説明

空気調和装置

【課題】熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、このバイパス冷媒管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器とを有する空気調和装置において、過冷却熱交換器の出口における冷媒の過冷却度の管理を行うとともに、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力を確保できるようにする。
【解決手段】空気調和装置1は、冷房運転時に室外熱交換器23において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機21の吸入側に戻すバイパス冷媒管26と、このバイパス冷媒管26を流れる冷媒によって室外熱交換器23において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器25とを有しており、冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力以上である場合に、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度に近づくように機器を制御する過冷却度制御を行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置、特に、熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、このバイパス冷媒管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器とを有する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2005−345069号公報)に示すように、熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、このバイパス冷媒管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器とを有する空気調和装置がある。この空気調和装置では、圧縮機の吸入側における過熱度が目標過熱度で一定になるようにバイパス冷媒管に設けられたバイパス膨張弁を制御することで、過冷却熱交換器の出口における冷媒の過冷却度が確保されるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような圧縮機の吸入側における過熱度が目標過熱度で一定になるようにバイパス冷媒管に設けられたバイパス膨張弁を制御するだけの構成では、冷媒回路内で余剰冷媒が発生した場合であっても、積極的な余剰冷媒の処理を行うことができず、熱源側熱交換器における凝縮能力が低下しやすくなる。
【0004】
このため、過冷却熱交換器の出口における冷媒の過冷却度の管理を行うとともに、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力を確保することが好ましい。
【0005】
本発明の課題は、熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、このバイパス冷媒管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器とを有する空気調和装置において、過冷却熱交換器の出口における冷媒の過冷却度の管理を行うとともに、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点にかかる空気調和装置は、少なくとも1つの熱源ユニットと、少なくとも1つの利用ユニットと、液冷媒連絡管と、ガス冷媒連絡管とを備えている。熱源ユニットは、冷媒を圧縮する圧縮機構と、圧縮機構において圧縮された冷媒を冷却媒体と熱交換させることによって凝縮させる熱源側熱交換器と、熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、バイパス冷媒管に設けられておりバイパス冷媒管を流れる冷媒を減圧するバイパス膨張機構と、熱源側熱交換器において凝縮した冷媒をバイパス膨張機構において減圧された冷媒と熱交換させることによって冷却する過冷却熱交換器とを有している。利用ユニットは、過冷却熱交換器において冷却された冷媒を加熱媒体と熱交換させることによって蒸発させる利用側熱交換器を有している。液冷媒連絡管は、熱源ユニット及び利用ユニットに接続されており、過冷却熱交換器において冷却された冷媒を利用側熱交換器に送る冷媒管である。ガス冷媒連絡管は、熱源ユニット及び利用ユニットに接続されており、利用側熱交換器において蒸発した冷媒を圧縮機構に送る冷媒管である。そして、この空気調和装置は、冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力以上である場合に、熱源側熱交換器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度に近づくように熱源ユニットを構成する機器を制御する過冷却度制御を行うことが可能であり、冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力未満である場合に、過冷却熱交換器のバイパス冷媒管側の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度に近づくように熱源ユニットを構成する機器を制御する過熱度制御を行うことが可能である。
【0007】
熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、このバイパス冷媒管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器とを有する構成において、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力の変化は、主として、熱源側熱交換器の出口における冷媒の過冷却度の変化として現れることになる。このため、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力を確保するためには、熱源側熱交換器の出口における冷媒の過冷却度を適切なものになるようにすればよいことになる。また、冷媒回路内の余剰冷媒の発生により熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力が低下すると、冷凍サイクル運転における高圧が上昇する傾向がある。
【0008】
そこで、この空気調和装置では、冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力以上である場合に、熱源側熱交換器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度に近づくように熱源ユニットを構成する機器を制御する過冷却度制御を行うようにし、冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力未満である場合に、過冷却熱交換器のバイパス冷媒管側の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度に近づくように熱源ユニットを構成する機器を制御する過熱度制御を行うようにしている。
【0009】
これにより、この空気調和装置では、過冷却熱交換器においては、バイパス冷媒管を流れる冷媒によって利用側熱交換器に送られる冷媒の冷却を行いつつ、過冷却熱交換器の出口における冷媒(すなわち、過冷却熱交換器から利用側熱交換器に送られる冷媒)の過冷却度の管理を行うとともに、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力を確保することができる。
【0010】
本発明の第2観点にかかる空気調和装置は、第1観点にかかる空気調和装置において、熱源ユニットは、複数あり、液冷媒連絡管及びガス冷媒連絡管を介して並列接続されており、複数の熱源ユニットにおける過冷却度に基づいて、目標過冷却度の値を補正する過冷却度ばらつき防止制御を行うことが可能である。
【0011】
液冷媒連絡管及びガス冷媒連絡管を介して並列接続された複数の熱源ユニットが採用される場合には、各熱源ユニットにおいて過冷却度制御や過冷却度−過熱度成立制御が行われるが、このとき、熱源ユニット間における冷媒の偏流が生じると、熱源ユニット間で過冷却度、すなわち、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力がばらつくおそれがある。
【0012】
そこで、この空気調和装置では、複数の熱源ユニットにおける過冷却度に基づいて、目標過冷却度の値を補正する過冷却度ばらつき防止制御を行うようにしている。
【0013】
これにより、この空気調和装置では、各熱源ユニットにおける過冷却度制御を行いつつ、熱源ユニット間における過冷却度のばらつきを小さくすることができる。
【0014】
本発明の第3観点にかかる空気調和装置は、第2観点にかかる空気調和装置において、過冷却度ばらつき防止制御は、複数の熱源ユニットのうち過冷却度から目標過冷却度を差し引くことによって得られる過冷却度偏差の絶対値が所定の偏差以下となっており、かつ、過冷却度が所定の過冷却度以下となっているという補正実行条件を満たす熱源ユニットが存在する場合に、補正実行条件を満たす熱源ユニットの目標過冷却度を現在値よりも大きな値になるように補正し、複数の熱源ユニットすべての過冷却度が所定の過冷却度よりも大きくなっているという補正解除条件を満たす場合に、目標過冷却度の補正を解除するものである。
【0015】
この空気調和装置では、補正実行条件を満たす熱源ユニットを流れる冷媒の流量が減少して他の熱源ユニットに分配されやすくなるため、熱源ユニット間における過冷却度のばらつきを小さくすることができる。そして、熱源ユニット間における過冷却度のばらつきが小さくなり、複数の熱源ユニットすべての過冷却度が所定の補正解除条件を満たすようになると、目標過冷却度の補正が解除されるため、速やかに通常の過冷却度制御に復帰させることができる。
【0016】
本発明の第4観点にかかる空気調和装置は、第1〜第3観点のいずれかにかかる空気調和装置において、目標過冷却度は、冷却媒体の温度又は冷却媒体の温度に等価な状態量に応じて変更されるものである。
【0017】
熱源側熱交換器における凝縮能力は、冷媒と冷却媒体との温度差によって変化するため、冷却媒体の温度が異なれば、熱源側熱交換器の出口における冷媒の目標過冷却度の値も異なることになる。
【0018】
そこで、この空気調和装置では、目標過冷却度が冷却媒体の温度又は冷却媒体の温度に等価な状態量に応じて変更されるものとしている。
【0019】
これにより、この空気調和装置では、熱源側熱交換器における凝縮能力の冷却媒体の温度による変化を考慮して適切な制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0021】
本発明の第1観点にかかる空気調和装置では、過冷却熱交換器においては、バイパス冷媒管を流れる冷媒によって利用側熱交換器に送られる冷媒の冷却を行いつつ、過冷却熱交換器の出口における冷媒(すなわち、過冷却熱交換器から利用側熱交換器に送られる冷媒)の過冷却度の管理を行うとともに、熱源側熱交換器における冷媒の凝縮能力を確保することができる。
【0022】
本発明の第2観点にかかる空気調和装置では、各熱源ユニットにおける過冷却度制御や過冷却度−過熱度成立制御を行いつつ、熱源ユニット間における過冷却度のばらつきを小さくすることができる。
【0023】
本発明の第3観点にかかる空気調和装置では、補正実行条件を満たす熱源ユニットのバイパス冷媒管を流れる冷媒の流量が小さくなるようにバイパス膨張機構が制御されて、補正実行条件を満たす熱源ユニットを流れる冷媒の流量が減少して他の熱源ユニットに分配されやすくなるため、熱源ユニット間における過冷却度のばらつきを小さくすることができる。そして、熱源ユニット間における過冷却度のばらつきが小さくなり、複数の熱源ユニットすべての過冷却度が所定の補正解除条件を満たすようになると、目標過冷却度の補正が解除されるため、速やかに通常の過冷却度制御や過冷却度−過熱度成立制御に復帰させることができる。
【0024】
