説明

空気除湿装置及び空気除湿工程

【課題】空気除湿装置及び工程を提供する。
【解決手段】本発明の空気除湿装置(1)は、蒸発器(2)を介して調整される空気(3.1)を導くために上記蒸発器(2)が配置される気流チャネル(4)と、調整される空気(3.1)から上記蒸発器(2)で凝縮された水(6.1)を除去するために、上記気流チャネル(4)の底側で分岐し、鉛直方向に差し向けられた凝縮水排水チャネル(5)と、凝縮水排水チャネル(5)の内部容積(10)を外部から加熱デバイス(8)を加熱できるように、上記凝縮水排水チャネル(5)のチャネル壁(9)の中に組み込まれ、又は上記凝縮水排水チャネル(5)に近接した上記凝縮水排水チャネル(5)の外部に配置された上記加熱デバイス(8)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムとヒートポンプを組み合わせた作動のための、自動車HVACシステムの空気除湿装置に関する。さらに、本発明は、このような空気除湿装置を使用して、ヒートポンプとして作動する自動車HVACシステムにおける、乗車室の調整される空気を除湿する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、HVACシステムは、通常、0度を超える周囲温度で使用される。ハイブリッド及び/又は完全に電動で駆動する車両では、有効な加熱が必要である。そのため、ヒートポンプシステムが研究され開発されている。効率のため、こうしたシステムの冷媒回路は、空気再循環方式又は部分的な空気再循環方式で、空気を再加熱する前に、特に季節の間の移行期に、空気の除湿を必要とする低い周囲温度でも作動される。
【0003】
特許文献1から、自動車用HVACシステムは冷房用と暖房用の一体型ヒートポンプが設けられていることが公知であり、冷媒は回路内に循環され、これにより車両の内部のために熱を供給空気に転送できるようになる。熱は、統合型ヒートポンプを使用して、乗車室に対する気流の中に直接侵入される。
【0004】
特許文献2から、それらの出力を空気に頻繁に送達するヒートポンプシステムは、乗車室に供給される空気を同時に除湿及び加熱できないという、ヒートポンプシステムに関連した問題が公知である。これにより、車両のHVACシステムは、それぞれ、再循環する空気又は乗車室から再循環する空気を使用して作動できない事態が生じる。除湿機能の欠如に起因して、望ましくない窓ガラスの曇りが生じる。特許文献2において、一次回路及び二次通路を備えた車両用の、冷却システムとヒートポンプを組み合わせた作動のためのHVACシステムが記載されている。一次回路は、旧来の圧縮冷凍機から公知の構成部品、すなわち圧縮機、熱を冷媒から環境に転送するための第1のガス冷却器、スロットル部材及び乗車室に供給される空気を冷却するための蒸発器を含む。二次通路は2つの部分を有し、第1の部分は、圧縮機と第1のガス冷却器との間に配置された分岐点に由来し、第1のガス冷却器と圧縮機との間に配置された侵入点まで延びる。第1の部分には、熱を冷却器から乗車室の加熱される空気に転送するための第2のガス冷却器、及び後に続く第2のスロットル部材が配置される。二次通路の第2の部分は、第2のガス冷却器と圧縮機との間に配置された別の分岐点に由来し、第2のガス冷却器と圧縮機との間に配置された別の侵入点まで延びる。ヒートポンプ作動において、冷媒は、二次通路の第2の部分ならびにHVACシステムの一次回路を通過する。まず、乗車室に供給される空気を暖めるために、冷媒は圧縮機内で圧縮され、次いでアクティブスイッチバルブの補助で、第2のガス冷却器に通過する二次通路の第1の部分を経由する。第1のガス冷却器と反対側の第2のガス冷却器において、熱は環境に放散されず、乗車室の空気を加熱するために使用される。第2のスロットル部材において、第2のガス冷却器に続いて、冷媒は、通例二相混合を開発するように、圧縮圧力レベルから平均圧力レベルに膨張される。平均圧力レベルによって、蒸発器内の冷媒側温度レベルが制御される。一方では、蒸発器内の温度レベルは、蒸発器の前で気温が0度を超える場合に、蒸発器の氷結を防止するために0度未満に低減されてはならない。他方、蒸発器内の温度レベルは、蒸発器の前で気温が0度未満の場合に、窓ガラスの突然の曇りを回避するために、0度を超えてはならない。蒸発器内で、冷媒の一部が蒸発され、それによって乗車室に供給される空気が冷却され除湿される。除湿時に、供給される空気内の空気湿度として含まれる水は、蒸発器で凝縮する。空気除湿の凝縮水は、すべての温度状態、特に温度0度未満でHVACシステムから除去されなければならない。しかしながら、これによって、凝縮水を除去するために提供された凝縮水排水チャネル内の水が凍結し、凝縮水の流出を妨害することがある。
