説明

空調システム及びこれを利用した空調方法

【課題】四季を通じて快適な室内空間を得る。
【解決手段】温度が23℃を超えると電磁弁13を閉め、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3を開き、メインファン12によって床下部20から小屋裏部30へ向かう空気の流れをメインダクト1内に作り出すとともにサブファン22を作動させるようにし、15℃を下回ると電磁弁13を開き、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3を閉じ、メインファン12によって小屋裏部30から床下部20へ向かう空気の流れをメインダクト1内に作り出し、15〜23℃であると電磁弁13を閉じ、第2電磁弁23を閉じ、最上階電磁弁2a3を開き、最上階ダクト2a及びメインダクト1を通じてメインファン12によって床下部20へ向かう空気の流れを作り出し、床下部20と部屋101と最上階ダクト2aとの間を空気が循環するように制御して建築物Aの住環境部10を空調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱、太陽熱等の自然エネルギーを活用し、四季を通じた建築物内部の温度制御、湿度制御、空気清浄等が可能な空調システム及びこれを利用した空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物内部の温度等を地熱、太陽熱などを利用して制御し、四季を通じて快適な室内空間を得ようという試みがなされている。例えば、下記特許文献1に、蓄熱空調システムに係る考案が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3017771号公報
【0004】
上記蓄熱空調システムは、建物の床下コンクリートで囲った槽を造り、その中に敷き詰めた自然石と、この自然石の間に設けられた深夜電力利用の電気ヒータ及び地熱を集める集熱パイプとで熱を蓄え、その熱を送風ダクトに備えられた電動ファンで取り出して建物の熱源とする構造をもつ蓄熱槽を利用した考案である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の地熱を利用した空調システムは現状、ほとんど実用化されていない。その理由として、従来技術の多くが床下空間と壁内部の空間、小屋裏の空間が連続空間になる柔床構造(根太工法)の木造住宅に適用することを想定している点が挙げられる。この連続空間に空気が通ると、別の空間となる室内における空気の流れを完全に制御することが難しく、室内の望まれる温度、湿度に調節することが著しく困難となる。また、連続空間に空気を通すことは、空気にチリや埃を含むダストを多く含ませる結果となるのでさらに望ましくない。このほか、従来技術の多くが夏季に暑く、冬季に寒い季節的に悪条件となる外気を取り入れているため、温度制御、湿度制御をより一層難しくしている問題、地中及び床下に熱交換器(蓄熱設備)等を備える必要があって、コスト高となる問題等を含む。これらの問題は、上記特許文献1に係る考案において何ら解決されていない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて提案され、地熱を利用した空調システムを、床下にある大面積の地表面を活用することで熱交換器等を不要にし、廉価なコストで構築するとともに、外気を取り入れないで高効率な熱循環を実現し、さらに、空気の温度制御、湿度制御及び清浄化をユーザーにとって扱いやすい自動制御により実現した空調システム及びこれを利用した空調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、地熱が利用され、外気を取り入れることなく構築される空調システムであって、壁に囲まれた空間を区画して形成される複数の部屋を有し、この部屋に空気が流出入するガラリが形成されている住環境部と、この住環境部の下方に設けられ、基礎に囲まれている床下部と、前記住環境部の上方に設けられ、屋根に囲まれている小屋裏部と、からなり、前記床下部と前記壁の内部と前記小屋裏部とが連続空間にならない根太レス工法による木造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建築物に適用され、前記床下部と前記小屋裏部との間を前記空気が移動するように、これらの間を貫通させて設けられ、前記空気に所定方向の流れを作り出す送風手段、及び、前記小屋裏部側の開口部付近を開閉する電磁弁が配設されているメインダクトと、このメインダクトと前記部屋との間を前記空気が移動するように、前記部屋まで前記メインダクトから分岐させて設けられ、前記メインダクトを移動する前記空気を前記部屋側へ引き込む第2送風