説明

空調システム

【課題】複数の熱源機を有する空調システムについて、評価関数最小化に熱源機の運転台数制御を取り込むことで、消費エネルギの節減などに関する効率をより高めることができるようにする。
【解決手段】空調システムは、空調条件による負荷に応じて複数の熱源機の運転台数を設定する運転台数制御をなすようにされている。そしてその運転台数制御は、現在の運転台数による現在台数運転についてシミュレーションを行うことで評価関数を求める過程、現在の運転台数より所定の単位台数だけ増やす台数増運転と現在の運転台数より所定の単位台数だけ減らす台数減運転のそれぞれについてについてシミュレーションを行うことで運転の可否を判定するとともに評価関数を求める過程、現在台数運転の評価関数より台数増運転の評価関数または台数減運転の評価関数が小さく、かつ前記過程で台数増運転または台数減運転が運転可と判定されていることを条件に単位台数だけ運転台数を増やすかまたは減らす過程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関し、特に評価関数を最小化するような制御をなすようにされている空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムでは、その運転にあたって、例えばシステム全体の消費エネルギやシステムの運転コストあるいはシステムからの二酸化炭素排出量などについての評価関数を最小にするような制御、つまり、より効率的な運転となるような制御を行うのが一般的である。こうした制御は従来にあっては、複数の熱源機を有する空調システムの場合、その複数の熱源機の運転台数を所与の空調条件による負荷(空調負荷)に応じた必要最小限に設定し、その設定した運転台数を前提に評価関数を最小にするような制御としてなされていた。つまり熱源機の運転台数は負荷との関係で必要最小限に固定し、その固定の台数で運転されている熱源機の運転状態などの制御として評価関数最小化のための制御が行われていた(例えば特許文献1〜4)。
【0003】
このような制御が従来においてなされていたのは、熱源機の運転台数を負荷との関係で必要最小限とすることが例えば消費エネルギを最小にする上での基本的な前提になるとされていたからである。
【0004】
ところで、消費エネルギなどを最小化するための熱源機などの運転状態の制御として、冷温熱媒体の流量などを変化させる制御方法が特許文献5により知られている。本願発明の発明者等は、この特許文献5に開示の制御方法で複数熱源機の空調システムを制御した場合についてシミュレーションや運転データ解析を繰り返してきた。その結果、熱源機の運転台数の少ないことが必ずしも消費エネルギを減らすことにならない場合がある、つまり同じ負荷条件下で運転台数を増やす方が消費エネルギを減らせる場合があるという知見が得られた。このことは、負荷との関係以外でも熱源機の運転台数を制御することで、評価関数をより小さくすることができる場合があるということを意味している。
【0005】
【特許文献1】特開2006−275492号公報
【特許文献2】特開2006−266520号公報
【特許文献3】特開2006−220345号公報
【特許文献4】特開2005−134110号公報
【特許文献5】特開2004−53127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような新たな知見に基づいてなされたものであり、その課題は、複数の熱源機を有する空調システムについて、評価関数最小化に熱源機の運転台数制御を取り込むことで、消費エネルギや運転コストあるいは二酸化炭素排出量の節減などに関する効率をより高めることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記課題を解決するために、複数の熱源機を有し、与えられた空調条件による負荷に応じて前記複数の熱源機について運転台数を設定する運転台数制御をなすようにされている空調システムにおいて、前記運転台数制御は、現在の運転台数による現在台数運転について前記負荷の下でのシミュレーションを行うことで評価関数を求める過程、現在の運転台数より所定の単位台数だけ増やした運転台数による台数増運転と現在の運転台数より所定の単位台数だけ減らした運転台数による台数減運転のそれぞれについてについて前記負荷の下でのシミュレーションを行うことで運転の可否を判定するとともに評価関数を求める過程、前記現在台数運転の評価関数より前記台数増運転の評価関数または前記台数減運転の評価関数が小さく、かつ前記過程で前記台数増運転または前記台数減運転が運転可と判定されていることを条件に前記単位台数だけ運転台数を増やすかまたは減らす過程を含むことを特徴としている。
【0008】
