説明

空調制御システム

【課題】在室者の人体特性を導出する個人情報を参照して在室者にとって適切な室温となるよう空調設備を自動的に制御する。
【解決手段】入退管理システム2から取得したユーザの性別及び年齢を含む個人情報を取得し、部屋毎に性別毎年代毎にユーザを分類、集計する構成人数集計部22と、その集計結果及び性別毎年代毎の代謝量を考慮して予め設定されている基準係数に基づいて、空調機55からの出力量を補正する係数を算出する係数算出部23と、部屋50の設置温度及び室温と、算出された係数を用いて演算を行うことで出力量を算出する出力量算出部43と、算出された出力量に基づき空調機55の動作を制御する空調制御部44と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調制御システム、特に室の温度調整に関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、年齢や性別、あるいは活動状態等により異なってくる代謝量や、暑がり、寒がりなどの体質、やせ気味、太り気味などの体格などによって、同じ室温でもその室温の感じ方が異なってくる。このような室温の感じ方を左右する人間に関する状態や個人の状態を「人間特性」と総称すると、室温を人間特性を考慮して設定できるようにすることが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1では、入力された在室者の人体特性の情報に基づいて室内機から室内に供給される気温の風温を制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−264608号公報
【特許文献2】特開2011−7358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、人体特性に関する情報を入室するたびに入力する必要があり面倒である。
【0006】
本発明は、在室者の人体特性を導出する個人情報を参照して在室者にとって適切な室温となるよう空調設備を自動的に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空調制御システムは、空調設備が設置された室にいる各利用者の人体特性を導出する個人情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された個人情報から導出される各利用者の人体特性に基づき前記空調設備の動作の制御に用いる制御用データを補正するための係数を算出する係数算出手段と、前記室内の計測温度及び前記室の設定温度を入力とし、前記係数算出手段により算出された係数を用いて演算を行うことで前記制御用データを算出する制御用データ算出手段と、前記制御用データ算出手段により算出された制御用データに基づき前記空調設備の動作を制御することで前記室の温度を調整する空調設備制御手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、人体特性に基づき分類されたグループ毎に基準係数が予め設定されている基準係数情報記憶手段を有し、前記係数算出手段は、前記取得手段により取得された各個人情報から導出される各利用者の人体特性に対応する基準係数を前記基準係数情報記憶手段からそれぞれ取り出し、その取り出した基準係数を用いて前記係数を算出することを特徴とする。
【0009】
また、前記取得手段は、利用者の入退室を管理する入退管理システムからの個人情報を取得することを特徴とする。
【0010】
また、前記取得手段は、各利用者が在室している室の識別情報を更に取得し、前記係数算出手段は、前記係数を室毎に算出し、前記制御用データ算出手段は、室毎に算出された係数を用いて演算を行うことで前記制御用データを室毎に算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、在室者にとって適切な室温となるように空調設備を自動的に制御することができる。
【0012】
また、室の利用者の人体特性の導出に入退管理システムが管理している個人情報を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態におけるビル管理システムの一実施の形態を示した全体構成図である。
【図2】本実施の形態における空調管理サーバのハードウェア構成図である。
【図3】本実施の形態における空調制御システムのブロック構成図である。
【図4】本実施の形態における基準係数情報記憶部に登録される基準係数情報のデータ構成の一例を示した図である。
【図5】本実施の形態における空調制御処理を示したフローチャートである。
