は熱伝導性が良い材料で形成するのがよい。
【0008】
第1の発明では、上記熱交換器(13)と送風ファン(16a,16b)による温風の送風に加えて、上記面状発熱体(40)に通電することにより、上記面状発熱体(40)を発熱させる。この発熱によって、上記基材(30)を加熱して該基材(30)の表面を昇温させ、昇温した表面から遠赤外線を室内空間に射出する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記面状発熱体(40)が、基材(30)の表面の全体に設けられている。
【0010】
第2の発明では、上記基材(30)の表面全体に、面状発熱体(40)の発する熱が均一に伝達する。これにより、該基材(30)の表面全体において、略均一な温度分布が生ずる。ここで、上記面状発熱体(40)は、該基材(30)の背面全体に貼り付けてもよいし、該基材(30)の内部に埋設してもよい。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、上記面状発熱体(40)が、基材(30)の表面の一部に設けられている。
【0012】
第3の発明では、第2の発明とは違い、上記面状発熱体(40)を基材(30)の表面全体に設けるのではなく、上記表面の一部に設けている。この結果、基材(30)と面状発熱体(40)との接触面積を減少し、上記面状発熱体(40)から上記基材(30)への加熱量を減少する。
【0013】
第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、上記基材(30)が、所定の熱伝導率を有する材料で形成されている。
【0014】
第4の発明における所定の熱伝導率を有する材料とはアルミニウム等の熱伝導率の高い材料である。その熱伝導率の高い材料を用いて上記基材(30)を形成した方が、熱伝導率の低い材料で形成した場合に比べて、上記基材(30)内部の熱抵抗が小さくなる。つまり、第4の発明は、基材(30)をいわゆる輻射パネルで構成している。
【0015】
第5の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、上記基材(30)が、蓄熱材で形成されている。
【0016】
第5の発明では、上記基材(30)に蓄熱作用を付与することにより、面状発熱体(40)で発生した熱を、上記基材(30)に蓄える。
【0017】
第6の発明は、第1から第5の発明の何れか1つにおいて、上記基材(30)の表面に1つの凹状曲面が形成されている。
【0018】
第6の発明では、上記基材(30)の表面に1つの凹状曲面を形成しているので、基材(30)の表面がフラットな場合と比べて、基材(30)の表面積を広くなる。また、基材(30)の表面が凹状曲面で形成されているので、該表面から周囲に向かって射出される遠赤外線が集光する。この遠赤外線の集光により、遠赤外線密度が高くなる。
【0019】
第7の発明は、第1から第5の何れか1つの発明において、上記基材(30)の表面に複数の凹状曲面が形成されている。
【0020】
第7の発明では、第6の発明とは違い、上記基材(30)の表面に1つの凹状曲面を形成するのではなく、複数の凹状曲面を形成している。この結果、基材(30)の表面積が広くなる。また、凹状曲面が複数形成されるので、第6の発明とは違い、遠赤外線の光を1箇所に集めるだけではなく、複数箇所に集めることも可能である。
【0021】
第8の発明は、第1から第5の何れか1つの発明において、上記基材(30)が複数の斜板を備えている。
【0022】
第8の発明では、上記複数の斜板を設けているので、斜板から射出される遠赤外線の射出方向を変更することができる。
【0023】
第9の発明は、第1〜第8の何れか1つの発明において、上記発熱手段(60)の前面に、光透過性の真空パネル(42)が設けられている。
【0024】
第9の発明では、光透過性の真空パネル(42)が配置されることにより、上記基材(30)から射出される遠赤外線を遮ることなく、真空パネル(42)を透過させて加熱対象物に射出することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、前面パネル(21)に発熱手段(60)を設けるようにしたために、室内空間内に存在する加熱対象物に向かって、遠赤外線を射出することができる。これにより、上記熱交換器(13)と上記送風ファン(16a,16b)とを用いた温風による暖房だけでは賄うことができなかった暖房負荷を、上記発熱手段(60)による暖房によって補うことができる。この結果、上記室内機(2)の大きさを変えずに、暖房能力を向上させることができる。