手段、及び、前記メインダクト側の開口部を開閉する第2電磁弁が配設されているサブダクトと、前記メインダクトを移動する前記空気が調湿されるように、前記床下部に敷き込まれている調湿材と、前記住環境部の温度が所定値を超えると、前記電磁弁を閉め、前記第2電磁弁を開き、前記送風手段によって前記小屋裏部へ向かう前記空気の流れを作り出すとともに、前記第2送風手段を作動させるように自動制御する一方、前記住環境部の温度が第2所定値を下回ると、前記電磁弁を開き、前記第2電磁弁を閉じ、前記送風手段によって前記床下部へ向かう前記空気の流れを作り出すとともに、前記第2送風手段を停止させるように自動制御する制御手段と、から構成され、前記制御手段の自動制御により、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気を前記部屋へ送り込んで空調することを特徴とする。
【0008】
特に、上記空調システムにおいて、メインダクトに空気を清浄する清浄手段を設け、小屋裏部に太陽光を通じて空気を暖める集熱手段、及び、不要に暖められた空気を外部へ排出する排熱手段を設け、部屋のうち吹抜け部に上昇してきた空気を下降させて拡散させるサーキュレータを設けることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記空調システムを利用した空調方法であって、前記住環境部の温度が所定値を超えたとき、前記排熱手段により前記小屋裏部の不要に暖められた前記空気を外部へ排出するとともに、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気を、前記メインダクトを通じて前記清浄手段で清浄しつつ、前記送風手段によって前記小屋裏部へ向かう流れにし、前記電磁弁を閉じ、前記第2電磁弁を開き、前記第2送風手段を作動させて前記サブダクトを通じて前記部屋に送り込み、この送り込んだ前記空気を前記ガラリを通じて前記床下部へ戻して循環し、前記住環境部の温度が第2所定値を下回ったとき、前記集熱手段により暖められた前記空気を、前記電磁弁を開き、前記第2電磁弁を閉じ、前記第2送風手段を停止させて前記メインダクトを通じて前記清浄手段で清浄しつつ、前記送風手段によって前記床下部へ向かう流れにして、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気を暖め、この暖められた前記空気を前記ガラリを通じて前記部屋へ上昇させ、前記吹抜け部で前記サーキュレータにより拡散させ、前記部屋を経由して前記小屋裏部へ戻して循環することを特徴とする。
【0010】
さらに、上記空調方法において、小屋裏部の住環境部側に、メインダクトと部屋との間を空気が移動可能となるように、部屋までメインダクトから分岐させて設けられ、メインダクト側の開口部を開閉する最上階電磁弁が配設されている最上階ダクトを設けることで、住環境部の温度が第2所定値以上であって所定値以下であるとき、排熱手段により小屋裏部の不要に暖められた空気を外部へ排出するとともに、ガラリを通じて上昇してきた空気を、電磁弁を閉じ、第2電磁弁を閉じ、最上階電磁弁を開け、第2送風手段を停止させて最上階ダクト及びメインダクトを通じて清浄手段で清浄しつつ、送風手段によって床下部へ向かう流れにして、床下部の地熱によって一定温度に保たれ、調湿材によって調湿された空気と混ぜ、この混ぜた空気をガラリを通じて部屋へ上昇させ、最上階ダクトへ戻して循環することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空調システムは、まず、壁に囲まれた空間を区画して形成される複数の部屋を有し、この部屋に空気が流出入するガラリが形成されている住環境部と、この住環境部の下方に設けられ、基礎に囲まれている床下部と、住環境部の上方に設けられ、屋根に囲まれている小屋裏部と、からなり、床下部と壁の内部と小屋裏部とが連続空間にならない根太レス工法による木造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建築物に適用される。したがって、壁内部に空気を通さないので、建築物内の空気の流れをより厳密に制御することができ、室内の望まれる温度、湿度を自在に調節することができる。また、外気を取り入れることなく構築され、空気の温度制御、湿度制御をより効率的に行うことができる。
【0012】