【図6】本実施の形態における空調管理サーバが取得するユーザ情報のデータ構成例を示した図である。
【図7】本実施の形態における構成人数情報記憶部に登録された構成人数情報のデータ構成例を示した図である。
【図8】本実施の形態における係数記憶部に登録された係数情報のデータ構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態におけるビル管理システムの一実施の形態を示した全体構成図である。図1には、ビルなどの施設への入退館及び施設内部に設けられた事務室、会議室等の各室への入退室を管理する入退管理システム2と、施設における空調を管理する空調システム3と、がネットワーク1に接続された構成が示されている。
【0016】
入退管理システム2は、室(本実施の形態における「部屋」)50の入口に設置されたカードリーダ51と、1又は複数のカードリーダ51を接続するカードリーダコントローラ30と、1又は複数のカードリーダコントローラ30をネットワーク1を介して接続する入退管理サーバ10とを有している。施設を利用する従業員や来客(以下、「ユーザ」と総称)は、個人を識別するユーザ識別情報又はカード識別情報が少なくとも記録されたICカードを携帯している。各部屋50の出入口には、カードリーダ51が設置されており、ユーザは、部屋50に入室するときにICカードをカードリーダ51に読み取らせる。なお、本実施の形態においては、カードリーダ51は、ICカードからユーザの識別情報(以下、「ユーザID」)を少なくとも読み取る。カードリーダコントローラ30は、接続されたカードリーダ51の動作制御を行う制御装置であり、カードリーダ51によりデータが読み取られると、その読取データを入退管理サーバ10へ送信する。入退管理サーバ10は、接続された1又は複数のカードリーダコントローラ30から送信されてくる読取データを収集し、この収集したデータに基づき各ユーザの所在位置を特定するなどユーザの入退管理を行う。また、入退管理サーバ10には、入退管理システム2の各ユーザの個人情報が予め蓄積されている。
【0017】
なお、施設内には複数の部屋50が設けられているが、本実施の形態では、各部屋50ともカードリーダ51及び空調設備52が同様に設置されているので、図1には1つの部屋50のみを代表させて説明する。また、部屋50には、複数の出入口があって各出入口の近傍にそれぞれカードリーダ51が取り付けられている場合もある。ただ、ユーザの入室を検出する上で1つの部屋50に設置されるカードリーダ51の台数は関係ないので、本実施の形態においては、部屋50に1台のカードリーダ51のみが取り付けられているものとして図示した。また、カードリーダコントローラ30は、1つの部屋50に設置されたカードリーダ51から、あるいは複数の部屋50に設置された複数のカードリーダ51それぞれから読取データを受信する場合もあるが、ユーザの入室を検出する上で1台のカードリーダコントローラ30に接続されたカードリーダ51の台数は関係ないので、本実施の形態においては、各カードリーダコントローラ30には1台のカードリーダ51のみが接続されているものとして図示した。同様に、入退管理サーバ10には、通常、複数台のカードリーダコントローラ30が接続されているが、カードリーダコントローラ30を同様に構成してよく、また、入退管理サーバ10は、各カードリーダコントローラ30に対し同様に動作制御するので、本実施の形態では、1台のカードリーダコントローラ30のみが接続されているものとして図示した。
【0018】
空調システム3は、各部屋50に設置された空調設備52と、1又は複数の空調設備52を接続する1又は複数の空調設備コントローラ40と、1又は複数の空調設備コントローラ40をネットワーク1を介して接続する空調管理サーバ20とを有する。空調管理サーバ20及び空調設備コントローラ40は、空調設備52の動作を制御する空調制御システムを形成する。本実施の形態における空調設備52は、室内に設置される室内ユニットに相当し、各部屋50の出入口近傍に設置された操作パネル53と、部屋50の室温を計測する室温センサ54と、暖気又は冷気を送出することで部屋50の冷暖房、また加湿及び除湿を行う空調機55と、を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない換気装置や室外機等の設備は省略している。部屋50の広さによっては、1つの部屋50に複数の操作パネル53や空調機55が設けられている場合もあるが、本実施の形態では、それぞれ1つ設けられているものとして図示している。空調設備コントローラ40は、空調設備52、特に空調機55から送出される風量の制御等、接続された空調設備52の動作を制御する。空調管理サーバ20は、空調設備コントローラ40の動作を制御し、空調設備52の動作制御を行うための指示等を行う。