このような運転台数制御とすることにより、評価関数最小化に熱源機の運転台数制御を取り込むことができ、消費エネルギや運転コストあるいは二酸化炭素排出量の節減などに関する効率をより高めることができる。
【0009】
また本発明では、上記課題を解決するために、複数の熱源機を有し、与えられた空調条件による負荷に応じて前記複数の熱源機について運転台数を設定する運転台数制御をなすようにされている空調システムにおいて、前記運転台数制御は、現在の運転台数による現在台数運転、現在の運転台数より所定の単位台数だけ増やした運転台数による台数増運転、および現在の運転台数より所定の単位台数だけ減らした運転台数による台数減運転のそれぞれについて前記負荷の下でのシミュレーションを行うことで評価関数を求める過程、前記過程で求められた現在台数運転の評価関数、台数増運転の評価関数、および台数減運転の評価関数の比較により、評価関数が最小となる運転を選択し、その選択された運転が前記台数増運転または前記台数減運転である場合には、これら台数増運転または台数減運転が前記負荷の下で可能であることを条件に前記単位台数だけ運転台数を増やすかまたは減らす過程を含むことを特徴としている。
【0010】
このような運転台数制御も上記運転台数制御と実質的に同様であり、評価関数最小化に熱源機の運転台数制御を取り込むことができ、消費エネルギや運転コストあるいは二酸化炭素排出量の節減などに関する効率をより高めることができる。
【0011】
上記のような空調システムについては、前記評価関数の比較に際し、前記台数増運転と前記台数減運転それぞれの評価関数として、前記シミュレーションで求めた評価関数に所定の補正値を加算し補正評価関数を用いるようにするのが好ましい。
【0012】
このようにすることにより、評価関数最小化に熱源機の運転台数制御を取り込みつつ、運転台数の切替え頻度を抑えることができる。すなわち評価関数に加算する補正値として、熱源機などの起動や停止に際して生じる消費エネルギなどの過渡的増加分を用いることで、それを加味した運転台数制御とすることができ、その結果、運転台数の切替え頻度を抑えつつ評価関数を最小化することができる。そして運転台数の切替え頻度を抑えることができることにより、熱源機などの消耗を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明によれば、複数の熱源機を有する空調システムについて、評価関数最小化に熱源機の運転台数制御を取り込むことができ、消費エネルギや運転コストあるいは二酸化炭素排出量の節減などに関する効率をより高めることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1に、第1の実施形態による空調システムの構成を示す。本実施形態の空調システムESは、3系統で熱源機を備えている場合で、冷却塔1a、1b、1c、冷却水ポンプ2a、2b、2c、吸収冷温水機(熱源機)3a、3b、3c、冷温水ポンプ(冷温熱媒体ポンプ)4a、4b、4c、空気調和機5a、5b、5cを備え、また冷温水往ヘッダ10、冷温水還負荷側ヘッダ11、冷温水還熱源側ヘッダ12を備え、さらに制御装置13を備えている。
【0015】
冷却塔1a、1b、1cは、それぞれの送風用のファン(図示を省略)にインバータ21a、21b、21cが接続されており、これらインバータ21a、21b、21cを制御装置13からの指令で制御することで風量を変化させることができるようにされている。
【0016】
冷却水ポンプ2a、2b、2cは、それぞれインバータ22a、22b、22cが接続され、これらインバータ22a、22b、22cを制御装置13からの指令で制御することで冷却水の流量を変化させることができるようにされている。
【0017】
冷温水ポンプ4a、4b、4cは、それぞれインバータ23a、23b、23cが接続され、これらインバータ23a、23b、23cを制御装置13からの指令で制御することで冷温熱媒体である冷温水の流量を変化させることができるようにされている。
【0018】
吸収冷温水機3a、3b、3cは、それぞれ制御装置13からの指令で冷温水出口温度の制御目標値を変化させることできるようにされ、また冷却水と冷温水の流量をともに定格流量の所定の割合、例えば1/2までの範囲で変化させることができるようにされている。
【0019】
空気調和機5a、5b、5cは、それぞれ冷温水コイル6a、6b、6cとファン8a、8b、8cを備え、そのファン8a、8b、8cのそれぞれにインバータ24a、24b、24cが接続され、これらインバータ24a、24b、24cを制御装置13からの指令で制御することで空気調和機5a、5b、5cにおける通風量を変化させることができるようにされている。
【0020】