さらに、床下部と小屋裏部との間を空気が移動するように、これらの間を貫通させて設けられ、空気に所定方向の流れを作り出す送風手段、及び、小屋裏部側の開口部付近を開閉する電磁弁が配設されているメインダクトと、このメインダクトと部屋との間を空気が移動するように、部屋までメインダクトから分岐させて設けられ、メインダクトを移動する空気を部屋側へ引き込む第2送風手段、及び、メインダクト側の開口部を開閉する第2電磁弁が配設されているサブダクトと、メインダクトを移動する空気が調湿されるように、床下部に敷き込まれている調湿材と、住環境部の温度が所定値を超えると、電磁弁を閉め、第2電磁弁を開き、送風手段によって空気の小屋裏部へ向かう流れを作り出すとともに、第2送風手段を作動させるように自動制御する一方、住環境部の温度が第2所定値を下回ると、電磁弁を開き、第2電磁弁を閉じ、送風手段によって床下部へ向かう流れを作り出すとともに、第2送風手段を停止させるように自動制御する制御手段とから構成されるため、部品点数が少なく、特に、熱交換器等を不要とし、床下部の大面積の地表面の地熱を活用することができて、大幅に廉価なコストで達成することができる。このほか、制御手段の自動制御により、床下部の地熱によって一定温度に保たれ、調湿材によって調湿された空気を部屋へ送り込んで空調するので、ユーザーが必要とされる作業が、例えば、住環境部に設けられたスイッチのオン/オフのみと非常に扱いやすいものとなる。
【0013】
また、本発明に係る空調システムおいて、メインダクトに空気を清浄する清浄手段を設けることで、仮に、チリ、埃等のダストを含んだ空気を循環させることになっても対応することができる。小屋裏部に太陽光を通じて空気を暖める集熱手段、及び、不要に暖められた空気を外部へ排出する排熱手段を設けることで、太陽光を補助的に利用することも可能となる。部屋のうち吹抜け部に上昇してきた空気を下降させて拡散させるサーキュレータを設けることで、住環境部での空気の流れを新たに作り出すことができ、熱循環(空気循環)をよりスムーズに行うことができる。
【0014】
本発明に係る空調方法は、上記空調システムを利用し、住環境部の温度が所定値を超えたとき、排熱手段により小屋裏部の不要に暖められた空気を外部へ排出するとともに、床下部の地熱によって一定温度に保たれ、調湿材によって調湿された空気を、メインダクトを通じて清浄手段で清浄しつつ、送風手段によって小屋裏部へ向かう流れにし、電磁弁を閉じ、第2電磁弁を開き、第2送風手段を作動させてサブダクトを通じて部屋に送り込み、この送り込んだ空気をガラリを通じて床下部へ戻して循環させ、住環境部の温度が第2所定値を下回ったとき、集熱手段により暖められた空気を、電磁弁を開き、第2電磁弁を閉じ、第2送風手段を停止させてメインダクトを通じて清浄手段で清浄しつつ、送風手段によって床下部へ向かう流れにして、床下部の地熱によって一定温度に保たれ、調湿材によって調湿された空気を暖め、この暖められた空気をガラリを通じて部屋へ上昇させ、吹抜け部でサーキュレータにより拡散させ、部屋を経由して小屋裏部へ戻して循環させる構成であるので、特に、夏季、冬季における温度調節、湿度調節を容易に行うことができる。
【0015】
さらに、本発明に係る空調方法において、小屋裏部の住環境部側に、メインダクトと部屋との間を空気が移動可能となるように、部屋までメインダクトから分岐させて設けられ、メインダクト側の開口部を開閉する最上階電磁弁が配設されている最上階ダクトを設けることで、住環境部の温度が第2所定値以上であって所定値以下であるとき、排熱手段により小屋裏部の不要に暖められた空気を外部へ排出するとともに、ガラリを通じて上昇してきた空気を、電磁弁を閉じ、第2電磁弁を閉じ、最上階電磁弁を開け、第2送風手段を停止させて最上階ダクト及びメインダクトを通じて清浄手段で清浄しつつ、送風手段によって床下部へ向かう流れにして、床下部の地熱によって一定温度に保たれ、調湿材によって調湿された空気と混ぜ、この混ぜた空気をガラリを通じて部屋へ上昇させ、最上階ダクトへ戻して循環させるようにすれば、春季、秋季における湿度調節、空気清浄を容易に行うことも可能になって、四季を通じて快適な室内空間を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る空調システムの実施例1における空気の流れ等を、建築物を断面で示して説明する断面説明図である。
【図2】本発明に係る空調システムの実施例2における空気の流れ等を、建築物を断面で示して説明する断面説明図である。
【図3】本発明に係る空調システムの実施例3における空気の流れ等を、建築物を断面で示して説明する断面説明図である。
【図4】制御手段による温度制御、湿度制御が実現される自動制御機構を説明する説明図であって、(a)は制御手段の概略全体を説明する説明図、(b)は制御手段を構成する制御装置におけるメインファン等への指示内容を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら例示して説明する。なお、この実施形態は、本発明の構成を具現化した1つの例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ種々の設計変更を行うことができる。
