説明

空調制御システム

【課題】就寝者の個体差に依らず、就寝者が安眠できるような就寝環境を実現できる空調制御システムを提供する。
【解決手段】中途覚醒検出部(20,33)は、就寝者の中途覚醒の発生を検出する。睡眠初期の第1期間や睡眠後期の第2期間では、空調制御部(43)が、所定の区間t2毎の中途覚醒の発生頻度の変化に応じて、空調機(10)の設定温度Tsetの低下幅や上昇幅を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝室を空調する空調手段を制御する空調制御システムに関し、特に就寝者の睡眠環境の向上対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の空調を行う空気調和装置が知られている。この空気調和装置は、就寝者が睡眠する寝室の空調にも広く利用されている。そこで、寝室の睡眠環境の改善を目的として、寝室を空調する空気調和装置を制御する空調制御システムが知られている。
【0003】
この種の空調制御システムとして、特許文献1には、就寝者のサーカディアンリズムに合わせて空調能力を制御するものが開示されている。ここで、サーカディアンリズムとは、夜には深部体温が下がって人が眠気を催す一方、朝には深部体温が上がって人が活動的になるというような、体内時計によって作り出されるリズムである。特許文献1に開示の空調制御システムでは、このような就寝者の深部体温の変動に合わせて、寝室の温度制御が行われる。
【0004】
具体的には、この空調制御システムでは、就寝者が入眠してから所定時間が経過するまでの間、寝室内の温度を低下させるように空調手段が制御される。その後、所定時間が経過すると、寝室内の温度を上昇させるように空調手段が制御される。以上のようにして、就寝者の睡眠期間中には、寝室の温度がV字状に経時変化する温度制御(いわゆるV字温度制御)が行われ、就寝者の睡眠環境の向上が図られている。
【特許文献1】特開2005−296177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、就寝者の温度の感じ方は、厳密には就寝者の個体差によって変化する。このため、上述したV字温度制御において、例えば入眠後の所定期間に寝室の温度を低下させる際、就寝者が寒さを感じてしまい睡眠が阻害されてしまうという問題が生じ得る。また、V字温度制御において、起床直前の期間に寝室の温度を上昇させる際、就寝者が暑さを感じてしまい睡眠が阻害されてしまうという問題も生じ得る。従って、就寝者の個体差を考慮しつつ、上記のようなV字温度制御を可能とする空調制御システムが望まれる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、就寝者の個体差に依らず、就寝者が安眠できる最適な睡眠環境を実現できる空調制御システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、就寝者が入眠する時から所定時間が経過するまでの第1期間に空調手段(10)の目標温度を低下させ、就寝者が起床する時よりも所定時間前から該起床時までの第2期間に空調手段(10)の目標温度を上昇させる空調制御部(43)を備えた空調制御システムを対象とし、上記就寝者の中途覚醒の発生を検出するための中途覚醒検出部(20,33)を更に備え、上記空調制御部(43)は、上記第1期間に上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した就寝者の中途覚醒の発生頻度に応じて、該第1期間での空調手段(10)の目標温度の低下幅を変更することを特徴とする。
【0008】
第1の発明の空調制御システムでは、就寝者の睡眠期間中において、空調制御部(43)が、空調手段(10)の目標温度を制御することで、いわゆるV字温度制御が行われる。具体的には、就寝者が入眠した後の第1期間中には、空調手段(10)の目標温度が低下する。これにより、就寝者の入眠後には、寝室内の温度も低下傾向となる。一方、就寝者が起床する前の第2期間中には、空調手段(10)の目標温度が上昇する。これにより、就寝者の起床前には、寝室内の温度も上昇傾向となる。以上のようにして、寝室内の温度がV字状に変化することで、就寝者の睡眠環境の向上が図られる。
【0009】
ここで、本発明の空調制御部(43)は、第1期間中における目標温度の低下幅が、中途覚醒検出部(20,33)で検出した中途覚醒の発生頻度に応じて変更される。なお、ここでいう「中途覚醒」とは、夜等に就寝者が寝床について入眠してから朝等に目覚めるまでの間に、就寝者が寝床で一時的に目覚めることを意味する。
【0010】