以上のように本実施形態の空調システムESは、冷却塔1における送風量、冷却水の流量、冷温水の流量、吸収冷温水機3における冷温水出口温度、および空気調和機5における通風量を調整する制御を行え、さらにその機構の図示を省略してあるが、冷却水、冷温水および給気の温度を調整する制御も行えるようにされ、これらの制御により、熱源機の各系統について評価関数、具体的には消費エネルギについての評価関数を最小化できる、つまり消費エネルギを最小にできるようにされている。なお、この場合の消費エネルギは、冷却塔1、冷却水ポンプ2、冷温水ポンプ4、ファン8それぞれでの消費電力と吸収冷温水機3のガス消費量のそれぞれに電力とガスの一次エネルギ換算係数を掛けて足し合わせたものとして求められるものである。
【0021】
こうした空調システムESにおける制御は制御装置13によりなされる。そのために空調システムESの各機器には通信端14が設けられ、この通信端14で図示を省略の通信ネットワーク15により制御装置13と接続されることで制御装置13と通信できるようにされ、また図示を省略の各種センサ(例えば空気調和機5の吹き出し風量を検出するセンサ、空気調和機5の吹き出し温度を検出するセンサ、室内温度を検出するセンサ、外気温度を検出するセンサなど)の出力データを制御装置13に取り込むことができるようにされている。なお、制御装置13に取り込む温度データは、熱源機が水冷である場合は湿球温度となり、空冷の場合は乾球温度となる。
【0022】
以上のような制御を可能とする空調システムESでは、冷却負荷と消費エネルギの関係は一例として図2に示すようになる。図2では、熱源機である吸収冷温水機3の運転台数について、1台の場合の負荷−消費エネルギ曲線51、2台の場合の負荷−消費エネルギ曲線52、および3台の場合の負荷−消費エネルギ曲線53を示してある。この図に見られるように、空調システムESにおける熱源機運転台数ごとの負荷−消費エネルギ曲線は、負荷−消費エネルギ曲線51と52の間で交点Paを有し、負荷−消費エネルギ曲線52と53の間で交点Pbを有している。このことは、上述のような負荷に応じた最適な制御を行うことにより、部分負荷における効率が大幅に向上し、そのために、例えば1台運転が可能な負荷範囲でも2台運転とする方がシステム全体として消費エネルギを少なくすることができる場合があるということを意味している。
【0023】
ここで、空調システムESにおけるような冷却水や冷温水の流量などの制御を行うことができない構成の空調システムと空調システムESを負荷−消費エネルギ特性について比較してみる。図3に示す空調システムESpは、機器構成については空調システムESと同一で、ただ空調システムESにおけるインバータ21〜インバータ23を備えておらず、冷却水や冷温水の流量などの制御を行うことができない点で相違している。このような空調システムESpの場合、冷却負荷と消費エネルギの関係は図4に示すようになる。図4では、熱源機である吸収冷温水機3の運転台数について、1台の場合の負荷−消費エネルギ曲線61、2台の場合の負荷−消費エネルギ曲線62、および3台の場合の負荷−消費エネルギ曲線63を示してある。この図に見られるように、空調システムESpにおける熱源機運転台数ごとの負荷−消費エネルギ曲線は互いに交差することがない。このことは、熱源機の運転台数を負荷との関係で必要最小限とすることが消費エネルギを最小にする上での基本的な前提になることを意味している。
【0024】
空調システムESでは、以上のような負荷−消費エネルギ特性を活用することで、消費エネルギについて効率をより一層高めることができる。以下では、そのためになされる運転台数制御について説明する。運転台数制御は、制御装置13によりなされる。そのために制御装置13は、シミュレーション手段31と運転台数設定手段32を備えており、シミュレーション手段31により、所与の運転台数での運転が現在の負荷との関係で可能か否かを計算するとともに、現在の負荷の下でのその台数による運転についての評価関数、具体的には消費エネルギを算出し、またシミュレーション手段31で得られる結果を用いて運転台数設定手段32が吸収冷温水機3の運転台数を設定する。このような運転台数制御における処理の流れを図5に示す。なお、以下では冷房の場合として説明するが、その説明は暖房の場合についても同様に当てはまる。
【0025】
図5の運転台数制御は、ステップ101〜ステップ119の各処理を含み、吸収冷温水機3の運転台数の設定(運転台数の切替えまたは現在運転台数の維持)がなされることで1つの制御サイクルについての処理が終了となり、その制御サイクルは例えば10〜15分程度の間隔で繰り返される。なお運転台数の切替えのための吸収冷温水機3の起動や停止には冷却塔1、冷却水ポンプ2、冷温水ポンプ4、空気調和機5などの各機器の起動や停止も伴うことになる。
【0026】
