説明

空調システム

【課題】消費電力の低減を図ることができる空調システムを提供する。
【解決手段】第1の熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサ11の吐出側に設けられた凝縮器12と、凝縮器の流出側に設けられた膨張弁15と、膨張弁の流出側に設けられ、第1の熱媒体が第1の流路および第2の流路のいずれかに切り換えを行う切換弁14と、第1の流路と、第2の流路と、の合流位置よりも下流側でコンプレッサの吸入側に設けられた蒸発器17と、第2の熱媒体を熱源に供給するポンプ34と、熱源に供給された第2の熱媒体の熱を放熱させる放熱器33と、蓄熱材を有した蓄熱部19と、を備えている。そして、蓄熱部は、第1の流路を流れる第1の熱媒体と、蓄熱材と、の間において熱交換を行う第1の熱交換領域と、放熱器の上流側において、熱源に供給された第2の熱媒体と、蓄熱材と、の間において熱交換を行う第2の熱交換領域と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
後述する実施形態は、概ね、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載した燃料電池などの発熱体の冷却に空調システムの冷房に使用される熱媒体を吸熱源として利用する冷却システムがある。
例えば、空調システムにおける冷房用の蒸発器と、蓄熱材を備えた熱交換器と、が切換弁を介して並列接続され、熱交換器を介して、車両に搭載した発熱体の冷却に冷房に使用される熱媒体を吸熱源として利用する冷却システムが提案されている。
ここで、空調システムにおいては、冷房の他に暖房が必要となる場合がある。この場合、寒冷地などにおいて暖房用の蒸発器に霜が付くと暖房効率の低下、蒸発器の破損などの原因となる。
しかしながら、前述した空調システムにおいては、燃料電池などの発熱体の熱を付着した霜の除去に利用することが考慮されていなかった。そのため、霜の除去にヒータなどを用いることが必要となり、消費電力が増加するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−127648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、消費電力の低減を図ることができる空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る空調システムは、吸入した第1の熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサと、前記コンプレッサの吐出側に設けられた凝縮器と、前記凝縮器の流出側に設けられた膨張弁と、前記膨張弁の流出側に設けられ、前記第1の熱媒体が第1の流路および第2の流路のいずれかを流れるように切り換えを行う切換弁と、前記第1の流路と、前記第2の流路と、の合流位置よりも下流側であって、且つ、コンプレッサの吸入側に設けられた蒸発器と、第2の熱媒体を熱源に供給するポンプと、前記熱源に供給された第2の熱媒体の熱を放熱させる放熱器と、蓄熱材を有した蓄熱部と、を備えている。そして、前記蓄熱部は、前記第1の流路を流れる前記第1の熱媒体と、前記蓄熱材と、の間において熱交換を行う第1の熱交換領域と、前記放熱器の上流側において、前記熱源に供給された第2の熱媒体と、前記蓄熱材と、の間において熱交換を行う第2の熱交換領域と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る空調システムを例示するためのブロック図である。
【図2】蓄熱部を例示するための模式図である。(a)は蓄熱部を例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるA−A’矢視断面図である。
【図3】車両走行時に熱源31から回収した第2の熱媒体の熱量(回収熱量)の経時変化を例示するための模式グラフ図である。
【図4】他の実施形態に係る蓄熱部を例示するための模式図である。(a)は蓄熱部を例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるB−B’矢視断面図である。
【図5】冷房側回路10aにおける運転方法を例示するためのフローチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る空調システムを例示するためのブロック図である。
【図7】暖房側回路10cにおける運転方法を例示するためのフローチャートである。
【図8】第3の実施形態に係る空調システムを例示するためのブロック図である。
【図9】蓄熱部を例示するための模式図である。(a)は蓄熱部を例示するための模式断面図、(b)は(a)におけるC−C’矢視断面図である。
【図10】暖房側回路10dにおける運転方法を例示するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下においては、一例として、電気自動車(EV;Electric Vehicle)や燃料電池自動車(FCV;Fuel Cell Vehicle)に設けられる空調システムを例に挙げて説明する。
また、第1の熱媒体の状態が液体、ガス、気液二相状態となる場合があるが、単に第1の熱媒体と称することもある。
また、第2の熱媒体の状態が液体、気液二相状態となる場合があるが、単に第2の熱媒体と称することもある。
【0008】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る空調システムを例示するためのブロック図である。
図1に示すように、空調システム1には、ヒートポンプ回路10と、熱回収回路30とが設けられている。
ヒートポンプ回路10には、冷房側回路10a、暖房側回路10bが設けられている。 冷房側回路10aは、車室内に供給される空気から熱を吸収することで車室内の冷房に用いられる空気の温度を下降させる。
暖房側回路10bは、車室内に供給される空気に熱を吸収させることで車室内の暖房に用いられる空気の温度を上昇させる。
【0009】
まず、冷房側回路10aについて例示をする。
冷房側回路10aには、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器(コンデンサ)12、膨張弁15、蒸発器(エバポレータ)17、配管22が設けられている。
【0010】
コンプレッサ11の吸入側には、蒸発器17の流出側及び暖房側回路10bに設けられた蒸発器18の流出側がそれぞれ接続されている。コンプレッサ11の吐出側には、切換弁14の流入側が接続されている。