本発明において、例えば第1期間中での中途覚醒の発生頻度が比較的大きい場合、寒さによって就寝者の安眠が阻害されていると判断できる。従って、このような場合には、空調手段(10)の目標温度の低下幅を比較的小さくする。その結果、第1期間中に寝室内の温度が低くなり過ぎるのが防止され、就寝者の睡眠環境が改善される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記空調制御部(43)は、上記第2期間に上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した就寝者の中途覚醒の発生頻度に応じて、該第2期間での空調手段(10)の目標温度の上昇幅を変更することを特徴とする。
【0012】
第2の発明の空調制御部(43)は、第2期間中における目標温度の上昇幅が、中途覚醒検出部(20,33)で検出した中途覚醒の発生頻度に応じて変更される。具体的には、例えば第2期間中での中途覚醒の発生頻度が比較的大きい場合、暑さによって就寝者の安眠が阻害されていると判断できる。従って、このような場合には、空調手段(10)の目標温度の上昇幅を比較的大きくする。その結果、第2期間中に寝室内の温度が高くなり過ぎるのが防止され、就寝者の睡眠環境が改善される。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記空調制御部(43)は、上記第1期間中に、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が前後の区間で減少変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を低下させる一方、上記中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で増大変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を維持することを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、第1期間中において、所定の区間毎の中途覚醒の発生頻度の変化に応じて、空調手段(10)の目標温度の低下幅が変更される。具体的には、前後の区間での中途覚醒の発生頻度が増大変化している場合、寒さによって就寝者の安眠が阻害されていると判断できる。従って、このような場合には、寝室の温度がこれ以上低下しないように、空調手段(10)の目標温度がそのままの状態に維持される。一方、前後の区間での中途覚醒の発生頻度が減少変化している場合、就寝者は安眠できていると判断できる。従って、このような場合には、就寝者の安眠を更に促すように空調手段(10)の目標温度が低下する。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、上記空調制御部(43)は、上記第1期間中に、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で等しい場合にも、上記空調手段(10)の目標温度を低下させることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、前後の区間での中途覚醒の発生頻度が変化しない場合、就寝者の安眠が阻害されていないと判断できるので、このような場合にも、就寝者の安眠を更に促すように空調手段(10)の目標温度が低下する。
【0017】
第5の発明は、第2の発明において、上記空調制御部(43)は、上記第2期間中に、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が前後の区間で減少変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を上昇させる一方、上記中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で増大変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を維持することを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、第2期間中において、所定の区間毎の中途覚醒の発生頻度の変化に応じて、空調手段(10)の目標温度の上昇幅が変更される。具体的には、前後の区間での中途覚醒の発生頻度が増大変化している場合、暑さによって就寝者の安眠が阻害されていると判断できる。従って、このような場合には、寝室の温度がこれ以上高くならないように、空調手段(10)の目標温度がそのままの状態に維持される。一方、前後の区間での中途覚醒の発生頻度が減少変化している場合、就寝者は安眠できていると判断できる。従って、このような場合には、就寝者の安眠を更に促すように空調手段(10)の目標温度が上昇する。