ステップ101からステップ106までは、現在の冷却負荷との関係で運転台数の当否を判定して運転台数の変更を行う負荷相関運転台数設定処理である。この負荷相関運転台数設定処理では、まずステップ101として、現在の冷却負荷に所定の調整負荷量を加算した冷却負荷(調整負荷量加算現在負荷)について現在の運転台数での運転である現在台数運転の可否をシミュレーションにより計算する。ここで、ステップ101の場合の運転の可否とは、設定されている空調条件を満足させることが否か、つまり設定されている空調条件の室温まで冷房することが可能か否かとして判定される。
【0027】
ステップ102では、ステップ101での計算結果に基づいて運転可能か否かを判定する。ステップ102の判定結果が否定的な場合には、冷却負荷が上記調整負荷量程度増大するだけで現在の運転台数では運転が不可になるということなので、ステップ103に進み、運転台数を単位台数(図の例では1台)だけ増やす。このステップ103の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0028】
ステップ102の判定結果が肯定的な場合には、ステップ104に進む。ステップ104では、現在の冷却負荷から上記の調整負荷量を減算した冷却負荷(調整負荷量減算現在負荷)について現在台数運転の可否をシミュレーションにより計算する。ここで、ステップ104の場合の運転の可否とは、現在の運転台数でにあって冷却負荷が吸収冷温水機3の運転可能範囲の下限値を下回ることでオンオフ運転となるか否かとして判定され、オンオフ運転となる場合に運転不可となる。
【0029】
ステップ105では、ステップ104での計算結果に基づいて運転可能か否かを判定する。ステップ105の判定結果が否定的な場合には、冷却負荷が上記調整負荷量程度減少するだけで現在の運転台数では運転が不可になるということなので、ステップ106に進み、運転台数を単位台数(図の例では1台)だけ減らす。このステップ106の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。ここで、ステップ105の判定結果が否定的であっても、現在の運転台数が1台の場合には、運転台数を減らすことができないので、現在の運転台数を維持する処理を行うことになるが、その処理については図示を省略してある。
【0030】
以上のように冷却負荷との関係での運転台数の設定制御にあって調整負荷量加算現在負荷や調整負荷量減算現在負荷に関し運転の可否を判定するのは、負荷との関係での運転可否の判定に余裕を持たせるためである。したがって調整負荷量は、その目的のために適切に設定され、例えば現在負荷の5〜10%程度の値を用いるのが好ましい例である。
【0031】
ステップ107からステップ119までは、消費エネルギについての評価関数を最小化するために運転台数の変更を行う評価関数相関運転台数設定処理であり、ステップ105までに運転台数の設定がなされない場合に行われる。すなわちステップ105の判定がなされその結果が肯定的な場合に、ステップ107に進み、まず現在台数運転について現在の冷却負荷でシミュレーションを行うことにより評価関数として消費エネルギ量Aを計算する。
【0032】
ステップ108では、上記の調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のそれぞれについて現在の運転台数より所定の単位台数(図の例では1台)だけ増やした台数による運転である台数増運転の可否をシミュレーションにより計算する。
【0033】
ステップ109では、ステップ108での計算結果に基づいて運転可能か否かを判定する。ステップ109の運転可否判定は、調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のいずれについても運転可であることを条件にして肯定的になり、調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のいずれ一方でも運転不可の場合には否定的となる。
【0034】
ステップ109の判定結果が肯定的な場合には、ステップ110に進む。ステップ110では、台数増運転について現在の冷却負荷でシミュレーションを行うことにより運転の可否を計算するとともに評価関数として消費エネルギ量Bを計算する。
【0035】