コンプレッサ11は、蒸発器17及び蒸発器18から供給された第1の熱媒体のガスを圧縮する。コンプレッサ11は、例えば、吸入側より吸入した第1の熱媒体のガスを圧縮して高温高圧の第1の熱媒体のガスを生成し、生成された高温高圧の第1の熱媒体のガスを吐出側より吐出するものとすることができる。
【0011】
切換弁14の流出側には、凝縮器12の流入側及び暖房側回路10bに設けられた凝縮器13の流入側がそれぞれ接続されている。
切換弁14は、コンプレッサ11から吐出された高温高圧の第1の熱媒体のガスを凝縮器12及び凝縮器13のいずれに供給するのかを切り換える。切換弁14は、例えば、電磁コイルを備え、電磁コイルへの通電と通電の停止とにより流路の切り換えを行う三方弁などとすることができる。
【0012】
凝縮器12の流出側には、膨張弁15の流入側が接続されている。
凝縮器12は、例えば、図示しない送風ファンを備え、送風ファンにより吹き付けられた車室外の空気と、コンプレッサ11から吐出された高温高圧の第1の熱媒体のガスとの間において熱交換を行うものとすることができる。コンプレッサ11から吐出された高温高圧の第1の熱媒体のガスは、吹き付けられた車室外の空気に熱を吸収されることで凝縮される。
【0013】
膨張弁15の流出側には、蒸発器17の流入側が接続されている。
膨張弁15は、凝縮器12により凝縮された第1の熱媒体を断熱膨張させることで減圧し、その一部を気化させて気液二相状態の第1の熱媒体とする。
【0014】
蒸発器17の流出側には、コンプレッサ11の吸入側が接続されている。
蒸発器17は、車室内に空気を供給するための送風ファン21aが設けられた送風ダクト21の内部に設けられている。蒸発器17は、送風ファン21aにより吹き付けられた空気と、膨張弁15から流入した気液二相状態の第1の熱媒体との間において熱交換を行う。気液二相状態の第1の熱媒体は、吹き付けられた空気から熱を吸収することで第1の熱媒体のガスとなりコンプレッサ11に供給される。また、蒸発器17により熱を吸収された空気は車室内に供給され、車室内の冷房に用いられる。
配管22は、冷房側回路10aに設けられた各要素間を接続し、第1の熱媒体の流路となる。
【0015】
次に、暖房側回路10bについて例示をする。
暖房側回路10bには、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器(コンデンサ)13、膨張弁16、蓄熱部19、蒸発器(エバポレータ)18、配管22a〜23cが設けられている。
【0016】
凝縮器13は、コンプレッサ11の吐出側に設けられている。凝縮器13の流出側には、配管23aを介して膨張弁16の流入側が接続されている。
凝縮器13は、前述した送風ダクト21の内部に設けられている。
凝縮器13は、送風ファン21aにより吹き付けられた空気と、切換弁14を介してコンプレッサ11から吐出された高温高圧の第1の熱媒体のガスとの間において熱交換を行うものとすることができる。コンプレッサ11から吐出された高温高圧の第1の熱媒体のガスは、吹き付けられた空気に熱を吸収されることで凝縮される。また、凝縮器13に吹き付けられた空気は、第1の熱媒体のガスから熱を吸収することで加熱され、加熱された空気は車室内に供給されて車室内の暖房に用いられる。
【0017】
膨張弁16は、凝縮器13の流出側に設けられている。膨張弁16の流出側には、配管23cを介して蒸発器18の流入側が接続されている。
膨張弁16は、凝縮器13により凝縮された第1の熱媒体を断熱膨張させることで減圧し、その一部を気化させて気液二相状態の第1の熱媒体とする。
【0018】
蒸発器18の流出側には、配管23bを介してコンプレッサ11の吸入側が接続されている。
蒸発器18は、例えば、図示しない送風ファンを備え、送風ファンにより吹き付けられた車室外の空気と、蓄熱部19を介して膨張弁16から流入した気液二相状態の第1の熱媒体との間において熱交換を行うものとすることができる。気液二相状態の第1の熱媒体は、吹き付けられた空気から熱を吸収することで第1の熱媒体のガスとなりコンプレッサ11に供給される。
【0019】
蓄熱部19は、膨張弁16と蒸発器18との間に設けられている。
蓄熱部19の内部には、蓄熱材24が設けられ、熱回収回路30から供給された熱を蓄える。また、蓄熱部19は、蓄熱材24に蓄えられた熱を膨張弁16から蒸発器18に向けて供給される気液二相状態の第1の熱媒体に供給する。熱が供給されることで加熱された気液二相状態の第1の熱媒体が蒸発器18に供給されることで、蒸発器18の温度を上昇させることができる。そのため、寒冷地などにおいて蒸発器18に霜が付くことを抑制することができる。また、始動時などにおいて蒸発器18に霜が付いている場合であっても霜を除去することができる。その結果、暖房効率の低下、蒸発器の破損などを抑制することができる。
なお、蓄熱部19に関する詳細は後述する。
また、冷房側回路10a、暖房側回路10bに用いられる第1の熱媒体は、例えば、アンモニア、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)などとすることができる。
【0020】
次に、熱回収回路30について例示する。
熱回収回路30には、ポンプ34、放熱器33、配管32が設けられている。
熱回収回路30は、熱源31の熱を吸収することで熱源31を冷却し、吸収した熱を蓄熱部19に供給することで蓄熱部19に熱を蓄える。
【0021】
ポンプ34の吸入側には、放熱器33の流出側が接続されている。ポンプ34の吐出側には、熱源31が接続されている。
ポンプ34は、第2の熱媒体を熱源31に供給する。また、ポンプ34は、熱源31、蓄熱部19、放熱器33の間において第2の熱媒体を循環させる。
【0022】
放熱器33は、熱源31に供給された第2の熱媒体の熱を放熱させる。放熱器33は、例えば、図示しない送風ファンを備え、送風ファンにより吹き付けられた車室外の空気と、蓄熱部19を介して熱源31から流入した第2の熱媒体との間において熱交換を行うものとすることができる。
放熱器33は、例えば、電気自動車や燃料電池自動車などに設けられたラジエータとすることができる。
熱源31から熱を吸収した第2の熱媒体は、蓄熱部19において熱を吸収され、放熱器33において吹き付けられた車室外の空気にさらに熱を吸収される。そして、熱を吸収されることで冷却された第2の熱媒体は、熱源31に供給され、熱源31の冷却に用いられる。
【0023】
配管32は、ポンプ34、放熱器33、蓄熱部19、熱源31間を接続し、第2の熱媒体の流路となる。