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、上記空調制御部(43)は、上記第2期間中に、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で等しい場合にも、上記空調手段(10)の目標温度を上昇させることを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、前後の区間での中途覚醒の発生頻度が変化しない場合、就寝者の安眠が阻害されていないと判断できるので、このような場合にも、就寝者の安眠を更に促すように空調手段(10)の目標温度が上昇する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、就寝者が入眠した後の第1期間において、空調手段(10)の目標温度を低下させ、就寝者が起床する前の第2期間において、空調手段(10)の目標温度を上昇させるようにしている。これにより、就寝者のサーカディアンリズムに合わせるように、寝室の温度を変化させることができ、就寝者の睡眠環境を向上できる。ここで、本発明では、第1期間中において、中途覚醒の発生頻度に応じて空調手段(10)の目標温度の低下幅を変更するようにしている。このため、就寝者の個体差に応じて空調手段(10)の目標温度を補正することができ、就寝者にとって最適な温度となるように寝室の温度を低下させることができる。
【0022】
また、第2の発明では、第2期間中において、中途覚醒の発生頻度に応じて空調手段(10)の目標温度の上昇幅を変更するようにしている。このため、就寝者の個体差に応じて空調手段(10)の目標温度を補正することができ、就寝者にとって最適な温度となるように寝室の温度を上昇させることができる。従って、本発明によれば、就寝者の個体差を考慮するように、いわゆるV字温度制御を行うことができ、就寝者の睡眠環境を効果的に改善することができる。
【0023】
また、第3や第4の発明では、第1期間中の所定の区間毎における中途覚醒の発生頻度の変化に基づき、空調手段(10)の目標温度の低下幅を変更している。また、第5や第6の発明では、第2期間中の所定の区間毎における中途覚醒の発生頻度の変化に基づき、空調手段(10)の目標温度の上昇幅を変更している。このため、これらの発明によれば、上記の区間毎に空調手段(10)の目標温度を変更することができ、就寝者の個体差を一層考慮したきめ細かい温度制御を行うことができる。従って、就寝者の睡眠環境を一層効果的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
《発明の実施形態》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
本発明の実施形態に係る空調制御システム(1)は、寝室(5)内に設置された空調機(10)の空調能力を制御するものである。空調機(10)は、寝室(5)内の空気を調和する空調手段を構成している。
【0026】
図1に示すように、空調機(10)は、例えば壁掛け式のエアコンで構成されている。空調機(10)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えており、熱交換器(図示省略)内の冷媒により冷却又は加熱した空気を寝室(5)内へ供給する。つまり、空調機(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うように構成されている。
【0027】
また、空調機(10)は、寝室(5)内の温度を検出する温度センサ(図示省略)を有している。また、空調機(10)は、ユーザー等が希望する寝室(5)内の温度を設定温度として入力する温度設定部(図示省略)を有している。空調機(10)の運転時には、この設定温度が空調機(10)の制御目標の温度となる。つまり、空調機(10)の運転時には、温度センサで検出される室内温度が、設定温度としての目標温度に近づくように空調能力が制御される。
【0028】
図1及び図2に示すように、空調制御システム(1)は、感圧ユニット(20)と本体ユニット(30)とを備えている。感圧ユニット(20)は、就寝者から生起する体動を本体ユニット(30)へ伝達させるものである。感圧ユニット(20)は、感圧部(21)と圧力伝達部(22)とを備えている。
【0029】
感圧部(21)は、一端が閉塞して他端が開口する細長の中空状のチューブによって構成されている。感圧部(21)は、寝室(5)のベッド等の寝具(6)内に敷設されている。圧力伝達部(22)は、両端が開口する細長の中空状のチューブによって構成されている。圧力伝達部(22)は、上記感圧部(21)よりも小径となっている。圧力伝達部(22)は、一端が上記感圧部(21)の開口部(23)に接続し他端が本体ユニット(30)に接続している。
【0030】
上記本体ユニット(30)は、ケーシング(31)と取付部(32)と受圧部(33)とを有している。ケーシング(31)は、扁平な箱状に形成されており、例えば寝室内の床面に設置されている。ケーシング(31)の内部には、回路ユニット(40)が内蔵されている。