【0019】
なお、本実施の形態では、空調設備コントローラ40を各部屋50の空調設備52に対応させて設けたが、複数の空調設備52に対応させて設けてもよい。また、空調管理サーバ20は、空調設備コントローラ40に対し同じように動作制御するので、本実施の形態では、説明の便宜上、図1には、1台の空調設備コントローラ40のみを図示した。
【0020】
本実施の形態におけるハードウェアとしては、従前からある装置にて構成してもよい。本実施の形態は、空調方式としていわゆるビル用マルチ空調方式に適用する場合を例にして説明するが、セントラル空調方式にも適用可能である。
【0021】
図2は、本実施の形態における空調管理サーバ20のハードウェア構成図である。本実施の形態における空調管理サーバ20を形成するサーバコンピュータは、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータは、図2に示したようにCPU61、ROM62、RAM63、ハードディスクドライブ(HDD)64を接続したHDDコントローラ65、入力手段として設けられたマウス66とキーボード67、及び表示装置として設けられたディスプレイ68をそれぞれ接続する入出力コントローラ69、通信手段として設けられたネットワークコントローラ70を内部バス71に接続して構成される。
【0022】
また、入退管理サーバ10も同じサーバコンピュータであることから、そのハードウェア構成は、図2と同じように図示することができる。また、カードリーダコントローラ30及び空調設備コントローラ40は、マウス等のユーザインタフェースは不要かもしれないが、コンピュータを搭載しているため、各コントローラ30,40の動作制御を行うための基本構成は、図2と同様に図示できる。
【0023】
図3は、本実施の形態における空調制御システムのブロック構成図である。なお、図3には、本実施の形態の説明に必要な構成要素について図示している。本実施の形態においては、空調システム3が、入退管理システム2により管理されている各ユーザの個人情報や在室状況に関する情報を有効利用することを特徴の1つとしており、入退管理システム2の機能構成については、従来と同様でよいため図3から省略した。
【0024】
空調管理サーバ20は、ユーザ情報取得部21、構成人数集計部22、係数算出部23、係数配信部24、構成人数情報記憶部25、基準係数情報記憶部26及び係数記憶部27を有している。ユーザ情報取得部21は、取得手段として機能し、入退管理システム2で保持管理されているユーザ情報を取得する。ユーザ情報には、いずれかの部屋50に在室している各ユーザの人体特性を導出する個人情報及び各ユーザが在室している部屋50を特定するための在室情報が含まれている。このユーザ情報の具体的内容については追って説明する。構成人数集計部22は、ユーザ情報取得部21により取得されたユーザ情報の在室情報に基づき各部屋50に所在するユーザを部屋50毎に振り分ける。また、ユーザ情報取得部21により取得されたユーザ情報の個人情報には、当該ユーザの人体特性を導出する情報が含まれているが、構成人数集計部22は、この情報を参照して部屋50毎に、在室中のユーザを人体特性で分類し、分類した各人体特性における構成人数を集計し、その集計結果を構成人数情報記憶部25に登録する。本実施の形態の場合、人体特性を導出する情報として性別及び年齢を用いているので、構成人数集計部22は、性別及び年齢を参照して、各部屋50に在室しているユーザを性別毎年代毎に集計し、その集計結果を構成人数情報記憶部25に登録する。本実施の形態では、空調制御方式として比例制御を採用した場合を例にして説明するが、空調設備コントローラ40は、空調機55からの出力量を決定する過程において所定の演算式を用いるなどして演算を行って求めた操作量(出力量)に基づき空調機55の動作の制御を行う。係数算出手段として機能する係数算出部23は、空調機55の動作の制御に用いる制御用データとして出力量を求める演算を行う際に、その演算に組み込むことで出力量を補正するための係数を、各ユーザの人体特性に基づき集計された結果及び基準係数情報記憶部26に設定されている基準係数を参照して算出する。この算出された各部屋50の係数は、係数記憶部27に登録される。係数配信部24は、係数記憶部27に登録されている係数を、対応する部屋50それぞれに設置された空調設備52の動作制御を行う空調設備コントローラ40へ配信する。
【0025】