【0005】
凝縮水排水ホースの除氷の可能性は、特許文献3から公知である。概して、HVACシステムは、自動車本体に装着され、冷却装置に連結された終端部分を有する排水ホースが設けられ、これに反して他方の終端部分は、冷却装置から凝縮された水は、外部に流出できるように開いていることが記載されている。具体的には、冷却装置の排水ホース構造は、排水ホース及びホースの内壁上に配置された加熱要素が設けられていることが記載されている。排水ホースは、凝縮された水が凍結温度に達すると、内部からこの追加の加熱要素によって加熱されることが可能である。この排水ホース構造の不都合な点は、ホース径が狭められ、加熱デバイスに起因してホースの内部容積が低減されることである。さらに、加熱デバイスは、ホースの内壁の一部しか包含せず、その結果ホースの内壁は均一に加熱されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10163607号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102006026359号明細書
【特許文献3】特開平8−40052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すべての温度状態で、またすべての換気モードで、供給された空気の十分な除湿を確実にする、乗車室に供給される空気のための空気除湿装置を、冷却システムとヒートポンプを組み合わせた作動に対して確立された、自動車のHVACシステムを提供することが、本発明の目的である。具体的には、空気除湿装置は、ヒートポンプの作動において温度−10度未満で窓ガラスが曇ることなく、高い再循環の空気部分でも乗車室のために空気を加熱できる自動車HVACシステムに適切である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、冷却システムとヒートポンプを組み合わせた作動のための、自動車HVACシステムの空気除湿装置によって解決され、自動車HVACシステムは、冷媒に基づいて加熱する熱交換機を有するヒートポンプシステムと、自動車内部のために調節される空気から、回路内を通過した冷媒に熱を供給するための蒸発器と、を備え、空気除湿装置は、蒸発器を介して調整される空気が通過する気流チャネルと、調整される空気から蒸発器で凝縮された水を除去するために、気流チャネルの底側で分岐する、鉛直方向に差し向けられた凝縮水排水チャネルと、凝縮水排水チャネルの内部容積を外部から加熱できるように、凝縮水排水チャネルの壁の中に組み込まれ、又は凝縮水排水チャネルに近接した凝縮水排水チャネルの外部に配置された加熱デバイスと、を有する。
【0009】
本発明の一実施形態では、加熱デバイスは、凝縮水排水チャネルの壁の中に組み込まれ且つ正温度係数(PTC)を備えた電熱線として設置されている。
【0010】
具体的には、加熱デバイスは、凝縮水排水チャネルのチャネル壁の中に組み込まれた加熱抵抗器で加熱する電気抵抗の形態である。好ましくは、正温度係数(PTC)を持つ加熱抵抗器を用いられる。
【0011】
有利には、加熱デバイスは、凝縮水排水チャネルの壁の中に組み込まれた、正温度係数(PTC)を備えた電気ファイバ要素の形態である。ここで、凝縮水排水チャネルは、ホースの中に織り込まれた、又は鋳造によりホースの中に組み込まれた電気ファイバ要素を備えたプラスチック材料からなるホースであることが好ましい。
【0012】
本発明の好ましい実施形態により、加熱デバイスは、一定の加熱モード又は外部信号によって制御されるモードを介する周囲温度に依存する、加熱デバイスの作動を可能とする、制御デバイス又は調節デバイスに連結される。
【0013】
本発明の実施形態の変形例は、高圧ヒートポンプ線が加熱デバイスとして役立つように、ヒートポンプシステムの高圧ヒートポンプ線が、自動車HVACシステムの凝縮水排水チャネルのごく近傍に配置されたものである。
【0014】
本発明の他の実施形態は、上述した実施形態により、空気除湿装置を用いてヒートポンプとして作動する自動車HVACシステムにおいて、車両内部の調整される空気を除湿するための工程であり、調整される空気は、気流チャネルに沿って蒸発器を通過し、これによって調整される空気は冷却され、空気湿度として含まれる水は、蒸発器で凝縮され、凝縮水排水チャネルの中に流出され、周囲温度が0度を下回ると、電気加熱デバイスは、一定の加熱モード又は外部信号によって制御されるモードにおいて作動されることが好ましい。