【0031】
上記取付部(32)は、ケーシング(31)の側面に形成されている。取付部(32)は、内方に向かって凹んだ略円環状の凹部(32a)と、該凹部(32a)内から外方へ突出する凸部(32b)とを有している。凸部(32b)には、ケーシング(31)の外部と内部とを連通するように軸方向に貫通穴(32c)が形成されている。そして、凸部(32b)には、上記圧力伝達部(22)の他端部が内嵌する。これにより、上記感圧部(21)の内部と圧力伝達部(22)の内部と貫通穴(32c)とが連通している。
【0032】
上記受圧部(33)は、貫通穴(32c)の背面側に位置するようにケーシング(31)に内蔵されている。受圧部(33)は、マイクロフォンや圧力センサ等によって構成されている。寝具(6)上の就寝者から体動が生起すると、この体動が感圧部(21)に作用する。これにより、感圧部(21)の内圧は、圧力伝達部(22)及び貫通穴(32c)を介して受圧部(33)に作用する。受圧部(33)は、この内圧を電気的な信号に変換し、本体ユニット(30)内の回路ユニット(40)へ出力する。以上のような上記感圧ユニット(20)及び受圧部(33)は、就寝者の体動を検出するための体動検出手段を構成し、且つ就寝者の中途覚醒の発生(詳細は後述する)を検出するための中途覚醒検出部を構成している。
【0033】
図3に示すように、回路ユニット(40)には、信号処理部(41)と判定部(50)と記憶演算部(42)と空調制御部(43)とが設けられている。
【0034】
信号処理部(41)は、就寝者の体動が作用する受圧部(33)から出力された信号(以下、体動信号と称する)を所定のレベル、所定の周波数帯域の信号に変調するものである。例えば信号処理部(41)では、受圧部(33)から出力された体動信号から、就寝者の呼吸や心拍に由来する体動信号が抽出される。
【0035】
判定部(50)は、信号処理部(41)で変調された後の体動信号に基づいて、就寝者の睡眠状態に関する種々の判定を行うものである。判定部(50)は、在床判定部(51)と入眠判定部(52)と中途覚醒判定部(53)とを有している。
【0036】
在床判定部(51)は、就寝者が寝具(6)に在床しているか、寝具(6)から離床しているかの判定を行うものである。具体的には、在床判定部(51)では、上記の体動信号の大きさと、予め設定された判定閾値(在床判定閾値)との比較によって、在床/離床の判定が行われる。即ち、在床判定部(51)では、例えば体動信号が在床判定閾値を所定時間以上継続して下回る場合、就寝者から体動が生起していないとみなされるので、この場合には「離床」と判定される。逆に、在床判定部(51)では、例えば体動信号が在床判定閾値を所定時間以上継続して上回る場合、就寝者から体動が生起しているとみなされるので、この場合には「在床」と判定される。
【0037】
入眠判定部(52)は、就寝者が寝具(6)上で入眠したか否かを判定するものである。ここで、「入眠」とは、就寝者が寝具(6)に在床した後、初めて眠りについた動作を意味する。入眠判定部(52)では、就寝者が在床している状態において、体動信号の大きさと、所定の判定閾値(睡眠判定閾値)との比較によって、就寝者の入眠の判定が行われる。即ち、入眠判定部(52)では、上記在床判定部(51)で就寝者が「在床」と判定された後、初めて体動信号が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を下回る場合、在床後に就寝者から体動がさほど生起していないとみなされるので、この場合には「入眠」と判定される。
【0038】
中途覚醒判定部(53)は、睡眠中の就寝者が寝具(6)上で中途覚醒したか否かを判定するものである。ここで、「中途覚醒」とは、就寝者が入眠した後、朝等に目覚めるまでの間に、就寝者が一時的に覚醒することを意味する。中途覚醒判定部(53)では、就寝者が入眠している状態において、体動信号の大きさと上記睡眠判定閾値との比較によって、中途覚醒の発生の有無の判定が行われる。即ち、中途覚醒判定部(53)では、上記入眠判定部(52)で就寝者が「入眠」と判定された後において、体動信号が所定時間以上継続して睡眠判定閾値を上回る場合、入眠後に就寝者から比較的大きな体動が生起しているとみなされるので、この場合には就寝者が「中途覚醒」したと判定される。なお、中途覚醒判定部(53)による中途覚醒の判定は、予め設定された所定の期間t1毎(例えばt1=1分)に行われる。
【0039】
上記記憶演算部(42)には、体動信号と、上記判定部(50)で判定された判定結果と、判定部(50)で判定された判定時刻とが、時々刻々と記憶/蓄積されていく。また、記憶演算部(42)では、就寝者が「入眠」と判定された後において、所定の区間t2(例えば30分又は45分)毎の就寝者の中途覚醒の発生頻度WCが導出される。