熱源31は、例えば、電気自動車や燃料電池自動車などに設けられたモータ、インバータ、燃料電池スタックなどの熱を発生させるものとすることができる。
第2の熱媒体は、例えば、水とすることができる。
【0024】
次に、蓄熱部19についてさらに例示をする。
図2は、蓄熱部を例示するための模式図である。なお、図2(a)は蓄熱部を例示するための模式断面図、図2(b)は図2(a)におけるA−A’矢視断面図である。
図3は、車両走行時に熱源31から回収した第2の熱媒体の熱量(回収熱量)の経時変化を例示するための模式グラフ図である。
図3は、10-15走行モードで車両走行を行った場合である。
また、熱源31における第2の熱媒体の流入口、および流出口における温度を実験によって求め、第2の熱媒体の流出口における温度と、流入口における温度との温度差から、回収熱量を算出するようにした。
【0025】
図3より、熱源31で発生する発熱量は、走行時間とともに変動することがわかる。
ここで、蓄熱部19に設けられた蓄熱材24と、流路28の内部を流れる第1の熱媒体との間における熱交換(蓄熱材24からの第1の熱媒体の吸熱)は、蓄熱材24と第1の熱媒体との間の温度差が大きいほど、その交換量が多くなる。この場合、図3に示すように、電気自動車や燃料電池自動車などの走行状態によって熱源31から発生する熱量が変動するため、流路29の内部を流れる第2の熱媒体の温度も変動を伴うことになる。
【0026】
蓄熱材24を介さずに、流路28の内部を流れる第1の熱媒体と、流路29の内部を流れる第2の熱媒体とを直接熱交換させた場合、第2の熱媒体の熱量が0に近いと第2の熱媒体から第1の熱媒体に熱を供給することが困難となる。
一方、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)以上の場合、例えば、蒸発器18に付着した霜を除去する必要がない場合、熱交換を必要としない期間に熱源31から第2の熱媒体に吸収された熱は、放熱器33から外部に放出させることになるので無駄になる。
【0027】
そこで、本実施の形態においては、蓄熱材24を有する蓄熱部19を設けることで、熱交換を必要としない期間に熱源31において発生した熱を蓄えておくことができるようにしている。
蓄熱部19を設けるようにすれば、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満となり、第1の熱媒体に熱を吸収させる必要がある場合に蓄熱材24から第1の熱媒体に熱を供給することができる。
【0028】
また、後述するように、蓄熱材24として潜熱蓄熱材(相変化蓄熱材)を用いたり、第1の熱媒体と蓄熱材24とが熱交換する熱交換領域26(第1の熱交換領域の一例に相当する)と、第2の熱媒体と蓄熱材24とが熱交換する熱交換領域27(第2の熱交換領域の一例に相当する)とが隣接するようにしている。そのため、第2の熱媒体の温度に変動があっても変動を緩和することができるので、蓄熱材24の温度をほぼ一定に保つことができる。よって、蓄熱材24と第1の熱媒体との間における熱交換時に熱交換される熱量をほぼ一定とすることができ、効率よく蒸発器18に付着した霜を除去することが可能となる。
なお、蓄熱材24に蓄熱された熱量が、第1の熱媒体に供給することが必要となる熱量よりも少ない場合には、蓄熱材24を加熱する加熱部191(例えば、ヒータなど)を設けるようにすることができる。この場合、加熱部191からの熱は蓄熱材24に吸収され、熱交換領域26において第1の熱媒体に吸収されることになる。
【0029】
次に、図2に戻って、蓄熱部19についてさらに例示をする。
蓄熱部19には、筐体25、流路28、流路29、蓄熱材24、発核部300が設けられている。
また、蓄熱部19は、流路28を流れる第1の熱媒体と、蓄熱材24と、の間において熱交換を行う熱交換領域26と、放熱器33の上流側であって、熱源31に供給された第2の熱媒体と、蓄熱材24と、の間において熱交換を行う熱交換領域27と、を有している。
熱交換領域27は、熱交換領域26よりも蓄熱部19の中心側に設けられている。
【0030】
筐体25は、流路28、流路29、蓄熱材24、発核部300を内部に収納する。
筐体25の内壁には凹部301が設けられている。なお、凹部301に関しては後述する。
【0031】
流路28は、管状部材から形成されている。流路28は、環状の環状部28aと、環状部28aに接続された接続部28bとを有する。
環状部28aは、筐体25の内壁側に位置する熱交換領域26に設けられている。環状部28aは筐体25の一方の端部の近傍に設けられている。接続部28bの環状部28aに接続された側とは反対の側の端部には配管23cが接続されている。そのため、第1の熱媒体は流路28の内部を流れることができる。また、環状部28aを複数設けるようにすることもできる。
【0032】
流路29は、管状部材から形成されている。流路29は、螺旋状の螺旋部29aと、螺旋部29aの両端に設けられた接続部29bとを有する。
螺旋部29aは、熱交換領域26の内側に設けられた熱交換領域27に設けられている。接続部29bには配管32が接続されている。そのため、第2の熱媒体は流路29の内部を流れることができる。
【0033】
本実施の形態に係る蓄熱部19においては、温度の高い第2の熱媒体が流れる流路29が蓄熱部19の中心側に設けられ、第2の熱媒体の温度よりも温度の低い第1の熱媒体が流れる流路28が蓄熱部19の内壁側に設けられている。
この場合、温度の高い第2の熱媒体が流れる流路29が蓄熱部19の内壁側に設けられるものとすれば、熱の放散が大きくなる。これに対し、温度の高い第2の熱媒体が流れる流路29が蓄熱部19の中心側に設けられるものとすれば、筐体25の表面までの距離を大きくすることができるので、熱の放散を抑制することができる。
【0034】
また、一般的には、第1の熱媒体へと放熱する際に要求される能力(熱出力)は、第2の熱媒体から蓄熱する際に要求される能力よりも高い。そのため、第1の熱媒体が流れる流路28の長さを長くすることで、蓄熱材24と第1の熱媒体との間において熱交換される熱の量を増加させるようにすることが好ましい。この場合、第1の熱媒体が流れる流路28が筐体25の内壁側に設けられているため、流路28の長さを長くすることが容易となる。
そのため、前述した流路28と流路29の配置とすれば、熱交換の効率を向上させることができる。
【0035】
蓄熱材24は、第2の熱媒体よりも蓄熱密度の高い材料を用いたものとすることができる。蓄熱材24は、例えば、潜熱蓄熱材とすることができる。潜熱蓄熱材としては、例えば、無機水和物材料(酢酸ナトリウム水和物、硫酸ナトリウム水和物)、有機材料(パラフィン、エリスリトール)、などを例示することができる。蓄熱材24は、形成される材料の融点よりも温度が高い場合には液体となり、融点よりも温度が低い場合には固体となる。この場合、相変化が起こる融点(相変化温度)において、高い熱量の熱を吸収または放熱する。
