説明

空調機能を有する机

【課題】オフィス等の空間において、室内全体に均一に空調を効かせるのではなく、局所的に冷暖房機能を確実に発揮することができ、省エネに寄与する空調機能を有する机を提供する。
【解決手段】天板4の両袖に中空の金属製の間仕切り壁2を一体化し、間仕切り壁2の下端部を床下の冷暖房用の空調ダクトに連通させる。間仕切り壁2の上端部に吹出口5を設け、間仕切り壁2の内部を空調風導の一部として利用する。金属製である間仕切り壁2の表面からの輻射熱と、吹出口5から出る冷風または温風によって伝達される熱とで、空調机1近傍を集中的に冷暖房する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等の空間において、室内全体を均等な温度に空調することなく、座席がある部分だけ局所的に空調機能を作動させることができる空調機能を有する机に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等の空間において、夏は涼しく、冬は暖かく感じ、しかも均等な室内温度にするために空調を室内全体に稼働させるが、室内全体を均等な設定温度にするためには、莫大なエネルギーを必要とする。近年、環境問題が重視される中で、少しでも無駄なエネルギーを省くために、空調を局所的に用いる発明がされ、例えば特許文献1〜4記載の発明がある。
【0003】
特許文献1には、側板、天板及び底板よりなり、側板の少なくとも一方に吸い込み開口部、天板に吹き出し開口部を設け、中空空間を通風ダクトとした間仕切本体と、吸い込み開口部と吹き出し開口部の間に配設された送風ファンと、を備えてなる空調用間仕切装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、空調機部を有し局所空調を行う机と、この机の前に人がいるかいないかを検知する人体検知部と、この人体検知部からの信号により、前記机の前に人がいる場合にのみ前記空調機部を運転する制御部と、前記空調機部と前記人体検知部及び前記制御部に供給する電源を入切するスイッチを備えたパーソナル空調機が記載されている。
【0005】
特許文献3には、床下を流れる空調風を導入して室内に吹出す吹出口を備えた空調風吹出机において、同机に室内空気を吸込む吸込口及びファンを設けると共に、同吸込口から吸込んだ室内空気と前記空調風とを任意の混合比に混合調整して前記吹出口から吹出すダンパを設けた空調風吹出机が記載されている。
【0006】
特許文献4には、机の側面、背面及び天面にある側板や天板内部を中空に構成し、これら側板、天板内の中空部は互いに連通させ、かつ給気口と排気口とを設け、該給気口には熱交換器からの冷暖気を送気する給気管等を接続できるようにしてなる冷暖房用机が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−249494号公報
【特許文献2】特開平02−146451号公報
【特許文献3】実開平04−051240号公報
【特許文献4】特開平04−036837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の空調用間仕切装置は、机周りの空調をした場合の不均一(冷気・暖気の滞留)を解消するための装置であり、吸い込み開口部と吹き出し開口部の間に送風ファンを設けているが、送風ファンを作動させるには動力エネルギーを必要とし省エネルギーには寄与しない。
【0009】
また、机周りの空調をした場合の不均一(冷気・暖気の滞留)を解消するための装置であり、特許文献2記載のパーソナル空調機も、机に熱交換器や送風機が内蔵された空調機部を備えているため、動力エネルギーを必要とするだけでなく、さらに空調機部を備えるためのスペースも必要となる。
【0010】
特許文献3記載の空調風吹出机は、ファンを設けるため、特許文献1と同様に動力エネルギーを必要とする。また、取り付けたダンパの開度によって、吸込口から吸込んだ室内空気と床下から取り込んだ空調風との風量比を調整し、吹出す空気温度を決めるため、適度な空気温度に調整するには複雑な制御が行なわれる反面、個人個人の要求に応じた空調が難しい。
【0011】
特許文献4は、熱の伝達に期待しない輻射のみによる冷暖房机であるが、天板内部をも中空にしているため、人の肌が接する机上面にも輻射・伝導熱の影響が表れ、特に夏期に机上面が冷たくなるというのは、著しく不快である。
【0012】
冬期においても、人体温度は36℃程度であることから、机上面が36℃を超えないと暖かいとは認識できず、体感的に冷たいと感じることが予測される。また、熱の伝達を伴わず専ら輻射熱だけでは、熱量不足により冷暖房機能を十分に発揮できないことは明白である。
【0013】
本発明は、従来技術における上述のような課題の解決を図ったものであり、オフィス等の空間において、室内全体に均一に空調を効かせるのではなく、局所的に冷暖房機能を確実に発揮することができる空調機能を有する机を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の請求項1に係る発明は、天板の両袖に中空の金属製の間仕切り壁が一体化された机であって、前記間仕切り壁の下端部を床下の冷暖房用の空調ダクトに連通させ、上端部に吹出口を設けることにより、該間仕切り壁の内部を空調風導の一部として利用し、金属製である前記間仕切り壁表面からの輻射熱と、前記吹出口から出る冷風または温風によって伝達される熱とで、机近傍を集中的に冷暖房するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