【0040】
また、記憶演算部(42)には、第1カウンタ(55)と第2カウンタ(56)とが設けられている。第1カウンタ(55)は、中途覚醒の発生頻度を導出するための区間t2を計測するものである。第1カウンタ(55)では、そのカウント値TJが初期値0から1,2,3…と1分毎に増加していく。そして、第1カウンタ(55)のカウント値TJがt2に達すると、カウント値TJが初期値n=0にリセットされ、再びカウントが行われる。第2カウンタ(56)は、第1カウンタ(55)による区間t2のカウントアップの回数を計測するものである。つまり、第1カウンタ(55)のカウント値TJがカウントアップされる毎に、第2カウンタ(56)のカウント値nが初期値1から2,3,4…と増大していく。
【0041】
空調制御部(43)は、空調機(10)と有線又は無線を介して、信号の出入力が可能に構成されている。そして、空調制御部(43)は、詳細は後述する「おやすみ制御」での運転時において、空調機(10)の目標温度を制御するように構成されている。
【0042】
−空調制御システムの動作−
本実施形態に係る空調制御システム(1)による空調機(10)の制御動作について説明する。
【0043】
空調機(10)では、コントローラ等によって「冷房運転」と「暖房運転」とが選択可能となっている。また、空調機(10)では、コントローラ等によって設定温度Tsetが入力可能となっている。通常の冷房運転や暖房運転では、ユーザーが設定した設定温度Tsetを目標温度として空調機(10)の空調能力が制御される。
【0044】
本実施形態の空調制御システム(1)では、就寝者の安眠を促すための空調機(10)の運転モードとして「おやすみ制御」の運転が可能となっている。ユーザーが、就寝する前にコントローラ等によって「おやすみ制御」を選択することで、以下のような制御動作が行われる。
【0045】
図4に示すように、空調機(10)がオンされており(ステップST1)、且つ「おやすみ制御」が選択されている状態(ステップST2)になると、ステップST3へ移行する。ステップST3では、在床判定部(51)によって就寝者の在床/離床判定が行われる。ステップST3で就寝者が「在床」と判定されると、ステップST4へ移行する。ステップST4では、入眠判定部(52)によって就寝者の入眠判定が行われる。ステップST4で就寝者が「入眠」と判定されると、ステップST5へ移行する。
【0046】
ステップST5では、第1カウンタ(55)のカウント値TJが初期値(TJ=0)にリセットされ、第2カウンタ(56)のカウント値nも初期値(n=1)にリセットされる。また、中途覚醒の発生頻度WC(n)として初期値(WC(0)=45)が設定され、起床温度制御開始フラグkとしてゼロ(k=0)が設定される(詳細は後述する)。
【0047】
次いで、ステップST6では、ステップST3と同様にして、就寝者の在床/離床判定が再度行われる。ここで、就寝者が「在床」と判定されない場合には、ステップST7へ移行し、「非在床」(即ち、離床)と判定される時間が30分以上連続するとステップST3へ移行する。ステップST6で、就寝者が「在床」と判定されると、ステップST8へ移行する。
【0048】
ステップST8では、起床時刻twまでの残りの時間(現在の時刻と起床時刻twとの差)と、所定の設定時間(1.5時間)との大小比較が行われる。ここで、起床時刻twは、就寝者が朝等に目覚める時刻を予め設定したものである。そして、ステップST8では、起床時刻twまでの残りの時間が、1.5時間よりも大きい場合に、ステップST11の「入眠温度設定ルーチン」へ移行し、そうでない場合には、ステップST9を経由してステップST12の「起床温度設定ルーチン」へ移行する。
【0049】
〈入眠温度設定ルーチン〉
「入眠温度設定ルーチン」について説明する。「入眠温度設定ルーチン」は、就寝者が「入眠」と判定された後から所定の期間に亘って行われる(図7を参照)。また、「入眠温度設定ルーチン」が実行される期間は、睡眠の初期の期間(第1期間)と中期の期間とに大別される。睡眠初期の期間中には、空調制御部(43)が、空調機(10)の設定温度Tsetを低下させるように空調機(10)を制御する。ここで、この期間における空調機(10)の目標温度の低下幅は、上述した中途覚醒の発生頻度WCに応じて変更される。また、睡眠中期の期間中には、空調制御部(43)が、設定温度Tsetを現状の設定温度に維持するように空調機(10)を制御する。
【0050】