図4は、本実施の形態における基準係数情報記憶部26に登録される基準係数情報のデータ構成の一例を示した図である。基準係数情報は、システム管理者や担当者等によって基準係数情報記憶部26に予め設定登録されている。本実施の形態では、人体特性を導出する個人情報として性別及び年齢を用いている。従って、1つの部屋50に在室しているユーザを、性別に基づき男性と女性とに分類する。更に年齢を参照して年代別に分類する。このように、分類した性別毎年代毎に、性別毎年代毎の代謝量を考慮して基準係数を予め設定する。この基準係数は、前述したように係数算出部23が演算を行う際に用いる係数を算出する際に利用される。なお、本実施の形態では、各ユーザの年齢を参照して年代別という基本10年単位にユーザを分類したが、これは一例であって例えば5歳単位や1歳単位(年齢毎)に分類してもよい。
【0026】
空調管理サーバ20における各構成要素21〜24は、空調管理サーバ20を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU61で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部25〜27は、空調管理サーバ20に搭載されたHDD64又はRAM63にて実現してよい。あるいは、ネットワーク1を経由してアクセス可能な外部の記憶手段を利用してもよい。
【0027】
空調設備コントローラ40は、係数取得部41、温度情報取得部42、出力量算出部43及び空調制御部44を有している。係数取得部41は、空調管理サーバ20から自己宛に配信されてきた係数を取得する。ユーザは、部屋50に設置された操作パネル53を操作して室内の温度を設定するが、温度情報取得部42は、操作パネル53からユーザにより設定された温度と、室温センサ54により計測された部屋50の計測温度とを取得する。なお、本実施の形態では、ユーザにより設定された温度を「設定温度」又は「設定値」と称し、室温センサ54による計測温度を「室温」又は「計測値」と称する。出力量算出部43は、制御用データ算出手段として機能し、部屋50の室温及び当該部屋50の設定温度を入力とし、係数取得部41により算出された係数を用いて演算を行うことで出力量を算出する。空調制御部44は、空調制御手段として機能し、出力量算出部43により生成された出力量に基づき空調設備52、具体的には空調機55の動作を制御する。
【0028】
空調設備コントローラ40における各構成要素41〜44は、空調設備コントローラ40を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU61で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0029】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0030】
次に、本実施の形態における動作について説明する。前述したように、本実施の形態では、空調制御方式として比例制御を採用した場合を例にして説明する。
【0031】
まず、ユーザが部屋50に入室する際、携帯するICカードをカードリーダ51に読み取らせる。この読取操作により生成された読取データは、カードリーダコントローラ30を介して入退管理サーバ10へ送信される。入退管理サーバ10は、カードリーダコントローラ30から送られてくる読取データを収集すると、ICカードを読み取らせたユーザのユーザIDに、ICカードを読み取ったカードリーダ51が設置された部屋50の識別情報(以下、「部屋ID」)と、当該部屋50への入室日時とを対応付けして蓄積する。このようにして、入退管理システム2は、ユーザが現在どの部屋50にいつからいるのかを把握している。また、入退管理システム2は、監視対象の各ユーザの個人情報が予め蓄積されている。個人情報には、各ユーザのユーザIDに対応させて、性別、年齢など当該ユーザの人体特性に関する情報が含まれている。
【0032】
続いて、空調システム3における空調制御処理について図5に示したフローチャートを用いて説明する。ところで、入退管理サーバ10がいずれかのカードリーダコントローラ30からICカードの読取データが送られてくるということは、そのタイミングでユーザが部屋50を移動したということに相当し、部屋50に在室中の人数構成に変化があったということなので、以降に説明する空調制御処理は、ユーザの部屋50の移動が検出される度に実行するのが望ましい。もちろん、これに限らず、例えば周期的に実行するようにしてもよい。
【0033】