間仕切り壁を中空の金属製にしたことによって、床下から流れ込む空調風の温度が間仕切り壁自体に即時に伝わり、夏期は冷風により冷却され、冬期は温風により暖められた間仕切り壁表面からの輻射効果を得ることができる。
【0016】
間仕切り壁の上端部に、吹出口を設けているため、床下から流れ込む空調風を上記輻射効果に利用した後、いまだ十分な余力を持った空調風を排出することによって冷風または温風の温度が机近傍へ伝達される。
【0017】
よって、間仕切り壁表面からの輻射熱と、吹出口から出る空調風から伝達される熱によって、机近傍の空間に集中的に冷暖房効果を与えることができる。
【0018】
これらの機能により、従来のように室内全体に空調を効かせる必要がなくなる。もしくは空調した場合でも、従来の設定温度と比較し、夏期は高い温度に、冬期は低い温度に室内温度を設定することが可能になり、机近傍のみを目的とした冷暖房効果で快適な環境を提供することができ、省エネルギーに大いに寄与する。
【0019】
また、もともと空調機の動力エネルギーで室内に供給されている空調風を間仕切り壁の下方から取り込み、間仕切り壁の内部を通過させ、間仕切り壁上端の吹出口から排出させるため、新たに付加する動力エネルギー(例えば、送風ファンなど)を設ける必要がなく、余計な付加動力エネルギーを使うことがない。重ねてこの点も省エネルギーに寄与する。
【0020】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る空調機能を有する机において、前記吹出口に、前記吹出口から出る風量を調節するための風量調整手段を設けたことを特徴とするものである。
【0021】
例えば、間仕切り壁上端部の吹出口部分に風量調整手段を設け、吹出し量を調整するようにすれば、間仕切り壁の内部を通る空調風量及び吹出口から出る風量を増減することができる。また、間仕切り壁表面からの輻射熱及び吹出口から出る空調風による伝達熱量も同時に調節していることになる。つまり、この動作により机近傍の空間の温度を調整することになる。
【0022】
また、離席中など冷暖房効果を必要としない時は、吹出口を閉じれば、吹出口からの風が0に近付き、間仕切り壁内部への空調風も著しく減少するため、輻射熱も伝達熱も0に近づく。
【0023】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る空調機能を有する机において、前記吹出口に、風向を調節するための風向調整手段を設けたことを特徴とするものである。
【0024】
吹出口に風向調整手段を設けることで、座者の好みに応じて座者に直接風が当たるようにしたり、逆に座者に直接風が当たらないようにするなど、空調風の向きを調整することができる。
【0025】
なお、風量調整手段及び風向調整手段は、既存の空調機器の吹出口で利用されている各種の形式、構造のものが利用可能であり、風量調整と風向調整の両者の機能を兼ね備えたものを用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は以上のような構成を有し、以下の効果が得られる。
【0027】
(1) 床下を流れる空調風を、天板の両袖に設けた間仕切り壁の内部に通過させ、間仕切り壁自体を温度変化させることにより、机近傍に輻射効果を与えることができる。
【0028】
(2) 床下を流れる空調風を、天板の両袖に設けた間仕切り壁の内部に通過させて吹出口から吹出すことにより、空調風の温度を机近傍に伝達させることができる。
【0029】
(3) 上述の(1)、(2)の効果により机近傍は快適な空間になる。
【0030】
(4) 室内全体を快適な状態に保つ必要はないという考え方によるものであり、別途、エアコンなどの空調機器を用いる必要がなくなる。あるいは、室内全体の空調を運転させる場合においても、冷房設定温度は従来の設定温度より高く、または暖房設定温度では低く、設定することが可能であり、確実に消費エネルギーを抑えることができる。
【0031】
(5) 間仕切り壁下部から取り入れた空調風を上端部の吹出口から排出するという流れであるため、吹出すための新たな消費エネルギーとなる付加動力を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る空調機能を有した机の一実施形態を概略的に示した斜視図である。
【図2】風量調整手段の機能を簡略化して示した説明図である。
【図3】風向調整手段の機能を簡略化して示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0034】
図1は、並列し、向き合う4つの机1a、1b、1c、1dを一体化して本発明の構造を適用し、空調机1として空調機能を持たせた場合である。
【0035】
本実施形態の空調机1の本体部分は、並列する方向を仕切る3枚の間仕切り壁2と、向かい合う方向を仕切る2枚の間仕切り壁3と、4枚の天板4からなる。
【0036】
3枚の間仕切り壁2は、スチールあるいはステンレスなどの金属を加工して中空構造としたものであり、下端を開口させ、床下11のOAフロアを利用した空調ダクト(図示省略)と連通させている。
【0037】