【0026】
また、上記前面パネル(21)の基材(30)を、単なるケーシング(20)の一部ではなく、遠赤外線が射出可能な輻射パネルとして構成することができる。この結果、上記前面パネル(21)を用いた輻射による暖房によって補うことができる。
【0027】
また、上記第2の発明によれば、上記基材(30)の表面全体において、略均一な温度分布を得ることができるので、温度に比例して射出される遠赤外線の射出量も略均一にすることができる。これにより、上記基材(30)における遠赤外線の輻射効率を向上させることができるので、輻射による暖房運転において、その暖房効率を向上させることができる。
【0028】
一方、上記基材(30)の表面全体に面状発熱体(40)を設けると、基材(30)への加熱量が大きくなり過ぎて、表面温度が非常に高くなる場合が考えられる。
【0029】
そこで、上記第3の発明によれば、基材(30)と面状発熱体(40)との接触面積を減少させて、上記基材(30)への加熱量を減少させることにより、上記基材(30)の表面温度を最適な温度にすることができる。また、上記基材(30)の加熱量を減少させることができるので、暖房運転に要する無駄な消費電力を抑制することもできる。
【0030】
また、上記第4の発明によれば、上記基材(30)の熱抵抗を小さくすることにより、熱が伝わりやすくなり、上記面状発熱体(40)から基材(30)へ熱が伝導する際に、基材(30)の内部に生じる温度勾配を小さくすることができる。これにより、基材(30)の表面温度を高くすることができるので、その表面温度に比例して基材(30)から射出される遠赤外線の輻射量を多くすることができる。
【0031】
また、上記第5の発明によれば、昼間電力より安価な夜間電力で面状発熱体(40)を発熱させて、その発熱した熱を上記基材(30)に蓄え、その蓄えた熱を昼間に利用することにより、熱輻射による暖房を低コストで行うことができる。
【0032】
また、上記第6の発明によれば、上記基材(30)の表面積を広くすることにより、該基材(30)の表面から射出される遠赤外線の射出量を多くすることができる。そして、射出量の多い遠赤外線を集光して遠赤外線密度を高めて、加熱対象物に集中的に射出することもできる。これにより、輻射による暖房の能力が増加すると同時に、加熱対象物を効率よく暖めることができる。
【0033】
また、上記第7の発明によれば、第6の発明と比べて、基材(30)の表面積を広くすることができるので、さらに遠赤外線の射出量を多くすることができる。また、遠赤外線の集光箇所を増やすことにより、その集光した遠赤外線を広範囲に射出することができる。これにより、輻射による暖房の能力がさらに増加すると同時に、加熱対象物をさらに効率良く暖めることができる。ただし、複数のうちの1つの集光した遠赤外線密度は、第6の発明における遠赤外線密度に比べて少ない。
【0034】
また、上記第8の発明によれば、上記前面パネル(21)と対向しない加熱対象物であっても、その加熱対象物に対向するように斜板の角度を設定することにより、確実に加熱対象物へ遠赤外線を射出することができる。これにより、どのような位置に加熱対象物があっても、容易に該加熱対象物を暖めることができる。具体的には、壁の上部に室内機(2)が設置されている場合に、加熱対象物である人が床面付近にいても暖めることができる。
【0035】
また、上記第9の発明によれば、上記前面パネル(21)の前方に透過性の真空パネル(42)を設置することにより、上記基材(30)の表面を覆いつつ、遠赤外線だけは真空パネル(42)を透過して、加熱対象物に射出することができる。これにより、人体が基材(30)の表面に接触することなく輻射による暖房を行うことができるので、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
−空気調和装置の構成−