【0036】
また、潜熱蓄熱材には過冷却を有するものがある。過冷却を有する潜熱蓄熱材においては融点よりも低い温度であっても、固化が生ぜずに液体状態が保持される。また、外部からの刺激(例えば、機械的発核作用や電気的発核作用など)もしくは結晶核を添加することで過冷却を解除して固化を生じさせることができる。この場合、過冷却を解除して固化を生じさせることで潜熱蓄熱材から熱を放出させることができる。
過冷却を有する潜熱蓄熱材としては、酢酸ナトリウム3水和物などを例示することができる。過冷却を有する潜熱蓄熱材を用いるものとすれば、氷点下の環境においても過冷却を安定的に維持することができる。また、過冷却を有する潜熱蓄熱材を用いるものとすれば、熱を長時間蓄えておくことができる。そのため、例えば、冬場の低温環境で長期放置した状態から暖房を始動させた場合であっても、蒸発器18に付着した霜を除去することができる。また、過冷却を有する潜熱蓄熱材を用いるものとすれば、外部からの刺激などによって所望の時期に熱を放出させることが可能となる。そのため、例えば、一定の間隔を置いて蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたり、必要な場合に蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたりすることができる。
【0037】
流路28、流路29、発核部300が収納された筐体25の内部には、蓄熱材24が充填されている。この場合、流路28は、熱交換領域26に位置する蓄熱材24と接触する。流路29は、熱交換領域27に位置する蓄熱材24と接触する。そのため、流路28と流路29とは直接接触することはない。
【0038】
熱源31が熱を発生している時、熱源31を通過することで熱を吸収した第2の熱媒体は、蓄熱部19の熱交換領域27において、蓄熱材24と熱交換し、蓄熱材24は熱を吸収(蓄熱)する。この場合、蓄熱材24の融点が高いと、蓄熱材24が第2の熱媒体から吸収することができる熱量が減少する。一方、第1の熱媒体が蓄熱材24から吸収することができる熱量は増加する。
【0039】
この場合、第2の熱媒体の温度と第1の熱媒体の温度との関係から、蓄熱材24が第2の熱媒体から吸収する熱量を予め決めた上で、それを満たす融点を有した蓄熱材24の材料を選定するようにすることができる。
また、潜熱で蓄えることができる熱量以上の熱が第2の熱媒体から蓄熱材24に供給された場合には、蓄熱材24の温度が融点よりも上昇し、顕熱により熱が蓄えられることになる。
また、蓄熱材24の温度が予め定められた値よりも高くなった場合には、熱回収回路30に設けられた放熱器33により第2の熱媒体を冷却することで、蓄熱材24の温度が予め定められた値よりも高くならないようにすることができる。
【0040】
発核部300は、蓄熱部19の内部に設けられ、蓄熱材24を発核させる。発核部300は、蓄熱材24として過冷却を有する潜熱蓄熱材を用いた場合に設けるようにすることができる。発核部300としては、例えば、蓄熱材24に電圧を印加する電極などを例示することができる。蓄熱材24から第1の熱媒体に熱を吸収させたい場合、例えば、蒸発器18に付着した霜を除去する場合には、発核部300により蓄熱材24に電圧を印加するようにする。発核部300により蓄熱材24に電圧が印加されると、発核部300の近傍にある蓄熱材24を起点として蓄熱材24が発核する。蓄熱材24が発核すると、過冷却が解除され、蓄熱材24から熱が放熱される。
発核部300を設けることで所望の時期に蓄熱材24から熱を放出させることもできる。そのため、例えば、一定の間隔を置いて蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたり、必要な場合に蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたりすることができるようになる。
【0041】
筐体25の内壁には凹部301が設けられ、凹部301は、発核部300よりも上方に設けられている。例えば、発核部300は、蓄熱部19の内部であって、重力方向における下方に設けられている。また、凹部301は、筐体25の内壁であって、重力方向における上方に設けられている。蓄熱材24が発核すると、蓄熱材24が液体から固体に相変化するが、この時、体積(密度)変化が起こる。本実施の形態においては、発核部300を重力方向における下方に設けることで、蓄熱部19の下部側から発核させるようにしている。そして、蓄熱部19の下部側から発核させることで生じた体積変化を蓄熱部19の重力方向における上方に設けた凹部301により吸収させるようにしている。
【0042】
図4は、他の実施形態に係る蓄熱部を例示するための模式図である。なお、図4(a)は蓄熱部を例示するための模式断面図、図4(b)は図4(a)におけるB−B’矢視断面図である。
図4に示すように、蓄熱部19aには、筐体25、流路128、流路29、蓄熱材24、発核部300が設けられている。
流路128は、管状部材から形成されている。流路128は、螺旋状の螺旋部128aと、螺旋部128aの両端に設けられた接続部128bとを有する。
螺旋部128aは、熱交換領域26に設けられている。接続部128bには配管32が接続されている。そのため、第1の熱媒体は流路128の内部を流れることができる。
【0043】
本実施の形態に係る蓄熱部19aにおいても前述した蓄熱部19と同様の作用、効果を得ることができる。また、螺旋状の螺旋部128aとすることで第1の熱媒体の流通を円滑にすることができる。
なお、蓄熱部に設けられる流路の形態は例示をしたものに限定されるわけではない。例えば、蓄熱部に設けられる流路は、管状部材を蛇行させるようにしたものなどとすることもできる。
【0044】
次に、空調システム1の運転方法について例示する。
(冷房運転)
図5は、冷房側回路10aにおける運転方法を例示するためのフローチャートである。 車室内の冷房を行う指示がなされた場合(ステップS01)、切換弁14による切り換えを行うことでコンプレッサ11の流出側と配管22とが接続される(ステップS02)。その後、コンプレッサ11を駆動することで、第1の熱媒体が冷房側回路10a内を循環するようにする(ステップS03)。
【0045】