間仕切り壁2の上端部には、横長の吹出口5が設けられている。この例では、手前側の机1a、1bについては、各間仕切り壁2の図中左側の面に吹出口5が形成され、空調風wが左方向に吹き出すようになっているのに対し、向こう側の机1c、1dについては、各間仕切り壁2の図中右側の面(斜視図において隠れている面)に吹出口5が形成され、空調風wが右方向に吹き出すようになっている。なお、座者からみるといずれも空調風wが右側から左側に向かって吹くことになる。
【0038】
建物全体の空調を担う空調機から送られてくる空調用の冷風(夏期)または温風(冬期)の流れでみると、空調機から送られてくる冷風または温風(空調風w)は、床下11のOAフロアを利用した空調ダクト(図示省略)を通じて、間仕切り壁2の下端から中空部2a内に入り、上端部の吹出口5から吹き出され、最終的には天井などの吸い込み口(図示省略)から、もしくは天井チャンバー方式により空調機に戻される。
【0039】
このような構成において、本発明では、間仕切り壁2の中空部2aを空調風導の一部として利用し、金属製である間仕切り壁2表面からの輻射熱と、吹出口5から出る冷風または温風によって伝達される熱とで、机近傍を局所的に集中的に冷暖房することができる。
【0040】
また、本実施形態では、向かい合う方向を仕切る2枚の間仕切り壁3と、4枚の天板4は、木製のものを想定しているが、これらについては必要な強度、性能が得られるものであれば、材質などは特に限定されない。
【0041】
また、設計によっては、向かい合う方向を仕切る2枚の間仕切り壁3についても金属製の中空の構造として、内部を空調風導の一部として利用することも可能である。
【0042】
間仕切り壁2の上端部の吹出口5については、風量調整手段や風向調整手段を設けることが望ましい。
【0043】
図2は、風量調整手段の機能を簡略化して示したものであり、横長の吹出口5を覆う遮蔽板6を開閉できるようにし、開閉の状態を操作することで、吹出口5からの風量を調整することができる。
【0044】
すなわち、吹出す風量を調整するようにすれば、間仕切り壁2の内部を通る空調風量及び吹出口5から出る風量を増減することができる。このとき、間仕切り壁2表面からの輻射熱及び吹出口5から出る空調風による伝達熱量も同時に調節していることになる。つまり、この動作により空調机1近傍の空間の温度を調整することになる。
【0045】
また、例えば、離席中など冷暖房効果を必要としない時は、吹出口5を閉じれば、吹出口からの風が0に近づき、間仕切り壁2内部への空調風も著しく減少するため、輻射熱も伝達熱も0に近づく。
【0046】
図3は、風向調整手段の機能を簡略化して示した説明図であり、風向調整手段を設けることで、座者の好みで空調風の向きを調整することが可能である。
【0047】
図3(a)のように、方向板7を斜め上方に傾ければ、吹出口5から吹き出される空調風が座者に直接当たらないようにすることができる一方、図3(b)のように方向板7を90°以上に傾けると空調風が直接座者に当たることになり、短時間に涼感(冬期は暖感)を与えることができる。また、図3の方向板7は、図2の遮蔽板6の機能も兼ねている。
【0048】
以上、機能として、風向調整手段と風向調整手段を分けて説明したが、実際には風量調整と風向調整の両者の機能を兼ね備えたものを用いることができる。具体例としては、エアコンなどのルーバーやウイングのようなものが挙げられるが、形式、構造等、特に限定されない。
【0049】
また、上述の図1の実施形態は、オフィス内に設置される4つの机が一体化された例であるが、個々に独立した机に適用する場合、2つの机が並列または向き合う机に適用する場合、あるいは多数の机が一体化される場合等も基本的な考え方は同じである。
【符号の説明】
【0050】
1…空調机、
2…間仕切り壁、
2a…中空部、
3…間仕切り壁、
4…天板、
5…吹出口、
6…遮蔽板、
7…方向板、
11…床下、
w…空調風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板の両袖に中空の金属製の間仕切り壁が一体化された机であって、前記間仕切り壁の下端部を床下の冷暖房用の空調ダクトに連通させ、上端部に吹出口を設けることにより、該間仕切り壁の内部を空調風導の一部として利用し、金属製である前記間仕切り壁表面からの輻射熱と、前記吹出口から出る冷風または温風によって伝達される熱とで、机近傍を集中的に冷暖房するようにしたことを特徴とする空調機能を有する机。
【請求項2】
前記吹出口に、前記吹出口から出る風量を調節するための風量調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の空調機能を有する机。
【請求項3】
前記吹出口に、風向を調節するための風向調整手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の空調機能を有した机。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−247117(P2012−247117A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118626(P2011−118626)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】