説明

空調用の配管装置および作業機械

【課題】外部温度の影響を受けにくい空調用の配管装置を提供する。
【解決手段】空調用の風を導くダクト本体61から、キャブ内壁面62に当接して取付ねじ63により固定する取付凸部64を樹脂成形により突設する。この取付凸部64によりダクト本体61とキャブ内壁面62との間に生じた隙間に断熱材65を挟込むように配置する。取付凸部64は、ダクト本体61に開口した背面吹出口51の開口内の裏側に設ける。この取付凸部64の内側面には、取付ねじ63の頭部63hをダクト本体61内の風通路66より退避させる凹部67を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材を有する空調用の配管装置および作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機械には、キャブを構成する複数の支柱に、キャブ内に設置された空調装置からの風を導く空洞部を設け、この支柱の上部および下部において空洞部を外部に開口して上部吹出口および下部吹出口としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−321518号公報(第2−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このものは、キャブを構成する支柱が風供給用の配管ダクトであるため、空洞部内の風が外部温度の影響を受けやすく、夏季に必要な冷風は、加熱された支柱により温度上昇しやすいとともに、冬季に必要な温風は、外気により冷却された支柱により温度低下しやすい問題がある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、外部温度の影響を受けにくい空調用の配管装置およびこの配管装置を備えた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、空調用の風を導くダクト本体と、このダクト本体から突設され取付相手面に当接されて取付ねじにより固定される取付凸部と、この取付凸部によりダクト本体と取付相手面との間に生じた隙間に配置された断熱材とを具備した空調用の配管装置である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の空調用の配管装置において、ダクト本体に開口された吹出口を備え、取付凸部は、この吹出口の開口内の裏側に設けられたものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の空調用の配管装置において、取付凸部の内側面に設けられ取付ねじの頭部をダクト本体内の風通路より退避させる凹部を具備したものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、機体と、機体に搭載された運転室形成用のキャブと、キャブ内で風を吹出可能な空調装置と、空調装置に接続されキャブ内の異なる場所に風を供給する請求項1乃至3のいずれか記載の空調用の配管装置とを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、取付凸部によりダクト本体と取付相手面との間に生じた隙間に断熱材が配置されたので、この断熱材によりダクト本体内の風に及ぼす外部温度の影響を遮断することができ、ダクト本体内の風の温度変化を抑制できるとともに、取付凸部が取付相手面に当接されて取付ねじにより固定されるので、ダクト本体を確実に固定できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、取付凸部が吹出口の開口内の裏側に設けられたので、この吹出口から取付凸部に取付ねじを挿入してダクト本体を取付相手面に容易に取付けることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、取付凸部の内側面に凹部が設けられたので、この凹部に退避された取付ねじの頭部は、ダクト本体内の風通路に突出しないため、この取付ねじの頭部がダクト本体内の風を妨げることがなく、風の円滑な流れを確保できる。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、キャブ内で空調装置から異なる場所に風を供給する空調用の配管装置を設ける際に、取付凸部によりダクト本体とキャブ内の取付相手面との間に生じた隙間に断熱材が配置されたので、この断熱材によりダクト本体内の風に及ぼすキャブ外部温度の影響を遮断することができ、ダクト本体内の風の温度変化を抑制できるとともに、取付凸部がキャブ内の取付相手面に当接されて取付ねじにより固定されるので、キャブ内にダクト本体を確実に固定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図1乃至図5に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図3は、作業機械としての油圧ショベル11を示し、その機体12は、下部走行体13上に上部旋回体14が旋回可能に設けられて構成され、その上部旋回体14の後部に、エンジンを有する動力装置15が搭載され、上部旋回体14上には、その前部から動力装置15上にわたって、運転室形成用のキャブ16が搭載されている。下部走行体13には、昇降シリンダ17により昇降可能なプッシュアーム18を介してブレード19が取付けられている。