この場合、コンプレッサ11で圧縮された第1の熱媒体は、凝縮器12において熱を車室外に放出した後、膨張弁15において膨張され、蒸発器17において空気から熱を奪う。送風ファン21aが動作すると、蒸発器17において熱を奪われた空気は、車室内に供給される。この様にして冷房運転がなされる。
(暖房運転)
暖房運転を行う指示がなされた場合、切換弁14による切り換えを行うことでコンプレッサ11の流出側と配管23aとを接続する。その後、コンプレッサ11を駆動することで、第1の熱媒体が暖房側回路10b内を循環するようにする。
【0046】
この場合、コンプレッサ11で圧縮された第1の熱媒体は、凝縮器13において凝縮され、送風ファン21aにより供給された空気に凝縮熱を吸収させる。その後、第1の熱媒体は、膨張弁16で膨張され、蓄熱部19、蒸発器18を通り、再びコンプレッサ11に戻されることで、暖房側回路10b内を循環する。
【0047】
蓄熱部19には、流入する第1の熱媒体の温度よりも高い融点を有する蓄熱材24が充填されている。
【0048】
熱源31においては多量の熱が発生するため、熱回収回路30で熱を回収することができる。そして、回収された熱を、蓄熱部19を介して第1の熱媒体に吸収させることで、第1の熱媒体の一部を蒸発させることができる。そのため、蓄熱部19において、第1の熱媒体の一部を蒸発させることで蒸発器18における蒸発を補助することができる。その結果、蒸発器18における消費電力を削減することが可能となる。
【0049】
また、前述した発核部300により所望の時期に蓄熱材24から熱を放出させることもできる。そのため、例えば、一定の間隔を置いて蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたり、必要な場合に蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたりすることができる。
【0050】
一方、熱回収回路30においては、熱源31で発生した熱が蓄熱部19に吸収されることで、放熱器33で放熱すべき熱量が削減されることになる。よって、放熱器33における放熱のための消費電力を削減することが可能となる。
【0051】
なお、冷房運転、暖房運転における各要素の作用は、前述したものと同様のため詳細な説明は省略する。
【0052】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る空調システムを例示するためのブロック図である。
図6に示すように、空調システム50には、ヒートポンプ回路51と、熱回収回路30とが設けられている。
ヒートポンプ回路51には、冷房側回路10a、暖房側回路10cが設けられている。 冷房側回路10aは、車室内に供給される空気から熱を吸収することで車室内の冷房に用いられる空気の温度を下降させる。
暖房側回路10cは、車室内に供給される空気に熱を吸収させることで車室内の暖房に用いられる空気の温度を上昇させる。
【0053】
暖房側回路10cには、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蓄熱部19、蒸発器18、配管23a、23b、23c(第1の流路の一例に相当する)、23d(第2の流路の一例に相当する)、温度測定部18a(第1の温度測定部の一例に相当する)が設けられている。
切換弁20の一方の流出側には、配管23cを介して蓄熱部19の流入側が接続されている。切換弁20の他方の流出側には、配管23dを介して蒸発器18の流入側が接続されている。切換弁20の流入側には、配管23aを介して膨張弁16の流出側が接続されている。
【0054】
切換弁20は、膨張弁16の流出側に設けられ、膨張弁16から流出した気液二相状態の第1の熱媒体が配管23cおよび配管23dのいずれかを流れるように切り換えを行う。切換弁20は、例えば、電磁コイルを備え、電磁コイルへの通電と通電の停止とにより流路の切り換えを行う三方弁などとすることができる。ただし、切換弁20は、三方弁に限定されるわけではなく、例えば、配管23cおよび配管23dにそれぞれ設けられた開閉弁などであってもよい。
【0055】
蒸発器18は、配管23cと、配管23dと、の合流位置よりも下流側であって、且つ、コンプレッサ11の吸入側に設けられている。
温度測定部18aは、蒸発器18の温度を測定する。切換弁20は、温度測定部18aにより測定された蒸発器18の温度に基づいて、第1の熱媒体が配管23cおよび配管23dのいずれかを流れるように切り換えを行う。
【0056】
本実施の形態においては、切換弁20により第1の熱媒体の流れを切り換えることで、蓄熱部19を選択的に使用することができる。そのため、前述した発核部300が設けられていない場合、例えば、蓄熱材24として潜熱蓄熱材が用いられていない場合などであっても、所望の時期に、蓄熱部19において第1の熱媒体に熱を吸収させることができる。そのため、例えば、一定の間隔を置いて蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたり、必要な場合に蒸発器18に付着した霜を除去するようにしたりすることができるようになる。
温度測定部18aによる測定結果に基づいて、切換弁20による切り換えを制御することに関しては後述する。
なお、運転者などが操作することで切換弁20による切り換えを行うこともできる。
【0057】
次に、空調システム50の運転方法について例示する。
なお、冷房運転に関しては、図5において例示をした冷房側回路10aにおける運転方法と同様とすることができるため、説明を省略する。
(暖房運転)
以下においては、一例として、温度測定部18aによる測定結果に基づいて、切換弁20による切り換えを制御する場合について例示する。
図7は、暖房側回路10cにおける運転方法を例示するためのフローチャートである。
【0058】
車室内の暖房を行う指示がなされた場合(ステップS11)、切換弁14による切り換えを行うことでコンプレッサ11の流出側と凝縮器13の流入側とが接続される(ステップS12)。
次に、温度測定部18aにより蒸発器18の温度(Tev2)を測定する(ステップS13)。なお、測定された蒸発器18の温度を蒸発器18の内部を流れる第1の熱媒体の温度に換算することもできる。この場合、予め実験などにより蒸発器18の温度と蒸発器18の内部を流れる第1の熱媒体の温度との関係を求め、求められた関係に基づいて温度の換算を行うようにすることができる。
【0059】
切換弁20は、測定された蒸発器18の温度が予め定められた値よりも高い場合には、第1の熱媒体が配管23dを流れるように切り換えを行う。
【0060】