まず、空調管理サーバ20におけるユーザ情報取得部21は、入退管理システム2からいずれかの部屋50にいるユーザのユーザ情報を取得する(ステップ110)。ユーザ情報取得部21は、入退管理サーバ10がユーザの部屋50の移動を検出したタイミングで送信してくるユーザ情報を受信してもよいし、空調管理サーバ20側からの要求に応じて入退管理サーバ10から送信されてくるユーザ情報を受信してもよい。取得したユーザ情報のデータ構成例を図6に示す。図6に例示したように、ユーザ情報には、ユーザのユーザIDに、人体特性を導出する個人情報として当該ユーザの性別及び年齢と、在室情報として当該ユーザが在室している部屋50の部屋IDと、が対応付けされている。もちろん、データ構成はこれに限らず、個人情報と在室情報とをそれぞれ別個に受信してもよい。また、空調設備52が設置された部屋50が施設に1つしかなければ在室情報は不要である。
【0034】
ユーザ情報が取得されると、構成人数集計部22は、そのユーザ情報を参照して、各ユーザを在室している部屋50毎に仕分けし、更に部屋50毎に、ユーザを性別及び年代別に分類し、集計する(ステップ120)。そして、構成人数集計部22は、その集計結果を構成人数情報として構成人数情報記憶部25に登録する。構成人数情報記憶部25に登録された構成人数情報のデータ構成例を図7に示す。図7に例示したように、各部屋50に在室している各ユーザは、性別及び年代別に分類され、その分類された人数の集計結果が構成人数情報のテーブルに設定される。
【0035】
構成人数情報が得られると、係数算出部23は、構成人数情報記憶部25に登録された構成人数情報と、基準係数情報記憶部26に設定されている基準係数に基づき空調設備コントローラ40における出力量の演算に用いられる係数を部屋50毎に算出する(ステップ130)。本実施の形態では、図4に示した各基準係数と、各基準係数の設定位置に対応する図7に示した集計値とを乗算し、これらの乗算値の平均を求めることで係数を算出する。ここでは、図7における部屋ID“mt6F02”のデータ設定例を用いて、具体的な係数の算出方法を説明する。
【0036】
図4に示した基準係数を参照すると、29歳以下の男性の基準係数は1.00であり、図7に示した構成人数情報を参照すると、対応する29歳以下の男性の人数の集計値は1である。同様に、30代の男性の基準係数は0.95であり、図7における対応する30代の男性の人数の集計値は4である。このようにある性別及びある年代の人体特性における基準係数とこの人体特性に対応する人数の集計値とをそれぞれ乗算して得た数の和は、(1.00×1)+(0.95×4)+(0.90×2)+(0.85×0)=6.6と算出できる。女性についても同様に対応付けることができ、ある人体特性の基準係数とこれに対応する人数の集計値とをそれぞれ乗算して得た数の和は、(0.95×2)+(0.90×1)+(0.85×0)+(0.80×0)=2.8と算出できる。従って、上記算出結果の合計に当該部屋50の全体人数で除算することで平均を求めると、(6.6+2.8)÷10=0.94と算出できる。この算出結果が部屋ID“mt6F02”の部屋の係数となる。係数算出部23は、以上のように基準係数と性別毎年代毎の人数の集計値とに基づき当該部屋の係数を算出し、その算出結果を当該部屋の部屋IDと対応付けて係数情報として係数記憶部27に登録する。各部屋について同様に係数を算出し、係数記憶部27に登録する。以上の係数算出部23による処理により得られた結果を図8に示す。
【0037】
係数算出部23が各部屋の係数を算出すると、係数配信部24は、係数記憶部27に登録された係数を取り出し、対応する部屋50の空調設備52の制御を行う空調設備コントローラ40へそれぞれ配信する。なお、空調管理サーバ20は、部屋50と空調設備コントローラ40との対応関係を示す情報を保持している。
【0038】
空調設備コントローラ40において、係数取得部41が空調管理サーバ20から送信されてくる係数を取得すると、温度情報取得部42は、この係数の取得に合わせて、ユーザが操作パネル53を操作して設定した温度(設定値)と室温センサ54が計測した室温(計測値)とを取得する。そして、出力量算出部43は、空調管理サーバ20から取得した係数と、空調設備52から取得した設定値及び計測値を用いて予め決められた演算により、空調設備52の空調機55から送出される出力量を算出する(ステップ140)。
【0039】
例えば、比例帯が25℃と35℃との間の10℃であってリセット値が0%とする。そして、計測値が28℃、設定値が25℃であったとする。そして、係数が0.95と算出されていたとする。このような条件の下、出力量を求めるために次のような演算を行うが、本実施の形態の演算を明確にする上で、まず従来の算出方法について説明する。
【0040】
まず、計測値28℃と設定値25℃との偏差は3℃である。比例帯は10℃なので、1℃は10%とである。よって演算結果(出力値)は、10%×3℃=30%となる。従って、空調設備52は、出力量が30%で制御される。
【0041】
本実施の形態の場合、前述したように係数を求め、これを演算に反映させている。この係数を上記演算に用いる例として2パターン用意している。
