説明

空調機のフィルタ保持機構、及びそのフィルタ保持機構を用いた空調機

【課題】フィルタの着脱部を閉じる支持枠の一部がフィルタの反発力によって開くことを防止する空調機のフィルタ保持機構を提供する。
【解決手段】室内ユニット2では、保持部材43の2つの軸431と軸432が制止部材44の案内スリット44aに並んで嵌まり込んでおり、且つ、その案内スリット44aがフィルタ案内溝42の延びていく方向と交差している。保持部材43がフィルタ21の反発力によって回動しそうになっても、軸431と軸432とが保持部材43の回動を阻止する。また、保持部材43がフィルタ案内溝42の前方案内溝42aを成す第1位置では、軸431と軸432との隙間に第1突起441が嵌まり込んでいるため、保持部材43がフィルタ21の反発力によって案内スリット44aに沿って移動することができない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ保持機構に関し、特にフィルタに付着した塵埃を自動的に除去する機能を有するフィルタ保持機構、及びそのフィルタ保持機構を用いた空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フィルタと清掃手段とを対向させた状態で相対移動させ、そのフィルタに付着した塵埃を除去することができる空調機が広く普及している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の空調機は、フィルタと吸引部とが近接しており、吸引部がフィルタに付着した塵埃を吸引する。フィルタは湾曲した状態で支持枠に支持されており、支持枠の一部がヒンジ式で回動することによってフィルタの着脱部を開閉する。使用者は、その着脱部を開けてフィルタを着脱する。
【0003】
しかしながら、上記のような構成では、着脱部を閉じる支持枠の一部が、湾曲したフィルタの反発力で回動しフィルタが支持枠から脱落する可能性があった。
【特許文献1】特開2007−147122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、フィルタの着脱部を閉じる支持枠の一部がフィルタの反発力によって開くことを防止するフィルタ保持機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、フィルタを着脱可能に保持する空調機のフィルタ保持機構であって、保持部材と、制止部材とを備えている。保持部材は、フィルタの一部の縁を保持してフィルタを湾曲させる経路を構成する。制止部材は、保持部材を定位置に止める。そして、制止部材は、フィルタの縁が延びていく方向と交差する直線に沿って定位置から保持部材を移動させるための案内部を有している。
【0006】
フィルタは強制的に湾曲をさせられているので、その湾曲を解消しようとする反発力が保持部材に作用している。しかし、この空調機のフィルタ保持機構では、保持部材は制止部材によって止められており、フィルタの縁が延びていく方向と交差する直線方向に移動しないかぎり、フィルタの保持は緩まない。
【0007】
第2発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第1発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、支持枠と駆動部とをさらに備えている。支持枠は、フィルタの縁を保持部材と共に保持する。駆動部は、フィルタを移動させる。支持枠は、フィルタが移動するときにフィルタの縁を所定の湾曲軌道に沿わせるフィルタ案内部を有している。
【0008】
フィルタが湾曲軌道にそって移動するとき、湾曲を解消しようとする力が保持部材に作用している。しかし、この空調機のフィルタ保持機構では、保持部材が制止部材によってとめられており、フィルタの縁が延びていく方向と交差する直線方向に移動しないかぎり、フィルタの保持は緩まない。
【0009】
第3発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第2発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、フィルタの縁が移動する軌道が、フィルタ案内部が延びていく方向に延びている。この空調機のフィルタ保持機構では、保持部材が制止部材によってとめられており、フィルタ案内部が延びていく方向と交差する直線方向に移動しない限りフィルタの保持は緩まない。
【0010】