【0015】
加熱デバイスは、中断して作動されることが可能である。本発明による工程の実施形態の一例では、凝縮水排水チャネルは、加熱デバイスにより直接加熱される。加熱デバイスで、すでに凍結した凝縮は溶融する。本発明による空気除湿装置の本質的な利点は、凝縮水排水チャネル周辺で加熱デバイスを使用して、凝縮水排水チャネルを直接通って加熱されることである。凍結した凝縮は、排水チャネルの壁で、したがって外部から溶融される。
【0016】
変形例として、加熱デバイスは間接的に使用される。加熱デバイスの間接使用は、0度を超える凝縮温度を保持するという課題を果たす。加熱デバイスを間接的に使用する場合、電力消費は低く維持される。凝縮水排水パイプ内では凍結が起こることはない。
【0017】
好ましくは、加熱デバイスは、一定の加熱モードを介する、又は外部信号によって制御されるモードを介する周囲温度により作動される。
【0018】
外部信号は、有利には、周囲温度が測定された値、及び/又は再循環空気のダンパードアの位置、及び/又は湿度測定に依存する。
【0019】
本発明のさらなる詳細、特徴及び利点は、添付図面に関連する例示的実施形態の以下の詳細から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】蒸発器の付近の自動車HVACシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、蒸発器2の付近に空気除湿装置1を有する自動車HVACシステムの断面図を示す。蒸発器2は、熱を車両内部の調整される空気3.1からヒートポンプシステムの冷媒に供給する働きをする。蒸発器2は、流入する外気3.1又は再循環する空気3.1が蒸発器2を通らなければならないように、気流チャネル4内に配置される。調整される空気3.1は、蒸発器2をたとえば温度15度及び相対空気湿度80%で通り、蒸発器2を通過した後、除湿された空気は、たとえば相対空気湿度97%及び温度3度を有する。蒸発器2の下流の気流チャネル4の付近では、鉛直方向に差し向けられた凝縮水排水チャネル5は、液体凝縮水6.1が下方に流れることができる位置に置かれる。凝縮水排水チャネル5(排水)は、HVACシステムの排水のために提供される。図1に示されているように、凝縮水排水チャネル5(空気3の流れの方向に下方に切り替えられる)は、蒸発器2の背後に配置され、気流チャネル4に垂直に差し向けられ、したがって、供給される空気3の流れの方向に差し向けられる。案内要素7は、蒸発器2の底側の正面縁部から凝縮水排水チャネル5の流入口まで延び、斜面を形成し、蒸発器2で凝縮した水6.1が、凝縮水排水チャネル5の中に傾斜して流出できることを確保する。
【0022】
0度を超える周囲温度で、乾燥工程から移動された凝縮水の一部6.2は凍結できる。
【0023】
空気除湿装置1は、図1に示されるように、凝縮水排水チャネル5のチャネル壁9の中に組み込まれるか、又は凝縮水排水チャネル5に近接した凝縮水排水チャネル5の外部に配置された、加熱デバイス8を備える。したがって、加熱デバイス8は、凝縮水排水チャネル5の内部容積10を外側から加熱することができる。
【0024】
図1に示された加熱デバイス8は、凝縮水排水チャネル5のチャネル壁9の中に組み込まれ且つ正温度係数(PTC)を備えた電熱線8の形態にすることができる。他の形態として、加熱デバイス8が、1つ又はいくつかの加熱抵抗器を伴って、チャネル壁9の中に組み込まれた電気抵抗加熱8の形態にしてもよい。また、加熱デバイス8は、凝縮水排水チャネル5のチャネル壁9の中に組み込まれ且つ正温度係数(PTC)を備えた電気ファイバ要素8の形態であってもよい。好ましくは、凝縮水排水チャネル5は、ホースの中に織り込まれた、又は鋳造によりホースの中に組み込まれた電気ファイバ要素8を備えたプラスチック材料からなるホース5である。
【符号の説明】
【0025】
1 除湿装置
2 蒸発器
3 空気
3.1 調整される空気、流入する外気/再循環する空気
3.2 除湿された空気
4 気流チャネル
5 凝縮水排水チャネル、ホース
6.1 凝縮水
6.2 すでに氷結された凝縮水の一部
7 案内要素
8 加熱デバイス、電気ファイバ要素、電熱線、抵抗加熱
9 チャネル壁
10 凝縮水排水チャネルの内部容積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システムとヒートポンプを組み合わせた作動のための、自動車HVACシステムの空気除湿装置(1)であって、上記自動車HVACシステムは、冷媒に基づいて加熱する熱交換機を備えたヒートポンプシステムと、上記自動車内部のために調節される空気(3.1)から回路内を通過した冷媒に熱を供給するための蒸発器(2)と、を備え、上記空気除湿装置(1)は、