図1に示すように、本実施形態に係る空気調和装置(1)は、室内の暖房運転と冷房運転とを切換可能に構成されたヒートポンプ式の空気調和装置である。また、該空気調和装置(1)は、室内機(2)と室外機(3)とが個別に設けられたセパレートタイプの空気調和装置である。上記室内機(2)は室内に、上記室外機(3)は屋外に設置される。上記室内機(2)と上記室外機(3)とが第1連絡配管(4)及び第2連絡配管(5)で接続されて冷媒回路(10)が構成されている。
【0038】
上記冷媒回路(10)は、圧縮機(11)、四路切換弁(12)、空気温度調整用の熱交換器である室内熱交換器(13)、膨張弁(14)及び室外熱交換器(15)が順に冷媒配管で接続された閉回路で構成されている。そして、この冷媒回路(10)に封入された冷媒が該冷媒回路(10)を循環して冷凍サイクルを行うことにより、暖房運転又は冷房運転が行われる。
【0039】
上記空気調和装置(1)には、図2に示すように、暖房運転或いは冷房運転の制御を行うためのコントローラ(50)が設けられている(図2(A)参照)。上記コントローラ(50)は、図示しないが、前面に操作パネルが配置され、内部にはマイクロコンピュータを装着した制御基板が設けられている。
【0040】
〈室外機〉
上記室外機(3)は、図1の冷媒系統図に示すように、圧縮機(11)、四路切換弁(12)、膨張弁(14)及び室外熱交換器(15)を主な構成要素としている。
【0041】
上記圧縮機(11)には、図示しないが、電気配線を介してインバータが接続されている。上記インバータは、圧縮機(11)に電流を供給するとともに、その電流の周波数を変化することが可能に構成されている。つまり、上記圧縮機(11)の容量は、インバータにより自在に変更することが可能である。また、上記圧縮機(11)には、冷媒を吸入するための冷媒吸入口と、冷媒を吐出するための冷媒吐出口が設けられている。
【0042】
上記四路切換弁(12)は、第1から第4のポート(12a,12b,12c,12d)が設けられ、該四路切換弁(12)の切換動作により、第1状態から第2状態、又は第2状態から第1状態へ変更可能に構成されている。ここで、第1状態とは、第1ポート(12a)と第3ポート(12c)とが連通すると同時に第2ポート(12b)と第4ポート(12d)とが連通する状態であり、第2状態とは、第1ポート(12a)と第4ポート(12d)とが連通すると同時に第2ポート(12b)と第3ポート(12c)とが連通する状態である。また、上記四路切換弁(12)の第1ポート(12a)には上記圧縮機(11)の冷媒吐出口が、上記第2ポート(12b)には上記圧縮機(11)の冷媒吸入口が、上記第3ポート(12c)には、上記室内機(2)の室内熱交換器(13)が、上記第4ポート(12d)には、上記室外熱交換器(15)がそれぞれ接続されている。
【0043】
上記室外熱交換器(15)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器で構成され、図示していないが、該室外熱交換器(15)は、伝熱管が複数パスに配列され、該伝熱管と直交して多数のアルミフィンが設置されている。また、上記室外熱交換器(15)の近傍には、図示していないが、室外ファンが設けられている。
【0044】
上記膨張弁(14)は、開度が調節可能な電子膨張弁(14)であり、その開度は適宜、上記コントローラ(50)からの電気信号によって変更可能に構成されている。
【0045】
〈室内機〉
次に、本発明の特徴である室内機(2)について、図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図2の(A)は室内機(2)の正面図、(B)は上面図、(C)は左側面図を示し、図3は図2の(B)におけるIII−IIIの縦断面図を示している。
【0046】
上記室内機(2)は、室内空間の床面に配置されて、該室内空間へ温風或いは冷風を吹き出すように構成された床置型の室内機である。
【0047】
上記室内機(2)は、図2に示すように、略直方体形状のケーシング(20)を備え、上記室内機(2)の内部には、図3の断面図に示すように、空気通路(23)が形成されている。
【0048】
上記空気通路(23)には、1つの吸込口(24b)と2つの吹出口(24a,24c)とに連通している。該吸込口(24b)はケーシング(20)の中央に、該吹出口(24a,24c)はケーシング(20)の上部と下部とにそれぞれ配置されている。