第4発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第2発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、制止部材が、第1停止部と第2停止部とをさらに有している。第1停止部は、保持部材がフィルタを保持している第1位置で保持部材を止める。第2停止部は、保持部材がフィルタから所定距離はなれた第2位置で保持部材を止める。案内部は、保持部材を、第1位置から第2位置へ、及び第2位置から第1位置へ案内する。この空調機のフィルタ保持機構では、案内部が保持部材をフィルタから所定距離はなれた位置で止めるので、保持部材と支持枠との隙間からフィルタを容易に着脱することが可能となる。
【0011】
第5発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第4発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、案内部が、凹溝、又はスリットである。保持部材は、案内部に嵌まる複数の軸を有している。この空調機のフィルタ保持機構では、複数の軸が案内部に嵌まっているので、保持部材がいずれか1つの軸を中心にして回動することができない。
【0012】
第6発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第5発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、第1停止部が、案内部に形成された第1突起を有し、第2停止部が、案内部に形成された第2突起を有している。保持部材が第1位置にあるとき第1突起が軸間の隙間に嵌まり、保持部材が第2位置にあるとき、第2突起が軸間の隙間に嵌まる。
【0013】
この空調機のフィルタ保持機構では、第1位置で、複数の軸が凹溝に嵌まって且つ第1突起が軸間に嵌まっているので、保持部材は制止部材に対して回動も移動もすることができない。同じく、第2位置で、複数の軸が凹溝に嵌まって且つ第2突起が軸間に嵌まっているので、保持部材は制止部材に対して回動も移動もすることができない。
【0014】
第7発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第4発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、案内部が凹溝、又はスリットである。保持部材は、案内部に嵌まる軸を有している。軸は、案内部の幅よりも大きく且つ案内部の長手方向と平行な長寸部側に、案内部の幅方向に窪む凹部を有している。この空調機のフィルタ保持機構では、案内部の幅寸法より大きい長寸部が案内部に嵌まっているので、保持部材は軸を中心にして回動することができない。
【0015】
第8発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第7発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、第1停止部が、案内部に形成された第1突起を有し、第2停止部が、案内部に形成された第2突起を有している。保持部材が第1位置にあるとき、第1突起が凹部に嵌まり、保持部材が第2位置にあるとき、第2突起が凹部に嵌まる。
【0016】
この空調機のフィルタ保持機構では、第1位置では、軸が案内部に嵌まって、且つ第1突起が凹部に嵌まっているので、保持部材は、制止部材に対して回動も移動もすることができない。同じく、第2位置では、軸が案内部に嵌まって、且つ第2突起が凹部に嵌まっているので、保持部材は、制止部材に対して回動も移動もすることができない。
【0017】
第9発明に係る空調機のフィルタ保持機構は、第2発明に係る空調機のフィルタ保持機構であって、制止部材が支持枠に一体成形されている。この空調機のフィルタ保持機構では、制止部材と支持枠との組立が必要でなくなるので、作業工数が減りコスト低減となる。
【0018】
第10発明に係る空調機は、第1発明から第9発明のいずれか1つに係るフィルタ保持機構を用いた空調機である。この空調機では、フィルタ保持機構からフィルタが脱落することが防止され、空調機の内部が塵埃で汚染されることが防止される。
【発明の効果】
【0019】
第1発明、第2発明、及び第3発明のいずれか1つに係る空調機のフィルタ保持機構では、フィルタ保持機構からフィルタが脱落することはない。
【0020】
第4発明に係る空調機のフィルタ保持機構では、案内部が保持部材をフィルタから所定距離はなれた位置で止めるので、保持部材と支持枠との隙間からフィルタを容易に着脱することが可能となる。
【0021】
第5発明、又は第7発明に係る空調機のフィルタ保持機構では、フィルタの湾曲を解消しようとする反発力が保持部材に作用しときでも、保持部材が回動して支持枠から離れることは回避される。
【0022】
第6発明、又は第8発明に係る空調機のフィルタ保持機構では、保持部材の姿勢が安定する。
【0023】
第9発明に係る空調機のフィルタ保持機構では、制止部材と支持枠との組立が必要でなくなるので、作業工数が減りコスト低減となる。