本発明の第4観点にかかる空気調和装置では、熱源側熱交換器における凝縮能力の冷却媒体の温度による変化を考慮して適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態及びその変形例にかかる空気調和装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態及びその変形例にかかる空気調和装置の制御ブロック図である。
【図3】第1実施形態にかかる過冷却度制御を含む制御のフローチャートである。
【図4】第1実施形態の変形例2にかかる過冷却度制御−過熱度成立制御を含む制御のフローチャートである。
【図5】第1実施形態の変形例3にかかる過冷却度−過熱度−液管温度成立制御及び過熱度−液管温度成立制御を含む制御のフローチャートである。
【図6】第1実施形態の変形例4にかかる過冷却度制御−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御及び過熱度−−液管温度−過熱圧縮防止成立制御のフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる空気調和装置の概略構成図である。
【図8】第2実施形態にかかる空気調和装置の制御ブロック図である。
【図9】第2実施形態にかかる過冷却度ばらつき防止制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について説明する。
【0027】
(第1実施形態)
(1)空気調和装置の構成
図1は、本発明の第1実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の室内の冷暖房に使用される装置である。空気調和装置1は、主として、1台の熱源ユニットとしての室外ユニット2と、互いが並列に接続された複数台(本実施形態では、2台)の利用ユニットとしての室内ユニット5a、5bと、室外ユニット2と室内ユニット5a、5bとを接続する液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7とを備えている。すなわち、本実施形態の空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と、室内ユニット5a、5bと、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7とが接続されることによって構成されている。
【0028】
<室内ユニット>
室内ユニット5a、5bは、ビル等の室内の天井に埋め込みや吊り下げ等により、又は、室内の壁面に壁掛け等により設置されている。室内ユニット5a、5bは、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
【0029】
次に、室内ユニット5a、5bの構成について説明する。尚、室内ユニット5aと室内ユニット5bとは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット5aの構成のみ説明し、室内ユニット5bの構成については、それぞれ、室内ユニット5aの各部を示す添え字「a」の代わりに添え字「b」を付して、各部の説明を省略する。
【0030】
室内ユニット5aは、主として、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10a(室内ユニット5bでは、室内側冷媒回路10b)を有している。この室内側冷媒回路10aは、主として、利用側膨張機構としての室内膨張弁51aと、利用側熱交換器としての室内熱交換器52aとを有している。
【0031】
本実施形態において、室内膨張弁51aは、室内側冷媒回路10a内を流れる冷媒の流量調節や減圧等を行うために、室内熱交換器52aの液側に接続された電動膨張弁である。
【0032】
室内熱交換器52aは、冷房運転時には、過冷却熱交換器26(後述)において冷却された冷媒を加熱媒体としての室内空気等と熱交換させることによって蒸発させる蒸発器として機能し、暖房運転時には、圧縮機21(後述)において圧縮された冷媒を冷却媒体としての室内空気等と熱交換させることによって凝縮させる凝縮器として機能する熱交換器である。
【0033】
また、室内ユニット5aは、室内ユニット5aを構成する各部の動作を制御する室内側制御部53aを有している。そして、室内側制御部53aは、室内ユニット5aの制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット5aを個別に操作するためのリモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、室外ユニット2との間で伝送線8を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0034】
<室外ユニット>
室外ユニット2は、ビル等の室外に設置されており、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して室内ユニット5a、5bに接続されており、室内ユニット5a、5bの間で冷媒回路10を構成している。
【0035】
次に、室外ユニット2の構成について説明する。室外ユニット2は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10cを有している。この室外側冷媒回路10cは、主として、圧縮機構としての圧縮機21と、四路切換弁22と、熱源側熱交換器としての室外熱交換器23と、熱源側膨張機構としての室外膨張弁24と、過冷却熱交換器25と、バイパス冷媒管26と、アキュムレータ27と、液側閉鎖弁28と、ガス側閉鎖弁29とを有している。
【0036】
本実施形態において、圧縮機21は、冷媒を圧縮するために設けられた容積式圧縮機であり、圧縮機モータ30によって駆動されるようになっている。本実施形態において、圧縮機21は、1台のみであるが、これに限定されず、室内ユニットの接続台数等に応じて、2台以上の圧縮機が並列に接続されていてもよい。
【0037】
四路切換弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れの方向を切り換えるための弁であり、冷房運転時には、室外熱交換器23を圧縮機21において圧縮された冷媒の凝縮器として、かつ、室内熱交換器52a、52bを室外熱交換器23において凝縮した冷媒の蒸発器として機能させるために、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続するとともに圧縮機21の吸入側(具体的には、アキュムレータ27)とガス冷媒連絡管7側とを接続し(図1の四路切換弁22の実線を参照)、暖房運転時には、室内熱交換器52a、52bを圧縮機21において圧縮された冷媒の凝縮器として、かつ、室外熱交換器23を室内熱交換器52a、52bにおいて凝縮した冷媒の蒸発器として機能させるために、圧縮機21の吐出側とガス冷媒連絡管7側とを接続するとともに圧縮機21の吸入側(具体的には、アキュムレータ27)と室外熱交換器23のガス側とを接続することが可能である(図1の四路切換弁22の破線を参照)。
【0038】
室外熱交換器23は、冷房運転時には、圧縮機21において圧縮された冷媒を冷却媒体としての室外空気と熱交換させることによって凝縮させる凝縮器として機能し、暖房運転時には、室外膨張弁24において減圧された冷媒を加熱媒体としての室外空気と熱交換させることによって蒸発させる蒸発器として機能する熱交換器である。室外熱交換器23は、そのガス側が四路切換弁22に接続され、その液側が液冷媒連絡管6側(具体的には、室外膨張弁24及び逆止弁25)に接続されている。そして、冷却媒体又は加熱媒体としての室外空気は、送風ファンとしての室外ファン32によって室外熱交換器23に供給されるようになっている。この室外ファン32は、室外ファンモータ33によって駆動されるプロペラファン等である。
【0039】
本実施形態において、室外膨張弁24は、室外側冷媒回路10c内を流れる冷媒の圧力や流量等の調節を行うために、室外熱交換器23の液側に接続された電動膨張弁である。また、本実施形態において、室外側冷媒回路10cには、室外膨張弁24をバイパスするように逆止弁31が設けられている。逆止弁31は、冷媒が室外熱交換器23から過冷却熱交換器25に向かって流れることは許容するが、冷媒が過冷却熱交換器25から室外熱交換器23に向かって流れることを許容しない弁である。
【0040】
過冷却熱交換器25は、本実施形態において、冷房運転時に室外熱交換器23において凝縮した冷媒を冷却する熱交換器である。過冷却熱交換器25は、本実施形態において、室外膨張弁24及び逆止弁31と液側閉鎖弁28との間に接続されている。
【0041】
バイパス冷媒管26は、室外熱交換器23において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機21の吸入側に戻す冷媒管である。本実施形態において、バイパス冷媒管26は、冷房運転時に室外熱交換器23において凝縮した冷媒の一部を室外膨張弁24及び逆止弁31と過冷却熱交換器25との間の位置から分岐させて過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の入口に接続された入口管34と、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口から圧縮機21の吸入側に戻すように圧縮機21の吸入側(より具体的には、アキュムレータ27の上流側)に接続された出口管35とを有している。この出口管35には、バイパス冷媒管26を流れる冷媒を減圧するためのバイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁36が設けられている。本実施形態において、バイパス膨張弁36は、電動膨張弁からなる。これにより、過冷却熱交換器25は、冷房運転時に室外熱交換器23において凝縮した冷媒をバイパス膨張弁36において減圧された冷媒と熱交換させることによって冷却するようになっている。
【0042】
アキュムレータ27は、四路切換弁22と圧縮機21の吸入側との間に接続されている。
【0043】
液側閉鎖弁28及びガス側閉鎖弁29は、外部の機器・配管(具体的には、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7)との接続口に設けられた弁である。液側閉鎖弁28は、過冷却熱交換器25に接続されている。ガス側閉鎖弁29は、四路切換弁22に接続されている。
【0044】
また、室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、圧縮機21の吸入圧力Psを検出する吸入圧力センサ37と、圧縮機21の吐出圧力Pdを検出する吐出圧力センサ38と、圧縮機21の吸入温度Tsを検出する吸入温度センサ39と、圧縮機21の吐出温度Tdを検出する吐出温度センサ40とが設けられている。本実施形態において、吸入温度センサ39は、アキュムレータ27と圧縮機21との間の位置に設けられている。また、室外熱交換器23の液側(すなわち、冷房運転時における出口側)には、冷媒の温度Tcoを検出する液側温度センサ41が設けられている。過冷却熱交換器25の液側閉鎖弁28側(すなわち、冷房運転時における出口側)には、冷媒の温度(以下、液管温度Tlpとする)を検出する液管温度センサ42が設けられている。また、バイパス冷媒管26の出口管35には、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口を流れる冷媒の温度Tshを検出するバイパス温度センサ43が設けられている。また、室外ユニット2には、室外ファン32によって室外熱交換器23に供給される室外空気の温度Taを検出する室外温度センサ44が設けられている。本実施形態において、吸入温度センサ39、吐出温度センサ40、液側温度センサ41、液管温度センサ42、バイパス温度センサ43、及び、室外温度センサ44は、サーミスタからなる。さらに、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部45を有している。そして、室外側制御部45は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット5a、5bの室内側制御部53a、53bとの間で伝送線8を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。すなわち、室内側制御部53a、53bと室外側制御部45と制御部45、53a、53b間を接続する伝送線8とによって、空気調和装置1全体の運転制御を行う制御部9が構成されている。