【0049】
上記吸込口(24b)の近傍には室内熱交換器(13)が、上方の吹出口(24a)の近傍には第1送風ファン(16a)が設置され、下方の吹出口(24c)の近傍には第2送風ファン(16b)が設置されている。尚、上記室内熱交換器(13)は、上記室外熱交換器(15)と同様に、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器で構成され、上記第1、第2送風ファン(16a,16b)は、それぞれクロスフローファンで構成されている。
【0050】
また、上記第1送風ファン(16a)と上方の吹出口(24a)との間には、該第1送風ファン(16a)から吹き出された空気の風向を調節するための第1水平フラップ(22a)が、上記第2送風ファン(16b)と下方の吹出口(24c)との間には、該第2送風ファン(16b)から吹き出された空気の風向を調節するための第2水平フラップ(22b)がそれぞれ設けられている。この第1及び第2水平フラップ(22a,22b)は、図示していないが、支軸が設けられ、該支軸を介して上記ケーシング(20)に取り付けられている。そして、この支軸が回転することにより、この第1及び第2水平フラップ(22a,22b)は傾動可能に構成されている。
【0051】
一方、上記ケーシング(20)の前方には、前面パネル(21)が取り付けられている。そして、上記前面パネル(21)の中央には上記吸込口(24b)が形成され、上部及び下部には上記吹出口(24a,24c)が形成されている。
【0052】
上記吸込口(24b)には格子状のグリル(25)が形成されている。そして、該格子状のグリル(25)の内側(前面パネル(21)の中央側)には、発熱手段(60)が設けられている。該発熱手段(60)は、ヒータであって、基板である輻射パネル(30)と面状発熱体である輻射パネルヒータ(40)とを備えている。
【0053】
上記輻射パネル(30)は、アルミニウムなど熱伝導性のよい材料で形成され、前面パネル(21)の基板を兼用している。
【0054】
上記輻射パネルヒータ(40)は輻射パネル(30)の背面全体に設けられ、加熱可能に構成されている。つまり、上記輻射パネルヒータ(40)は、4フッ化エチレン樹脂と導電性カーボンとの複合物を厚さ0.11mmのシート状に成形した平面状の発熱体である。また、上記輻射パネルヒータ(40)には、該輻射パネルヒータ(40)と電気的に連通した2つの電極(41)が設けられ、この電極(41)は、電気配線を介して電源部(45)に接続されている。そして、この電源部(45)により、上記輻射パネルヒータ(40)に対して通電が行われ、該輻射パネルヒータ(40)を発熱する。ここで、図示していないが、上記輻射パネル(30)と上記格子状のグリル(25)との間は断熱され、上記輻射パネルヒータ(40)の熱は、上記輻射パネル(30)のみに伝わるように構成されている。
【0055】
尚、上記電源部(45)は、室内機(2)の外部の外部電源であってもよい。また、上記電源部(45)は、コントローラ(50)の制御基板に通電を行う電源部(電源手段)を兼用していてもよい。
【0056】
〈コントローラ〉
上記コントローラ(50)は、図2の(A)に示すように、上記室内機(2)の本体の右上に取り付けられている。上記コントローラ(50)の操作パネルには、運転スイッチ、冷暖切換スイッチ、及び輻射パネルヒータ運転スイッチ等が設けられ、室内空間の温度状況に合わせた運転操作が行えるように構成されている。
【0057】
−空気調和装置の運転動作−
次に、本実施形態に係る空気調和装置(1)の運転動作について説明する。
【0058】
〈暖房運転〉
上記空気調和装置(1)の暖房運転では、上記四路切換弁(12)が第1状態に切り換わり、上記冷媒回路(10)の冷媒が、図1における実線の矢印が示す方向に循環する。この冷媒の循環によって、室内熱交換器(13)が凝縮器、室外熱交換器(15)が蒸発器として機能し、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0059】