【0024】
第10発明に係る空調機では、フィルタ保持機構からフィルタが脱落することが防止され、空調機の内部が塵埃で汚染されることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
<空調機の概略構成>
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタ保持機構を用いた空調機の外観図である。図1において、空調機1は、室内に設置される室内ユニット2と、室外に設置される室外ユニット3とを有しており、室内の冷房および暖房を行うことができる。
【0028】
室外ユニット3は、室外空調ユニット5と、室外空調ユニット5上に配置される調湿ユニット4とを有している。調湿ユニット4は、室外の空気を室内へ供給し、或いは室内の空気を室外へ排出することができ、室外ユニット3と室内ユニット2との間には、調湿ユニット4からの室外空気や調湿空気等を室内ユニット2側に供給するときに、或いは室内の空気を室外に排出するときに用いられる給排気ホース6が設けられている。
【0029】
<室内ユニット2>
図2は、本発明の一実施形態に係るフィルタ保持機構を用いた空調機の室内ユニットの断面図である。室内ユニット2は、室内の壁面に取り付けられる壁掛け型の室内ユニットであり、図2に示すように、ケーシング10と、フレーム11、室内熱交換器12、ファン13、フィルタ21及びダストボックス60等を有している。
【0030】
ケーシング10は、グリル10aと前面パネル10bと背面板10cとを含む。グリル10aはフィルタ21を覆うように配置されている。また、前面パネル10bは、グリル10aの前面を覆うように取付けられている。
【0031】
室内ユニット2の内部には、フレーム11、室内熱交換器12、ファン13、及びフィルタ21が配置されている。室内熱交換器12及びファン13は、フレーム11に取り付けられている。室内熱交換器12は、通過する空気との間で熱交換を行う。ファン13は、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器12に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0032】
フレーム11の前面下部には、吹出し口15が設けられており、吹出し口15から吹き出される空気を案内する第1フラップ17a、第2フラップ17b、第3フラップ17c及び第4フラップ17dが、吹出し口15に設けられている。各フラップは、空気の案内方向を変更したり、吹出し口15を開閉したりすることができる。
【0033】
(フィルタ清掃部40)
図3は、フィルタ清掃部の斜視図である。図2及び図3において、フィルタ清掃部40は、グリル10aと室内熱交換器12との間に配置されている。フィルタ21は、フィルタ清掃部40内に収納されている。フィルタ21は、室内熱交換器12に向って流入してくる空気に含まれる塵埃を除去し、フィルタ清掃部40は、塵埃が付着したフィルタ21を自動清掃し、その塵埃をダストボックス60に溜める。また、フィルタ清掃部40は、フィルタ21を移動させるローラー31と、フィルタ21及びローラー31を支持するガイド部材41とを有している。
【0034】
(フィルタ21)
図4は、フィルタとローラーの斜視図である。図4において、フィルタ21は、空気中の塵埃を除去するフィルタ部22と、フィルタ部22の上下端、左右端及び中央部を支える縁23とを有する。本実施形態では、縁23は、エラストマで成形されており、外力によって容易に変形させられるが、外力が無くなると容易に復元される。なお、縁23の材質はエラストマに限定されるものではなく、ゴム、樹脂などの高分子材料から選定される。フィルタ21の左右端の縁23には、ギアと噛み合うラック24が形成されている。
【0035】
フィルタ21は、室内熱交換器12の上面側に配置され、室内および室外から取り込まれた空気から塵埃を除去する。これにより、フィルタ21は、空気中に浮遊する塵埃が室内熱交換器12の表面を汚染することを防止している。フィルタ21は、正規の状態では、室内熱交換器12の上面側のほぼ全域を覆うように配置されている。
【0036】
(ローラー31)
ローラー31は、両端にピニオンギア32を有している。各ピニオンギア32は、フィルタ21のラック24と噛み合い、ピニオンギア32が回転することによって、フィルタ21は上下に移動する。各ピニオンギア32の中央には、外側へ突出する回転軸33が設けられており、回転軸33は、ガイド部材41の軸受に支持される。
【0037】
(ガイド部材41)
図2及び図3において、ガイド部材41は、フィルタ21が移動するための軌道となるフィルタ案内溝42と、ピニオンギア32の回転軸33を支持する軸受とを有している。
【0038】