【0045】
制御部9は、図2に示されるように、各種センサ37〜44の検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器21(具体的には、圧縮機モータ30)、22、24、32(具体的には、室外ファンモータ33)、36、51a、51b等を制御することができるように接続されている。ここで、図2は、空気調和装置1の制御ブロック図である。
【0046】
<冷媒連絡管>
冷媒連絡管6、7は、空気調和装置1をビル等の設置場所に設置する際に、現地にて施工される冷媒管である。本実施形態において、液冷媒連絡管6は、室外ユニット2及び室内ユニット5a、5bに接続されており、冷房運転時には、過冷却熱交換器25において冷却された冷媒を室内熱交換器52a、52bに送り、暖房運転時には、室内熱交換器52a、52bにおいて凝縮した冷媒を室外熱交換器23に送る冷媒管である。ガス冷媒連絡管7は、室外ユニット2及び室内ユニット5a、5bに接続されており、冷房運転時には、室内熱交換器52a、52bにおいて蒸発した冷媒を圧縮機21に送り、暖房運転時には、圧縮機21において圧縮された冷媒を室内熱交換器52a、52bに送る冷媒管である。
【0047】
以上のように、室内側冷媒回路10a、10bと、室外側冷媒回路10cと、冷媒連絡管6、7とが接続されることによって、冷房運転時には、熱源側熱交換器としての室外熱交換器23において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構としての圧縮機21の吸入側に戻すバイパス冷媒管26と、このバイパス冷媒管26を流れる冷媒によって室外熱交換器23において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器25とを有する空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。そして、本実施形態の空気調和装置1は、室内側制御部53a、53bと室外側制御部45とから構成される制御部9によって、室外ユニット2及び室内ユニット5a、5bの各機器の制御を行い、冷房運転や暖房運転等を行うことができるようになっている。
【0048】
(2)空気調和装置の動作
次に、本実施形態の空気調和装置1の動作(暖房運転と冷房運転)について説明する。尚、以下の説明では、圧縮機構としての圧縮機21の吐出から冷媒の凝縮器として機能する熱源側熱交換器としての室外熱交換器23(冷房運転時)又は利用側熱交換器としての室内熱交換器52a、52b(暖房運転時)の出口に至るまでの間を流れる冷媒の圧力の代表値を「冷凍サイクル運転における高圧(以下の説明では、単に高圧とする)」とし、利用側膨張機構としての室内膨張弁51a、51bの出口から冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器52a、52bを経由して圧縮機21の吸入に至るまでの間(冷房運転時)又は熱源側膨張機構としての室外膨張弁24の出口から冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23を経由して圧縮機21の吸入に至るまでの間(冷房運転時)を流れる冷媒の圧力の代表値を「冷凍サイクル運転における低圧(以下の説明では、単に低圧とする)」とする。
【0049】
<暖房運転>
暖房運転時は、四路切換弁22が図1の破線で示される状態、すなわち、圧縮機21の吐出側がガス側閉鎖弁29及びガス冷媒連絡管7を介して室内熱交換器52a、52bのガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側が室外熱交換器23のガス側に接続された状態にされている。室外膨張弁24は、室外熱交換器23に流入する冷媒を室外熱交換器23において蒸発させることが可能な圧力(すなわち、低圧付近)まで減圧するように開度制御されている。また、液側閉鎖弁28及びガス側閉鎖弁29は、全開状態にされている。各室内膨張弁51a、51bは、利用ユニットとしての室内ユニット5a、5bの空調負荷に応じて開度制御されている。また、バイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁36は、全閉状態にされており、過冷却熱交換器25において、冷媒間の熱交換が行われないようになっている。
【0050】
このような冷媒回路10の状態で、圧縮機21及び室外ファン32等が起動すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて、高圧のガス冷媒となり、四路切換弁22、ガス側閉鎖弁29及びガス冷媒連絡管7を経由して、室内ユニット5a、5bに送られる。
【0051】
そして、室内ユニット5a、5bに送られた高圧のガス冷媒は、室外熱交換器52a、52bにおいて、冷却媒体としての室内空気等と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となった後、室内膨張弁51a、51bを通過する際に、室内膨張弁51a、51bの開度に応じて減圧される。
【0052】
この室内膨張弁51a、51bを通過した冷媒は、液冷媒連絡管6を経由して熱源ユニットとしての室外ユニット2に送られる。そして、室外ユニット2に送られた冷媒は、液側閉鎖弁28及び過冷却熱交換器25を経由して室外膨張弁24に送られてさらに減圧された後に、室外熱交換器23に流入する。そして、室外熱交換器23に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室外ファン32によって供給される加熱媒体としての室外空気と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となり、四路切換弁22を経由してアキュムレータ27に流入する。そして、アキュムレータ27に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。このようにして、本実施形態の空気調和装置1における冷凍サイクル運転としての暖房運転が行われる。
【0053】
<冷房運転>
冷房運転時は、四路切換弁22が図1の実線で示される状態、すなわち、圧縮機21の吐出側が室外熱交換器23のガス側に接続され、かつ、圧縮機21の吸入側がガス側閉鎖弁29及びガス冷媒連絡管7を介して室内熱交換器52a、52bのガス側に接続された状態にされている。室外膨張弁24は、全開状態又は全閉状態にされている。液側閉鎖弁28及びガス側閉鎖弁29は、全開状態にされている。各室内膨張弁51a、51bは、室内ユニット5a、5bの空調負荷に応じて開度制御されている。バイパス膨張弁36は、開度制御されており、過冷却熱交換器25において、室外熱交換器23において凝縮した冷媒がバイパス膨張弁36において減圧された冷媒と熱交換させることによって冷却されるようになっている。尚、本実施形態におけるバイパス膨張弁36の制御の詳細については、後述するものとする。
【0054】
この冷媒回路10の状態で、圧縮機21及び室外ファン32等が起動すると、低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて、高圧のガス冷媒となる。その後、高圧のガス冷媒は、四路切換弁22を経由して室外熱交換器23に送られて、室外ファン32によって供給される冷却媒体としての室外空気と熱交換を行って凝縮して高圧の液冷媒となる。そして、この高圧の液冷媒は、主として、逆止弁31(すなわち、室外膨張弁24が全開状態にされている場合には逆止弁31及び室外膨張弁24の両方、又は、室外膨張弁24が全閉状態にされている場合には逆止弁31のみ)を通過して、過冷却熱交換器25に流入し、バイパス冷媒管26を流れる冷媒と熱交換を行ってさらに冷却されて過冷却状態になる。このとき、室外熱交換器23において凝縮した高圧の液冷媒の一部は、バイパス冷媒管26に分岐され、バイパス膨張弁36によって減圧された後に、圧縮機21の吸入側に戻される。ここで、バイパス膨張弁36を通過する冷媒は、低圧付近まで減圧されることで、その一部が蒸発する。そして、バイパス冷媒管26のバイパス膨張弁36の出口から圧縮機21の吸入側に向かって流れる冷媒は、過冷却熱交換器25を通過して、室外熱交換器23において凝縮した高圧の液冷媒と熱交換を行う。
【0055】
そして、過冷却状態になった高圧の液冷媒は、液側閉鎖弁28及び液冷媒連絡管6を経由して、室内ユニット5a、5bに送られる。この室内ユニット5a、5bに送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁51a、51bによって低圧付近まで減圧されて低圧の気液二相状態の冷媒となって室内熱交換器52a、52bに送られ、室内熱交換器52a、52bにおいて加熱媒体としての室内空気等と熱交換を行って蒸発して低圧のガス冷媒となる。
【0056】
この低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管7を経由して室外ユニット2に送られ、ガス側閉鎖弁29及び四路切換弁22を経由して、アキュムレータ27に流入する。そして、アキュムレータ27に流入した低圧のガス冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。このようにして、本実施形態の空気調和装置1における冷凍サイクル運転としての冷房運転が行われる。
【0057】
このような冷房運転の動作中において、従来と同様に、圧縮機21の吸入側における過熱度SHが目標過熱度SHsで一定になるようにバイパス冷媒管26に設けられたバイパス膨張弁36を制御すると、冷媒回路10内で余剰冷媒が発生した場合であっても、積極的な余剰冷媒の処理を行うことができず、室外熱交換器23における凝縮能力が変動することになる。このため、過冷却熱交換器25の出口における冷媒の過冷却度SCの管理を行うとともに、室外熱交換器23における冷媒の凝縮能力を確保することが好ましい。
【0058】
ところで、本実施形態の空気調和装置1のような、冷房運転時に室外熱交換器23において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機21の吸入側に戻すバイパス冷媒管26と、このバイパス冷媒管26を流れる冷媒によって室外熱交換器23において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器25とを有する構成では、冷媒回路10内に余剰冷媒が発生した場合に室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが変化することになる。すなわち、室外熱交換器23の出口側における余剰冷媒の発生によって変動する室外熱交換器23における冷媒の凝縮能力の変化は、主として、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCの変化として現れることになる。このため、室外熱交換器23における冷媒の凝縮能力を確保するためには、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCを適切なものになるようにすればよいことになる。また、冷媒回路10内の余剰冷媒の発生により室外熱交換器23における冷媒の凝縮能力が低下すると、冷凍サイクル運転における高圧が上昇する傾向がある。
【0059】
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、バイパス膨張弁36の制御として、後述のように、冷房運転時において、冷房運転における高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合に、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくように熱源ユニット2を構成する機器の1つであるバイパス膨張弁36を制御する過冷却度制御を採用している。
【0060】
<過冷却度制御を含む制御>