具体的には、図5に示すように、入眠温度設定ルーチンに移行すると、第1カウンタ(55)のカウントが開始する(ステップST21)。そして、ステップST22では、第1カウンタ(55)でカウントされる期間t1(1分)毎に、就寝者の中途覚醒の判定が行われる。ここで、期間t1で就寝者が中途覚醒したと判定されると、記憶演算部(42)では、中途覚醒の発生頻度WC(n)に+1が加算され、中途覚醒の発生回数が積算されていく(ステップST23)。このような中途覚醒の発生頻度WCの積算は、第1カウンタ(55)が区間t2(45分)に達するまで継続される(ステップST24)。つまり、区間t2では、中途覚醒の発生の判定が45回繰り返し行われ、この区間t2での中途覚醒の発生頻度が導出される。
【0051】
なお、本実施形態では、中途覚醒の発生頻度を示す指標として、区間t2毎の中途覚醒の発生回数を導出しているが、例えば所定の期間における中途覚醒の発生の割合(いわゆる中途覚醒発生率)を用いるようにしても良い。
【0052】
第1カウンタ(55)で区間t2が最初にカウントアップされた後に、ステップST25へ移行すると、上記第2カウンタ(56)のカウンタ値nは未だ1のままであるので、ステップST26へ移行する。ステップST26〜ST29では、上記の区間t2毎の中途覚醒の発生頻度に基づいて、空調機(10)の設定温度Tsetが補正される。
【0053】
具体的には、ステップST26では、区間t2毎に導出した中途覚醒発生頻度WCの比較が行われる。つまり、ステップST26では、直前の区間で導出した中途覚醒の発生頻度WC(n)と、その前の区間で導出した中途覚醒の発生頻度WC(n-1)との大小の比較が行われる。ここで、前後の区間で中途覚醒の発生頻度が減少変化した場合(即ち、WC(n-1)>WC(n)の場合)、ステップST28へ移行し、空調機(10)の設定温度Tsetが所定の補正値(0.5℃)だけ低くなる。また、前後の区間で中途覚醒の発生頻度が変化しない場合(即ち、WC(n-1)=WC(n)の場合)にも、ステップST28へ移行し、空調機(10)の設定温度Tsetが0.5℃だけ低くなる。一方、前後の区間で中途覚醒の発生頻度が増大変化した場合、ステップST29へ移行し、設定温度Tsetがそのままの状態で維持される。
【0054】
なお、入眠温度設定ルーチンの初回には、比較対象となる中途覚醒発生頻度WC(0)が導出されていない。そこで、本実施形態では、この中途覚醒発生頻度WC(0)として“45”が擬似的に設定されている(上述のステップST5を参照)。この“45”は、区間t2で導出され得る中途覚醒の発生頻度WCの最大値である。従って、就寝者が入眠した後の初回の入眠温度設定ルーチンでは、直前の中途覚醒発生頻度WC(1)が、比較対象となるWC(0)よりも大きくなることがない。従って、初回の入眠温度設定ルーチンでは、必ずステップS28へ移行して設定温度Tsetが0.5℃だけ低くなる。
【0055】
ステップST28又はステップST29で、設定温度Tsetが更新された後には、カウンタ値nに+1が加算され(ステップST30)、カウンタ値TJが初期値(TJ=0)にリセットされ(ステップST31)、再び入眠温度設定ルーチンが実行される。
【0056】
入眠温度設定ルーチンでは、ステップST25でカウンタ値nが4を越えるまでの期間は、ステップST26、27での中途覚醒の発生頻度の判定が行われる。一方、カウンタ値nが4を越えた後には、ステップST25からステップST29へ移行し、設定温度Tsetがそのままの設定温度に保持される。つまり、本実施形態では、就寝者が入眠してから180分が経過した後には、n=4の時点での設定温度Tsetがそのままの温度に維持される(図7を参照)。
【0057】
〈起床温度設定ルーチン〉
「起床温度設定ルーチン」について説明する。「起床温度設定ルーチン」は、上述のように、図4のステップST8において、起床時刻twまでの残りの時間が1.5時間よりも短くなることで実行される。つまり、「起床温度設定ルーチン」は、起床時刻twよりも1.5時間前から起床時刻twまでの睡眠の後期の期間(第2期間)に実行される(図7を参照)。睡眠後期の期間中には、空調制御部(43)が、空調機(10)の設定温度Tsetを上昇させるように空調機(10)を制御する。ここで、この期間における空調機(10)の目標温度の上昇幅は、上述した中途覚醒の発生頻度WCに応じて変更される。
【0058】
具体的には、図6に示すように、起床温度設定ルーチンに移行すると、第1カウンタ(55)のカウントが開始する(ステップST41)。そして、ステップST42では、第1カウンタ(55)でカウントされる期間t1(1分)毎に、就寝者の中途覚醒の判定が行われる。ここで、期間t1で就寝者が中途覚醒したと判定されると、記憶演算部(42)では、中途覚醒の発生頻度WC(n)に+1が加算され、中途覚醒の発生回数が積算されていく(ステップST43)。このような中途覚醒の発生頻度WCの積算は、第1カウンタ(55)が区間t2に達するまで継続される(ステップST44)。なお、起床温度設定ルーチンでの区間t2は、入眠温度設定ルーチンと異なり30分に設定されている。つまり、起床温度設定ルーチンの区間t2では、中途覚醒の発生の判定が30回繰り返し行われ、この区間t2での中途覚醒の発生頻度が導出される。