【0015】
キャブ16の左側面部には、ドア21により開閉される搭乗口22が設けられ、キャブ16の右側部で上部旋回体14の前部には作業装置23が搭載されている。
【0016】
この作業装置23は、上部旋回体14のブラケット部24に、ブームシリンダ25により上下方向に回動されるブーム26が軸支され、このブーム26の先端部に、アームシリンダ27により回動されるアーム28が軸支され、このアーム28の先端部にバケットシリンダ29により回動されるバケット30が軸支されている。
【0017】
図4に示されるように、キャブ16内には運転席31が配置され、この運転席31の左右両側には、作業装置23を操作するための作業用操作レバー装置32が設けられ、運転席31の前側には、走行用操作レバー装置33が設けられている。
【0018】
キャブ16内の前部であって作業装置23側の側面部16sには、温度調整または湿度調整された風をキャブ16内で吹出可能な空調装置34が、密着されて配置されている。
【0019】
この空調装置34は、縦方向偏平形に形成され、冷房用のエバポレータまたは暖房用のヒータなどを送風ファンとともに備えた空調装置本体(図示せず)を、樹脂成形された空調装置カバー35で覆ったものである。
【0020】
この空調装置カバー35には、キャブ内空気を吸込む吸込口36と、キャブ内上部に風を吹出可能な上部吹出口37と、キャブ内下部に風を吹出可能な下部吹出口38と、カバー上側後部の吹出口(図示せず)とが開口され、また、空調装置カバー35の上面部には、飲料容器などを収納するための収納凹部39が設けられている。
【0021】
上部吹出口37は、運転席31に座ったオペレータの顔面などに風を供給し、下部吹出口38は、そのオペレータの足元などに風を供給するものであるが、これらの上部吹出口37および下部吹出口38には、風の向きを調整するための可動ルーバ41,42が設置されているので、フロントガラスデフロストとしてキャブ前窓のフロントガラスに風を吹付けることもできる。
【0022】
この空調装置34のカバー上側後部に開口された吹出口(図示せず)には、キャブ内の異なる場所に風を供給する空調用の配管装置43が、キャブ16内の作業装置23側の側面部16sおよび背面部16rに沿って配設されている。
【0023】
この配管装置43は、空調装置34に接続された樹脂成形の第1側面部ダクト44および第2側面部ダクト45が、キャブ16内の作業装置23側の側面部16sに沿って固定され、第2側面部ダクト45に接続された樹脂成形の背面横断ダクト46が、キャブ16内の背面部16rに沿って横断方向に固定され、この背面横断ダクト46の一側部および他側部に接続された樹脂成形の複数の背面塔形ダクト47,48が、キャブ16内の背面一側および他側の角部に沿って、それぞれ塔形に立上げられ固定されている。
【0024】
これらの背面塔形ダクト47,48の上端部には、オペレータに対し後方から風を供給する吹出口としての背面吹出口51,52がそれぞれ設けられ、これらの背面吹出口51,52には、風の向きを調整するための可動ルーバ53,54が設置されている。
【0025】
図5に示されるように、背面横断ダクト46は、一端部前面に第2側面部ダクト45と嵌合される接続口部55を有し、上面一端部と他端部とに左右の背面塔形ダクト47,48の下端開口と嵌合される接続口部56,57を有する。
【0026】
図1および図2は、一側の背面塔形ダクト47の取付構造を示し、キャブフレーム60に、樹脂成形された空調用の風を導く背面塔形ダクト47のダクト本体61が取付けられている。
【0027】
すなわち、ダクト本体61から、取付相手面としてのキャブフレーム60のキャブ内壁面62に当接されて取付ねじ63により固定される取付凸部64が突設され、この取付凸部64によりダクト本体61とキャブ内壁面62との間に生じた隙間に断熱材65が挟込まれるように配置されている。この断熱材65は、あらかじめダクト本体61またはキャブ内壁面62に接着剤などで貼付しておいても良い。
【0028】
取付凸部64は、ダクト本体61に開口された背面吹出口51の開口内の裏側に設けられている。この取付凸部64の内側面には、取付ねじ63の頭部63hをダクト本体61内の風通路66より退避させる凹部67が設けられている。