本実施形態において、冷房運転時における室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCは、吐出圧力センサ38によって検出される圧縮機21の吐出圧力Pdを凝縮温度Tcに相当する飽和温度値に換算し、この凝縮温度Tcから液側温度センサ41によって検出される冷房運転時における室外熱交換器23の出口側における冷媒の温度Tcoを差し引くことによって得られる(すなわち、SC=Tc−Tco)。尚、本実施形態では採用していないが、室外熱交換器23における冷媒の温度を検出する温度センサを設ける場合には、この温度センサによって検出される冷媒の温度を凝縮温度Tcとしたり、室外熱交換器23における冷媒の圧力を検出する圧力センサを設ける場合には、この圧力センサによって検出される冷媒の圧力を凝縮温度Tcに相当する飽和温度値に換算して過冷却度SCを得るようにしてもよい。
【0061】
また、本実施形態において、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHは、吸入圧力センサ37によって検出される圧縮機21の吸入圧力Psを蒸発温度Teに相当する飽和温度値に換算し、バイパス温度センサ43によって検出される冷媒の温度Tshからこの蒸発温度Teを差し引くことによって得られる(すなわち、SH=Tsh―Te)。尚、本変形例では採用していないが、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の入口に温度センサを設けて、この温度センサにより検出される冷媒の温度を蒸発温度Teとしたり、過冷却熱交換器25における冷媒の圧力を検出する圧力センサを設ける場合には、この圧力センサによって検出される冷媒の圧力を蒸発温度Teに相当する飽和温度値に換算して過熱度SHを得るようにしてもよい。
【0062】
そして、本実施形態にかかる過冷却度制御を含む制御は、図3に示されるフローチャートにしたがって行われる。
【0063】
まず、ステップS1において、目標過冷却度SCs及び目標過熱度SHsを設定するとともに、過冷却度SC及び過熱度SHを取得する。
【0064】
次に、ステップS2において、高圧Pdが所定圧力Pds以上であるか判定を行う。
【0065】
そして、ステップS2において、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、ステップS3の過冷却度制御の処理に移行する。この過冷却度制御では、この過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、過冷却度SCが目標過冷却度SCsよりも小さい場合には、バイパス膨張弁36の開度が小さくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、室外熱交換器23内に溜まる液冷媒の量を増加させて、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCsに近づけるようにし、過冷却度SCが目標過冷却度SCsよりも大きい場合には、バイパス膨張弁36の開度が大きくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、室外熱交換器23内に溜まる液冷媒の量を減少させて、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCを目標過冷却度SCsに近づけるようにする。また、ステップS2において、高圧Pdが所定圧力Pds以上でない(すなわち、高圧Pdが所定圧力未満である)と判定された場合には、ステップS4の過熱度制御の処理に移行する。この過熱度制御は、この過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、過熱度SHが目標過熱度SHsよりも小さい場合には、バイパス膨張弁36の開度が小さくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、バイパス冷媒管26を流れる冷媒の流量が少なくなるようにして、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の温度が高くなるようにして、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における過熱度SHを目標過熱度SHsに近づけるようにし、過熱度SHが目標過熱度SHsよりも大きい場合には、バイパス膨張弁36の開度が大きくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、バイパス冷媒管26を流れる冷媒の流量が多くなるようにして、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の温度が低くなるようにして、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における過熱度SHを目標過熱度SHsに近づけるようにする。
【0066】
そして、ステップS3、S4の処理が行われた後には、再び、ステップS1の処理に戻り、ステップS2における判定、及び、ステップS3における過冷却度制御又はステップS4における過熱度制御が繰り返し行われる。
【0067】
このように、本実施形態の空気調和装置1では、ステップS2において、高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合には、ステップS3における過冷却度制御を行い、ステップS2において、高圧Pdが所定圧力Pds未満である場合には、ステップS4の過熱度制御を行うようにしているため、過冷却熱交換器25においては、バイパス冷媒管26を流れる冷媒によって室内熱交換器51a、51bに送られる冷媒の冷却を行いつつ、過冷却熱交換器25の出口における冷媒(すなわち、過冷却熱交換器25から室内熱交換器51a、51bに送られる冷媒)の過冷却度SCの管理を行うとともに、室外熱交換器23における冷媒の凝縮能力を確保することができる。
【0068】
(3)変形例1
上述の実施形態の空気調和装置1において、熱源側熱交換器としての室外熱交換器23における凝縮能力は、冷媒と冷却媒体としての室外空気との温度差によって変化するため、室外空気の温度が異なれば、室外熱交換器23の出口における冷媒の目標過冷却度SCsの値も異なることになる。
【0069】
そこで、本変形例の空気調和装置1では、目標過冷却度SCsが室外空気の温度に応じて変更されるものとしている。具体的には、室外温度センサ44によって検出される室外空気の温度Taが高くなるにつれて、目標過冷却度SCsが小さくなるように変更している。尚、本変形例では採用していないが、室外側制御部45を構成する制御基板の保護等のために設けられた温度センサによって検出される温度等のように、室外温度センサ44以外のセンサ類で冷却媒体としての室外空気の温度に等価な状態量が利用できる場合には、このような状態量に応じて目標過冷却度SCsを変更するようにしてもよい。
【0070】
これにより、本変形例の空気調和装置1では、室外熱交換器23における凝縮能力の室外空気の温度による変化を考慮して適切な制御を行うことができる。
【0071】
(4)変形例2
上述の実施形態及び変形例1の空気調和装置1のように、高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合において、過冷却度制御だけが採用される場合には、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが成り行きになってしまうため、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒が湿り状態(すなわち、過熱度SHがゼロ)になったり、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒が過度な過熱状態になったりするおそれがある。
【0072】
そこで、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力Pds以下である場合だけでなく、高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合においても、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁36を制御する過熱度制御を行えるようにし、過冷却度SCから目標過冷却度SCsを差し引くことによって得られる過冷却度偏差ΔSC及び過熱度SHから目標過熱度SHsを差し引くことによって得られる過熱度偏差ΔSHに基づいて、過冷却度制御及び過熱度制御のいずれかを行う過冷却度−過熱度成立制御を行うようにしている。
【0073】
そして、本変形例にかかる過冷却度−過熱度成立制御を含む制御は、図4に示されるフローチャートにしたがって行われる。
【0074】
まず、ステップS11において、目標過冷却度SCs及び目標過熱度SHsを設定するとともに、過冷却度SC及び過熱度SHを取得する。ここで、目標過冷却度SCsは、変形例1と同様に、冷却媒体としての室外空気の温度又は室外空気の温度に等価な状態量に応じて変更されるようにしてもよい。
【0075】
次に、ステップS12において、高圧Pdが所定圧力Pds以上であるか判定を行う。
【0076】
そして、ステップS12において、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、ステップS13〜S15の過冷却度−過熱度成立制御の処理に移行し、ステップS12において、高圧Pdが所定圧力Pds以上でない(すなわち、高圧Pdが所定圧力未満である)と判定された場合には、ステップS16の過熱度制御の処理に移行して、この過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。尚、ステップS16の過熱度制御の処理は、上述の実施形態の過冷却度制御を含む制御のステップS4と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0077】
次に、ステップS13において、過冷却度SC及び目標過冷却度SCsから過冷却度偏差ΔSCを演算し、過熱度SH及び目標過熱度SHsから過熱度偏差ΔSHを演算して、過冷却度偏差ΔSCが過熱度偏差ΔSHよりも大きいかどうかの判定を行う。この判定は、過冷却度偏差ΔSCと過熱度偏差ΔSHとを比較して偏差が大きい側が優先的に制御されるべきであるという考えに基づいて行われるものである。
【0078】
そして、ステップS13において、過冷却度偏差ΔSCが過熱度偏差ΔSHよりも大きいと判定された場合には、ステップS3の過冷却度制御の処理に移行して、上述の実施形態と同様、過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。また、ステップS13において、過冷却度偏差ΔSCが過熱度偏差ΔSHよりも大きくないと判定された場合には、ステップS15の過熱度制御の処理に移行して、この過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。尚、ステップS16の過熱度制御の処理は、上述の実施形態の過冷却度制御を含む制御のステップS4と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0079】
そして、ステップS14、S15の処理が行われた後には、再び、ステップS11の処理に戻り、ステップS12における判定、ステップS16における過熱度制御、ステップS13における判定、及び、ステップS14における過冷却度制御又はステップS15における過熱度制御が繰り返し行われる。
【0080】
このように、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、単に、過冷却度制御を行うのではなく、ステップS13〜S15において、過冷却度偏差ΔSCと過熱度偏差ΔSHとを比較して偏差が大きい側の制御を優先的に行うようにしているため、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SC及び過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHのいずれについても、各目標値SCs、SHsとの偏差が大きい状態になるのを避けることができる。
【0081】