【0059】
ステップS44からステップS45へ移行すると、起床温度制御開始フラグkの判定が行われる。ここで、初回の起床温度設定ルーチンでは、フラグkが“1”に設定されている(図4のステップST10を参照)。このため、ステップST45からステップST46へ移行し、フラグkに+1が加算されると共に、ステップST49へ移行し、空調機(10)の設定温度Tsetが所定の補正値(0.5℃)だけ高くなる。以上のように、本実施形態では、初回の起床温度設定ルーチンにおいて、設定温度Tsetが必ず上昇するようになっている。
【0060】
ステップST49の後には、カウンタ値nに+1が加算され(ステップST51)、カウンタ値TJが初期値(TJ=0)にリセットされる(ステップST52)。その後、図4のメインルーチンからステップST9へ移行した場合、フラグkが“2”となっていることから、ステップST10を経由せずに再び起床温度設定ルーチンへ移行する。2回目行以降の起床温度設定ルーチンでは、ステップST47〜ST50において、区間t2毎の中途覚醒の発生頻度に基づいて、空調機(10)の設定温度Tsetが補正される。
【0061】
具体的には、ステップST47では、区間t2毎に導出した中途覚醒発生頻度WCの比較が行われる。つまり、ステップST47では、直前の区間で導出した中途覚醒の発生頻度WC(n)と、その前の区間で導出した中途覚醒の発生頻度WC(n-1)との大小の比較が行われる。ここで、前後の区間で中途覚醒の発生頻度が減少変化した場合(即ち、WC(n-1)>WC(n)の場合)、ステップST49へ移行し、空調機(10)の設定温度Tsetが所定の補正値(0.5℃)だけ高くなる。また、前後の区間で中途覚醒の発生頻度が変化しない場合(即ち、WC(n-1)=WC(n)の場合)にも、ステップST49へ移行し、空調機(10)の設定温度Tsetが0.5℃だけ高くなる。一方、前後の区間で中途覚醒の発生頻度が増大変化した場合、ステップST50へ移行し、設定温度Tsetがそのままの状態で維持される。
【0062】
−実施形態の効果−
上記実施形態では、例えば図7に示すように、就寝者が入眠した直後の睡眠初期の期間において、空調機(10)の設定温度Tsetを低下させ、就寝者が起床する直前の睡眠後期の期間において、空調機(10)の設定温度Tsetを上昇させる、いわゆるV字温度制御を行うようにしている。このため、就寝者の体内時計のリズムに合わせるように、寝室の温度を変化させることができ、就寝者の睡眠環境を改善することができる。
【0063】
特に、上記実施形態では、睡眠初期の期間において、区間t2毎の中途覚醒の発生頻度WCを導出し、前後の区間での中途覚醒の発生頻度の大小の比較によって、設定温度Tsetを補正するようにしている。即ち、睡眠初期の期間では、就寝者の中途覚醒の発生頻度に応じて、空調機(10)の設定温度Tsetの低下幅を変更するようにしている。このため、寝室の温度が低くなり過ぎて就寝者の安眠がかえって阻害されることを回避できる。
【0064】
また、睡眠後期の期間においても、区間t2毎の中途覚醒の発生頻度WCを導出し、前後の区間での中途覚醒の発生頻度の大小の比較によって、設定温度Tsetを補正するようにしている。即ち、睡眠後期の期間では、就寝者の中途覚醒の発生頻度に応じて、空調機(10)の設定温度Tsetの上昇幅を変更するようにしている。このため、寝室の温度が高くなり過ぎて就寝者の安眠がかえって阻害されることも回避できる。
【0065】
以上のように、上記実施形態によれば、就寝者の暑さや寒さの感じ方をも考慮しながら、いわゆるV字温度制御を行うことができるので、就寝者の睡眠環境を効果的に向上させることができ、就寝者の安眠を維持することができる。
【0066】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としても良い。
【0067】
上記実施形態では、就寝者の体動に基づいて就寝者の中途覚醒を検出しているが、これに限らず、例えば就寝者の脳波や眼球運動等に基づいて、就寝者の中途覚醒を検出するようにしても良い。
【0068】
また、上記実施形態においては、「おやすみ制御」における設定温度Tsetとして、所定の上限値や下限値を設けても良い。即ち、例えば睡眠初期の期間において設定温度Tsetを補正する場合には、設定温度を下限値以上に維持させるようにしても良い。これにより、設定温度Tsetが低くなりすぎて、就寝者の安眠が損なわれてしまうのを確実に回避できる。同様に、例えば睡眠後期の期間において設定温度Tsetを補正する場合には、設定温度を上限値以上に維持させるようにしても良い。これにより、設定温度Tsetが高くなりすぎて、就寝者の安眠が損なわれてしまうのを確実に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、寝室に設置された空調手段を制御する空調制御システムに関し、特に就寝者の睡眠環境の向上対策について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る空調制御システムの概略図である。