ステップ111では、ステップ110での計算結果に基づいて運転可能か否かと消費エネルギ量の大小を判定する。消費エネルギ量の大小を判定は、現在台数運転の消費エネルギ量Aと台数増運転の消費エネルギ量Bについて、消費エネルギ量Bが消費エネルギ量Aより小さいか否かの判定として行う。ただし、消費エネルギ量Bについては、所定の補正値(消費エネルギ補正量)Xを加算した補正評価関数(補正消費エネルギ量)である「B+X」として消費エネルギ量Aと比較する。ここで、補正値Xとしては、吸収冷温水機3やこれとともに起動、停止を行う各機器それぞれの起動、停止に際して生じる消費エネルギなどの過渡的増加分程度(例えば各機器の定格消費エネルギの3〜10%程度)を用いるのが好ましい。このようにすることにより、図2に示すように、吸収冷温水機3などの起動、停止時の消費エネルギの過渡的増加分を加味した運転台数制御とすることができる。すなわち消費エネルギ補正量Xを加算しない場合であれば、交点Paや交点Pbで運転台数の切替えがなされることになるのに対して、消費エネルギ補正量Xを加算することにより、例えば運転台数の切替え点SPa〜SPdのように交点Paや交点Pbよりも負荷の大きい側(運転台数を増やす場合)や小さい側(運転台数を減らす場合)に偏倚する。このことは、消費エネルギ補正量Xの範囲においては運転台数の切替えがなされず、そのために運転台数の切替え頻度を抑えることになり、またその切替え頻度の抑制に起動、停止時の消費エネルギの過渡的増加分を加味することになる。この結果、より効率的な消費エネルギ最小化制御を行いつつ、運転台数の切替え頻度の抑制も可能となり、吸収冷温水機3など消耗を抑えることができる。
【0036】
ステップ111での判定結果が肯定的な場合、つまり運転可能で、かつ台数増運転の補正消費エネルギ量(補正評価関数)B+Xが現在台数運転の消費エネルギ量Aより小さい場合には、吸収冷温水機3の運転台数を増やす方が消費エネルギを抑えることができるということになるので、ステップ112に進み、運転台数を単位台数(図の例では1台)だけ増やす。このステップ112の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0037】
ステップ109の判定結果が否定的な場合およびステップ111の判定結果が否定的な場合には、それぞれステップ113に進む。ステップ113では、上記の調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のそれぞれについて現在の運転台数より所定の単位台数(図の例では1台)だけ減らした台数による運転である台数減運転の可否をシミュレーションにより計算する。
【0038】
ステップ114では、ステップ113での計算結果に基づいて運転可能か否かを判定する。ステップ114の運転可否判定は、ステップ109と同様に、調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のいずれについても運転可であることを条件にして肯定的になり、調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のいずれ一方でも運転不可の場合には否定的となる。
【0039】
ステップ114の判定結果が否定的な場合には、ステップ115に進み、現在運転台数を維持する設定とする。このステップ115の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0040】
一方、ステップ114の判定結果が肯定的な場合には、ステップ116に進む。ステップ116では、台数減運転について現在の冷却負荷でシミュレーションを行うことにより運転の可否を計算するとともに評価関数として消費エネルギ量Cを計算する。
【0041】
ステップ117では、ステップ116での計算結果に基づいて運転可能か否かと消費エネルギ量の大小を判定する。消費エネルギ量の大小を判定は、現在台数運転の消費エネルギ量Aと台数減運転の消費エネルギ量Cについて、消費エネルギ量Cが消費エネルギ量Aより小さいか否かの判定として行う。ただし、消費エネルギ量Cについては消費エネルギ量Bの場合と同様な意味で消費エネルギ補正量Xを加算した補正評価関数である「C+X」として消費エネルギ量Aと比較する。
【0042】
ステップ117での判定結果が肯定的な場合、つまり運転可能で、かつ台数減運転の付加消費エネルギ加算消費エネルギ量(補正評価関数)C+Xが現在台数運転の消費エネルギ量Aより小さい場合には、吸収冷温水機3の運転台数を減らす方が消費エネルギを抑えることができるということになるので、ステップ118に進み、運転台数を単位台数(図の例では1台)だけ減らす。このステップ112の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0043】
一方、ステップ117での判定結果が否定的な場合には、ステップ119に進み、現在運転台数を維持する設定とする。このステップ119の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0044】