これにより、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合においても、過冷却度制御と過熱度制御とを使い分けて、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにしつつ、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにすることができる。
【0082】
(5)変形例3
上述の実施形態及び変形例1、2の空気調和装置1のように、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合においては、過冷却度制御又は過冷却度−過熱度成立制御だけが採用され、高圧Pdが所定圧力以上でないと判定された場合においては、過熱度制御だけが採用された場合には、過冷却熱交換器25の出口における冷媒(すなわち、過冷却熱交換器25から室内熱交換器52a、52bに送られる冷媒)の温度Tlpが成り行きになってしまうため、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低い状態になってしまうおそれがある。
【0083】
そこで、本変形例の空気調和装置1では、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが所定の最低液管温度Tlpmまで低下しないようにバイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁36を制御する液管温度制御を行えるようにし、過冷却度制御と併用する場合には、過冷却度SCから目標過冷却度SCsを差し引くことによって得られる過冷却度偏差ΔSC及び過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpから最低液管温度Tlpmを差し引くことによって得られる液管温度偏差ΔTlpに基づいて、過冷却度制御及び液管温度制御のいずれかを行う過冷却度−液管温度成立制御を行うようにしたり、過冷却度−過熱度成立制御と併用する場合には、過冷却度SCから目標過冷却度SCsを差し引くことによって得られる過冷却度偏差ΔSC、過熱度SHから目標過熱度SHsを差し引くことによって得られる過熱度偏差ΔSH及び過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpから最低液管温度Tlpmを差し引くことによって得られる液管温度偏差ΔTlpに基づいて、過冷却度制御、過熱度制御及び液管温度制御のいずれかを行う過冷却度−過熱度−液管温度成立制御を行うようにしたり、過熱度制御と併用する場合には、過熱度SHから目標過熱度SHsを差し引くことによって得られる過熱度偏差ΔSH及び過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpから最低液管温度Tlpmを差し引くことによって得られる液管温度偏差ΔTlpに基づいて、過熱度制御及び液管温度制御のいずれかを行う過熱度−液管温度成立制御を行うようにしている。
【0084】
本変形例において、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpは、液管温度センサ42によって検出される。また、過冷却度SCや過熱度SHは、上述の実施形態及び変形例2と同様にして得ることができる。
【0085】
そして、例えば、本変形例にかかる過冷却度−過熱度−液管温度成立制御及び過熱度−液管温度成立制御を含む制御は、図5に示されるフローチャートにしたがって行われる。
【0086】
まず、ステップS21において、目標過冷却度SCs、目標過熱度SHs及び最低液管温度Tlpmを設定するとともに、過冷却度SC、過熱度SH及び液管温度Tlpを取得する。ここで、目標過冷却度SCsは、変形例1と同様に、冷却媒体としての室外空気の温度又は室外空気の温度に等価な状態量に応じて変更されるようにしてもよい。
【0087】
次に、ステップS22において、高圧Pdが所定圧力Pds以上であるか判定を行う。
【0088】
そして、ステップS22において、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、ステップS23〜S25の過冷却度−過熱度−液管温度成立制御の処理に移行し、ステップS22において、高圧Pdが所定圧力Pds以上でない(すなわち、高圧Pdが所定圧力未満である)と判定された場合には、ステップS26〜S28の過熱度−液管温度成立制御の処理に移行する。
【0089】
次に、ステップS23において、過冷却度SC及び目標過冷却度SCsから過冷却度偏差ΔSCを演算し、過熱度SH及び目標過熱度SHsから過熱度偏差ΔSHを演算し、液管温度Tlp及び最低液管温度Tlpmから液管温度偏差ΔTlpを演算して、液管温度偏差ΔTlpが過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうよりも小さいかどうかの判定を行う。この判定は、過冷却度偏差ΔSCや過熱度偏差ΔSHが生じている場合であっても、液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合には、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが最低液管温度Tlpmまで低下させないように制御されるべきであるという考えに基づいて行われるものである。
【0090】
そして、ステップS23において、液管温度偏差ΔTlpが過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうよりも小さいと判定された場合には、ステップS24の液管温度制御の処理に移行して、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが最低液管温度Tlpmまで低下しないようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、バイパス膨張弁36の開度が小さくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、バイパス冷媒管26を流れる冷媒の流量が少なくなるようにして、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが最低液管温度Tlpmよりも低下しないようにする。また、ステップS23において、液管温度偏差ΔTlpが過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうよりも小さくないと判定された場合には、ステップS25の過冷却度−過熱度成立制御の処理に移行して、過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくように、過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、変形例2におけるステップS13〜S15と同様の処理が行われる。
【0091】
一方、ステップS26においては、過熱度SH及び目標過熱度SHsから過熱度偏差ΔSHを演算し、液管温度Tlp及び最低液管温度Tlpmから液管温度偏差ΔTlpを演算して、液管温度偏差ΔTlpが過熱度偏差ΔSHよりも小さいかどうかの判定を行う。この判定は、過熱度偏差ΔSHが生じている場合であっても、液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合には、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが最低液管温度Tlpmまで低下させないように制御されるべきであるという考えに基づいて行われるものである。
【0092】
そして、ステップS26において、液管温度偏差ΔTlpが過熱度偏差ΔSHよりも小さいと判定された場合には、ステップS27の液管温度制御の処理に移行して、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが最低液管温度Tlpmまで低下しないようにバイパス膨張弁36が制御される。尚、ステップS27の液管温度制御の処理は、上述のステップS24と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、ステップS26において、液管温度偏差ΔTlpが過熱度偏差ΔSHよりも小さくないと判定された場合には、ステップS28の過熱度制御の処理に移行して、過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。尚、ステップS28の過熱度制御の処理は、上述の実施形態のステップS4や上述の変形例2のステップS16と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0093】
そして、ステップS23〜S28の処理が行われた後には、再び、ステップS21の処理に戻り、ステップS22における判定、及び、ステップS23〜S25における過冷却度−過熱度−液管温度成立制御又はステップS26〜S28における過熱度−液管温度成立制御が繰り返し行われる。
【0094】
このように、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、ステップS23において、過冷却度偏差ΔSCや過熱度偏差ΔSHが生じている場合であっても、液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合(ここでは、液管温度偏差ΔTlpが過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうよりも小さい場合)には、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないように液管温度制御を行い、液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっていない場合(ここでは、液管温度偏差ΔTlpが過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうよりも小さくない場合)には、ステップS25において、過冷却度−過熱度成立制御を行い、高圧Pdが所定圧力以上でないと判定された場合には、ステップS26において、過熱度偏差ΔSHが生じている場合であっても、液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合(ここでは、液管温度偏差ΔTlpが過熱度偏差ΔSHよりも小さい場合)には、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないように液管温度制御を行い、液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっていない場合(ここでは、液管温度偏差ΔTlpが過熱度偏差ΔSHよりも小さくない場合)には、ステップS28において、過熱度制御を行うようにしているため、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにすることができる。
【0095】
尚、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合において、上述のように、液管温度制御を過冷却度−過熱度成立制御と併用する場合ではなく、液管温度制御を過冷却度制御と併用する場合には、ステップS23において、液管温度偏差ΔTlpと過熱度偏差ΔSHとの比較を省略し、ステップS25において、過冷却度−過熱度成立制御に代えて過冷却度制御を採用することで、過冷却度−液管温度成立制御を行うことができる。
【0096】
これにより、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、液管温度制御と過冷却度制御とを使い分けて、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにすることができ、また、液管温度制御と過冷却度−過熱度成立制御とを使い分けて、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにしつつ、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにすることができ、さらに、高圧Pdが所定圧力以上でないと判定された場合には、液管温度制御と過熱度制御とを使い分けて、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにすることができる。