【図2】図2は、空調制御システムの本体ユニットを拡大した斜視図である。
【図3】図3は、回路ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、空調制御システムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図5は、空調制御システムの入眠温度設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図6は、空調制御システムの起床温度設定ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図7は、おやすみ制御時の設定温度の変化の一例を表したタイムチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1 空調制御システム
10 空調機(空調手段)
20 感圧ユニット(中途覚醒検出部)
33 受圧部(中途覚醒検出部)
42 記憶演算部(中途覚醒導出部)
43 空調制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝者が入眠する時から所定時間が経過するまでの第1期間に空調手段(10)の目標温度を低下させ、就寝者が起床する時よりも所定時間前から該起床時までの第2期間に空調手段(10)の目標温度を上昇させる空調制御部(43)を備えた空調制御システムであって、
上記就寝者の中途覚醒の発生を検出するための中途覚醒検出部(20,33)を更に備え、
上記空調制御部(43)は、上記第1期間に上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した就寝者の中途覚醒の発生頻度に応じて、該第1期間での空調手段(10)の目標温度の低下幅を変更することを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記空調制御部(43)は、上記第2期間に上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した就寝者の中途覚醒の発生頻度に応じて、該第2期間での空調手段(10)の目標温度の上昇幅を変更することを特徴とする空調制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記空調制御部(43)は、上記第1期間中において、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が前後の区間で減少変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を低下させる一方、上記中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で増大変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を維持することを特徴とする空調制御システム。
【請求項4】
請求項3において、
上記空調制御部(43)は、上記第1期間中において、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で等しい場合にも、上記空調手段(10)の目標温度を低下させることを特徴とする空調制御システム。
【請求項5】
請求項2において、
上記空調制御部(43)は、上記第2期間中において、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が前後の区間で減少変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を上昇させる一方、上記中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で増大変化する場合に、上記空調手段(10)の目標温度を維持することを特徴とする空調制御システム。
【請求項6】
請求項5において、
上記空調制御部(43)は、上記第2期間中において、上記中途覚醒検出部(20,33)で検出した所定区間毎の中途覚醒の発生頻度が上記前後の区間で等しい場合にも、上記空調手段(10)の目標温度を上昇させることを特徴とする空調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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