上記室内機(2)のコントローラ(50)において、暖房運転が選択されるとともに、運転スイッチがONされると、上記圧縮機(11)が起動して、該圧縮機(11)の冷媒吐出口から高圧ガス冷媒が吐出される。吐出された高圧ガス冷媒は、第1連絡配管(4)を通り、上記室内機(2)の室内熱交換器(13)へ流入する。該室内熱交換器(13)に流入した高圧ガス冷媒は、該高圧ガス冷媒より温度の低い室内空間に放熱を行いながら凝縮して高圧液冷媒となる。高圧液冷媒となった冷媒は、室内熱交換器(13)を流出するとともに、第2連絡配管(5)を通過して膨張弁(14)に流入する。該膨張弁(14)に流入した高圧液冷媒は、減圧されて低圧液冷媒となり、室外熱交換器(15)に流入する。該室外熱交換器(15)に流入した低圧液冷媒は、該低圧液冷媒より温度の高い屋外から吸熱を行いながら蒸発して低圧ガス冷媒となる。低圧ガス冷媒となった冷媒は室外熱交換器(15)を流出して、上記圧縮機(11)の冷媒吸入口へ吸入される。そして、上記圧縮機(11)にて再び圧縮され、高圧ガス冷媒となって圧縮機(11)から吐出される。
【0060】
上記暖房運転時は、冷媒が以上のように冷媒回路(10)内を循環することにより、室内の暖房が行われる。
【0061】
次に、室内機(2)における暖房動作について、図3を参照しながら説明する。ここで、実線の矢印は空気の流れを示し、波線の矢印は遠赤外線の射出方向を示している。
【0062】
図3に示す室内機(2)の第1及び第2送風ファン(16a,16b)が起動すると、室内空気が、吸込口(24b)よりケーシング(20)内へ取り込まれる。そして、ケーシング(20)内に取り込まれた空気は、室内熱交換器(13)を通過する際に、室内熱交換器(13)内を通過する高温高圧冷媒から熱を吸熱して暖められる。この暖められた空気は、第1及び第2吹出口(24a,24c)へ向かって流れ、第1吹出口(24a)の近傍の第1水平フラップ(22a)及び、第2吹出口(24c)の近傍の第2水平フラップ(22b)により吹出方向が変えられて、上記室内機(2)から室内空間に向かって吹き出される。
【0063】
一方、上記室内機(2)の輻射パネル(30)は、該輻射パネル(30)に取り付けられた輻射パネルヒータ(40)に必要に応じて通電することにより、加熱される。加熱された輻射パネルは、対向する低温の加熱対象物に向かって、そのパネルの表面温度に応じた量の遠赤外線を射出する。そして、この遠赤外線の射出により、加熱対象物が暖められる。
【0064】
〈冷房運転〉
上記空気調和装置(1)の冷房運転では、上記四路切換弁(12)が第2状態に切り換わり、上記冷媒回路(10)の冷媒が、図1における破線の矢印が示す方向に循環する。そして、この冷媒の循環によって、室内熱交換器(13)が蒸発器、室外熱交換器(15)が凝縮器として機能し、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0065】
上記室内機(2)のコントローラ(50)において、冷房運転が選択されるとともに、運転スイッチがONされると、上記圧縮機(11)が起動して、該圧縮機(11)の冷媒吐出口から高圧ガス冷媒が吐出される。吐出された高圧ガス冷媒は室外熱交換器(15)へ流入する。該室外熱交換器(15)に流入した高圧ガス冷媒は、該高圧ガス冷媒より温度の低い庫外に放熱を行いながら凝縮して高圧液冷媒となる。高圧液冷媒となった冷媒は、室外熱交換器(15)を流出するとともに、膨張弁(14)に流入する。該膨張弁(14)に流入した高圧液冷媒は、減圧されて低圧液冷媒となり、第2連絡配管(5)を通過して室内熱交換器(13)に流入する。該室内熱交換器(13)に流入した低圧液冷媒は、該低圧液冷媒より温度の高い室内空間から吸熱を行いながら蒸発して低圧ガス冷媒となり、室内空気を冷却する。低圧ガス冷媒となった冷媒は室内熱交換器(13)を流出して、上記圧縮機(11)の冷媒吸入口へ吸入される。そして、上記圧縮機(11)にて再び圧縮され、高圧ガス冷媒となって圧縮機(11)から吐出される。
【0066】
上記冷房運転時は、冷媒が以上のように冷媒回路(10)内を循環することにより、室内の冷房が行われる。
【0067】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上記前面パネル(21)を、単なるケーシングではなく、その一部を遠赤外線が射出可能な輻射パネル(30)として構成している。これにより、上記室内熱交換器(13)と上記第1、第2送風ファン(16a,16b)とを用いた温風による暖房だけでは賄うことができなかった暖房負荷を、上記熱輻射パネル(30)を用いた輻射による暖房によって補うことができる。これにより、上記室内機(2)の大きさを変えることなく、発熱手段(60)による暖房を付加させることによって、暖房能力を向上させることができる。