フィルタ案内溝42は、前方案内溝42aと下方案内溝42bと後方案内溝42cと上方案内溝42dとから成る。前方案内溝42a及び後方案内溝42cの長さは、フィルタ21の長手方向の約3分の2の長さに相当し、上方案内溝42dの長さは、フィルタ21の長手方向の約3分の1の長さに相当する。下方案内溝42bは、前述したピニオンギア32の歯先円と同軸の円弧軌道を形成しており、前方案内溝42aの下端と後方案内溝42cの下端とを結んでいる。前方案内溝42aの上端と後方案内溝42cの上端は、共に上方案内溝42dの入口と繋がっている。なお、フィルタ21の停止位置は、上方案内溝42dの終端近傍に配置されているリミットスイッチ(図示せず)によって検知される。
【0039】
(ダストボックス60)
図2においてダストボックス60は、フィルタ21に付着した塵埃を除去して、その塵埃を一時的に溜める機能を有している。ダストボックス60には、回転ブラシ61が配設されており、この回転ブラシ61がフィルタ21に接触している。そして、回転ブラシ61は、ブラシ駆動モータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0040】
(フィルタ清掃動作)
室内ユニット2では、制御部により定期的に、或いは使用者が必要とするときにリモコンによってフィルタ21が自動的に清掃される。以下、その仕組みについて説明する。
【0041】
フィルタ21のラック24は、前方案内溝42aと上方案内溝42dとに収まっており、ラック24の一端(以後、第1端部24aとよぶ)はピニオンギア32と噛み合っている。ローラー31が回転すると、ピニオンギア32からラック24に回転が伝達され、フィルタ21は、ローラー31によって下方案内溝42bで方向転換して後方案内溝42c側へ搬送される。ローラー31が回転し続けると、ラック24の第1端部24aは上方案内溝42dに入り上方案内溝42dの終端に到達する。
【0042】
ラック24の第1端部24aが上方案内溝42dの終端に到達すると、リミットスイッチが押されオン動作する。空調機の制御部は、リミットスイッチから出力されるオン信号からラック24の第1端部24aが上方案内溝42dの終端に到達したと判断し、ローラー31の回転を停止させる。このとき、ラック24は、後方案内溝42cと上方案内溝42dとに収まっており、ラック24の他端(以後、第2端部24bとよぶ)はピニオンギア32と噛み合っている。
【0043】
フィルタ21が移動する際に、フィルタ21の表面に付着していた塵埃は回転ブラシ61によって掻き落される。回転ブラシ61は、少なくともフィルタ21が前方から後方へ移動している期間中は回転しており、その回転方向は、フィルタ21の進行方向に逆らう方向である。
【0044】
フィルタ21が前方から後方へ移動し塵埃の除去が終了すると、制御部は、ローラー31を逆回転させる。フィルタ21のラック24の第2端部24bは、ピニオンギア32と噛み合っているので、ピニオンギア32からラック24に回転が伝達され、フィルタ21は、ローラー31によって下方案内溝42bで方向転換して前方案内溝42a側へ搬送される。ローラー31が逆回転し続けると、ラック24の第2端部24bは上方案内溝42dに入り上方案内溝42dの終端に到達する。
【0045】
ラック24の第2端部24bが上方案内溝42dの終端に到達すると、リミットスイッチが押されオン動作する。空調機の制御部は、リミットスイッチから出力されるオン信号からラック24の第2端部24bが上方案内溝42dの終端に到達したと判断し、ローラー31の回転を停止させる。
【0046】
(フィルタ21の着脱)
図3において、使用者がフィルタ21を交換する場合、ガイド部材41の前面に位置する保持部材43を上方へ移動させて、フィルタ案内溝42の前方案内溝42aを開く。保持部材43は、2つの滑り部43aと各滑り部43aを繋ぐ連結部43bを有している。滑り部43aは、前方案内溝42aの一部を成し、制止部材44によって定位置に拘束されている。但し、使用者は、滑り部43aを持って上下に平行移動させることができる。
【0047】
図5は、保持部材がフィルタ案内溝の前方を閉じているときのガイド部材の側面図であり、図6は、保持部材がフィルタ案内溝の前方を開けているときのガイド部材の側面図である。図5、図6において、保持部材43の滑り部43aには、2つの軸431,432が設けられている。制止部材44には、案内スリット44a、第1停止部44b及び第2停止部44cが設けられている。保持部材43の軸431,432は、案内スリット44aに嵌まり込んで、上下に平行移動することができるが、案内スリット44aの下部では第1停止部44bに拘束され、案内スリット44aの上部では第2停止部44cに拘束される。
【0048】