図6に示すのは、第2の実施形態による空調システムでなされる運転台数制御における処理の流れである。本実施形態の空調システムの機器構成は図1の空調システムESと同じである。本実施形態の運転台数制御では、上述の現在台数運転、台数増運転、および台数減運転のそれぞれについて評価関数をまず求め、それから各評価関数の比較により、評価関数が最小となる運転を選択することで運転台数の設定を行う。このような運転台数制御は、ステップ201〜ステップ215の各処理を含み、吸収冷温水機3の運転台数の設定がなされることで1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0045】
ステップ201からステップ206までは、現在の冷却負荷との関係で運転台数の当否を判定して運転台数の変更を行う負荷相関運転台数設定処理であり、図5のステップ101からステップ106までと同じである。
【0046】
ステップ207からステップ215までは、第1の実施形態の場合と同様な評価関数相関運転台数設定処理であり、ステップ205の判定がなされ、その結果が肯定的であることにより、ステップ205までに運転台数の設定がなされない場合に行われる。
【0047】
ステップ205の判定結果が肯定的な場合に、ステップ207に進む。ステップ207では、第1の実施形態の場合と同様な現在台数運転、台数増運転および台数減運転のそれぞれについて現在の冷却負荷でシミュレーションを行い、現在台数運転については消費エネルギ量Aを計算する。一方、台数増運転と台数減運転については、上記の調整負荷量加算現在負荷と調整負荷量減算現在負荷のそれぞれについて運転可であることを条件に現在の冷却負荷での運転の可否を計算するとともに評価関数として消費エネルギ量Bや消費エネルギ量Cを計算する。
【0048】
ステップ208では、現在台数運転の消費エネルギ量A、台数増運転の消費エネルギ量B、台数減運転の消費エネルギ量Cのいずれが最小かを判定する。ただし、第1の実施形態の場合と同様の理由から、消費エネルギ量Bと消費エネルギ量Cについては、消費エネルギ補正量Xを加算した補正評価関数である「B+X」や「C+X」として比較する。
【0049】
ステップ208で消費エネルギ量Aが最小と判定された場合には、ステップ209に進み、現在運転台数を維持する設定とする。このステップ209の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0050】
ステップ208で消費エネルギ量Bが最小と判定された場合には、ステップ210に進み、ステップ207での運転可否計算結果を判定する。ステップ210の判定結果が肯定的な場合には、ステップ211に進んで運転台数を単位台数だけ増やす。このステップ211の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。一方、ステップ210の判定結果が否定的な場合には、ステップ212に進み、現在運転台数を維持する設定とする。このステップ209の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0051】
ステップ208で消費エネルギ量Cが最小と判定された場合には、ステップ213に進み、ステップ207での運転可否計算結果を判定する。ステップ213の判定結果が肯定的な場合には、ステップ214に進んで運転台数を単位台数だけ減らす。このステップ214の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。一方、ステップ213の判定結果が否定的な場合には、ステップ215に進み、現在運転台数を維持する設定とする。このステップ215の処理がなされると1つの制御サイクルについての処理が終了となる。
【0052】
以上の実施形態では、運転中に行うシミュレーションの結果を用いて運転台数の設定を行うようにしていたが、これに代えて、負荷を適切な単位で区切って得られる単位負荷ごとに予めのシミュレーションにより最適運転台数を求めることで負荷と最適運転台数の対応関係をテーブル化しておき、その負荷−最適運転台数テーブルを用いて運転台数の制御を行う方式とするのも好ましい形態の1つである。こうした負荷−最適運転台数テーブル方式には、以上のような第2の実施形態の運転台数制御方式が特に適している。
【0053】