【0018】
本発明に係る空調システムは、例えば、図1に示すように、壁Wに囲まれた空間を区画して形成される複数の部屋101(例えば、リビング部、ダイニング部、客間部及び階段、踊り場等の吹抜け部111等)を有し、この部屋101に空気が流出入するガラリ101aが形成された住環境部10と、この住環境部10の下方に設けられ、基礎Fに囲まれた床下部20と、住環境部10の上方に設けられ、屋根Rに囲まれた小屋裏部30とで構成される建築物Aに適用される。特に、この建築物Aは、床下部20と住環境部10の壁Wの内部と小屋裏部30とが連続空間にならない根太レス工法による木造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造でなければならない。仮に、床下部と住環境部の壁内部と小屋裏部とが連続空間になりうる建築物、例えば、柔床構造(根太工法)の木造住宅に適用すれば、住環境部における空気の流れを完全に制御することが難しく、望まれる温度、湿度に調節することが困難となる。また、熱交換器等の不要な設備を備える必要が生じる虞がある。
【0019】
また、本発明に係る空調システムは、図1〜図3に示すように、外気を取り入れることなく構築される。夏季に暑く、冬季に寒い季節的悪条件の外気を取り入れないことにより、温度制御、湿度制御を効率的に行いうるからである。なお、建築基準法で定められ、換気やシックハウス対策等のために外気を取り入れる所謂24時間換気の構成は、本発明と別の系統により構築すればよい。本発明に係る空調システムは、法令による24時間換気に影響されることなく、四季を通じて快適な室内空間が得られるものである。
【0020】
ここで、建築物Aの部屋101のガラリ101aは、ドアや天井、床等に形成される。また、各部屋101のアンダーカットを利用することも、好ましいガラリ101aの形成手法である。ガラリ101aは、空気が流出入する箇所になるため、各部屋101に少なくとも2箇所以上形成される。吹抜け部111には、天井にサーキュレータ111aを配設することが好ましい。
【0021】
床下部20には、基礎Fの内側を覆うように基礎断熱201が、基礎Fのコンクリート打設部に止水板202が、地面との境界に防湿シート203が設けられている。また、小屋裏部30には、太陽光を通じて空気を暖める集熱手段としての天窓301が、開閉可能な遮蔽板301aを備えて屋根Rに設けられている。小屋裏部30には、不要に暖められた空気を外部へ排出する排熱手段としての排熱ファン302も設けられている。
【0022】
本発明に係る空調システムは、床下部20と小屋裏部30との間を空気(図1〜3において矢印で示す)が移動するように、これらの間を貫通させて設けられ、空気に床下部20又は小屋裏部30へ向かう流れを作り出す送風手段としてのメインファン12、通過する空気を清浄する空気清浄手段としての空気清浄機14及び、小屋裏部30側の開口部11付近を開閉する電磁弁13が配設されているメインダクト1と、このメインダクト1と部屋101との間を空気が移動するように、部屋101までメインダクト1から分岐させて設けられ、メインダクト1を移動する空気を部屋101側へ引き込む第2送風手段としてのサブファン22、及び、メインダクト1側の開口部21を開閉する第2電磁弁23が配設されているサブダクト2と、メインダクト1を移動する空気が調湿されるように、床下部20に敷き込まれている調湿材3とを備えて構成される。さらに、住環境部10の温度によって電磁弁13、第2電磁弁23、メインファン12、サブファン22に対し、作動するか否かの指示を与える制御手段4を備えている。
【0023】
制御手段4は、住環境部10に設置されてユーザーが操作する操作スイッチ41と、住環境部10の温度をセンシングする温度センサ42と、この温度センサ42からの温度情報を受け取り、電磁弁13等へ作動するか否かの指示を与える制御装置43とからなる。操作スイッチ41は、制御装置43及び空気清浄機14をオン/オフするのに用いるものである(図4参照)。
【0024】
また、小屋裏部30の住環境部10側、特に、住環境部10の最上階層と小屋裏部30との間に、メインダクト1から分岐させて各部屋101まで延設された最上階ダクト2aを備えている。この最上階ダクト2aには、メインダクト1側の開口部2a1を開閉する最上階電磁弁2a3が配設されている。最上階ダクト2aは、サブファン22が配設されないこと以外、サブダクト2と同様な構成であって、最上階電磁弁2a3も第2電磁弁23と同様、制御手段4によって制御される。
【0025】
以下、本発明に係る空調システムを構成する構成部品に関し、図1又は図4を参照しつつ説明する。
【0026】