図5に示すように、第1停止部44bには、案内スリット44aの幅を狭める方向に突出する第1突起441が形成されている。滑り部43aがフィルタ案内溝42の前方案内溝42aを成しているときは、第1突起441が軸431と軸432との隙間に入り込んでいる。このため、滑り部43aは、使用者の手で上方に引き上げられない限り、第1停止部44bから離れることができない。
【0049】
フィルタ21は、ガイド部材41内に装着されているとき、フィルタ案内溝42に沿って湾曲している。このため、保持部材43の滑り部43aは、フィルタ21の反発力を受けており、その反発力によって第1停止部44bから離されようとする。しかし、軸431と軸432との間に第1突起441が入り込んでいるので、滑り部43aが第1停止部44bから離れることはない。また、軸431及び軸432が案内スリット44aに嵌まり込んでいるので、滑り部43aは軸431及び軸432のいずれを中心にしても回転することができない。このため、滑り部43aが、フィルタ21の反発力によって回動することはない。したがって、滑り部43aが、フィルタ案内溝42を開放することはない。
【0050】
図6に示すように、第2停止部44cには、案内スリット44aの幅を狭める方向に突出する第2突起442が形成されている。滑り部43aが使用者の手によってフィルタ案内溝42から離されているときは、第2突起442が軸431と軸432との隙間に入り込んでいる。このため、滑り部43aは、使用者の手で下方に引き下げられない限り、第2停止部44cから離れることができない。また、軸431及び軸432が案内スリット44aに嵌まり込んでいるので、滑り部43aは軸431及び軸432のいずれを中心にしても回転することができない。このため、フィルタ案内溝42の前方案内溝42aが開放された状態となり、フィルタ21の着脱が可能となる。
【0051】
<特徴>
(1)
室内ユニット2では、保持部材43の2つの軸431と軸432が制止部材44の案内スリット44aに並んで嵌まり込んでおり、且つ、その案内スリット44aがフィルタ案内溝42の延びていく方向と交差している。保持部材43がフィルタ21の反発力によって回動しそうになっても、軸431と軸432とが保持部材43の回動を阻止する。また、保持部材43がフィルタ案内溝42の前方案内溝42aを成す第1位置では、軸431と軸432との隙間に第1突起441が嵌まり込んでいるため、保持部材43がフィルタ21の反発力によって案内スリット44aに沿って移動することができない。このため、フィルタ21の保持は確保され、フィルタ21がガイド部材41から脱落することはない。
【0052】
(2)
また、保持部材43がフィルタ案内溝42の前方案内溝42aから離れた第2位置では、軸431と軸432との隙間に第2突起442が嵌まり込んでいるため、保持部材43が案内スリット44aに沿って移動することができず、保持部材43が重力によって回動しそうになっても、軸431と軸432とが保持部材43の回動を阻止する。このため、保持部材43を第2位置に移動させることによって、保持部材43とフィルタ案内溝42の前方案内溝42aの一部が開口するので、フィルタ21の着脱が可能になる。
【0053】
<第1変形例>
上記実施形態では、保持部材43の軸431及び軸432は円形の軸であるが、これに限定されるものではない。以下、図面を用いて説明する。図7は、保持部材および制止部材の拡大側面図である。図7において、軸436は、軸431と軸432とがリブ433で連結されている。なお、リブ433は、軸431と軸432との間に第1突起441或は第2突起442が嵌まり込める程度の凹部437を残して、軸431と軸432とを連結している。このため、軸431及び軸432の変形、又は折れが防止される。
【0054】
<第2変形例>
上記実施形態および第1変形例では、案内スリット44aがスリットであるが、これに限定されるものではなく、案内スリット44aの代わりに案内溝としてもよい。案内溝であっても、案内スリット44aと同様の作用・効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明によれば、フィルタが正規位置から脱落することが防止されるので、空調機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィルタ保持機構を用いた空調機の外観図。
【図2】本発明の一実施形態に係るフィルタ保持機構を用いた空調機の室内ユニットの断面図。
【図3】フィルタ清掃部の斜視図。
【図4】フィルタとローラーの斜視図。
【図5】保持部材がフィルタ案内溝の前方を閉じているときのガイド部材の側面図。
【図6】保持部材がフィルタ案内溝の前方を開けているときのガイド部材の側面図。
【図7】保持部材および制止部材の拡大側面図。
【符号の説明】
【0057】
21 フィルタ
31 ロータ(駆動部)
41 ガイド部材(支持枠)
42 フィルタ案内溝(フィルタ案内部)
43 保持部材
44 制止部材