【0042】
まず、パターン1では、上記演算結果に係数を乗算する。すなわち、上記例では出力量として30%が得られているが、パターン1では、この出力量に係数0.95を乗算する。つまり、パターン1における出力量は30%×0.95=28.5%と算出される。
【0043】
次に、パターン2では、計測値と設定値それぞれに係数を反映させる。例えば、計測値28℃に係数0.95を乗算して計測値を28℃×0.95=26.6℃と補正する。一方、設定値25℃は、係数0.95で除算して設定値を25÷0.95=26.3℃と補正する。この結果、偏差は26.6℃−26.3℃=0.3℃となる。従って、パターン2における出力量は10%×0.3=3%と算出される。
【0044】
パターン1では、最終の演算結果に係数を乗算しているのに対し、パターン2では、計測値と設定値に係数による演算処理を施している。パターン2は、パターン2における演算結果に対し、更に演算を行って最終的な出力量を求めるような場合に適している。
【0045】
以上のようにして、出力量算出部43が空調機55の出力量を算出すると、空調制御部44は、その算出された出力量に従って空調機55の動作を制御する。
【0046】
本実施の形態においては、以上のようにして空調機55の動作制御を行うための出力量を算出する。
【0047】
一般的に、年齢が進むに連れ代謝量が減少すると言われている。また、男性に比して女性の代謝量は低いと言われている。従って、例えば冷房の場合、年齢が進むに連れ室温を低下させなくてよいと考えられる。また、女性の場合でも室温を低下させなくてよいと考えられる。具体的には、部屋50の設定温度が28℃であった場合において、部屋50に29歳以下の男性が1人在室中であった場合、設定温度を係数で除算し、室温が28.0℃÷1.00=28.0℃となるように空調制御する。また、部屋50に30代の男性が1人在室中であった場合、設定温度を係数で除算し、室温が28.0℃÷0.95=29.5℃となるように空調制御する。また、部屋50に20代の女性が1人在室中であった場合も同様に、室温が28.0℃÷0.95=29.5℃となるように空調制御する。
【0048】
このように、本実施の形態では、部屋50の設定温度となるよう単純に空調制御するのではなく、在室中のユーザの人体特性に応じて空調制御することになる。ここでの例では、単純に部屋50に1人しか在室していない場合で説明したが、複数のユーザが在室している場合が少なくない。このような場合は、予め設定されている基準係数を参照して所定の演算を行うことで当該部屋50の係数を算出する。これにより、在室中のユーザ全員にとって快適な温度設定が可能になる。
【0049】
なお、本実施の形態では、係数算出部23は性別毎年代毎の人数構成に基づく基準係数の平均値を係数として算出したが、この算出方法に限定する必要はない。例えば、人数構成比の最も多い人体特性に割り当てた基準係数を係数として採用してもよい。また、年齢の高い人を重要視するために各基準係数に重み付けをするなどしてもよい。
【0050】
また、29歳以下の男性のみが在室していた場合には、算出される係数は1.0となるので、設定温度に従った空調制御となるが、基準係数として1.0未満が設定されているユーザが在室している場合、算出される係数は1.0未満となるので、省エネ効果が期待できる。もちろん、図4に示した29歳以下の男性を含め、基準係数として1.0未満の値を設定しておけば、省エネ効果を常に期待できるようになる。また、これとは反対に、1.0以上の基準特性を設定しておけば、省エネ効果は期待できないが、冷房効果及び暖房効果を更に高めることが可能になる。いずれにしても省エネ効果等の効果を得るかどうかは、基準係数に設定する値に左右される。この基準計数は、部屋50の広さや構造、施設利用者の人体特性(子供、ほとんどが女性など)等を参照して適切な値を設定すればよい。また、季節等によって変更するなどして運用してもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、人体特性として、代謝量に影響を与える年齢及び性別を例にして説明した。但し、これに限定する必要はない。例えば、暑がり、寒がりなどの体質、やせ気味、太り気味などの体格などを数値化し、これを人体特性を導出する個人情報として用いてもよい。更に、人体特性を導出する個人情報として係数を各ユーザに予め設定しておいてもよい。この場合、基準係数情報記憶部26は不要となり、係数算出部23は、各ユーザに設定された個人情報の係数を用いて当該部屋50の係数を算出することになる。このように、係数算出部23が各部屋50の係数を算出しうる元データとなれば、この各ユーザに設定した係数のように人体特性を表す情報でなくても、人体特性を導出できるデータであって係数が算出できるデータであれば、それらのデータを、人体特性を導出する個人情報として用いてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、空調制御方式として比例制御を採用した場合を例にして説明したが、他の空調制御方式にも適用してもよい。例えば、ON−OFF制御のON、OFFする設定値の決定に利用してもよい。