メインダクト1は、床下部20と小屋裏部30との間を貫通させて建築物Aの側部に設けられている管状部材である。断熱性を備え、その途中にメインファン12及び空気清浄機14が、小屋裏部30側の開口部11付近に電磁弁13が、それぞれ配設されている。また、その途中にサブダクト2及び最上階ダクト2aが接続される開口が設けられている。なお、制御装置43とメインファン12及び電磁弁13とを電気的に接続する配線は、メインダクト1の内側又は外側のいずれで行ってもよい。空気清浄機14と操作スイッチ41とを電気的に接続する配線も同様である。また、メインダクト1は、建築物Aの側部に限らず、例えば、吹抜け部111の階段裏等、住環境部10の容積を減らすことのない領域に設けることが好ましい。電磁弁13が配設される小屋裏部30側の開口部11付近とは、メインダクト1から小屋裏部30へ排出される空気、及び、小屋裏部30からメインダクト1へ流入する空気の通過、不通過を電磁弁13の開閉によって制御できる位置をいい、小屋裏部30内に位置するメインダクト1の領域のうち、最上階ダクト2aが分岐するよりも開口部11側の任意の位置をいう。
【0027】
サブダクト2は、住環境部10を形成する部屋が2層以上の階層を有するときに、その各階間においてメインダクト1から分岐させて、各部屋101まで延設される。メインダクト1と同様に断熱性を備えるとともに、その途中にサブファン22を配設し、メインダクト1側の開口部21に第2電磁弁23を配設することができる管状部材が用いられる。また、最上階ダクト2aは、上述のとおり、サブファン22が配設されないこと以外、サブダクト2と同様に構成され、住環境部10の最上階層と小屋裏部30との間にメインダクト1から分岐させて各部屋101まで延設される。なお、サブファン22、第2電磁弁23と制御装置43とを電気的に接続する配線はサブダクト2の内側又は外側のいずれでもよく、最上階電磁弁2a3と制御装置43とを電気的に接続する配線も最上階ダクト2aの内側又は外側のいずれでもよい。
【0028】
調湿材3には、例えば、炭、シリカゲル、ゼオライト、セラミックス等の多孔質材をはじめ、湿度が所定以上になると水分を吸収し、所定以下になると水分を放出し、敷き込まれる床下部20の湿度を一定の範囲内に調整する無機物又は有機物が用いられる。
【0029】
制御手段4は、住環境部10に設置されている操作スイッチ41をユーザーが操作する(例えば、スイッチをオンにする)ことにより作動し、住環境部10の温度制御、湿度制御を自動で行う電気制御システムである。住環境部10の温度が所定値、例えば、23℃を超えたと温度センサ42がセンシングしたとき、電磁弁13を閉め、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3を開き、メインファン12によって床下部20から小屋裏部30へ向かう空気の流れをメインダクト1内に作り出すとともに、サブファン22を作動させるように自動制御する。さらに、小屋裏部30の遮蔽板301aを閉じた状態のままとして天窓301を遮蔽するほか、排熱ファン302を作動させる等の制御を行う。
【0030】
また、住環境部10の温度が第2所定値、例えば、15℃を下回ったと温度センサ42がセンシングしたとき、電磁弁13を開き、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3を閉じ、メインファン12によって小屋裏部30から床下部20へ向かう空気の流れをメインダクト1内に作り出すとともに、サブファン22を停止させるように自動制御し、さらに、遮蔽板301aを作動させて開き、排熱ファン302を作動しないように自動制御する。また、吹抜け部111のサーキュレータ111aも作動させる制御を行う。
【0031】
さらに、住環境部10の温度が第2所定値以上であって所定値以下(例えば、15〜23℃)であると温度センサ42がセンシングしたとき、電磁弁13及び第2電磁弁23を閉じ、最上階電磁弁2a3を開くとともに、サブファン22を停止させてメインファン12によって床下部20へ向かう空気の流れをメインダクト1内に作り出すように自動制御する。排熱ファン302を作動させ、遮蔽板301aを閉じた状態とする。
【0032】
なお、ユーザーは住環境部10の温度に関係なく、四季を通じて操作スイッチ41をオンにし、制御装置43及び空気清浄機14を作動させることが好ましい。また、ユーザーにとって快適なシステムになるように、制御装置43が自動制御を行う基準となる温度(所定値の例えば23℃,第2所定値の例えば15℃)を、適宜変更可能な温度設定スイッチを操作スイッチ41等に付加することが好ましい。操作スイッチ41がオフであるとき、メインファン12、サブファン22、排熱ファン302、サーキュレータ111aは作動しない。遮蔽板301aは作動せず天窓301が遮蔽状態となる。また、電磁弁13、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3は開いた状態となる。