【0097】
(6)変形例4
上述の実施形態及び変形例1〜3の空気調和装置1においては、圧縮機構としての圧縮機21の吐出温度Tdが非常に高くなる過熱圧縮や、吐出温度Tdが吐出圧力Pdに相当する飽和温度近くまで低下する湿り圧縮が生じるおそれがあり、このような過熱圧縮や湿り圧縮から圧縮機21を保護する必要がある。そして、上述の実施形態及び変形例1〜3の空気調和装置1のような熱源側熱交換器としての室外熱交換器23において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機21の吸入側に戻すバイパス冷媒管26と、このバイパス冷媒管26を流れる冷媒によって室外熱交換器23において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器25とを有する構成では、バイパス冷媒管26を流れる冷媒の流量を制御することによって、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を調節することが可能である。
【0098】
そこで、本変形例では、上述の実施形態及び変形例1〜3における過冷却度制御、過熱度制御、過冷却度−液管温度成立制御、過熱度−液管温度成立制御、過冷却度−過熱度成立制御又は過冷却度−過熱度−液管温度成立制御に加えて、圧縮機21の吐出温度Tdが所定の最高吐出温度Tdmよりも高くならないようにバイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁36を制御する過熱圧縮防止制御、及び/又は、圧縮機21の吐出温度Tdから吐出圧力Pdに相当する飽和温度を差し引いた吐出過熱度SHdが所定の最低吐出過熱度SHdmよりも低下しないようにバイパス膨張弁36を制御する湿り圧縮防止制御を行うようにしている。
【0099】
本変形例において、圧縮機21の吐出温度Td及び吐出圧力Pdは、それぞれ、吐出温度センサ40及び吐出圧力センサ38によって検出される。また、圧縮機21の吐出における冷媒の吐出過熱度SHdは、吐出圧力センサ38によって検出される圧縮機21の吐出圧力Pdを凝縮温度Tcに相当する飽和温度値に換算し、吐出温度センサ40によって検出される吐出温度TdからこのTcを差し引くことによって得られる(すなわち、SHd=Td―Tc)。さらに、過冷却度SC、過熱度SHや液管温度Tlpは、上述の実施形態及び変形例2、3と同様にして得ることができる。
【0100】
そして、ここでは、冷房運転における高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合には、過冷却度制御を含む制御として、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御を例に挙げて、過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御を行い、冷房運転における高圧Pdが所定圧力Pds未満である場合には、過熱度制御を中心とした過冷却度制御を含まない制御として、過熱度−液管温度成立制御を例に挙げて、過熱度−液管温度−過熱圧縮防止成立制御を行う例について、図6に示されるフローチャートにしたがって説明する。
【0101】
まず、ステップS31において、目標過冷却度SCs、目標過熱度SHs、最低液管温度Tlpm、最高吐出温度Tdm及び最低吐出過熱度SHdmを設定するとともに、過冷却度SC、過熱度SH、液管温度Tlp、吐出温度Td及び吐出過熱度SHdを取得する。ここで、目標過冷却度SCsは、変形例1と同様に、冷却媒体としての室外空気の温度又は室外空気の温度に等価な状態量に応じて変更されるようにしてもよい。
【0102】
次に、ステップS32において、高圧Pdが所定圧力Pds以上であるか判定を行う。
【0103】
そして、ステップS32において、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、ステップS33〜S37の過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御の処理に移行し、ステップS32において、高圧Pdが所定圧力Pds以上でない(すなわち、高圧Pdが所定圧力未満である)と判定された場合には、ステップS38〜S40の過熱度−液管温度−過熱圧縮防止成立制御の処理に移行する。
【0104】
次に、ステップS33において、過冷却度SC及び目標過冷却度SCsから過冷却度偏差ΔSCを演算し、過熱度SH及び目標過熱度SHsから過熱度偏差ΔSHを演算し、液管温度Tlp及び最低液管温度Tlpmから液管温度偏差ΔTlpを演算し、最高吐出温度Tdmから吐出温度Tdを差し引くことによって吐出温度偏差ΔTdを演算し、吐出過熱度SHdから最低吐出過熱度SHdmを差し引くことによって吐出過熱度偏差ΔSHdを演算し、まず、液管温度偏差ΔTlpと過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうとを比較していずれが小さいかの判定を行い、そして、この判定によって小さいと判定された偏差と吐出温度偏差ΔTdとを比較していずれが大きいかの判定を行い、さらに、この判定によって大きいと判定された偏差よりも吐出過熱度偏差ΔSHdが小さいかどうかの判定を行う。これらの一連の判定は、過冷却度偏差ΔSC、過熱度偏差ΔSHが生じている場合や液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合であっても、吐出過熱度偏差ΔSHdが非常に小さくなっている場合には、圧縮機21において湿り圧縮が生じるおそれがあり、このような湿り圧縮から圧縮機21を保護するべきであるという考えに基づいて行われるものである。
【0105】
そして、ステップS33において、吐出過熱度偏差ΔSHdが小さいと判定された場合には、ステップS34の湿り圧縮防止制御の処理に移行して、圧縮機21の吐出における冷媒の吐出過熱度SHdが最低吐出過熱度SHdmまで低下しないようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、バイパス膨張弁36の開度が小さくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、バイパス冷媒管26を流れる冷媒の流量が少なくなるようにして、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の温度が高くなるようにして、圧縮機21の吸入温度Tsが高くなるようにして、圧縮機21の吐出における冷媒の吐出過熱度SHdが最低吐出過熱度SHdmよりも低下しないようにする。また、ステップS33において、吐出過熱度偏差ΔSHdが小さくないと判定された場合には、ステップS35の処理に移行する。
【0106】
次に、ステップS35において、まず、液管温度偏差ΔTlpと過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHのいずれか大きいほうとを比較していずれが小さいかの判定を行い、そして、この判定によって小さいと判定された偏差と吐出温度偏差ΔTdとを比較していずれが大きいかの判定を行う。これらの一連の判定は、過冷却度偏差ΔSC、過熱度偏差ΔSHが生じている場合や液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合であっても、吐出温度偏差ΔTdが非常に大きくなっている場合には、圧縮機21において過熱圧縮が生じるおそれがあり、このような過熱圧縮から圧縮機21を保護するべきであるという考えに基づいて行われるものである。
【0107】
そして、ステップS35において、吐出温度偏差ΔTdが大きいと判定された場合には、ステップS36の過熱圧縮防止制御の処理に移行して、圧縮機21の吐出温度Tdが最高吐出温度Tdmまで高くならないようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、バイパス膨張弁36の開度が大きくなる方向にバイパス膨張弁36を制御することで、バイパス冷媒管26を流れる冷媒の流量が多くなるようにして、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の温度が低くなるようにして、圧縮機21の吸入温度Tsが低くなるようにして、圧縮機21の吐出温度Tdが最高吐出温度Tdmよりも高くならないようにする。また、ステップS35において、吐出温度偏差ΔTdが大きくないと判定された場合には、ステップS26の過冷却度−過熱度−液管温度成立制御の処理に移行して、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにしつつ、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、変形例3におけるステップS23〜S25と同様の処理が行われる。
【0108】
一方、ステップS38においては、過熱度SH及び目標過熱度SHsから過熱度偏差ΔSHを演算し、液管温度Tlp及び最低液管温度Tlpmから液管温度偏差ΔTlpを演算し、最高吐出温度Tdmから吐出温度Tdを差し引くことによって吐出温度偏差ΔTdを演算し、まず、液管温度偏差ΔTlpと過熱度偏差ΔSHとを比較していずれが小さいかの判定を行い、そして、この判定によって小さいと判定された偏差よりも吐出温度偏差ΔTdが大きいかどうかの判定を行う。これらの一連の判定は、ステップS35と同様、過熱度偏差ΔSHが生じている場合や液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合であっても、吐出温度偏差ΔTdが非常に大きくなっている場合には、圧縮機21において過熱圧縮が生じるおそれがあり、このような過熱圧縮から圧縮機21を保護するべきであるという考えに基づいて行われるものである。
【0109】
そして、ステップS38において、吐出温度偏差ΔTdが大きいと判定された場合には、ステップS39の過熱圧縮防止制御の処理に移行して、圧縮機21の吐出温度Tdが最高吐出温度Tdmまで高くならないようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、上述のステップS36と同様の処理が行われる。また、ステップS38において、吐出温度偏差ΔTdが大きくないと判定された場合には、ステップS40の過熱度−液管温度成立制御の処理に移行して、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにバイパス膨張弁36が制御される。具体的には、変形例3におけるステップS26〜S28と同様の処理が行われる。
【0110】
そして、ステップS34、S36、S37、S39、S40の処理が行われた後には、再び、ステップS31の処理に戻り、ステップS32、S33、S35、S38における判定、及び、ステップS34における湿り圧縮防止制御、ステップS36における過熱圧縮防止制御、ステップS37における過冷却度−過熱度−液管温度成立制御、ステップS9における過熱圧縮防止制御又はステップS40における過熱度−液管温度成立制御が繰り返し行われる。
【0111】