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態の空調システムの機器構成も基本的には図1の空調システムESと同じである。ただ、吸収冷温水機3a、3b、3cそれぞれの冷凍能力が異なっている。ここでは、冷凍能力の比が3a:3b:3c=1:2:3であるとする。このように吸収冷温水機3a、3b、3cそれぞれの冷凍能力が異なる場合には、上述のシミュレーションを行う冷却負荷の範囲を予め設定しておき、シミュレーションを行う現在冷却負荷がその範囲に入る吸収冷温水機3の組合せについてのみシミュレーションを行うようにする。このようにすることで、運転台数の設定に際して冷凍能力の相違を加味した制御を効果的に行うことができる。図7に示すのは、そうした負荷−シミュレーション範囲データの例の説明図である。図に見られるように、3系統の吸収冷温水機3a、3b、3cについては、図中に○で示す「運転」と×で示す「停止」について可能な組合せが7通りあり、これら各組合せにおける合計の冷凍能力に応じて負荷−シミュレーション範囲Lを予め求めることで負荷−シミュレーション範囲データを作成することになる。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これらは代表的な例に過ぎず、本発明は、その趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば以上の各実施形態では評価関数を消費エネルギについてとしていたが、運転コストや二酸化炭素排出量についての評価関数を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1の実施形態による空調システムの構成を示す図である。
【図2】図1の空調システムにおける冷却負荷と消費エネルギの関係の例を示す図である。
【図3】第1の実施形態による空調システムと比較される空調システムの構成を示す図である。
【図4】図3の空調システムにおける冷却負荷と消費エネルギの関係の例を示す図である。
【図5】第1の実施形態による空調システムでなされる運転台数制御における処理の流れを示す図である。
【図6】第2の実施形態による空調システムでなされる運転台数制御における処理の流れを示す図である。
【図7】負荷−シミュレーション範囲データを説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
3 吸収冷温水機(熱源機)
13 制御装置
31 シミュレーション手段
32 運転台数設定手段
ES 空調システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源機を有し、与えられた空調条件による負荷に応じて前記複数の熱源機について運転台数を設定する運転台数制御をなすようにされている空調システムにおいて、
前記運転台数制御は、現在の運転台数による現在台数運転について前記負荷の下でのシミュレーションを行うことで評価関数を求める過程、現在の運転台数より所定の単位台数だけ増やした運転台数による台数増運転と現在の運転台数より所定の単位台数だけ減らした運転台数による台数減運転のそれぞれについてについて前記負荷の下でのシミュレーションを行うことで運転の可否を判定するとともに評価関数を求める過程、前記現在台数運転の評価関数より前記台数増運転の評価関数または前記台数減運転の評価関数が小さく、かつ前記過程で前記台数増運転または前記台数減運転が運転可と判定されていることを条件に前記単位台数だけ運転台数を増やすかまたは減らす過程を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
複数の熱源機を有し、与えられた空調条件による負荷に応じて前記複数の熱源機について運転台数を設定する運転台数制御をなすようにされている空調システムにおいて、
前記運転台数制御は、現在の運転台数による現在台数運転、現在の運転台数より所定の単位台数だけ増やした運転台数による台数増運転、および現在の運転台数より所定の単位台数だけ減らした運転台数による台数減運転のそれぞれについて前記負荷の下でのシミュレーションを行うことで評価関数を求める過程、前記過程で求められた現在台数運転の評価関数、台数増運転の評価関数、および台数減運転の評価関数の比較により、評価関数が最小となる運転を選択し、その選択された運転が前記台数増運転または前記台数減運転である場合には、これら台数増運転または台数減運転が前記負荷の下で可能であることを条件に前記単位台数だけ運転台数を増やすかまたは減らす過程を含むことを特徴とする空調システム。
【請求項3】
前記評価関数の比較に際し、前記台数増運転と前記台数減運転それぞれの評価関数として、前記シミュレーションで求めた評価関数に所定の補正値を加算し補正評価関数を用いるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−292043(P2008−292043A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137134(P2007−137134)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】