上記蒸発器(2)を介して調整される空気(3.1)を導くために上記蒸発器(2)が配置される気流チャネル(4)と、
調整される空気(3.1)から上記蒸発器(2)で凝縮された水(6.1)を除去するために、上記気流チャネル(4)の底側で分岐し、鉛直方向に差し向けられた凝縮水排水チャネル(5)と、
上記凝縮水排水チャネル(5)の内部容積(10)を外部から加熱デバイス(8)を加熱できるように、上記凝縮水排水チャネル(5)のチャネル壁(9)の中に組み込まれ、又は上記凝縮水排水チャネル(5)に近接した上記凝縮水排水チャネル(5)の外部に配置された上記加熱デバイス(8)と、
を有することを特徴とする空気除湿装置(1)。
【請求項2】
上記加熱デバイス(8)は、上記凝縮水排水チャネル(5)の上記チャネル壁(9)の中に組み込まれ且つ正温度係数(PTC)を備えた電熱線(8)の形態である請求項1記載の空気除湿装置(1)。
【請求項3】
上記加熱デバイス(8)は、加熱抵抗器を伴って、上記凝縮水排水チャネル(5)の上記チャネル壁(9)の中に組み込まれた電気抵抗加熱(8)の形態である請求項1又は2に記載の空気除湿装置(1)。
【請求項4】
上記加熱デバイス(8)は、上記凝縮水排水チャネル(5)の上記チャネル壁(9)の中に組み込まれ且つ正温度係数(PTC)を備えた電気ファイバ要素(8)の形態である請求項1又は2に記載の空気除湿装置(1)。
【請求項5】
上記凝縮水排水チャネル(5)は、ホースの中に織り込まれた、又は鋳造により上記ホースの中に組み込まれた上記電気ファイバ要素(8)を備えたプラスチック材料からなる上記ホース(5)である請求項4に記載の空気除湿装置(1)。
【請求項6】
上記加熱デバイス(8)は、一定の加熱モード又は外部信号によって制御されるモードを介する、周囲温度に依存する上記加熱デバイス(8)を作動することが可能な、制御デバイス又は調節デバイスに連結される請求項1乃至5の何れか1項に記載の空気除湿装置(1)。
【請求項7】
高圧ヒートポンプ線が、上記凝縮水排水チャネル(5)の付近で上記凝縮水排水チャネル(5)に沿って取り付けられるように、上記ヒートポンプシステムの上記高圧ヒートポンプ線の形態で加熱デバイス(8)が存在する請求項1記載の空気除湿装置(1)。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の空気除湿装置(1)を用いて、ヒートポンプとして作動する自動車HVACシステムにおいて、車両内部の調整される空気(3.1)を除湿するための工程であって、
調整される上記空気(3.1)は、上記気流チャネル(4)に沿って上記蒸発器(2)を通過し、
これによって冷却され、空気湿度として含まれる水(6.1)は、上記蒸発器(2)で凝縮され、上記凝縮水排水チャネル(5)の中に流出し、
周囲温度が0度未満に下がると、上記加熱デバイス(8)は、一定の加熱モード又は外部信号によって制御される加熱モードで作動されることを特徴とする工程。
【請求項9】
上記凝縮水排水チャネル(5)の直接加熱は、上記凝縮水の一部(6.2)がすでに氷結された場合に、実行される請求項8記載の工程。
【請求項10】
上記凝縮水排水チャネル(5)の間接加熱は、その中で上記凝縮水(6.1)の凍結が生じないように、上記凝縮水排水チャネル(5)において、上記凝縮水(6.1)の上記温度が0度を超えるように保つのに丁度必要な量の電力が消費される、又は必要な量の熱が上記凝縮水排水チャネル(5)に転送されることを実行される請求項8記載の工程。
【請求項11】
上記加熱デバイス(8)は、一定の加熱モードを介して、又は外部信号によって制御されるモードを介して上記周囲温度に依存して作動される請求項8乃至10の何れか1項に記載の工程。
【請求項12】
上記外部信号は、周囲温度が測定された値、及び/又は上記再循環空気のダンパードアの位置、及び/又は湿度測定に依存する請求項11記載の工程。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67379(P2013−67379A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−225479(P2012−225479)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】