【0068】
また、上記輻射パネル(30)の背面全体に上記輻射パネルヒータ(40)を取り付けることにより、該輻射パネル(30)全体を略均一に加熱することができるので、上記輻射パネル(30)の表面全体において、略均一な温度分布を得ることができる。以上より、その温度に比例して射出される遠赤外線の射出量も略均一にすることができるので、遠赤外線の輻射効率を高めることができ、結果として、熱輻射による暖房効率を向上させることができる。
【0069】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0070】
本実施形態の発熱手段(60)は、輻射パネルヒータ(40)を輻射パネル(30)の背面に取り付けたが、本発明の発熱手段(60)は、図4(A)に示すように、輻射パネル(30)の前面に輻射パネルヒータ(40)を取り付けてもよい。また、上記発熱手段(60)は、図4(B)に示すように、輻射パネル(30)の前面及び背面の両方に輻射パネルヒータ(40)取り付けてもよいし、図4(C)に示すように、輻射パネル(30)と輻射パネル(30)との間に輻射パネルヒータ(40)を挟み込んでもよい。
【0071】
また、本実施形態の発熱手段(60)は、上記輻射パネルヒータ(40)を輻射パネル(30)の表面全体に取り付けたが、本発明の発熱手段(60)は、図5(A)に示すように、輻射パネル(30)の一側部に輻射パネルヒータ(40)を取り付けてもよし、図5(B)に示すように、輻射パネル(30)の両側部に輻射パネルヒータ(40)を取り付けてもよい。また、本発明の発熱手段(60)は、図5(C)に示すように、輻射パネル(30)の上端部及び下端部に輻射パネルヒータ(40)を取り付けてもよい。つまり、上記輻射パネル(30)の表面の一部に輻射パネルヒータ(40)を取り付けてもよい。
【0072】
また、本実施形態の発熱手段(60)は、上記輻射パネル(30)の形状を矩形状の平板であったが、本発明の輻射パネル(30)は、図6(A)に示すように、前面が1つの凹状曲面で形成されてもよいし、図6(B)に示すように、前面が複数の凹状曲面で形成されてもよい。また、本発明の輻射パネル(30)は、図6(C)に示すように、略同一角度に傾斜した複数の斜板で形成されてもよい。図6(C)の例は、壁掛け式の室内機で床面付近を暖房するのに用いることができる。
【0073】
上記図6の輻射パネル(30)は、背面に輻射パネルヒータ(40)が設けられている。しかしながら、本発明の発熱手段(60)は、輻射パネルヒータ(40)を輻射パネル(30)の前面や斜板の表面に設けるようにしてもよい。つまり、上記輻射パネルヒータ(40)を1つの凹状曲面の表面、複数の凹状曲面又は斜板の表面に設けるようにしてもよい。また、上記輻射パネルヒータ(40)は、図4(C)に示すように、輻射パネル(30)の内部に設けるようにしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、上記輻射パネル(30)の材質は、熱伝導率の高い材質であったが、糖類や塩化カルシウムを含む材質、いわゆる蓄熱材であってもよい。
【0075】
また、上記上記輻射パネル(30)の輻射面に人が触れないように、図3の仮想線で示すように、該輻射面の前方に真空パネル(42)が設置されてもよい。
【0076】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、空気調和装置における暖房能力の向上対策について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、実施形態に係る空気調和装置の冷媒回路図である。
【図2】図2(A)は実施形態に係る空気調和装置の室内機の正面図であり、図2(B)はその室内機の上面図であり、図2(C)はその室内機の左側面図である。
【図3】図3は、図2(B)のIII−III線における断面図である。