例えば、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)以上の場合には、蓄熱部19側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により遮断される(ステップS14、S15a)。
その後、コンプレッサ11を駆動することで、第1の熱媒体が暖房側回路10c内の所定の経路を循環するようにする(ステップS16)。すなわち、第1の熱媒体が、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蒸発器18を循環するようにする。
この場合、凝縮器13に吹き付けられた空気は、第1の熱媒体のガスから熱を吸収することで加熱され、加熱された空気は車室内に供給されて車室内の暖房に用いられる。
また、蓄熱部19において蓄熱材24に蓄えられた熱が第1の熱媒体に吸収されることがないので、熱回収回路30からの熱を蓄熱材24に蓄えることができる。
【0061】
一方、測定された蒸発器18の温度が予め定められた値よりも低い場合には、第1の熱媒体が配管23cを流れるように切り換えを行う。
例えば、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満の場合には、蓄熱部19側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により行われる(ステップS14、S15b)。
その後、コンプレッサ11を駆動することで、第1の熱媒体が暖房側回路10c内の所定の経路を循環するようにする(ステップS16)。すなわち、第1の熱媒体が、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蓄熱部19、蒸発器18を循環するようにする。
この場合においても、凝縮器13に吹き付けられた空気は、第1の熱媒体のガスから熱を吸収することで加熱され、加熱された空気は車室内に供給されて車室内の暖房に用いられる。
【0062】
ここで、寒冷地などの低温かつ高湿度の環境下においては、空気中の水分が凍結することで蒸発器18に霜が付着する場合がある。蒸発器18に霜が付着すると、蒸発器18における熱交換効率(第1の熱媒体を蒸発させる能力)が低下するので、暖房性能が著しく低下するおそれがある。
【0063】
そこで、本実施の形態においては、蒸発器18に設けられた温度測定部18aにより蒸発器18の温度(Tev2)を測定することで霜が付着しているかの判定を行うようにしている。
例えば、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満の場合には、霜が付着していると判定して、蓄熱部19側へ第1の熱媒体を流入させるようにする。前述したように、蓄熱部19の流路28の内部に流入した第1の熱媒体は、蓄熱材24からの熱を吸収する。そのため、蒸発器18にかかる負荷を低減し、着霜量を低減させることができる。なお、蒸発器18にヒータを設置してもよい。
【0064】
また、蓄熱材24として過冷却を有する潜熱蓄熱材を用い、その潜熱蓄熱材が過冷却状態にある場合には、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満と判定された後に発核部300により過冷却を解除するようにする。これにより、熱が蓄熱材24に蓄えられてから放熱することになるまでの期間が長い場合であっても、蓄熱材24から融点の熱を放出することができるので、第1の熱媒体に充分な熱を吸収させることができる。
【0065】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る空調システムを例示するためのブロック図である。
図8に示すように、空調システム100には、ヒートポンプ回路101と、熱回収回路30とが設けられている。
【0066】
ヒートポンプ回路101には、冷房側回路10a、暖房側回路10dが設けられている。
【0067】
冷房側回路10aは、車室内に供給される空気から熱を吸収することで車室内の冷房に用いられる空気の温度を下降させる。
暖房側回路10dは、車室内に供給される空気に熱を吸収させることで車室内の暖房に用いられる空気の温度を上昇させる。
【0068】
暖房側回路10dには、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蓄熱部190、蒸発器18、配管22a〜23d、温度測定部18a、温度測定部11a(第2の温度測定部の一例に相当する)が設けられている。
【0069】
切換弁20の一方の流出側には、配管23cを介して蓄熱部190の流入側が接続されている。切換弁20の他方の流出側には、配管23dを介して蒸発器18の流入側が接続されている。切換弁20の流入側には、配管23aを介して膨張弁16の流出側が接続されている。
切換弁20は、膨張弁16から流出した気液二相状態の第1の熱媒体を蓄熱部190及び蒸発器18のいずれに供給するのかを切り換える。
【0070】
温度測定部11aは、コンプレッサ11の温度を測定する。
切換弁20は、温度測定部11aにより測定されたコンプレッサ11の温度に基づいて、第1の熱媒体が配管23cおよび配管23dのいずれかを流れるように切り換えを行う。 また、切換弁20は、温度測定部11aにより測定されたコンプレッサ11の温度及び温度測定部18aにより測定された蒸発器18の温度に基づいて、第1の熱媒体が配管23cおよび配管23dのいずれかを流れるように切り換えを行う。
【0071】
本実施の形態に係る空調システム100においても、切換弁20により第1の熱媒体の流れを切り換えることで、蓄熱部190を選択的に使用することができる。
温度測定部11a、温度測定部18aによる測定結果に基づいて、切換弁20による切り換えを制御することに関しては後述する。
なお、運転者などが操作することで切換弁20による切り換えを行うこともできる。
【0072】
次に、蓄熱部190についてさらに例示をする。
図9は、蓄熱部を例示するための模式図である。なお、図9(a)は蓄熱部を例示するための模式断面図、図9(b)は図9(a)におけるC−C’矢視断面図である。
図9に示すように、蓄熱部190には、筐体25、流路128、流路129、蓄熱材24、発核部300、温度測定部11aが設けられている。
【0073】
流路129は、管状部材から形成されている。流路129は、螺旋状の螺旋部129aと、螺旋部129aの両端に設けられた接続部129bとを有する。
螺旋部129aは、熱交換領域26の内側に設けられた熱交換領域27に設けられている。接続部129bには配管32が接続されている。そのため、第2の熱媒体は流路129の内部を流れることができる。