【0033】
以下、本発明に係る空調システムを夏季、冬季又は春秋に利用して行う空調方法についてそれぞれ説明する。なお、下記説明において、ユーザーは操作スイッチ41を操作してスイッチオンとし、制御装置43及び空気清浄機14を作動させているものとする。
【0034】
(実施例1)
実施例1は、図1及び図4(b)を参照しつつ、本発明に係る空調システムを夏季に利用する例を説明する。空気の流れは、矢印を参考にすると理解しやすい。
【0035】
夏季に、住環境部10の温度が23℃を超えると、温度センサ42がセンシングすることで制御装置43は、メインファン12、サブファン22、電磁弁13、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3、サーキュレータ111a、遮蔽板301a、排熱ファン302に作動する否かの指示を行う。具体的には、メインファン12を順回転方向に作動させ、サブファン22、排熱ファン302を作動させ、サーキュレータ111aを作動させない。また、遮蔽板301aを作動させないで天窓301を遮蔽し、電磁弁13を作動させて閉じる。第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3を作動させないで開いた状態とする。
【0036】
そうすると、建築物A内部では、遮蔽板301aにより天窓301が遮蔽されたままで、排熱ファン302により小屋裏部30の不要に暖められた空気が外部へ排出される。これとともに、床下部20の地熱GHによって一定温度に保たれて住環境部10よりも相対的に温度が低く、調湿材3によって調湿(除湿)された空気が、メインダクト1を通じて空気清浄機14で清浄されつつ、メインファン12によって小屋裏部30へ向かう流れになる。また、電磁弁13は閉じられ、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3は開かれ、サブファン22は作動させられているので、床下部20の空気がサブダクト2及び最上階ダクト2aを通じて各部屋101に送り込まれる。この送り込まれた空気は、ガラリ101aを通じて床下部20へ戻って循環するようになる。この空気の循環が繰り返される結果、夏季には、床下部20の大面積の地表面によって冷やされた空気によって、住環境部10の温度が地熱温度近くまで下降する。
【0037】
(実施例2)
実施例2は、図2及び図4(b)を参照しつつ、本発明に係る空調システムを冬季に利用する例を説明する。空気の流れは矢印を参考にすると理解しやすい。
【0038】
冬季に、住環境部10の温度が15℃を下回ると、温度センサ42がセンシングすることで制御装置43は、メインファン12を逆回転方向に作動させ、サーキュレータ111aを作動させ、サブファン22及び排熱ファン302を作動させず、電磁弁13を作動させないで開き、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3を作動させて閉じる。また、遮蔽板301aを作動させて天窓301を開放し、太陽光が小屋裏部30に注ぐようにする。
【0039】
そうすると、建築物A内部では天窓301から太陽光が注がれて暖められた空気が、排熱ファン302により小屋裏部30から外部へ排出されることもなく、電磁弁13が開かれ、第2電磁弁23及び最上階電磁弁2a3が閉じられ、サブファン22が停止しているので、メインダクト1を通じて空気清浄機14で清浄されつつ、メインファン12によって床下部20へ向かう流れになり、床下部20の地熱GHによって一定温度に保たれて住環境部10よりも相対的に温度が低く、調湿材3によって調湿(加湿)された空気と混ざって暖まった空気になる。この暖まった空気は、ガラリ101aを通じて部屋101へ上昇し、吹抜け部111でサーキュレータ111aによって拡散し、最上階の部屋101を経由して小屋裏部30へ戻って循環するようになる。この空気の循環が繰り返される結果、冬季には、大面積の地表面の地熱と太陽光とによって暖められた空気により、住環境部10の温度が地熱温度以上に上昇する。
【0040】
(実施例3)
実施例3は、図3及び図4(b)を参照しつつ、本発明に係る空調システムを春秋に利用する例を説明する。空気の流れは矢印を参考にすると理解しやすい。
【0041】
春秋では、温度センサ42が住環境部10の約15℃〜23℃の範囲の温度をセンシングすることで制御装置43は、メインファン12を逆回転方向に作動させ、排熱ファン302を作動させ、サーキュレータ111a及びサブファン22を作動させない。遮蔽板301aを作動させないで天窓301を遮蔽し、電磁弁13及び第2電磁弁23を作動させて閉じるとともに、最上階電磁弁2a3を作動させないで開く。