44a 案内スリット(案内部)
44b 第1停止部
44c 第2停止部
431,432,436 軸
437 凹部
441 第1突起
442 第2突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ(21)を着脱可能に保持する空調機のフィルタ保持機構であって、
前記フィルタ(21)の一部の縁を保持して前記フィルタ(21)を湾曲させる経路を構成する保持部材(43)と、
前記保持部材(43)を定位置に止める制止部材(44)と、
を備え、
前記制止部材(44)は、前記フィルタ(21)の前記縁が延びていく方向と交差する直線に沿って前記定位置から前記保持部材(43)を移動させるための案内部(44a)を有している、
空調機のフィルタ保持機構。
【請求項2】
前記フィルタ(21)の前記縁を前記保持部材(43)と共に保持する支持枠(41)と、
前記フィルタ(21)を移動させる駆動部(31)と、
をさらに備え、
前記支持枠(41)は、前記フィルタ(21)が移動するときに前記フィルタ(21)の前記縁を所定の湾曲軌道に沿わせるフィルタ案内部(42)を有している、
請求項1に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項3】
前記フィルタ(21)の前記縁が移動する軌道は、前記フィルタ案内部(42)が延びていく方向に延びている、
請求項2に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項4】
前記制止部材(44)は、
前記保持部材(43)が前記フィルタ(21)を保持している第1位置で前記保持部材(43)を止める第1停止部(44b)と、
前記保持部材(43)が前記フィルタ(21)から所定距離はなれた第2位置で前記保持部材(43)を止める第2停止部(44c)と、
をさらに有し、
前記案内部(44a)は、前記保持部材(43)を、前記第1位置から前記第2位置へ、及び前記第2位置から前記第1位置へ案内する、
請求項2に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項5】
前記案内部(44a)は凹溝、又はスリットであって、
前記保持部材(43)は、前記案内部(44a)に嵌まる複数の軸(431,432)を有している、
請求項4に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項6】
前記第1停止部(44b)は、前記案内部(44a)に形成された第1突起(441)を有し、
前記第2停止部(44c)は、前記案内部(44a)に形成された第2突起(442)を有し、
前記保持部材(43)が第1位置にあるとき、前記第1突起(441)が前記軸(431,432)間の隙間に嵌まり、
前記保持部材(43)が第2位置にあるとき、前記第2突起(442)が前記軸(431,432)間の前記隙間に嵌まる、
請求項5に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項7】
前記案内部(44a)は凹溝、又はスリットであって、
前記保持部材(43)は、前記案内部(44a)に嵌まる軸(436)を有し、
前記軸(436)は、前記案内部(44a)の幅よりも大きく且つ前記案内部(44a)の長手方向と平行な長寸部側に、前記案内部(44a)の幅方向に窪む凹部(437)を有している、
請求項4に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項8】
前記第1停止部(44b)は、前記案内部(44a)に形成された第1突起(441)を有し、
前記第2停止部(44c)は、前記案内部(44a)に形成された第2突起(442)を有し、
前記保持部材(43)が第1位置にあるとき、前記第1突起(441)が前記凹部(437)に嵌まり、
前記保持部材(43)が第2位置にあるとき、前記第2突起(442)が前記凹部(437)に嵌まる、
請求項7に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項9】
前記制止部材(44)が、前記支持枠(41)に一体成形されている、
請求項2に記載の空調機のフィルタ保持機構。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のフィルタ保持機構を用いた、
空調機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−65882(P2010−65882A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231053(P2008−231053)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】