【0074】
コンプレッサ11は、蓄熱部190と熱的に接続されている。
図9に例示をしたものでは、筐体25の中心をコンプレッサ11が貫通するようにして設けられ、蓄熱材24と筐体25とがコンプレッサ11の外面と接触している。そして、筐体25の内部であって、コンプレッサ11の外周面側が熱交換領域27となっている。
【0075】
コンプレッサ11が運転された場合にはコンプレッサ11が発熱するため、コンプレッサ11も熱源となる。そのため、蓄熱部190においては、コンプレッサ11から発生する熱をも蓄熱材24に蓄えることができる。
【0076】
この場合、蓄熱材24の温度がコンプレッサ11の温度よりも低い場合には、コンプレッサ11からの熱は、筐体25を介して、あるいは直接蓄熱材24に吸収(蓄熱)される。 一方、蓄熱材24の温度がコンプレッサ11の温度よりも高い場合には、蓄熱材24からの熱がコンプレッサ11に吸収されることになる。
【0077】
次に、空調システム100の運転方法について例示する。
なお、冷房運転に関しては、図5において例示をした冷房側回路10aにおける運転方法と同様とすることができるため、説明を省略する。
(暖房運転)
以下においては、一例として、温度測定部11a、温度測定部18aによる測定結果に基づいて、切換弁20による切り換えを制御する場合について例示する。
図10は、暖房側回路10dにおける運転方法を例示するためのフローチャートである。
【0078】
車室内の暖房を行う指示がなされた場合(ステップS31)、切換弁14による切り換えを行うことでコンプレッサ11の流出側と凝縮器13の流入側とが接続される(ステップS32)。
【0079】
次に、温度測定部11aによりコンプレッサ11の温度(Tcomp)を測定する(ステップS33)。
切換弁20は、測定されたコンプレッサ11の温度が予め定められた値よりも低い場合には、第1の熱媒体が配管23dを流れるように切り換えを行う。
例えば、コンプレッサ11の温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)未満の場合には、蓄熱部190側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により遮断される(ステップS34、S37)。
【0080】
この場合においては、コンプレッサ11を駆動する(ステップS39)ことで、第1の熱媒体が暖房側回路10d内の所定の経路を循環するようにする。すなわち、第1の熱媒体が、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蒸発器18を循環するようにする。
【0081】
この場合、凝縮器13に吹き付けられた空気は、第1の熱媒体のガスから熱を吸収することで加熱され、加熱された空気は車室内に供給されて車室内の暖房に用いられる。
また、蓄熱部190において蓄熱材24に蓄えられた熱が第1の熱媒体に吸収されることがないので、熱回収回路30からの熱を蓄熱材24に蓄えることができる。
【0082】
また、蓄熱材24として過冷却を有する潜熱蓄熱材を用い、その潜熱蓄熱材が過冷却状態にある場合には、例えば、コンプレッサ11の温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)未満と判定された後に、発核部300により過冷却を解除するようにする。これにより、蓄熱材24に蓄えられた熱をコンプレッサ11に吸収させることができる。
【0083】
コンプレッサ11の温度が低い場合、圧縮されて高温になった第1の熱媒体のガスからコンプレッサ11に熱が逃げてしまい、暖房性能が低下するおそれがある。
そこで、例えば、コンプレッサ11の温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)未満と判定された場合には、蓄熱槽190からコンプレッサ11に熱を与えることで、コンプレッサ11からの熱の逃げを抑制するようにしている。
【0084】
一方、例えば、コンプレッサの温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)以上の場合には、温度測定部18aにより蒸発器18の温度(Tev2)を測定する(ステップS34、S35)。
そして、例えば、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)以上の場合には、蓄熱部190側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により遮断される(ステップS36、S37)。
【0085】
この場合においては、コンプレッサ11を駆動する(ステップS39)ことで、第1の熱媒体が暖房側回路10d内の所定の経路を循環するようにする。すなわち、第1の熱媒体が、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蒸発器18を循環するようにする。
【0086】
例えば、コンプレッサ11の温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)以上、かつ、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)以上の場合には、蓄熱材24にコンプレッサ11からの熱、および熱回収回路30からの熱が蓄えられる。この場合、蓄熱部190側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により遮断されるので、蓄熱材24に蓄えられた熱が第1の熱媒体に吸収されることがない。
【0087】
これに対して、例えば、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満の場合には、蓄熱部190側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により行われる(ステップS36、S38)。
この場合においては、コンプレッサ11を駆動する(ステップS39)ことで、第1の熱媒体が暖房側回路10d内の所定の経路を循環するようにする。すなわち、第1の熱媒体が、コンプレッサ11、切換弁14、凝縮器13、膨張弁16、切換弁20、蓄熱部190、蒸発器18を循環するようにする。