【0042】
そうすると、建築物A内部では 遮蔽板301aにより天窓301が遮蔽されたままで、排熱ファン302により小屋裏部30の不要に暖められた空気が外部へ排出されるとともに、ガラリ101aを通じて最上階ダクト2a内に上昇してきた空気が、電磁弁13及び第2電磁弁が閉じられ、最上階電磁弁2a3が開かれ、サブファン22が停止しているので、メインダクト1を通じて空気清浄機14で清浄されつつ、メインファン12によって床下部20へ向かう流れになり、床下部20の地熱GHによって一定温度に保たれ、調湿材3によって調湿(除湿又は加湿)された空気と混ぜられ、適湿な空気となる。この空気は、ガラリ101を通じて各部屋101aへ上昇し、最上階ダクト2aへ戻って循環する。この空気の循環が繰り返される結果、春秋には、空気清浄機14により清浄され、かつ、適湿な空気で住環境部10が満たされるようになる。
【0043】
したがって、本発明に係る空調システムは、四季を通じて快適な室内空間を実現することができる。床下部20と壁Wの内部と小屋裏部30とが連続空間にならない根太レス工法による木造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建築物Aに適用されるので、住環境部10における空気の流れをより厳密に制御することができ、望まれる温度を自在に調節するとともに、快適な湿度にすることができる。外気を取り入れることなく構築されるので、空気の温度制御、湿度制御をより効率的に行うことができる。また、制御手段4による自動制御で、床下部20の地熱GHによって一定温度に保たれ、調湿材3によって調湿された空気を部屋へ送り込んで空調する構成であり、操作スイッチ41によるオン/オフ作業のみで快適な空調が実現されるため、ユーザーにとって非常に扱いやすい。床下部20の大面積の地表面から得られる地熱GHを活用しているので、熱交換器等の高価な設備も不要である。
【0044】
ここで、本発明において、調湿材3、空気清浄機14、メインダクト1、サブダクト2、電磁弁13、第2電磁弁23、メインファン12、サブファン22、サーキュレータ111a、天窓301及びこの遮蔽板301a、排熱ファン302等の各種部品は公知の手段により達成される。本発明では、特に地熱GHを十分に利用し、四季毎にこれらを適切に制御して連動させることで、季節的に悪条件となる外気を取り入れないで、地中及び床下に熱交換器(蓄熱設備)等も不必要とし、簡素かつ低コストに快適な室内空間が得られる空調システム又は空調方法を整備している。なお、上記実施形態では便宜のため、空気清浄機と制御装置とを1つの電気系統により制御しているが、2つの系統、すなわち制御装置と空気清浄機をそれぞれ作動させるか否かについて別々の系統により制御するようにしてもよい。また、メインファンに関し、空気の上向きの流れ及び下向きの流れをいずれも作り出すことのできる1枚の羽根を有する構成のものを例示したが、2枚の羽根の構成として、空気の上向き又は下向きの流れを別々の羽根で作り出してもよい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態を例示して詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・・メインダクト
11・・・開口部
12・・・メインファン
13・・・電磁弁
14・・・空気清浄機
2・・・・サブダクト
21・・・開口部
22・・・サブファン
23・・・第2電磁弁
2a・・・最上階ダクト
2a1・・開口部
2a3・・最上階電磁弁
3・・・・調湿材
4・・・・制御手段
41・・・操作スイッチ
42・・・温度センサ
43・・・制御装置
10・・・住環境部
101・・部屋
101a・ガラリ
111・・吹抜け部
111a・サーキュレータ
20・・・床下部
201・・基礎断熱
202・・止水板
203・・防湿シート
30・・・小屋裏部
301・・天窓
301a・遮蔽板
302・・排熱ファン
A・・・・建築物
F・・・・基礎
GH・・・地熱
R・・・・屋根
W・・・・壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱が利用され、外気を取り入れることなく構築される空調システムであって、
壁に囲まれた空間を区画して形成される複数の部屋を有し、この部屋に空気が流出入するガラリが形成されている住環境部と、この住環境部の下方に設けられ、基礎に囲まれている床下部と、前記住環境部の上方に設けられ、屋根に囲まれている小屋裏部と、からなり、前記床下部と前記壁の内部と前記小屋裏部とが連続空間にならない根太レス工法による木造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建築物に適用され、