このように、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合には、ステップS33、S34において、過冷却度偏差ΔSC、過熱度偏差ΔSHが生じている場合や液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合であっても、吐出過熱度偏差ΔSHdが非常に小さくなっている場合(ここでは、ステップS33における一連の判定において、吐出過熱度偏差ΔSHdが小さい場合)には、圧縮機21の吐出における冷媒の吐出過熱度SHdが最低吐出過熱度SHdmまで低下しないように湿り圧縮防止制御を行い、ステップS35、S36において、過冷却度偏差ΔSC、過熱度偏差ΔSHが生じている場合や液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合であっても、吐出温度偏差ΔTdが非常に大きくなっている場合(ここでは、ステップS35における一連の判定において、吐出温度偏差ΔTdが大きい場合)には、圧縮機21の吐出温度Tdが最高吐出温度Tdmまで高くならないように過熱圧縮防止制御を行い、吐出温度偏差ΔTdが非常に大きくなっていない場合(ここでは、ステップS35における一連の判定において、吐出温度偏差ΔTdが小さい場合)には、ステップS37において、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御を行うようにしているため、圧縮機21の保護を図り、かつ、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SC及び過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHのいずれについても、各目標値SCs、SHsとの偏差が大きい状態になるのを避けることができ、また、高圧Pdが所定圧力Pds以上でない場合には、ステップS38、S39において、過熱度偏差ΔSHが生じている場合や液管温度偏差ΔTlpが非常に小さくなっている場合であっても、吐出温度偏差ΔTdが非常に大きくなっている場合(ここでは、ステップS38における一連の判定において、吐出温度偏差ΔTdが大きい場合)には、圧縮機21の吐出温度Tdが最高吐出温度Tdmまで高くならないように過熱圧縮防止制御を行い、吐出温度偏差ΔTdが非常に大きくなっていない場合(ここでは、ステップS38における一連の判定において、吐出温度偏差ΔTdが小さい場合)には、ステップS40において、過熱度−液管温度成立制御を行うようにしているため、圧縮機21の保護を図り、かつ、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標値SHsとの偏差が大きい状態になるのを避けることができる。
【0112】
尚、上述の湿り圧縮防止制御や過熱圧縮防止制御を過冷却度−過熱度−液管温度成立制御と併用する場合ではなく、湿り圧縮防止制御や過熱圧縮防止制御を過冷却度−過熱度成立制御と併用する場合には、ステップS33、S35において、液管温度偏差ΔTlpと過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHとの比較を省略し、ステップS37において、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御に代えて過冷却度−過熱度成立制御を採用することで、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御を行うことができる。また、上述の湿り圧縮防止制御や過熱圧縮防止制御を過冷却度−過熱度−液管温度成立制御と併用する場合ではなく、湿り圧縮防止制御や過熱圧縮防止制御を過冷却度−液管温度成立制御と併用する場合には、ステップS33、S35において、液管温度偏差ΔTlpと過熱度偏差ΔSHとの比較を省略し、ステップS37において、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御に代えて過冷却度−液管温度成立制御を採用することで、過冷却度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御を行うことができる。また、上述の湿り圧縮防止制御や過熱圧縮防止制御を過冷却度−過熱度−液管温度成立制御と併用する場合ではなく、湿り圧縮防止制御や過熱圧縮防止制御を過冷却度制御と併用する場合には、ステップS33、S35において、液管温度偏差ΔTlpと過冷却度偏差ΔSC及び過熱度偏差ΔSHとの比較を省略し、ステップS37において、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御に代えて過冷却度制御を採用することで、過冷却度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御を行うことができる。また、上述の過熱圧縮防止制御を過熱度−液管温度成立制御と併用する場合ではなく、過熱圧縮防止制御を過熱度制御と併用する場合には、ステップS38において、液管温度偏差ΔTlpと過熱度偏差ΔSHとの比較を省略し、ステップS40において、過熱度−液管温度成立制御に代えて過熱度制御を採用することで、過熱度−過熱圧縮防止成立制御を行うことができる。さらに、湿り圧縮防止制御及び過熱圧縮防止制御の両方ではなく、必要に応じて、湿り圧縮防止制御と過熱圧縮防止制御のいずれか一方のみを採用するようにしてもよい。例えば、湿り圧縮防止制御のみを採用する場合には、ステップS35、S36やステップS38、S39を省略し、過熱圧縮防止制御のみを採用する場合には、ステップS33、S34を省略すればよい。
【0113】
これにより、本変形例の空気調和装置1では、高圧Pdが所定圧力以上であると判定された場合には、過熱圧縮防止制御や湿り圧縮防止制御と過冷却度制御とを使い分けて、圧縮機21の保護を図りながら、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにすることができ、また、過熱圧縮防止制御や湿り圧縮防止制御と過冷却度−過熱度成立制御とを使い分けて、圧縮機21の保護を図りながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにしつつ、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにすることができ、また、過熱圧縮防止制御や湿り圧縮防止制御と過冷却度−過熱度−液管温度成立制御とを使い分けて、圧縮機21の保護を図り、かつ、過冷却熱交換器25の出口における液管温度Tlpが過度に低く状態にならないようにしながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標過熱度SHsに近づくようにしつつ、室外熱交換器23の出口における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近づくようにすることができ、さらに、高圧Pdが所定圧力以上でないと判定された場合には、過熱圧縮防止制御と過熱度制御とを使い分けて、圧縮機21の保護を図りながら、過冷却熱交換器25のバイパス冷媒管26側の出口における冷媒の過熱度SHが目標値SHsとの偏差が大きい状態になるのを避けることができる。
【0114】
(第2実施形態)
(1)空気調和装置の構成
図7は、本発明の第2実施形態にかかる空気調和装置101の概略構成図である。空気調和装置101は、第1実施形態の空気調和装置1と同様に、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の室内の冷暖房に使用される装置であるが、第1実施形態の空気調和装置1が熱源ユニットとしての室外ユニットを1台(すなわち、室外ユニット2)だけ備えているのに対して、液冷媒連絡管106及びガス冷媒連絡管107を介して並列接続された複数の室外ユニット(ここでは、室外ユニット2a、2bの2台)を備えている点が異なっている。すなわち、本実施形態の空気調和装置101の冷媒回路110は、室外ユニット2a、2bと、室内ユニット5a、5bと、冷媒連絡管106、107とが接続されることによって構成されている。
【0115】
尚、本実施形態の空気調和装置101を構成する室内ユニット5a、5bの構成は、第1実施形態の室内ユニット5a、5bと同様であるため、ここでは説明を省略する。また、室外ユニット2a、2bの構成も、第1実施形態の室外ユニット2と同様であるため、各室外側冷媒回路の符号を「10d」又は「10e」とし、他の各部を示す符号に添え字「a」又は「b」を付して、ここでは説明を省略する。また、本実施形態の空気調和装置101の制御部109は、図8に示されるように、各種センサ37a〜44a、37b〜44bの検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器21a、21b(具体的には、圧縮機モータ30a、30b)、22a、22b、24a、24b、32a、32b(具体的には、室外ファンモータ33a、33b)、36a、36b、51a、51b等を制御することができるように接続されている。ここで、図8は、空気調和装置101の制御ブロック図である。
【0116】
(2)空気調和装置の動作
本実施形態の空気調和装置101の動作(暖房運転及び冷房運転)は、2台の室外ユニット2a、2bを運転する点を除いては、基本的には、第1実施形態及びその変形例の空気調和装置1と同様である。
【0117】
しかし、本実施形態の空気調和装置101のような液冷媒連絡管106及びガス冷媒連絡管107を介して並列接続された複数の熱源ユニットとしての室外ユニット2a、2bが採用される場合には、各室外ユニット2a、2bにおいて第1実施形態及びその変形例における過冷却度制御を含む制御(すなわち、過冷却度制御、過冷却度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度成立制御、過冷却度−過熱度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御)が行われるが、このとき、室外ユニット2a、2b間における冷媒の偏流が生じると、室外ユニット2a、2b間で過冷却度SC、すなわち、熱源側熱交換器としての室外熱交換器23a、23bにおける冷媒の凝縮能力がばらつくおそれがある。尚、これらの過冷却度制御を含む制御については、室外ユニットの各部を示す符号に添え字「a」や「b」がない点を除いては、第1実施形態及びその変形例における過冷却度制御を含む制御と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0118】
そこで、本実施形態では、各室外ユニット2a、2bにおいては、第1実施形態及びその変形例における過冷却度制御を含む制御(すなわち、過冷却度制御、過冷却度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度成立制御、過冷却度−過熱度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御)に加えて、室外ユニット2a、2bにおける過冷却度SCに基づいて、目標過冷却度SCsの値を補正する過冷却度ばらつき防止制御を行うようにしている。
【0119】
そして、ここでは、冷房運転における高圧Pdが所定圧力Pds以上である場合には、過冷却度制御を含む制御としての過冷却度−過熱度−液管温度成立制御過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御を行い、冷房運転における高圧Pdが所定圧力Pds未満である場合には、過熱度制御を中心とした過冷却度制御を含まない制御を行う場合を例(第1実施形態の変形例4を参照)に挙げて、この制御を行いつつ、過冷却度ばらつき防止制御を行う例について、図9に示されるフローチャートにしたがって説明する。
【0120】
まず、ステップS41において、目標過冷却度SCsを補正すべきかどうかを、室外ユニット2a、2bが所定の補正実行条件を満たすかどうかによって判定する。この補正実行条件は、過冷却度SC及び目標過冷却度SCsから得られる過冷却度偏差ΔSCの絶対値が所定の偏差ΔSCs1以下となっている室外ユニットが存在するという第1条件を満たし、かつ、過冷却度SCが所定の過冷却度SC1以下となっている室外ユニットが存在するという第2条件を満たすことである。ここで、第1条件は、過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近い状態となっている室外ユニットが存在するかどうかを判定するものであり、本実施形態においては、過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近い状態となっている室外ユニットの圧縮機周りの目標過冷却度SCsを補正しても問題ないかどうかの条件についても判定に加えるために、圧縮機21a、21bの吸入圧力Psを蒸発温度Teに相当する飽和温度値に換算し、圧縮機21a、21bの吸入温度Tsからこの蒸発温度Teを差し引くことによって得られる温度差が所定の温度差以下であり、かつ、圧縮機21a、21bの吐出温度Tdが所定の温度以下であるかどうかも判定するようにしている。また、第2条件は、過冷却度SCが非常に小さい値になっている室外ユニットが存在するかどうかを判定するものである。このように、ステップS41における判定は、複数(ここでは、2台)の室外ユニット2a、2bのうち過冷却度SCが目標過冷却度SCsに近い状態となっている室外ユニットが存在するかどうか、及び、過冷却度SCが非常に小さい値になっている室外ユニットが存在するかどうかを判定するものである。