【0029】
この一側の背面塔形ダクト47の取付構造は、他側の背面塔形ダクト48にも同様に適用して、これらのダクト本体とキャブ内壁面との隙間に断熱材(図示せず)を設置することで、キャブ16側からの熱影響を遮断する。
【0030】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0031】
空調装置34は、温度調整された風、すなわち夏季は冷風、冬季は温風を発生させ、上部吹出口37から運転席31のオペレータの顔面などに風を供給するとともに、下部吹出口38からオペレータの足元などに風を供給する。
【0032】
同時に、空調装置34で発生した風を、配管装置43の第1側面部ダクト44、第2側面部ダクト45、背面横断ダクト46および左右の背面塔形ダクト47,48により運転席31の後方へ供給して、左右の背面塔形ダクト47,48の背面吹出口51,52よりオペレータの首筋などへ左右後方から冷風を供給する。
【0033】
キャブ16内で空調装置34から異なる場所に風を供給する空調用の配管装置43を設ける際に、図1に示されるように取付凸部64によりダクト本体61とキャブ内壁面62との間に生じた隙間に断熱材65が配置されたので、この断熱材65によりダクト本体61内の風に及ぼすキャブ外部温度の影響を遮断することができ、ダクト本体61内の風の温度変化を抑制できるとともに、取付凸部64がキャブ内壁面62に当接されて取付ねじ63により固定されるので、キャブ16のキャブフレーム60内にダクト本体61を確実に固定できる。
【0034】
取付凸部64が背面吹出口51の開口内の裏側に設けられたので、この背面吹出口51から取付凸部64に取付ねじ63を挿入してダクト本体61をキャブ内壁面62に容易に取付けることができる。
【0035】
特に、左右の背面塔形ダクト47,48の下部開口は、図5に示されるように背面横断ダクト46の接続口部56,57と嵌合されて水平方向の動きが規制された上に、それらの上部に開口された背面吹出口51,52の裏側にそれぞれ設けられた取付凸部64を、背面吹出口51,52から挿入された取付ねじ63によりキャブ内壁面62に固定することで、各背面塔形ダクト47,48をそれぞれ簡単に固定することができる。
【0036】
取付凸部64の内側面に凹部67が設けられたので、この凹部67に退避された取付ねじ63の頭部63hは、ダクト本体61内の風通路66に突出しないため、この取付ねじ63の頭部63hがダクト本体61内の風を妨げることがなく、風の円滑な流れを確保できる。
【0037】
なお、本発明の配管装置43は、作業機械以外の空調用配管にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る空調用の配管装置の一実施の形態を示す水平断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】同上配管装置を備えた作業機械の一例を示す斜視図である。
【図4】同上配管装置のキャブ内施工例を示す斜視図である。
【図5】同上配管装置の背面側ダクト例を示す分解正面図である。
【符号の説明】
【0039】
12 機体
16 キャブ
34 空調装置
43 配管装置
51 吹出口としての背面吹出口
61 ダクト本体
62 取付相手面としてのキャブ内壁面
63 取付ねじ
63h 頭部
64 取付凸部
65 断熱材
66 風通路
67 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用の風を導くダクト本体と、
このダクト本体から突設され取付相手面に当接されて取付ねじにより固定される取付凸部と、
この取付凸部によりダクト本体と取付相手面との間に生じた隙間に配置された断熱材と
を具備したことを特徴とする空調用の配管装置。
【請求項2】
ダクト本体に開口された吹出口を備え、
取付凸部は、この吹出口の開口内の裏側に設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の空調用の配管装置。
【請求項3】
取付凸部の内側面に設けられ取付ねじの頭部をダクト本体内の風通路より退避させる凹部
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の空調用の配管装置。
【請求項4】
機体と、
機体に搭載された運転室形成用のキャブと、
キャブ内で風を吹出可能な空調装置と、
空調装置に接続されキャブ内の異なる場所に風を供給する請求項1乃至3のいずれか記載の空調用の配管装置と
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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