【0053】
なお、来客など個人情報は、接客する従業員が予め設定登録しておいてもよいし、入室する際にカメラなどで撮影して得た撮像データを解析して性別及び年代を推定するようにしてもよい。なお、前述した体格に関する個人情報も撮像データを解析して得るようにしてもよい。
【0054】
また、本実施の形態においては、空調管理サーバ20において各部屋50の係数を算出したが、係数の算出に必要なデータを空調設備コントローラ40に送り、空調設備コントローラ40にて係数を算出させるようにしてもよい。また、空調設備コントローラ40において係数で補正された出力量を算出したが、空調管理サーバ20が補正した出力量を算出し、その出力量を各空調設備コントローラ40へ配信するようにしてもよい。本実施の形態において特徴的な構成要素は、空調システム3に全体構成を参照して、適切な装置に配設すればよい。更に、本実施の形態を、空調以外の設備の制御に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ネットワーク、2 入退管理システム、3 空調システム、10 入退管理サーバ、20 空調管理サーバ、21 ユーザ情報取得部、22 構成人数集計部、23 係数算出部、24 係数配信部、25 構成人数情報記憶部、26 基準係数情報記憶部、27 係数記憶部、30 カードリーダコントローラ、40 空調設備コントローラ、41 係数取得部、42 温度情報取得部、43 出力量算出部、44 空調制御部、51 カードリーダ、52 空調設備、53 操作パネル、54 室温センサ、55 空調機、61 CPU、62 ROM、63 RAM、64 ハードディスクドライブ(HDD)、65 HDDコントローラ、66 マウス、67 キーボード、68 ディスプレイ、69 入出力コントローラ、70 ネットワークコントローラ、71 内部バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調設備が設置された室にいる各利用者の人体特性を導出する個人情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された個人情報から導出される各利用者の人体特性に基づき前記空調設備の動作の制御に用いる制御用データを補正するための係数を算出する係数算出手段と、
前記室内の計測温度及び前記室の設定温度を入力とし、前記係数算出手段により算出された係数を用いて演算を行うことで前記制御用データを算出する制御用データ算出手段と、
前記制御用データ算出手段により算出された制御用データに基づき前記空調設備の動作を制御することで前記室の温度を調整する空調設備制御手段と、
を有することを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
人体特性に基づき分類されたグループ毎に基準係数が予め設定されている基準係数情報記憶手段を有し、
前記係数算出手段は、前記取得手段により取得された各個人情報から導出される各利用者の人体特性に対応する基準係数を前記基準係数情報記憶手段からそれぞれ取り出し、その取り出した基準係数を用いて前記係数を算出することを特徴とする請求項1記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記取得手段は、利用者の入退室を管理する入退管理システムからの個人情報を取得することを特徴とする請求項1記載の空調制御システム。
【請求項4】
前記取得手段は、各利用者が在室している室の識別情報を更に取得し、
前記係数算出手段は、前記係数を室毎に算出し、
前記制御用データ算出手段は、室毎に算出された係数を用いて演算を行うことで前記制御用データを室毎に算出することを特徴とする請求項1記載の空調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88105(P2013−88105A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232404(P2011−232404)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】