【図4】図4その他の実施形態に係る発熱手段の斜視図である。図4(A)は、輻射パネルの前面全体に輻射パネルヒータが取り付けられた発熱手段の斜視図であり、図4(B)は、輻射パネルの前面及び背面全体に輻射パネルヒータが取り付けられた発熱手段の斜視図であり、図4(C)は、輻射パネルと輻射パネルとの間に輻射パネルヒータが取り付けられた発熱手段の斜視図である。
【図5】図5は、その他の実施形態に係る発熱手段の斜視図である。図5(A)は、輻射パネルの片側に輻射パネルヒータが取り付けられた発熱手段の斜視図であり、図5(B)は、輻射パネルの両側に輻射パネルヒータが取り付けられた発熱手段の斜視図であり、図5(C)は、輻射パネルの上端及び下端に輻射パネルヒータが取り付けられた発熱手段の斜視図である。
【図6】図6は、その他の実施形態に係る輻射パネルの縦断面図である。図6(A)は、1つの凹状曲面が形成された輻射パネルの縦断面図であり、図6(B)は、複数の凹状曲面が形成された輻射パネルの縦断面図であり、図6(C)は、複数の斜板が形成された輻射パネルの縦断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 空気調和装置
2 室内機
10 冷媒回路
13 室内熱交換器(熱交換器)
16a 第1送風ファン(送風ファン)
16b 第2送風ファン(送風ファン)
20 ケーシング
21 前面パネル
30 輻射パネル(基材)
40 輻射パネルヒータ(面状発熱体)
41 電極
45 電源部(電源手段)
50 コントローラ
60 発熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(20)と、該ケーシング(20)の前面に設けられた前面パネル(21)と、上記ケーシング(20)の内部に設けられた空気温度調整用の熱交換器(13)及び送風ファン(16a,16b)とを備えた空気調和装置であって、
上記前面パネル(21)に設けられ、基材(30)と、該基材(30)の表面に取り付けられた面状発熱体(40)とを有する発熱手段(60)を備えている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記面状発熱体(40)は、基材(30)の表面の全体に設けられている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記面状発熱体(40)は、基材(30)の表面の一部に設けられている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記基材(30)は、所定の熱伝導率を有する材料で形成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記基材(30)は、蓄熱材で形成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項6】
請求項1において、
上記基材(30)の表面には、1つの凹状曲面が形成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項7】
請求項1において、
上記基材(30)の表面には、複数の凹状曲面が形成されている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項8】
請求項1において、
上記基材(30)は、複数の斜板を備えている
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項9】
請求項1において、
上記発熱手段(60)の前面には、光透過性の真空パネル(42)が設けられている
ことを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−116201(P2008−116201A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287193(P2007−287193)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【分割の表示】特願2007−204435(P2007−204435)の分割
【原出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】