【0121】
そして、ステップS41において、複数(ここでは、2台)の室外ユニット2a、2bのうち補正実行条件を満たす室外ユニットが存在するものと判定された場合には、ステップS42の目標過冷却度SCsを補正する処理に移行して、補正実行条件の第1条件を満たす室外ユニットの目標過冷却度SCsを現在値よりも大きな値になるように補正する。そうすると、補正実行条件の第1条件を満たす室外ユニットのバイパス冷媒管を流れる冷媒の流量が小さくなるようにバイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁が制御されて、補正実行条件の第1条件を満たす室外ユニットを流れる冷媒の流量が減少して、他の室外ユニットに分配されやすくなるため、室外ユニット2a、2b間における過冷却度SCのばらつきを小さくすることができる。
【0122】
次に、ステップS43において、目標過冷却度SCsの補正を解除すべきであるかどうかを、室外ユニット2a、2bすべての過冷却度SCが所定の補正解除条件を満たすかどうかによって判定する。この補正解除条件は、複数(ここでは、2台)の室外ユニット2a、2bすべての過冷却度SCが所定の過冷却度SC2よりも大きくなっていることである。ここで、所定の過冷却度SC2は、補正実行条件の第2条件における所定の過冷却度SC1よりも大きな値に設定される。このように、ステップS43における判定は、過冷却度SCが非常に小さい値になっていた室外ユニットの過冷却度が、ステップS42における目標過冷却度SCsの補正を行うことによって大きくなったかどうかを判定するものである。
【0123】
そして、ステップS43において、複数(ここでは、2台)の室外ユニット2a、2bすべての過冷却度SCが補正解除条件を満たしているものと判定された場合には、ステップS44において、目標過冷却度SCsが補正されていた室外ユニットの目標過冷却度SCsの補正を解除し、速やかに通常(すなわち、目標過冷却度SCsが補正されていない状態)の過冷却度−過熱度−液管温度成立制御過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御に復帰させることができる。
【0124】
尚、過冷却度制御を含む制御として、上述の過冷却度−過熱度−液管温度成立制御過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御ではなく、過冷却度制御、過冷却度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度成立制御、過冷却度−過熱度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−過熱圧縮防止−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−湿り圧縮防止成立制御、過冷却度−過熱度−液管温度−過熱圧縮防止成立制御のいずれかにしてもよい。また、本実施形態では、高圧Pdが所定圧力Pds未満である場合の過熱度制御を含む制御として、過熱度制御だけでなく、過熱圧縮防止制御や液管温度制御も含むようにしているが、これらのいずれか又は両方を含まなくてもよい。さらに、本実施形態では、高圧Pdに応じて過冷却度制御を含む制御と過熱度制御を中心とした過冷却度制御を含まない制御とを使い分ける制御を採用しているが、過冷却度制御を含む制御のみを行うようにしてもよい。
【0125】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態及びその変形例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0126】
<A>
上述の実施形態及びその変形例では、冷暖切り換え可能な空気調和装置1、101に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されず、冷房専用の空気調和装置等の他の空気調和装置に本発明を適用してもよい。
【0127】
<B>
上述の実施形態及びその変形例では、利用ユニットとしての室内ユニットが複数台(すなわち、室内ユニット5a、5b)設けられているが、これに限定されず、室内ユニットが1台だけであってもよい。
【0128】
<C>
上述の実施形態及びその変形例では、室外膨張弁24、24a、24bをバイパスする逆止弁31、31a、31bが設けられているが、これに限定されず、逆止弁が設けられていなくてもよい。この場合には、冷房運転時に室外膨張弁24、24a、24bを開けて使用すればよい。
【0129】
<D>
上述の実施形態及びその変形例では、過冷却度制御を行う際に使用される熱源ユニットとしての室外ユニット2、2a、2bを構成する機器として、バイパス膨張機構としてのバイパス膨張弁36、36a、36bが使用されているが、これに限定されず、例えば、冷房運転において熱源側熱交換器としての室外熱交換器23、23a、23bの下流側に接続された室外膨張弁24、24a、24bや室外ファン32、32a、32bにより行う等のように、室外ユニット2、2a、2bを構成する他の機器を使用してもよい。ここで、室外膨張弁24、24a、24bにより過冷却度制御を行う場合には、室外膨張弁24、24a、24bの開度を小さくすることによって室外熱交換器23、23a、23bの出口における冷媒の過冷却度SCを大きくし、室外膨張弁24、24a、24bの開度を大きくすることによって室外熱交換器23、23a、23bの出口における冷媒の過冷却度SCを小さくすることができる。また、室外ファン32、32a、32bにより過冷却度制御を行う場合には、室外ファン32、32a、32bの風量を大きくすることによって室外熱交換器23、23a、23bの出口における冷媒の過冷却度SCを大きくし、室外ファン32、32a、32bの風量を小さくすることによって室外熱交換器23、23a、23bの出口における冷媒の過冷却度SCを小さくすることができる。
【0130】
<E>
上述の実施形態及びその変形例では、熱源側熱交換器としての室外熱交換器23、23a、23bの冷却媒体として、室外空気が使用されているが、これに限定されず、水やブラインを使用してもよい。
【0131】
<F>
上述の実施形態及びその変形例では、バイパス冷媒管26、26a、26bは、冷房運転時における過冷却熱交換器25、25a、25bの上流側の位置から分岐されているが、冷房運転時における過冷却熱交換器25、25a、25bの下流側の位置から分岐されていてもよい。
【0132】
<G>
上述の第2実施形態では、熱源ユニットとしての室外ユニットが2台(すなわち、室外ユニット2a、2b)設けられているが、これに限定されず、3台以上の室外ユニットが設けられていてもよい。この場合においても、3台以上の室外ユニットが補正実行条件を満たすかどうかの判定及び目標過冷却度SCsの補正を行い、その後、補正解除条件を満たすようになった場合に目標過冷却度SCsの補正を解除することによって、室外ユニットが2台の場合と同様の過冷却度ばらつき防止制御を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管と、このバイパス冷媒管を流れる冷媒によって熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を冷却する過冷却熱交換器とを有する空気調和装置に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1、101 空気調和装置
2、2a、2b 室外ユニット(熱源ユニット)
5a、5b 室内ユニット(利用ユニット)
6、106 液冷媒連絡管
7、107 ガス冷媒連絡管
21、21a、21b 圧縮機(圧縮機構)
23、23a、23b 室外熱交換器(熱源側熱交換器)
25、25a、25b 過冷却熱交換器
26、26a、26b バイパス冷媒管
36、36a、36b バイパス膨張弁(バイパス膨張機構)
52、52a、52b 室内熱交換器(利用側熱交換器)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【特許文献1】特開2005−345069号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構(21、21a、21b)と、前記圧縮機構において圧縮された冷媒を冷却媒体と熱交換させることによって凝縮させる熱源側熱交換器(23、23a、23b)と、前記熱源側熱交換器において凝縮した冷媒の一部を分岐して前記圧縮機構の吸入側に戻すバイパス冷媒管(26、26a、26b)と、前記バイパス冷媒管に設けられており前記バイパス冷媒管を流れる冷媒を減圧するバイパス膨張機構(36、36a、36b)と、前記熱源側熱交換器において凝縮した冷媒を前記バイパス膨張機構において減圧された冷媒と熱交換させることによって冷却する過冷却熱交換器(25、25a、25b)とを有する少なくとも1つの熱源ユニット(2、2a、2b)と、
前記過冷却熱交換器において冷却された冷媒を加熱媒体と熱交換させることによって蒸発させる利用側熱交換器(52a、52b)を有する少なくとも1つの利用ユニット(5a、5b)と、
前記熱源ユニット及び前記利用ユニットに接続されており、前記過冷却熱交換器において冷却された冷媒を前記利用側熱交換器に送る液冷媒連絡管(6、106)と、
前記熱源ユニット及び前記利用ユニットに接続されており、前記利用側熱交換器において蒸発した冷媒を前記圧縮機構に送るガス冷媒連絡管(7、107)とを備え、
冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力以上である場合に、前記熱源側熱交換器の出口における冷媒の過冷却度が目標過冷却度に近づくように前記熱源ユニットを構成する機器を制御する過冷却度制御を行うことが可能であり、前記冷凍サイクル運転における高圧が所定圧力未満である場合に、前記過冷却熱交換器の前記バイパス冷媒管側の出口における冷媒の過熱度が目標過熱度に近づくように前記熱源ユニットを構成する機器を制御する過熱度制御を行うことが可能である、
空気調和装置(1、101)。
【請求項2】
前記熱源ユニット(2a、2b)は、複数あり、前記液冷媒連絡管(106)及び前記ガス冷媒連絡管(107)を介して並列接続されており、
前記複数の熱源ユニットにおける前記過冷却度に基づいて、前記目標過冷却度の値を補正する過冷却度ばらつき防止制御を行うことが可能である、
請求項1に記載の空気調和装置(101)。
【請求項3】
前記過冷却度ばらつき防止制御は、前記複数の熱源ユニット(2a、2b)のうち前記過冷却度から前記目標過冷却度を差し引くことによって得られる過冷却度偏差の絶対値が所定の偏差以下となっており、かつ、前記過冷却度が所定の過冷却度以下となっているという補正実行条件を満たす熱源ユニットが存在する場合に、前記補正実行条件を満たす熱源ユニットの前記目標過冷却度を現在値よりも大きな値になるように補正し、前記複数の熱源ユニットすべての前記過冷却度が所定の過冷却度よりも大きくなっているという補正解除条件を満たす場合に、前記目標過冷却度の補正を解除するものである、請求項2に記載の空気調和装置(101)。
【請求項4】
前記目標過冷却度は、前記冷却媒体の温度又は前記冷却媒体の温度に等価な状態量に応じて変更されるものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気調和装置(1、101)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−65999(P2010−65999A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294930(P2009−294930)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【分割の表示】特願2008−219501(P2008−219501)の分割
【原出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)