例えば、コンプレッサ11の温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)以上、かつ、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満の場合には、蓄熱部190側への第1の熱媒体の流入が切換弁20により行われる。蓄熱部190の流路128の内部に流入した第1の熱媒体は、蓄熱材24からの熱を吸収する。そのため、蒸発器18にかかる負荷を低減し、着霜量を低減させることができる。なお、蒸発器18にヒータを設置してもよい。
【0088】
また、蓄熱材24として過冷却を有する潜熱蓄熱材を用い、その潜熱蓄熱材が過冷却状態にある場合には、例えば、コンプレッサ11の温度(Tcomp)が予め定められた下限値(Tcomp_min)以上、かつ、蒸発器18の温度(Tev2)が予め定められた下限値(Tmin)未満と判定された後に、発核部300により過冷却を解除するようにする。これにより、熱が蓄熱材24に蓄えられてから放熱することになるまでの期間が長い場合であっても、蓄熱材24から融点の熱を放出することができるので、第1の熱媒体に充分な熱を吸収させることができる。
【0089】
本実施の形態においては、蓄熱材24の温度に対してコンプレッサ11の温度、第2の熱媒体の温度が高い場合には、蓄熱材24がコンプレッサ11及び第2の熱媒体から熱を吸収する。
逆に、コンプレッサ11の温度、もしくは第1の熱媒体の温度が低い場合には、コンプレッサ11もしくは第1の熱媒体が蓄熱材24からの熱を吸収する。
そのため、電気自動車や燃料電池自動車などにおいて、車両内で熱をさらに有効利用することができるので、空調システムを運転する際の消費電力をさらに抑制することができる。
【0090】
以上に例示をした実施形態によれば、消費電力の低減を図ることができる空調システムを実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 空調システム、10 ヒートポンプ回路、10a 冷房側回路、10b 暖房側回路、10c 暖房側回路、10d 暖房側回路、11 コンプレッサ、11a 温度測定部、14 切換弁、13 凝縮器、12 凝縮器、15 膨張弁、16 膨張弁、17 蒸発器、18 蒸発器、18a 温度測定部、19 蓄熱部、19a 蓄熱部、20 切換弁、21 送風ダクト、21a 送風ファン、24 蓄熱材、25 筐体、26 熱交換領域、27 熱交換領域、28 流路、28a 環状部、29 流路、28b 接続部、30 熱回収回路、31 熱源、32 配管、33 放熱器、34 ポンプ、50 空調システム、51 ヒートポンプ回路、100 空調システム、101 ヒートポンプ回、128 流路、128a 螺旋部、128b 接続部、129 流路、129a 螺旋部、129b 接続部、190 蓄熱部、191 加熱部、300 発核部、301 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した第1の熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサと、
前記コンプレッサの吐出側に設けられた凝縮器と、
前記凝縮器の流出側に設けられた膨張弁と、
前記膨張弁の流出側に設けられ、前記第1の熱媒体が第1の流路および第2の流路のいずれかを流れるように切り換えを行う切換弁と、
前記第1の流路と、前記第2の流路と、の合流位置よりも下流側であって、且つ、コンプレッサの吸入側に設けられた蒸発器と、
第2の熱媒体を熱源に供給するポンプと、
前記熱源に供給された第2の熱媒体の熱を放熱させる放熱器と、
蓄熱材を有した蓄熱部と、
を備え、
前記蓄熱部は、
前記第1の流路を流れる前記第1の熱媒体と、前記蓄熱材と、の間において熱交換を行う第1の熱交換領域と、
前記放熱器の上流側であって、前記熱源に供給された第2の熱媒体と、前記蓄熱材と、の間において熱交換を行う第2の熱交換領域と、
を有する空調システム。
【請求項2】
前記第2の熱交換領域は、前記第1の熱交換領域よりも前記蓄熱部の中心側に設けられた請求項1記載の空調システム。
【請求項3】
前記蒸発器の温度を測定する第1の温度測定部をさらに備え、
前記切換弁は、前記測定された蒸発器の温度に基づいて、前記第1の熱媒体が前記第1の流路および前記第2の流路のいずれかを流れるように切り換えを行う請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記切換弁は、前記測定された蒸発器の温度が予め定められた値よりも高い場合には、前記第1の熱媒体が前記第2の流路を流れるように切り換えを行い、
前記測定された蒸発器の温度が予め定められた値よりも低い場合には、前記第1の熱媒体が前記第1の流路を流れるように切り換えを行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項5】
前記コンプレッサは、前記蓄熱部と熱的に接続された請求項1〜4のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項6】
前記コンプレッサの温度を測定する第2の温度測定部をさらに備え、
前記切換弁は、前記測定されたコンプレッサの温度に基づいて、前記第1の熱媒体が前記第1の流路および前記第2の流路のいずれかを流れるように切り換えを行う請求項5記載の空調システム。
【請求項7】
前記切換弁は、前記測定されたコンプレッサの温度が予め定められた値よりも低い場合には、前記第1の熱媒体が前記第2の流路を流れるように切り換えを行う請求項6記載の空調システム。
【請求項8】
前記蓄熱部の内部に設けられ、前記蓄熱材を発核させる発核部をさらに備えた請求項1〜7のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項9】
前記蓄熱部は、前記蓄熱材と、前記発核部と、を収納する筐体を有し、
前記筐体の内壁には凹部が設けられ、
前記凹部は、前記発核部よりも上方に設けられた請求項1〜8のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項10】
前記蓄熱材は、潜熱蓄熱材である請求項1〜9のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項11】
前記蓄熱材を加熱する加熱部をさらに備えた請求項1〜10のいずれか1つに記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71498(P2013−71498A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210318(P2011−210318)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】