前記床下部と前記小屋裏部との間を前記空気が移動するように、これらの間を貫通させて設けられ、前記空気に所定方向の流れを作り出す送風手段、及び、前記小屋裏部側の開口部付近を開閉する電磁弁が配設されているメインダクトと、
このメインダクトと前記部屋との間を前記空気が移動するように、前記部屋まで前記メインダクトから分岐させて設けられ、前記メインダクトを移動する前記空気を前記部屋側へ引き込む第2送風手段、及び、前記メインダクト側の開口部を開閉する第2電磁弁が配設されているサブダクトと、
前記メインダクトを移動する前記空気が調湿されるように、前記床下部に敷き込まれている調湿材と、
前記住環境部の温度が所定値を超えると、前記電磁弁を閉め、前記第2電磁弁を開き、前記送風手段によって前記小屋裏部へ向かう前記空気の流れを作り出すとともに、前記第2送風手段を作動させるように自動制御する一方、前記住環境部の温度が第2所定値を下回ると、前記電磁弁を開き、前記第2電磁弁を閉じ、前記送風手段によって前記床下部へ向かう前記空気の流れを作り出すとともに、前記第2送風手段を停止させるように自動制御する制御手段と、
から構成され、
前記制御手段の自動制御により、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気を前記部屋へ送り込んで空調する、
ことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記メインダクトに前記空気を清浄する清浄手段を設け、
前記小屋裏部に太陽光を通じて前記空気を暖める集熱手段、及び、不要に暖められた前記空気を外部へ排出する排熱手段を設け、
前記部屋のうち吹抜け部に上昇してきた前記空気を下降させて拡散させるサーキュレータを設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空調システムを利用した空調方法であって、
前記住環境部の温度が所定値を超えたとき、前記排熱手段により前記小屋裏部の不要に暖められた前記空気を外部へ排出するとともに、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気を、前記メインダクトを通じて前記清浄手段で清浄しつつ、前記送風手段によって前記小屋裏部へ向かう流れにし、前記電磁弁を閉じ、前記第2電磁弁を開き、前記第2送風手段を作動させて前記サブダクトを通じて前記部屋に送り込み、この送り込んだ前記空気を前記ガラリを通じて前記床下部へ戻して循環し、
前記住環境部の温度が第2所定値を下回ったとき、前記集熱手段により暖められた前記空気を、前記電磁弁を開き、前記第2電磁弁を閉じ、前記第2送風手段を停止させて前記メインダクトを通じて前記清浄手段で清浄しつつ、前記送風手段によって前記床下部へ向かう流れにして、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気を暖め、この暖められた前記空気を前記ガラリを通じて前記部屋へ上昇させ、前記吹抜け部で前記サーキュレータにより拡散させ、前記部屋を経由して前記小屋裏部へ戻して循環する、
ことを特徴とする空調方法。
【請求項4】
請求項3に記載の空調方法において、
前記小屋裏部の前記住環境部側に、前記メインダクトと前記部屋との間を前記空気が移動可能となるように、前記部屋まで前記メインダクトから分岐させて設けられ、前記メインダクト側の開口部を開閉する最上階電磁弁が配設されている最上階ダクトを設けることで、
前記住環境部の温度が第2所定値以上であって所定値以下であるとき、前記排熱手段により前記小屋裏部の不要に暖められた前記空気を外部へ排出するとともに、前記ガラリを通じて上昇してきた前記空気を、前記電磁弁を閉じ、前記第2電磁弁を閉じ、前記最上階電磁弁を開け、前記第2送風手段を停止させて前記最上階ダクト及び前記メインダクトを通じて前記清浄手段で清浄しつつ、前記送風手段によって前記床下部へ向かう流れにして、前記床下部の地熱によって一定温度に保たれ、前記調湿材によって調湿された前記空気と混ぜ、この混ぜた前記空気を前記ガラリを通じて前記部屋へ上昇させ、前記最上階ダクトへ戻して循環する、
ことを特徴とする空調方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68340(P2013−68340A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205847(P2011−205847)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(511229499)レンゴー設計株式会社 (1)
【Fターム(参考)】